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特許7552175回転電機の制御装置、プログラム、回転電機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】回転電機の制御装置、プログラム、回転電機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H02P27/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020153611
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047695
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康裕
(72)【発明者】
【氏名】入江 浩司
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204913(JP,A)
【文献】特開2009-124910(JP,A)
【文献】特開2010-161929(JP,A)
【文献】特開2018-201321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機(10)と、直流電源(30)と、前記回転電機及び前記直流電源を電気的に接続するインバータ(20)と、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置(50)において、
前記インバータを構成するスイッチ(SWH,SWL)のスイッチングパターンを規定するパルスパターンを設定するパターン設定部(55)と、
前記回転電機の駆動制御を行うべく、設定された前記パルスパターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部(57)と、を備え、
前記パターン設定部は、前記回転電機の動作点を示す判定パラメータとして、前記回転電機を構成するロータの回転速度を取得し、前記回転電機の動作領域が分割された複数の個別領域のうち、取得した前記判定パラメータが含まれる個別領域に対応した前記パルスパターンを設定し、
前記回転電機の動作領域は、前記ロータの回転速度及び前記回転電機のトルクで規定される領域であり、
複数の前記個別領域は、
前記直流電源と前記インバータの平滑コンデンサ(22)との間を流れる電流の高調波成分のうち、前記直流電源及び前記平滑コンデンサを含むLC共振回路の共振周波数近傍の特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する共振抑制領域と、
2値信号で表されるパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、人間の可聴域における特定周波数範囲に含まれる特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する低NV領域と、
2値信号で表されるパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、前記回転電機で発生する損失を低減するための特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する高効率領域と、を含み、
前記動作領域において、複数の前記個別領域のそれぞれが、前記ロータの回転速度の低速側から高速側にかけて順に配置され、
前記低NV領域が前記共振抑制領域の低速側に配置され、前記高効率領域が前記共振抑制領域の高速側に配置されている、回転電機の制御装置。
【請求項2】
複数の前記個別領域は、前記インバータの3相のうち相電圧が最大となる最大相に対応する前記スイッチの駆動状態を固定するとの条件と、3相のうち相電圧が最小となる最小相に対応する前記スイッチのスイッチング回数を、3相のうち前記最大相及び前記最小相以外の相である中間相に対応する前記スイッチのスイッチング回数よりも増加させるとの条件が課されて定められたパルスパターンに対応する高トルク精度領域を含む、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項3】
複数の前記個別領域それぞれに対応する前記パルスパターンにより定まる前記スイッチのスイッチング回数は、高速側の前記個別領域ほど少なくなっており、
前記パターン設定部は、前記インバータの電源電圧が高い場合、前記電源電圧が低い場合よりも、前記動作領域において隣接する前記個別領域の境界を高速側に補正する、請求項1又は2に記載の回転電機の制御装置。
【請求項4】
前記パターン設定部は、
前記動作領域において隣接する前記個別領域のうち、低速側の個別領域である低速領域、及び高速側の個別領域である高速領域それぞれに対応する評価関数を算出し、
算出した前記評価関数に基づいて、前記低速領域と前記高速領域との境界を補正する、請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項5】
前記パターン設定部は、前記インバータの電源電圧、前記回転電機に流れる電流、前記回転電機のトルク、及び前記ロータの回転速度のうち、少なくとも1つに基づいて、前記評価関数を算出する、請求項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項6】
前記パターン設定部は、前記低速領域の前記評価関数の値と、前記高速領域の前記評価関数の値との差に基づいて、前記低速領域と前記高速領域との境界の補正量を算出する、請求項4又は5に記載の回転電機の制御装置。
【請求項7】
複数の前記個別領域それぞれに対応する前記パルスパターンを記憶する記憶部(56)を備え、
前記パターン設定部は、
前記記憶部の記憶情報に基づいて前記パルスパターンを設定し、
補正後の前記境界の情報を前記記憶部に記憶させる、請求項4~6のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項8】
前記パターン設定部は、取得した前記判定パラメータが、複数の前記個別領域のいずれに含まれるかを判定するための閾値にヒステリシスを設定する、請求項1~のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項9】
前記パターン設定部は、取得した前記判定パラメータの時間平均値を算出し、複数の前記個別領域のうち、算出した前記時間平均値が含まれる個別領域に対応した前記パルスパターンを設定する、請求項1~のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項10】
前記パターン設定部は、取得した前記判定パラメータにローパスフィルタ処理を施し、複数の前記個別領域のうち、前記ローパスフィルタ処理が施された前記判定パラメータが含まれる個別領域に対応した前記パルスパターンを設定する、請求項1~のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項11】
回転電機(10)と、直流電源(30)と、前記回転電機及び前記直流電源を電気的に接続するインバータ(20)と、を備えるシステムに適用されるプログラムにおいて、
コンピュータに、
前記インバータを構成するスイッチ(SWH,SWL)のスイッチングパターンを規定するパルスパターンを設定するパターン設定処理と、
