IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特許7552187積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ
<>
  • 特許-積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ 図1
  • 特許-積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ 図2
  • 特許-積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ 図3
  • 特許-積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ 図4
  • 特許-積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】積層シート、連続シートおよび手荷物用タグ
(51)【国際特許分類】
   B42D 11/00 20060101AFI20240910BHJP
   B42D 15/04 20060101ALI20240910BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20240910BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B42D11/00 E
B42D15/04 D
G09F3/02 N
G09F3/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020156835
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050737
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】宮内 俊輔
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038123(JP,A)
【文献】特開2015-165330(JP,A)
【文献】特開2019-197148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 11/00
B42D 15/04
G09F 3/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離片を有する表面基材と支持基材とが接着剤層を介して接着されており、前記剥離片と支持基材の間には、剥離層が設けられて、前記支持基材から前記剥離片が剥離可能な積層シートが切り離し予定線を介して複数連接されてなる連続シートであって、
前記支持基材の前記表面基材と反対側の面には、感圧接着剤を含んだ自着層が形成されており、前記自着層は、前記感圧接着剤が塗布された接着剤塗布部と、前記感圧接着剤が塗布されていない接着剤非塗布部が、積層シートの一辺に対して斜め方向に延びるように交互に形成されており、
隣接する各前記積層シートの接着剤塗布部の延びる方向が、前記切り離し予定線に対して互いに対称な方向であり、
前記切り離し予定線における接着剤塗布部の端部の中心が互いにずれている、連続シート。
【請求項2】
前記接着剤塗布部の幅は、前記接着剤非塗布部の幅より狭い、請求項1に記載の連続シート
【請求項3】
前記接着剤塗布部が、前記積層シートの一辺となす角度は、30度以上60度以下である、請求項1または請求項2に記載の連続シート
【請求項4】
前記剥離片の表面、および前記表面基材における前記剥離片以外の部分の表面には、配送情報欄が形成されており、配送伝票として機能する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の連続シート
【請求項5】
前記剥離片の表面、および前記表面基材における前記剥離片以外の部分の表面には、配送情報欄が形成されており、前記表面基材における前記剥離片以外に形成された配送情報欄以外の部分に重ねられた自着層が、取付対象に巻き付けるための取付部として機能することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の連続シート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向を有する取付対象に巻き付けるための積層シート、連続シートおよび手荷物用タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手荷物(キャリーバッグ、リュック、ボストンバッグなど)を配送する場合、手荷物を樹脂製の透明カバーで覆い、透明カバーにあるポケットに配送先を表示した配送伝票を入れて運ぶ運用であったり、大きめのタグを手荷物に巻きつけ、タグに配送伝票を貼ったり、袋型のタグを手荷物に巻きつけ、タグ(袋)の中に配送伝票を入れるなど、配送伝票を用いた運用が多く行われている。