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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/90 20060101AFI20240910BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240910BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20240910BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240910BHJP
   F23J 15/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B01D53/90 ZAB
B01D53/86 222
B01D53/86 250
B01D53/64
B01D53/78
F23J15/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020170652
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062559
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸村 明憲
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-011316(JP,A)
【文献】特開2012-011317(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058906(WO,A1)
【文献】特表2009-503438(JP,A)
【文献】特開2018-025429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/96
F23J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀を含む排ガスが流れる煙道内における、脱硝装置よりも上流側に配される第1開口部と、前記煙道外に配される第2開口部とを有するプローブ管と、
前記プローブ管の前記第2開口部に接続可能に設けられ、前記排ガスを計測する排ガス計測部と、
水銀の酸化を促進する促進剤を貯留する促進剤貯留部と、
吸入側が前記促進剤貯留部に接続され、吐出側が前記プローブ管の前記第2開口部に接続可能に設けられた促進剤供給ポンプと、
を備える排ガス処理装置。
【請求項2】
前記プローブ管を複数備え、
複数の前記第1開口部は、前記排ガスの流れと直交する面における異なる位置に配される請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記排ガスは、石炭を燃焼させるボイラから排気され、
前記石炭に含まれるハロゲン量に基づいて算出される、前記排ガス中のハロゲン濃度に応じ、前記促進剤供給ポンプを制御する中央制御部を備える請求項1または2に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の燃焼装置を備える燃焼設備には、燃焼排ガスを浄化する排ガス浄化装置が設けられている。排ガス浄化装置は、脱硝装置、除塵装置、脱硫装置を含む。
【0003】
石炭を燃焼させることで生じる燃焼排ガスには、石炭に起因する水銀が含まれる。燃焼排ガスに含まれる水銀は、金属水銀(Hg)、2価の水銀(Hg2+(HgCl))、および、燃焼灰に付着した粒子状水銀(Hg)である。粒子状水銀は、除塵装置によって除去することができる。2価の水銀は、水溶性であるため、脱硫装置によって除去することができる。一方、金属水銀は、難水溶性であるため、除塵装置または脱硫装置によって除去することができない。
【0004】
そこで、燃焼排ガスに塩化アンモニウムを添加し、脱硝装置において金属水銀を酸化して2価の水銀とした後、脱硫装置で2価の水銀を除去する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、脱硝装置の上流側に、供給管を挿入し、供給管を通じて塩化アンモニウムに供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-221087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の技術は、塩化アンモニウムを供給するためだけに、専用の供給管を設置する必要がある。このため、特許文献1の技術は、水銀の除去に要するコストがかかるという問題がある。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑み、排ガスに含まれる水銀を低コストで酸化させることが可能な排ガス処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る排ガス処理装置は、水銀を含む排ガスが流れる煙道内における、脱硝装置よりも上流側に配される第1開口部と、煙道外に配される第2開口部とを有するプローブ管と、プローブ管の第2開口部に接続可能に設けられ、排ガスを計測する排ガス計測部と、水銀の酸化を促進する促進剤を貯留する促進剤貯留部と、吸入側が促進剤貯留部に接続され、吐出側がプローブ管の第2開口部に接続可能に設けられた促進剤供給ポンプと、を備える。