前記回転電機の駆動制御を行うべく、設定された前記パルスパターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う処理と、を実行させ、
前記パターン設定処理において、前記回転電機の動作点を示す判定パラメータとして、前記回転電機を構成するロータの回転速度を取得し、前記回転電機の動作領域が分割された複数の個別領域のうち、取得した前記判定パラメータが含まれる個別領域に対応した前記パルスパターンを設定し、
前記回転電機の動作領域は、前記ロータの回転速度及び前記回転電機のトルクで規定される領域であり、
複数の前記個別領域は、
前記直流電源と前記インバータの平滑コンデンサ(22)との間を流れる電流の高調波成分のうち、前記直流電源及び前記平滑コンデンサを含むLC共振回路の共振周波数近傍の特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する共振抑制領域と、
2値信号で表されるパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、人間の可聴域における特定周波数範囲に含まれる特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する低NV領域と、
2値信号で表されるパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、前記回転電機で発生する損失を低減するための特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する高効率領域と、を含み、
前記動作領域において、複数の前記個別領域のそれぞれが、前記ロータの回転速度の低速側から高速側にかけて順に配置され、
前記低NV領域が前記共振抑制領域の低速側に配置され、前記高効率領域が前記共振抑制領域の高速側に配置されている、プログラム。
【請求項12】
回転電機(10)と、直流電源(30)と、前記回転電機及び前記直流電源を電気的に接続するインバータ(20)と、を備えるシステムに適用される回転電機の制御方法において、
前記インバータを構成するスイッチ(SWH,SWL)のスイッチングパターンを規定するパルスパターンを設定するパターン設定ステップと、
前記回転電機の駆動制御を行うべく、設定された前記パルスパターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うステップと、を備え、
前記パターン設定ステップにおいて、前記回転電機の動作点を示す判定パラメータとして、前記回転電機を構成するロータの回転速度を取得し、前記回転電機の動作領域が分割された複数の個別領域のうち、取得した前記判定パラメータが含まれる個別領域に対応した前記パルスパターンを設定し、
前記回転電機の動作領域は、前記ロータの回転速度及び前記回転電機のトルクで規定される領域であり、
複数の前記個別領域は、
前記直流電源と前記インバータの平滑コンデンサ(22)との間を流れる電流の高調波成分のうち、前記直流電源及び前記平滑コンデンサを含むLC共振回路の共振周波数近傍の特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する共振抑制領域と、
2値信号で表されるパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、人間の可聴域における特定周波数範囲に含まれる特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する低NV領域と、
2値信号で表されるパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、前記回転電機で発生する損失を低減するための特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンに対応する高効率領域と、を含み、
前記動作領域において、複数の前記個別領域のそれぞれが、前記ロータの回転速度の低速側から高速側にかけて順に配置され、
前記低NV領域が前記共振抑制領域の低速側に配置され、前記高効率領域が前記共振抑制領域の高速側に配置されている、回転電機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の制御装置、プログラム、及び回転電機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、回転電機と、直流電源と、回転電機及び直流電源を電気的に接続するインバータとを備えるシステムに適用されるものが知られている。この制御装置は、インバータを構成するスイッチのスイッチングパターンを規定するパルスパターンを設定し、回転電機の駆動制御を行うべく、設定したパルスパターンに基づいてスイッチのスイッチング制御を行う。
【0003】
また、制御装置としては、特許文献1に記載されているように、直流電源及びインバータの平滑コンデンサの間を流れる電流の高調波成分のうち、直流電源及び平滑コンデンサを含むLC共振回路の共振周波数近傍の6×N次(Nは正の整数)の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められたパルスパターンを用いるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6221958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直流電源及び平滑コンデンサの間を流れる電流の共振が問題となるのは、回転電機の動作領域のうち一部の領域である。このため、回転電機の動作領域のうち共振を抑制すべき領域以外の領域において、6×N次の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められたパルスパターンがスイッチング制御に用いられると、システムの効率が悪化する等、回転電機の駆動制御を適正に実施できなくなる懸念がある。
【0006】
なお、6×N次の高調波成分を低減するとの条件に限らず、特定の条件が課されて定められるパルスパターンが全ての動作領域において共通して用いられる場合にも、上述した問題が発生し得る。
【0007】
本発明は、回転電機の駆動制御を適正に行うことができる回転電機の制御装置、プログラム、及び回転電機の制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転電機と、直流電源と、前記回転電機及び前記直流電源を電気的に接続するインバータと、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置において、
前記インバータを構成するスイッチのスイッチングパターンを規定するパルスパターンを設定するパターン設定部と、
前記回転電機の駆動制御を行うべく、設定された前記パルスパターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、を備え、
前記パターン設定部は、前記回転電機の動作点を示す判定パラメータを取得し、前記回転電機の動作領域が分割された複数の個別領域のうち、取得した前記判定パラメータが含まれる個別領域に対応した前記パルスパターンを設定し、
複数の前記個別領域に対応する前記パルスパターンは、互いに異なる条件が課されて定められるパルスパターンを含む。
【0009】
