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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】光応答性重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/34 20060101AFI20240910BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20240910BHJP
   C08F 297/00 20060101ALI20240910BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240910BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240910BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240910BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240910BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240910BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08F20/34
C08F20/38
C08F297/00
G03G9/087 325
G03G9/087
G03G9/087 331
G03G9/08 391
B05D3/06 Z
B05D1/28
B05D7/24 301A
B05D7/24 302P
B05D7/24 302J
B05D7/24 302V
B05D7/24 302G
B05D7/24 303E
G03G15/01 J
G03G15/01 K
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020135376
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022031010
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】須釜 宏二
(72)【発明者】
【氏名】草野 優咲子
(72)【発明者】
【氏名】堀口 治男
(72)【発明者】
【氏名】中村 和明
(72)【発明者】
【氏名】芝田 豊子
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-092324(JP,A)
【文献】特開平05-323298(JP,A)
【文献】特開2002-107539(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168712(WO,A1)
【文献】特開2014-035398(JP,A)
【文献】Bagheri M et al,"Synthesis of polymers containing doner-acceptor Shiff Base in side chain for nonlinear optics",European Polymer Journal,,38 2,米国,2002年,317-326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00- 20/40
C08F 297/00-297/08
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G03G 9/087
G03G 9/08
B05D 3/06
B05D 1/28
B05D 7/24
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式()で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体:
【化1】

前記一般式(2)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
Aは、下記一般式(1-1)または下記一般式(1-2)で示され、
【化2】

【化3】

式中、*は、結合点を表し、Gは2価の基であり、およびZが、NまたはCHであり、ただし、Z≠Zであり、
が、芳香族炭化水素構造を含み、
が、芳香族複素環構造を含み、
「Z -R 」構造が、以下:
【化4】

の式で表され、この際、X、Y、PおよびQの少なくとも2つは炭素原子であり、残りは、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であり、ただし、XおよびYの少なくとも1つは炭素原子であり、R 、R 、R およびR は、R 、R 、R およびR がX、Y、PおよびQの原子価に応じて存在する場合、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子であり、ただし、R およびR のうち炭素原子に結合するもののうち少なくとも1つは水素原子であり、R およびR ならびにR およびR はそれぞれ独立して縮合環を形成してもよい。
【請求項2】
前記Gが、炭素数1~18の、アルキレン基またはオキシアルキレン基である、請求項に記載の光応答性重合体。
【請求項3】
前記Zに結合する前記芳香族複素環構造における炭素原子に隣接して結合している原子がいずれも炭素原子であり、当該炭素原子のいずれにも水素原子が結合している、請求項1または2に記載の光応答性重合体。
【請求項4】
前記Pおよび前記Qが窒素原子であり、
前記Xおよび前記Yがいずれも炭素原子であり、前記Rおよび前記Rのいずれも水素原子であり、
前記RおよびRの少なくとも1つが、炭素数4以上のアルキル基である、請求項1~3のいずれかに記載の光応答性重合体。
【請求項5】
数平均分子量Mnが、3000以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の光応答性重合体。
【請求項6】
ビニル系重合性基を有するモノマー由来の他の構造単位をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光応答性重合体。
【請求項7】
前記ビニル系重合性基を有するモノマーが、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、およびオレフィン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の光応答性重合体。
【請求項8】
下記一般式(3):
【化9】

で表され、
αは、それぞれ独立して、前記一般式(2)で表される構造単位を含む重合体ブロックであり、
βは、それぞれ独立して、前記一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位を含む重合体ブロックである、請求項1~のいずれか1項に記載の光応答性重合体。
【請求項9】
前記αの数平均分子量が、1000以上であり、
前記βの数平均分子量が、1000以上であり、
全数平均分子量が3000以上である、請求項に記載の光応答性重合体。
【請求項10】
前記βが、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、およびオレフィン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む重合体ブロックである、請求項またはに記載の光応答性重合体。
【請求項11】
前記光照射における光の波長が、280nm以上480nm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の光応答性重合体。
【請求項12】
結着樹脂として請求項1~11のいずれか1項に記載の光応答性重合体を含む、トナー。
【請求項13】
他の結着樹脂をさらに含む、請求項12に記載のトナー。
【請求項14】
前記他の結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項13に記載のトナー。
【請求項15】
請求項1214のいずれか1項に記載のトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、
前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程と、
を含む、画像形成方法。
【請求項16】
前記光の波長が、280nm以上480nm以下である、請求項15に記載の画像形成方法。
【請求項17】
前記トナー像を加圧する工程をさらに含む、請求項15または16に記載の画像形成方法。
【請求項18】
前記加圧する工程において、前記トナー像をさらに加熱する工程をさらに含む、請求項17に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記加熱における温度が20℃超である、請求項18に記載の画像形成方法。
【請求項20】
前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程において、光照射とともに前記トナー像を加熱する、請求項1517のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光応答性重合体を含む、光応答性接着剤。
【請求項22】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光応答性重合体を含む、光スイッチング材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射により流動性が変化する材料として光応答性材料が知られている。例えば、特許文献1または2に記載のアゾベンゼン化合物(アゾベンゼン誘導体)は、光照射による異性化反応に伴って相変化を起こす。
【0003】
これによる分子構造変化が固体状態から流動性状態への相転移を誘起すると考えられている。また、波長を変えて再光照射するか、加熱するか、或いは、暗所に室温で放置することで、逆反応が起きて再び固化するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-256155号公報
【文献】国際公開第2013/081155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1または2に記載されるアゾベンゼン誘導体は比較的低分子量であるために材料としての靭性が低く、十分な定着性を実現しないことが知見された。また、上記特許文献1、2に記載されているアゾベンゼン誘導体はいずれも黄色~橙色の着色が有り、トナーや接着剤など工業製品に応用する際に所望の色を再現できないという問題があることが知見された。
【0006】
そこで、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性を十分に担保し、定着性を向上させ、さらに色再現性の良好な光応答性重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、下記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体:
【0008】
【化1】
【0009】
およびZが、NまたはCHであり、ただし、Z≠Zであり、Rが、芳香族炭化水素構造を含み、Rが、芳香族複素環構造を含み、前記Zに結合する前記芳香族複素環構造における炭素原子に隣接して結合している少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合している、を提供することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性を十分に担保し、定着性を向上させ、さらに色再現性の良好な光応答性重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。
図2】画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
図3】実施例の光応答接着試験で用いた重合体の光照射に伴う接着性の変化を測定する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0013】
<光応答性重合体>
本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体:
【0014】
【化2】
【0015】
式中、ZおよびZが、NまたはCHであり、ただし、Z≠Zであり、Rが、芳香族炭化水素構造を含み、Rが、芳香族複素環構造を含み、前記Zに結合する前記芳香族複素環構造における炭素原子に隣接して結合している少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合している。
【0016】
ここで、上記一般式(1)を以下の具体例の一つを用いて説明すると、以下の式:
【0017】
【化3】
【0018】
に示されるとおり、Zには芳香族複素環構造における炭素原子が結合しており、当該炭素原子に隣接する結合箇所(つまり*で示される結合箇所)の少なくとも1つは炭素原子(上記具体例では2つが炭素原子)であり、当該炭素原子(上記具体例では2つの炭素原子)に水素原子が(上記具体例では2つの水素原子が)結合している。なお、本明細書中、「光応答性重合体」を単に「重合体」とも称する場合がある。かようなアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む光応答性重合体であることによって、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性を十分に担保し、定着性を向上させ、さらに色再現性の良好な光応答性重合体を提供することができる。
【0019】
本明細書中、光照射により流動化し、可逆的に非流動化するとは、光照射によって非流動状態から流動状態へと変化し、さらに非流動状態へと戻ることを指す。すなわち、本発明の重合体は、常温、常圧下、光照射されていないときに非流動性の固体状態であり、光照射により軟化して流動状態に変化する。光照射を停止し、室温の暗所もしくは可視光照射下で放置、または加熱することで非流動性の固体状態に戻る。本明細書中、流動状態とは、少ない外力で変形する状態をいう。
【0020】
かような技術的効果を奏するメカニズムは以下のとおりと推測される。ただし本発明の技術的範囲はかかるメカニズムに限定されない。すなわち、従来例である、末端に長鎖のアルキル鎖を有するアゾベンゼン化合物は、光を吸収し固体状態から軟化(光相転移)する材料であり、その光相転移は、シス-トランス異性化により結晶構造が崩れることで生じていると考えられる。特許文献1または2に記載のアゾベンゼン化合物は、光照射による異性化反応に伴って相変化を起こすが、本発明者らは、かようなアゾベンゼン化合物は、材料としての靱性が低いという問題点があることを知見した。また、可視光領域にn-π遷移に由来する強い吸収を示し、橙色に着色しているため、工業製品に適用する際に所望の色を再現しにくいという点で問題があることが知見された。
【0021】
本発明では、アゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む重合体を用いる。そのことで、光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、靱性が高く、かつ著しい着色のない重合体を提供することを実現した。ここで、アゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む重合体においては、アゾメチン誘導体が光吸収して、光励起・失活過程で放出される熱エネルギーが結合する繰り返しユニット(構造単位)に伝わること(光熱変換)により可逆的な流動化・非流動化現象を誘起すると考えられる。特に、当該重合体が、トランス体であると、前述の光熱変換に加えて、光照射によりトランス-シス光異性化がさらに生じやすく、Tgが低いシス体が生成されやすい。非流動性のトランス体(E)が光照射され、シス体(Z)へ異性化するとき、多くのトランス体(E)がシス体(Z)へと変化していくことで規則構造が崩れ相転移変化、すなわち流動化現象を誘起できると考えられる。また、シス体(Z)がトランス体(E)へと戻っていくことで、再び規則構造が形成され、非流動化現象を誘起できると考えられる。これにより、より効率的な流動化・非流動化現象を誘起できると考えられる。したがって、流動化現象を誘起するためには、多くのトランス体(E)がシス体(Z)へ異性化することが好ましいと考えられる。しかしながら、一般的にアゾメチン誘導体は、アゾベンゼン誘導体に比べてシス-トランス異性化速度が速い可能性があり、C=N結合の両端に非置換のベンゼン環が結合したアゾメチン誘導体では流動化を誘起するには不利になることが予想された。
【0022】
そこで本発明では、アゾメチン誘導体を含む重合体において、C=N部の両端にそれぞれ芳香族炭化水素基および芳香族複素環基を有し、かつ複素環においてC=N部と結合した炭素に隣接する炭素の少なくとも一方に水素原子が結合した環状構造を用いた重合体とすることで、光異性化反応に伴った流動化を誘起することができた。これは、複素環を導入することでシス→トランス反応速度が低下すること、さらにシス体において、複素環のC=N部に結合した炭素に隣接する炭素上の水素原子と、芳香族炭化水素基とがCH-π相互作用を形成することで、シス体が安定化され、より多くのシス体が生成したことによるものと考えられる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、重合性基を有する、前記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を有する。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体は、前記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を前記光応答性重合体における繰り返し単位中において側鎖として有する。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造、オレフィン由来の構造およびビニルエステル由来の構造からなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造を含む。かかる実施形態であることによって、重合が容易であるとの技術的効果がある。