このとき用いられる配送伝票としては、複数の基材を積層した積層シートの形態であって、粘着層、剥離層を用いたものが用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-94974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の配送伝票では、剥離紙を剥がすと粘着力が比較的強い粘着剤層が表出するため、巻き付けた配送伝票が、手荷物の取っ手に付着して手荷物を汚す惧れがある。この対策として一部の粘着剤を表出させて接着させる方法が考えられるが、巻き付ける手荷物の取っ手部と断面を輪状にする配送伝票の間に空間ができてしまい、配送伝票を固定するのが難しい。また、荷物に巻き付けるために表出させている接着剤等を節約したいという要望もある。
【0005】
そこで、本発明は、表出した接着剤を節約することが可能であるとともに、取付対象に容易に固定することが可能な積層シート、連続シートおよび手荷物用タグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、
剥離片を有する表面基材と支持基材とが接着剤層を介して接着されており、前記剥離片と支持基材の間には、剥離層が設けられて、前記支持基材から前記剥離片が剥離可能な積層シートであって、
前記支持基材の前記表面基材と反対側の面には、感圧接着剤を含んだ自着層が形成されており、前記自着層は、前記感圧接着剤が塗布された接着剤塗布部と、前記感圧接着剤が塗布されていない接着剤非塗布部が、積層シートの一辺に対して斜め方向に延びるように交互に形成されている、積層シートを提供する。
【0007】
また、本発明に係る積層シートは、
前記接着剤塗布部の幅は、前記接着剤非塗布部の幅より狭くてもよい。
【0008】
また、本発明に係る積層シートは、
前記接着剤塗布部が、前記積層シートの一辺となす角度は、30度以上60度以下であってもよい。
【0009】
また、本発明に係る積層シートは、
前記剥離片の表面、および前記表面基材における前記剥離片以外の部分の表面には、配送情報欄が形成されており、配送伝票として機能するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明に係る積層シートは、
前記剥離片の表面、および前記表面基材における前記剥離片以外の部分の表面には、配送情報欄が形成されており、前記表面基材における前記剥離片以外に形成された配送情報欄以外の部分に重ねられた自着層が、取付対象に巻き付けるための取付部として機能するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明では、
前記積層シートが切り離し予定線を介して複数連接されてなる連続シートであって、
隣接する各前記積層シートの接着剤塗布部が延びる方向が、前記切り離し予定線に対して互いに対称な方向であり、
前記切り離し予定線における接着剤塗布部の端部の中心が互いにずれている、連続シートを提供する。
【0012】
また、本発明では、
剥離片を有する表面基材と支持基材とが接着剤層を介して接着されているとともに、前記剥離片と支持基材の間には、剥離層が設けられて、前記支持基材から前記剥離片が剥離可能な手荷物用タグであって、
前記支持基材の前記表面基材と反対側の面には、感圧接着剤を含んだ自着層が形成されており、前記自着層は、前記感圧接着剤が塗布された接着剤塗布部と、前記感圧接着剤が塗布されていない接着剤非塗布部が、積層シートの一辺に対して斜め方向に延びるように交互に形成されている手荷物用タグを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表出した接着剤を節約することが可能であるとともに、取付対象を汚す惧れを低減しつつ、取付対象に容易に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る積層シートを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る連続シートを示す図である。
図3図2(b)におけるB部分の拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る積層シートの使用例を示す図である。
図5】自着層7どうしが重ねられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<1.積層シートの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る積層シートを示す図である。図1においては、一例として手荷物タグの形態をした積層シートを示している。図1のうち、図1(a)は表側平面図、図1(b)は図1(a)におけるA-Aに対応する断面図、図1(c)は裏側平面図である。積層シート1において、実際には、どちらを表(おもて)側、どちらを裏側としてもよいが、便宜上、図1(a)に示す側を表側、図1(c)に示す側を裏側として、以下説明していく。