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特許7552190インクジェットヘッドの駆動設定方法及び駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドの駆動設定方法及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240910BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020159254
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052804
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北見 亜紀子
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-150816(JP,A)
【文献】特開2006-198902(JP,A)
【文献】特開2003-291357(JP,A)
【文献】特開2016-203394(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク液滴を各々吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通する複数のインク流路と、当該複数のインク流路内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子に駆動パルスを印加して、当該駆動素子により前記駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせる駆動制御部と、を備えるインクジェットヘッドの駆動設定方法であって、
前記複数のインク流路のそれぞれについて、インク液滴の吐出速度を計測し、当該吐出速度が最大となる最速駆動パルス幅を取得する取得ステップ、
取得された複数の前記最速駆動パルス幅に基づく値を前記複数の駆動素子に出力する前記駆動パルスのパルス幅に設定する設定ステップ、
を含み、
前記設定ステップでは、前記複数の最速駆動パルス幅の平均値を前記駆動パルスのパルス幅に設定する
ことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項2】
前記取得ステップでは、前記パルス幅と前記吐出速度との関係を所定の関数でフィッティングして前記最速駆動パルス幅を特定することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項3】
前記取得ステップでは、少なくとも4つの異なるパルス幅に応じたインクの吐出速度を計測することを特徴とする請求項記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項4】
インク液滴を各々吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通する複数のインク流路と、当該複数のインク流路内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子に駆動パルスを印加して、当該駆動素子により前記駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせる駆動制御部と、を備えるインクジェットヘッドの駆動設定方法であって、
前記複数のインク流路のそれぞれについて、インク液滴の吐出速度を計測し、当該吐出速度が最大となる最速駆動パルス幅を取得する取得ステップ、
取得された複数の前記最速駆動パルス幅に基づく値を前記複数の駆動素子に出力する前記駆動パルスのパルス幅に設定する設定ステップ、
を含み、
前記取得ステップでは、少なくとも4つの異なるパルス幅に応じたインクの吐出速度を計測し、前記パルス幅と前記吐出速度との関係を所定の関数でフィッティングして前記最速駆動パルス幅を特定する、
ことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは、前記複数のノズルを有するノズル群を複数有し、
前記設定ステップでは、前記ノズル群ごとにそれぞれ前記パルス幅を設定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項6】
前記取得ステップ及び前記設定ステップの処理は、前記インクジェットヘッドの出荷前検査時に行われることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項7】
前記設定ステップで設定されたパルス幅に対する前記取得ステップで得られた前記複数のインク流路の各々についての前記最速駆動パルス幅のばらつきに応じた性能のレベル評価を行う評価ステップを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法。
【請求項8】
インク液滴を各々吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通する複数のインク流路と、当該複数のインク流路内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子に駆動パルスを印加して、当該駆動素子により前記駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせる駆動制御部と、を備えるインクジェットヘッドの駆動方法であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動設定方法で定められた前記パルス幅の前記駆動パルスを前記駆動素子にそれぞれ出力する駆動ステップを含むことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項9】
前記駆動ステップでは、連続した複数回の前記駆動パルスにより複数のインク液滴を吐出させて、記録媒体の同一画素範囲に着弾させることが可能であり、
