(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】空間共有支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240910BHJP
G06Q 10/105 20230101ALI20240910BHJP
G06Q 10/109 20230101ALI20240910BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q10/105
G06Q10/109
(21)【出願番号】P 2020180204
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000132471
【氏名又は名称】株式会社セガ
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】大塚 公二
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175108(JP,A)
【文献】特開2013-088878(JP,A)
【文献】特開2020-101950(JP,A)
【文献】特開2008-027007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間を表示させる空間管理部と、
ユーザからのログインを受け付
けるユーザ判定部と、
ユーザごとにあらかじめ対応づけられたキャラクタとして
、アバタ
ーを前記仮想空間に表示させるアバター表示部と、
ログインしたユー
ザの状態を示すステータス情報を前記仮想空間内に表示させるステータス表示部と、
各アバターの前記仮想空間内における所在地点を判定するアバター管理部と、
アバター同士の会話を可能に設定する会話制御部と、を備え
、
前記空間管理部は、前記仮想空間において、複数のアバターにより共有される共有空間と、複数のアバターそれぞれに割り当てられる個人空間の双方を設定し、
前記アバター管理部が、第1のアバターと第2のアバターの前記仮想空間内における所在地点に基づき、前記第1のアバターと前記第2のアバターが同一の個人空間に存在すると判定したとき、
前記会話制御部は、前記第1のアバターと前記第2のアバターの会話を可能に設定することを特徴とする空間共有支援システム。
【請求項2】
仮想空間を表示させる空間管理部
と、
ユーザからのログインを受け付
けるユーザ判定部と、
ユーザごとにあらかじめ対応づけられたキャラクタとして
、アバタ
ーを前記仮想空間に表示させるアバター表示部と、
ログインしたユー
ザの状態を示すステータス情報を前記仮想空間内に表示させるステータス表示部と、を備え
、
前記空間管理部は、前記仮想空間において、複数のアバターにより共有される共有空間と、複数のアバターそれぞれに割り当てられる個人空間の双方を設定し、
前記ステータス表示部は、アバターの前記ステータス情報を前記アバターに割り当てられる個人空間に表示させることを特徴とする空間共有支援システム。
【請求項3】
前記ユーザの在席を確認する在席確認部と、
前記ユーザのスケジュールを管理するスケジュール管理部と、を更に備え、
前記在席確認部は、前記スケジュール管理部のスケジュールにおいて在席を想定されている期間中であることを条件としてユーザ端末に対する操作が一定時間以上なかったときには、ユーザに対して在席確認を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の空間共有支援システム。
【請求項4】
前記空間管理部は、ユーザ端末の作業画面とは別に前記仮想空間を示す仮想画面を表示させ、前記在席確認部によりユーザの在席を認識したときもしくは当該ユーザの操作指示に応じて、前記仮想画面を非表示もしくは前記作業画面よりも小さく前記仮想画面を表示させることを特徴とする請求項3に記載の空間共有支援システム。
【請求項5】
前記空間管理部は、
第3のアバターが
第4のアバターの個人空間に入ったときには、前記第
4のアバターに対応する第
4のユーザに対して前記仮想画面を少なくとも表示させ、
前記アバター表示部は、前記第
4のユーザの仮想画面において前記第
3のアバターを表示させることを特徴とする請求項
4に記載の空間共有支援システム。
【請求項6】
仮想空間を表示させる機能と、
ユーザからのログインを受け付
ける機能と、
ユーザごとにあらかじめ対応づけられたキャラクタとして
、アバタ
ーを前記仮想空間に表示させる機能と、
ログインしたユー
ザの状態を示すステータス情報を前記仮想空間内に表示させる機能と、
各アバターの前記仮想空間内における所在地点を判定する機能と、
アバター同士の会話を可能に設定する機能と、をコンピュータに発揮させ
、
前記仮想空間において、複数のアバターにより共有される共有空間と、複数のアバターそれぞれに割り当てられる個人空間の双方を設定し、
第1のアバターと第2のアバターの前記仮想空間内における所在地点に基づき、前記第1のアバターと前記第2のアバターが同一の個人空間に存在すると判定したとき、前記第1のアバターと前記第2のアバターの会話を可能に設定することを特徴とする空間共有支援プログラム。
【請求項7】
仮想空間を表示させる機能と
ユーザからのログインを受け付
ける機能と、
ユーザごとにあらかじめ対応づけられたキャラクタとして
、アバタ
ーを前記仮想空間に表示させる機能と、
ログインしたユー
ザの状態を示すステータス情報を前記仮想空間内に表示させる機能と、をコンピュータに発揮させ
、
前記仮想空間において、複数のアバターにより共有される共有空間と、複数のアバターそれぞれに割り当てられる個人空間の双方を設定し、
アバターの前記ステータス情報を前記アバターに割り当てられる個人空間に表示させることを特徴とする空間共有支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間を介して複数のユーザを協調させるための技術、に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウィルス(重症急性呼吸器症候群コロナウィルス2型)の流行を契機として、リモートワーク(在宅勤務)の普及が一気に進んだ感がある。リモートワークでは、従業員は、自宅のPC(Personal Computer)からオフィスのサーバにセキュア回線を介してアクセスしつつ、自宅PCで各自の仕事を行う。
【0003】
リモートワークは個人作業中心となりやすく、他の従業員とのコミュニケーションを取りづらくなる。特許文献1,2は、仮想現実感技術を応用することにより、オフィスに出勤していない従業員に対しても言語的および非言語的なコミュニケーションを提供する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-254851号公報
