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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】自律移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240910BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G05D1/43
B25J13/08 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020135687
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032166
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-024749(JP,A)
【文献】特開2013-212786(JP,A)
【文献】実開平06-072132(JP,U)
【文献】特開2017-068439(JP,A)
【文献】特開2013-244897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動台車の周縁を取り囲むように配置された複数のバンパーと、各々のバンパーに設けられ、アナログ信号を出力する接触センサと、を備える自律移動体であって、
前記自律移動体が前進し、前記自律移動体の前側に第1のバンパーと第2のバンパーとが配置され、前記自律移動体の後側に第3のバンパーと第4のバンパーとが配置された場合、前記第1のバンパーに設けられた接触センサの出力から前記第2のバンパーに設けられた接触センサの出力を差し引くことで段差による振動がキャンセルされた信号を取得し、取得した信号に基づいて周辺物体から前記第1のバンパー又は前記第2のバンパーへの接触を判定し、前記第3のバンパーに設けられた接触センサの出力から前記第4のバンパーに設けられた接触センサの出力を差し引くことで段差による振動がキャンセルされた信号を取得し、取得した信号に基づいて周辺物体から前記第3のバンパー又は前記第4のバンパーへの接触を判定する、自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律移動体に関し、例えば、移動台車の周縁を取り囲むように配置された複数のバンパーと、各々のバンパーに設けられ、アナログ信号を出力する接触センサと、を備える自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
自律移動体は、周辺環境を検出するレーザセンサなどに加えて、周辺物体との接触を検出する接触センサを備えた構成とされている。例えば、特許文献1の自律移動体は、接触センサが移動台車の周縁に沿って配置されたバンパーに設けられた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-204284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、以下の課題を見出した。一般的な自律移動体は、走行時に路面から振動を受ける。このとき、振動によって周辺物体と接触したと、誤判定する可能性があり、接触箇所を正確に判定できない場合がある。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、路面からの振動による誤判定を抑制し、接触箇所を正確に判定可能な自律移動体を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自律移動体は、移動台車の周縁を取り囲むように配置された複数のバンパーと、各々のバンパーに設けられ、アナログ信号を出力する接触センサと、を備える自律移動体であって、
着目しているバンパーに設けられた接触センサの出力から他のバンパーに設けられた接触センサの出力を差し引いた信号に基づいて、周辺物体から前記着目しているバンパーへの接触を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、路面からの振動による誤判定を抑制し、接触箇所を正確に判定可能な自律移動体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の自律移動体の概略的構成を示す図である。
図2】実施の形態の自律移動体のシステム構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態の自律移動体のバンパーの配置を説明するための図である。
図4】実施の形態の自律移動体が周辺物体との接触を判定する際の各接触センサの出力を例示する図である。
図5】第4の接触センサの出力から第1の接触センサの出力を差し引いた信号を示す図である。
図6】第3の接触センサの出力から第2の接触センサの出力を差し引いた信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態の自律移動体の概略的構成を示す図である。図2は、本実施の形態の自律移動体のシステム構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施の形態の自律移動体1は、例えば、所定の場所に移動し、タスクを自律的に行う自律移動ロボットとして構成されている。本実施の形態の自律移動体1は、図1及び図2に示すように、本体2、バンパー3、接触センサ4、レーザセンサ5及び制御装置6を備えている。
【0011】
本体2の下端には、図1に示すように、略円筒状の移動台車21が設けられている。移動台車21は、図示を省略するが、左右の駆動輪、及び従動輪を備えている。左右の駆動輪は、図2に示すモータ22R、22Lによって回転駆動する。
【0012】