前記複数回の前記駆動パルスの出力間隔のうち、最後の2回の前記駆動パルスの出力間隔は、3回以上の前記駆動パルスの出力間隔のうち最後の2回の出力間隔以外の出力間隔よりも広い
ことを特徴とする請求項8記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットヘッドの駆動設定方法及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク流路(インクチャネル)を経て供給されるインクに対して当該インクチャネルの途中に位置する圧力室で圧力変動を付与して、多数の圧力室にそれぞれ連通する多数のノズルからインクを吐出することで、画像、薄膜、配線や立体構造などの記録を行うインクジェット記録装置がある。インクチャネル数が増えるにつれて、全てのノズル及び圧力室を均一に形成するのが難しくなり、これに応じてノズル間で吐出されるインクの速度のばらつきが生じやすくなっている。特許文献1では、ノズルごとに予め算出された補正データを記憶保持し、当該補正データに基づいて基準の駆動電圧信号を各々補正して出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-59961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動動作時に毎回全てのノズルに対して補正処理を行うのは手間がかかり、構成や制御も煩雑になるという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、より簡潔にノズル間のインクの吐出速度のばらつきを少なくすることが可能なインクジェットヘッドの駆動設定方法及び駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
インク液滴を各々吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通する複数のインク流路と、当該複数のインク流路内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子に駆動パルスを印加して、当該駆動素子により前記駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせる駆動制御部と、を備えるインクジェットヘッドの駆動設定方法であって、
前記複数のインク流路のそれぞれについて、インク液滴の吐出速度を計測し、当該吐出速度が最大となる最速駆動パルス幅を取得する取得ステップ、
取得された複数の前記最速駆動パルス幅に基づく値を前記複数の駆動素子に出力する前記駆動パルスのパルス幅に設定する設定ステップ、
を含み、
前記設定ステップでは、前記複数の最速駆動パルス幅の平均値を前記駆動パルスのパルス幅に設定する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項記載の発明は、請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法において、
前記取得ステップでは、前記パルス幅と前記吐出速度との関係を所定の関数でフィッティングして前記最速駆動パルス幅を特定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項記載の発明は、請求項記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法において、
前記取得ステップでは、少なくとも4つの異なるパルス幅に応じたインクの吐出速度を計測することを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、
インク液滴を各々吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通する複数のインク流路と、当該複数のインク流路内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子に駆動パルスを印加して、当該駆動素子により前記駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせる駆動制御部と、を備えるインクジェットヘッドの駆動設定方法であって、
前記複数のインク流路のそれぞれについて、インク液滴の吐出速度を計測し、当該吐出速度が最大となる最速駆動パルス幅を取得する取得ステップ、
取得された複数の前記最速駆動パルス幅に基づく値を前記複数の駆動素子に出力する前記駆動パルスのパルス幅に設定する設定ステップ、
を含み、
前記取得ステップでは、少なくとも4つの異なるパルス幅に応じたインクの吐出速度を計測し、前記パルス幅と前記吐出速度との関係を所定の関数でフィッティングして前記最速駆動パルス幅を特定する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法において、
前記インクジェットヘッドは、前記複数のノズルを有するノズル群を複数有し、
前記設定ステップでは、前記ノズル群ごとにそれぞれ前記パルス幅を設定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法において、
前記取得ステップ及び前記設定ステップの処理は、前記インクジェットヘッドの出荷前検査時に行われることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの駆動設定方法において、
前記設定ステップで設定されたパルス幅に対する前記取得ステップで得られた前記複数のインク流路の各々についての前記最速駆動パルス幅のばらつきに応じた性能のレベル評価を行う評価ステップを含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項8記載の発明は、
