(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】フィラーポートユニット及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B60K15/05 Z
(21)【出願番号】P 2020184350
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】矢作 翼
(72)【発明者】
【氏名】勝間 大輔
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052336(JP,A)
【文献】実開昭58-048530(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0062111(US,A1)
【文献】特開2005-199769(JP,A)
【文献】特開平09-109930(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006015418(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーポートユニットを車体に取り付ける方法
であって、
前記フィラーポートユニットは、
車体に固定されるユニット本体と、
前記ユニット本体とは別体として形成され、前記車体に固定されたときに前記ユニット本体よりも車体内側に配置されて前記ユニット本体に固定されるチューブネック挿通部と、を備え、
前記ユニット本体は、前記車体に形成された開口部に装着される車体外側枠部と、前記車体外側枠部から車体内側に延在する本体側筒部と、前記本体側筒部の車体内側端部に、前記車体外側枠部よりもチューブネック部と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成される車体内側枠部とを有し、
前記チューブネック挿通部は、前記ユニット本体の前記車体内側枠部に重ね合わされる挿通部側枠部と、前記挿通部側枠部から車体内側に延在する挿通部側筒部と、前記挿通部側筒部の車体内側端部に、前記車体内側枠部よりもさらに前記チューブネック部と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成され、前記チューブネック部が挿嵌されるフィラーチューブ用孔部を有し、
前記チューブネック部を前記ユニット本体の前記車体内側枠部に挿通し、その状態で前記ユニット本体を前記車体に固定するステップと、
前記チューブネック挿通部の前記挿通部側枠部の下部を前記ユニット本体の前記車体内側枠部の下部に当接させ、前記挿通部側枠部の下部を支点として前記チューブネック挿通部の上部を車体内側に回動させて、前記チューブネック部を前記チューブネック挿通部の前記フィラーチューブ用孔部に挿嵌して突出させ、その状態で前記チューブネック挿通部を前記ユニット本体に固定するステップと、を含む、フィラーポートユニットの取付方法。
【請求項2】
前記チューブネック挿通部は、前記フィラーチューブ用孔部の内周に設けられたチューブネックガイド部を有する、請求項1に記載のフィラーポートユニット
の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーポートユニット及びその取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィラーポートユニットは、車体に固定されるユニット本体と、チューブネック部が挿嵌されるフィラーチューブ用孔部を有するチューブネック挿通部とを備える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユニット本体とチューブネック挿通部とが一体構造となっているため、チューブネック部をチューブネック挿通部のフィラーチューブ用孔部に挿嵌しながらユニット本体を車体の適切な位置に固定する作業が比較的困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、フィラーポートユニットの取付作業が比較的容易となり、作業効率を向上することができるフィラーポートユニット及びその取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わるフィラーポートユニットは、車体に固定されるユニット本体と、ユニット本体とは別体として形成されるチューブネック挿通部と、を備える。ユニット本体は、車体に形成された開口部に装着される車体外側枠部と、車体外側枠部よりもチューブネック部と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成される車体内側枠部とを有する。チューブネック挿通部は、ユニット本体の車体内側枠部に重ね合わされる挿通部側枠部と、車体内側枠部よりもさらにチューブネック部と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成され、チューブネック部が挿嵌されるフィラーチューブ用孔部とを有する。
【0007】
