(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】トリガスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/20 20060101AFI20240910BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240910BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01H13/20 A
B25F5/00 B
H01H36/00 A
(21)【出願番号】P 2020152333
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓未
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰基
(72)【発明者】
【氏名】清水 良治
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-157402(JP,A)
【文献】特開2012-245605(JP,A)
【文献】特開2006-120466(JP,A)
【文献】特開2017-143052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0042838(US,A1)
【文献】特許第5115084(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0097641(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03578308(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 36/00 - 36/02
B25F 1/00 - 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、
前記駆動部の駆動モードを切り替える切替操作を受けて動作する切替部材と、
部材の接近を検出するセンサと、
前記切替部材の動作に連動して前記センサに接近又は離隔する切替用被検出部と、
前記センサが検出した前記切替用被検出部の接近状況に応じて、前記駆動部を駆動させる駆動モードを決定する制御部と
を備え、
前記センサは、磁界により、金属体の有無又は位置を検出するセンサであり、
前記切替用被検出部は、金属体である
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項2】
トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、
前記駆動部の駆動モードを切り替える切替操作を受けて動作する切替部材と、
部材の接近を検出するセンサと、
前記切替部材の動作に連動して前記センサに接近又は離隔する切替用被検出部と、
前記トリガの押込に連動して前記センサに接近する駆動用被検出部と、
前記駆動部を制御する制御部と
を備え、
前記センサは、磁界により、金属体の有無又は位置を検出するセンサであり、
前記切替用被検出部及び前記駆動用被検出部は、金属体であり、
前記制御部は、
前記センサが検出した前記切替用被検出部の接近状況に応じて、前記駆動部の駆動モードを決定する決定手段と、
前記センサが、前記駆動用被検出部の接近を検出した場合に、前記決定手段が決定した駆動モードで、前記駆動部を駆動させる駆動手段と
を備える
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載のトリガスイッチであって、
前記トリガの押込操作を検出する押込検出部を備え、
前記押込検出部が押込操作を検出した場合に、前記制御部の前記決定手段は、前記駆動部の駆動モードを決定し、
前記制御部の駆動手段は、前記決定手段が駆動モードを決定した後、前記駆動部を駆動させる
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のトリガスイッチであって、
前記制御部の駆動手段は、
前記センサが検出した前記駆動用被検出部の接近の程度に応じた出力で前記駆動部を駆動させる
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具の動作を制御するトリガスイッチの一種として、切替レバーでモータの回転の正逆を切り替え、トリガを押し込むことでモータを回転させる電動工具スイッチが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているような電動工具スイッチでは、切替レバーによる切り替え、トリガの押し込み等の操作に対して、トリガに連動した摺動子が摺動抵抗の上を摺動するというように、金属接点の摩擦が生じている。金属接点の摩擦は、接点の摩耗による経年劣化に繋がり、故障、動作不良等の異常発生の原因となり得る。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、金属接点の摩耗等に起因する異常発生を抑制することが可能なトリガスイッチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願記載のトリガスイッチは、トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、部材の接近を検出するセンサと、前記トリガの押込に連動して前記センサに接近する駆動用被検出部と、前記センサが、前記駆動用被検出部の接近を検出した場合に、前記駆動部を駆動させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