本発明では、回転電機の動作領域が分割されて複数の個別領域とされている。本発明のパターン設定部は、回転電機の動作点を示す判定パラメータを取得し、複数の個別領域のうち取得した判定パラメータが含まれる個別領域に対応したパルスパターンを、スイッチ制御部のスイッチング制御で用いるパルスパターンとして設定する。ここで、複数の個別領域に対応するパルスパターンは、互いに異なる条件が課されて定められるパルスパターンを含む。このため、複数の個別領域それぞれにおいて、その領域で解決すべき問題に応じたスイッチング制御を行うことができ、回転電機の駆動制御を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】制御装置が行う処理の機能ブロック図。
図3】回転電機の動作領域等を示す図。
図4】パルスパターン設定処理の手順を示すフローチャート。
図5】第2実施形態に係る回転電機の動作領域を示す図。
図6】パルスパターン設定処理の手順を示すフローチャート。
図7】第3実施形態に係る回転電機の動作領域を示す図。
図8】パルスパターン設定処理の手順を示すフローチャート。
図9】第4実施形態に係る各領域の境界の補正態様を示す図。
図10】第5実施形態に係る更新処理の手順を示すフローチャート。
図11】第6実施形態に係るロータ回転速度の変動態様を示すタイムチャート。
図12】パルスパターンの設定方法を示す図。
図13】その他の実施形態に係るパルスパターン設定処理の手順を示すフローチャート。
図14】その他の実施形態に係るパルスパターン設定処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御装置は、走行動力源としての回転電機とともに制御システムを構成し、制御システムは車両に搭載されている。
【0012】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ20を備えている。回転電機10は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。
【0013】
インバータ20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、回転電機10を構成するステータ巻線11の第1端が接続されている。各相のステータ巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相のステータ巻線11は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはIGBTが用いられている。上,下アームスイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
【0014】
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路21Hを介して、直流電源30の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路21Lを介して、直流電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、直流電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
【0015】
インバータ20は、平滑コンデンサ22を備えている。平滑コンデンサ22は、高電位側電気経路21Hと低電位側電気経路21Lとを電気的に接続している。
【0016】
制御システムは、電流センサ40、角度センサ41及び電圧センサ42を備えている。電流センサ40は、回転電機10に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。角度センサ41は、回転電機10の電気角を検出する。角度センサ41は、例えばレゾルバである。電圧センサ42は、平滑コンデンサ22の端子電圧である電源電圧VDCを検出する。各センサ40~42の検出値は、制御装置50に入力される。
【0017】
制御装置50は、回転電機10の制御量をトルク指令値Trq*に制御すべく、インバータ20を操作する。詳しくは、制御装置50は、インバータ20の各相の上,下アームスイッチSWH,SWLをオンオフすべく、上,下アームスイッチSWH,SWLに対応する上,下アーム駆動信号GH,GLを生成する。各駆動信号GH,GLは、オン指令又はオフ指令のいずれかとなる。各相において、上アーム駆動信号GHと、下アーム駆動信号GLとは、交互にオン指令とされる。
【0018】
図2に、制御装置50による駆動信号生成処理のブロック図を示す。
【0019】
2相変換部51は、電流センサ40により検出された相電流と、角度センサ41により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
【0020】
トルク制御器52は、トルク指令値Trq*、d,q軸電流Idr,Iqr、及び電圧センサ42により検出された電源電圧VDCに基づいて、インバータ20のdq座標系における出力電圧ベクトルVdqの位相である位相指令値δと、変調率指令値Mrとを算出する。
【0021】
詳しくは、トルク制御器52は、トルク指令値Trq*に応じたd,q軸電流の指令値にd,q軸電流Idr,Iqrをフィードバック制御するための操作量として、dq座標系におけるd,q軸指令電圧Vd,Vqを算出する。トルク制御器52は、算出したd,q軸指令電圧Vd,Vqに基づいて、位相指令値δを算出する。
【0022】
また、トルク制御器52は、算出したd,q軸指令電圧Vd,Vqに基づいて、出力電圧ベクトルVdqの振幅Vrを算出し、算出した振幅Vrと電源電圧VDCとに基づいて、変調率指令値Mrを算出する。変調率指令値Mrは、振幅Vrを電源電圧VDCで規格化した値であり、例えば下式(eq1)で表される。
【0023】
【数1】
角度算出部53は、位相指令値δに電気角θeを加算した値として、固定座標系を基準(例えば、固定座標系のU相を基準)とした出力電圧ベクトルVdqの位相である実位相θvを算出する。
【0024】
速度算出部54は、電気角θeに基づいて、回転電機10のロータ回転速度Nmrを算出する。
【0025】
パターン設定部55は、変調率指令値Mr、実位相θv、ロータ回転速度Nmr、トルク指令値Trq*、及びメモリ56の記憶情報に基づいて、1電気角周期における各相のパルスパターンG*を設定する。パルスパターンG*は、上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチングパターンが規定された時系列パターンである。本実施形態において、パルスパターンG*は、論理H,Lからなる2値のPWM信号であり、論理H,Lのうち、一方がオン指令を示し、他方がオフ指令を示す。本実施形態では、便宜上、論理Hがオン指令を示し、論理Lがオフ指令を示すこととする。
【0026】
「記憶部」としてのメモリ56には、実位相θv、変調率指令値Mr、ロータ回転速度Nmr及びトルク指令値Trq*と関係付けられた複数のパルスパターンがマップ情報として記憶されている。メモリ56は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
【0027】
パターン設定部55は、メモリ56に記憶されているパルスパターンの中から1つのパルスパターンG*を取得する。パターン設定部55は、取得したパルスパターンG*のうち、角度算出部53から入力された実位相θvに対応する信号を信号生成部57に出力する。
【0028】