【0009】
また、上記排ガス処理装置は、プローブ管を複数備え、複数の第1開口部は、排ガスの流れと直交する面における異なる位置に配されてもよい。
【0010】
また、排ガスは、石炭を燃焼させるボイラから排気され、上記排ガス処理装置は、石炭に含まれるハロゲン量に基づいて算出される、排ガス中のハロゲン濃度に応じ、促進剤供給ポンプを制御する中央制御部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、排ガスに含まれる水銀を低コストで酸化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る排ガス浄化装置を説明する図である。
図2図2は、実施形態に係る排ガス処理装置を説明する図である。
図3図3は、図2のIII-III線の斜視断面図である。
図4図4は、入口プローブ管の断面図である。
図5図5は、中央制御部による仮設排ガス計測処理を説明する図である。
図6図6は、中央制御部による促進剤供給処理を説明する図である。
図7図7は、供給した塩化水素の濃度と、脱硝装置における水銀の酸化率との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[排ガス浄化装置100]
図1は、本実施形態に係る排ガス浄化装置100を説明する図である。図1に示すように、ボイラ10には、押込ファン14が設けられた給気管12が接続されている。押込ファン14によって供給された空気は、空気予熱器120によって予熱され、給気管12を通じてボイラ10に導かれる。ボイラ10は、石炭を含む燃料を空気で燃焼させる。ボイラ10において生じた燃焼排ガス(排ガス)は、煙道30(ダクト)を通過して、煙突20から大気に放散される。
【0015】
ボイラ10において石炭が燃焼されることで生じる排ガスには、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ダスト、水銀、ハロゲンが含まれる。このため、ボイラ10と煙突20とを接続する煙道30には、排ガス浄化装置100が設けられる。
【0016】
排ガス浄化装置100は、脱硝装置110と、空気予熱器120と、除塵装置130と、誘引ファン140と、再加熱器150と、脱硫装置160と、ブーストアップファン170と、排ガス処理装置200とを含む。誘引ファン140およびブーストアップファン170は、ボイラ10において生じた排ガスを煙突20まで導く。
【0017】
脱硝装置110は、脱硝触媒を含む。脱硝装置110は、排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する。
【0018】
空気予熱器120は、煙道30における脱硝装置110の下流側(後段)に設けられる。空気予熱器120は、脱硝装置110によって窒素酸化物が除去された排ガスと、給気管12を通過する空気とを熱交換させる。すなわち、空気予熱器120は、排ガスが有する熱で、押込ファン14によって供給された空気を加熱する。
【0019】
除塵装置130は、煙道30における空気予熱器120の下流側に設けられる。除塵装置130は、例えば、電気集塵機、バグフィルタである。除塵装置130は、排ガスからダストを除去する。
【0020】
誘引ファン140は、煙道30における除塵装置130の下流側に設けられる。再加熱器150は、煙道30における誘引ファン140の下流側に設けられる。再加熱器150は、誘引ファン140と脱硫装置160との間を流れる排ガスと、ブーストアップファン170と煙突20との間を流れる排ガスとを熱交換させる。
【0021】
脱硫装置160は、煙道30における誘引ファン140の下流側に設けられる。排ガスに含まれる硫黄酸化物を水溶液に溶解させて除去する。ブーストアップファン170は、煙道30における脱硫装置160の下流側に設けられる。
【0022】
[排ガス処理装置200]
