(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240910BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20240910BHJP
【FI】
G06Q50/22
G16Y10/60
(21)【出願番号】P 2020156006
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 匠
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/003953(WO,A1)
【文献】特開2008-242746(JP,A)
【文献】特開2019-204419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16Y 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護度認定の対象者の状態を表す、センサーからの検出出力を取得するインターフェースと、
前記検出出力を用いて、要介護度認定のための1以上の指標の検出値を生成する生成部と、
前記1以上の指標の要介護度毎の参照値を格納する記憶装置にアクセスすることにより、前記対象者の要介護度の判定結果として、前記検出値が対応する参照値の要介護度を特定する判定部と、
前記判定結果を出力する出力部と、を備え、
前記参照値は、過去に各要介護度に認定された者に関するセンサーの検出出力に基づいて生成されて
おり、
前記センサーは、カメラおよび圧力センサーの少なくとも一方を含み、
前記1以上の指標は、行動範囲を含み、
前記生成部は、
前記センサーの検出出力を用いて、前記対象者の移動の軌跡を生成し、
方眼を構成するマス目のうち、前記軌跡を含むマス目の数に基づいて、前記行動範囲の指標の検出値を生成する、情報処理装置。
【請求項2】
要介護度認定の対象者の状態を表す、センサーからの検出出力を取得するインターフェースと、
前記検出出力を用いて、要介護度認定のための1以上の指標の検出値を生成する生成部と、
前記1以上の指標の要介護度毎の参照値を格納する記憶装置にアクセスすることにより、前記対象者の要介護度の判定結果として、前記検出値が対応する参照値の要介護度を特定する判定部と、
前記判定結果を出力する出力部と、を備え、
前記参照値は、過去に各要介護度に認定された者に関するセンサーの検出出力に基づいて生成されており、
前記センサーは、カメラを含み、
前記1以上の指標は、寝返り回数を含み、
前記生成部は、
前記カメラの撮像画像から、前記対象者の両肩のそれぞれの位置を特定し、
前記撮像画像から特定される前記両肩の間の距離の、正面を向いていることを表す第1の距離から横を向いている第2の距離への変化が検出されたときに、前記寝返り回数のカウント値を加算更新する、情報処理装置。
【請求項3】
前記1以上の指標は、複数の指標を含み、
前記判定部は、前記複数の指標の前記検出値が2以上の要介護度に対応する場合、前記複数の指標のうち最も多い指標が対応する要介護度を、前記判定結果として導出する、請求項1
または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記1以上の指標は、複数の指標を含み、
前記複数の指標のそれぞれには優先度が設定されており、
前記判定部は、前記複数の指標の前記検出値が2以上の要介護度に対応する場合、前記複数の指標の中で優先度が高い指標が対応する要介護度を、前記判定結果として導出する、請求項1
または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記1以上の指標は、複数の指標を含み、
前記出力部は、さらに、前記複数の指標のうち、前記判定結果として導出された要介護度とは異なる要介護度に対応する指標について通知を出力する、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記1以上の指標は、複数の指標を含み、
前記出力部は、さらに、前記複数の指標のうち、前記判定結果として導出された要介護度に対して所与の度合い以上異なる要介護度に対応する指標について通知を出力する、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記複数の指標は、歩行速
度、行動量、繰り返し行動、
および、睡眠時
間の中の少なくとも1つを含む、請求項
3~請求項
6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記生成部は、同種類の前記指標を複数回導出した場合の当該指標の統計値をさらに導出し、
前記出力部は、導出された統計値をさらに出力する、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
対象者の動作状態を取得するセンサーと、
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置から出力された、前記対象者の要介護度の判定結果を表示する出力装置と、を備える、情報処理システム。
【請求項10】
コンピューターのプロセッサーによって実行されることにより、前記コンピューターに、
要介護度認定の対象者の状態を表す、センサーからの検出出力を取得するステップと、
前記検出出力を用いて、要介護度認定のための1以上の指標のそれぞれの検出値を生成するステップと、
前記1以上の指標の要介護度毎の参照値を格納する記憶装置にアクセスすることにより、前記対象者の要介護度の判定結果として、前記検出値が対応する参照値の要介護度を特定するステップと、
前記判定結果を出力するステップと、を実行させ、
前記参照値は、過去に各要介護度に認定された者に関するセンサーの検出出力に基づいて生成されて
おり、
前記センサーは、カメラおよび圧力センサーの少なくとも一方を含み、
前記1以上の指標は、行動範囲を含み、
前記生成するステップは、
前記センサーの検出出力を用いて、前記対象者の移動の軌跡を生成することと、
方眼を構成するマス目のうち、前記軌跡を含むマス目の数に基づいて、前記行動範囲の指標の検出値を生成することと、を含む、プログラム。
【請求項11】
コンピューターのプロセッサーによって実行されることにより、前記コンピューターに、
要介護度認定の対象者の状態を表す、センサーからの検出出力を取得するステップと、
前記検出出力を用いて、要介護度認定のための1以上の指標のそれぞれの検出値を生成するステップと、
前記1以上の指標の要介護度毎の参照値を格納する記憶装置にアクセスすることにより、前記対象者の要介護度の判定結果として、前記検出値が対応する参照値の要介護度を特定するステップと、
前記判定結果を出力するステップと、を実行させ、
前記参照値は、過去に各要介護度に認定された者に関するセンサーの検出出力に基づいて生成されており、
前記センサーは、カメラを含み、
前記1以上の指標は、寝返り回数を含み、
前記生成するステップは、
前記カメラの撮像画像から、前記対象者の両肩のそれぞれの位置を特定することと、
前記撮像画像から特定される前記両肩の間の距離の、正面を向いていることを表す第1の距離から横を向いている第2の距離への変化が検出されたときに、前記寝返り回数のカウント値を加算更新することと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置に関し、特に、検出出力を取得するセンサーの対象者の、要介護度認定のためのADL(日常生活動作)指標を出力する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護の現場においても情報処理技術が利用されている。たとえば、特開2019-204419号公報(特許文献1)は、ユーザーの行動を検出するセンサー群からの情報の解析結果と電子カルテの解析結果とに基づいてユーザーの要介護度を特定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、要介護度認定(要支援度認定を含む)のためにADLに関する指標(以下、「ADL指標」とも称される)が利用されている。要介護度は、被介護者の実際の状態に基づいて認定されるべきである。しかしながら、被介護者は、要介護度をより高く認定されることを意図して、ADL指標の導出の際に、当該被介護者の状態を実際よりも悪く見せるように振る舞う場合がある。また、被介護者は、要介護度をより低く認定されることを意図して、ADL指標の導出の際に、当該被介護者の状態を実際よりも良く見せるように振る舞う場合がある。介護保険制度では、要介護度に応じて利用出来るサービスの種類が異なる場合があり、また、要介護度に応じて支給限度額が設定される場合がある。したがって、介護保険制度が公平に運用されるために、被介護者のADLに関する指標の導出においても公平性を担保するための技術が必要とされている。