信号生成部57は、「スイッチ制御部」に相当し、入力されたパルスパターンG*と、その論理反転信号とに基づいて、まず、3相のうち1相分の上,下アーム駆動信号GH,GLを生成する。詳しくは、信号生成部57は、入力されたパルスパターンG*のうち、論理がHに反転するタイミングをデッドタイムだけ遅延させた信号を上アーム駆動信号GHとして生成する。また、信号生成部57は、入力されたパルスパターンG*の論理反転信号のうち、論理がHに反転するタイミングをデッドタイムだけ遅延させた信号を下アーム駆動信号GLとして生成する。次に、信号生成部57は、生成した上,下アーム駆動信号GH,GLの位相を電気角で120度,240度ずらすことにより、残り2相分の上,下アーム駆動信号GH,GLを生成する。生成された上,下アーム駆動信号GH,GLは、PWM信号として上,下アームスイッチSWH,SWLのゲートに出力される。
【0029】
メモリ56には、パルスパターンとして、図3(a)に示すように、低NV領域に対応する低NVパターン、高トルク精度領域に対応する高トルク精度パターン、共振抑制領域に対応する共振抑制パターン、及び高効率領域に対応する高効率パターンが記憶されている。
【0030】
図3(a)には、ロータ回転速度Nmr及びトルク指令値Trq*で規定される回転電機10の動作領域が記載されている。動作領域を規定するTmaxは、トルク指令値Trq*が取り得る範囲の最大値(以下、最大トルク)であり、動作領域を規定するNmaxは、ロータ回転速度Nmrが取り得る範囲の最大値(以下、最大回転速度)である。動作領域において、低NV領域、高トルク精度領域、共振抑制領域及び高効率領域のそれぞれが、低速側から高速側にかけて順に配置されている。
【0031】
パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第1速度閾値Nm1以下であると判定した場合、変調率指令値Mrに対応する低NVパターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0032】
低NVパターンは、回転電機10のトルク制御に起因して発生する騒音及び振動を低減するためのパルスパターンであり、例えば特開2013-215041号公報に記載されているパルスパターンである。詳しくは、低NVパターンは、フーリエ解析されたパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、特定周波数範囲に含まれる特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められたパルスパターンである。より具体的には、低NVパターンは、特定周波数範囲に含まれる特定次数の高調波成分を0にするとの条件が課されて定められたパルスパターンである。低NVパターンは、例えば、電気角180°を通る軸線に対して、0~180度の信号が180~360度の信号と線対称となるパルスパターンである。特定周波数範囲は、人間の可聴域に含まれる範囲の一部であり、例えば1kHz以下の周波数範囲である。特定周波数範囲に含まれる高調波成分は、例えば、5次及び7次の高調波成分である。
【0033】
低NVパターンに対応する低NV領域は、動作領域のうち最も低速側の領域である。動作領域において、低NV領域の高速側には、後に詳述する高トルク精度領域が隣接している。動作領域において、低NV領域と高トルク精度領域との境界が第1速度閾値Nm1となる。
【0034】
低NV領域では、車両の走行に伴い発生するロードノイズが比較的小さく、可聴域におけるノイズが問題となりやすい。この点、低NVパターンによれば、この問題を解消することができる。
【0035】
パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが、第1速度閾値Nm1よりも高くて、かつ、第2速度閾値Nm2(>Nm1)以下であると判定した場合、変調率指令値Mrに対応する高トルク精度パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0036】
高トルク精度パターンは、特開2016-189648号公報及びこの公報に対応する特許公報である特許第6390489号公報に記載されているパルスパターンである。詳しくは、高トルク精度パターンは、回転電機10に交流電流を流すための上,下アーム駆動信号GH,GLの生成条件として、第1条件及び第2条件が課されて定められたパルスパターンである。第1条件は、制御装置50の所定の制御周期において、インバータ20の3相のうち相電圧が最大となる最大相に対応する上,下アームスイッチSWH,SWKの駆動状態を固定するとの条件である。第1条件は、スイッチング回数を減少させ、スイッチング損失を低減させるための条件である。
【0037】
第2条件は、制御周期において、3相のうち相電圧が最小となる最小相に対応する上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング回数を、3相のうち上記最大相及び最小相以外の相である中間相に対応する上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング回数よりも増加させて、かつ、制御周期を2等分した期間のそれぞれにおいて、最小相及び中間相それぞれに対応する上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行うとの条件である。第2条件は、スイッチング損失の増加を極力抑制しつつ、第1条件を課すことによるスイッチング回数の減少を抑制し、高調波成分の抑制効果を高めるための条件である。第2条件を課すことにより、スイッチング損失の増加を抑制できるのは、スイッチングする相の相電流が小さいほどスイッチング損失が小さくなることから、スイッチング回数を増加させる相として上記最小相を選択しているためである。
【0038】
高トルク精度パターンに含まれるパルス数は、低NVパターンに含まれるパルス数よりも少ない。パルス数とは、例えば、1電気角周期におけるパルスパターンにおいて、信号の論理がLからHに反転する回数のことである。高トルク精度パターンによれば、1電気角周期あたりのスイッチング回数が、2相変調の場合のスイッチング回数よりも多く、3相変調の場合のスイッチング回数よりも少なくなる。
【0039】
図3(a)に示すように、動作領域において、高トルク精度領域の高速側には、後に詳述する共振抑制領域が隣接している。動作領域において、高トルク精度領域と共振抑制領域との境界が第2速度閾値Nm2となる。
【0040】
高トルク精度領域では、トルク指令値Trq*が大きくなりやすいため、回転電機10のトルクリップルが問題となりやすい。この点、高トルク精度パターンによれば、この問題を解消することができる。
【0041】
パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが、第2速度閾値Nm2よりも高くて、かつ、第3速度閾値Nm3(>Nm2)以下であると判定した場合、変調率指令値Mrに対応する共振抑制パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0042】
共振抑制パターンは、特許第6221958号公報に記載されているパルスパターンである。詳しくは、共振抑制パターンは、各電気経路21H,21Lを介して直流電源30及び平滑コンデンサ22の間を流れる電流の高調波成分のうち、直流電源30、高電位側電気経路21H、平滑コンデンサ22及び低電位側電気経路21Lを含むLC共振回路の共振周波数近傍の特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められるパルスパターンである。本実施形態において、共振周波数近傍の特定次数の高調波成分は、6次及び12次の高調波成分である。