排ガス処理装置200は、脱硝装置110の性能評価のため、脱硝装置110の上流側および下流側の排ガスを計測する。また、本実施形態において、排ガス処理装置200は、脱硝装置110の上流側に促進剤を供給する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る排ガス処理装置200を説明する図である。図2中、一点鎖線の矢印は、信号の流れを示す。また、図2中、煙道30を白い四角で示す。図2中、煙道30以外の管を実線で示す。また、図2中、接続管250および仮設排ガス計測部260を破線で示す。
【0024】
図2に示すように、排ガス処理装置200は、第1常設プローブ管210と、常設排ガス計測部212と、第2常設プローブ管220と、常設排ガス計測部222と、入口プローブ管230と、出口プローブ管240と、接続管250と、仮設排ガス計測部260と、流路切換部270と、促進剤貯留部280と、促進剤供給ポンプ290と、中央制御部300とを含む。
【0025】
第1常設プローブ管210は、一端に開口部210aが形成され、他端が常設排ガス計測部212に接続された管である。第1常設プローブ管210は、煙道30における水平に延在する箇所の上壁32を貫通する。開口部210aは、煙道30内におけるボイラ10と脱硝装置110との間に配される。
【0026】
常設排ガス計測部212は、第1常設プローブ管210の開口部210aから排ガスを吸引し、排ガスを常時モニタリングする。つまり、常設排ガス計測部212は、脱硝装置110の上流側の排ガスを常時モニタリングする。
【0027】
第2常設プローブ管220は、一端に開口部220aが形成され、他端が常設排ガス計測部222に接続された管である。第2常設プローブ管220は、煙道30における水平に延在する箇所の上壁32を貫通する。開口部220aは、煙道30内における脱硝装置110と空気予熱器120との間に配される。
【0028】
常設排ガス計測部222は、第2常設プローブ管220の開口部220aから排ガスを吸引し、排ガスを常時モニタリングする。つまり、常設排ガス計測部222は、脱硝装置110の下流側の排ガスを常時モニタリングする。
【0029】
入口プローブ管230(プローブ管)は、開口部232(第1開口部)と、開口部234(第2開口部)とを有する管である。入口プローブ管230は、煙道30における水平に延在する箇所の上壁32を貫通する。開口部232は、煙道30内におけるボイラ10と脱硝装置110との間に配される。つまり、開口部232は、煙道30内における、脱硝装置110よりも上流側に配される。開口部234は、煙道30外に配される。開口部234は、流路切換部270に接続される。入口プローブ管230には、開閉弁236が設けられる。開閉弁236は、入口プローブ管230内に形成される流路を開閉する。
【0030】
本実施形態において、入口プローブ管230は、複数(ここでは、21本)設けられる。図3は、図2のIII-III線断面の斜視図である。図4は、入口プローブ管230の断面図である。本実施形態の図3では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、本実施形態の図3図4では、入口プローブ管230を入口プローブ管230A~入口プローブ管230Cで示す。また、図3中、理解を容易にするために、第1常設プローブ管210を破線で示す。
【0031】
図3に示すように、本実施形態の排ガス処理装置200は、入口プローブ管230A、入口プローブ管230B、および、入口プローブ管230Cで構成されるプローブセットPSを7つ備える。各プローブセットPSにおいて、入口プローブ管230Aの開口部232、入口プローブ管230Bの開口部232、および、入口プローブ管230Cの開口部232の、図3中X軸方向の位置は実質的に等しい。7つのプローブセットPSは、図3中、X軸方向の位置を異にして煙道30に設けられる。
【0032】
また、1のプローブセットPSにおいて、入口プローブ管230Aの開口部232、入口プローブ管230Bの開口部232、および、入口プローブ管230Cの開口部232の、図3中Z軸方向の位置は異なる。具体的に説明すると、入口プローブ管230Aの開口部232は、入口プローブ管230Bの開口部232、入口プローブ管230Cの開口部232と比較して、最も下方に位置するように設けられる。入口プローブ管230Bの開口部232は、入口プローブ管230Aの開口部232の上方に位置するように設けられる。入口プローブ管230Cの開口部232は、入口プローブ管230Aの開口部232、入口プローブ管230Bの開口部232と比較して、最も上方に位置するように設けられる。
【0033】
つまり、複数の開口部232は、煙道30の流路断面(図3中XZ平面)において異なる位置に配される。換言すれば、複数の開口部232は、排ガスの流れ(図3中Y軸方向)と直交する面(図3中XZ平面)における異なる位置に配される。
【0034】