インク液滴を各々吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに連通する複数のインク流路と、当該複数のインク流路内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子に駆動パルスを印加して、当該駆動素子により前記駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせる駆動制御部と、を備えるインクジェットヘッドの駆動方法であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動設定方法で定められた前記パルス幅の前記駆動パルスを前記駆動素子にそれぞれ出力する駆動ステップを含むことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法である。
【0014】
また、請求項9記載の発明は、請求項8記載のインクジェットヘッドの駆動方法において、
前記駆動ステップでは、連続した複数回の前記駆動パルスにより複数のインク液滴を吐出させて、記録媒体の同一画素範囲に着弾させることが可能であり、
前記複数回の前記駆動パルスの出力間隔のうち、最後の2回の前記駆動パルスの出力間隔は、3回以上の前記駆動パルスの出力間隔のうち最後の2回の出力間隔以外の出力間隔よりも広い
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従うと、より簡潔にノズル間のインクの吐出速度のばらつきが少なくなるようにインクジェットヘッドを駆動することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の駆動設定方法の設定対象であるインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】記録動作部のインク吐出面を示す底面図である。
図3】吐出パルスについて説明する図である。
図4】マルチドロップ方式における駆動パルスの波形の例を示す図である。
図5】ALの推定について説明する図である。
図6】ALの推定例を示す図である。
図7】平均AL中央ALとの差に対し、中央ALでの駆動時におけるインク液滴の単発吐出の吐出速度とマルチドロップの吐出速度との差を示した図である。
図8】検査装置の機能構成を示すブロック図である。
図9】駆動波形設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の駆動設定方法の設定対象であるインクジェットヘッド21を有するインクジェット記録装置100の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置100は、搬送部10と、記録動作部20と、駆動波形信号生成部29と、記憶部30と、制御部40と、撮像部50と、通信部70と、操作受付部81と、表示部82と、電力供給部90などを備える。
【0019】
搬送部10は、搬送ベルト12と、搬送モーター14を備える。搬送モーター14に適切な駆動信号が入力されることで、搬送モーター14が回転動作する。搬送ベルト12は、無端状であって搬送モーター14により回転されるローラーなどに架け渡されており、ローラーの回転に応じた速度で周回移動する。搬送ベルト12の外周面上に載置された記録媒体がこの周回移動に応じて移動、搬送される。
【0020】
記録動作部20は、搬送部10により搬送される記録媒体上にインクを吐出して画像などを記録する。記録動作部20は、ヘッド駆動部25(駆動制御部)と、複数の記録素子20aなどを備える。記録素子20aは、それぞれ、圧電素子26(駆動素子)と、ノズル27と、インク流路28(チャネル)などを有する。ヘッド駆動部25は、選択された圧電素子26に駆動信号(駆動パルス)を印加して圧電素子26を変形動作させる。インクは、複数のノズル27に対して共通の供給路から、各ノズル27に連通するインク流路28を介してそれぞれノズル27へ送られる。各インク流路28は、圧力室を含み、当該圧力室の壁面に沿って位置する(又は壁面自体をなす)圧電素子26に対する駆動電圧の印加に応じた変形動作により圧力室内のインクに圧力変動が付与される。圧電素子26は、ノズル27に供給されるインクに対して駆動パルスに応じた圧力変動を付与してノズル27からインク液滴を射出(吐出)させ、画像を記録する。インクジェット記録装置100には、インクジェット記録装置100において一度の画像記録動作で射出されるインクの色や種別の数に応じた数の記録動作部20が設けられる。この記録動作部20では、後述のように複数発のインク液滴を連続的に吐出させてこれらを途中で合一させ、単一液滴として対応する画素範囲(同一の画素範囲)に着弾させるマルチドロップ方式でのインク吐出が可能であり、インク液滴の数に応じて各画素範囲の濃度階調を定めることができる。
【0021】
駆動波形信号生成部29は、ヘッド駆動部25が記録素子20aへ出力する駆動パルスを生成する。駆動波形信号生成部29は、特には限られないが、予め定められた駆動波形を示すデジタルデータをアナログ変換し、電圧及び電流を増幅した信号を駆動パルスとしてヘッド駆動部25に出力する。生成される駆動パルスには、インクを吐出させる台形波形状や矩形波形状のものに加えて、より緩やかにインクに圧力変化を生じさせるような波形の駆動パルス(三角波など。パルス幅は、例えば半値幅(振幅の50%以上の部分の幅)。50%以外の値であってもよい)が含まれていてもよい。
【0022】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)と、RAM42(Random Access Memory)を備え、インクジェット記録装置100の各種動作を統括制御するプロセッサーである。CPU41は、各種演算処理を行って制御動作を実行する。RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。制御部40は、記録対象の画像データや画像の記録に係る設定データなどに基づいて、記録動作部20におけるインク吐出動作に係る駆動パルスの記録素子20aへの出力を制御する。