【0043】
図3(a)に示すように、動作領域において、共振抑制領域の高速側には、後に詳述する高効率領域が隣接している。動作領域において、共振抑制領域と高効率領域の境界が第3速度閾値Nm3となる。
【0044】
図3(b)に、上記LC共振回路の周波数特性Ib/Imを示す。Imは、高電位側電気経路21Hのうち、平滑コンデンサ22との接続点からインバータ20側に流れる電流を示し、Ibは、直流電源30を流れる電流を示す。この周波数特性により、直流電流のリップルの大きさを把握することができる。図3(b)に示すNrzは、LC共振回路の共振周波数をロータ回転速度の次元に換算した共振回転速度を示す。共振回転速度Nrzは、第2速度閾値Nm2よりも高くてかつ第3速度閾値Nm3未満の値である。
【0045】
共振抑制パターンに含まれるパルス数は、高トルク精度パターンに含まれるパルス数よりも少ない。本実施形態では、共振抑制領域のうち、第2速度閾値Nm2よりも高くてかつ第1中間閾値Nα(<Nm3)以下の領域の共振抑制パターンに含まれるパルス数は、第1中間閾値Nαよりも高くてかつ第3速度閾値Nm3以下の領域の共振抑制パターンに含まれるパルス数よりも多い。
【0046】
共振抑制領域では、直流電源30に流れる直流電流及び平滑コンデンサ22の端子電圧が大きく変動しやすく、インバータ20等が故障する懸念がある。この点、共振抑制パターンによれば、この問題を解消することができる。
【0047】
パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが、第3速度閾値Nm3よりも高くて、かつ、最大回転速度Nmax(>Nm3)以下であると判定した場合、変調率指令値Mrに対応する高効率パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0048】
高効率パターンは、回転電機10で発生する損失を低減するためのパルスパターンであり、例えば特開2016-136838号公報に記載されているパルスパターンである。詳しくは、高効率パターンは、フーリエ解析されたパルスパターンに含まれる高調波成分のうち、回転電機10で発生する損失(鉄損)の増加をもたらす特定次数の高調波成分を低減するとの条件が課されて定められたパルスパターンである。より具体的には、高効率パターンは、特定次数の高調波成分を0にするとの条件が課されて定められたパルスパターンである。高効率パターンは、例えば、電気角180°を通る軸線に対して、0~180度の信号が180~360度の信号と線対称となるパルスパターンである。高調波成分の特定次数は、例えば、5次及び7次である。
【0049】
高効率パターンに含まれるパルス数は、共振抑制パターンに含まれるパルス数よりも少ない。図3(a)に示すように、本実施形態では、高効率領域のうち、第3速度閾値Nm3よりも高くてかつ第2中間閾値Nβ(<Nmax)以下の領域の高効率パターンに含まれるパルス数は、第2中間閾値Nβよりも高くてかつ最大回転速度Nmax以下の領域の高効率パターンに含まれるパルス数よりも多い。
【0050】
高効率領域では、回転電機10の電気角周波数が高くなり、1電気角周期あたりのスイッチング回数が少なくなる。この場合、相電流のリップルが大きくなり、回転電機10の鉄損が増加しやすいといった問題がある。この点、高効率パターンによれば、この問題を解消することができる。
【0051】
なお、低NVパターン、高トルク精度パターン、共振抑制パターン及び高効率パターンのそれぞれは、各パターンに含まれる基本波成分の振幅が変調率指令値Mrと同じ値になるように定められていればよい。また、本実施形態において、低NV領域、高トルク精度領域、共振抑制領域及び高効率領域のそれぞれが「個別領域」に相当する。
【0052】
図4に、パルスパターン設定処理の手順を示す。この処理は、制御装置50により所定の制御周期で実行される。
【0053】
ステップS10では、トルク制御器52が変調率指令値Mrを算出する。
【0054】
ステップS11では、速度算出部54がロータ回転速度Nmrを算出する。
【0055】
ステップS12~S18では、パターン設定部55が各種処理を実行する。詳しくは、ステップS12では、算出されたロータ回転速度Nmrが第1速度閾値Nm1以下であるか否かを判定する。ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS13に進み、算出された変調率指令値Mrに対応する低NVパターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。なお、本実施形態では、ロータ回転速度Nmrが、回転電機10の動作点を示す「判定パラメータ」に相当する。
【0056】
ステップS12において否定判定した場合には、ステップS14に進み、ロータ回転速度Nmrが、第1速度閾値Nm1よりも高くて、かつ、第2速度閾値Nm2以下であるか否かを判定する。ステップS14において肯定判定した場合には、ステップS15に進み、算出された変調率指令値Mrに対応する高トルク精度パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0057】
ステップS14において否定判定した場合には、ステップS16に進み、ロータ回転速度Nmrが、第2速度閾値Nm2よりも高くて、かつ、第3速度閾値Nm3以下であるか否かを判定する。ステップS16において肯定判定した場合には、ステップS17に進み、算出された変調率指令値Mrに対応する共振抑制パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0058】
ステップS16において否定判定した場合には、ロータ回転速度Nmrが、第3速度閾値Nm3よりも高いと判定し、ステップS18に進む。ステップS18では、算出された変調率指令値Mrに対応する高効率パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、低NV領域、高トルク精度領域、共振抑制領域及び高効率領域それぞれにおいて、解決すべき問題に応じた条件が課されてパルスパターンが定められている。このため、各領域に応じたインバータ20のスイッチング制御を行うことができ、ひいては回転電機10のトルク制御を適正に行うことができる。
【0060】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、パターン設定部55は、図5に示すように、ロータ回転速度Nmrに代えて、トルク指令値Trq*に基づいて、パルスパターンのグループを選択する。この選択処理の手順を図6に示す。なお、図6において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0061】
ステップS10の処理の完了後、ステップS20では、トルク指令値Trq*が第1トルク閾値Trq1以下であるか否かを判定する。第1トルク閾値Trq1は、動作領域において、高効率領域と共振抑制領域との境界となる。ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS18に進み、変調率指令値Mrに対応する高効率パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。なお、本実施形態では、トルク指令値Trq*が、回転電機10の動作点を示す「判定パラメータ」に相当する。