本発明の一態様に係わるフィラーポートユニットの取付方法は、チューブネック部をユニット本体の車体内側枠部に挿通し、その状態でユニット本体を前記車体に固定する。チューブネック挿通部の挿通部側枠部の下部をユニット本体の車体内側枠部の下部に当接させ、挿通部側枠部の下部を支点としてチューブネック挿通部の上部を車体内側に回動させる。チューブネック部をチューブネック挿通部のフィラーチューブ用孔部に挿嵌して突出させ、その状態でチューブネック挿通部をユニット本体に固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィラーポートユニットの取付作業が比較的容易となり、作業効率を向上することができるフィラーポートユニット及びその取付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係わるフィラーポートユニットの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のフィラーポートユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のフィラーポートユニットの取付方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0011】
[フィラーポートユニット1の構成]
図1~
図3を参照して、本実施形態に係わるフィラーポートユニット1の構成を説明する。フィラーポートユニット1は、ユニット本体3と、チューブネック挿通部4とを備える。
【0012】
ユニット本体3は、車体(サイドパネル)2に固定される。ユニット本体3は、ベース部10と、ベース部10に回動可能に形成されるリッド部11とを有して構成される。ユニット本体3は、ベース部10に形成されるクリップ等の係合部(図示せず)を有しており、この係合部によってユニット本体3が車体2に固定される。
【0013】
ユニット本体3のベース部10は、車体外側枠部12と、本体側筒部13と、車体内側枠部14とを有する。
【0014】
車体外側枠部12は、車体2に形成された開口部2aに装着される。車体外側枠部12は、上枠12aと、下枠12bと、左枠12cと、右枠12dとを有して枠形状に形成される。車体外側枠部12と開口部2aの周縁部との間には、図示しないシール部材が配置される。
【0015】
本体側筒部13は、筒状に形成されて、車体外側枠部12と車体内側枠部14との間に配置される。本体側筒部13は、車体外側枠部12から車体内側Bに延在して、車体外側枠部12よりも車体内側Bに位置する車体内側枠部14に達する。このため、本体側筒部13の車体外側端部13aは車体外側枠部12と連通され、本体側筒部13の車体内側端部13bが車体内側枠部14と連通される。
【0016】
車体内側枠部14は、本体側筒部13の車体内側端部13bに、車体外側枠部12よりもチューブネック部5と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成される。車体内側枠部14は、車体外側枠部12と同様に、上枠14aと、下枠14bと、左枠14cと、右枠14dとを有して枠形状に形成される。
【0017】
ところで、チューブネック部5は、例えば、ガソリン、軽油等の燃料を注入するためのフューエルチューブのネック部である。しかしながら、これに限定はされず、チューブネック部5は、尿素水を注入するためのウレアチューブのネック部であってもよい。
【0018】
また、チューブネック部5は、本実施形態では一つだけ配置されているが、これに限定はされず、複数個が配置されてもよい。
【0019】
その一方、チューブネック挿通部4は、ユニット本体3とは別体として形成される。チューブネック挿通部4は、ユニット本体3が車体2に固定されたときにユニット本体3よりも車体内側に配置されてユニット本体3に固定される。チューブネック挿通部4は、クリップ等の係合部(図示せず)を有しており、この係合部によってチューブネック挿通部4がユニット本体3に固定される。
【0020】
チューブネック挿通部4は、挿通部側枠部20と、挿通部側筒部21と、フィラーチューブ用孔部22とを有する。
【0021】
挿通部側枠部20は、ユニット本体3の車体内側枠部14に重ね合わされる。挿通部側枠部20は、ユニット本体3の車体外側枠部12及び車体内側枠部14と同様に、上枠20aと、下枠20bと、左枠20cと、右枠20dとを有して枠形状に形成される。挿通部側枠部20とユニット本体3の車体内側枠部14との間には、シール部材23(
図3参照)が配置される。
【0022】
挿通部側筒部21は、筒状に形成されて、挿通部側枠部20とフィラーチューブ用孔部22との間に配置される。挿通部側筒部21は、挿通部側枠部20から車体内側Bに延在して、挿通部側枠部20よりも車体内側Bに位置するフィラーチューブ用孔部22に達する。このため、挿通部側筒部21の車体外側端部21aは挿通部側枠部20と連通され、挿通部側筒部21の車体内側端部21bがフィラーチューブ用孔部22と連通される。
【0023】
フィラーチューブ用孔部22は、挿通部側筒部21の車体内側端部21bに、車体内側枠部14よりもさらにチューブネック部5と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成され、チューブネック部5が挿嵌される。
【0024】
フィラーチューブ用孔部22の内周には、フィラーチューブ用孔部22の径方向内側に突出するチューブネックガイド部24が形成される。チューブネックガイド部24は、フィラーチューブ用孔部22の内周に全周にわたって形成されて、環状に形成される。
【0025】
これらのユニット本体3及びチューブネック挿通部4は、例えば、ナイロン等の合成樹脂材料から形成される。
【0026】
[フィラーポートユニット1の取付方法]
図4を参照して、
図1のフィラーポートユニット1の取付方法の一例を説明する。
【0027】
先ず、チューブネック部5をユニット本体3の車体内側枠部14に挿通し、その状態でユニット本体3を車体2に固定する。