また、本実施形態において、第1常設プローブ管210は、煙道30の略中央に1本設けられる。第1常設プローブ管210の開口部210aの図3中Z軸方向の位置は、入口プローブ管230Bの開口部232と実質的に等しい。また、本実施形態において、第2常設プローブ管220は、第1常設プローブ管210と同様に、煙道30の略中央に1本設けられる。第2常設プローブ管220の位置は、第1常設プローブ管210と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、第1常設プローブ管210および第2常設プローブ管220は、複数本設けられてもよい。
【0035】
また、図4に示すように、入口プローブ管230の開口部232は、排ガスの流れ方向(図4中、白抜き矢印で示す)の上流側から下流側に向かって鉛直上方に傾斜している。これにより、排ガスの流れが入口プローブ管230内に衝突する事態を回避することができ、入口プローブ管230の劣化を抑制することが可能となる。
【0036】
図2に戻って説明すると、出口プローブ管240は、第1開口部242と、第2開口部244とを有する管である。出口プローブ管240は、煙道30の上壁32を貫通する。第1開口部242は、煙道30における脱硝装置110と空気予熱器120との間に配される。つまり、第1開口部242は、煙道30内に設けられた脱硝装置110の下流側に配される。第2開口部244は、煙道30の外に設けられる。第2開口部244は、後述する仮設排ガス計測部260に接続可能に設けられる。出口プローブ管240には、開閉弁246が設けられる。開閉弁246は、出口プローブ管240内に形成される流路を開閉する。
【0037】
本実施形態において、出口プローブ管240は、複数(ここでは、21本)設けられる。出口プローブ管240における第1開口部242の位置は、入口プローブ管230の開口部232と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0038】
接続管250は、一端の開口部250aが流路切換部270を通じて、入口プローブ管230の開口部234に接続される。また、接続管250は、他端の開口部250bが、仮設排ガス計測部260に接続可能に設けられる。
【0039】
仮設排ガス計測部260(排ガス計測部)は、入口プローブ管230または出口プローブ管240から排ガスを吸引し、排ガスを計測する。仮設排ガス計測部260は、例えば、排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を計測する。本実施形態において、仮設排ガス計測部260は、常設排ガス計測部212、222とは異なり、所定期間ごとに間欠的に排ガスを計測する。所定期間は、例えば、半年、または、1年である。
【0040】
流路切換部270は、促進剤供給ポンプ290と入口プローブ管230との接続と、入口プローブ管230と接続管250との接続とを切り換える。流路切換部270は、例えば、三方弁である。
【0041】
促進剤貯留部280は、水銀の酸化を促進する促進剤を貯留する。促進剤は、少なくともハロゲン(Cl、Br、I)を含む溶液、または、少なくともハロゲンを含むガスである。促進剤貯留部280は、例えば、塩化アンモニウム水溶液を貯留する。
【0042】
促進剤供給ポンプ290は、吸入側が促進剤貯留部280に接続され、吐出側が流路切換部270(入口プローブ管230の開口部234)に接続可能に設けられる。
【0043】
中央制御部300は、プラント制御装置CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部300は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部300は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して排ガス処理装置200全体を管理および制御する。
【0044】
本実施形態において、中央制御部300は、常設排ガス計測処理、仮設排ガス計測処理、および、促進剤供給処理を行う。以下、各処理について説明する。
【0045】
[常設排ガス計測処理]
中央制御部300は、常設排ガス計測部212および常設排ガス計測部222を駆動させて、排ガスに含まれる窒素酸化物や水銀の濃度を常時モニタリングする。
【0046】
[仮設排ガス計測処理]
所定期間(例えば、半年、または1年)ごとに、仮設排ガス計測部260は、排ガスに含まれる窒素酸化物や水銀の濃度を計測する。
【0047】