更に、本願記載のトリガスイッチは、トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、前記駆動部の駆動モードを切り替える切替操作を受けて動作する切替部材と、部材の接近を検出するセンサと、前記切替部材の動作に連動して前記センサに接近又は離隔する切替用被検出部と、前記センサが検出した前記切替用被検出部の接近状況に応じて、前記駆動部を駆動させる駆動モードを決定する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
更に、本願記載のトリガスイッチは、トリガの押込操作を受けて、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、前記駆動部の駆動モードを切り替える切替操作を受けて動作する切替部材と、部材の接近を検出するセンサと、前記切替部材の動作に連動して前記センサに接近又は離隔する切替用被検出部と、前記トリガの押込に連動して前記センサに接近する駆動用被検出部と、前記駆動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記センサが検出した前記切替用被検出部の接近状況に応じて、前記駆動部の駆動モードを決定する決定手段と、前記センサが、前記駆動用被検出部の接近を検出した場合に、前記決定手段が決定した駆動モードで、前記駆動部を駆動させる駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記トリガの押込操作を検出する押込検出部を備え、前記押込検出部が押込操作を検出した場合に、前記制御部の前記決定手段は、前記駆動部の駆動モードを決定し、前記制御部の駆動手段は、前記決定手段が駆動モードを決定した後、前記駆動部を駆動させることを特徴とする。
【0010】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記制御部の駆動手段は、前記センサが検出した前記駆動用被検出部の接近の程度に応じた出力で前記駆動部を駆動させることを特徴とする。
【0011】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記センサは、磁界により、金属体の有無又は位置を検出するセンサであり、前記切替用被検出部及び前記駆動用被検出部は、金属体であることを特徴とする。
【0012】
更に、本願記載のトリガスイッチは、トリガを押し込むことにより、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、部材の位置を検出するセンサを備え、前記センサが検出した部材の位置に基づいて駆動部を駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るトリガスイッチは、センサにより検出した部材の接近状況に基づいて駆動部を駆動させる。従って、摩擦が生じ得る金属接点の使用を抑制するので、金属接点の摩耗に起因する故障、動作不良等の異常発生を抑制することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願記載のトリガスイッチの外観の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本願記載のトリガスイッチの一例を一部破断状態で示す概略斜視図である。
【
図3】本願記載のトリガスイッチの一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
【
図4】本願記載のトリガスイッチの一例を示す概略断面図である。
【
図5A】本願記載のトリガスイッチが備える切替レバー及び付勢部材の外観の一例を示す概略外観図である。
【
図5B】本願記載のトリガスイッチが備える切替レバー及び付勢部材の外観の一例を示す概略外観図である。
【
図6】本願記載のトリガスイッチが備える係合部材の一例を示す概略外観図である。
【
図7】本願記載のトリガスイッチを組み込んだ電動装置が備える制御構成のうち制御部に関連する構成の一例を示す概略ブロック図である。
【
図8】本願記載のトリガスイッチの一例を示す概略平面図である。
【
図9】本願記載のトリガスイッチの一例を示す概略平面図である。
【
図10】本願記載のトリガスイッチの一例を示す概略平面図である。
【
図11】本願記載のトリガスイッチの一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
【
図12】本願記載のトリガスイッチの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
【
図13】本願記載のトリガスイッチの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