また、図1(b)の層構成において、どちらが上層であってどちらが下層であってもよいが、便宜上、図1(b)の上側(表面基材2の側)を上層、図1(b)の下側(自着層7の側)を下層として、以下説明していく。図1において表現された各層の厚みの比率、各層の厚みと平面図の面積との比率については、図示の都合上、必ずしも実際のものと同じではない。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る積層シートは、手荷物タグとしての機能も備えている。手荷物タグは、空港等において、手荷物を管理するために、手荷物に添付するためのものであり、荷物を配送するための配送伝票などと実質的に同じ機能を有している。そのため、表面に配送情報欄(図示省略)が印刷された配達票2aと、表面に配送情報欄(図示省略)が印字された貼付票2bと、荷物に取り付けるための取付部2cが図中左右方向(横方向)に配置された表面基材2が最上層に設けられている。すなわち、剥離片である配達票2aの表面、および表面基材2における剥離片以外の部分である貼付票2bの表面には、配送情報欄が形成されている。
【0017】
そして、表面基材2における剥離片以外の部分である貼付票2bに形成された配送情報欄以外の部分である取付部2cに重ねられた自着層7が、取付部2cとともに取付対象に巻き付けるために機能する。配送情報欄は、一般的な配送伝票に形成されるものであり、図示を省略しているが、記入/印字枠を備え、その記入/印字枠内に、届け先・送り主双方の住所・氏名等が記入及び/または印字が可能となっている。
【0018】
表面基材2は、図1(a)に示すように、図面上下方向(縦方向)に形成された分離予定線9aにより配達票2aと貼付票2bに分離可能に形成されている。分離予定線9aとしては、剥離片である配達票2aを分離可能なものであれば、ミシン目その他、どのような形態のものであっても良いが、本実施形態では、表面基材2を貫通し、支持基材6まで達していない切込みとしている。すなわち、本実施形態では、積層シート1全体としてみれば、分離予定線9aはハーフカット構造の切込みとなっている。
【0019】
また、図1(a)に示すように、表面基材2には、取付部2cが設けられており、図面上下方向(縦方向)に形成された区分線9bにより貼付票2bと区分されている。本実施形態では、区分線9bとして、ミシン目が形成されている。
【0020】
図1(b)のA-A断面図に示すように、配達票2a(表面基材2)の下層には、剥離層3、接着剤層4を介して、表面に目止め層5、裏面に自着層7が設けられた支持基材6が重ね合わされている。すなわち、配達票2a、剥離層3、接着剤層4、目止め層5、支持基材6、自着層7の順に積層されている。自着層7は、最下層として表出した状態となっている。また、剥離層3と接着剤層4の2つの層により擬似的に接着可能な擬似接着構造を実現している。剥離層3の存在により、支持基材6から剥離片である配達票2aが剥離可能となっている。そして、貼付票2b(表面基材2)の下層では、目止め層5、支持基材6、自着層7の構成は、配達票2aの下層と同じであるが、剥離層を有さず、接着剤層8のみが設けられている点が異なっている。強接着の接着剤層8により、貼付票2bは、支持基材6から剥離することが困難なようになっている。
【0021】
本実施形態では、接着剤層4と接着剤層8に用いられる接着剤として、同一のものを採用しているが、互いに異なるものを採用しても良い。積層シート1は、取付部2cを屈曲させて、配送物等の取付対象の一部に巻き付け、自着層7どうしを貼り合わせて使用する。
【0022】
なお、図1(b)のA-A断面図においては、図面の簡略化のため、各層の厚みを略同一にして示してあるが、現実には、後述するように各層の厚みは異なっている。また、図1(b)のA-A断面図においては、図面左右方向の長さと図面上下方向の厚さの比率は現実のものとは異なっている。現実には、図面左右方向の長さは、数cm~数十cm程度であるのに対して、図面上下方向の厚さは、数百μm程度である。もちろん、この長さ、厚さに限定されるものではない。また、配達票2a(表面基材2)の下層においては、剥離層3、接着剤層4、支持基材6は配達票2aの全面に渡って設けられている。
【0023】
<2.各層の組成>
表面基材2としては、充分な強度とプリンターによる印字適性及び搬送適性を有するものであれば使用でき、例えば、上質紙、クラフト紙、複写用紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、合成紙、樹脂フィルムによりラミネートされた紙等の紙が好適に用いられるが、セロファン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂フィルムであっても良い。表面基材2の厚さは20~200μm程度が好ましい。さらに、控票などを積層シート1等の上に重ねた場合に、複写特性をもたせるために、ロイコ系染料などからなる感熱発色層を設けても良い。支持基材6としても、表面基材2と同様のものを用いることができる。
【0024】
上記剥離層3、接着剤層4、目止め層5、自着層7は、本実施形態に係る積層シートに適したものであれば、その組成については特に限定されるものではないが、好ましい例を以下に列挙する。