【0026】
本発明の一実施形態において、光応答性重合体が、一般式(2):
【0027】
【化4】
【0028】
で表される構造単位を含み、
前記一般式(2)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
Aは、一般式(1-1)~一般式(1-4):
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
のいずれかであり、
*は、結合点を表し、Gは2価の基であり、R、Z、ZおよびRは、前記一般式(1)における定義と同様である。かかる実施形態であることによって本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。
【0034】
ここで、上記一般式(1-2)を以下の具体例の一つを用いて説明すると、代表的には、以下の式:
【0035】
【化9】
【0036】
で示される。「R-」、「-Z=Z-」、「-R」は、上記で説明したとおりであり、2価の基としてのGが、炭素数が10のオキシアルキレン基であり、そこを結合点として(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位に結合している。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記Zに結合する前記芳香族複素環構造における炭素原子に隣接して結合している原子がいずれも炭素原子であり、当該炭素原子のいずれにも水素原子が結合している。かかる実施形態であることによって本発明の所期の効果、特に定着性が顕著に向上する。
【0038】
以下、一般式(1)、一般式(2)についてさらに説明する。
【0039】
(ZおよびZ
本発明の一実施形態において、上述のとおり、ZおよびZが、NまたはCHであり、ただし、Z≠Zである。
【0040】
(RおよびR
本発明の一実施形態において、上述のとおり、Rが、芳香族炭化水素構造を含み、Rが、芳香族複素環構造を含む。
【0041】
本発明の一実施形態において、芳香族炭化水素構造としては、特に制限されないが、炭素数6~30の芳香族炭化水素が好ましく、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントン、ピレン、ビフェニルなどの構造に由来する。なかでも、分子鎖間のパッキングが発現しやすく、かつトランス-シス異性化した際には高い熱運動性を示し、流動化現象を誘起しやすくなる観点からベンゼン、ナフタレン、フェナントレンが好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記芳香族炭化水素構造が、ナフタレン、アントラセン、フェナントン、ピレン等の多環構造を有する。
【0043】
本発明の一実施形態において、芳香族複素環構造としては、特に制限されないが、炭素数2~30のものが好ましい。また、電子供与性の高いものが好ましく、例えば、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、アクリジン、カルバゾール基、ジベンゾチオフェンなどの構造に由来するものが挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、前記一般式(2)で表される構造単位を含み、前記Aが、前記一般式(1-1)または前記一般式(1-2)で示される場合、前記Rで示される芳香族炭化水素構造が二価の基となる。すなわち、前記芳香族炭化水素構造が、フェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ピレニレン基等の炭素数6~30のアリーレン基となる。本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、前記一般式(2)で表される構造単位を含み、前記Aが、前記一般式(1-3)または前記一般式(1-4)で示される場合、前記Rで示される芳香族炭化水素構造が一価の基となる。すなわち、前記芳香族炭化水素構造が、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基等の炭素数6~30のアリール基となる。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、前記一般式(2)で表される構造単位を含み、前記Aが、前記一般式(1-1)または前記一般式(1-2)で示される場合、前記Rで示される芳香族複素環構造が一価の基となる。すなわち、前記芳香族複素環構造が、例えば、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ベンゾチエニル基、ベンズイミダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基などの基となる。本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、前記一般式(2)で表される構造単位を含み、前記Aが、前記一般式(1-3)または前記一般式(1-4)で示される場合、前記Rで示される芳香族複素環構造が二価の基となる。すなわち、前記芳香族複素環構造としては、上記の一価の芳香族複素環基として例示した基にそれぞれ対応する二価の基が挙げられる。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記芳香族炭化水素構造または芳香族複素環構造は、それぞれ、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のジアルキルアミノ基、炭素数2~19のアシル基、および炭素数2~19のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~10のジアルキルアミノ基、炭素数2~19のアシル基、および炭素数2~19のアルコキシカルボニル基である。この際、上記置換基の少なくとも1つが、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~10のジアルキルアミノ基、炭素数2~18のアシル基、または炭素数2~18のアルコキシカルボニル基であることが好ましい。このような構造とすることで、シス-トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。このうち、熱運動性が高いことから、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~10のジアルキルアミノ基であることがより好ましい。
【0047】
上記置換基の炭素数としては、より好ましくは、上記アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数4~8のアルキル基である。また、より好ましくは、上記アルコキシ基は、炭素数1~12のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数4~8のアルコキシ基である。また、より好ましくは、上記ジアルキルアミノ基は、炭素数2~8のジアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは炭素数4~6のジアルキルアミノ基である。より好ましくは、上記アシル基は、炭素数2~13のアシル基であり、さらに好ましくは炭素数5~13のアシル基である。また、より好ましくは、上記アルコキシカルボニル基は、炭素数2~13のアルコキシカルボニル基であり、さらに好ましくは炭素数5~13のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。このように、長鎖置換基を導入することで結晶が崩れやすく、光溶融性がよくなり、定着性がよくなる。
【0048】
炭素数1~18のアルキル基の例としては、特に制限されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、t-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、1-メチルデシル基、1-ヘキシルヘプチル基などの分枝状のアルキル基が挙げられる。
【0049】
炭素数1~18のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基:1-メチルペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチルオキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、1-メチルヘキシルオキシ基、t-オクチルオキシ基、1-メチルヘプチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、2-プロピルペンチルオキシ基、2,2-ジメチルヘプチルオキシ基、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基などの分枝状のアルコキシ基が挙げられる。
【0050】
炭素数1~10のアルキルアミノ基の例としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基などが挙げられる。
【0051】
炭素数2~10のジアルキルアミノ基の例としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-イソブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基などが挙げられる。
【0052】
炭素数2~19のアシル基の例としては、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖のアシル基であり、例えば、アセチル基、プロパノイル基(プロピオニル基)、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、ペンタノイル基(バレリル基)、イソペンタノイル基(イソバレリル基)、sec-ペンタノイル基(2-メチルブチリル基)、t-ペンタノイル基(ピバロイル基)、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、t-オクタノイル基(2,2-ジメチルヘキサノイル基)、2-エチルヘキサノイル基、ノナノイル基、イソノナノイル基、デカノイル基、イソデカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、ウンデシレノイル基およびオレオイル基等が挙げられる。
【0053】
炭素数2~19のアルコキシカルボニル基の例としては、直鎖状若しくは分岐状であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、n-ウンデシルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボニル基、n-トリデシルオキシカルボニル基、n-テトラデシルオキシカルボニル基、n-ペンタデシルオキシカルボニル基、n-ヘキサデシルオキシカルボニル基などの直鎖状のアルコキシカルボニル基:1-メチルペンチルオキシカルボニル基、4-メチル-2-ペンチルオキシカルボニル基、3,3-ジメチルブチルオキシカルボニル基、2-エチルブチルオキシカルボニル基、1-メチルヘキシルオキシカルボニル基、t-オクチルオキシカルボニル基、1-メチルヘプチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、2-プロピルペンチルオキシカルボニル基、2,2-ジメチルヘプチルオキシカルボニル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシカルボニル基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシカルボニル基、1-メチルデシルオキシカルボニル基、1-ヘキシルヘプチルオキシカルボニル基などの分枝状のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0054】
(r
本発明の一実施形態において、上述のとおり、rは、水素原子またはメチル基である。かかる実施形態において、トランス-シス異性化した際に、流動性が高く、定着性に優れるとの観点から、水素原子であることが好ましい。
【0055】
(A)
本発明の一実施形態において、上述のとおり、Aは、
【0056】
【化10】
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
のいずれかであり、*は、結合点を表し、Gは2価の基であり、R、Z、ZおよびRは、前記一般式(1)における定義と同様である。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記Gは2価の基であれば、特に制限はないが、前記Gは、炭素数1~18の、アルキレン基またはオキシアルキレン基である。かかる実施形態であることによって熱運動性が高く、光溶融性に優れる。本発明の一実施形態において、前記Gは、炭素数2~16のアルキレン基、炭素数3~14のアルキレン基、あるいは、炭素数4~12のアルキレン基である。本発明の一実施形態において、オキシアルキレン基は、-(E-O)-で表され、Eが、炭素数1~18(炭素数2~16、炭素数3~14、あるいは炭素数4~12)のアルキレン基であり、nは、1~3であり、好ましくは1である。
【0062】
本発明の一実施形態において、炭素数1~18のアルキレン基の例としては、炭素数1~18のアルキル基の例として説明した基から水素原子を1つ取り除いた基が好適である。
【0063】
(Z-R
本発明の一実施形態において、前記Aが、前記一般式(1-1)または前記一般式(1-2)で示される場合における、「Z-R」構造は、以下:
【0064】
【化14】
【0065】
の式で表され、この際、X、Y、PおよびQの少なくとも2つは炭素原子であり、残りは、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であり、ただし、XおよびYの少なくとも1つは炭素原子であり、R、R、RおよびRは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子であり、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素原子であり、RおよびRならびにRおよびRはそれぞれ独立してベンゼン環等で縮合環を形成してもよい。
【0066】
本発明の一実施形態において、PおよびQの少なくとも1つが窒素原子であることが好ましく、PおよびQの2つが窒素原子であることがより好ましい。
【0067】
本発明の一実施形態において、RおよびRのいずれも水素原子であることが好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~8のアルキル基、あるいは、炭素数4~6のアルキル基である。特に、炭素数4以上のアルキル基であることによって本発明の所期の効果(特にトナーに用いたときの定着性向上効果)を効率的に奏する。
【0069】
(-R-Z
本発明の一実施形態において、前記Aが、前記一般式(1-3)または前記一般式(1-4)で示される場合における、「-R-Z」構造は、以下:
【0070】
【化15】
【0071】
の式で表され、この際、X、Y、PおよびQの少なくとも2つは炭素原子であり、残りは、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であり、ただし、XおよびYの少なくとも1つは炭素原子であり、RおよびRは炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子であり、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素原子であり、RおよびRの一方は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位等の重合性基由来の構造または前記Gと結合する単結合であり、もう一方は炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子である。
【0072】
本発明の一実施形態において、PおよびQの少なくとも1つが窒素原子であることが好ましく、PおよびQの2つが窒素原子であることがより好ましい。
【0073】
本発明の一実施形態において、RおよびRのいずれも水素原子であることが好ましい。
【0074】
本発明の一実施形態において、RおよびRの一方は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位等の重合性基由来の構造またはGと結合する単結合であり、もう一方は水素原子であることが好ましい。
【0075】
かような実施形態であることによって本発明の所期の効果(特に定着性向上効果)を効率的に奏する。
【0076】
本発明の一実施形態において、前記Aが、前記一般式(1-1)または前記一般式(1-2)で示され、この際「Z-R」構造が、以下:
【0077】
【化16】
【0078】