【0062】
ステップS20において否定判定した場合には、ステップS21に進み、トルク指令値Trq*が、第1トルク閾値Trq1よりも大きくて、かつ、第2トルク閾値Trq2(>Trq1)以下であるか否かを判定する。第2トルク閾値Trq2は、動作領域において、共振抑制領域と低NV領域との境界となる。ステップS21において肯定判定した場合には、ステップS17に進み、変調率指令値Mrに対応する共振抑制パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0063】
ステップS21において否定判定した場合には、トルク指令値Trq*が、第2トルク閾値Trq2よりも大きくて、かつ、最大トルクTmax以下であると判定し、ステップS13に進む。ステップS13では、変調率指令値Mrに対応する低NVパターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に準じた効果を得ることができる。
【0065】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、パターン設定部55は、図7に示すように、ロータ回転速度Nmrを各閾値L1~L3と比較することによりパルスパターンのグループを選択する。各閾値L1~L3は、トルク指令値Trq*が大きいほど小さくなる。
【0066】
図8に、パルスパターン設定処理の手順を示す。この処理は、制御装置50により所定の制御周期で実行される。なお、図8において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0067】
ステップS30以降の処理は、パターン設定部55により実行される。ステップS30では、算出されたロータ回転速度Nmrが第1閾値L1以下であるか否かを判定する。ここでは、トルク指令値Trq*が大きいほど、第1閾値L1を小さく設定する。第1閾値L1は、低NV領域と高トルク精度領域との境界となる。ステップS30において肯定判定した場合には、ステップS13に進む。なお、本実施形態では、ロータ回転速度Nmr及びトルク指令値Trq*が、回転電機10の動作点を示す「判定パラメータ」に相当する。
【0068】
ステップS30において否定判定した場合には、ステップS31に進み、ロータ回転速度Nmrが、第1閾値L1よりも高くて、かつ、第2閾値L2(>L1)以下であるか否かを判定する。ここでは、トルク指令値Trq*が大きいほど、第2閾値L2を小さく設定する。第2閾値L2は、高トルク精度領域と共振抑制領域との境界となる。ステップS31において肯定判定した場合には、ステップS15に進む。
【0069】
ステップS31において否定判定した場合には、ステップS32に進み、ロータ回転速度Nmrが、第2閾値L2よりも高くて、かつ、第3閾値L3(>L2)以下であるか否かを判定する。ここでは、トルク指令値Trq*が大きいほど、第3閾値L3を小さく設定する。第3閾値L3は、共振抑制領域と高効率領域との境界となる。ステップS32において肯定判定した場合には、ステップS17に進む。
【0070】
ステップS32において否定判定した場合には、ロータ回転速度Nmrが第3閾値L3よりも高くて、かつ、最大回転速度Nmax以下であると判定し、ステップS18に進む。
【0071】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0072】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、パターン設定部55は、電源電圧VDCが高いほど、第1速度閾値Nm1、第2速度閾値Nm2及び第3速度閾値Nm3を増加補正する処理を行う。この処理は、電源電圧VDCが高いほど、変調率指令値Mrが小さくなり、1電気角周期あたりに必要となるスイッチング回数が多くなることに鑑みた処理である。
【0073】
図9には、電源電圧VDCが低い場合及び高い場合の各速度閾値Nm1~Nm3を示す。例えば、低NV領域と高トルク精度領域との境界となる第1速度閾値Nm1は、電源電圧VDCが高い場合、電源電圧VDCが低い場合よりも高速側に補正される。なお、図9には、高速側に補正された結果、第2中間閾値Nβが消失した例を示す。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、実際の変調率を変調率指令値Mrにする上で必要となる各相のスイッチング回数を電源電圧VDCに応じて適正に設定できる。このため、回転電機10のトルク制御性を高めることができる。
【0075】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、先の図4の処理で用いられる各速度閾値Nm1~Nm3を更新する処理が行われる。
【0076】
この更新には、低NVパターン、高トルク精度パターン、共振抑制パターン及び高効率パターンそれぞれに対応する評価関数が用いられる。各評価関数は、同じ次元(例えば無次元)で定められる値である。本実施形態では、評価関数の値が小さいほど、その評価関数に対応するパルスパターンを用いる優先度が高くなる。例えば、低NVパターン及び高トルク精度パターンのうち、低NVパターンの評価関数の方が小さい場合、低NVパターンを用いる優先度が高トルク精度パターンよりも高いとして、第1速度閾値Nm1を増加補正する。つまり、動作領域のうち低NV領域が占める領域を拡大する。
【0077】
図10に、各速度閾値Nm1~Nm3の更新処理の手順を示す。この処理は、制御装置50により所定の制御周期で実行される。
【0078】
ステップS40では、低NVパターンに対応する第1評価関数H1を算出する。詳しくは、電流センサ40により検出された相電流(具体的には例えば、相電流の振幅又は実効値)が大きいほど、第1評価関数H1を大きく算出する。例えば、「H1∝相電流」のように第1評価関数H1を算出する。つまり、相電流が大きいほど、高トルク精度パターンに対する低NVパターンの優先度を低くする。相電流が大きいほど、相電流に含まれる高調波成分が大きくなるため、低NVパターンよりも相電流に含まれる高調波成分の低減効果が高い高トルク精度パターンの優先度が高くされる。
【0079】
また、ロータ回転速度Nmrが高いほど、第1評価関数H1を小さく算出する。例えば、「H1∝1/Nmr」のように第1評価関数H1を算出する。つまり、ロータ回転速度Nmrが高いほど、高トルク精度パターンに対する低NVパターンの優先度を高くする。ロータ回転速度Nmrが低いほど、回転電機10の駆動に伴い発生する車両振動が低周波の振動となる。振動が低周波になると、車両のユーザが揺れとして感じる度合いが小さくなる。このため、ロータ回転速度Nmrが高いほど、高トルク精度パターンよりも低NVパターンの優先度が高くされる。
【0080】
また、トルク指令値Trq*が大きいほど、第1評価関数H1を大きく算出する。例えば、「H1∝Trq*」のように第1評価関数H1を算出する。つまり、トルク指令値Trq*が大きいほど相電流が大きくなるため、高トルク精度パターンに対する低NVパターンの優先度を低くする。
【0081】