【0005】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、要介護度認定のためのADL指標の導出において公平性を担保するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、要介護度認定の対象者の状態を表す、センサーからの検出出力を取得するインターフェースと、検出出力を用いて、要介護度認定のための1以上の指標の検出値を生成する生成部と、1以上の指標の要介護度毎の参照値を格納する記憶装置にアクセスすることにより、対象者の要介護度の判定結果として、検出値が対応する参照値の要介護度を特定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を備え、参照値は、過去に各要介護度に認定された者に関するセンサーの検出出力に基づいて生成されている、情報処理装置が提供される。
【0007】
1以上の指標は、複数の指標を含んでいてもよい。判定部は、複数の指標の検出値が2以上の要介護度に対応する場合、複数の指標のうち最も多い指標が対応する要介護度を、判定結果として導出してもよい。
【0008】
1以上の指標は、複数の指標を含んでいてもよい。複数の指標のそれぞれには優先度が設定されていてもよい。判定部は、複数の指標の検出値が2以上の要介護度に対応する場合、複数の指標の中で優先度が高い指標が対応する要介護度を、判定結果として導出してもよい。
【0009】
1以上の指標は、複数の指標を含んでいてもよい。出力部は、さらに、複数の指標のうち、判定結果として導出された要介護度とは異なる要介護度に対応する指標について通知を出力してもよい。
【0010】
1以上の指標は、複数の指標を含んでいてもよい。出力部は、さらに、複数の指標のうち、判定結果として導出された要介護度に対して所与の度合い以上異なる要介護度に対応する指標について通知を出力してもよい。
【0011】
複数の指標は、歩行速度、行動範囲、行動量、繰り返し行動、睡眠時間、および、寝返り回数の中の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0012】
生成部は、同種類の指標を複数回導出した場合の当該指標の統計値をさらに導出してもよい。出力部は、導出された統計値をさらに出力してもよい。
【0013】
対象者の動作状態を取得するセンサーと、上記情報処理装置と、上記情報処理装置から出力された要介護度の判定結果を表示する出力装置と、を備える、情報処理システムが提供される。
【0014】
コンピューターのプロセッサーによって実行されることにより、コンピューターに、要介護度認定の対象者の状態を表す、センサーからの検出出力を取得するステップと、検出出力を用いて、要介護度認定のための1以上の指標のそれぞれの検出値を生成するステップと、1以上の指標の要介護度毎の参照値を格納する記憶装置にアクセスすることにより、対象者の要介護度の判定結果として、検出値が対応する参照値の要介護度を特定するステップと、判定結果を出力するステップと、を実行させ、参照値は、過去に各要介護度に認定された者に関するセンサーの検出出力に基づいて生成されている、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、対象者の状態について取得されたセンサーの検出出力と、過去に各要介護度に認定された者の検出値を利用して生成された参照値とに基づいて、当該対象者の要介護度の判定結果が特定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】見守りシステムの構成の一例を示す図である。
【
図2】居室900におけるセンサーの検出範囲の一例を説明するための図である。
【
図3】見守りシステムのセンサーボックス100、管理サーバー200、および、携帯端末300のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】クラウドサーバー400のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】各居室900における圧力センサーの設置態様の一例を示す図である。
【
図6】入居者情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】「行動範囲」の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図9】寝返りの検出に利用される骨格情報の一例を示す図である。
【
図10】基準値データベースの内容を模式的に示す図である。
【
図11】「行動範囲」について登録されている基準値ゾーンを規定する数値の一例を示す図である。
【
図12】「行動範囲」について登録されている基準値ゾーンのグラフ表示の一例を示す図である。
【
図13】「歩行速度」について登録されている基準値ゾーンを規定する数値の一例を示す図である。
【
図14】「繰り返し行動」について登録されている基準値ゾーンを規定する数値の一例を示す図である。
【
図15】6種類の指標を利用した要介護度の特定の具体例を説明するための図である。
【
図16】「行動範囲」についての要介護度の特定を説明するための図である。
【
図17】「歩行速度」についての要介護度の特定を説明するための図である。
【
図18】「繰り返し行動」についての要介護度の特定を説明するための図である。
【
図19】要介護度の認定結果の出力画面の一例を示す図である。
【
図20】要介護度を特定するための処理の一例のフローチャートである。
【
図21】要介護度の認定結果の出力画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しつつ、情報処理装置の一実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0018】
[見守りシステムの構成]
図1は、見守りシステムの構成の一例を示す図である。見守り対象の一例として、施設の居室領域RMに設けられた各居室内の入居者が採用される。
図1の見守りシステムでは、居室領域RMに、居室900A,900Bが設けられている。居室900Aは、入居者800Aに割当てられている。居室900Bは、入居者800Bに割当てられている。
図1の例では、見守りシステムに含まれる居室の数は2であるが、当該数はこれに限定されない。
【0019】
見守りシステムでは、居室900Aに設置されたセンサーボックス100Aと、居室900Bに設置されたセンサーボックス100Bと、管理センターSTに設置された管理サーバー200と、アクセスポイントAPとが、ネットワークNTを介して接続される。
【0020】
見守りシステムでは、スタッフNAが携帯する携帯端末300A、および、スタッフNBが携帯する携帯端末300Bは、アクセスポイントAPを介してネットワークNTに接続される。さらに、センサーボックス100A,100B、管理サーバー200、および、アクセスポイントAPは、ネットワークNTを介して、クラウドサーバー400と通信可能である。
【0021】
居室900Aは、設備として、ベッド901A、トイレ902A、および、家具903Aを含む。居室900Aのドアには、当該ドアの開閉を検出するドアセンサー510Aが設置されている。トイレ902Aのドアには、トイレ902Aの開閉を検出するトイレセンサー520Aが設置されている。ベッド901Aには、入居者800Aの排泄情報を取得する臭いセンサー530Aが設置されている。入居者800Aは、当該入居者800Aのバイタル情報を検出するバイタルセンサー540Aを装着している。検出されるバイタル情報の一例は、入居者の体温である。他の例は、入居者の呼吸である。さらに他の例は、入居者の心拍数である。さらに他の例は、これらの情報の中の2以上の種類の情報である。居室900Aでは、入居者800Aはケアコール子機500Aを操作することができる。
【0022】
本明細書では、複数のセンサーボックス100A,100Bに共通する事項を言及する場合には、センサーボックス100A,100Bを総称する用語「センサーボックス100」が利用される。同様に、入居者800A,800B、居室900A,900B、ベッド901A,901B、トイレ902A,902B、家具903A,903B、ケアコール子機500A,500B、ドアセンサー510A,510B、トイレセンサー520A,520B、臭いセンサー530A,530B、バイタルセンサー540A,540Bのそれぞれについても同様に、用語「入居者800」、「居室900」、「トイレ902」、「家具903」、「ケアコール子機500」、「ドアセンサー510」、「トイレセンサー520」、「臭いセンサー530」、「バイタルセンサー540」が利用される。