【
図14】本願記載のトリガスイッチの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
【
図15】本願記載のトリガスイッチの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
【
図16】本願記載のトリガスイッチの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
【
図17】本願記載のトリガスイッチが備える制御部の処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図18】本願記載のトリガスイッチが備える近接センサが検出するインダクタンスの変化の一例を示すグラフである。
【
図19】本願記載のトリガスイッチが備える近接センサが検出するインダクタンスの変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
<適用例>
本願記載のトリガスイッチは、モータ等の駆動部を備える電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ等の電動工具をはじめとする様々な電動装置に適用される。以下の実施形態では、図面を参照しながら、このようなトリガスイッチTSを例示して説明する。
【0017】
<実施形態>
図1は、本願記載のトリガスイッチTSの外観の一例を示す概略斜視図である。
図1は、電動工具等の様々な電動装置ET(
図7参照)に組込可能なトリガスイッチTSの外観を示している。トリガスイッチTSは、電動装置ETの使用者が操作するスイッチであり、使用者がトリガスイッチTSのトリガ1を押し込む押込操作をすることにより、電動装置ETに内蔵された電動モータ等の駆動部M(
図7参照)が駆動する。トリガスイッチTSは、電動装置ETに組み込まれる略直方体状の筐体2と、操作者が押込可能なトリガ1とを備えている。また、トリガスイッチTSは、駆動部Mの駆動方向、例えば、電動ドライバの回転方向の正逆を切り替える切替レバー3(切替部材)を備えている。なお、以降の説明において、トリガスイッチTSの方向については、トリガ1が取り付けられた方を前、筐体2側を後、切替レバー3側を上、切替レバー3の反対側を下として表現するが、説明の便宜上の方向であり、トリガスイッチTSの使用の際の方向を限定するものではない。
【0018】
トリガスイッチTSの内部構造を含む構成について更に説明する。
図2は、本願記載のトリガスイッチTSの一例を一部破断状態で示す概略斜視図である。
図3は、本願記載のトリガスイッチTSの一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
図4は、本願記載のトリガスイッチTSの一例を示す概略断面図である。
図2及び
図3は、筐体2の内部が視認可能となるように、筐体2の左側半分を透過して示している。
図4は、
図1に示すA-B方向からの視点で示す概略断面図である。
【0019】
トリガスイッチTSが備えるトリガ1は、上面に係止凸部10が形成されており、係止凸部10は、
図2に示すように、切替レバー3の前端に形成された係止凹部30と係合して、意図しないトリガ1の押込を防止する。トリガ1の前面は、使用者が操作の際に指を掛ける操作部11となっている。トリガ1の内部には、操作部11の裏側から筐体2側へ前後に延びる貫通軸12が形成されている。貫通軸12の後部は、筐体2の前面に開設された貫通孔20を貫通して、筐体2内に延びている。筐体2内に位置する貫通軸12の後端には、駆動用被検出部13が取り付けられている。駆動用被検出部13は、金属製材料を用いて形成されている。駆動用被検出部13は、直方体を、上方から後方へかけて斜交する平面で切り欠いた形状で、前方側から後方側へかけて垂直断面の面積が漸次狭小するテーパー状に形成されている。操作部11の裏側と筐体2の前面との間には、トリガ1を前方へ向けて付勢する圧縮コイルバネ等のバネ材14が、貫通軸12を周方向に巻回するように配置されている。貫通軸12及びバネ材14は、蛇腹状に形成された樹脂製のカバー15にて覆われている。
【0020】
トリガスイッチTSが備える筐体2には、上部に切替レバー3が配置されている。筐体2の内部には、切替レバー3を前方へ付勢する付勢部材4、切替レバー3に係合して動作する係合部材5、金属の接近及び位置を検出する近接センサ6、トリガ1の押込操作を検出する押込検出部7、各種制御を行う制御部8等の各種部材が収容されている。
【0021】
図5A及び
図5Bは、本願記載のトリガスイッチTSが備える切替レバー3及び付勢部材4の外観の一例を示す概略外観図である。
図5Aは、切替レバー3及び切替レバー3を前方へ付勢する付勢部材4を前方斜め下からの視点で示しており、
図5Bは、下方からの視点で示している。
【0022】
図2乃至
図4並びに
図5A及び
図5Bを用いて切替レバー3及び付勢部材4について説明する。切替レバー3には、係止凹部30、レバー部31、揺動軸部32、延伸部33、カム部34等の部位が形成されている。切替レバー3において、係止凹部30、レバー部31及び揺動軸部32は、筐体2外に露出している。レバー部31は、操作者からの揺動操作を受け付ける部位であり、揺動操作を受け付けた切替レバー3は、揺動軸部32を揺動中心として左右に揺動する。レバー部31の前端下部には、前述の係止凹部30が形成されており、係止凹部30は、トリガ1の上面に形成された係止凸部10と係合する。