ステップS41では、高トルク精度パターンに対応する第2評価関数H2を算出する。詳しくは、電源電圧VDCが高いほど、第2評価関数H2を小さく算出する。例えば、「H2∝1/VDC」のように第2評価関数H2を算出する。電源電圧VDCが高いほど、変調率指令値Mrが小さくなり、動作領域においてPWM制御が実施される領域が増える。PWM制御は、過変調制御又は矩形波制御よりも1電気角周期あたりのスイッチング回数が多く、トルクを高精度に制御できる。このため、電源電圧VDCが高いほど、低NVパターン及び共振抑制パターンに対する高トルク精度パターンの優先度を高くする。
【0082】
また、電流センサ40により検出された相電流(具体的には例えば、相電流の振幅又は実効値)が大きいほど、第2評価関数H2を大きく算出する。例えば、「H2∝相電流」のように第2評価関数H2を算出する。相電流が大きいほど、電流センサ40の検出値に含まれる検出誤差が大きくなる。検出誤差が大きくなる場合、高トルク精度パターンを用いる必要性が低下する。このため、相電流が大きいほど、低NVパターン及び共振抑制パターンに対する高トルク精度パターンの優先度を低くする。
【0083】
また、ロータ回転速度Nmrが高いほど、第2評価関数H2を大きく算出する。例えば、「H2∝Nmr」のように第2評価関数H2を算出する。ロータ回転速度Nmrが低い領域では、PWM制御が実施されやすくなる。PWM制御は、過変調制御又は矩形波制御よりも1電気角周期あたりのスイッチング回数が多く、トルクを高精度に制御できる。このため、ロータ回転速度Nmrが低いほど、低NVパターン及び共振抑制パターンに対する高トルク精度パターンの優先度を高くする。
【0084】
また、トルク指令値Trq*が大きいほど、第2評価関数H2を大きく算出する。例えば、「H2∝Trq*」のように第2評価関数H2を算出する。トルク指令値Trq*が相電流が大きいほど、電流センサ40の検出値に含まれる検出誤差が大きくなる。このため、低NVパターン及び共振抑制パターンに対する高トルク精度パターンの優先度を低くする。
【0085】
ステップS42では、共振抑制パターンに対応する第3評価関数H3を算出する。詳しくは、電源電圧VDCが高いほど、第3評価関数H3を大きく算出する。例えば、「H3∝VDC」のように第3評価関数H3を算出する。電源電圧VDCが低いほど、変調率指令値Mrが大きくなり、相電流に含まれる高調波成分が大きくなる。この高調波成分は、上述したLC共振の原因となる。このため、電源電圧VDCが低いほど、高トルク精度パターン及び高効率パターンに対する共振抑制パターンの優先度を高くする。
【0086】
また、電流センサ40により検出された相電流(具体的には例えば、相電流の振幅又は実効値)が大きいほど、第3評価関数H3を小さく算出する。相電流が大きいほど、相電流に含まれる高調波成分が大きくなる。このため、相電流が大きいほど、高トルク精度パターン及び高効率パターンに対する共振抑制パターンの優先度を高くする。
【0087】
また、ロータ回転速度Nmrが共振回転速度Nrz近傍の場合、第3評価関数H3を小さく算出し、共振抑制パターンの優先度を高くする。例えば、ロータ回転速度Nmrが共振回転速度Nrzに近づくほど、第3評価関数H3を小さく算出する。
【0088】
また、トルク指令値Trq*が大きいほど、第3評価関数H3を小さく算出する。トルク指令値*が大きいほど相電流が大きくなり、相電流に含まれる高調波成分が大きくなる。このため、トルク指令値*が大きいほど、高トルク精度パターン及び高効率パターンに対する共振抑制パターンの優先度を高くする。
【0089】
ステップS43では、高効率パターンに対応する第4評価関数H4を算出する。詳しくは、電源電圧VDCに基づいて、第4評価関数H4を算出する。例えば、電源電圧VDC及び第4評価関数H4が関係づけられたマップ情報に基づいて、第4評価関数H4を算出すればよい。電源電圧VDCが高くなると、スイッチング損失が増えてインバータ20の効率が低下するものの、弱め界磁電流が小さくなるため、回転電機10の効率は向上する傾向にある。この傾向を踏まえて上記マップ情報が定められればよい。
【0090】
また、電流センサ40により検出された相電流(具体的には例えば、相電流の振幅又は実効値)が大きいほど、第4評価関数H4を大きく算出する。例えば、「H4∝相電流^2」のように第4評価関数H4を算出する。相電流が大きくなると、インバータ20及び回転電機10における銅損が大きくなる。この場合、共振抑制パターンに対する高効率パターンの優先度を低くする。
【0091】
また、ロータ回転速度Nmrが高いほど、第4評価関数H4を小さく算出する。ロータ回転速度Nmrが高いほど鉄損が大きくなる。この場合、共振抑制パターンに対する高効率パターンの優先度を高くする。
【0092】
また、トルク指令値Trq*が大きいほど、第4評価関数H4を大きく算出する。例えば、「H4∝Trq*」のように第4評価関数H4を算出する。トルク指令値*が大きいほど相電流が大きくなる。この場合、共振抑制パターンに対する高効率パターンの優先度を低くする。
【0093】
ステップS44では、ステップS41で算出した第2評価関数H2からステップS40で算出した第1評価関数H1を減算する。そして、「H2-H1」に第1係数K1(>0)を乗算し、補正量としての「K1×(H2-H1)」を現在の第1速度閾値Nm1に加算した値を新たな第1速度閾値Nm1に設定する。
【0094】
第1評価関数H1が第2評価関数H2よりも小さい場合、第1評価関数H1に対応する低NVパターンの方が第2評価関数H2に対応する高トルク精度パターンよりも優先度が高い。この場合、第1速度閾値Nm1が増加補正され、「低速領域」としての低NV領域が高速側に拡大されるとともに、「高速領域」としての高トルク精度領域が縮小されることとなる。
【0095】
一方、第2評価関数H2が第1評価関数H1よりも小さい場合、高トルク精度パターンの方が低NVパターンよりも優先度が高い。この場合、第1速度閾値Nm1が減少補正され、高トルク精度領域が低速側に拡大されるとともに、低NV領域が低速側に縮小されることとなる。
【0096】
ステップS44では、新たな第1速度閾値Nm1を含む低NVパターン及び高トルク精度パターンの情報をメモリ56に記憶する。これにより、低NVパターン及び高トルク精度パターンの情報が更新される。更新された情報が、先の図4の処理で用いられるようになる。
【0097】
ステップS45では、ステップS42で算出した第3評価関数H3からステップS41で算出した第2評価関数H2を減算する。そして、「H3-H2」に第2係数K2(>0)を乗算し、補正量としての「K2×(H3-H2)」を現在の第2速度閾値Nm2に加算した値を新たな第2速度閾値Nm2に設定する。
【0098】
ステップS45では、新たな第2速度閾値Nm2を含む高トルク精度パターン及び共振抑制パターンの情報をメモリ56に記憶する。これにより、高トルク精度パターン及び共振抑制パターンの情報が更新される。
【0099】
ステップS46では、ステップS43で算出した第4評価関数H4からステップS42で算出した第3評価関数H3を減算する。そして、「H4-H3」に第3係数K3(>0)を乗算し、補正量としての「K3×(H4-H3)」を現在の第3速度閾値Nm3に加算した値を新たな第3速度閾値Nm3に設定する。
【0100】
ステップS46では、新たな第3速度閾値Nm3を含む共振抑制パターン及び高効率パターンの情報をメモリ56に記憶する。これにより、共振抑制パターン及び高効率パターンの情報が更新される。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、低NVパターン、高トルク精度パターン、共振抑制パターン及び高効率パターンそれぞれに対応する優先度を踏まえ、メモリ56に記憶されるパルスパターンが更新される。このため、各領域に応じたインバータ20のスイッチング制御をより適正に行うことができる。