モータ22R、22Lには、図2に示すように、エンコーダ23R、23Lが設けられており、エンコーダ23R、23Lによってモータ22R、22Lの回転角速度が検出される。このような自律移動体1は、左右の駆動輪が等しく回転することで前進又は後進し、左右の駆動輪に回転差を生じさせることで右折、左折又は旋回する。
【0013】
本体2には、図1に示すように、物体を把持し移動させることができるロボットアーム24が設けられている。ロボットアーム24は、例えば、複数の関節部を有する多関節型アームとして構成されている。
【0014】
バンパー3は、移動台車21の周縁を取り囲むように複数配置されており、周辺物体(例えば、障害物)との衝突力を吸収する。図3は、本実施の形態の自律移動体のバンパーの配置を説明するための図である。例えば、本実施の形態では、図3に示すように、バンパー3として、第1のバンパー3a、第2のバンパー3b、第3のバンパー3c及び第4のバンパー3dを備えている。
【0015】
移動台車21の所定の位置を0°として、第1のバンパー3aは、移動台車21を上側から見て反時計回りに0°以上であって、且つ、90°未満の範囲に配置されている。第2のバンパー3bは、移動台車21を上側から見て反時計回りに90°以上であって、且つ、180°未満の範囲に配置されている。
【0016】
第3のバンパー3cは、移動台車21を上側から見て反時計回りに180°以上であって、且つ、270°未満の範囲に配置されている。第4のバンパー3dは、移動台車21を上側から見て反時計回りに270°以上であって、且つ、360°未満の範囲に配置されている。但し、バンパー3の個数は、複数個であればよい。
【0017】
接触センサ4は、バンパー3と周辺物体との接触を検出するために、各々のバンパー3に設けられている。そのため、本実施の形態では、図2に示すように、接触センサ4として、第1のバンパー3aに設けられる第1の接触センサ4a、第2のバンパー3bに設けられる第2の接触センサ4b、第3のバンパー3cに設けられる第3の接触センサ4c、及び第4のバンパー3dに設けられる第4の接触センサ4dを備えている。
【0018】
これらの接触センサ4は、バンパー3と周辺物体との接触を検出すると、アナログ信号を制御装置6に出力する。このとき、接触センサ4のアナログ信号は、ローパスフィルターを介して制御装置6に出力されるとよい。接触センサ4は、例えば、バンパー3に埋設された折り曲げ可能なチューブ部材を備えている。
【0019】
そして、周辺物体がバンパー3に接触すると、バンパー3に埋設されたチューブ部材が変形する。このチューブ部材の変形により、チューブ部材内部の圧力が変化する。接触センサ4は、この圧力変化を検出することで、バンパー3と周辺物体との接触を検出する。
【0020】
なお、上述した接触センサ4の構成は一例であり、これに限定されない。接触センサ4は、例えば、光ファイバなどで構成され、その光量変化に基づいて周辺物体との接触を検出してもよい。
【0021】
レーザセンサ5は、本体2に設けられている。レーザセンサ5は、自律移動体1の前方領域に略水平なレーザを照射することで、周辺物体との間の距離を取得する。レーザセンサ5は、取得した周辺物体との間の距離を示す信号を制御装置6に出力する。
【0022】
制御装置6は、自律移動体1を自律移動させて所定のタスクを実現するために、モータ22R、22L及びロボットアーム24を制御する。このとき、レーザセンサ5は、取り付けられた水平面方向にしか周辺物体を検出できず、さらに、周辺物体の検出範囲が前方領域に限られる。
【0023】
このため、レーザセンサ5は、床上の低い周辺物体や、側方領域或いは後方領域にある周辺物体を検出できない。これを補うために、本体2のバンパー3には、上述の如く、周辺物体との接触を検出する接触センサ4が設けられている。
【0024】
制御装置6は、レーザセンサ5によって検出された周辺物体との間の距離を示す信号に加えて、接触センサ4によって検出された周辺物体との接触を示すアナログ信号に基づいて、周辺物体を回避しつつ、自律移動体1を目的位置に自律的に移動させる。これにより、自律移動体1はより確実に周辺物体を回避して移動を行うことができる。このように、接触センサ4は、レーザセンサ5を補う重要な役割を有している。
【0025】
しかしながら、上述のように自律移動体1が走行する際に路面から接触センサ4に振動が伝わり、自律移動体1が周辺物体に接触したと、誤判定する可能性がある。その一方で、バンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値を上げると、誤判定を抑制することはできるが、接触センサ4の反応が鈍くなる。
【0026】
そこで、制御装置6は、着目しているバンパー3の接触センサ4の出力から他のバンパー3の接触センサ4の出力を差し引いた信号に基づいて、周辺物体から着目しているバンパー3への接触を判定する。
【0027】
図4は、本実施の形態の自律移動体が周辺物体との接触を判定する際の各接触センサの出力を例示する図である。ここで、図4のグラフ(a)は第2の接触センサ4bの出力を示し、図4のグラフ(b)は第1の接触センサ4aの出力を示し、図4のグラフ(c)は第4の接触センサ4dの出力を示し、図4のグラフ(d)は第3の接触センサ4cの出力を示す。
【0028】
詳細には、制御装置6は、エンコーダ23R、23Lの検出信号に基づいて、自律移動体1の向き、進行方向などの情報を得ることができる。そして、例えば、自律移動体1が前進しつつ前方の段差を乗り越える場合、前側に配置された第1のバンパー3aの第1の接触センサ4a、及び同じく前側に配置された第4のバンパー3dの第4の接触センサ4dには、略同時に段差を乗り越える際の振動が伝わる。
【0029】
また、後側に配置された第2のバンパー3bの第2の接触センサ4b、及び同じく後側に配置された第3のバンパー3cの第3の接触センサ4cには、略同時に段差を乗り越える際の振動が伝わる。
【0030】
そのため、第4の接触センサ4dの出力から第1の接触センサ4aの出力を差し引いた信号を取得すると、段差による振動をキャンセルした信号を取得することができる。また、第3の接触センサ4cの出力から第2の接触センサ4bの出力を差し引いた信号を取得すると、段差による振動をキャンセルした信号を取得することができる。