【文献】特開2016-162001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、今後、オフィスが一切不要になる可能性は低い。たとえば、週に数回、あるいは、月に数回はオフィスに出勤し、それ以外は在宅で仕事をするというハイブリッド型のワークスタイルが主流になると考えられる。したがって、仮想現実感技術によるコミュニケーションの増進を図る上では、オフィスへ出勤して働く従業員と、オフィスへ出勤しないで働く従業員の共存を想定する必要があると考えられる。同様にして、オフィスに出勤するときでも、出勤しないときでも、仕事の進め方に大きな変更を強いられないことが望ましい。
【0006】
このほか、オフィスに限らず、アミューズメント施設等に赴いてゲームをプレイする場合と、在宅でクラウド(リモート)により外部のゲームをプレイする場合とがあり、これらのプレイヤのコミュニケーション等による共存も想定する必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題認識に基づいて完成させた発明であり、その主たる目的は、現地に赴いて行動する者と在宅等でリモートアクセスにより行動する者の仮想空間を介した共同作業等を支援するための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様における空間共有支援システムは、仮想空間を表示させる空間管理部と、ユーザからのログインを受け付け、実在の空間におけるローカル・エリア・ネットワークに対して、外部からログインしたユーザを外部ユーザと判定し、内部からアクセスしたユーザを内部ユーザと判定するユーザ判定部と、ユーザごとにあらかじめ対応づけられたキャラクタとして、内部ユーザのアバターおよび外部ユーザのアバターの双方を仮想空間に表示させるアバター表示部と、ログインしたユーザが内部ユーザおよび外部ユーザのいずれであるかを示すステータス情報を仮想空間内に表示させるステータス表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仮想空間を介して出勤者と在宅者の交流を促進しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】仮想オフィスシステムのハードウェア構成図である。
【
図2】サーバ群に含まれる各サーバの機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態における仮想空間のレイアウトである。
【
図12】在席判定の処理過程を示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態における仮想オフィスシステムの仕組みをゲームセンターに応用したときの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、仮想オフィスシステム200のハードウェア構成図である。
仮想オフィスシステム200(空間共有支援システム)においては、サーバ群100と複数の内部端末302がLAN(Local Area Network)202を介して接続される。内部端末302は、オフィス内部に設置される出勤者のためのパーソナル・コンピュータであり、本実施形態においてはラップトップPCであるとする。複数の外部端末304は、インターネット206と接続される。LAN202とインターネット206は、ゲートウェイ204を介して接続される。外部端末304は、オフィス外部の在宅者のためのパーソナル・コンピュータである。在宅者は、外部端末304からVPN(Virtual Private Network)により、オフィス外からサーバ群100にアクセスできる。以下、内部端末302および外部端末304をまとめていうとき、あるいは、特に区別しないときには「ユーザ端末300」とよぶ。
【0012】
サーバ群100は、仮想勤務サーバ102、勤怠管理サーバ104、データサーバ106およびスケジュールサーバ108を含む。仮想勤務サーバ102は、出勤者および在宅者双方が交流可能な仮想空間を生成し、各ユーザ端末300に仮想空間環境を提供する。勤怠管理サーバ104は、各ユーザの勤怠状況を管理する。データサーバ106は、ユーザに関する各種情報を保存する。スケジュールサーバ108は、各ユーザのスケジュールを管理する。なお、仮想勤務サーバ102、勤怠管理サーバ104、データサーバ106およびスケジュールサーバ108は単一サーバとして形成されてもよい。これらサーバ群100は、LAN(Local Area Network)202を介して接続されており、必要な情報を互いに共有する。
【0013】
ゲートウェイ204によりオフィス内部とオフィス外部が識別される。内部端末302から勤怠管理サーバ104にログインしたとき、いいかれればゲートウェイ204を経由せずにアクセスがなされたとき、勤怠管理サーバ104のユーザ判定部136(後述)はこのユーザが出勤者であると判定する。以下、オフィスに実際に出勤し、内部端末302において仕事をするユーザを「Rユーザ(Real User)」とよぶ。外部端末304からゲートウェイ204を介して勤怠管理サーバ104にログインしたとき、勤怠管理サーバ104はこのユーザが在宅者(外部ユーザ)であると判定する。以下、オフィスに実際には出勤せず、外部端末304において仕事をするユーザを「Vユーザ(Virtual User)」とよぶ。RユーザとVユーザを特に区別しないときには、単に「ユーザ」とよぶ。
【0014】
各ユーザには、仮想空間(後述)において自己の分身としてのキャラクタ(以下、「アバター」とよぶ)が割り当てられる。以下、Rユーザのアバターを「Rアバター」、Vユーザのアバターを「Vアバター」とよぶ。
【0015】
図2は、サーバ群100に含まれる各サーバの機能ブロック図である。
仮想勤務サーバ102、勤怠管理サーバ104、データサーバ106およびスケジュールサーバ108の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
次の
図3に示すサーバユーザ端末300についても同様である。
【0016】
(仮想勤務サーバ102)
仮想勤務サーバ102は、通信部110、データ処理部112およびデータ格納部114を含む。
通信部110は、他のサーバおよびユーザ端末300との通信処理を担当する。データ格納部114は各種データを格納する。データ処理部112は、通信部110の受信データおよびデータ格納部114に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部112は、通信部110およびデータ格納部114のインタフェースとしても機能する。