【0023】
記憶部30は、記録対象の画像データを記憶し、また、各種プログラムや設定データを記憶する。記憶部30は、少なくとも不揮発性メモリーを有し、また、揮発性メモリー(RAM)を有していてもよい。画像データは、RAMに記憶されてもよい。設定データには、波形設定データ31が含まれる。不揮発性メモリーは、例えば、フラッシュメモリーなどであり、これに加えて又は代えてHDD(Hard Disk Drive)などを有していてもよい。なお、記憶部30の一部は、記録動作部20のインクジェットヘッド21(図2参照)などが保持するものであってもよい。インクジェットヘッド21(ヘッドユニット)固有のパラメーター情報や初期異常ノズルの情報などは、インクジェットヘッド21が備える不揮発性メモリーなどに記憶され得る。これらの情報は、当該インクジェットヘッド21(ヘッドユニット)がインクジェット記録装置100に装着された後の初期設定などで制御部40により読み取られ、インクジェット記録装置100本体の記憶部30に統合的に記憶、管理されてもよい。
【0024】
波形設定データ31は、各記録素子20aに出力する駆動パルスの波形パターンデータを記憶する。ここで記憶される波形パターンデータには、特に、複数発のインク吐出を連続的に行う場合における各インク吐出にそれぞれ応じた駆動パルスの開始タイミング、パルス幅及び電圧振幅の情報が含まれる。パルス幅の情報は、上記インクジェットヘッド21が備える不揮発性メモリーから取得されたパラメーター(後述の駆動波形設定処理(駆動設定方法)で設定されたパルス幅)であってもよい。これらは、駆動波形信号生成部29により生成される駆動パルスの元となるデジタルデータとされてよい。
【0025】
撮像部50は、搬送部10による搬送ベルト12上での媒体Mの搬送方向について記録動作部20の下流側で搬送ベルト12(載置されている媒体M)の表面を撮像する。撮像部50は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子が幅方向に並んだラインセンサーであり、媒体Mの搬送方向への移動と組み合わせて媒体M上の2次元撮像が可能となっている。撮像結果は、制御部40により解析されて画像の記録異常の検出や濃度階調の調整などに用いられる。
【0026】
通信部70は、外部機器との間での通信を実行制御する。通信部70は、例えば、TCP/IPなどの通信規格に基づいて外部のコンピューターと接続されて、記録対象の画像データを含むジョブデータを取得し、また、ジョブデータに基づく画像記録動作のステータスを出力することができる。また、通信部70は、USB(Universal Serial Bus)などにより周辺機器と直接接続されてデータの送受信がなされてもよい。
【0027】
操作受付部81は、ユーザーなどによる入力操作を受け付けて、受け付けた内容を入力信号として制御部40に出力する。操作受付部81は、例えば、タッチパネルや押しボタンスイッチなどを備える。タッチパネルは、表示部82の表示画面と重なって位置し、表示画面への表示内容と同期して操作内容が特定されてもよい。
【0028】
表示部82は、ユーザーなどに対してステータスや選択メニューなどを示す表示を行う。表示部82は、例えば、表示画面とインディケーター(ランプ)などを有する。表示部82は、例えば、液晶ディスプレイなどを有し、表示画面に各種文字や図形をドットマトリクス表示することができる。インディケーターは、例えば、LEDランプなどにより電力供給の有無や動作異常の有無などを示す場合に利用されてもよい。
【0029】
電力供給部90は、インクジェット記録装置100の各部に応じた電圧の電力を供給する。記録動作部20の駆動基板には、各駆動波形のピーク電圧に応じた電圧が出力される。
【0030】
上記各構成に加えて、インクジェット記録装置100は、各ノズル27からのインクの吐出速度を計測する計測部を有していてもよい。あるいは、インクジェット記録装置100に対して外付けで各ノズル27からのインク吐出速度を計測する計測装置の取り付け部を有していてもよい。なお、吐出速度は、直接インクの飛翔速度を計測するものではなく、撮像部50による撮像データに基づいて着弾位置から定められてもよい。
【0031】
図2は、記録動作部20のインク吐出面を示す底面図である。
記録動作部20は、8個のインクジェットヘッド21を有し、各インクジェットヘッド21のインク吐出面が千鳥格子状に並んで露出されるようにキャリッジ22に固定されている。インクジェットヘッド21のインク吐出面には、それぞれ、ノズル27の開口が所定の配列パターンで並んでいる。ノズル27の開口は、全体として搬送ベルト12による記録媒体の搬送方向に交差する(ここでは直交する)幅方向について所定の間隔(ノズルピッチ)で並んでいる。各ノズル27の開口の搬送方向についての位置は、同一である必要はない。ここでは、各インクジェットヘッド21は、幅方向へ複数のノズル27の開口が並ぶノズル列を搬送方向について異なる4か所に有する。各ノズル列におけるノズル27の開口は、上記ノズルピッチの4倍の間隔で並んでおり、互いにその1/4の長さずつ幅方向にずれて位置することで、全体として上記のノズルピッチの間隔となっている。
【0032】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100におけるインク吐出動作について説明する。
図3は、吐出パルスについて説明する図である。
図3(a)に示すように、インクジェット記録装置100では、圧電素子26に対して台形波(又は矩形波)の駆動パルスが印加され、インク流路28(圧力室)を一時的に圧縮又は膨張させてその後戻す動作によりインクに圧力変動を付与することで、インク吐出動作が行われる。なお、ここでは説明のため、台形波の電圧の初期電圧からの立ち上がり及び初期電圧への立ち下がりを分かりやすい長さで示しているが、駆動電圧の維持期間に比した立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、適切に定められてよい。また、台形波の立ち上がり及び立ち下がりは、直線状の(一次の)電圧変化に限られない。指数関数的な立ち上がりなどであってもよい。