図5は、中央制御部300による仮設排ガス計測処理を説明する図である。なお、図5中、実線の矢印は、排ガスの流れを示す。図5に示すように、中央制御部300は、接続管250の開口部250bに仮設排ガス計測部260を接続する。そして、中央制御部300は、流路切換部270を制御して、複数の入口プローブ管230と接続管250とを接続させる。そして、中央制御部300は、複数の入口プローブ管230のうち、1の入口プローブ管230に設けられた開閉弁236を開弁し、他の入口プローブ管230に設けられた開閉弁236を閉弁する。また、中央制御部300は、仮設排ガス計測部260を駆動させる。そうすると、脱硝装置110に導かれる前の排ガスは、開口部232を通じて1の入口プローブ管230内を通過し、仮設排ガス計測部260に導かれる。そして、仮設排ガス計測部260は、1の入口プローブ管230を通じてサンプリングされた排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を計測する。
【0048】
1の入口プローブ管230を通じてサンプリングされた排ガスの計測が終了すると、中央制御部300は、当該入口プローブ管230の開閉弁236を閉弁し、次の入口プローブ管230の開閉弁236を開弁して、排ガスの計測を行う。そして、すべての入口プローブ管230を通じた排ガスの計測が終了すると、中央制御部300は、仮設排ガス計測部260を停止して、開閉弁236をすべて閉弁する。続いて、中央制御部300は、仮設排ガス計測部260と接続管250との接続を解除し、出口プローブ管240の第2開口部244に仮設排ガス計測部260を接続する。
【0049】
中央制御部300は、複数の出口プローブ管240のうち、1の出口プローブ管240に設けられた開閉弁246を開弁し、他の出口プローブ管240に設けられた開閉弁246を閉弁する。また、中央制御部300は、仮設排ガス計測部260を駆動させる。そうすると、脱硝装置110を通過した後の排ガスは、第1開口部242を通じて1の出口プローブ管240内を通過し、仮設排ガス計測部260に導かれる。そして、仮設排ガス計測部260は、1の出口プローブ管240を通じてサンプリングされた排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を計測する。
【0050】
1の出口プローブ管240を通じてサンプリングされた排ガスの計測が終了すると、中央制御部300は、当該出口プローブ管240の開閉弁246を閉弁し、次の出口プローブ管240の開閉弁246を開弁して、排ガスの計測を行う。そして、すべての出口プローブ管240を通じた排ガスの計測が終了すると、中央制御部300は、仮設排ガス計測部260を停止して、開閉弁246をすべて閉弁する。
【0051】
入口プローブ管230および出口プローブ管240を通じた仮設排ガス計測部260による計測が終了すると、中央制御部300は、入口プローブ管230を通じてサンプリングされた排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度と、出口プローブ管240を通じてサンプリングされた排ガスに含まれる窒素酸化物の濃度とに基づき、脱硝装置110の性能を評価する。
【0052】
そして、脱硝装置110の性能が基準値未満となった場合には、中央制御部300は、その旨を報知する。
【0053】
[促進剤供給処理]
中央制御部300は、上記仮設排ガス計測処理を行う期間を除いて、促進剤供給ポンプ290を駆動させ、促進剤を排ガスに供給する。
【0054】
図6は、中央制御部300による促進剤供給処理を説明する図である。なお、図6中、実線の矢印は、促進剤の流れを示す。図6に示すように、中央制御部300は、流路切換部270を制御して、促進剤供給ポンプ290の吐出側と複数の入口プローブ管230とを接続させる。そして、中央制御部300は、複数の入口プローブ管230に設けられた開閉弁236をすべて開弁させる。また、中央制御部300は、複数の出口プローブ管240に設けられた開閉弁246をすべて閉弁させる。つまり、促進剤供給処理では、出口プローブ管240を使用しない。換言すれば、出口プローブ管240は、仮設排ガス計測処理においてのみ使用される。
【0055】
そして、中央制御部300は、不図示のメモリに記憶された石炭情報を参照し、促進剤供給ポンプ290の駆動量を制御する。石炭情報は、ボイラ10に供給される石炭に含まれるハロゲン量を示す情報である。したがって、中央制御部300は、石炭情報を参照し、ボイラ10から排気される排ガス中のハロゲン濃度Fを算出する。そして、中央制御部300は、促進剤供給後の排ガス中のハロゲン濃度が、所定のハロゲン濃度Hとなるように、促進剤供給ポンプ290を制御する。つまり、中央制御部300は、ハロゲン濃度Hとハロゲン濃度Fとの差分に対応する促進剤の量が、煙道30に供給されるように、促進剤供給ポンプ290を制御する。なお、所定のハロゲン濃度Hは、例えば、水銀の酸化率が所定値(例えば、70%)となるハロゲン濃度である。
【0056】