【0025】
剥離層3としては、配達票2aが支持基材6から容易に剥離できるような接着性の低い樹脂を使用することが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のオレフィン系(共)重合体を用いることが最も好ましいが、他にも、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、酢酸ビニル重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、セルロース樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらの混合物からなるフィルムでも良い。また、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂等から形成されたフィルムを用いても良い。さらに、所望に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、フィラー等が添加されていても良い。剥離層3を形成するための樹脂の塗布量と塗布厚は特に限定されないが、好ましくは、塗布量は0.1~10g/m2であり、塗布厚は0.1~10μmである。
【0026】
接着剤層4は、例えば、ウレタン系、アクリル系などの熱可塑性樹脂を使用することができ、フレキソ法、グラビア法などの公知の印刷法又はコーティング法によって、厚み0.1~50μm程度に塗布し、貼り合わせ後に、必要に応じて乾燥させる。表面基材2と支持基材6は、接着剤(又は樹脂)が乾燥していない状態で貼り合わせるウェット又はセミウェットラミネート方式、熱圧着方式や感圧方式によって貼り合わせる。
【0027】
目止め層5は、接着剤層4、8の接着剤が支持基材6に浸透しないように支持基材6の目止めをするための層であり、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、クレー等を用いることができる。目止め層5を形成するための目止め剤の塗布量と塗布厚は特に限定されないが、好ましくは、塗布量は0.1~20g/m2であり、塗布厚は0.1~20μmである。
【0028】
自着層7は、自着層どうしを比較的弱い圧力で接着することが可能な層であり、感圧接着剤を含んでいる。自着層7に用いる感圧接着剤としては、天然ゴム系感圧接着剤が最も好ましいが、アクリル系感圧接着剤、合成ゴム系感圧接着剤、シリコーンゴム系感圧接着剤等でも良い。自着層7を形成するための感圧接着剤の塗布量と塗布厚は特に限定されないが、好ましくは、塗布量は0.1~50g/m2であり、塗布厚は0.1~50μmである。特に、天然ゴム系の感圧接着剤は、粘着力が比較的弱く、また、粘着力の調整も比較的容易であるため、自着層7の形成に適している。自着層7は、同じ組成のものどうしが重ね合さらないと接着しない。そのため、自着層7を下側にして台に置いて、表面基材2の配達票2aや貼付票2bに記入を行ったとしても、自着層7が台に接着する惧れは少ない。
【0029】
図1(c)に示すように、自着層7には、感圧接着剤がストライプ状に塗布されている。具体的には、感圧接着剤が塗布された接着剤塗布部7aと、感圧接着剤が塗布されていない接着剤非塗布部7bが、交互に配置されている。本実施形態では、積層シート1は、平面視において矩形状であり、互いに対向する短辺である辺Sa、辺Sbを有している。接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bは、配達票2a側の辺Saまたは取付部2c側の辺Sbに対して斜め方向に延びるように形成されている。斜め方向とは、なす角度が0度または90度でなく、0度より大きく90度より小さいことを意味する。本実施形態のように、積層シート1の平面形状が矩形である場合、短辺である辺Sa、辺Sbに対して斜め方向であるということは、積層シート1の長辺に対しても斜め方向であることを意味している。接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bの延伸方向は、1つの積層シート内においては変わることなく、全て同一方向となっている。
【0030】
自着層7において、接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bが交互に配置されていることにより、感圧接着剤の塗布量を少なく抑えながら、全体に広く感圧接着剤を塗布することが可能となる。後述するように、取付対象物に積層シート(手荷物タグ)を取り付ける際には、取付部2cを巻き付けるようにして曲げ、取付部2cの下層の自着層7どうしを重ね合わせ、圧力を加えることにより接着させる。この際、辺Saまたは辺Sbに対して平行(0度)または垂直(90度)であると、接着剤塗布部7aが対向する接着剤非塗布部7bに全て収まってしまい、接着剤塗布部7aどうしが重ならないことがある。こうなると、比較的接着力の弱い接着剤塗布部7aでは、対向する取付部2cどうしを接着することができない。このため、取付対象物に手荷物タグを取り付けることができなくなってしまう。