【0031】
これにより、段差による振動をキャンセルした後の信号に予め設定されたバンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値以上の出力値が検出された場合、当該出力値が検出された接触センサ4が設けられたバンパー3に周辺物体が接触したと判定することができる。
【0032】
このとき、バンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値は、絶対値であり、当該出力値の正負によって周辺物体が接触したバンパー3に設けられる接触センサ4を特定することができる。
【0033】
そこで、制御装置6は、前側に配置された第4のバンパー3dの第4の接触センサ4dの出力から、同じく前側に配置された第1のバンパー3aの第1の接触センサ4aの出力を、差し引いた信号を取得する。
【0034】
図5は、第4の接触センサの出力から第1の接触センサの出力を差し引いた信号を示す図である。図5に示すように、第4の接触センサ4dの出力から第1の接触センサ4aの出力を差し引いた信号を取得すると、段差による振動がキャンセルされた後の信号を取得することができる。
【0035】
このように段差による振動はキャンセルされるため、バンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値を下げることができる。そのため、接触センサ4の反応を向上させることができる。
【0036】
そして、段差による振動がキャンセルされた後の信号は、バンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値以上の出力値を含まないので、制御装置6は、第1の接触センサ4aが設けられた第1のバンパー3a及び第4の接触センサ4dが設けられた第4のバンパー3dに周辺物体が接触していないと判定する。
【0037】
また、制御装置6は、後側に配置された第3のバンパー3cの第3の接触センサ4cの出力から、同じく後側に配置された第2のバンパー3bの第2の接触センサ4bの出力を、差し引いた信号を取得する。
【0038】
図6は、第3の接触センサの出力から第2の接触センサの出力を差し引いた信号を示す図である。図6に示すように、第3の接触センサ4cの出力から第2の接触センサ4bの出力を差し引いた信号を取得すると、同様に、段差による振動がキャンセルされた後の信号を取得することができる。
【0039】
そして、第3の接触センサ4cの出力から第2の接触センサ4bの出力を差し引いた信号にバンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値以上の正の出力値が含まれているので、制御装置6は、第3の接触センサ4cが設けられた第3のバンパー3cに周辺物体が接触したと判定する。
【0040】
このように本実施の形態の自律移動体1は、着目しているバンパー3の接触センサ4の出力から他のバンパー3の接触センサ4の出力を差し引いて、路面からの振動をキャンセルした後の信号を取得し、当該信号に基づいて、周辺物体から着目しているバンパー3への接触を判定する。そして、接触センサ4が設けられたバンパー3を複数、移動台車21の周縁を取り囲むように配置している。そのため、本実施の形態の自律移動体1は、路面からの振動による誤判定を抑制し、接触箇所を正確に判定可能である。
【0041】
しかも、路面からの振動をキャンセルした後の信号を取得することができるので、バンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値を下げることができる。そのため、接触センサ4の反応を向上させることができる。
【0042】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0043】
例えば、上記実施の形態では、自律移動体1が前進することを前提として、第4の接触センサ4dの出力から第1の接触センサ4aの出力を差し引いた信号を取得し、第3の接触センサ4cの出力から第2の接触センサ4bの出力を差し引いた信号を取得しているが、自律移動体1の動作などに基づいて、差分をとる接触センサ4の組み合わせを適宜、変更することができる。つまり、差し引く接触センサ4の出力は、隣接する接触センサ4の出力に限定されない。また、例えば、自律移動体1にジャイロセンサなどを設け、自律移動体1における段差に乗り上げた位置に基づいて、差分をとる接触センサ4の組み合わせを適宜、変更してもよい。
【0044】
例えば、路面の状況に応じて、バンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値を予め設定することができ、自律移動体1を屋内で移動させる場合は、当該閾値を下げて接触センサ4の反応を敏感にするとよい。
【0045】
例えば、上述のバンパー3が周辺物体に接触したと判定するための閾値(第1の閾値)よりも大きい第2の閾値を予め設定し、差し引かれる前の接触センサ4の出力に第2の閾値以上の出力値を含む場合、上述のような差分を取得して周辺物体に接触したバンパー3を特定する処理を省略して、当該接触センサ4が設けられたバンパー3に周辺物体が接触したと判定してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 自律移動体
2 本体、21 移動台車
3 バンパー(3a 第1のバンパー、3b 第2のバンパー、3c 第3のバンパー、3d 第の4バンパー)
4 接触センサ(4a 第1の接触センサ、4b 第2の接触センサ、4c 第3の接触センサ、4d 第4の接触センサ)
5 レーザセンサ
6 制御装置
22R、22L モータ
23R、23R エンコーダ
24 ロボットアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6