【0017】
通信部110は、移動指示受信部116を含む。移動指示受信部116は、ユーザからアバターの移動指示を受信する。
【0018】
データ処理部112は、空間管理部118、アバター管理部120、会話制御部122およびステータス管理部124を含む。空間管理部118は、仮想空間データを生成する。仮想空間データは仮想空間のレイアウトおよび内部構成を定義する3次元情報であり、通信部110から各ユーザ端末300に送信される。ユーザ端末300は、この仮想空間データにしたがって後述の仮想空間を表示させる。なお、仮想空間は3次元でなく2次元情報で定義するようにしてもよい。
【0019】
アバター管理部120は、ユーザからの移動指示にしたがって各アバターの仮想空間の位置および向きを制御する。会話制御部122は、ユーザ同士の会話を中継する。会話はテキストによるチャットでもよいが、本実施形態においては音声会話を想定して説明する。
【0020】
ステータス管理部124は、各ユーザのステータス情報を管理する。ステータス情報は、ユーザの状態(ステータス)を示す情報であればよいが、本実施形態においては「予定」「在席」「離席」のいずれかであるとして説明する。ここでいう「予定」とは、会議など、あらかじめスケジュール登録されている活動の時間帯であることを示す。「離席」とは、在席が予定される時間帯であるにも関わらず、実際には離席している状態にあることを示す。「在席」とは、ユーザが在席していることを示す。在席判定の方法については後述する。
【0021】
(勤怠管理サーバ104)
勤怠管理サーバ104は、通信部130、データ処理部132およびデータ格納部134を含む。
通信部130は、他のサーバおよびユーザ端末300との通信処理を担当する。データ格納部134は各種データを格納する。データ処理部132は、通信部130の受信データおよびデータ格納部134に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部132は、通信部130およびデータ格納部134のインタフェースとしても機能する。
【0022】
データ処理部132は、ユーザ判定部136および勤怠管理部138を含む。ユーザは出勤時に勤怠管理サーバ104にログインし、退勤時にログオフする。ユーザ判定部136は、勤怠管理サーバ104にログインしたユーザがRユーザであるかVユーザであるかを判定する。上述した判定方法のほか、ユーザ判定部136は、オフィスにおいてタイムカード等により出勤入力したユーザをRユーザと判定してもよい。ユーザ判定部136はユーザの出勤(ログイン)および退勤(ログオフ)を検出し、ユーザを識別するユーザIDとともに仮想勤務サーバ102等の他のサーバに出退勤を通知する。勤怠管理部138は、ユーザごとの勤怠状況を管理する。
【0023】
(データサーバ106)
データサーバ106は、通信部140およびデータ格納部142を含む。通信部140は、他のサーバおよびユーザ端末300との通信処理を担当する。データ格納部142は各種データを格納する。データ格納部142は、他のユーザ端末300が格納するデータをまとめて管理する。
【0024】
(スケジュールサーバ108)
スケジュールサーバ108は、通信部150、スケジュール管理部152およびデータ格納部154を含む。
通信部150は、他のサーバおよびユーザ端末300との通信処理を担当する。データ格納部154は各種データを格納する。スケジュール管理部152は、通信部130の受信データおよびデータ格納部134に格納されているデータに基づいてスケジュール管理を実行する。スケジュール管理部152は、通信部150およびデータ格納部154のインタフェースとしても機能する。
【0025】
図3は、ユーザ端末300の機能ブロック図である。
ユーザ端末300は、ユーザインタフェース処理部210、通信部212、データ処理部214およびデータ格納部216を含む。
ユーザインタフェース処理部210は、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパネル等の入力デバイスを介してユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。通信部212は、サーバ群100との通信処理を担当する。データ格納部216は各種データを格納する。データ処理部214は、ユーザインタフェース処理部210からの入力、通信部212の受信データおよびデータ格納部216に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部214は、通信部212、ユーザインタフェース処理部210およびデータ格納部216のインタフェースとしても機能する。
【0026】
ユーザインタフェース処理部210は、入力部218および出力部220を含む。
入力部218は、ユーザからの各種入力を受け付ける。入力部218は、撮像部222、音声入力部224および操作入力部226を含む。撮像部222は、ユーザ端末300を操作するユーザの顔画像を撮像する。音声入力部224は、ユーザからの発話音声の入力を受け付ける。操作入力部226は、キーボード、ジョイスティック、マウス等の入力デバイスからの操作を受け付ける。ユーザは、入力デバイスにより、コンピュータゲームと同様のユーザインタフェースを介して、仮想空間中にいる自らに対応するアバターを操作する。以下、ユーザ本人に対応し、ユーザが操作対象とするアバターであることを明示するときには「本人アバター」とよび、他のユーザが操作するアバターであることを明示するときには「他人アバター」とよぶ。
【0027】
出力部220は、ユーザに対して各種情報を出力する。出力部220は、表示部228と音声出力部230を含む。表示部228は、モニタに各種情報を表示する。音声出力部230は、他のユーザの発話音声等、各種音声を出力する。
【0028】
データ処理部214は、在席確認部232を含む。在席確認部232は、後述の方法により、ユーザが在席しているか離席しているかを判定する。
【0029】
図4は、本実施形態における仮想空間400のレイアウトである。
空間管理部118は、三次元の仮想空間400を形成する。本実施形態における仮想空間400は、実在のオフィスのレイアウトと同一のレイアウトを有するものとする。仮想空間400には、ユーザに対応する複数のアバター402が存在する。アバター402は、人間の形をしたキャラクタであり、ユーザの操作によって仮想空間400の内部を移動する。
図4においては、Rアバターには「R」マーク、Vアバターには「V」マークを付与している。
図4の仮想空間400には、3人のVアバターと2人のRアバターが存在する。
【0030】