の式で表され、この際、X、Y、PおよびQの少なくとも2つは炭素原子であり、残りは、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であり、ただし、XおよびYの少なくとも1つは炭素原子であり、R、R、RおよびRは、R、R、RおよびRがX、Y、PおよびQの原子価に応じて存在する場合、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子であり、ただし、RおよびRのうち炭素原子に結合するもののうち少なくとも1つは水素原子であり、RおよびRならびにRおよびRはそれぞれ独立して縮合環を形成してもよい。かような実施形態であることによって本発明の所期の効果(特に定着性向上効果)を効率的に奏する。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記Pおよび前記Qが窒素原子であり、前記Xおよび前記Yがいずれも炭素原子であり、前記Rおよび前記Rのいずれも水素原子である。
【0080】
本発明の一実施形態において、前記Pおよび前記Qが窒素原子であり、前記Xおよび前記Yがいずれも炭素原子であり、前記Rおよび前記Rのいずれも水素原子であり、前記RおよびRの少なくとも1つ(いずれか1つ)が、炭素数4以上のアルキル基である。かような実施形態であることによって本発明の所期の効果(特に定着性向上効果)を効率的に奏する。
【0081】
本発明の一実施形態において、前記Aが、前記一般式(1-3)または前記一般式(1-4)で示され、この際「-R-Z」構造が、以下:
【0082】
【化17】
【0083】
の式で表され、この際、X、Y、PおよびQの少なくとも2つは炭素原子であり、残りは、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であり、ただし、XおよびYの少なくとも1つは炭素原子であり、RおよびRは、X、Y、PおよびQの原子価に応じて存在する場合、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子であり、ただし、RおよびRのうち炭素原子に結合するもののうち少なくとも1つは水素原子であり、RおよびRの一方は、重合性基由来の構造または前記Gと結合する単結合であり、もう一方は、その一方が価数に応じて存在する場合、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基または水素原子である。かような実施形態であることによって本発明の所期の効果(特に定着性向上効果)を効率的に奏する。
【0084】
本発明の一実施形態において、前記Pおよび前記Qが窒素原子であり、前記Xおよび前記Yがいずれも炭素原子であり、前記Rおよび前記Rのいずれも水素原子であり、前記Rおよび前記Rの一方が、重合性基由来の構造または前記Gと結合する単結合であり、他方は存在しない。かような実施形態であることによって本発明の所期の効果(特に定着性向上効果)を効率的に奏する。
【0085】
<光応答性重合体の製造方法>
本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体:
【0086】
【化18】
【0087】
およびZが、NまたはCHであり、ただし、Z≠Zであり、Rが、芳香族炭化水素構造を含み、Rが、芳香族複素環構造を含み、前記Zに結合する前記芳香族複素環構造における炭素原子に隣接して結合している少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合している、の製造方法が提供される。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体は、重合性基を有する、一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体(モノマー)を調製し、それを従来公知の方法で重合することによって得ることができる。
【0089】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体は、下記式:
【0090】
【化19】
【0091】
【化20】
【0092】
【化21】
【0093】
【化22】
【0094】
のいずれかで示され、ここで、Jは重合性基であり、G、R、Z、ZおよびRは、前記一般式(1)における定義と同様である、のアゾメチン誘導体(モノマー)を調製し、それを従来公知の方法で重合することによって得ることができる。
【0095】
(重合性基を有するアゾメチン誘導体の調製方法の具体例)
重合性基を有する、アゾメチン誘導体の調製は、一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体を準備し、それに重合性基を導入することで行うことができる。
【0096】
例えば、ピラゾール環を含むアゾメチン誘導体を調製する場合、第1段階として、アニリン誘導体と、ピラゾール環を有する化合物としてピラゾールーカルバルデヒド誘導体とを反応させる。この際、原料であるアニリン誘導体またはピラゾールーカルバルデヒド誘導体のいずれかに置換基としてOH基を有する場合、上記OH基の位置に重合性基を容易に導入できる。
【0097】
具体的には、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)等の溶媒中、4-ヒドロキシアニリンと1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを処理し(加熱還流して反応させ)、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶すれば、目的物を得ることができる。
【0098】
【化23】
【0099】
その後、第2段階として、上記中間体Aに対して重合性基を導入する。重合性基を導入する方法も特に制限されない。例えば、上記中間体Aに対して、はじめにリンカーである-O-C1020-を導入する場合は、ハロゲン化アルコール化合物として、例えばCl-C1020-OHを作用させて下記の中間体Bを得る。
【0100】
反応条件としては特に制限されないが、例えばジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中、炭酸カリウムおよびヨウ化カリウムの存在下、好ましくは10℃以上150℃以下の範囲内、より好ましくは50℃以上140℃以下の範囲内、さらに好ましくは、80℃以上130℃以下の範囲内で反応させることが好ましい。なお、炭酸カリウムおよびヨウ化カリウムの添加順番は、炭酸カリウムが先であることが好適であり、炭酸カリウムを添加し、ヨウ化カリウムを添加する前に、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内、より好ましくは0℃以上60℃以下の範囲内、さらに好ましくは、0℃以上40℃以下の範囲内で攪拌を行う。
【0101】
【化24】
【0102】
その後、第3段階として、中間体Bに、重合性基を構成するための化合物、例えば、アクリル酸塩またはメタクリル酸塩を反応させる。これによって光応答性重合体が(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むことになる。この際、反応条件は特に限定されない。例えば公知の有機溶媒中で、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン類の存在下で反応を行うことが好ましい。好ましくは、上記中間体B、三級アミン類、および溶媒を含む混合液を0~10℃に保ちながら、この混合液にアクリル酸塩またはメタクリル酸塩などの重合性基を構成するための化合物を滴下して混合する。その後、混合液を例えば室温で5~10時間程度反応させて、重合性基を有するアゾメチン誘導体を得ることができる。
【0103】
【化25】
【0104】
なお、上記の第1段階において、使用する原料を他の化合物に変更することで、所望の置換基を有するアゾメチン誘導体を得ることができる。同様に、原料であるアニリン誘導体を他のアミノ基を有する芳香族炭化水素化合物、芳香族複素環化合物に変更することで、構造が異なるアゾメチン誘導体を得ることができる。
【0105】
また、第2段階、第3段階で添加する化合物を変化させることで異なる構造の重合性基を有する基を導入することができる。当業者であれば、上記変更を適宜行い、適当な反応条件を選択することで、所望の重合性基を有するアゾメチン誘導体を合成することができる。
【0106】
また、上記の第1段階において、使用する原料を適当に選択することで第2段階を行わずに中間体Aに重合性基を導入することもできる。
【0107】
本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体:
【0108】
【化26】
【0109】
およびZが、NまたはCHであり、ただし、Z≠Zであり、Rが、芳香族炭化水素構造を含み、Rが、芳香族複素環構造を含み、前記Zに結合する前記芳香族複素環構造における炭素原子に隣接して結合している少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合し、ただし、以下の構造の(表1~表8に具体的に開示される)アゾメチン誘導体を除く:
下記化学式(1)で表される、重合性基を有するアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含み、光照射で可逆的に流動化・非流動化する重合体であって、X、Y、Z、Z、R~R10が下記表1で表される重合体:
【0110】
【化27】
【0111】
ここで、表1の「重合性基を有する基」は、下記式(i)~(iv)のいずれかで表される基であり、R~R10のうち、表1中の「重合性基位置」に示される基に相当する:
【0112】
【化28】
【0113】
式(i)~(iv)中、Aは、水素原子またはメチル基であり、Aは、炭素数1~18のアルキレン基であり、Aは、炭素数1~6のアルキレン基である。
【0114】
上記化学式(1)で表される重合性基を有するアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む重合体ブロックを含み、光照射で可逆的に流動化・非流動化するブロック共重合体であって、X、Y、Z、Z、R~R10が下記表2で表される重合体(重合性基を有する基は上記と同様である):
下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体であって、表3に記載される構造単位を有し、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する重合体(rは、水素原子またはメチル基であり、rは、炭素数1~18のアルキレン基である):
【0115】
【化28-1】
【0116】
Aは下記一般式(2)で表されるアゾメチン構造を有する基である:
【0117】
【化28-2】
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
【表7】
【0125】
【表8】
【0126】
【表9】
【0127】
【表10】
【0128】
【表11】

【0129】
【表12】
【0130】
(他の構造単位)
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、前記一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位以外の構造単位(他の構造単位)を含んでもよい。他の構造単位を含む共重合体である場合、共重合体の繰り返し単位の配列形態も特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0131】
上記他の構造単位としては、一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含まないものが好ましく、加熱により軟化する熱可塑性樹脂を構成する構造単位であることがより好ましい。
【0132】
上記他の構造単位としては、共重合体の合成が容易であることから、ビニル系重合性基を有するものであることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、ビニル系重合性基を有するモノマー由来の他の構造単位をさらに含む。具体的には、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オレフィン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体等が用いられ、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、またはオレフィン誘導体に由来する構造単位であることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態において、前記ビニル系重合性基を有するモノマーが、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、およびオレフィン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である。かかる実施形態であることによって本発明の所期の効果を効率的に奏する。
【0133】
スチレン誘導体としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンなどが挙げられる。
【0134】
(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0135】
オレフィン誘導体としては、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、n-ペンテン、3-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。オレフィン誘導体は、直鎖状であっても分岐鎖であってもよく、炭素鎖数も特に限定されない。
【0136】
ビニルエステル誘導体としては、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどが挙げられる。ビニルエーテル誘導体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。ビニルケトン誘導体としては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどが挙げられる。
【0137】
重合体における上記他の構造単位の含有量は特に制限されず、適宜選択されうるが、重合体を構成する全構造単位の合計量100質量%に対して、70質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。本発明の一実施形態において、重合体における上記他の構造単位の含有量は、5質量%以上、15質量%以上でありうる。
【0138】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体の数平均分子量Mnは、特に制限されないが、3000以上、3500以上、4000以上、5000以上、あるいは、10000以上である。本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体の数平均分子量Mnは、特に制限されないが、100000以下、70000以下、50000以下、40000以下、あるいは、30000以下である。重合体の数平均分子量が3000以上であれば、靱性に優れ、トナーとして用いた場合に定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、数平均分子量が100000以下であれば異性化および軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。
【0139】
本発明の重合体の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0140】
(重合体の調製方法)
本発明の重合体の合成方法は特に制限されず、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合など、公知の重合開始剤を使用して、重合性基を有する、一般式(1)で表されるアゾメチン誘導体を単量体として重合する方法が用いられうる。必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0141】
重合開始剤としては、たとえば、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が用いられる。
【0142】
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
【0143】
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
【0144】
連鎖移動剤としては、例えば、ジチオ安息香酸ベンジル、1-フェニルエチルジチオ安息香酸塩、2-フェニルプロプ-2-イルジチオ安息香酸塩、1-アセトキシルエチルジチオ安息香酸塩、ヘキサキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス-(2-(チオベンゾイルチオ)プロプ-2-イル)ベンゼン、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオ安息香酸塩、ジチオ酢酸ベンジル;エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾアート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾアート、t-ブチルジチオベンゾアート、2,4,4-トリメチルペント-2-イルジチオベンゾアート、2-(4-クロロフェニル)プロプ-2-イルジチオベンゾアート、3-および4-ビニルベンジルジチオベンゾアート、S-ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、t-ブチルトリチオペルベンゾアート、2-フェニルプロプ-2-イル4-クロロジチオベンゾアート、2-フェニルプロプ-2-イル1-ジチオナフタラート、4-シアノペンタン酸ジチオベンゾアート、ジベンジルテトラチオテレフタラート、ジベンジルトリチオカーボネート、カルボキシメチルジチオベンゾアートなどが挙げられる。