【0028】
次いで、チューブネック挿通部4の挿通部側枠部20の下部(下枠20b)をユニット本体3の車体内側枠部14の下部(下枠14b)に当接させ、挿通部側枠部20の下部(下枠20b)を支点としてチューブネック挿通部4の上部を車体内側Bに回動させる。
【0029】
そして、チューブネック部5をチューブネック挿通部4のフィラーチューブ用孔部22に挿嵌して突出させ、その状態でチューブネック挿通部4をユニット本体3に固定する。
【0030】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0031】
(1)フィラーポートユニット1は、車体2に固定されるユニット本体3と、ユニット本体3とは別体として形成され、車体2に固定されたときにユニット本体3よりも車体内側に配置されてユニット本体3に固定されるチューブネック挿通部4と、を備える。ユニット本体3は、車体2に形成された開口部2aに装着される車体外側枠部12と、車体外側枠部12から車体内側Bに延在する本体側筒部13と、本体側筒部13の車体内側端部13bに、車体外側枠部12よりもチューブネック部5と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成される車体内側枠部14とを有する。チューブネック挿通部4は、ユニット本体3の車体内側枠部14に重ね合わされる挿通部側枠部20と、挿通部側枠部20から車体内側に延在する挿通部側筒部21と、挿通部側筒部21の車体内側端部21bに、車体内側枠部14よりもさらにチューブネック部5と直交する面に近づく方向に傾斜させて形成され、チューブネック部5が挿嵌されるフィラーチューブ用孔部22とを有する。
【0032】
チューブネック挿通部4をユニット本体3から分離して別体構造とすることにより、ユニット本体3を車体2に固定した後にチューブネック部5をフィラーチューブ用孔部22に挿嵌しながらチューブネック挿通部4をユニット本体3に固定することができる。
【0033】
また、フィラーポートユニット1を車体内外方向(車体幅方向)に対して分割構造とすることにより、ユニット本体3の車体内側枠部14(チューブネック挿通部4の挿通部側枠部20)からチューブネック挿通部4のフィラーチューブ用孔部22までの傾斜角度は小さくすることができる。このため、フィラーチューブ用孔部22にチューブネック部5を挿嵌する際に、チューブネック挿通部4の回転角を小さくすることができ、フィラーポートユニット1の取付作業が比較的容易になる。
【0034】
また、チューブネック挿通部4をユニット本体3から分離して別体構造とすることにより、フィラーチューブ用孔部22にチューブネック部5を挿嵌する際に支点(挿通部側枠部20)が近くなり、当該支点(挿通部側枠部20)から最も離れたフィラーチューブ用孔部22が描く円弧の半径が短くなる。また、フィラーチューブ用孔部22にチューブネック部5を挿嵌するときの傾ける角度が小さくなり、チューブネック挿通部4が傾斜時に通過する領域が小さい。このため、フィラーチューブ用孔部22にチューブネック部5を挿嵌するときにチューブネック挿通部4が周囲の構造と干渉することが抑制され、当該干渉を回避するために周囲に空間を大きくとる必要がない。
【0035】
また、ユニット本体3を車体2に固定する作業と、チューブネック部5をフィラーチューブ用孔部22に挿嵌させる作業とを独立して行うことができ、フィラーポートユニット1の取付作業が比較的容易となり、作業効率が向上する。
【0036】
さらに、チューブネック挿通部4は、複数のフィラーチューブ用孔部22の設定有無が選択可能であり、フィラーチューブ用孔部22の個数が異なるチューブネック挿通部4においてユニット本体3を共用することができる。つまり、フィラーチューブ用孔部22の個数が異なる場合において、リッド部11を除くユニット本体3(ベース部10)の成形型を分ける必要がなくなる。
【0037】
(2)チューブネック挿通部4は、フィラーチューブ用孔部22の内周に設けられたチューブネックガイド部24を有する。
【0038】
フィラーチューブ用孔部22へのチューブネック部5の挿嵌時におけるセンタリング機能(位置決め機能)をチューブネック挿通部4のフィラーチューブ用孔部22に持たせることができる。
【0039】
(3)フィラーポートユニット1の取付方法は、チューブネック部5をユニット本体3の車体内側枠部14に挿通し、その状態でユニット本体3を車体に固定するステップを含む。フィラーポートユニット1の取付方法は、チューブネック挿通部4の挿通部側枠部20の下部をユニット本体3の車体内側枠部14の下部に当接させ、挿通部側枠部20の下部を支点としてチューブネック挿通部4の上部を車体内側に回動させて、チューブネック部5をチューブネック挿通部4のフィラーチューブ用孔部22に挿嵌して突出させ、その状態でチューブネック挿通部4をユニット本体3に固定するステップを含む。
【0040】
チューブネック部5とチューブネック挿通部4の嵌合部(フィラーチューブ用孔部22)とが合っていることを目視しながらフィラーポートユニット1の取付作業を行うことが可能となり、作業効率を向上することができる。
【0041】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0042】
1 フィラーポートユニット
2 車体
3 ユニット本体
4 チューブネック挿通部
5 チューブネック部
12 車体外側枠部
13 本体側筒部
14 車体内側枠部
20 挿通部側枠部
21 挿通部側筒部
22 フィラーチューブ用孔部
24 チューブネックガイド部