【0033】
吐出されるインク液滴は、先にインクを圧縮する押し打ちの場合には、インク流路28を圧縮してノズル27の開口から押し出されたインクが、インク流路28の容積が元に戻る動作により引き戻されるノズル27内のインクと分離することで生成され、飛翔する。先にインクを膨張させる引き打ちの場合には、インク流路28を拡張してノズル27の開口から離れる方向(すなわちインク流路の奥)へ引き戻されたインクが、インク流路28の容積が元に戻る動作により勢いよく開口の方向へ戻されることで、先端部分のインクの一部が当該開口から飛び出して分離して生成され、飛翔する。
【0034】
ここで、インクの圧力変動には、インク流路の構造やインクの物性などに応じた共振周波数(音響的共振周波数)が存在する。この共振周波数による振動に同期してインクを吐出させることで、効率よくインクの吐出速度が向上し、共振周波数による振動と逆位相でインクを吐出させようとするとインクの吐出速度が小さくなる。すなわち、同じパルス電圧の振幅であっても、パルス幅(ここでは、台形状の駆動波における駆動パルスの立ち上がり開始から立ち下りの開始までの時間をパルス幅Pwとする)に応じて付与される圧力波振動が異なり、吐出速度も異なる。パルス幅Pwが音響的共振周波数の半分(Acoustic Length;AL)程度の駆動パルスを印加することで、最も効率良くインクを吐出することが可能となる。
【0035】
実際には、多数のノズル27に連通するインク流路28間には、製造上、若干の構造のばらつきが存在する。このため、各ノズル27に対応する圧電素子26に同一のパルス幅の駆動パルスを印加しても、同一の吐出速度が得られない。図3(b)に示すように、各ノズル27からのインク吐出速度は、印加されたパルス幅がインク流路28のALから離れるに従って低下するが、パルス幅Pwa、PwbがそれぞれALと等しい2つのノズルからのインク吐出速度は、あるパルス幅Pw1では異なる値となる。
【0036】
インク流路28からノズル27にかけての構造は、断面積の変化などを含み、また、インク流路28のノズル27に接続する一端とは反対側の一端が共通のインク供給路に連通している。更に、設計値から製造上のばらつきに応じてALもばらつくので、ALを解析的に定めることは難しく、一般には、電圧値を一定にしてパルス幅を変化させたときに液滴の吐出速度が最大になるパルス幅として実験的に求めることができる。簡便には、1本の代表となるノズル27を定め、例えば、ノズル配列において中央に位置するノズルを選択して、このノズル27で最大の吐出速度が得られるパルス幅を計測する。そして、このパルス幅で全てのノズル27から吐出されるインクの吐出速度が基準範囲内にあるインクジェットヘッド21や、複数のインクジェットヘッド21を組み合わせたヘッドユニットが基準に適合する商品(合格品)として出荷、利用される。しかしながら、代表となるノズル27自体のALが他のノズル27のALから大きくずれていると、インクジェットヘッド21が検査で不合格となりやすい。
【0037】
このようなALのばらつきによるノズル27の間での吐出速度のばらつきは、複数のインク液滴を連続して吐出させて、飛翔中に合一させ又は別個に、同一の画素範囲内に着弾させることにより濃度階調を異ならせるマルチドロップ方式において、より顕著に影響が出る場合がある。
【0038】
図4は、マルチドロップ方式における駆動パルスの波形の例を示す図である。
連続した複数回、ここでは、4回の駆動パルスにより4発(複数)のインク液滴が続けて吐出されて、(本実施形態では、飛翔中にこれらが合一して)同一の画素範囲へ着弾される。ここでは、後発のインク液滴が先発のインク液滴に追いつくように、後発の駆動パルスの電圧振幅が先発の駆動パルスの電圧振幅よりも大きくなっている。
【0039】
なお、最後から2番目の駆動パルスと最後の駆動パルスとの間には、一回駆動パルスが吐出されない周期が含まれている。このように、最後から2番目の駆動パルス(液滴吐出)の立ち上がりと最後の駆動パルス(液滴吐出)の立ち上がりとの間(最後の2回の駆動パルスの出力間隔)をその他(3回以上の駆動パルスの出力間隔のうち最後の2回の出力間隔以外の出力間隔)よりも1周期分程度長く(広く)することで、インク液滴吐出時のサテライト、すなわち、本来意図するインク液滴以外の微小液滴の発生が低減される。このような微小液滴は、不要なインク液滴であり、着弾位置やタイミングも本来の意図からずれるので、記録画像に付着することで画質を低下させる。また、記録媒体に届かずに吐出されたノズル27又はその他のノズル27の開口周囲などに付着することもあり、これらが固化するとインク吐出の異常発生の原因になり得る。
【0040】
このような連続吐出では、先の駆動パルスによるインク流路28内のインクの圧力波振動が十分に減衰しない状態で次の駆動パルスによる圧力変動が付与されるので、先の圧力波振動の位相と新たな駆動パルスによる圧力変動とのタイミングとの関係に応じて更に振動が増幅されたり相殺されたりする。これにより、単発でインク吐出がなされる場合と比較して、トータルでより大きな吐出速度の差が生じる場合がある。
【0041】
本実施形態のインクジェットヘッド21では、全てのノズル27について吐出速度が最大となるパルス幅(AL)を推定し、それらの平均値(ヘッド全域の統計的な代表値)をインクジェットヘッド21のパルス幅として定める。このとき、多数のノズル27のALを全て特定すると手間がかかるので、各ノズル27について、所定の点数のパルス幅で吐出速度を求め、これらの結果に基づくフィッティングによりALを推定する。なお、平均値は、インクジェットヘッド21の全てのノズル27に対して一つ算出される場合に限られない。ノズル数が多い場合などには、複数のグループ(ノズル群)に区分して、当該ノズル群ごとに各々平均値が算出され、パルス幅が設定されてもよい。ノズル群としては、例えば、本実施形態のようなノズル列を複数列(ここでは4列)有するインクジェットヘッド21の場合に当該ノズル列ごとにグループ化されてもよいし、幅方向について所定の複数か所で区分又は所定の数ノズルおきにグループ化されてもよい。設定されたパルス幅が波形設定データ31に記憶され、これが制御部40により読み出されて、駆動波形信号生成部29の設定に用いられ、当該パルス幅の駆動パルスが出力されて圧電素子26が駆動される(駆動ステップ)。