【0023】
さらに、各居室には、各居室の音声情報を管理サーバー200などの外部へ出力するためのマイク(
図3のマイク550)が設置されていてもよい。
【0024】
センサーボックス100Aは、居室900A内の物体の挙動を検出するためのセンサーを内蔵する。センサーの一例は、物体の動作を検出するためのドップラーセンサーである。他の例は、カメラである。さらに他の例は、ケアコール子機500、ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、または、バイタルセンサー540である。センサーボックス100Aは、センサーとして、これらのセンサー中の少なくとも一つを含む。
【0025】
図2は、居室900におけるセンサーの検出範囲の一例を説明するための図である。
図2の例では、センサーボックス100は、居室900の天井CLに設置される。
【0026】
範囲ARは、センサーの検出範囲を概略的に表わす。センサーがドップラーセンサーである場合、当該ドップラーセンサーは、範囲AR内で生じた挙動を検出する。センサーがカメラである場合、当該カメラは、範囲AR内の画像を撮影する。
【0027】
図1に戻って、管理センターSTに設置された管理サーバー200は、ディスプレイ206および入力デバイス209に接続される。入力デバイス209は、たとえばキーボードである。
【0028】
図1の見守りシステムでは、アクセスポイントAPを介してネットワークNTに接続する携帯端末の数は2(携帯端末300A,300B)とされているが、当該数はこれに限定されない。本明細書では、携帯端末300A,300Bに共通する事項を言及する場合には、携帯端末300A,300Bを総称する用語「携帯端末300」が利用される。
【0029】
図1の見守りシステムにおける各要素間の通信は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0030】
センサーボックス100は、カメラ105、および、カメラ105からのデータを制御装置101に入力するためのインターフェイス105Aを含む。センサーボックス100は、また、ドップラーセンサー106、および、ドップラーセンサー106からのデータを制御装置101に入力するためのインターフェイス106Aを含む。インターフェイス105A,106Aのそれぞれは、たとえば、データの入出力を制御するための回路によって構成される。
【0031】
なお、センサーボックス100は、カメラ105および/またはドップラーセンサー106を必ずしも備えていなくてもよい。カメラ105および/またはドップラーセンサー106は、ドアゲートセンサー510等と同様に、センサーボックス100外に設けられてもよい。制御装置101は、センサーボックス100外に設けられたカメラ105および/またはドップラーセンサー106の検出出力を、所与のインターフェイスを介して取得してもよい。
【0032】
バイタルセンサー540は、必ずしも入居者に装着されていなくてもよい。一例では、バイタルセンサー540は、入居者から離間して設置された赤外線センサー等によって実現され、入居者の温度を検出することによってバイタル情報(体温)を出力する。他の例では、バイタルセンサー540は、ドップラーセンサー106によって実現される。ドップラーセンサー106は、入居者に向けてマイクロ波を照射する。当該マイクロ波は、入居者の心臓の拍動による胸部の僅かな変位によってドップラー効果を起こし、その周波数を変動させる。ドップラーセンサー106は、当該周波数の変動に基づいて、入居者の心拍を検出する。さらに他の例では、ドップラーセンサー106は、入居者の呼吸を検出する。
【0033】
[見守りシステムの各要素の構成]
図3は、見守りシステムのセンサーボックス100、管理サーバー200、および、携帯端末300のハードウェア構成を示す図である。
図4は、クラウドサーバー400のハードウェア構成を示す図である。以下、
図3および
図4を参照して、見守りシステムにおける各装置の構成の一例を説明する。
【0034】
(センサーボックス100)
センサーボックス100は、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、カメラ105と、ドップラーセンサー106と、無線通信装置107と、記憶装置120とを備える。
【0035】
制御装置101は、センサーボックス100を制御する。制御装置101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらの組み合わせなどによって構成される。
【0036】
通信インターフェイス104には、アンテナ(図示しない)などが接続される。センサーボックス100は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、管理サーバー200、携帯端末300、アクセスポイントAP、クラウドサーバー400、その他の通信端末などを含む。
【0037】
カメラ105は、一実現例では、近赤外カメラである。近赤外カメラは、近赤外光を投光するIR(Infrared)投光器を含む。近赤外カメラが用いられることにより、夜間でも居室900の内部を表わす画像が撮影され得る。他の実現例では、カメラ105は、可視光のみを受光する監視カメラである。さらに他の実現例では、カメラ105として、3Dセンサやサーモグラフィーカメラが用いられてもよい。センサーボックス100およびカメラ105は、一体的に構成されてもよいし、別体で構成されてもよい。
【0038】
ドップラーセンサー106は、たとえばマイクロ波ドップラーセンサーであり、電波を放射及び受信して、居室900内の物体の挙動(動作)を検出する。これにより、居室900内の入居者800の生体情報が検出され得る。一例では、ドップラーセンサー106は、24GHz帯のマイクロ波を各居室900のベッド901に向けて放射し、入居者800で反射した反射波を受信する。反射波は、入居者800の動作により、ドップラーシフトしている。ドップラーセンサー106は、当該反射波から、入居者800の呼吸状態や心拍数を検出し得る。
【0039】
無線通信装置107は、ケアコール子機500、ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、バイタルセンサー540、およびマイク550からの信号を受信し、当該信号を制御装置101へ送信する。たとえば、ケアコール子機500は、ケアコールボタン501を備え、当該ケアコールボタン501を操作されると、当該操作があったことを示す信号を無線通信装置107へ送信する。ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、および、バイタルセンサー540のそれぞれは、それぞれの検出出力を無線通信装置107へ送信する。
【0040】
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。記憶装置120は、制御装置101によって実行されるプログラム、および、当該プログラムの実行に利用される各種のデータを格納する。各種のデータは、入居者800の行動情報を含んでいてもよい。
【0041】
上記のプログラムおよびデータのうち少なくとも一方は、制御装置101がアクセス可能な記憶装置であれば、記憶装置120以外の記憶装置(たとえば、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリーなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、管理サーバー200や携帯端末300、など)に格納されていてもよい。
【0042】
本実施の形態の見守りシステムでは、各居室900に、圧力センサー560が設けられている。圧力センサー560はセンサーボックス100に接続されており、制御装置101は圧力センサー560の検出出力を取得し得る。居室900における圧力センサー560の設置態様は、
図5を参照して後述される。
【0043】
(行動情報)
上記の行動情報について、説明する。行動情報は、たとえば入居者800が所定の行動を実行したことを表わす情報である。一例では、所定の行動は、入居者800が起きたことを表わす「起床」、入居者800が寝具から離れたことを表わす「離床」、入居者800が寝具から落ちたことを表わす「転落」、および、入居者800が倒れたことを表わす「転倒」の4つの行動を含む。
【0044】