仮想空間400は、複数の個人空間404とそれ以外の共有空間406を含む。個人空間404は、ユーザに割り当てられる専用の作業空間である。共有空間406は、個人空間404以外の空間である。ユーザXの本人アバターが自分の個人空間404にいるときユーザXは「作業モード」となり、自分の個人空間404以外の空間、いいかえれば、他のユーザの個人空間404か共有空間406にいるときにはユーザXは「交流モード」となる。アバター管理部120は、アバター402の仮想空間400における所在地点に応じて、ユーザごとにどちらのモードにあるかを判定する。また、他のユーザのアバターが自分の個人空間404にいるときは、例外的に自身も交流モードに切り替わる(後述)。
【0031】
空間管理部118は、
図4に示されるレイアウトにしたがって仮想空間データを生成し、各ユーザ端末300にこれを送信する。ユーザ端末300の表示部228は、仮想空間データにしたがって、本人アバターを視点位置および視方向とする三次元の仮想空間400を表示させる。ユーザは、ジョイスティック、マウスやタッチパネル等の入力デバイスにより、本人アバターを仮想空間400内にて移動させる。あるいは、ユーザは仮想空間400のマップ画面において、移動先をポイント指定することにより本人アバターを瞬間移動させてもよい。
【0032】
ユーザXのアバター(以下、「アバター(X)」のように表記する)とユーザYのアバター(Y)の仮想空間400内での距離が所定の閾値T1以内となったとき、交流条件が成立し、ユーザXとユーザYは音声会話が可能となる。会話制御部122は、アバター(X)とアバター(Y)の間の距離を判定し、2人のアバターの距離が閾値T1以内となったとき、ユーザXの発話音声データをユーザ端末300(Y)に送信する。ユーザ端末300(Y)の音声出力部230は、ユーザXの発話音声を出力する。ユーザYが発話したときにも、同様にして、会話制御部122はユーザ端末300(X)に発話音声を出力させる。現実世界ではユーザ同士が近づくことで会話が可能になるのと同様、仮想空間400内においてアバターが近づくことでユーザ同士の会話が可能となる。本実施形態においては、ユーザXとユーザYの距離が閾値T1以内となったとき、会話制御部122は交流条件が成立したと判定する。
【0033】
このほか、アバター(X)が、アバター(Y)の個人空間404に入ったときにも、会話制御部122は交流条件が成立したと判定し、ユーザXとユーザYの会話を可能にする。なお、他のユーザのアバターが、偶然に自分(ユーザX)の個人空間404内を通過するだけの場合もある。したがって、ユーザ同士の指示により会話等のコミュニケーションが発生したタイミングか、所定時間以上自分の個人空間404内に位置する場合に交流モードに切り替えるとしてもよい。また、会話制御部122は、アバター(X)とアバター(Y)が仮想空間400内に作られるエリア、たとえば、会議室や応接室に同時に存在するときにユーザXとユーザYの会話を可能に設定してもよい。このほか、アバター(X)とアバター(Y)が互いに向かい合ったとき、会話制御部122は交流条件が成立したと判定してもよい。
【0034】
図5は、仮想空間400の画面例である。
空間管理部118は、仮想空間データを各ユーザ端末300に送信する。ユーザ端末300の表示部228は、仮想空間データと本人アバターの位置および方向にしたがって3次元の仮想空間画像をモニタに表示させる。
図5は、ユーザXの本人アバター(X)が、仮想空間400内の応接室に入ったときにユーザ端末300(X)のモニタに表示される仮想空間400の画面例を示している。
【0035】
図5においては、応接室内のソファ410(オブジェクト)の上にアバター402(他人アバター)が座っている。この他人アバターは他のユーザYのVアバターである。ユーザY(Vユーザ)がアバター402(他人アバター)をソファに移動させたあと、ユーザXが本人アバターを応接室に移動させたとき、ユーザXの画面にはソファ410でくつろぐ他人アバター(Y)が映る。このときユーザXとユーザYの間に交流条件が成立するので、ユーザXはユーザYと会話を楽しむことができる。
【0036】
他人アバターの頭上には「V」または「R」が表示される。
図5のアバター402の頭上(近傍)には「V」が表示されているのでこの他人アバターはVアバターである。ユーザXは仮想空間400内で他人アバターに出会うとき、そのアバターに対応するユーザがRユーザとVユーザのいずれであるかを視認できる。
【0037】
ユーザは、本人アバターをマウス等で操作する。本人アバターの視点(位置と視線方向)に応じて仮想空間400の見え方が変化する。ユーザは、仮想空間400内をコンピュータゲームと同様の方法により移動し、他人アバターに近づくことで他人アバターに対応する他のユーザと音声で会話できる。
【0038】
Vユーザであっても、他のRアバターに仮想空間400内で近づくことで会話できるので、RユーザであるかVユーザであるかに関わりなく、仮想空間400内にてアバターを介してスムーズに交流できる。同様にして、VユーザとVユーザも仮想空間400内にて会話できる。なお、RユーザとRユーザは、どちらもオフィスにいるので現実世界にて交流してもよいし、仮想空間400内で交流してもよい。たとえば、オフィスビルの1Fに出勤しているRユーザは、15Fに出勤しているRユーザと会話したいとき、相手のいるところまで行かずに仮想空間400内でRアバターを移動させて相手のRアバターに話しかけてもよい。なお、Rユーザが離席するときには、ユーザ端末300(ノートPC)を持参してオフィス内を移動することが望ましいが、休憩やトイレなど、ユーザ端末300が携帯できないような場合は、ユーザはアバターを操作できないままユーザ端末300から離れることになるため、他のユーザが話しかけてきても反応できない。このため、ユーザとユーザ端末300が離れていることがわかるよう、後述するステータスを切り替えて、アバターの近傍に「離席」等のステータスを表示させる。
【0039】
図6は、個人空間404の画面例である。
個人空間404には、机420(オブジェクト)が配置される。ユーザXの本人アバター(X)が他人アバター(Y)の個人空間404に入ったとき、ユーザ端末300(X)の表示部228はステータスパネル422を表示させる。
図6のステータスパネル422は、ユーザYのステータス情報を示す。後述する方法により、ユーザYの在席または離席はステータス管理部124により管理される。
図6においては、ユーザYが離席しているため、個人空間404にはアバター(Y)は表示されていない。また、ステータスパネル422はユーザYが離席中であることを示している。ステータスパネル422は、「離席」「在席」「予定」のいずれかを示す。
【0040】
図7は、作業モード画面430の画面図である。