図2乃至
図4では、レバー部31の係止凹部30が、トリガ1の係止凸部10と係合して、レバー部31を係止している状態を示している。
【0023】
切替レバー3において、延伸部33及びカム部34は、筐体2内に収容されている。延伸部33は、揺動軸部32から略後方へ延伸する部位であり、延伸部33の後端には、幅広で厚みのあるカム部34が形成されている。カム部34は、上面視で丸みを帯びた略五角形状に形成されている。カム部34の後端部分に位置する頂点には、付勢部材4と係合する半円形状の係合凸部34aが形成されている。カム部34の下面には、弧状をなすカム溝34bが刻設されている。
【0024】
付勢部材4は、筐体2内で切替レバー3の後方に配置されている。付勢部材4は、切替レバー3に対向する前面が、上面視で略M字状に形成され、中央付近が、係合凹部40となっている。係合凹部40は、切替レバー3のカム部34に形成された係合凸部34aと係合する。付勢部材4の後部には、圧縮コイルバネが取り付けられており、圧縮コイルバネにより、付勢部材4全体が、前方の切替レバー3側へ付勢されている。
【0025】
図6は、本願記載のトリガスイッチTSが備える係合部材5の一例を示す概略外観図である。
図2乃至
図4並びに
図6を用いて係合部材5について説明する。
図6は、係合部材5を後方斜め上からの視点で示している。係合部材5は、切替レバー3に係合して動作する部材であり、上部に、切替レバー3のカム部34の下面に刻設されたカム溝34bに、若干の遊びをもって嵌まり込むカム突起50が形成されている。係合部材5の後部には、後方へ延びる金属棒を用いた切替用被検出部51が形成されている。係合部材5の動作は、筐体2により、前後方向に規制されている。切替レバー3が揺動した場合、切替レバー3が主動カムとして機能し、係合部材5が従動カムとして機能する。切替レバー3の弧状のカム溝34bと、カム突起50との係合により、切替レバー3の揺動は、係合部材5の前後方向の動作として伝達される。
【0026】
図2乃至
図4を用いて近接センサ6について説明する。近接センサ6は、部材の接近を検出するセンサであり、例えば、磁界により、金属体の有無又は位置を検出するセンサが用いられる。本願で例示する近接センサ6は、例えば、
特許5115084号公報に記載されているような磁界を生じさせるコイルを用いて構成されている。近接センサ6は、金属で形成された駆動用被検出部13及び切替用被検出部51の接近を検出する。
【0027】
図4を用いて押込検出部7について説明する。押込検出部7は、可撓性を有する板バネ状の金属片を用いて形成されており、筐体2の前方側の内面で、貫通孔20の上方及び下方に配置されている。トリガ1が押し込まれていない場合、上下の押込検出部7には、金属製材料で形成された駆動用被検出部13の前面が当接している。トリガ1が押し込まれると駆動用被検出部13は、後方へ移動し、押込検出部7から離隔する。駆動用被検出部13が、上下の押込検出部7に当接している場合、上下の押込検出部7の間は、駆動用被検出部13にて電気的に接続されるので導通状態となる。駆動用被検出部13が押込検出部7から離隔すると、上下の押込検出部7の間は電気的に遮断される。従って、上下の押込検出部7間の導通状態に基づいて、トリガ1の押込状態を検出することができる。
【0028】
図7は、本願記載のトリガスイッチTSを組み込んだ電動装置ETが備える制御構成のうち制御部8に関連する構成の一例を示す概略ブロック図である。
図2、
図3及び
図7を用いて制御部8について説明する。電動装置ETは、本体装置MUにトリガスイッチTSを組み込んで形成されている。本体装置MUは、モータ等の駆動部Mを備えている。トリガスイッチTSの制御部8は、例えば、プリント配線された基板、並びに基板上に配置された各種LSI、VLSI等の集積回路を用いたマイクロコンピュータ、電子素子及び各種端子を備えている。制御部8は、押込検出部7及び近接センサ6の検出結果を入力として受け付け、検出結果に基づいて各種処理を実行し、電動装置ETの本体装置MUが備えるモータ等の駆動部Mを駆動させる駆動信号を、本体装置MUへ出力する。電動装置ETは、本体装置MUに入力された駆動信号に基づいて駆動部Mを駆動する。
【0029】
次に、本願記載のトリガスイッチTSの操作及び動作について説明する。先ず、本願記載のトリガスイッチTSにおける駆動モードの切替について説明する。
図8乃至
図10は、本願記載のトリガスイッチTSの一例を示す概略平面図である。
図8乃至
図10は、本願記載のトリガスイッチTSの筐体2を外した状態の概略を平面図として示している。
図8は、切替レバー3が揺動範囲の中心に位置する状態を示している。操作者は、電動装置ETを駆動させない場合、
図8に例示するように切替レバー3を揺動範囲の中心に位置させる。
図8に示すように切替レバー3が揺動範囲の中心に位置している場合、切替レバー3の前端の係止凹部30とトリガ1上面の係止凸部10とが係合する。トリガ1は、係止凸部10が係止凹部30に係止されて、押し込めない状態となるので、係止凹部30及び係止凸部10は、不測の押込を防止する安全機構として機能する。