【0145】
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃であることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2~60時間であることが好ましい。
【0146】
なお、上記一般式(1)で表されるアゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位(他の構造単位)を含む共重合体についても、その調製方法は特に制限されない。
【0147】
例えば、ランダム共重合体を調製する場合は、原料となる単量体として、一般式(1)で表される構造単位を構成するための単量体に加えて、上記他の構造単位を構成するための単量体を、連鎖移動剤、重合開始剤などと混合し、重合反応を行うことで所望の共重合体を得ることができる。他の構造単位を構成するための単量体の具体的な形態は上述した通りである。
【0148】
本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、
下記一般式(3):
【0149】
【化29】
【0150】
で表され、
αは、それぞれ独立して、前記一般式(2)で表される構造単位を含む重合体ブロックであり、
βは、それぞれ独立して、前記一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位を含む重合体ブロックである。かかる実施形態であることによって、アゾメチン誘導体が重合体内でドメインを形成しやすく軟化・溶融を効率的に誘起できるとともに、前記一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位を有することで靭性の高い重合体が得られる。
【0151】
本発明の重合体は高分子化することでアゾメチン構造の部分が光吸収して、光励起・失活過程で放出される熱エネルギーが、結合する繰り返しユニット(構造単位)に伝わること(光熱変換)により溶融または軟化が進行しうる。また、ブロック共重合体を形成することで、アゾメチン構造の部分が重合体内でドメインを形成しやすくなり、軟化・溶融を効率的に誘起すると考えられる。そのため、本発明の効果がより一層顕著に得られうる。
【0152】
重合体ブロックαを構成する、前記一般式(1)で表される構造単位の具体的な形態は上記の通りである。
【0153】
重合体ブロックβを構成する構造単位は、前記一般式(1)におけるアゾメチン構造(R-Z=Z-R)を含まないものである。具体的には、上記のアゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位として説明した形態が好ましく用いられうる。特には、ATRP法、ARGET-ATRP法またはRAFT法などのリビングラジカル重合法によるブロック共重合体の合成に適用する観点から、ビニル系重合性基を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オレフィン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体等が用いられ、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、またはオレフィン誘導体であることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態において、前記光応答性重合体が、前記βが、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、およびオレフィン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む重合体ブロックである。かかる実施形態であることによって靭性の高い重合体が得られるとの技術的効果を有する。
【0154】
一般式(3)で表される重合体に含まれる重合体ブロックαの数平均分子量(合計の数平均分子量)は、特に制限されないが、好ましくは1000以上であり、より好ましくは1000~100000であり、さらに好ましくは1000~70000であり、さらにより好ましくは1000~50000であり、特に好ましくは3000~50000である。重合体ブロックαの合計の数平均分子量が1000以上であれば、トナーとして用いたときに定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、重合体ブロックαの合計の数平均分子量が100000以下であれば軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。ここで、重合体ブロックαの合計の数平均分子量は、一般式(3)で表される重合体が単一の重合体ブロックαを含む場合は当該重合体ブロックαの数平均分子量を指し、複数の重合体ブロックαを含む場合、各重合体ブロックαの数平均分子量の総和を意味する。
【0155】
一般式(3)で表される重合体に含まれる重合体ブロックβの数平均分子量(合計の数平均分子量)は、特に制限されないが、好ましくは1000以上であり、より好ましくは1100~100000であり、さらに好ましくは1500~70000であり、さらにより好ましくは2000~50000であり、特に好ましくは3000~40000である。重合体ブロックβの合計の数平均分子量が1000以上であれば、トナーとして用いたときに定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、重合体ブロックβの合計の数平均分子量が100000以下であれば軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。ここで、重合体ブロックβの合計の数平均分子量は、一般式(3)で表される重合体が単一の重合体ブロックβを含む場合は当該重合体ブロックβの数平均分子量を指し、複数の重合体ブロックβを含む場合、各重合体ブロックβの数平均分子量の総和を意味する。
【0156】
また、一般式(3)で表される重合体の全数平均分子量Mnは、好ましくは3000以上であり、より好ましくは3200~100000であり、さらに好ましくは3300~70000であり、さらにより好ましくは3400~50000であり、特に好ましくは3450~50000である。一般式(3)で表される重合体の全数平均分子量が3000以上であれば、トナーとして用いたときに定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、全数平均分子量が100000以下であれば軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。
【0157】
すなわち、本発明の一実施形態において、光応答性重合体が、前記αの数平均分子量が、1000以上であり、前記βの数平均分子量が、1000以上であり、全数平均分子量が3000以上である。
【0158】
一般式(3)で表される重合体において、重合体ブロックαの合計の数平均分子量と重合体ブロックβの合計の数平均分子量との比は特に制限されないが、軟化溶融のしやすさおよび画像強度の観点から、重合体ブロックαの合計の数平均分子量:重合体ブロックβの合計の数平均分子量の比は、1:20~20:1であることが好ましく、1:15~15:1であることがより好ましい。
【0159】
一般式(3)で表される重合体の全数平均分子量、重合体ブロックαおよびβの合計の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0160】
一般式(3)で表されるブロック共重合体の合成方法は特に制限されず、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合などの公知の方法が用いられうる。中でも、簡便な合成方法として原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、ARGET-ATRP法またはRAFT法といったリビングラジカル重合法が好適に用いられうる。
【0161】
ATRP法を例にとれば、開始剤として、1官能、2官能、3官能、または4官能のハロゲン元素を含む化合物を出発物質にして、重合体ブロックαまたはβの構造単位となるモノマーを触媒下で重合させる、等の方法により行うことができる。
【0162】
モノマーを重合する段階においては、例えば、開始剤、触媒および配位子の存在下で重合体ブロックαまたはβのいずれか一方(ブロック共重合体のコア部分となるブロック)の構造単位となるモノマーを重合してマクロ開始剤を製造する。
【0163】
前記開始剤としては、例えば、2-ブロモイソ酪酸ブチル、2-ブロモイソ酪酸エチル、エチレンビス(2-ブロモイソブチレート)、1,1,1-トリス(2-ブロモイソブチリルオキシメチル)エタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)、α,α’-ジブロモ-p-キシレン、ブロモ酢酸エチル、2-ブロモイソブチリルブロミドまたはこれらの混合物などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0164】
触媒としては銅(I)触媒、鉄(II)触媒などがあり、例えば、Cu(I)Cl、Cu(I)Br、Fe(II)Cl、Fe(II)Brまたはこれらの混合物などを例示することができる。
【0165】
配位子としては公知のものを使用することができるが、2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビビリジル、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビビリジル、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、シクラム(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)、1,4,8,11-テトラメチルシクラム(1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミンなどからなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。
【0166】
上記触媒および配位子の使用量は特に制限されず、従来公知の知見を参照して適宜決定することができる。
【0167】
次に、上記重合により得られたマクロ開始剤を単離して開始剤として用い、再び触媒および配位子の存在下で、重合体ブロックαまたはβの構造単位となるモノマーのうち、マクロ開始剤の合成で使用していない方のモノマーの重合を行う。もしくは、マクロ開始剤の合成でモノマーをほぼすべて消費した段階で、マクロ開始剤を単離せずそのまま、マクロ開始剤の合成で使用していない方のモノマーを追加して、重合を続けてもよい。これらの操作により目的とするブロック共重合体を得ることができる。
【0168】
上記の各反応は、窒素、またはアルゴン等の希ガス類など不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記の各反応は、例えば、25~160℃、好ましくは35~130℃の温度で実行することができる。また、上記の各反応は、溶媒を用いずに行ってもよく、アニソール等の有機溶媒などの溶媒中で行ってもよい。
【0169】
なお、重合体ブロックαまたはβのいずれか一方の構造単位となるモノマーを重合してマクロ開始剤を得る反応と、該マクロ開始剤を他方の重合体ブロックの構造単位となるモノマーと反応させてブロック共重合体を得る反応において、使用する触媒や配位子の種類や使用量、反応時の温度などの条件は同一であっても異なるものであってもよい。
【0170】
<光照射による流動化および可逆的な非流動化>
光照射により本発明の重合体が流動化する際の照射光の波長は、好ましくは280nm以上480nm以下の範囲、より好ましくは300nm以上420nm以下の範囲内、さらに好ましくは330nm以上420nm以下の範囲内である。上記範囲であれば結晶が崩れやすく(光溶融性が良く)なり、定着性がよくなる。また、流動化させる際には、光照射に加え、熱や圧力を加えて流動化を促進させてもよい。上記波長の照射光を照射することにより、熱や圧力を加える場合であっても、より少ない熱や圧力で流動化させることができる。そのため、本発明の重合体をトナーに導入することで、上記波長での定着が可能となり、定着性に優れ、かつ色再現性の高いトナーを得ることができる。
【0171】
なお、上記波長範囲には、可視光の一部が含まれる。そのため、本発明の重合体は、太陽光(自然光)や蛍光灯などの照明による光を受けただけでは流動化せず、かつ出来るだけ照射量及び照射時間を抑えた低コスト条件でより流動化するのが望ましい。かかる観点から、上記重合体が流動化する際の照射光の照射条件としては、照射量は、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲内、より好ましくは0.1J/cm以上100J/cm以下の範囲内、さらに好ましくは、0.1J/cm以上50J/cm以下の範囲内である。
【0172】
化合物を流動化させる際に、光照射とともに、化合物を加熱してもよい。これにより、より低い照射量で流動化させることができる。この際の加熱温度としては、例えば、20℃以上200℃以下の範囲内であり、好ましくは20℃以上150℃以下の範囲内である。
【0173】
一方、本発明の重合体を非流動化(再固化)する条件は、室温(25±15℃の範囲)で放置(自然環境下)が好ましい。この際は、暗所におくのが良いが、自然光や蛍光灯などの可視光を受けていてもよい。非流動化させる過程で、熱を加えるとより好ましい。また光を加えても良い。
【0174】
前記重合体を加熱して非流動化させる場合、加熱温度としては、好ましくは0℃以上200℃以下の範囲内、より好ましくは20℃以上150℃以下の範囲内である。
【0175】
[トナーの構成]
本発明の一実施形態は、本発明の重合体を含む、トナーである。すなわち、本発明は、結着樹脂として、前記光応答性重合体を含む、トナーを提供する。本発明の重合体をトナーに導入することで、光照射により定着可能であり、定着性に優れ、色再現性の高いトナーを得ることができる。なお、トナーとは、トナー母体粒子またはトナー粒子の集合体をいう。トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものであることが好ましいが、トナー母体粒子をそのままトナー粒子として用いることもできる。なお、本発明において、トナー母体粒子、トナー粒子およびトナーを特に区別する必要がない場合、単に「トナー」ともいう。
【0176】
トナー中の前記重合体の含有量は、一般式(1)におけるアゾメチン構造(R-Z=Z-R)や他の構造単位の種類によるが、効率的な流動化および画像強度の観点から、トナーを構成する結着樹脂、着色剤、離型剤、本発明の重合体の総量に対して、例えば5~95質量%の範囲である。
【0177】
(他の結着樹脂)
本発明のトナーは、他の結着樹脂をさらに含んでもよい。かかる実施形態であることによって流動化時の粘度を調整でき、画像強度を高めることができる。結着樹脂は、他のアゾメチン誘導体に由来する構造を有しない樹脂、すなわち、アゾメチン構造(R-Z=Z-R)を含まない樹脂であって、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。結着樹脂としては、たとえば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、およびエポキシ樹脂などが用いられうる。これら結着樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0178】
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。かかる実施形態であることによって画像強度を高めることができる。
【0179】
(スチレンアクリル樹脂)
本発明でいうスチレンアクリル樹脂とは、少なくとも、スチレン単量体に由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位とを含む重合体である。ここで、スチレン単量体とは、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
【0180】
スチレン単量体の例としては、前述の重合体を構成しうるスチレン単量体と同様のものが挙げられる。
【0181】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体における(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を意味する。
【0182】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0183】
スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体は、それぞれ単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0184】
スチレンアクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構造単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有量は、特に限定されず、結着樹脂の軟化点やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整されうる。具体的には、スチレン単量体に由来する構造単位の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する全構造単位に対して40~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有量は、全構造単位に対して5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
【0185】
スチレンアクリル樹脂の含有比率は、全樹脂に対して5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
【0186】
スチレンアクリル樹脂は、必要に応じて、スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構造単位をさらに含んでもよい。他の単量体の例としては、ビニル単量体が挙げられる。以下に、本発明でいうスチレンアクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
【0187】
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレンなど
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど
(5)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなど
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
【0188】
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
【0189】
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0190】
本発明に使用されるスチレンアクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化点温度やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する単量体全体に対し40~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する単量体全体に対し5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0191】
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じてたとえば、n-オクチルメルカプタンなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。油溶性の重合開始剤としては、たとえば、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が用いられる。
【0192】
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0193】
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
【0194】
また、乳化重合法でスチレンアクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などが挙げられる。
【0195】
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃であることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2~12時間であることが好ましい。
【0196】
乳化重合法により形成されるスチレンアクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段、第3段重合)する多段重合法を採用することができる。
【0197】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし、結晶性であってもよい。
【0198】
多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数は、好ましくはそれぞれ2~3であり、より好ましくはそれぞれ2である。すなわち、多価カルボン酸成分は、ジカルボン酸成分を含むことが好ましく、多価アルコール成分は、ジアルコール成分を含むことが好ましい。
【0199】
ジカルボン酸成分としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0200】
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、およびその無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
【0201】
ジオール成分としては、たとえば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0202】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
【0203】
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu))、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0204】
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0205】
本発明のトナーが本発明の重合体に加えて結着樹脂を含む場合、前記重合体と結着樹脂との含有割合は特に制限されない。
【0206】
トナーのガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性などの観点から、25~100℃であることが好ましく、30~80℃であることがより好ましい。トナーのガラス転移温度(Tg)は、重合体の分子量、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位を含む場合はその種類や含有量などによって調整することができる。トナーが結着樹脂を含む場合は、さらに上記重合体と結着樹脂との含有比率や、結着樹脂の種類、および分子量などによって調整することができる。
【0207】
ポリエステル樹脂の含有比率は、全樹脂に対して5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
【0208】
なお、本発明のトナーは、単層構造を有する粒子であってもよいし、コアシェル構造を有する粒子であってもよい。コアシェル構造のコア粒子およびシェル部に用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
【0209】
<着色剤>
本発明のトナーは、着色剤をさらに含んでいてもよい。本発明の重合体は著しい着色がないため、着色剤の色再現性の高いトナーを得ることができる。着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
【0210】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックが含まれる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0211】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
【0212】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
【0213】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同15:3、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
【0214】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0215】
着色剤の含有量は、外添剤の添加前のトナー粒子(トナー母体粒子)中0.5~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0216】
<離型剤>
本発明に係るトナーは、離型剤をさらに含んでもよい。離型剤をトナーに導入することで、光照射と共に熱定着を行う場合に、より定着性に優れ色再現性の高いトナーを得ることができる。
【0217】
使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィンワックス、合成エステルワックスなどが挙げられる。中でも、トナーの保存安定性を向上させる観点から、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0218】
離型剤の含有量は、トナー母体粒子中1~30質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。
【0219】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤および負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0220】
荷電制御剤の含有量は、トナー母体粒子中0.01~30質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0221】
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明に係るトナーを構成してもよい。
【0222】
外添剤としては、たとえば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。必要に応じてこれらの無機粒子は疎水化処理されていてもよい。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0223】
これらの中でも、外添剤としては、例えば、ゾルゲルシリカ粒子や、表面を疎水化処理したシリカ粒子(疎水性シリカ粒子)または酸化チタン粒子(疎水性酸化チタン粒子)が好ましく、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用することがより好ましい。
【0224】
外添剤の数平均一次粒子径は、1~200nmの範囲内であることが好ましく、10~180nmであることがより好ましい。2種以上の外添剤を組み合わせて使用するときは、外添剤の少なくとも1種は30nm以上180nm以下であることが特に好ましい。
【0225】
これら外添剤の添加量は、トナー中0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
【0226】
本発明の一実施形態において、これら外添剤の添加量は、トナー母体粒子に対して、05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
【0227】
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径(およびトナー母体粒子の平均粒径)は、体積基準のメジアン径(D50)で4~20μmであることが好ましく、5~15μmであることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記範囲にあると、転写効率が高くなり、ハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0228】
体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出することができる。
【0229】
具体的には、測定試料(トナー、またはトナー母体粒子)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、分散液を調製する。この分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
【0230】
ここで、表示濃度を上記範囲にすることで、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0231】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は特に制限されない。例えば、本発明の重合体のみでトナーとする場合は、前記重合体を、ハンマーミル、フェザーミル、カウンタージェットミルなどの装置を用いて粉砕した後、スピンエアーシーブ、クラッシール、マイクロンクラッシファイアーなどの乾式分級機を用いて所望の粒径になるように分級することを含む製造方法を用いることができる。着色剤をさらに含むトナーを製造する場合は、本発明の重合体および着色剤がともに溶解する溶媒を用いて、前記重合体および着色剤を溶解させて溶液とした後、脱溶媒し、その後上記と同様の方法で、粉砕・分級することができる。
【0232】
特には、本発明の重合体ならびに必要に応じて結着剤および着色剤を含むトナーは、粒径および形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法により製造することが好ましい。
【0233】
かような製造方法は、
(1A)必要に応じて、結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)本発明の重合体の粒子の分散液を調製する重合体粒子分散液調製工程
(1C)必要に応じて、着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(2)重合体粒子、ならびに必要に応じて結着樹脂粒子および着色剤粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集および融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー母体粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。
【0234】
以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
【0235】
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
【0236】
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、たとえば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、あるいは結晶性樹脂を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
【0237】
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(たとえば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
【0238】
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmであることが好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0239】
(1B)重合体粒子分散液調製工程
この重合体粒子分散液調製工程は、本発明の重合体を、水系媒体中に微粒子状に分散させて、前記重合体の粒子の分散液を調製する工程である。
【0240】
前記重合体の粒子の分散液を調製するにあたり、まず、前記重合体の乳化液を調製する。前記重合体の乳化液は、例えば有機溶媒に前記重合体を溶解させた後、得られた溶液を水系媒体中で乳化させる方法が挙げられる。
【0241】
前記重合体を有機溶媒に溶解させる方法は、特に制限されず、たとえば、前記重合体を有機溶媒に添加して、前記重合体が溶解するように攪拌混合する方法が挙げられる。前記重合体の添加量は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下、より好ましくは10質量部以上50質量部以下である。
【0242】
次に、得られた前記重合体の溶液と水系媒体とを混合し、ホモジナイザーなどの公知の分散機を用いて攪拌する。これにより、前記重合体が液滴となって、水系媒体中に乳化され、前記重合体の乳化液が調製される。
【0243】
前記重合体の溶液の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは10質量部以上110質量部以下である。
【0244】
前記重合体の溶液と水系媒体との混合時における、前記重合体の溶液および水系媒体の温度は、それぞれ有機溶媒の沸点未満となる温度範囲であって、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは30℃以上75℃以下である。前記重合体の溶液と水系媒体の混合時における、前記重合体の溶液の温度と水系媒体の温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いに同一である。
【0245】
分散機の攪拌条件は、例えば攪拌容器の容量が1~3Lである場合、回転数は7000rpm以上20000rpm以下であることが好ましく、攪拌時間は10分以上30分以下であることが好ましい。
【0246】
前記重合体の粒子の分散液は、前記重合体の乳化液から有機溶媒を除去することによって調製される。前記重合体の乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、たとえば、送風、加熱、減圧、またはこれらの併用など、公知の方法が挙げられる。