作業モード画面430は、作業モードにあるユーザXのユーザ端末300に表示される。作業モード画面430は、大型の作業画面432と小型の仮想画面434を含む。作業画面432には、通常作業のための情報が表示される。たとえば、作業画面432には、表計算、ウェブブラウザなどの一般的なウィンドウ群が表示される。ユーザXは、作業画面432において仕事を行う。小型の仮想画面434には本人アバター(X)の視点(机420に着席している本人アバター(X)の視点)から見た仮想空間400が表示される。
【0041】
他人アバター402(Y)が、ユーザXの個人空間404に近づいたとき、他人アバター402(Y)がユーザXの仮想画面434に表示される。作業モード中のユーザXは、作業画面432により自分の作業に集中しつつ、仮想画面434において他のユーザY(他人アバター402)が近づいてきたことを認識する。このとき、ユーザXは個人空間404に入ってきた他人アバター402(Y)に対応するユーザYと会話できる。ユーザXは、作業モードにおいては個人的な作業に集中しつつも、他人アバター402(Y)が自席(仮想空間400における本人アバターの個人空間404)に近づいてきたときには自席で他のユーザと会話する。現実世界におけるオフィスにおいて一般的な「席でのちょっとした会話」という交流が仮想空間400においても実現される。
【0042】
ユーザXが離席したときには、ユーザXは交流モードとなる。在席または離席のいずれかにあるかは、後述の方法により在席確認部232により判定される。交流モードにおいては、ユーザ端末300のモニタ全面に仮想画面434が表示され、作業画面432は表示されない。ユーザは、仮想画面434に表示される三次元の仮想空間400において本人アバターを移動させる。ユーザが自席に戻ったときには再び作業モードとなる。作業モードにおいては、仮想画面434は、他人アバター402が自席に近づいているかを確認可能な程度の小型の画面に縮小される。なお、個人空間404に他人アバター402が入ってきたときには、表示部228は仮想画面434を拡大表示させるとしてもよい。また、交流モードと作業モードは、在席または離席の判定とは別に、ユーザXのユーザ端末300の操作入力によって切り替えるようにしてもよく、この操作に連動して仮想画面434の表示サイズを変更するようにしてもよい。
【0043】
図8は、ユーザ基本情報160のデータ構造図である。
ユーザ基本情報160は、データサーバ106のデータ格納部142に格納される。ユーザは、ユーザIDにより識別される。仮想空間400で交流するユーザは、あらかじめユーザ基本情報160に登録されている。ユーザID=P01のユーザ(以下、「ユーザ(P01)」のように表記する)の氏名は「本庄明」であり、知財部のマネージャである。また、ユーザにはあらかじめ1体のアバターが対応づけられる。アバターは、アバターIDにより識別される。たとえば、
図8によれば、ユーザ(P01:本庄明)にはアバター(A03)が対応づけられている。
【0044】
図9は、スケジュール情報170のデータ構造図である。
スケジュール情報170は、スケジュールサーバ108のデータ格納部154に格納される。
図9に示すスケジュール情報170は7月30日(木)における各ユーザの予定をあらかじめ登録したものである。スケジュール管理部152は、スケジュール情報170を管理し、各ユーザ端末300にスケジュール情報170を公開する。各ユーザは、スケジュールサーバ108にアクセスしてスケジュール情報170に自らの予定を自主的に書き込む。なお、スケジュール情報170は、既存のスケジュール管理ツールやサーバと連携し、必要な情報を当該サーバから参照したり、スケジュールサーバ108のデータ格納部154に反映させたりするようにしてもよい。
【0045】
たとえば、ユーザ(本庄明)は、7月30日はオフィスに出勤する予定である(Rユーザ)。また、ユーザ(本庄明)は、9:30~12:00まで会議の予定である。したがって、この時間帯においてユーザ(本庄明)は離席することが予定されている。以下、このように、離席を予定している期間のことを「離席予定期間」とよぶ。
【0046】
ユーザ(横尾正典)は、7月30日は在宅予定である(Vユーザ)。ユーザ(横尾正典)は、11:00~12:00まで外出を予定しているためこの期間は離席予定期間となる。ユーザ(神辺雪子)は、Vユーザであり、7月30日の9:30~12:00に会議を予定している。ユーザ(神辺雪子)はVユーザなのでこの会議時間中は自宅の自席にてリモートで会議に参加する予定である。したがって、ユーザ(神辺雪子)にとってこの会議時間は離席予定期間ではない。
【0047】
ユーザ(道上慎一)は、7月30日は休暇予定である。各ユーザは、一日の予定を随時スケジュール情報170に設定することを求められる。たとえば、Vユーザは、買い物など私用で一時外出するときにもスケジュール情報170に外出予定を登録することを求められる。スケジュール情報170において離席予定期間以外の時間帯は、ユーザの在席が予定されている(以下、「在席予定期間」とよぶ)。このように、スケジュール情報170の各スケジュールには、離席や在席等の属性が設定されており、実際の離席/在席の判定は、この属性と勤務形態等の情報に応じて判定される。
【0048】
なお、出勤者(Rユーザ)であっても自席からリモートで会議に参加したい等の事情が発生したり、会議の場にユーザ端末300を持ち込み、会議の最中でも他のユーザとコミュニケーションを取ることが可能な場合もある。この場合、ユーザ端末300は、ユーザを生体認証等の既存の技術で検出して「在席」に設定してもよいし、ユーザが手動で「在席」と設定してもよい。
【0049】
図10は、勤怠状態情報180のデータ構造図である。
勤怠状態情報180は、仮想勤務サーバ102のデータ格納部114に格納される。
図10に示す勤怠状態情報180は7月30日の14時03分現在における各ユーザの勤怠状態を示す。ユーザ(本庄明)はRユーザであり、在席中であり、現在時刻において予定はない(
図9のスケジュール情報170も参照)。ユーザ(本庄明)は、現在は在席予定期間内であり、実際に在席している。ユーザ端末300のモニタは、一定時間、操作がなされなかった場合、スリープ状態となる。ユーザ(本庄明)のユーザ端末300のモニタはスリープしていない。本実施形態においては、未操作状態が10分継続するとモニタはスリープ状態となり、スリープ状態が20分程度継続したときに離席と判定する。
【0050】
ユーザ(横尾正典)はVユーザであり、在席予定期間中であり、実際に在席している。ただし、13時52分からユーザ端末300のモニタがスリープし続けているので、一時的に離席している可能性もあるし、在席しているが書見等の理由によりユーザ端末300をしばらく操作していない可能性もある。