【0042】
図5は、ALの推定について説明する図である。
吐出速度は、パルス幅の実際のALからのずれ量に対して、上に凸の曲線で示され、近似的に、2次以上の曲線で表され得る。ここでは、7種類のパルス幅に対する吐出速度の計測結果に対し、3次曲線で近似することで、その曲線の最大値(極大値)が得られるパルス幅をALとして推定する。3次曲線であるので、少なくとも4つのパルス幅で吐出速度が計測される。計測されるパルス幅の数がある程度多い方が精度は向上するが、手間や時間も増大し、結局漸近的にALを特定する場合と効率が変わらなくなっていく(多すぎるとむしろ効率が悪くなる)ので、適宜な数、例えば、10点以下などとされてもよい。また、特に限られるものではないが、設定されるパルス幅の間隔は均等であってよい。また、設計上のALの値に応じて間隔が異なっていてもよい。すなわち、設計上ALが短いノズル27(インク流路28)の場合には、間隔も小さめとなり、設計上ALが長いノズル27(インク流路28)の場合には、間隔も大きめとなってよい。
【0043】
図6は、ALの推定例を示す図である。
図6(a)に示すように、例えば、256本のノズル27に対する256チャネルのインク流路28について、それぞれ、9種類のパルス幅でインクを吐出させてインク吐出速度を計測させる。ここでは、パルス幅の設定間隔を両端では中央よりも広く定めているが、上記のように均等間隔でもよい。これらの計測結果をインク流路28ごとに各々フィッティングして、最大値(極大値)となるALを特定する。図6(b)には、2本のインク流路28(チャネル2及びチャネル128)についてのフィッティングの結果を示している。また、フィッティングで得られたALの値の分布を図6(c)に示している。細かいインク流路28間での差に加えて、全体的に160チャネル以前のチャネルでALが低めになっていることが分かる。このように、構造上ある程度まとまってALの傾向が出る場合があり、代表ノズルの位置に応じてパルス幅が一つのまとまりに合わされるのではなく、全体に対して平均的な値とされることで、部分的なインク吐出速度の大きな変動を抑制することができる。
【0044】
図7は、中央付近で選択されたノズル27のALに対するパルス幅のずれ量(差)に対し、当該パルス幅の駆動パルスによるインク液滴の単発吐出の吐出速度とマルチドロップの吐出速度との差を示した図である。ここでいう中央付近で選択されたノズル27は、上記の中央に位置する代表として定められる特定のノズル27を示し、全てのノズル27の最速駆動パルス幅(AL)を平均した値(平均AL)に対して最大で±0.05μsec程度のALのずれを有することが見込まれる。また、吐出速度は、インクジェットヘッド21の1列内の各ノズル27からの吐出速度の平均値である。
【0045】
平均ALからパルス幅がずれていくと、このパルス幅の駆動パルスによりマルチドロップで吐出されるインクの液滴速度と単発吐出時のインクの液滴速度との間のずれ(ばらつき)が大きくなっていく傾向がみられる。すなわち、単純に代表とするノズルとしていずれかのノズル27を定めてしまうと、このノズル27のALによっては、マルチドロップ時の吐出速度が大きくばらつく場合がある。反対に、平均ALをパルス幅に定めてインクを吐出させることで、マルチドロップでの吐出でも液滴速度(すなわち、着弾位置)に大きなばらつきを生じず、画質を安定させることができるのが分かる。
【0046】
上記のような駆動波形(パルス幅)の検査、設定に係る処理は、例えば、インクジェットヘッド21やヘッドユニットの出荷前検査時にこれらが検査装置に取り付けられて、当該検査装置により行われる。
【0047】
図8は、検査装置200の機能構成を示すブロック図である。
検査装置200は、搬送部210と、ヘッド駆動部225と、駆動波形信号生成部229と、記憶部230、制御部240と、撮像部250と、通信部270と、操作受付部281と、表示部282などを備える。
【0048】
駆動波形信号生成部229は、インクジェット記録装置100の駆動波形信号生成部29と同一の駆動波形の信号を生成して出力する。ヘッド駆動部225は、駆動波形信号生成部229から入力された信号(駆動パルス)を制御部240の制御に基づいて、取り付けられたインクジェットヘッド21に対して出力する。
【0049】
搬送部210は、インクジェットヘッド21のインク吐出面に対応させて記録媒体を搬送する。搬送部210は、インクジェット記録装置1と同様に、搬送ベルトを周回移動させて当該搬送ベルトの外周面上に載置された記録媒体を搬送させるものであってもよい。撮像部250は、搬送部210の搬送方向についてインクの着弾位置より下流側で記録媒体の表面を撮像する。撮像部250は、撮像部50と同様に、ラインセンサーによる1次元撮像と記録媒体の移動とを組み合わせて2次元画像を得るものであってもよい。
【0050】
操作受付部281は、ユーザーなどの外部からの入力操作を受け付ける。操作受付部281は、例えば、タッチパネル、キーボード、テンキーやマウスなどの各種入力デバイス、及び押しボタンスイッチなどのうち一部又は全部を有する。表示部282は、特には限られないが、例えば、液晶ディスプレイであり、表示画面を有し、制御部240の制御に基づいて各種表示を行う。表示部282には、例えば、検査の設定メニュー、検査の進行状況に係るステータスや検査の結果などが表示可能である。
【0051】
制御部240は、CPU241及びRAM242を有し、検査に係る動作制御を行う。記憶部230は、不揮発性メモリーなどであり、検査に係るプログラム、設定データや、計測データ231などが記憶される。
【0052】