【0247】
一例として、前記重合体の乳化液は、たとえば、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、好ましくは25℃以上90℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下で、たとえば初期の有機溶媒量の80質量%以上95質量%以下が程度が除去されるまで、(例えば、20~150分)加熱されることにより、有機溶媒が除去される。これにより、水系媒体から有機溶媒が除去されて、前記重合体の粒子が水系媒体中に分散された前記重合体の粒子の分散液が調製される。
【0248】
前記重合体の粒子の分散液中の前記重合体の粒子の質量平均粒径は、90nm以上1200nm以下であることが好ましい。上記質量平均粒径は、前記重合体を有機溶媒に配合したときの粘度、前記重合体の溶液と水系媒体との配合割合、前記重合体の乳化液を調製するときの分散機の攪拌速度などを適宜調節することにより、上記範囲内に設定することができる。前記重合体の粒子の分散液中の前記重合体の粒子の質量平均粒径は、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)または電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0249】
<有機溶媒>
本工程で用いられる有機溶媒は、前記重合体を溶解させることができれば、特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0250】
このような有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
【0251】
<水系媒体>
本工程で用いられる水系媒体は、水、または水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体などが挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
【0252】
界面活性剤としては、たとえば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、たとえば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
【0253】
このような界面活性剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
【0254】
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、固形分で、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.04質量部以上1質量部以下である。
【0255】
(1C)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0256】
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10~300nmであることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0257】
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
【0258】
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、たとえばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0259】
[現像剤]
本発明に係るトナーは、たとえば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
【0260】
上記磁性体としては、たとえば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、または各種フェライトなどを使用することができる。
【0261】
二成分現像剤に含まれるキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
【0262】
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアであってもよいし、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散させた樹脂分散型キャリアであってもよい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂またはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリア粒子を構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、たとえば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0263】
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmであることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0264】
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%であることが好ましい。
【0265】
[画像形成方法]
本発明のトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。たとえば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
【0266】
すなわち、本発明の一実施形態による画像形成方法は、1)記録媒体上に本発明のトナーからなるトナー像を形成する工程と、2)前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む。かかる実施形態であることによって定着性に優れ、さらに高画質となる。
【0267】
1)の工程について
本工程では、本発明のトナーからなるトナー像を、記録媒体上に形成する。
【0268】
(記録媒体)
記録媒体は、トナー画像を保持するための部材である。記録媒体の例としては、普通紙、上質紙、アート紙、コート紙などの塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用または包装材用の樹脂フィルム、および布などが挙げられる。
【0269】
記録媒体は、所定の大きさを有するシート状(枚葉状)であってもよいし、トナー像が定着された後にロール状に巻き取られる長尺状であってもよい。
【0270】
トナー像の形成は、後述するように、例えば感光体上のトナー像を記録媒体上に転写することにより行うことができる。
【0271】
2)の工程について
本工程では、形成されたトナー像に光を照射してトナー像を軟化させる。これにより記録媒体上にトナー像を接着させることができる。
【0272】
照射する光の波長は、トナー中の前記重合体による光熱変換などにより、トナー像を十分に軟化させうる程度であれば特に制限されないが、好ましくは280nm以上480nm以下である。上記範囲であればトナー像をより効率的に軟化させることができる。また、光の照射量は、同様の観点から、好ましくは0.1~200J/cm、より好ましくは0.1~100J/cm、さらに好ましくは0.1~50J/cmである。
【0273】
光の照射は、後述するように、例えば発光ダイオード(LED)やレーザー光源などの光源を用いて行うことができる。また、後述のように、光照射とともに加熱をさらに行ってもよい。
【0274】
2)の工程の後、必要に応じて、3)軟化させたトナー像を加圧する工程をさらに行ってもよい。かかる実施形態であることによって定着性が向上する。
【0275】
3)の工程について
本工程では、軟化させたトナー像を加圧する。
【0276】
記録媒体上のトナー像を加圧する際の圧力は、特に限定されないが、0.01~5.0MPaであることが好ましく、0.05~1.0MPaであることがより好ましい。圧力を0.01MPa以上とすることで、トナー像の変形量を大きくしうるため、トナー像と記録用紙Sとの接触面積が増加し、画像の定着性をさらに高めやすい。また、圧力を5.0MPa以下とすることで、加圧時のショックノイズを抑制できる。
【0277】
当該加圧工程は、光照射し、トナー像を軟化させる工程(前述の2)の工程)の前または同時に行ってもよいが、光照射した後に行うほうが、あらかじめ軟化した状態のトナー像に加圧することができ、この結果、画像の定着性がより向上するため好ましい。
【0278】
また、加圧する工程において、軟化させたトナー像をさらに加熱してもよい。すなわち、加圧工程は、トナー像を加熱しながら行ってもよい。その際の温度(例えば、加圧部材の温度)は、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、20℃超がさらに好ましく、30℃以上がよりさらに好ましく、40℃以上がよりさらに好ましい。かかる実施形態であることによって定着性が顕著に向上する。上限としては特に制限はないが、例えば、200℃以下、150℃以下、あるいは、100℃以下である。
【0279】
トナー像の加熱温度(加熱時のトナー像の表面温度)は、トナーのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg+20)~(Tg+100)℃であることが好ましく、(Tg+25)~(Tg+80)℃であることがより好ましい。トナー像の表面温度が(Tg+20)℃以上であれば、加圧によってトナー像を変形させやすく、(Tg+100)℃以下であれば、ホットオフセットを抑制しやすい。なお、ホットオフセットとは、定着工程において、ローラーなどの加圧部材にトナーの一部が転移してしまい、トナー層が分断してしまう現象をいう。
【0280】
また、2)の工程の前に、必要に応じて4)予めトナー像を加熱する工程をさらに行ってもよい。このように、2)の工程の前に4)予めトナー像を加熱する工程をさらに行うことで、本発明の重合体の光に対する感受性をより高めることができる。それにより、高分子であっても光に対する感受性は損なわれにくいため、光照射によるトナー像の溶融または軟化を促進しやすい。
【0281】
本発明の画像形成方法は、例えば以下の画像形成装置を用いることにより行うことができる。
【0282】
図1は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態および図示例に限定されるものではない。図1には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【0283】
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71および自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、照射部40、および圧着部9により画像形成を行う。
【0284】
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
【0285】
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
【0286】
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙Sまたは手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
【0287】
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5およびクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
【0288】
像担持体である感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図1中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
【0289】
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。露光器3は、レーザーダイオード等のビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
【0290】
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向し、トナー像を記録用紙Sに転写する。クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
【0291】
トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により圧着部9へ搬送される。圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91および92によって圧力のみまたは熱および圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
【0292】
また、画像形成装置100は用紙反転部24を備えており、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、または表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0293】
<照射部>
図2は、画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
【0294】
本発明の一実施形態による画像形成装置100は、照射部40を備える。照射部40は、光源41と加熱部材93とを備える。光源41を構成する装置の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。
【0295】
光源41は、記録媒体上に形成されたトナー像に光を照射して、トナー像を軟化させる。光照射の条件は、現像剤のトナーに含まれる本発明の組成物を溶融、流動化させるものであれば特に制限されない。トナー像に照射する光の波長は、前記組成物を十分に流動化させうる程度であればよく、好ましくは280nm以上480nm以下の範囲内、より好ましくは300nm以上420nm以下の範囲内、さらに好ましくは330nm以上420nm以下の範囲内である。光源41における光の照射量も、十分に流動化させうる程度であればよく、例えば0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲内、好ましくは0.1J/cm以上100J/cm以下の範囲内、より好ましくは、0.1J/cm以上50J/cm以下の範囲内である。
【0296】
光源41によりトナー像に光を照射してトナー像を軟化させる際に、光照射とともに、加熱部材93によりトナー像を加熱してもよい。これにより、より効率的にトナー像の軟化、溶融が進行しうる。この際の加熱温度としては、例えば、20℃以上200℃以下の範囲内であり、好ましくは20℃以上150℃以下の範囲内である。
【0297】
軟化した前記トナー像に対して、室温(25±15℃の範囲)で放置する、加熱する、または可視光照射することで、前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させることができる。なお、後述のように、定着させる工程においては、軟化した前記トナー像を加圧する工程をさらに含むことが好ましい。前記加圧する工程では、軟化した前記トナー像をさらに加熱することが好ましい。
【0298】
光源41はトナー像を保持する記録用紙Sにおける感光体側の第1面に向かって光を照射するものであり、感光体1と転写部である転写ローラー5とにニップされた記録用紙S面に対して感光体側に配置されている。そして、記録用紙S面に対して、光源41と反対側に加熱部材93が配置されている。また、記録用紙Sの搬送方向(用紙搬送方向)に沿って、光源41および加熱部材93が配置されている。
【0299】
光源41および加熱部材93は、感光体1と転写ローラー5とのニップ位置に対して、用紙搬送方向下流側、かつ圧着部9に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。
【0300】
本発明の一実施形態による画像形成方法によれば、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。次に現像部4により本発明の組成物を含むトナーを有する現像剤を感光体1上に供給する。
【0301】
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写部である転写ローラー5の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写ローラー5に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写ローラー5と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
【0302】
また、転写部5は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写しながら、トナー像を確実に記録用紙Sに密着させることができる。
【0303】
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
【0304】