【0030】
図9は、切替レバー3を左側(平面視で反時計回り)へ揺動させた状態を示している。操作者は、電動装置ETのモータ等の駆動部Mを正転方向へ回転させる正転モードで駆動させる場合、切替レバー3を左側へ揺動させる。
図9に例示するように切替レバー3を左側へ揺動させることにより、切替レバー3の係止凹部30と、トリガ1の係止凸部10との係合が外れて、トリガ1が押込可能な状態となる。また、切替レバー3が揺動することにより、切替レバー3のカム部34の下面に弧状に刻設されたカム溝34bに、カム突起50が係合している係合部材5が、切替レバー3の揺動に連動して前方へ移動する。
【0031】
図10は、切替レバー3を右側(平面視で時計回り)へ揺動させた状態を示している。操作者は、電動装置ETのモータ等の駆動部Mを逆転方向へ回転させる逆転モードで駆動させる場合、切替レバー3を右側へ揺動させる。
図10に例示するように切替レバー3を右側へ揺動させることにより、トリガ1が押込可能な状態となる。また、切替レバー3の揺動に連動して、係合部材5が後方へ移動する。
【0032】
図11は、本願記載のトリガスイッチTSの一例を一部破断状態で示す概略側面図である。
図12及び
図13は、本願記載のトリガスイッチTSの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
図11は、筐体2の内部が視認可能となるように、筐体2の左側半分を透過して示している。
図12及び
図13は、筐体2内部を拡大して示している。
図11及び
図12は、切替レバー3を左側へ揺動させて駆動モードを正転モードにした状態を示している。切替レバー3の左側への揺動に連動して、係合部材5が前方へ移動している。
図13は、切替レバー3を右側へ揺動させて駆動モードを逆転モードにした状態を示している。切替レバー3の右側への揺動に連動して係合部材5が後方へ移動している。係合部材5の前後の移動により、係合部材5の後部に形成された切替用被検出部51の近接センサ6に対する位置が変化する。近接センサ6は、切替用被検出部51の位置をインダクタンスの変化として検出する。具体的には、切替用被検出部51が近接センサ6に接近した位置では、近接センサ6から離隔した位置と比べて、インダクタンスの値が上昇する。従って、制御部8は、近接センサ6が検出するインダクタンスの値に基づいて、駆動モードが正転モードか逆転モードかを判定することができる。
【0033】
次に、本願記載のトリガスイッチTSにおけるトリガ1の押込操作に係る内部動作について説明する。
図14乃至
図16は、本願記載のトリガスイッチTSの内部構造の一部の例を拡大して示す概略図である。
図14乃至
図16は、筐体2内部を拡大して示している。
【0034】
図14は、係合部材5が前方に位置し、トリガ1を押し込んでいない状態を示している。トリガ1を押し込んでいない場合、トリガ1の駆動用被検出部13は、筐体2内で移動範囲の前端に位置しており、上下の押込検出部7に当接している。
図14に例示する状態において、制御部8は、電動装置ETの本体装置MUが備える駆動部Mに対して駆動信号を出力することはない。
【0035】
図15は、
図14に例示する状態からトリガ1を押し込んだ状態を示している。操作者が、トリガ1を押し込むことにより、トリガ1の駆動用被検出部13が、上下の押込検出部7から離隔する。トリガ1の駆動用被検出部13が上下の押込検出部7から離隔することにより、上下の押込検出部7の間は電気的に遮断される。制御部8は、押込検出部7の間の遮断を検出した場合、近接センサ6が検出するインダクタンスに基づいて、駆動部Mの駆動モードを決定する。
図15に示す例では、係合部材5の切替用被検出部51が前方に位置していることから正転モードに決定される。
【0036】
正転モードに決定された後、操作者が、更にトリガ1を押し込むことにより、トリガ1の駆動用被検出部13が近接センサ6に接近し、コイルが巻回された内側の領域に進入する。近接センサ6は、駆動用被検出部13の接近をインダクタンスの変化として検出する。駆動用被検出部13は、前方側から後方側へかけて垂直断面の面積が漸次狭小するテーパー状に形成されているため、駆動用被検出部13が近接センサ6のコイルに接近し、更に内側の領域に進入することにより、インダクタンスが漸次上昇する。制御部8は、駆動モードを決定後、近接センサ6が検出するインダクタンスに基づいて、駆動部Mを動作させ、かつインダクタンスに応じて動作に係る出力を制御する。例えば、押込量に応じた回転数で駆動部Mが正転方向に回転する。
【0037】
図16は、係合部材5の切替用被検出部51が後方に位置し、トリガ1が押し込まれた状態を示している。切替用被検出部51が後方に位置しているため、操作者がトリガ1を押し込むと、駆動モードが逆転モードに決定される。そして、トリガ1の押込量に応じた回転数で駆動部Mが逆転方向に回転する。
【0038】
次に、本願記載のトリガスイッチTSが備える制御部8による制御について説明する。