一実施の形態では、制御装置101が、各居室900に設置されたカメラ105が撮像した画像に基づいて、各居室900に関連付けられた入居者800の行動情報を生成する。制御装置101は、たとえば、上記画像から入居者800の頭部を検出し、この検出した入居者800の頭部における大きさの時間変化に基づいて、入居者800の「起床」、「離床」、「転倒」および「転落」を検出する。以下、行動情報の生成の一具体例を、より詳細に説明する。
【0045】
まず、記憶装置120に、居室900におけるベッド901の所在領域、第1閾値Th1、第2閾値Th2、および、第3閾値Th3が格納される。第1閾値Th1は、ベッド901の所在領域内において、横臥姿勢にあるときと座位姿勢にあるときとの間で入居者の頭部の大きさを識別する。第2閾値Th2は、ベッド901の所在領域を除く居室900内において、入居者の頭部の大きさに基づいて、当該入居者が立位姿勢にあるか否かを識別する。第3閾値Th3は、ベッド901の所在領域を除く居室RM内において、入居者の頭部の大きさに基づいて、当該入居者が横臥姿勢にあるか否かを識別する。
【0046】
制御装置101は、対象画像から、例えば背景差分法やフレーム差分法によって、入居者800の人物の領域として、動体領域を抽出する。制御装置101は、さらに、当該抽出した動体領域から、例えば円形や楕円形のハフ変換によって、予め用意された頭部のモデルを用いたパターンマッチングによって、頭部検出用に学習したニューラルネットワークによって導出された閾値を用いて、入居者800の頭部領域を抽出する。制御装置101は、当該抽出された頭部の位置および大きさから、「起床」、「離床」、「転倒」および「転落」を検出する。
【0047】
制御装置101は、上記のように抽出された頭部の位置がベッド901の所在領域内にあり、かつ、上記のように抽出された頭部の大きさが第1閾値Th1を用いることによって横臥姿勢の大きさから座位姿勢の大きさへと変化したことを検出した場合に、行動「起床」が発生したことを決定してもよい。
【0048】
制御装置101は、上記のように抽出された頭部の位置がベッド901の所在領域内からベッド901の所在領域外へ移動した場合であって、上記のように抽出された頭部の大きさが第2閾値Th2を用いることによって或る大きさから立位姿勢の大きさへと変化したことを検出した場合に、行動「離床」が発生したことを決定してもよい。
【0049】
制御装置101は、上記のように抽出された頭部の位置がベッド901の所在領域内からベッド901の所在領域外へ移動した場合であって、上記のように抽出された頭部の大きさが第3閾値Th3を用いることによって或る大きさから横臥姿勢の大きさへ時間変化した場合には、行動「転落」が発生したと決定してもよい。
【0050】
制御装置101は、上記のように抽出された頭部の位置がベッド901の所在領域を除く居室900内に位置し、かつ、抽出された頭部の大きさが第3閾値Th3を用いることによって或る大きさから横臥姿勢の大きさへと変化したことを検出した場合には、行動「転倒」が発生したと決定してもよい。
【0051】
以上説明されたように、一具体例では、センサーボックス100の制御装置101が、入居者800の行動情報を生成する。なお、見守りシステムでは、居室900内の画像を用いて、他の要素が入居者800の行動情報を生成してもよい。
【0052】
(管理サーバー200)
管理サーバー200は、制御装置201と、ROM202と、RAM203と、通信インターフェイス204と、表示インターフェイス205と、操作インターフェイス207と、記憶装置220とを含む。
【0053】
制御装置201は、管理サーバー200を制御する。制御装置201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはこれらの組み合わせなどによって構成される。
【0054】
通信インターフェイス204には、アンテナ(図示しない)などが接続される。管理サーバー200は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、センサーボックス100を含む。
【0055】
表示インターフェイス205は、ディスプレイ206と接続され、制御装置201などからの指令に従って、ディスプレイ206に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。
【0056】
操作インターフェイス207は、たとえば、USB(Universal Serial Bus)端子であり、入力デバイス209に接続される。操作インターフェイス207は、入力デバイス209からのユーザー操作を示す信号を受ける。入力デバイス209、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザーの入力操作を受け付けることが可能なその他の装置である。
【0057】
記憶装置220は、たとえば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。一実現例では、記憶装置220は、制御装置201によって実行されるプログラムを格納するが、当該プログラムは、制御装置201がアクセス可能な他の記憶装置に格納されていてもよい。
【0058】
(携帯端末300)
携帯端末300は、制御装置301と、RAM303と、通信インターフェイス304と、ディスプレイ305と、入力デバイス306と、内蔵メモリー320とを含む。
【0059】
制御装置301は、携帯端末300を制御する。制御装置301は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0060】
通信インターフェイス304には、アンテナ(図示しない)などが接続される。携帯端末300は、当該アンテナおよびアクセスポイントAP(
図1)を介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、センサーボックス100、管理サーバー200などを含む。
【0061】
ディスプレイ305は、たとえば有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイによって実現される。入力デバイス306は、たとえばディスプレイ305に重ねられたタッチセンサーによって実現される。当該タッチセンサーは、携帯端末300に対する各種操作をタッチ操作で受け付け、当該操作の内容を制御装置301へ出力する。
【0062】
内蔵メモリー320は、たとえば、eMMC(Embedded MultiMediaCard)などの記憶媒体である。一例として、内蔵メモリー320は、制御装置301によって実行されるプログラムを格納するが、当該プログラムは、制御装置301がアクセス可能な記憶装置であれば、内蔵メモリー320以外の記憶装置に格納されていてもよい。
【0063】
(クラウドサーバー400)
クラウドサーバー400は、制御装置401と、ROM402と、RAM403と、通信インターフェイス404と、記憶装置420とを含む。
【0064】
制御装置401は、クラウドサーバー400を制御する。制御装置401は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはこれらの組み合わせなどによって構成される。
【0065】
通信インターフェイス404には、アンテナ(図示しない)などが接続される。クラウドサーバー400は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、センサーボックス100、管理サーバー200を含む。
【0066】
記憶装置420は、たとえば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。一実現例では、記憶装置420は、制御装置401によって実行されるプログラムを格納するが、当該プログラムは、制御装置401がアクセス可能な他の記憶装置に格納あされていてもよい。
【0067】
(本明細書における「プログラム」という用語の意義)
見守りシステムにおいて、各種の「プログラム」は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供される場合があり得る。各種の「プログラム」は、任意の複数のプログラムが協働することによって実現され得る。一例では、センサーボックス100の制御装置101が第1のプログラムを実行することによって本明細書において説明される機能を実現する際に、当該第1のプログラムは、第2のプログラムの一部のモジュールを利用していてもよい。第1のプログラムは、当該機能の実現のための一部のモジュールを含まない場合であっても、当該機能の実現に主に貢献する場合、当該機能を実現するためのプログラムとしての趣旨から逸脱するものではない。また、本明細書において説明される機能は、その一部または全部が専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、本明細書において説明される機能を提供する装置は、その機能の一部または全部を外部装置から所謂クラウドサービスとして提供される場合もあり得る。