【0031】
接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bが延びる方向が辺Sa、辺Sbとなす角度Rは、0度より大きく90度より小さい必要がある(0<R<90)。角度Rは、30度以上60度以下であることが好ましく(30≦R≦60)、40度以上50度以下であることがより好ましい(40≦R≦50)。角度Rが小さ過ぎても大き過ぎても取付部2cを重ね合わせたときの接着剤塗布部7aどうしの接触面積が安定せず、取り付けに必要な接着力を維持することが困難となるためである。本実施形態では、R=45度としている。Rは45度に近付くほど好ましい。なお、角度Rは、最小値0度、最大値90度となるように換算されて求められる。例えば、接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bが辺Sa、辺Sbとなす角度が90度超180度であるとも言える場合は、その角度を180から減算して、0以上90以下の範囲に換算した値を角度Rとする。
【0032】
<3.連続シート>
次に、個別の積層シート1が複数連接された連続シートについて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る連続シートを示す図である。本実施形態に係る連続シート10は、ある積層シート1の配達票2a側の短辺である辺Saと、隣接する積層シート1の取付部2c側の短辺である辺Sbを1つの切り離し予定線10aとして、複数の積層シート1を連続させたものである。切り離し予定線10aは、連続シート10の搬送時に折ることができ、最終的に個別の各積層シート1に分離するため、切り離し可能であれば、どのような態様で形成されていてもよい。本実施形態では、切れ目と繋ぎ目(カット部とタイ部)が交互に配置されたミシン目となっている。
【0033】
また、連続シート10においては、奇数番目の積層シート1と偶数番目の積層シート1で、接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bの延伸方向が異なる。以下、奇数番目の積層シート1を積層シート1aとし、偶数番目の積層シート1を積層シート1bとして説明する。なお、奇数番目の積層シート1を積層シート1bとし、偶数番目の積層シート1を積層シート1aとしても同じである。積層シート1a、積層シート1bの両方に共通する特徴を説明する場合には、総称して積層シート1と呼ぶ場合もある。
【0034】
図3は、図2(b)におけるB部分の拡大図である。図3に示すように、本実施形態では、積層シート1aにおいても積層シート1bにおいても、接着剤塗布部7aの幅はW1であり、接着剤非塗布部7bの幅はW2である。また、切り離し予定線10aにおける積層シート1aの接着剤塗布部7aと積層シート1bの接着剤塗布部7aの形成位置は互いにずれている。具体的には、図3に示すように、切り離し予定線10aにおける積層シート1aの接着剤塗布部7aの幅方向の中心どうしの間隔が2Dである場合、切り離し予定線10aにおける積層シート1bの接着剤非塗布部7bの中心どうしの間隔も2Dであり、切り離し予定線10aにおいては、積層シート1aの接着剤塗布部7aの幅方向の中心と、接着剤非塗布部7bの中心が互いにDだけずれている。
【0035】
切り離し予定線10aを谷折して自着層7どうしが互いに対向するように積層シート1aと積層シート1bを折り畳んだ際、接着剤塗布部7aどうしが接触しないように形成できる限り、接着剤塗布部7aの幅W1、接着剤非塗布部7bの幅W2、切り離し予定線10aにおける、積層シート1aの接着剤塗布部7aの幅方向の中心と、接着剤非塗布部7bの幅方向の中心の距離Dは、適宜設定することができる。製造時における誤差等も考慮して、接着剤非塗布部7bの幅W2は、接着剤塗布部7aの幅W1より1mm以上大きいことが好ましい。例えば、幅W1=1(mm)、幅W2=3(mm)、距離D=2.8(mm)とすることができる。
【0036】
本実施形態に係る連続シート10は、個別の各積層シート1に分離する前は、長手方向に進むように搬送される。例えば、積層シート1が航空用の手荷物に用いられる手荷物タグである場合、旅行会社や運送会社等により空港内に設置された手荷物タグ発行機内で、連続シート10は搬送される。この場合、手荷物タグ発行機の取り出し口において、個別の積層シート1がカットされて取り出され、利用者の手元に渡る。手荷物タグ発行機内においては、連続シートを中心軸の周りに巻き回していわゆるロール状にした状態で供給する方法や、連続シートを積層シート1単位でいわゆるジグザグに折り畳んだ状態で供給する方法がある。ジグザグに折り畳んだ状態とは、各切り離し予定線10aを交互に逆方向に折り畳んだ状態である。本実施形態に係る連続シート10は、ジグザグに折り畳んだ状態で供給する方法に特に適している。発行機内で個別の積層シートに分離する前の状態において、自着層7どうしが対向して保管されていても、自着層7どうしが接着してしまう可能性が低くなる。