トナー像が転写された記録用紙Sが搬送ベルト13により圧着部9に搬送される過程において、光源41は、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して光を照射する。光源41により記録用紙Sの第1面上のトナー像に向かって光を照射することにより、トナー像をより確実に溶融させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性を向上させることができる。
【0305】
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、加圧部材91および92が、トナー像を記録用紙Sの第1面に圧着する。圧着部9により定着処理が施される前に、トナー像が光源41による光照射により軟化するため、記録用紙Sに対する画像圧着の省エネルギー化を図ることができる。さらに、トナー像を固化させ記録媒体に定着させる工程において、トナー像を加圧部材91、92により加圧することで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより向上する。
【0306】
トナー像を加圧する際の圧力は、前述の通りである。なお、該加圧工程は、光を照射して、トナー像を軟化させる工程の前または同時に行ってもよい、後に行ってもよい。あらかじめ軟化した状態のトナー像に加圧することができ、画像強度を高めやすい観点では、加圧工程は、光照射後に行うほうが好ましい。
【0307】
また、加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91および92の間を通過する際に、記録用紙S上のトナー像を加熱することができる。光照射によって軟化したトナー像は、この加熱によりさらに軟化され、その結果、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより向上する。
【0308】
トナー像の加熱温度は、前述の通りである。トナー像の加熱温度(トナー像の表面温度)は、非接触温度センサーにて測定することができる。具体的には、たとえば、加圧部材から記録媒体が排出される位置に非接触温度センサーを設置して、記録媒体上のトナー像の表面温度を測定すればよい。
【0309】
加圧部材91および92によって圧着されたトナー像は、固化されて記録用紙S上に定着される。
【0310】
本発明の一実施形態において、定着装置は、加圧部材を備える圧着部を有する。
【0311】
本発明の一実施形態において、前記加圧部材は加熱手段を有する。
【0312】
本発明の一実施形態において、前記加圧部材の温度は、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、20℃超がさらに好ましく、30℃以上がよりさらに好ましく、40℃以上がよりさらに好ましい。上限としては特に制限はないが、例えば、200℃以下、150℃以下、あるいは、100℃以下である。
【0313】
<光応答性接着剤、光スイッチング材料>
本発明の重合体は光照射により流動化し、可逆的に非流動化するため、本発明の重合体を用いて繰り返しの利用が可能な光応答性接着剤(感光性接着剤)、光スイッチング材料を作製することができる。例えば、粘度(摩擦係数)の変化に対応して、繰り返しの光脱着可能な光応答性接着剤として各種の接着技術に応用することが可能である。すなわち、本発明の一実施形態は、本発明の重合体を含む、光応答性接着剤または光スイッチング材料である。
【0314】
本発明の光応答性接着剤は、繰り返しの利用が可能な仮止めに使えるほか、リサイクル利用にも適しているが、これらに何ら制限されるものではない。
【実施例
【0315】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0316】
<アゾメチン誘導体モノマー12の合成>
【0317】
【化30】
【0318】
100mlの4頭フラスコに、4-アミノフェノール(5g、0.046mol)と1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒド(5.1g、0.046mol)とエタノール100mlとを投入し、加熱攪拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールで再結晶を行い、目的物1を得た。
【0319】
【化31】
【0320】
次いで、200mlの4頭フラスコにおいて、上記で得られた目的物1(4.6g、0.023mol)を、ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させた。これに、炭酸カリウム4.88g(0.035mol)を加え、30℃に保ちながら撹拌した。これに、ヨウ化カリウム10.2mg(0.06mmol)、10-クロロ-1-デカノール(5.0g、0.026mol)を添加し、110℃で反応させた。これを、室温まで冷却し、650gの氷に添加した後、ろ過した。結晶を水400mlに分散させ、一晩攪拌して洗浄し、ろ過して乾燥させた。さらに、エタノールにて再結晶を行い、目的物2を得た。
【0321】
【化32】
【0322】
次に、100mlの4頭フラスコに、上記で得られた目的物2(3.6g、0.01mol)、トリエチルアミン1.34ml(0.01mol)およびジクロロメタン30mlを投入した。この時、原料は分散状態であった。内温を0℃に保ちながら、アクリル酸クロライド1.0g(0.011mol)をジクロロメタン10mlに溶かした溶液を、内温を0~5℃を保ちながら滴下した。滴下していくと、原料は溶解した。
【0323】
滴下終了後、反応液を室温に戻して攪拌を行った。反応終了後、ジクロロメタンを濃縮して除去し、酢酸エチルに溶解して、希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥させた後、濃縮した。得られたオレンジ色の結晶をシリカゲルカラム(酢酸エチル/へプタン=1/5)にて精製し、アゾメチン誘導体モノマー12を得た。
【0324】
<アゾメチン誘導体モノマー1の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを5-メチルチオフェン-2-カルボキシアルデヒドに変更し、アゾメチン誘導体モノマー1を合成した。
【0325】
<アゾメチン誘導体モノマー2の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを5-ヘキシルチオフェン-2-カルボキシアルデヒド、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー2を合成した。
【0326】
<アゾメチン誘導体モノマー3の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを5-メチルフラン-2-カルボキシアルデヒド、4-アミノフェノールを4-アミノベンゼンヘキサノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー3を合成した。(当該合成方法であれば、目的物2を得る工程が省略される。)
<アゾメチン誘導体モノマー4の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを2-ホルミル-1-メチルピロール、10-クロロ-1-デカノールを8-クロロ-1-オクタノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー4を合成した。
【0327】
<アゾメチン誘導体モノマー5の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシアルデヒドに変更し、アゾメチン誘導体モノマー5を合成した。
【0328】
<アゾメチン誘導体モノマー6の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-メチルピラゾール-5-カルボキシアルデヒドに変更し、アゾメチン誘導体モノマー6を合成した。
【0329】
<アゾメチン誘導体モノマー7の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-メチルイミダゾール-4-カルボキシアルデヒドに変更し、アゾメチン誘導体モノマー7を合成した。
【0330】
<アゾメチン誘導体モノマー8の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-メチルイミダゾール-5-カルボキシアルデヒドに変更し、アゾメチン誘導体モノマー8を合成した。
【0331】
<アゾメチン誘導体モノマー9の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを5-ブチルチオフェン-2-カルボキシアルデヒドに、4-アミノフェノールを6-アミノナフタレン-2-オールに、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー9を合成した。
【0332】
<アゾメチン誘導体モノマー10の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキシアルデヒドに、4-アミノフェノールを4-ヒドロキシー4’-アミノビフェニルに、10-クロロ-1-デカノールを4-クロロ-1-ブタノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー10を合成した。
【0333】
<アゾメチン誘導体モノマー11の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを3-ホルミル-1-メチルピロール、10-クロロ-1-デカノールを8-クロロ-1-オクタノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー11を合成した。
【0334】
<アゾメチン誘導体モノマー13の合成>
1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-ブチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒド、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー13を合成した。
【0335】
<アゾメチン誘導体モノマー14の合成>
4-アミノフェノール、1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを5-メチル-2-チエニルアミン、4-ヒドロキシー2,6-ジメチルベンズアルデヒドに変更し、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー14を合成した。
【0336】
<アゾメチン誘導体モノマー15の合成>
アクリル酸クロライドをメタクリル酸クロライドに変更し、アゾメチン誘導体モノマー12と同様にアゾメチン誘導体モノマー15を得た。
【0337】
<アゾメチン誘導体モノマー16の合成>
4-アミノフェノール、1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを、5-ヒドロキシチオフェン-2-カルボキシアルデヒド、2-アミノナフタレンに変更し、10-クロロ-1-デカノールを4-クロロ-1-ブタノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー16を合成した。
【0338】
<アゾメチン誘導体モノマー17の合成>
4-アミノフェノール、1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを、5-ヒドロキシチオフェン-2-カルボキシアルデヒド、2-フェナントレンアミンに変更し、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更し、アゾメチン誘導体モノマー17を合成した。
【0339】
<アゾメチン誘導体モノマー18の合成>
4-アミノフェノールを4-ブトキシ-1,1’-ビフェニル-4-アミンに変更し、1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを1-ヒドロキシピラゾール-4-カルボアルデヒドに変更し、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更しアゾメチン誘導体モノマー18を合成した。
【0340】
<アゾメチン誘導体モノマー19の合成> 比較例
4-アミノフェノールを1,3-ジメチル-1-ピロール-2-アミンに変更し、1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルバルデヒドを4-ヒドロキシベンズアルデヒドに変更し、10-クロロ-1-デカノールを6-クロロ-1-ヘキサノールに変更した以外は、アゾメチン誘導体モノマー12と同様にして、アゾメチン誘導体モノマー19を合成した。
【0341】
<アゾベンゼン誘導体モノマーの合成> 比較例
特開2014-191078号公報の段落0217~0227に記載の方法で、以下の比較化合物1(数平均分子量Mn:2870)を得た。
【0342】
【化33】
【0343】
<重合体1>
100mlの4頭フラスコにおいて、上記で得られたアゾメチン誘導体モノマー1を1.8g(4.21mmоl)、4-シアノペンタン酸ジチオベンゾアートを5mg(0.023mmоl)およびAIBNを1mg(0.006mmоl)を、アニソール4mlに溶解させた。
【0344】
そして、凍結脱気によりアルゴンガス雰囲気にした後、75℃に昇温し、8時間攪拌することで重合させた。得られたポリマー溶液に、メタノール40mlを徐々に滴下した後、THFを加えて、未反応のアゾメチン誘導体モノマー1を除去した。分取したポリマー溶液は、40℃の真空乾燥炉内にて24時間乾燥させて、アゾメチン誘導体含有重合体1を得た。得られた重合体1の数平均分子量MnをGPC法で測定したところ15000であった。
【0345】
なお、GPCによる分子量分布の測定は、以下のように行った。
【0346】
すなわち、装置「HLC-8220」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出した。検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、10点の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成した。また、検出器には屈折率検出器を用いた。
【0347】
数平均分子量Mnは、上記のとおりにGPCによって測定した分子量分布を示すクロマトグラムより算出した。
【0348】
<重合体粒子分散液1の調製>
ジクロロメタン80質量部と、上記で得られた重合体1を20質量部とを、50℃で加熱しながら混合攪拌し、重合体1を含む溶液を得た。得られた溶液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間攪拌して乳化させ、重合体1の乳化液を得た。
【0349】
得られた乳化液をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱攪拌して有機溶媒を除去して、重合体粒子分散液1を得た。重合体粒子分散液1中の重合体粒子の粒径を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で185nmであった。
【0350】
(ブラック着色剤粒子分散液(Bk-1)の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)320質量部を当該溶液に徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、ブラック着色剤粒子分散液(Bk-1)を調製した。ブラック着色剤粒子分散液(Bk-1)における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、110nmであった。
【0351】
(トナー1の調製)
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、重合体1の粒子分散液480質量部(固形分換算)、及びイオン交換水2000質量部を投入した。その後、150rpmでの撹拌下、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH(25℃換算)を10に調整した。
【0352】
その後、着色剤粒子分散液(Bk-1)24質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、150rpmで撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。この系を3分間放置した後に、200rpmで撹拌下、60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が6.1μmとなった時点で、塩化ナトリウム20質量部をイオン交換水80質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。70℃で1時間攪拌した後、さらに昇温を行い、75℃の状態で加熱攪拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー母体粒子の分散液を得た。
【0353】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子を得た。
【0354】
得られたトナー母体粒子に、疎水性シリカ(数平均一次粒径:12nm)1.5質量%を添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)を用いて混合することにより、トナー1を得た。
【0355】
(トナー2~19)