【0051】
ユーザ(万能倉浩)はRユーザであり、現在、在席予定期間中である。ユーザ(万能倉浩)のユーザ端末300のモニタは13時20分から40分以上スリープしている。したがって、ユーザ(万能倉浩)は、在席予定期間中であるにも関わらず離席しているとみなされる。
【0052】
勤怠状態情報180により、勤怠管理が可能となる。長時間離席するときにはユーザはスケジュール情報170に自らの予定を書き込み、離席予定期間をこまめに設定することを求められる。在席予定期間中に席を外すと離席判定されてしまう。このような制御方法により、スケジュール情報170に登録された予定行動と実際のユーザの行動の齟齬が生じないようにユーザに促すことができる。逆に、ユーザは170にきちんと予定を書き込みさえすれば、比較的自由に仕事をすることができる。一日中、自席に座り続けることを求められるわけではない。
【0053】
図11は、勤怠履歴情報190のデータ構造図である。
勤怠履歴情報190は、勤怠管理サーバ104のデータ格納部134に格納される。
図11に示す勤怠履歴情報190は、勤怠状態情報180を集計することにより、ユーザ(本庄明)の勤怠履歴をまとめたものである。仮想勤務サーバ102は、毎日、勤怠状態情報180を集計し、集計後に勤怠状態情報180を勤怠管理サーバ104に送信する。勤怠管理サーバ104の勤怠管理部138は、勤怠状態情報180に含まれるデータを組み替えることにより、ユーザごとに勤怠履歴情報190を生成する。
【0054】
ユーザ(本庄明)は、7月30日(木)はRユーザであり(出勤)、スリープを2回検出されている。このうち、スケジュールとの不整合、いいかえれば、在席予定期間中の離席判定は1回生じている。ユーザ(本庄明)は予定にない長時間離席を1回行っているといえる。
【0055】
ユーザ(本庄明)は、7月29日(水)はVユーザであり(在宅勤務)、スリープが4回検出されているがスケジュールとの不整合は発生していない。すなわち、29日において、ユーザ(本庄明)は短時間の離席をした可能性はあるが、予定にない長時間離席は行っていない。ユーザ本人だけでなく、経営者や人事担当者等も勤怠履歴情報190を参照することにより、各ユーザの勤怠を確認できる。特に、出勤していないVユーザについても、自ら登録したスケジュールを外れた行動をしていないかを簡易に確認できる。
【0056】
図12は、在席判定の処理過程を示すフローチャートである。
図12に示す在席判定処理は、ユーザ端末300の在席確認部232により定期的に実行される。本実施形態においては、5分ごとに在席判定処理が実行されるものとする。まず、在席確認部232はスケジュールサーバ108にアクセスしてスケジュール情報170を参照し、予定があるか否か、いいかえれば、離席予定期間中であるか否かを判定する(S10)。予定がないとき、いいかえれば、在席予定期間であるときには(S10のN)、在席確認部232は、ユーザ端末300のモニタがスリープ状態にあるか否かをチェックする(S12)。
【0057】
ユーザ端末300のモニタがスリープしているときには、いいかえれば、離席している可能性があるときには(S12のY)、在席確認部232は変数iをインクリメントする(S14)。このとき、在席確認部232は、勤怠状態情報180のスリープの欄を更新する。在席確認部232は、表示部228に指示して在席確認のためのアラート・ウィンドウ(不図示)をポップアップ表示させる(S16)。このアラート・ウィンドウには「在席中であればキーまたはマウスを操作してください」という記載が表示される。このときにユーザがマウス等を操作すればスリープは終了する。
【0058】
変数iが閾値T2を超えたときには(S18のY)、在席確認部232は「離席」と判定する(S20)。本実施形態における閾値T2は「4」である。したがって、不操作が10分以上継続してモニタがスリープとなり、その後、5分ごとに繰り返し実行される在席判定処理において4回連続してスリープが検出されたとき、いいかえれば、スリープが15~20分程度継続したとき、在席確認部232はユーザが離席しているとみなす。離席と判定されたときには、在席確認部232は、勤怠状態情報180の在席欄を更新する。変数iが閾値T2以下のときには(S18のN)、処理は終了する。
【0059】
一方、スリープ中でないとき(S12のY)、在席確認部232は変数iをゼロにリセットする(S22)。このとき、在席確認部232は在席と判定し、勤怠状態情報180の在席欄、スリープ欄をそれぞれ更新する(S24)。
【0060】
予定があるときであって(S10のY)、リモート会議でないとき(S26のN)、以降の処理はスキップされる。たとえば、買い物等の一時外出、実際に会議室に移動して会議に参加するときなどが考えられる。一方、リモート会議のとき(S26のY)、在席確認部232はユーザが在席しているか否かを判定する(S28)。たとえば、ユーザがユーザ端末300のカメラに映っているときには(S28のY)、在席確認部232はユーザが在席していると判定する(S30)。あるいは、ユーザが在席の旨をユーザ端末300に入力したとき在席と判定してもよい。在席確認ができなかったときには(S28のN)、在席確認部232はユーザが離席していると判定する(S32)。
【0061】
<総括>
以上、実施形態に基づいて仮想オフィスシステム200を説明した。
本実施形態によれば、RユーザおよびVユーザそれぞれは仮想空間400において自らの化身であるアバターとして共存し、アバターを通して交流できる。ユーザは、自席で作業しているときには、ユーザ端末300のモニタには作業画面432が大きく表示されるので個人作業に集中できる。一方、仮想空間400における自席の近く、いいかえれば、自分の個人空間404に他のアバターが入ってきたときには、作業モード中の仮想画面434にアバターが表示される。このため、ユーザは、作業中に他人アバター(他のユーザ)が自席に近づいて話したがっていることを認識できる。自席で仕事に集中しつつ、他のユーザ(従業員)から話しかけられたり、あるいは、他のユーザ(従業員)の席付近まで歩いていって話しかけるという現実空間と同様のコミュニケーションの流れを仮想空間400においても再現できる。
【0062】
在席確認部232は、ユーザ端末300の操作中断が所定時間継続したとき変数iをインクリメントし、変数iが閾値T2に達したときに離席と判定する。閾値T2を設けることによりトイレなどによる短時間の離席は「離席」とみなされないため、合理的な在席確認が可能となる。スケジュール情報170に予定を登録している期間は離席予定期間となり、在席判定は実行されないため(