【0068】
(圧力センサーの設置態様)
図5は、各居室900における圧力センサーの設置態様の一例を示す図である。圧力センサー560は、測定用シート560A,560B,560Cを含む。一例では、測定用シート560A,560B,560Cのそれぞれは、格子状に配列されたキャパシター方式の圧力センサーである。圧力センサー560は、測定用シート560A,560B,560Cのそれぞれにおける圧力の分布および総量を検出出力として出力し得る。
【0069】
測定用シート560Aは、ベッド901上に設置される。これにより、測定用シート560Aは、ベッド901に印加される圧力(およびその分布)を検出し得る。
【0070】
測定用シート560Bは、車椅子905の座席(着座位置)に設置される。これにより、測定用シート560Bは、車椅子905の座席に印加される圧力(およびその分布)を検出し得る。
図5の例では、車椅子905がベッド901の脇に位置している。測定用シート560Bは無線通信用の通信インターフェースを含んでいてもよい。これにより、車椅子905が居室900内に設置されているか、居室900外に設置されているかに拘わらず、測定用シート560Bはセンサーボックス100と通信可能である。
【0071】
測定用シート560Cは、居室900の床面に設置される。これにより、測定用シート560Cは、居室900の床面に印加される圧力(およびその分布)を検出し得る。
【0072】
[要介護度認定のための指標の導出]
センサーボックス100の制御装置101は、各種のセンサーの検出出力を取得して、入居者800の要介護度認定のための指標(ADL指標)を導出し、導出された指標を出力する。この意味において、センサーは入居者800の動作を表す検出出力を、制御装置101に向けて出力する。このようなセンサーは、たとえば、ドップラーセンサー106、カメラ105、ケアコール子機500、ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、バイタルセンサー540、マイク550、および/または、圧力センサー560である。
【0073】
制御装置101は、インターフェイス106Aを介して、ドップラーセンサー106からのデータを取得する。制御装置101は、インターフェイス105Aを介して、カメラ105からのデータを取得する。制御装置101は、無線通信装置107を介して、ケアコール子機500、ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、バイタルセンサー540、マイク550、および、圧力センサー560からのデータを取得する。この意味において、インターフェイス106A、インターフェイス105A、および、無線通信装置107のそれぞれは、センサーボックス100において制御装置101が検出出力を取得するインターフェイスの一例である。
【0074】
[入居者ごとのADL指標の蓄積データ]
センサーボックス100は、1以上のセンサーの検出出力を利用して、入居者の行動に関する情報(ADL指標)を生成し、格納する。ADL指標は、入居者情報の一部として、たとえば記憶装置120に格納される。
【0075】
図6は、入居者情報のデータ構造の一例を示す図である。
図6には、ID「0001」を割り当てられた入居者について、各日の、複数のADL指標のそれぞれの値が示される。
図6では、紙面の関係上、2020年5月1日(2020.05.01)および2020年5月2日(2020.05.02)の値のみが示されている。
【0076】
なお、入居者情報として、さらに、入居者の氏名、年齢、性別などの他の種類の情報が記憶装置120に格納されていてもよい。また、見守りシステムでは、入居者情報は、センサーボックス100の記憶装置120においてだけでなく、または、記憶装置120の代わりに、管理サーバー200の記憶装置220等の他の記憶装置に格納されていてもよい。
【0077】
図6の例では、以下の6種類のADL指標が示される。
・睡眠時間
・行動範囲
・行動量
・歩行速度
・繰り返し行動
・寝返り回数
より具体的には、2020年5月1日について、睡眠時間、行動範囲、行動量、歩行速度、繰り返し行動、および、寝返り回数のそれぞれの指標の値として、Va(1)、Vb(1)、Vc(1)、Vd(1)、Ve(1)、および、Vf(1)が示されている。
【0078】
ここで、
図7を参照して、各ADL指標の内容を説明する。
図7は、各ADL指標の内容の一例を示す図である。
【0079】
指標「睡眠時間」は、各日の入居者の睡眠時間を表す。センサーボックス100は、たとえば、バイタルセンサー540からの検出出力において特定される心拍数が睡眠状態に相当するとして予め登録された心拍数である場合、そのような心拍数が継続する期間を入居者の睡眠時間として特定する。
【0080】
各指標の値が対象とする時間帯は、指標の種類ごとに異なっていても良い。たとえば、指標「睡眠時間」は、各日の午前10時から翌朝の9時59分までの期間における睡眠時間を表し、それ以外の指標は、各日の午前0時から午後11時59分までの期間における値を表しても良い。
【0081】
「行動範囲」は、居室において入居者が移動した軌跡に基づいて算出される面積を表す。
図8を参照して、「行動範囲」の算出方法の一例を説明する。
【0082】
図8は、「行動範囲」の算出方法の一例を説明するための図である。
図8では、居室に対して規定された方眼810と、入居者の位置の軌跡T1とが示される。また、方眼810を構成する144個(12x12)のマス目のうち、軌跡T1を含む9個のマス目にハッチングが施されている。
図8の例では、軌跡T1を含むマス目の面積が、「行動範囲」として算出される。
【0083】
センサーボックス100は、「行動範囲」を含む各指標の値の特定のために、入居者の位置を、カメラ105からの画像から特定してもよいし、測定用シート560Cからの圧力分布から特定してもよい。
【0084】
図7に戻って、指標「行動量」は、入居者がベッド外で滞在した時間を表す。指標「歩行速度」は、ベッド外の所与の距離以上の歩行の速度を表す。センサーボックス100は、「行動量」および「歩行速度」の値を、たとえば入居者の位置情報に基づいて特定し得る。
【0085】
指標「繰り返し行動」は、一定時間内に同じ始点から同じ終点までの移動を繰り返した回数を表す。センサーボックス100は、入居者の位置情報を用いて、繰り返し行動の値を特定してもよい。センサーボックス100は、各所のドアの開閉を検出するセンサーが特定の時間の長さ以下の間隔で開閉が繰り返された回数を「繰り返し行動」の値として特定してもよい。
【0086】
指標「寝返り回数」は、入居者の寝返りの回数を表す。センサーボックス100は、たとえば入居者の骨格情報を利用して、寝返りの回数を特定する。
【0087】
図9は、寝返りの検出に利用される骨格情報の一例を示す図である。
図9には、センサーボックス100の制御装置101がカメラ105からの画像のあるフレームに対して特定した、人物の骨格情報が示される。外郭OL1は人物の外郭を表し、点P10は人物の重心位置を表し、点P11,P12は、人物の両肩の位置を表す。
【0088】
横たわった状態で右または左に身体の向きを変えた人物が正面から撮影された場合、撮影される画像では、当該人物の一方の肩と他方の肩との間の距離が短くなることが想定される。また、右または左に向けられた人物の身体の向きが正面に向くように変化した場合、当該人物を正面から撮影した画像では、当該人物の一方の肩と他方の肩との間の距離が長くなることが想定される。
【0089】
制御装置101は、カメラ105からの画像を用いて、入居者の寝返りの回数をカウントしてもよい。寝返りの回数のカウントにおいて、制御装置101は、画像内の人物(入居者)の両肩の間の距離が、当該人物が正面を向いていることを表す距離DFから当該人物が横(右または左)に向いていることを表す距離DSへの変化が検出されたときに、カウント値を1加算更新してもよい。
【0090】
[ADL指標に対する基準値]
見守りシステムでは、要介護度認定のために、ADL指標ごとの基準値が利用される。より具体的には、センサーボックス100は、ADL指標を導出すると、当該ADL指標の値が、当該ADL指標について予め格納されている2以上の要介護度の基準値の中のどの基準値に対応するかを判定する。一実現例では、2以上の要介護度は、以下の8種類を含む。