【0037】
本実施形態に係る連続シート10では、隣接する2つの積層シート1における接着剤塗布部7aが、切り離し予定線10aに対して互いに対称な角度で延びるように形成されている。具体的には、図3に示したように、切り離し予定線10aにより積層シート1aと積層シート1bが連接されている場合、積層シート1aにおける接着剤塗布部7aが、切り離し予定線10aから反時計回りになす角度RAと、積層シート1bにおける接着剤塗布部7aが、切り離し予定線10aから時計回りになす角度RBが等しい。
【0038】
そして、切り離し予定線10aにおいて、積層シート1aにおける接着剤塗布部7aの端部と積層シート1bにおける接着剤塗布部7aの端部が互いにずれた位置に形成されている。1つの積層シート1においては、全ての接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bが平行となるように形成されている。また、接着剤塗布部7aの幅は、接着剤非塗布部7bの幅より狭い。このため、切り離し予定線10aを谷折して自着層7どうしが互いに対向するように積層シート1aと積層シート1bを折り畳んだ際に、接着剤塗布部7aどうしが接触することがない。したがって、図2(a)に示したように、ジグザグ折りで連続シート10を搬送する際に、向かい合った積層シート1どうしが接着してしまうことがなく、良好に搬送できる。
【0039】
<4.連続シートおよび積層シートの製造>
上記実施形態に係る積層シート1は、表面基材2、剥離層3、接着剤層4、接着剤層8により構成される1枚目シートと、目止め層5、支持基材6、自着層7により構成される2枚目シートを貼り合わせた構成となっている。個別の積層シート1に分離する前の連続シート10も、当然のことながら、表面基材2、剥離層3、接着剤層4、接着剤層8により構成される1枚目シートと、目止め層5、支持基材6、自着層7により構成される2枚目シートを貼り合わせた構成となっている。自着層7には、上述のように、1つの積層シートに対応した全ての接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bが平行であり、隣接する積層シートとの間では、切り離し予定線10aに対して互いに対称な角度RA、RBで延びるようにし、一方の積層シートにおける接着剤塗布部7aの端部と隣接する積層シート1bにおける接着剤塗布部7aの端部が切り離し予定線10aに互いに距離Dだけずれた位置となるように、接着剤塗布部7a、接着剤非塗布部7bを形成する。1枚目シート、2枚目シートともに、複数の積層シート1について連続させたものとなっており、さらに、通常は搬送のための送り孔等を有する搬送方向における側片を備えている。
【0040】
まず、1枚目シートに対しては、ミシン目加工を行うことにより、表面基材2を貫通するミシン目である区分線9bを形成する。そして、各積層シートの4つの角の位置を合わせるようにして、1枚目シートと2枚目シートを重ねて貼り合わせる。続いて、1枚目シートの表面基材2側からハーフカット加工を行い、表面基材2を貫通し、支持基材6に達しない切込みである分離予定線9aを形成する。さらに、ミシン目加工を行うことにより、1枚目シートおよび2枚目シートを貫通するミシン目である切り離し予定線10aを、各積層シート間に形成する。これにより図2に示したような連続シート10が得られる。
【0041】
連続シート10は、切り離し予定線10aを折り線として、隣接する積層シート1の自着層7どうしが互位に対向するように折り畳まれた状態で、供給、搬送される。そして、所定のタイミング、または指示に基づいて、切り離し予定線10aで切り離すことにより、個別の各積層シート1が得られる。例えば、図2(a)に示したように、連続シート10が、いわゆるジグザグ折りされた状態で、空港内に設置された手荷物タグ発行機内にセットされる。そして、手荷物タグ発行機の取り出し口において、個別の積層シート1がカットされて、排出される。このようにして、利用者は、個別の積層シート1を取得することができる。
【0042】
<5.積層シートの使用例>
次に、本実施形態に係る積層シートの使用例について説明する。ここでは、積層シート1を手荷物タグとして空港において使用する場合について説明する。まず、上述のようにして、運送会社や旅行会社により空港内に設置された手荷物タグ発行機により、連続シート10から切り離された積層シート1を取得する。積層シート1の配送情報欄には、手荷物タグ発行機内のプリンタにより届け先・送り主双方の住所・氏名等の配送情報が印字されて出力される。これにより、図1に示したような積層シート1が得られる。配送情報が印字されておらず記入する必要がある場合、または、配送情報以外の情報を記入する必要がある場合には、利用者は配達票2a、貼付票2b等に随時情報を記入することができる。このような積層シート1は、表面基材2と反対側の最下層が自着層7である。この自着層7は、同じ組成のもの同士が重ね合さらないと接着しないため、そのままでは、他の物体に接着し難い。