図12のS10参照)、ユーザがスケジュール情報170をきちんと更新・登録するように促しやすくなる。たとえば、Vユーザが私用で買い物に出たいときや散歩をしたいときには、スケジュール情報170に登録しておけば離席と判定されることはない。逆にこのような登録をしないで長時間離席をした場合には無断離席と見なされる可能性がある。
【0063】
ユーザは、スケジュール情報170にきちんとスケジュールを登録しておけば比較的自由に仕事をすることができる。たとえば、Vユーザであっても、買い物や食事の支度、子どものお迎えなどの予定を登録しておけばその期間中は無断の離席とみなされない。一方、このような予定登録をしていない場合には、スケジュールにない離席であるため怠慢とみなされるかもしれない。スケジュール情報170と在席判定を連動させることにより、自由と規律を両立させることができる。
【0064】
各ユーザは、仮想空間400内において本人アバターを他人アバターに近づけることで他のユーザと会話できる。作業モードにおいては個人作業に集中する一方、交流モードにおいては本人アバターを動かしながら他人アバター(ユーザ)と会話できる。同一のオフィスにいないVユーザXがRユーザYと会話したい場合、一般的には、VユーザXからRユーザYに電話をかけることが多い。しかし、VユーザXからRユーザYの状況がわからないと電話をかけづらいことがある。本実施形態においては、VユーザXは本人アバターを仮想空間400内で移動させRユーザYのアバターに近づける。RユーザYの状況を仮想空間400において確認できるので、VユーザXはRユーザYの様子を見ながら適切なタイミングで声をかけやすくなる。また、「歩いて、近づいて、話しかける」という現実世界と同様の手順を踏むことにより、現実世界に似たコミュニケーションを実現できる。話しかけられる側のRユーザYも、個人的な作業に没頭しているときにVユーザXから電話連絡を受けるよりも、仮想画面434においてアバター(X)を視認した上で会話することで、作業を切り上げやすいと考えられる。もし、ユーザYが個人作業に集中しており話しかけられたくないときには、ユーザYはステータス管理部124に対して、仮想空間400のステータスパネル422に「いま話しかけないで」という情報を表示させるように指示してもよい。
【0065】
ユーザは、Rユーザ(出勤者)となることもあればVユーザ(在宅者)となることもある。いずれの場合においてもユーザは仮想空間400により他のユーザと実質的に同一のユーザインタフェースにて交流できる。いいかえれば、Rユーザとしての働き方とVユーザとしての働き方を仮想空間400により共通化しやすくなる。このため、テレワークあるいは時差出勤など柔軟なワークスタイルを促進しやすくなると考えられる。
【0066】
複数のユーザは、仮想空間400内に設けられる会議室、喫煙室、あるいは、オープンスペースに集まるだけで即席の会議をすることもできる。会話制御部122は、あるアバターの発話音声を、そのアバターに近い位置にいるアバターまたは同室にいるアバターに対してだけ伝えることにより、気軽に会話グループをつくることができる。
【0067】
ユーザは、作業に疲れたときには仮想空間400内を散策してもよい。仮想空間400内を散策することにより他のユーザ(アバター)の様子を見ることができるので、在宅勤務であっても他の従業員の存在を感じることができる。また、Rユーザであっても、実際にオフィスを散策してもよいし、仮想空間400内を散策することで気分転換をしてもよい。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0069】
ユーザ端末300とサーバ群100により仮想オフィスシステム200が構成されるとして説明したが、ユーザ端末300の機能の一部はサーバ群100のいずれかのサーバにより実現されてもよいし、サーバ群100のいずれかのサーバの機能の一部はユーザ端末300により実現されてもよい。また、ユーザ端末300およびサーバ群100以外の第3の装置が、これらの装置の機能の一部を担ってもよい。
【0070】
[変形例]
Rユーザ本人が実在のオフィス内を移動するとき、仮想勤務サーバ102のアバター管理部120はRユーザのオフィス内の所在地点に応じてRアバターを仮想空間400内で移動させてもよい。いいかえれば、Rユーザのオフィス内における位置と、Rアバターの仮想空間400内における位置を連動させてもよい。Rユーザの位置検出方法としては、ウェアラブルセンサ、LIDAR(Light Detection and Ranging)等の既知技術を応用すればよい。
【0071】
ユーザ端末300、特に、Rユーザのユーザ端末300は、HMD(Head Mounted Display)であってもよい。一方、Vユーザのユーザ端末300は、デスクトップPCであってもよい。
【0072】
本実施形態においては、作業モードにおいては作業画面432を全面表示させ、仮想画面434を作業画面432よりも小さく表示させるとして説明した。変形例として、作業モード中は仮想画面434を表示させず、他のアバターが個人空間404に入ってきたときだけ仮想画面434を表示させるとしてもよい。
【0073】
ユーザ端末300が2台のディスプレイを有するときには、一方のディスプレイに作業画面432を表示させ、他方のディスプレイに仮想画面434を表示させるとしてもよい。あるいは、ユーザは、作業用の一般的なPCと仮想空間400を表示させるためのデバイス(ユーザ端末300)の両方を同時利用してもよい。
【0074】
本実施形態におけるステータス情報は「在席」「離席」「予定」のいずれかであるとして説明した。このほかにも、ステータス情報は役職、所属部署、趣味、自己紹介などを含んでもよい。また、ユーザXがアバター(X)を介してアバター(Y)を視認したときには、ステータス管理部124はユーザXとユーザYの最近1ヶ月間の会話回数、総会話時間、前回の会話日時、初対面か否かなどの二人の関係性に基づく情報をステータス情報としてユーザ端末300に提供してもよい。ステータス情報を充実させることにより、アバター同士での雑談のきっかけを掴みやすくなるため、コミュニケーション活性化にも寄与すると考えられる。ステータス情報は、個人空間404の机420に表示させてもよいし、アバターの付近に表示させてもよい。
【0075】
ユーザは、身体の動きを検出するためのセンサを装着してもよい。各センサは、ユーザIDとともにセンシング情報を仮想勤務サーバ102に送信してもよい。仮想勤務サーバ102のアバター管理部120は、センシング情報にしたがってアバターの形状を変化させてもよい。たとえば、ユーザが手を上げたときにはアバターも手を挙げるように制御してもよい。
【0076】