【0102】
<第5実施形態の変形例>
・ステップS40~S43それぞれにおいて評価関数の算出に用いられるパラメータとしては、各ステップで説明したパラメータの全てに限らず一部であってもよい。
【0103】
・評価関数の値が大きいほど優先度が高くなるように評価関数が定められていてもよい。この場合、例えばステップS44を例にして説明すると、補正量が「K1×(H1-H2)」で算出されればよい。
【0104】
・速度閾値の更新方法としては、現在の速度閾値に補正量を加える方法に限らない。例えば、第1速度閾値Nm1を例にして説明すると、第1,第2評価関数H1,H2に応じて算出される補正係数を現在の第1速度閾値Nm1に乗算することにより、新たな第1速度閾値Nm1を算出してもよい。この場合、補正係数は、第1評価関数H1の値と第2評価関数H2の値とが同じ場合に1とされ、第1評価関数H1の値が第2評価関数H2の値よりも大きい場合に1未満の値とされ、第1評価関数H1の値が第2評価関数H2の値よりも小さい場合に1よりも大きい値とされればよい。
【0105】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ロータ回転速度Nmrと比較する速度閾値にヒステリシスが設けられている。これは、図11に示すように、ロータ回転速度Nmrが変動することに起因して、選択されるパルスパターンのグループが頻繁に切り替えられることを防止するためである。
【0106】
詳しくは、図12に示すように、パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第1速度閾値Nm1よりも高いと判定した場合、算出された変調率指令値Mrに対応する高トルク精度パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。一方、パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第1速度閾値Nm1よりも高くなった後、ロータ回転速度Nmrが、第1速度閾値Nm1から所定値ΔNだけ小さい値以下になったと判定した場合、算出された変調率指令値Mrに対応する低NVパターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0107】
なお、所定値ΔNは、例えば、定常状態のロータ回転速度Nmrが取り得る変動量の最大値よりも大きい値に設定されていることが望ましい。所定値ΔNは、例えば、実験又は計算により適合されていればよい。
【0108】
パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第2速度閾値Nm2よりも高いと判定した場合、算出された変調率指令値Mrに対応する共振抑制パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。一方、パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第2速度閾値Nm2よりも高くなった後、ロータ回転速度Nmrが「Nm2-ΔN」以下になったと判定した場合、算出された変調率指令値Mrに対応する高トルク精度パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0109】
パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第3速度閾値Nm3よりも高いと判定した場合、算出された変調率指令値Mrに対応する高効率パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。一方、パターン設定部55は、ロータ回転速度Nmrが第3速度閾値Nm3よりも高くなった後、ロータ回転速度Nmrが「Nm3-ΔN」以下になったと判定した場合、算出された変調率指令値Mrに対応する共振抑制パターンをメモリ56から取得し、信号生成部57に出力するパルスパターンとして設定する。
【0110】
以上説明した本実施形態によれば、選択されるパルスパターンのグループが頻繁に切り替えられることを防止することができる。
【0111】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0112】
・第6実施形態のヒステリシスを用いる方法が第2実施形態に適用されてもよい。
【0113】
・ロータ回転速度Nmrが変動することに起因して、選択されるパルスパターンのグループが頻繁に切り替えられることを防止するための処理としては、第6実施形態に例示したものに限らず、図13及び図14に示す処理であってもよい。
【0114】
まず、図13について説明する。なお、図13において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0115】
ステップS11aでは、速度算出部54がロータ回転速度Nmrを算出する。そして、速度算出部54は、算出したロータ回転速度Nmrの時間平均値である平均回転速度Naveを算出する。例えば、複数の制御周期それぞれにおいて算出したロータ回転速度Nmrの平均値を平均回転速度Naveとして算出する。算出された平均回転速度Naveは、ステップS12a,S14a,S16aにおいて、ロータ回転速度Nmrに代えて用いられる。
【0116】
続いて、図14について説明する。なお、図14において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0117】
ステップS11bでは、速度算出部54がロータ回転速度Nmrを算出する。そして、速度算出部54は、算出したロータ回転速度Nmrにローパスフィルタ処理を施すことにより、フィルタ後回転速度Nfを算出する。算出されたフィルタ後回転速度Nfは、ステップS12b,S14b,S16bにおいて、ロータ回転速度Nmrに代えて用いられる。
【0118】
・動作領域に配置される個別領域の種類は図3図5に示したものに限らない。例えば、図3に示す動作領域に、高トルク精度領域を配置することなく、共振抑制領域の低速側に隣接させて低NV領域を配置してもよい。
【0119】
・回転電機としては、車載主機として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置や空調用電動コンプレッサを構成する電動機等、他の用途に用いられるものであってもよい。
【0120】
・回転電機としては、3相のものに限らず、4相以上のものであってもよい。
【0121】
・インバータを構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。
【0122】
・制御システムが搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。例えば、移動体が航空機の場合、制御システムを構成する回転電機は航空機の飛行動力源となる。また、例えば、移動体が船舶の場合、制御システムを構成する回転電機は船舶の航行動力源となる。さらに、制御システムの搭載先は、移動体に限らない。
【0123】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10…回転電機、20…インバータ、30…直流電源、50…制御装置。
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