【0091】
・自立
・要支援1
・要支援2
・要介護1
・要介護2
・要介護3
・要介護4
・要介護5
この中で、「自立」は、「歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能であり、かつ、薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態」を意味する。すなわち、「自立」は、支援および介護を必要としない状態を意味する。
【0092】
「要支援」は、「日常生活上の基本的動作については、ほぼ自分で行うことが可能であるが、日常生活動作の介助や現在の状態の防止により要介護状態となることの予防に資するよう手段的日常生活動作について何らかの支援を要する状態」を意味し、「要支援2」は「要支援1」より支援を要する度合いが高い。
【0093】
「要介護」は、「日常生活上の基本的動作についても、自分で行うことが困難であり、何らかの介護を要する状態」を意味し、「要介護5」は介護を要する度合いが最も高く、「要介護4」はその次に度合いが高く、「要介護3」はその次に度合いが高く、「要介護2」はその次に度合いが高く、「要介護1」は最もその度合いが低い。なお、「要介護1」は「要支援2」より、支援(介護)を必要とする度合いが高い。
【0094】
図10は、基準値データベースの内容を模式的に示す図である。
図10に示された例では、基準値データベース1000は、上記8種類の要介護度のそれぞれについて、2以上の指標(「歩行速度」「行動範囲」「行動量」「繰り返し行動」「睡眠時間」「寝返り回数」など)の基準値のセットを含む。
図10では、紙面の関係上、要介護度「自立」についての基準値のセット1010と、要介護度「要介護5」についての基準値のセット1020とが示されている。
【0095】
セット1010における各指標の基準値ゾーンは、過去の要介護度認定において要介護度「自立」に認定された者に対して、各指標について特定された値の範囲を表す。たとえば、基準値ゾーン1011は、過去の要介護度認定において、要介護度「自立」と認定された者の「歩行速度」について特定された指標の値の範囲を表す。
【0096】
セット1020における各指標の基準値ゾーンは、過去の要介護度認定において要介護度「要介護5」に認定された者に対して、各指標について特定された値の範囲を表す。たとえば、基準値ゾーン1021は、過去の要介護度認定において、要介護度「要介護5」と認定された者の「歩行速度」について特定された指標の値の範囲を表す。基準値ゾーン1011と比較して、基準値ゾーン1021の範囲は、歩行速度がより遅い範囲に対応する。
【0097】
より具体的には、
図10において、「歩行速度」は左方ほど小さい数値に対応する。歩行速度の値が小さいほど、支援および介護を必要とする度合いが高いと考えられる。
図10の例では、「要介護5」の基準値ゾーン1021は、「自立」の基準値ゾーン1011よりも小さい値に対応する。
【0098】
図10において、「行動範囲」は左方ほど小さい数値に対応する。行動範囲の値が小さいほど、支援および介護を必要とする度合いが高いと考えられる。
図10の例では、「行動範囲」について、「要介護5」の基準値ゾーンは、「自立」の基準値ゾーンよりも小さい値に対応する。
【0099】
図10において、「行動量」は左方ほど小さい数値に対応する。行動量の値が小さいほど、支援および介護を必要とする度合いが高いと考えられる。
図10の例では、「行動量」について、「要介護5」の基準値ゾーンは、「自立」の基準値ゾーンよりも対応する値が小さい。
【0100】
図10において、「繰り返し行動」は右方ほど大きい数値に対応する。繰り返し行動の値が大きいほど、支援および介護を必要とする度合いが高いと考えられる。
図10の例では、「繰り返し行動」について、「要介護5」の基準値ゾーンは、「自立」の基準値ゾーンよりも大きい値に対応する。
【0101】
図10において、「睡眠時間」は左方ほど短い時間に対応する。睡眠時間が短いほど、支援および介護を必要とする度合いが高いと考えられる。
図10の例では、「睡眠時間」について、「要介護5」の基準値ゾーンは、「自立」の基準値ゾーンよりも短い睡眠時間に対応する。
【0102】
図10において、「寝返り回数」は左方ほど小さい数値に対応する。寝返り回数の値が小さいほど、支援および介護を必要とする度合いが高いと考えられる。
図10の例では、「寝返り回数」について、「要介護5」の基準値ゾーンは、「自立」の基準値ゾーンよりも対応する値が小さい。
【0103】
図10の例では、6種類の指標のそれぞれについて、基準値ゾーンが示されている。なお、見守りシステムにおいて、基準値ゾーンを登録される指標の種類および数は
図10に示されたものに限定されない。
【0104】
次に、
図11~
図14を参照して、ADL指標の基準値の例をより具体的に説明する。
図11は、「行動範囲」について登録されている基準値ゾーンを規定する数値の一例を示す図である。
図11の例では、8種類の要介護度のそれぞれについて、「行動範囲」の指標の値について、最小値、平均値、および、最大値が示されている。たとえば、要介護度「自立」について、最小値、平均値、および、最大値のそれぞれとして、10m
2、11m
2、および、12m
2のそれぞれが示されている。要介護度「要介護1」について、最小値、平均値、および、最大値のそれぞれとして、7m
2、8m
2、および、9m
2のそれぞれが示されている。
【0105】
図12は、「行動範囲」について登録されている基準値ゾーンのグラフ表示の一例を示す図である。
図11および
図12を参照して説明されるように、「行動範囲」の指標の値は、1m
2~12m
2の範囲において、1以上の要介護度のいずれかに関連付けられる。センサーボックス100は、入居者について特定された値をカバーする基準値ゾーンを含む要介護度を、当該入居者の要介護度として特定する。
【0106】
入居者について特定された値が2以上の要介護度によってカバーされる場合、センサーボックス100は、より平均値に近い要介護度を、入居者の要介護度として特定してもよい。たとえば、入居者の指標の値が9.2m2である場合、当該値は、2つの要介護度(「要支援1」および「要支援2」)の基準値ゾーンに含まれる。ここで、「要支援2」の平均値(9m2)は、「要支援1」の平均値(10m2)よりも入居者の指標の値(9.2m2)に近い。したがって、この場合、センサーボックス100は入居者の要介護度として「要支援2」を特定する。
【0107】
図13は、「歩行速度」について登録されている基準値ゾーンを規定する数値の一例を示す図である。
図13の例では、8種類の要介護度のうち5種類の要介護度(「自立」~「要介護2」)について、指標の値が登録されている。たとえば、要介護度「自立」について、最小値、平均値、および、最大値のそれぞれとして、1000mm/s、1100mm/s、および、1200mm/sのそれぞれが示されている。要介護度「要介護1」について、最小値、平均値、および、最大値のそれぞれとして、700mm/s、750mm/s、および、800mm/sのそれぞれが示されている。
図13に示された基準値ゾーンの規定によれば、センサーボックス100は、入居者について特定された指標の値を利用して、当該入居者に対して、5種類の要介護度(「自立」~「要介護度2」)のいずれかを特定できる。
【0108】
図14は、「繰り返し行動」について登録されている基準値ゾーンを規定する数値の一例を示す図である。
図14の例では、8種類の要介護度のそれぞれについて、「繰り返し行動」の指標の値について、最小値、平均値、および、最大値が示されている。たとえば、要介護度「自立」について、最小値、平均値、および、最大値のそれぞれとして、0回、1回、および、2回のそれぞれが示されている。要介護度「要介護1」について、最小値、平均値、および、最大値のそれぞれとして、6回、7回、および、8回のそれぞれが示されている。
【0109】
[基準値を利用した要介護度認定]
次に、基準値を利用した要介護度の認定について説明する。
【0110】
まず、センサーボックス100は、要介護度認定の対象者である入居者について、1以上の指標のそれぞれの値を特定する。一例では、センサーボックス100は、ある特定の日について特定された指標の値(たとえば、
図6の2020年5月1日の値)が特定される。他の例では、複数の日について特定された指標の値を用いて算出された統計値(たとえば、平均値)が特定される。
【0111】
次に、センサーボックス100は、特定された指標の値が、どの要介護度の基準値ゾーンに含まれるかを特定する。
【0112】