アゾメチン誘導体モノマーを下記表に記載のものを使用し、重合条件を適宜調整することにより、下記表に記載の分子量である重合体2~19を合成した。なお、下記表中、Aの構造は上記一般式(2)に記載される構造単位におけるAを指す。各重合体は、一般式(2)において、Aが下記表に示される構造であり、重合体1~14、16~19ではrが水素原子であり、重合体15ではrがメチル基である、構造単位を有する。
【0356】
以下、トナー1と同様にしてトナー2~19を得た。
【0357】
(トナー20~23)
・重合体20
重合体1の合成において、アゾメチン誘導体モノマー12を1.2g、スチレンモノマーを0.6gとする以外は同様にして、重合体20を得た。
【0358】
・重合体21~23
重合体20の合成において、スチレンモノマー0.6gを、エチルアクリレート0.6g、n-ブチルメタクリレート0.6g、スチレンモノマー/メチルアクリレート0.3g/0.3gにそれぞれ変更し、重合体21~23を得た。
【0359】
・トナー20~23
重合体20~23を使用し、トナー1と同様の方法でトナー20~23を得た。
【0360】
(トナー24~31)
・重合体24
<マクロ開始剤24の合成>
100mlのナスフラスコにおいて、2,2’-ビピリジル(230mg、1.47mmol)を入れ、窒素雰囲気下のグローブボックス内でさらにCu(I)Br(95mg、0.66mmol)、スチレン(15g、144mmol)、2-ブロモイソ酪酸エチル(35mg、0.18mmol)を加えて密閉した。これを100℃のオイルバスで加熱攪拌した。その後、テトラヒドロフランを適量加え、中性アルミナカラムに通した。これをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製し、マクロ開始剤24を得た。得られたマクロ開始剤24の数平均分子量(β Mn)をGPC法で測定したところ5000であった。
【0361】
<重合体24の合成>
100mlのナスフラスコにおいて、上記で得られたアゾメチン誘導体モノマー12(20g、47mmol)、および上記のマクロ開始剤24(0.92g、0.18mmol)を入れ、窒素雰囲気下のグローブボックス内でさらにCu(I)Cl(29mg、0.29mmol)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(136mg、0.59mmol)、溶媒としてのアニソール(4.9g、41.1mmol)を加えて密閉した。そして、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。その後、クロロホルムを適量加え、塩基性アルミナカラムに通した。これをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製し、重合体24を得た。得られた重合体24の全数平均分子量MnをGPC法で測定したところ17000であった。これより、アゾメチン誘導体に由来する構造単位の数平均分子量(α Mn)を12000と求められる。
【0362】
・トナー24
重合体1に代えて重合体24を用いたこと以外は同様にトナー24を作製した。
【0363】
・重合体25
マクロ開始剤24の調製において、2-ブロモイソ酪酸エチルをα,α’-ジブロモ-p-キシレンに変更し、マクロ開始剤25を得た。重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤25に変更したことを除いては同様にして重合体25を得た。
【0364】
・重合体26
2-ブロモイソ酪酸エチルをエチレンビス(2-ブロモイソ酪酸)(ethylene bis(2-bromoisobutyrate))に変更し、2,2’-ビピリジルを1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミンに変更し、スチレンをアゾメチン誘導体モノマー12に変更し、さらにアニソールを加えた以外は同様な方法でマクロ開始剤26を得た。
【0365】
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤26に変更し、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミンを2,2’-ビピリジルに変更し、アゾメチン誘導体モノマー12をスチレンに変更し、アニソールを除いたこと以外は同様な方法で重合体26を得た。
【0366】
・重合体27
マクロ開始剤24の合成において、2-ブロモイソ酪酸エチルを1,1,1-トリス(2-ブロモイソブチリルオキシメチル)エタンに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤27を得た。
【0367】
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤27に変更した以外は同様な方法で重合体27を得た。
【0368】
・重合体28
マクロ開始剤26の合成において、エチレンビス(2-ブロモイソ酪酸)を1,1,1-トリス(2-ブロモイソブチリルオキシメチル)エタンに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤28を得た。
【0369】
重合体26の合成において、マクロ開始剤26をマクロ開始剤28に変更した以外は同様な方法で重合体28を得た。
【0370】
・重合体29
マクロ開始剤24の合成において、2-ブロモイソ酪酸エチルをペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)に変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤29を得た。
【0371】
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤29に変更した以外は同様な方法で重合体29を得た。
【0372】
・重合体30
マクロ開始剤26の合成において、エチレンビス(2-ブロモイソ酪酸)をペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)に変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤30を得た。
【0373】
重合体26の合成において、マクロ開始剤26をマクロ開始剤30に変更した以外は同様な方法で重合体30を得た。
【0374】
・重合体31
マクロ開始剤25の合成において、スチレンをメチルアクリレートに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤31を得た。重合体25の合成において、マクロ開始剤25をマクロ開始剤31に変更した以外は同様な方法で重合体31を得た。
【0375】
・トナー24-31
重合体1にかえて、重合体24-31にそれぞれ変更し、同様にしてトナー24-31を得た。
【0376】
(トナー32)
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ラウリル硫酸ナトリウム5.0質量部およびイオン交換水2500質量部を入れ、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0377】
次いで、過硫酸カリウム(KPS)15.0質量部をイオン交換水300質量部に溶解させた水溶液を添加し、再度液温80℃とした。その後、スチレン(St)840.0質量部、n-ブチルアクリレート(BA)288.0質量部、メタクリル酸(MAA)72.0質量部およびn-オクチルメルカプタン15質量部からなる単量体混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、体積基準のメジアン径が120nmであるスチレンアクリル樹脂A1粒子の分散液a1を調製した。
【0378】
スチレンアクリル樹脂A1のガラス転移温度(Tg)は52.0℃、重量平均分子量(Mw)は28,000であった。
【0379】
・トナー32
トナー1の調製において、重合体1の粒子分散液480質量部(固形分換算)を、重合体12の粒子分散液336質量部(固形分換算)とスチレンアクリル樹脂A1粒子の分散液a1:144g(質量部)(固形分換算)に変更した以外は同様にして、トナー32を得た。
【0380】
(トナー33)
<非晶性ポリエステル樹脂分散液の調製>
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記組成のモノマーと、下記組成のモノマーの合計100質量部に対して0.25質量部のジオクチル酸スズとを投入した。窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、1時間反応させた。5時間かけて220℃まで昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(B1)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(B1)の重量平均分子量は18000、酸価は17.8mgKOH/gであった。
【0381】
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 50.2質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 249.8質量部
テレフタル酸 82.5質量部
フマル酸 32.0質量部。
【0382】
上記非晶性ポリエステル樹脂(B1)72質量部を、72質量部のメチルエチルケトン中に添加し、30℃で30分撹拌して溶解させた。この油相液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.1質量部を添加して、撹拌器を有する反応容器に入れた。油相液を撹拌しながら、30℃のイオン交換水252質量部を70分間にわたって滴下し、混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後、均一な乳化状態の乳化液を得た。
【0383】
この乳化液を、ダイヤフラム式真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し、60℃に昇温し、15kPa(150mbar)の減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(B1)を調製した。
【0384】
・トナー33
トナー1の調製において、重合体1の粒子分散液480質量部(固形分換算)を、重合体12の粒子分散液336質量部(固形分換算)と非晶性ポリエステル樹脂B1粒子の分散液B1:144g(質量部)(固形分換算)に変更した以外は同様にして、トナー33を得た。
【0385】
(比較例1 トナー)
アゾメチン誘導体モノマー1をアゾメチン誘導体モノマー19に変更した以外は同様に比較トナー1を得た。
【0386】
(比較例2 トナー)
アゾメチン誘導体モノマー1をアゾベンゼン誘導体モノマーに変更した以外は同様に比較トナー2を得た。
【0387】
(現像剤の作製)
上記で作製したトナー1~33、および比較例1、2のトナーについて、シクロヘキサンメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体樹脂(モノマー質量比1:1)で被覆した体積平均粒径が30μmのフェライトキャリア粒子を、トナー粒子濃度が6質量%となるように混合し、現像剤1~33および比較例1、2の現像剤を得た。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
【0388】
[評価:重合体の光応答接着試験]
各実施例で調製した重合体1~33の光照射に伴う接着性の変化を図に示す装置を用いて、以下の光応答接着試験で評価した。図に示すように、18mm角のカバーガラス1に重合体2mgをガラス中心から半径6mm内に載せ、同サイズのカバーガラス2を、カバーガラス1に対して平行方向に約4mmずらした位置で、重合体をすべて覆いかぶせるように被せた。これを加熱し、試料を溶融させ、カバーガラス1とカバーガラス2とを接着させた。得られた各サンプルを下記の非流動性→流動性の試験に供し、その後、下記の流動性→非流動性(戻り)の試験に供した。
【0389】
<非流動性→流動性の試験>
図3に示す(A)部分を台にセロハンテープで固定し、(C)部分には100gのおもりを装着した長さ30cmのビニール紐をセロハンテープで固定した。(B)部分に365nmの光を照射量20J/cmで照射し、カバーガラス2がカバーガラス1から剥がれるかを確認し、下記の評価基準に従って判定した。
【0390】
-非流動性→流動性の試験の評価基準-
〇:カバーガラス2がカバーガラス1から完全に剥がれた
△:カバーガラス2がずれた
×:カバーガラス2は動かなかった。
【0391】
<流動性→非流動性(戻り)の試験>
非流動性→流動性試験終了後、カバーガラス2が完全に剥がれた試料とずれた試料について以下の実験を行った。なお、ずれた試料については、手でカバーガラス1と2をはがした。非流動性→流動性試験の光照射終了5分(5分は、自然環境下、即ち室温暗室で放置した)後に、上記試験で使用したカバーガラス1の試料部分((B)部分)を覆いかぶせるようにカバーガラス3(カバーガラス1、2と同サイズ)をのせ、カバーガラス1とカバーガラス3とが接着するかを確認し、下記の評価基準に従って判定した。
【0392】
-流動性→非流動性(戻り)の試験の評価基準-
〇:接着しなかった(非流動化していた)
△:一部接着した(一部、流動化状態が保たれていた)
×:接着した(流動化状態が保たれていた)。
【0393】
なお、上記流動性→非流動性(戻り)の試験の評価で○であった実施例で調製した重合体については、いずれも非流動性→流動性試験実施後、再固化していることが確認できた。
【0394】
[評価:定着性試験]
定着性試験は、上記で得られた現像剤1~33、比較例1、2の現像剤を用いて、常温常湿環境下(温度20℃、相対湿度50%RH)で行った。一方に現像剤、他方に記録媒体としての用紙(Mondiカラーコピー用紙、坪量:120g/m)を設置した一対の平行平板(アルミ)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量5g/mとなる条件でトナーを現像させ、上記普通紙の表面にトナー層を形成し、各定着装置にて定着して印刷物を得た(画像形成)。この印刷物の1cm角のトナー画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア株式会社製)で50kPaの圧力をかけて15回こすり、画像の定着率を評価した。定着率60%以上を合格とした。なお、画像の定着率とは、印刷後の画像およびこすった後の画像の反射濃度を、蛍光分光濃度計「FD-7」(コニカミノルタ株式会社製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、印刷後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
【0395】
定着装置は、図2に示す装置を適宜改変して構成された下記4種の定着装置を用いた:
No.1:図2の圧着部9がなく、加熱部材93での加熱を行わず、光源41から照射される紫外光の波長は365nmであり(光源:発光波長が365nm±10nmのLED光源)、照射量は12J/cmである;
No.2:図2の圧着部9があり、加熱部材93での加熱を行わず、加圧部材91の温度は20℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量はNo.1と同様である;
No.3:図2の圧着部9があり、加熱部材93での加熱を行わず、加圧部材91の温度は50℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量はNo.1と同様である。
【0396】
No.4:図2の圧着部9がなく、加熱部材93の温度が50℃であり、光源41の波長および照射量はNo.1と同様である。
[色再現性評価]
上記で得られた実施例、比較例の画像について色再現性を、10名のモニターによる目視評価により下記評価基準に従って評価した。具体的には、評価比較用サンプルとして、重合体1をすべてスチレンアクリル樹脂に変更したトナーを作製した。これを用いて上記と同様に現像剤を作製し、上記の定着性試験における画像形成と同様に現像し、下記の定着装置No.5にて定着を行った。
【0397】
定着装置No.5:図2の圧着部9があり、加熱部材93での加熱を行わず、加圧部材91の温度は150℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaであり、光照射は実施しない。
【0398】
10名のモニターに対して、前記評価比較用サンプルと上記の実施例、比較例で得られた画像とを順番に見せ、2つの画像の色が明らかに異なるか質問した。下記色再現性の評価基準による判定結果を下記表3に示す。
【0399】
-色再現性の評価基準-
◎:2名以下が明らかに異なると答えた
○:3~4名が明らかに異なると答えた
△:5~7名が明らかに異なると答えた
×:8名以上が明らかに異なると答えた。
【0400】
【表13-1】
【0401】
【表13-2】
【0402】
【表14-1】
【0403】
【表14-2】
【0404】
【表14-3】
【0405】
【表15-1】
【0406】
【表15-2】
【符号の説明】
【0407】
1 感光体、
2 帯電器、
3 露光器、
4 現像部、
5 転写部、
7 用紙搬送系、
8 クリーニング部、
9 圧着部、
10 画像形成部、
11 給紙部、
12 搬送ローラー、
13 搬送ベルト、
14 排紙部、
15 手差し給紙部、
16 トレイ、
17 温湿度計、
20 画像処理部、
24 用紙反転部、
40 照射部、
41 光源、
71 画像読取装置、
72 自動原稿送り装置、
85 ブレード、
90 制御部、
91、92 加圧部材、
93 加熱部材、
100 画像形成装置、
d 原稿、
S 記録用紙。
図1
図2
図3