図17は、本願記載のトリガスイッチTSが備える制御部8の処理の一例を概略的に示すフローチャートである。トリガスイッチTSの制御部8は、トリガ1が押し込まれていない状態では休止状態にあり、通電等のウェイクアップ信号の入力を受け付けると起動する(ステップS1)。ウェイクアップ信号は、押込検出部7が遮断を検出した場合に、例えば、制御部8への通電として入力される。制御部8は、ウェイクアップ信号を押込検出部7による押込操作の検出として以降の処理を実行する。
【0039】
起動した制御部8は、切替用被検出部51の接近又は離隔を、近接センサ6が検出したインダクタンスにて検出し(ステップS2)、検出結果に基づいて駆動部Mの駆動モードを決定する(ステップS3)。
【0040】
図18は、本願記載のトリガスイッチTSが備える近接センサ6が検出するインダクタンスの変化の一例を示すグラフである。
図18は、横軸にトリガ1の押込量をとり、縦軸にインダクタンスの値をとって、その関係を示している。インダクタンスの値は、トリガ1の押込量に関わらず一定であるが、正転モードか逆転モードかによって変化する。ステップS2~S3において、制御部8では、予め設定されている閾値と比較することにより、インダクタンスの値が閾値より小さい正転モードか、閾値より大きい逆転モードかを判定し、判定した結果に基づいて駆動部Mの駆動モードを決定する。
【0041】
図17のフローチャートに戻り、駆動モードを決定後、トリガスイッチTSの制御部8は、駆動用被検出部13の接近の程度を、近接センサ6が検出したインダクタンスにて検出し(ステップS4)、検出結果に基づいて駆動部Mを駆動させる出力を行う(ステップS5)。ステップS4~S5では、ステップS3にて決定した駆動モードで、接近の程度に応じた出力を行う。制御部8は、駆動部Mを駆動させる出力として、インダクタンスの値を変換したアナログ信号或いはデジタル信号、又はモータである駆動部Mの回転数を示すアナログ信号或いはデジタル信号を駆動部Mへ出力する。
【0042】
図19は、本願記載のトリガスイッチTSが備える近接センサ6が検出するインダクタンスの変化の一例を示すグラフである。
図19は、横軸にトリガ1の押込量をとり、縦軸にインダクタンスの値をとって、その関係を示している。
図19に例示するように、トリガ1の押込量の増加に伴って、インダクタンスが漸次上昇する。制御部8では、検出したインダクタンスに応じた出力、即ち、インダクタンスに応じた回転速度で駆動部Mを駆動させる出力を行う。なお、駆動部Mが押し込まれてインダクタンスが所定値に到達するまでは、押込量に応じて上昇する回転速度で駆動し、所定値に到達後は押込量に関わらず一定の回転速度で駆動する等、適宜設定することが可能である。
【0043】
制御部8は、起動中、ステップS3の処理により、トリガ1の押込量に応じて駆動部Mの駆動を制御する。なお、操作者がトリガ1の押込を解除し、押込検出部7が通電状態となった場合、制御部8は、駆動部Mへの出力を停止し、休止状態となる。以上のようにして制御部8は、本体装置MUが備える駆動部Mを制御する。
【0044】
以上のように本願記載のトリガスイッチTSは、近接センサ6により、切替用被検出部51及び駆動用被検出部13の接近を検出し、検出結果に応じて駆動部Mを駆動する。本願記載のトリガスイッチTSは、非接触で切替レバー3による切替状況及びトリガ1の押込状況を検出するので、金属接点等の接触型の接点を削減することができる。従って、金属接点の摩耗等の経年劣化に起因する異常発生を抑制することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0045】
本発明は、以上説明したそれぞれの実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することが可能である。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の技術範囲は、請求の範囲によって説明するものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0046】
例えば、前記実施形態では、近接センサ6がインダクタンスに基づいて部材の接近を検出する形態を例示したが、本発明はこれに限らず、静電容量センサ、磁界センサ、光学センサ等の様々な非接触センサを用いることが可能である。
【0047】
また、前記実施形態では、切替レバー3により切り替えられる駆動モードとして、駆動部Mの駆動方向を示す正転モード及び逆転モードを設定した形態を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、押込量に応じて回転速度を制御する変速モード及び押込量に関わらず回転速度が一定の定速モードを切替可能な駆動モードとして設定する等、適宜設定することが可能である。
【0048】
更に、前記実施形態では、制御部8が筐体2内に収容されている形態を示したが、本発明はこれに限らず、制御部8を、筐体2の外に出して、本体装置MU内に収容する形態等、様々な形態に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
TS トリガスイッチ
1 トリガ
11 操作部
13 駆動用被検出部
2 筐体
3 切替レバー(切替部材)
31 レバー部
34 カム部
4 付勢部材
5 係合部材
51 切替用被検出部
6 近接センサ
7 押込検出部
8 制御部
ET 電動装置
MU 本体装置
M 駆動部