1種類の指標のみを利用する場合、センサーボックス100は、当該1種類の指標の値が含まれる基準値ゾーンに対応する要介護度を、入居者の要介護度として特定する。
【0113】
たとえば、「歩行速度」の指標のみを要介護度認定に利用する場合であって、入居者の「歩行速度」の指標の値が要介護度「要介護1」の基準値ゾーンに含まれる場合、センサーボックス100は、入居者の要介護度として「要介護1」を特定する。
【0114】
2種類以上の指標を利用する場合、センサーボックス100は、当該2種類以上のそれぞれについて、要介護度を特定する。そして、センサーボックス100は、2種類以上の指標において最も多く特定された要介護度を、最終的な入居者の要介護度として特定する。
【0115】
たとえば、6種類の指標を利用する場合であって、当該6種類のうち4種類について「要介護1」を特定した場合(たとえば、4種類について「要介護1」、1種類について「要介護5」、1種類について「要介護2」を特定した場合)、センサーボックス100は、入居者の最終的な要介護度として「要介護1」を特定する。
【0116】
図15は、6種類の指標を利用した要介護度の特定の具体例を説明するための図である。
図15では、入居者(認定対象者)に対して特定された6種類の指標の値が、「認定対象者の指標」としてプロットされている。
図15の例では、6種類の指標のうち4種類(「歩行速度」「行動範囲」「行動量」「寝返り回数」)について要介護度「要介護1」が特定されたため、入居者の最終的な要介護度として「要介護1」が特定される。
図15では、参考として、入居者に対して特定された6種類の指標の値のプロットが、「要介護1」の基準値のセット1500とともに示されている。なお、
図15に示されたような指標のプロットは、1回の特定により導出された指標の値であってもよいし、複数回の特定により導出された指標の統計値(平均値、中央値、等)であってもよい。
【0117】
ここで、
図16~
図18を参照して、指標ごとの要介護度の特定について、より具体的に説明する。
【0118】
図16は、「行動範囲」についての要介護度の特定を説明するための図である。
図16には、入居者の「行動範囲」の値が「8.3m
2」であった場合の例が示される。
【0119】
図16において、「最小」「平均」「最大」のそれぞれは、各要介護度について登録されている「最小値」「平均値」「最大値」のそれぞれを表す。
図16において、「差分」は、各要介護度の平均値と入居者の指標の値との差分を表す。センサーボックス100は、入居者について特定された指標の値と各要介護度の平均値との差分(絶対値)が最も小さい要介護度を、入居者の要介護度として特定する。
【0120】
図16の例では、「要介護1」が最も小さい差分(-0.3m
2:絶対値0.3m
2)を有する。したがって、
図16の例では、センサーボックス100は、「行動範囲」について、入居者の要介護度として「要介護1」を特定する。
【0121】
図17は、「歩行速度」についての要介護度の特定を説明するための図である。
図17には、入居者の「歩行速度」の値が「720mm/s」であった場合の例が示される。
【0122】
図17の「最小」「平均」「最大」のそれぞれは、各要介護度について登録されている「最小値」「平均値」「最大値」のそれぞれを表す。
図17の例では、「要介護1」が最も小さい差分(30mm/s:絶対値30mm/s)を有する。したがって、
図17の例では、センサーボックス100は、「歩行速度」について、入居者の要介護度として「要介護1」を特定する。
【0123】
図18は、「繰り返し行動」についての要介護度の特定を説明するための図である。
図18には、入居者の「繰り返し行動」の値が「16回」であった場合の例が示される。
【0124】
図18の「最小」「平均」「最大」のそれぞれは、各要介護度について登録されている「最小値」「平均値」「最大値」のそれぞれを表す。
図18の例では、「要介護5」が最も小さい差分(-1回:絶対値1回)を有する。したがって、
図18の例では、センサーボックス100は、「繰り返し行動」について、入居者の要介護度として「要介護5」を特定する。
【0125】
図15に戻って、一実現例では、センサーボックス100は、入居者について複数の指標のそれぞれについて要介護度を特定した場合、最も多くの指標について特定された要介護度を入居者の最終的な要介護度として特定する。なお、各指標に対して優先度が設定されていてもよく、センサーボックス100は、最終的な要介護度を当該優先度に基づいて特定してもよい。各指標に対する優先度は、たとえば見守りシステムの管理人によって設定される。
【0126】
優先度の一例として、6種類の指標のそれぞれに以下のようなポイントが設定されていることを仮定して、具体例を説明する。
【0127】
・睡眠時間(2ポイント)
・行動範囲(4ポイント)
・行動量(4ポイント)
・歩行速度(1ポイント)
・繰り返し行動(1ポイント)
・寝返り回数(3ポイント)
このような場合、センサーボックス100は、指標の総合ポイントに基づいて、入居者の最終的な要介護度を特定してもよい。
【0128】
たとえば、「睡眠時間」「歩行速度」「繰り返し行動」および「寝返り回数」については「要介護1」が特定され、「行動範囲」「行動量」については「要支援2」が特定されたとする。この場合、センサーボックス100は、「要介護1」の指標と「要支援2」の指標のそれぞれの合計ポイントを算出する。上記の設定に従えば、「要介護1」の合計ポイントは7(2+1+1+3)であり、「要支援2」の合計ポイントは8(4+4)である。すなわち、「要支援2」の方が、「要介護1」より合計ポイントが高い。したがって、この場合、センサーボックス100は、「要支援2」を入居者の最終的な要介護度として特定する。
【0129】
[要介護度の認定結果の出力例]
センサーボックス100は、入居者に対して最終的な要介護度を特定した場合、たとえば管理サーバー200のディスプレイ206に、その結果を表示してもよい。また、センサーボックス100は、さらに、複数の指標のそれぞれについて特定された要介護度を用いて最終的な要介護度を特定した場合、上記複数の指標について特定された要介護度のうち一部が最終的な要介護度と異なることを表示してもよい。センサーボックス100による結果表示の具体例を、
図19を参照して説明する。
【0130】
図19は、要介護度の認定結果の出力画面の一例を示す図である。
図19において、画面1900は、領域1902,1904,1906,1908を含む。領域1902は、要介護度認定の対象者(入居者)の名前を表す。入居者の名前は、入居者情報から取得され得る。
【0131】
領域1904は、入居者に対して特定された最終的な要介護度の結果を表す。
領域1906は、入居者に対して特定された複数の指標のそれぞれの要介護度の結果を表す。
図19の例では、名前「山田太郎」という入居者に対して、最終的な要介護度として「要介護1」が特定され、また、4種類の指標(歩行速度、行動範囲、行動量、および寝返り回数)について「要介護1」が、1種類の指標(繰り返し行動)については「要介護5」が、1種類の指標(睡眠時間)については「要介護2」が、それぞれ特定されている。
【0132】
センサーボックス100は、画面1900において、最終的に決定された要介護度に対して所与のレベル以上(たとえば、2段階以上)離れた要介護度を特定された指標を強調してもよい。
【0133】
領域1906では、「繰り返し行動」について特定された「要介護5」が枠で強調されている。これは、「要介護5」が、
図19の例において最終的に特定された「要介護1」に対して4段階離れていることに基づく。なお、「睡眠時間」については強調はなされていない。「要介護2」は、「要介護1」に対して1段階しか離れていないからである。
【0134】
領域1908は、最終的に特定された要介護度に対して大きく離れた要介護度を特定された指標について、メッセージを表示する。
【0135】
領域1908では、「繰り返し行動」という指標の名称とともに「基準値より高い要介護度に対応」というメッセージを含む。一例では、センサーボックス100は、最終的に特定された要介護度に対して上記所与のレベル以上離れた要介護度を特定された指標について、どのように離れたかに基づいて、上記メッセージを生成する。
【0136】
たとえば、センサーボックス100は、最終的に特定された要介護度に対して、より高い要介護度(支援および介護を必要とする度合いがより高い要介護度)を特定された指標については、
図19の領域1908に示されたメッセージを生成する。一方、センサーボックス100は、最終的に特定された要介護度に対して、より低い要介護度(支援および介護を必要とする度合いがより低い要介護度)を特定された指標については、たとえば、「基準値より低い要介護度に対応」というメッセージを生成する。センサーボックス100は、生成されたメッセージを、