通信部270は、外部との通信を制御する。通信部270は、例えば、ネットワークカードなどを有し、ネットワークを介して外部機器との通信が可能であってもよい。また、通信部270は、ヘッド駆動部225に接続されるインクジェットヘッド21の記憶部に接続可能であり、制御部240の制御に基づいて、設定されたパルス幅の情報などをこの記憶部に書き込み可能であってもよい。
なお、検査装置200は、動作に係る構成と制御に係る構成とが異なる装置であって、組み合わされたものであってもよい。
【0053】
図9は、インクジェットヘッド21の駆動波形設定処理の検査装置200の制御部240による制御手順を示すフローチャートである。この処理は、本実施形態のインクジェットヘッドの駆動設定方法を含む。
駆動波形設定処理が開始されると、検査装置200の制御部240(CPU241)は、パルス幅の設定を行う(ステップS101)。制御部240は、各ノズル27から順番に又は所定本数ずつまとめてそれぞれインクを吐出させて、各々インク液滴の吐出速度を計測する(ステップS102)。インクの吐出速度は、直接飛翔するインク液滴の移動量が取得されてもよいし、相対移動されるテスト用記録媒体上に着弾した位置の情報に基づいて算出されてもよい。
【0054】
制御部240は、設定されている全て(複数)のパルス幅での計測が終了したか否かを判別する(ステップS103)。いまだ終了していないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、制御部240の処理は、ステップS101に戻り、設定されていない他のパルス幅への設定及び計測を繰り返す。
【0055】
全てのパルス幅で計測が終了したと判別された場合には(ステップS103で“YES”)、制御部240は、各ノズル27についての複数のパルス幅での速度分布を取得し、パルス幅と吐出速度との関係を予め定められた所定の関数(ここでは3次関数)へのフィッティングを行う。そして、制御部240は、フィッティングされた関数のパラメーターに基づいて、最大速度(極大速度)とそのときのパルス幅(最速駆動パルス幅)、すなわち、このノズル27に係るALとを推定(特定)する(ステップS104)。
ステップS101~S104の処理が本実施形態の駆動設定方法における取得ステップを構成する。
【0056】
制御部240は、算出されたALの平均値を算出する(ステップS105)。なお、極端に設計値から外れたALなどが算出されている場合には、そもそも吐出異常が生じているものとして当該ノズル27からのインク吐出を禁止させてもよい。また、制御部240は、算出された平均値に対する各ノズルのALのばらつき(例えば、分散など)を算出して、当該ばらつきの度合に応じたインクジェットヘッド21(ヘッドユニット)の性能のレベル評価を行い、評価レベル(例えば、数字の1~5による5段階や、アルファベットでA~Eの5段階など)を定める(ステップS106;評価ステップ)。制御部240は、算出された平均値を検査対象のインクジェットヘッド21(ヘッドユニット)のパルス幅として設定する(ステップS107;設定ステップ)。設定は、例えば、インクジェットヘッド21が備える不揮発性メモリー(記憶部30の一部)に書き込まれ、この場合、当該インクジェットヘッド21がインクジェット記録装置100に取り付けられた後に制御部40による読み出しが可能となっていればよい。また、書き込み内容には上記評価レベルも含まれていてもよい。そして、制御部240は、駆動波形設定処理を終了する。
【0057】
以上のように、本実施形態の駆動方法設定方法は、インク液滴を各々吐出する複数のノズル27と、複数のノズル27に連通する複数のインク流路28と、当該複数のインク流路28内のインクにそれぞれ圧力変動を付与する動作を行う複数の圧電素子26と、複数の圧電素子26に駆動パルスを出力して、当該圧電素子26により駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を生じさせるヘッド駆動部25と、を備えるインクジェットヘッド21の駆動設定方法である。この駆動設定方法は、複数のインク流路28のそれぞれについて、インク液滴の吐出速度を計測し、当該吐出速度が最大となる最速駆動パルス幅を取得する取得ステップ、取得された複数の最速駆動パルス幅に基づく値を、圧電素子26に出力する駆動パルスのパルス幅に設定する設定ステップ、を含む。このように、単一のノズル27に係るインク流路28のALを代表値とせずに、複数のインク流路28のALに基づく値(統計的な代表値)を駆動パルスのパルス幅とすることで、大きくパルス幅がALと異なるインク流路28に係るノズル27からのインク吐出を低減することができるので、インク吐出速度のばらつきを低減することができる。また、同時に、このように、パルス幅自体は複数のノズル27について単一にそろえることができるので、個々に設定して適用するような構成を有する必要がなく、手間、コストや駆動回路のサイズなどを効果的に抑制することができる。
【0058】
また特に、設定ステップでは、複数の最速駆動パルス幅の平均値を駆動パルスのパルス幅に設定するので、パルス幅が各インク流路28(ノズル27)のALから大きくずれにくくすることができる。
【0059】
また、取得ステップでは、パルス幅とインク吐出速度との関係を所定の関数でフィッティングして最速駆動パルス幅を特定する。インク吐出速度は、パルス幅に対してALを最大(極大)とする関数(例えば、3次関数)で概ね近似できるので、複数のパルス幅での計測に対するフィッティングにより、直接最大をとるパルス幅を計測により特定しなくても推定可能となるので、手間を低減することができる。
【0060】
また、取得ステップでは、少なくとも4つの異なるパルス幅に応じたインクの吐出速度を計測する。高次の関数、特に3次関数へのフィッティングとしては、4点以上のデータを用いることで、概ね十分な精度が得られる。
【0061】