そうすると、促進剤貯留部280に貯留された促進剤は、入口プローブ管230を通過し、開口部232を通じて、煙道30に供給される。つまり、仮設排ガス計測処理と促進剤供給処理とでは、入口プローブ管230内を通過する流体の流れが逆になる。
【0057】
そして、促進剤が排ガスに供給されると、脱硝装置110において、排ガスに含まれる金属水銀が2価の水銀に酸化される。2価の水銀は、脱硫装置160において排ガスから除去される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る排ガス処理装置200は、脱硝装置110の性能評価のために設けられている入口プローブ管230を用いて、促進剤を排ガスに供給することができる。つまり、排ガス処理装置200は、脱硝装置110の性能評価用の入口プローブ管230を流用して、促進剤を排ガスに供給する。これにより、排ガス処理装置200は、促進剤の供給専用のプローブ管を備えずとも、促進剤を排ガスに供給することが可能となる。したがって、排ガス処理装置200は、排ガスに含まれる水銀を低コストで酸化させることができる。
【0059】
また、上記したように、複数の開口部232は、排ガスの流れと直交する面における異なる位置に配される。これにより、排ガス処理装置200は、促進剤を実質的に均等に満遍なく排ガスに供給することができる。したがって、排ガス処理装置200は、脱硝装置110における水銀の酸化率を向上させることが可能となる。
【0060】
[実施例]
上記排ガス処理装置200を用いて、塩化水素(促進剤)を排ガスに供給した。そして、脱硝装置110における水銀の酸化率を計測した。
【0061】
図7は、供給した塩化水素の濃度と、脱硝装置110における水銀の酸化率との関係を説明する図である。図7中、横軸は、供給した塩化水素の濃度[mg/m]を示す。図7中、縦軸は、脱硝装置110における水銀の酸化率[%]を示す。
【0062】
図7に示すように、塩化水素の濃度が50mg/mに到達するまでは、塩化水素の濃度を増加させるほど、水銀の酸化率が上昇することが確認された。また、供給する塩化水素の濃度が50mg/mであると、水銀の酸化率は70%を超えることが分かった。
【0063】
一方、塩化水素の濃度が50mg/mに到達すると、塩化水素の濃度を増加させても、水銀の酸化率%はほとんど変化しないことが確認された。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、上述した実施形態において、排ガス処理装置200が、複数の入口プローブ管230を備える場合を例に挙げた。しかし、排ガス処理装置200は、1の入口プローブ管230を備えていてもよい。同様に、排ガス処理装置200は、1の出口プローブ管240を備えていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、入口プローブ管230が、煙道30の上壁32を貫通する場合を例に挙げた。しかし、入口プローブ管230は、煙道30の下壁を貫通してもよいし、側壁を貫通してもよい。同様に、出口プローブ管240は、煙道30の下壁を貫通してもよいし、側壁を貫通してもよい。
【0067】
また、入口プローブ管230および出口プローブ管240のいずれか一方または両方の外周面に、入口プローブ管230および出口プローブ管240の劣化を防止するための外筒が設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態において、排ガス浄化装置100が1の脱硝装置110を備える場合を例に挙げた。しかし、排ガス浄化装置100は、2以上の脱硝装置110を備えてもよい。この場合、脱硝装置110ごとに排ガス処理装置200が設けられるとよい。
【0069】
また、上記実施形態において、排ガス浄化装置100がボイラ10から排気された排ガスを浄化する場合を例に挙げた。しかし、排ガス浄化装置100は、少なくとも水銀を含む排ガスを浄化すればよい。例えば、排ガス浄化装置100は、セメント工場の排ガスを浄化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、排ガス処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
200 排ガス処理装置
230 入口プローブ管(プローブ管)
230A 入口プローブ管(プローブ管)
230B 入口プローブ管(プローブ管)
230C 入口プローブ管(プローブ管)
232 開口部(第1開口部)
234 開口部(第2開口部)
260 仮設排ガス計測部(排ガス計測部)
280 促進剤貯留部
290 促進剤供給ポンプ
300 中央制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7