図19に示されたようにディスプレイ206に表示する。
【0137】
最終的に特定された要介護度に対する、各指標に対して特定された要介護度の表示態様は、
図19に示されたものに限定されない。たとえば、最終的に特定された要介護度とは異なる要介護度を特定されたすべての指標(
図19の例の繰り返し行動および睡眠時間)が強調表示されてもよい。各指標は、異なるレベルの数に応じて異なる態様で強調表示されてもよい。たとえば、異なるレベルが上記所与の数未満である場合、指標は一重線で強調表示され、異なるレベルが上記所与の数以上である場合、指標は二重線で強調表示されてもよい。
【0138】
[処理の流れ]
次に、入居者の要介護度を特定するためにセンサーボックス100において実行される処理について説明する。
図20は、要介護度を特定するための処理の一例のフローチャートである。センサーボックス100は、たとえば制御装置101のプロセッサーに所与のプログラムを実行させることによって、
図20の処理を実現する。
【0139】
図20を参照して、ステップS2000にて、センサーボックス100は、要介護度の特定の要求を取得したか否かを判断する。見守りシステムでは、管理者は、たとえば管理サーバー200または携帯端末300を利用して、センサーボックス100に、要介護度の特定の要求を送信する。当該要求を受信すると、センサーボックス100は、当該要求を取得したと判断する。センサーボックス100は、上記要求を取得したと判断するまでステップS2000へ制御を留め(ステップS2000にてNO)、上記要求を取得したと判断すると(ステップS2000にてYES)、ステップS2002へ制御を進める。
【0140】
ステップS2002にて、センサーボックス100は、要介護度の特定のために、各種の指標(「行動範囲」等)を生成するためのセンサーの検出出力を取得する。
【0141】
ステップS2004にて、センサーボックス100は、1以上の指標のそれぞれを生成する。センサーボックス100は、入居者の1日分の検出出力を利用して指標を生成してもよいし、複数日分の検出出力から特定される代表値(平均値、最大値、最小値、等)を利用して指標を生成してもよい。
【0142】
ステップS2006にて、センサーボックス100は、ステップS2004にて生成された1以上の指標のそれぞれに対して要介護度を特定する。
【0143】
ステップS2008にて、センサーボックス100は、ステップS2006において特定された1以上の指標のそれぞれに対して特定された要介護度を利用して、最終的な要介護度を特定する。ステップS2006において1種類の指標に対してのみ要介護度が特定された場合、ステップS2008では当該特定された要介護度が最終的な要介護度として特定される。ステップS2006において2種類以上の指標に対して要介護度が特定された場合、一実現例では、ステップS2008では、最も多くの指標に対して特定された要介護度が最終的な要介護度として特定される。
【0144】
ステップS2010にて、センサーボックス100は、ステップS2006において1以上の指標のそれぞれに対して特定された要介護度のうち、ステップS2008において特定された最終的な要介護度と異なるものがあるか否かを判断する。センサーボックス100は、そのような要介護度があると判断すると(ステップS2010にてYES)、ステップS2012へ制御を進め、そうでなければ(ステップS2010にてNO)、ステップS2014へ制御を進める。
【0145】
ステップS2012にて、センサーボックス100は、
図19の領域1908を参照して説明されたように、指標について特定された要介護度と最終的に入居者に対して特定された要介護度とが異なることを通知するためのメッセージを生成する。
【0146】
ステップS2014にて、センサーボックス100は、通信インターフェイス104を利用して、要介護度の特定の結果を、ディスプレイ206等の出力装置に向けて出力する。通信インターフェイス104は出力部の一例であり、ステップS2014の制御により、ディスプレイ206等の出力装置に画面1900等の画面が表示される。その後、センサーボックス100は
図20の処理を終了させる。
【0147】
以上説明された本実施の形態では、センサーボックス100は、入居者の居室内の状態を表す各種のセンサーの検出出力を取得し、当該検出出力からADL指標の値(検出値。たとえば、「歩行走度」の値。)を生成し、基準値(
図10のゾーン1010,1020等)と生成されたADL指標の値とを用いて、入居者の要介護度を特定する。基準値は、過去、要介護度認定の対象となった者に対して最終的に特定された要介護度と、当該者の状態を表すセンサーの検出出力とに基づいて生成されたものである。
【0148】
本実施の形態では、ADL指標として、歩行速度、行動範囲、行動量、繰り返し行動、睡眠時間、および、寝返り回数が利用された。なお、要介護度認定のために利用されるADL指標は、これらの中の少なくとも1つであればよく、また、これら以外の種類のADL指標が利用されてもよい。また、ADL指標に関する行動以外の行動を数値化したものでもよい。なお、歩行速度、行動範囲、行動量、繰り返し行動、睡眠時間、および、寝返り回数のそれぞれの値(検出値)は、入居者の要介護度との相関が比較的高いものと考えられる。
【0149】
本実施の形態では、要介護度を特定するセンサーボックス100は、情報処理装置の一例である。センサーボックス100は、カメラ105およびドップラーセンサー106等のセンサーを含む。ただし、情報処理装置は、センサーの検出出力を取得することができれば、センサーを含む必要は無い。また、要介護度を特定する処理は、センサーボックス100において実行される必要は無く、管理サーバー200やクラウドサーバー400において実行されてもよい。
【0150】
センサーボックス100は、要介護度の認定結果の出力画面において、さらに、指標に対する補助的な情報を表示してもよい。補助的な情報の一例は、複数の期間のそれぞれの検出出力を利用して指標を導出した場合の、各回の指標の導出に利用された測定値(歩行速度、行動範囲、等)の統計値である。出力される統計値は、たとえば、測定値の、最小値、最大値、平均値、標準偏差、および/または、分散である。
【0151】
図21は、要介護度の認定結果の出力画面の他の例を示す図である。
図21の画面2100は、
図19の画面1900と比較して、領域1906の代わりに領域2101を含む。領域2101には、各指標の要介護度の結果とともに、各指標の導出に利用された歩行速度などの測定値の最小値と最大値とが示されている。より具体的には、Va(min)とVa(max)のそれぞれは、歩行速度の最小値と最大値のそれぞれを表す。Vb(min)とVb(max)のそれぞれは、行動範囲の最小値と最大値のそれぞれを表す。Vc(min)とVc(max)のそれぞれは、行動量の最小値と最大値のそれぞれを表す。Vd(min)とVd(max)のそれぞれは、繰り返し行動の最小値と最大値のそれぞれを表す。Ve(min)とVe(max)のそれぞれは、睡眠時間の最小値と最大値のそれぞれを表す。Vf(min)とVf(max)のそれぞれは、寝返り回数の最小値と最大値のそれぞれを表す。
【0152】
一実現例では、センサーボックス100は、ステップS2004において、複数の期間の検出出力のそれぞれについて指標を生成し、生成された複数の指標の代表値(平均値、中央値、等)を最終的な指標として特定してもよい。そして、ステップS2004において、センサーボックス100は、複数の指標についての統計値(
図21の例では、最小値および最大値)を一時的に記憶装置120に格納する。そして、センサーボックス100は、ステップS2014において、一時的に格納した統計値を、出力画面に含めても良い。
【0153】
見守りシステムの管理者は、上記統計値を確認することにより、指標の導出のための動作に入居者の演技が含まれていたか否かを推測し得る。たとえば、最小値と最大値の差が大きい場合、管理者は、指標の導出のための動作に入居者の演技が含まれていたことを推測できる。
【0154】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0155】
100,100A,100B センサーボックス、101,201,301,401 制御装置、105 カメラ、105A,106A インターフェイス、106 ドップラーセンサー、800,800A,800B 入居者、900,900A,900B 居室、1000 基準値データベース、1010,1020,1500 セット、1011,1021 基準値ゾーン。