本実施形態においては、キーボードあるいはマウスの操作がなされない状態が継続するときに離席と判定した。変形例として、ユーザ端末300に設置されるカメラによりユーザを撮像し、ユーザ端末300の前にユーザが映っていない期間が所定時間以上継続したときに離席と判定してもよい。撮像部222は、常時、ユーザを撮像し、在席確認部232は撮像画像を画像認識する。在席確認部232は、撮像画像にユーザが映っているか否かを判定することにより、在席判定を実行してもよい。この場合には、在席確認部232は撮像画像にユーザが映っていない期間が所定時間以上継続したとき、離席と判定してもよい。
【0077】
本実施形態においては、ユーザの在席を確認できないときにアラート・ウィンドウを表示させるとして説明した(
図12のS16)。変形例として、アラート時には音声出力部230はチャイムなどの所定音声を出力してもよいし、表示部228が画面の明るさを変化させてもよい。ユーザ端末300が操作されていない場合でも、ユーザは書見のために集中しているのかもしれない。このような可能性を考慮し、ユーザの集中力を乱さないように控え目な在席確認のためのアラートを実行してもよい。
【0078】
Vユーザは在宅者でなくてもよい。たとえば、東京のオフィスに出勤しているユーザをRユーザとし、大阪のオフィスに出勤しているユーザをVユーザとしてもよい。このように地方支社あるいはサテライト・オフィスにいるユーザであっても仮想空間400において他のオフィスのユーザと交流できる。仮想オフィスシステム200が提供する仮想空間400により、たくさんの支社を有する大企業であっても、従業員全体による大規模な交流が可能となり、組織としての一体感を醸成する上でも有効であると考えられる。仮想空間400により、たとえば、バーチャル出張、バーチャル出向などの勤務形態を実現することもできる。
【0079】
本実施形態においては、仮想空間400は実際のオフィスを模擬した空間であるとして説明した。変形例として、仮想空間400は実際のオフィスとは違う空間であってもよい。たとえば、壁紙や空間照明、壁に掛ける絵、机のデザイン、BGM(Back Ground Music)等を実際のオフィスとは異なるものに設定してもよい。空間管理部118は、仮想空間400の趣向を日時によって変化させてもよい。たとえば、クリスマスにはクリスマス・パーティ風に飾り付けのされた仮想空間400を表示させてもよい。このような制御方法によれば、出勤日によって仮想空間400が変化するので、仮想空間400に出勤する楽しさを従業員に提供できる。
【0080】
図13は、本実施形態における仮想オフィスシステム200の仕組みをゲームセンターに応用したときの概念図である。
本実施形態ではオフィス環境を例に説明したが、他の実在する環境でも応用が可能である。たとえば、ゲームセンター等に設置されたアーケードゲーム機(業務用ゲーム装置)を例にした場合、プレイヤがゲームセンターに赴いてゲームをプレイする場合と、クラウドゲーミングと同様にゲームセンターの外(自宅等)からリモートアクセスによってゲームセンターのゲーム装置をプレイする場合においても、実際のゲームセンターを模擬した仮想空間を設定してもよい。ゲームセンターに赴いたプレイヤ(内部ユーザ)のアバターと、リモートアクセスしているプレイヤ(外部ユーザ)のアバターとが、この仮想空間内に配置されてコミュニケーション等を取るようにしてもよい。
【0081】
この場合、ゲームセンター510のアーケードゲーム機514は、あらかじめ外部からのリモートアクセスによってゲームプレイが可能な仕組みが備わっている必要がある。具体的には、プレイヤが自宅等から家庭用ゲーム機やPC(パーソナル・コンピュータ)、スマートフォン、タブレット等のユーザ端末300からマッチングサーバ500にログインする。このとき、プレイヤは、ユーザ端末300から、プレイヤID、ユーザ端末300の位置情報、プレイしたいゲームをマッチングサーバ500に通知する。
【0082】
マッチングサーバ500は、ユーザが希望するゲームをプレイ可能なゲームセンター510のうち、ユーザ端末300の所在地から最寄りのゲームセンター510への通信接続の案内をユーザ端末300に送信する。マッチングサーバ500は、特定の地域もしくは全国の提携するゲームセンターの情報として、所在地や導入されているアーケードゲーム機514の情報を記憶している。また、各アーケードゲーム機514には、映像と音声を圧縮して通信回線を介して接続されたプレイヤのユーザ端末300に送信する機能と、ユーザ端末300からの操作指示を受信してゲームの進行処理を行う機能が予め設けられている。より具体的には、ゲームセンター510に設置されるサーバ512が、ユーザ端末300とアーケードゲーム機514とのデータ送受を管理する。
【0083】
各アーケードゲーム機514は、ゲームセンター510に赴いたプレイヤが直接アーケードゲームアーケードゲーム機514でゲームをプレイする場合と、上記の通りリモートアクセスによってプレイする場合の2通りのプレイが可能になっている。
図13においては、ゲームセンター510のサーバ512が、
図1のサーバ群100に対応する。プレイヤは、サーバ512が提供するゲームセンター内を模した仮想空間内においてアバターを介して他のプレイヤと「交流モード」として関わることができる。また、プレイヤは、仮想空間内でアーケードゲーム機514を選んでプレイするときには、個人空間404において「作業モード」と同様にゲームプレイに集中できる。
【符号の説明】
【0084】
100 サーバ群、102 仮想勤務サーバ、104 勤怠管理サーバ、106 データサーバ、108 スケジュールサーバ、110 通信部、112 データ処理部、114 データ格納部、116 移動指示受信部、118 空間管理部、120 アバター管理部、122 会話制御部、124 ステータス管理部、130 通信部、132 データ処理部、134 データ格納部、136 ユーザ判定部、138 勤怠管理部、140 通信部、142 データ格納部、150 通信部、152 スケジュール管理部、154 データ格納部、160 ユーザ基本情報、170 スケジュール情報、180 勤怠状態情報、190 勤怠履歴情報、200 仮想オフィスシステム、202 LAN、204 ゲートウェイ、206 インターネット、210 ユーザインタフェース処理部、212 通信部、214 データ処理部、216 データ格納部、218 入力部、220 出力部、222 撮像部、224 音声入力部、226 操作入力部、228 表示部、230 音声出力部、232 在席確認部、300 ユーザ端末、302 内部端末、304 外部端末、400 仮想空間、402 アバター、404 個人空間、406 共有空間、410 ソファ、420 机、422 ステータスパネル、430 作業モード画面、432 作業画面、434 仮想画面、500 マッチングサーバ、510 ゲームセンター、512 サーバ、514 アーケードゲーム機