また、インクジェットヘッド21は、複数のノズル27を有するノズル群を複数有し、設定ステップでは、ノズル群ごとにそれぞれパルス幅を設定する。このように、ノズル数が多い場合やサイズが大きく製造上位置ごとにALがばらつきやすい場合など、状況によっては、単一のパルス幅でなく、いくつかのノズル27ごとにそれぞれパルス幅を定めてもよい。これにより、状況に応じて設定の手間や駆動制御の煩雑さを大きく増加させずに効果的に吐出速度のばらつきを低減することができる。
【0062】
また、取得ステップ及び設定ステップの処理は、インクジェットヘッド21の出荷前検査時に行われる。出荷前検査時に併せて設定されることで、手間を低減することができる。また、出荷後には、設定データを読んで駆動パルスを定めればよいだけであるので、処理が容易である。
【0063】
また、この駆動設定方法は、設定ステップで設定されたパルス幅に対する取得ステップで得られたインク流路28の各々についての最速駆動パルス幅のばらつきに応じた性能のレベル評価を行う評価ステップを含む。平均値は、ALのばらつきの度合(分散など)を反映しないので、必ずしも均一な性能が得られるわけではない。そこで、ばらつき度合に応じた評価を行っておくことで、期待される精度が容易に知得可能となる。また、インクジェット記録装置100に要求する画質レベルに応じた評価レベルのインクジェットヘッド21が組み合わされて利用されることで、歩留まりの低下などによるコストの上昇などを抑制しながら所望のレベルの画質を得られるインクジェットヘッド21を有するインクジェット記録装置100を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態のインクジェットヘッド21の駆動方法は、上記方法で得られた駆動パルスのパルス幅の設定で定められたパルス幅の駆動パルスを圧電素子26にそれぞれ出力する駆動ステップを含む。
このような駆動が行われるインクジェットヘッド21では、容易な制御でよりばらつきの少ない安定した吐出速度でインクを吐出させることができる。
【0065】
また、駆動ステップでは、連続した複数回の駆動パルスにより複数のインク液滴を吐出させて、記録媒体の同一画素範囲に着弾させることが可能であり、複数回の駆動パルスの出力間隔のうち、最後の2回の前記駆動パルスの出力間隔は、3回以上の駆動パルスの出力間隔のうち最後の2回の出力間隔以外の出力間隔よりも広い。このようにマルチドロップ方式でのインク吐出が可能な場合には、よりパルス幅に応じたインクの吐出速度のばらつきが大きくなり得るが、このような場合でも適切にばらつきを低減させる。また、最後から2番目の吐出周期(パルスの立ち上がりから次のパルスの立ち上がりまでの間隔)を長く取ることで、サテライト(微小液滴)の発生を低減させ、画質の劣化やインクの吐出特性の劣化を抑制する。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、全てのインク流路28(ノズル27)に係るALの平均値を統計的な代表値としてパルス幅の設定に用いることとしたが、これに限られない。その他の統計的な代表値として、最頻値(モード)や中央値(メディアン)などがある。また、平均値を歪度などに応じて若干調整してもよい。
【0067】
また、上記実施の形態では、インクジェットヘッド21ごとにパルス幅が設定されるものとして説明したが、複数のインクジェットヘッド21を跨いで(ヘッドユニットなどで)統一されたパルス幅が設定されてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、複数のパルス幅に対する吐出速度に基づいて3次関数でフィッティングを行って最速駆動パルス幅を推定するものとしたが、これに限られない。漸近的に所定の精度の範囲内で最速駆動パルス幅を特定してもよい。また、3次関数ではなく他の関数であってもよい。また、単一のフィッティングだけではなく、複数の近似線の組合せにより最速駆動パルス幅を推定してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、性能のレベル評価を行うものとして説明したが、必ずしも評価を行わなくてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、出荷前検査時に専用の検査機械でパルス幅の設定がなされるものとして説明したがこれに限られない。出荷後にインクジェット記録装置100で直接設定やその変更などがなされてもよい。また、検査結果が外部機器(PCなど)に出力されてパルス幅の設定値の算出処理などがなされてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、マルチドロップ方式でのインク吐出が可能であるものとして説明したが、必ずしもこれに限られない。各画素範囲について、単発でのインク吐出の有無のみが切り替えられるものであってもよい。
【0072】
また、インクに圧力変動を付与する駆動素子は、圧電素子26でなくてもよい。駆動パルスのパルス幅に応じた圧力変動を付与可能な構成であれば、特には限られない。
その他、上記実施の形態で示した設定方法、駆動方法やインクジェットヘッド21の構成などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0073】
10 搬送部
12 搬送ベルト
14 搬送モーター
20 記録動作部
20a 記録素子
21 インクジェットヘッド
22 キャリッジ
25 ヘッド駆動部
26 圧電素子
27 ノズル
28 インク流路
29 駆動波形信号生成部
30 記憶部
31 波形設定データ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
50 撮像部
70 通信部
81 操作受付部
82 表示部
90 電力供給部
100 インクジェット記録装置
200 検査装置
210 搬送部
225 ヘッド駆動部
229 駆動波形信号生成部
230 記憶部
231 計測データ
240 制御部
241 CPU
242 RAM
250 撮像部
270 通信部
281 操作受付部
282 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9