そのため、配達票2a、貼付票2bへの記入時には、一般の用紙と同様、最下層が接着してしまう心配をすることなく、記入を行うことができる。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係る積層シートの使用例を示す図である。ここでは、配送物等の手荷物に取り付ける手荷物用タグとして、本実施形態の積層シートを使用する場合について説明する。図4(a)は、旅行カバン等の配送物Hを示す図であり、図4(b)は、図4(a)における取っ手Tの拡大図であり、図4(c)は、図4(b)において取っ手Tに巻き付けられた積層シートのC-Cに対応する断面図である。なお、図4(c)においては、巻き付けの状態を簡略化して示すため、剥離層3、接着剤層4、目止め層5を省略し、表面基材2の貼付票2b、取付部2c、支持基材6、自着層7のみを示している。
【0044】
配達票2a、貼付票2bへの記入を終えたら、利用者は、取付部2cを、取付対象に巻き付ける。取付対象は、取付部2cを半分に折った際に、その幅に収まる程度の大きさのものである必要がある。例えば、図4に示すような配送物Hの取っ手Tなどが取付対象となる。利用者は、長手方向を有する棒状などの比較的細い取っ手Tに、取付部2cを巻き付けるようにして曲げ、取付部2cの下層の自着層7同士を重ね合わせ、圧力を加える。この圧力は、人間が軽く握る程度でよい。この圧力により、自着層7どうしが接着する。この際、自着層7は、取っ手T自体にはほとんど接着しない。このため、図4(b)(c)に示すように、取付部2cが取っ手Tに巻き付けられたような状態となる。
【0045】
図5は、自着層7どうしが重ねられた状態を示す図である。図5(a)は、区分線9bに平行な線に沿って折り畳まれた場合の状態を示しており、図5(b)は、区分線9bから傾いた角度で折り畳まれた場合の状態を示している。辺Sa、辺Sbとなす角度R=45度である場合、区分線9bに平行な線に沿って折り畳まれると、図5(a)に示すように、2つの積層シート1の接着剤塗布部7aどうしが重なった部分(図中ハッチングされた部分)は、正方形に近い形状となり、接着力が強まる。このため、積層シート1を手荷物等に安定的に固定することができる。
【0046】
しかしながら、積層シート1を手荷物タグとして用いる場合、利用者は、必ずしも丁寧に区分線9bに平行な線に沿って折り畳むとは限らず、無造作に自着層7どうしを重ね合わせることもある。この場合、区分線9bから傾いた角度で折り畳まれると、図5(b)に示すように、2つの積層シート1の接着剤塗布部7aどうしが重なった部分は、ひし形になり、接着力が弱まる。それでも、接着剤塗布部7aは、積層シート1の短辺Sa、Sbに対して斜め方向に延びるように形成されているため、無造作に折り曲げた場合でも、必ず重なり部分7cが形成され、自着層7どうしが接着されることになる。このように、自着層7は、感圧接着剤が塗布された接着剤塗布部7aと、感圧接着剤が塗布されていない接着剤非塗布部7bが、積層シート1の一辺に対して斜め方向に延びるように交互に形成されているため、無造作に折り曲げた場合でも、配送物H等の対象物に対して固定することが可能となる。
【0047】
このようにして、配送先が記入された積層シート1が、配送物Hに取り付けられ、この配送先に配送されることになる。配送物Hの配送後、配達票2aは、積層シート1から剥離される。以上のように、手荷物タグとして積層シート1を用いた場合、最下層の自着層7が通常時は粘性が低く、他の物体に接着し難いため、記入に支障が少ない。このため、記入後そのまま圧着により自着することで取っ手等の比較的細い部分に巻き付けて取り付けることが可能となる。このため、従来の手荷物タグや配送伝票のように、記入後、粘着層を覆っている剥離紙等を剥がす手間がなくなる。また、剥離紙自体も不要となり、省資源化が図れる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、区分線9bとしてミシン目を形成したが、表面基材2を貫通して、支持基材6に達しない切り込みを、積層シート1に対するハーフカットとして形成するようにしても良い。また、ミシン目や切り込みのように表面基材2自体に加工を行うものでなく、目視可能な線を印刷することにより、区分線9bを形成してもよい。また、区分線9b自体を形成しないようにすることも可能である。区分線9bを形成しない場合は、貼付票2bの表面に印刷された配送情報欄の、配達票2aと反対側の端部から先が取付部2cとして機能する。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、1b・・・積層シート
2・・・表面基材
2a・・・配達票
2b・・・貼付票
2c・・・取付部
3・・・剥離層
4・・・接着剤層
5・・・目止め層
6・・・支持基材
7・・・自着層
7a・・・接着剤塗布部
7b・・・接着剤非塗布部
8・・・接着剤層
9a・・・分離予定線
9b・・・区分線
10・・・連続シート
10a・・・切り離し予定線
W1・・・接着剤塗布部の幅
W2・・・接着剤非塗布部の幅
図1
図2
図3
図4
図5