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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240910BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020197220
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085500
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春貝地 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聖
(72)【発明者】
【氏名】澤田 庸介
(72)【発明者】
【氏名】石川 靖
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077896(JP,A)
【文献】特開2005-088819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203668(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160585(US,A1)
【文献】特開2018-177171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0063391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00,10/02,10/06,10/08,10/10,
10/18,10/26,10/28,10/30-20/50
B60K 17/00-17/08
B60K 17/28-17/36
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪を駆動輪とする車両の下部構造であって、
少なくとも車両後側の部分が、トンネルパネルにより構成されたフロアトンネル内に侵入した状態で配置された変速機と、
前記変速機から車両後側に向かって延び、前記変速機からの動力を前記後輪に伝達するプロペラシャフトと、
前記フロアトンネルの車両左側及び車両右側において、フロアパネルの下側に配置された左右のバッテリユニットと、を備え、
前記変速機の車両後側の部分は、前記各バッテリユニットの車両前側かつ上側の部分に近接して配置されており、
前記各バッテリユニットは、前記フロアトンネルの車幅方向の両側端部に沿うように、車両前後方向に延びる内側面部をそれぞれ有し、
前記各バッテリユニットには、前記内側面部の前端部を車幅方向の内側から覆うインナープロテクタがそれぞれ取り付けられており、
前記各インナープロテクタの車幅方向外側の面部には、補強リブがそれぞれ形成されていることを特徴とする車両の下部構造。
【請求項2】
後輪を駆動輪とする車両の下部構造であって、
少なくとも車両後側の部分が、トンネルパネルにより構成されたフロアトンネル内に侵入した状態で配置された変速機と、
前記変速機から車両後側に向かって延び、前記変速機からの動力を前記後輪に伝達するプロペラシャフトと、
前記フロアトンネルの車両左側及び車両右側において、フロアパネルの下側に配置された左右のバッテリユニットと、を備え、
前記変速機の車両後側の部分は、前記各バッテリユニットの車両前側かつ上側の部分に近接して配置されており、
前記各バッテリユニットは、前記フロアトンネルの車幅方向の両側端部に沿うように、車両前後方向に延びる内側面部をそれぞれ有し、
前記各バッテリユニットには、前記内側面部の前端部を車幅方向の内側から覆うインナープロテクタがそれぞれ取り付けられており、
前記各バッテリユニットの前記内側面部は、車幅方向の内側に突出する突出部をそれぞれ有し、
前記各インナープロテクタは、前記各内側面部における前記突出部よりも上側の領域にそれぞれ配置されているとともに、前記各突出部に軸状締結部材によりそれぞれ固定されており、
前記各軸状締結部材は、上下方向に延びるようにそれぞれ締結されていることを特徴とする車両の下部構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の下部構造において、
前記各インナープロテクタは、
実際に前記内側面部を覆うプロテクト部と、
前記車両の車体構成部材に接続される車体接続部と、
をそれぞれ有し、
前記各インナープロテクタの前記車体接続部は、前記プロテクト部と比較して、車両前後方向の幅が小さいことを特徴とする車両の下部構造。
【請求項4】
請求項に記載の車両の下部構造において、
前記補強リブは、上下方向に延びる複数の縦リブを含むことを特徴とする車両の下部構造。
【請求項5】
請求項又は4に記載の車両の下部構造において、
前記補強リブは、車両前後方向に延びる横リブを含み、
前記横リブの少なくとも一部は、前記トンネルパネルと同じ高さ位置に位置することを特徴とする車両の下部構造。
【請求項6】
請求項に記載の車両の下部構造において、
前記各インナープロテクタの車幅方向内側の面は、車幅方向において、前記各突出部の車幅方向内側の端部と略同じ位置に位置することを特徴とする車両の下部構造。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載の車両の下部構造において、
前記各バッテリユニットには、前記各インナープロテクタの前端部を車両前側から覆うフロントプロテクタがそれぞれ取り付けられていることを特徴とする車両の下部構造。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載の車両の下部構造において、
前記変速機の車両後側の部分は、トランスファーを構成することを特徴とする車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両の下部構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ハイブリッド自動車や電気自動車が多く生産されており、駆動源としてのモータを作動させる大容量バッテリを備える車両が多くなっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド自動車では、モータ駆動用のバッテリとインバータとをフロアトンネルを挟んで車幅方向に対向して配置し、バッテリとインバータとを接続するハーネスを、フロアトンネルを跨ぐように配置する構造を有している。
【0004】
特許文献2に記載のハイブリッド車両は、後輪が駆動輪となる車両であって、2つのバッテリパックを、フロアトンネルを挟んで車幅方向に挟んで対向して配置し、フロアトンネル内に、変速機の後部とプロペラシャフトとを配置した構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-103535号公報
【文献】特開2013-67334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両前突時には、衝突荷重を吸収する観点からエンジン及び変速機が後退するストロークを出来る限り大きくすることが好ましい。これに対して、変速機を、後側の部分がフロアトンネルに侵入するように配置して、車両前突時には、変速機がフロアトンネル内に進入するようにして、エンジン及び変速機が後退するストロークを出来る限り大きくすることが考えられる。
【0007】
ここで、バッテリユニットが、特許文献1及び2のように、フロアトンネルを挟んで左右に配置されている場合、変速機を、後側の部分がフロアトンネルに侵入するように配置すると、バッテリユニットと変速機とが接近するようになる。このため、車両前突時に変速機が車両前後方向に対して車幅方向に斜めに後退すると、バッテリユニットの車幅方向内側の部分と変速機とが当接して、バッテリユニットが損傷するおそれがある。
【0008】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、変速機の一部をフロアトンネルに侵入させて配置したとしても、車両前突時におけるバッテリユニットの損傷を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様では、後輪を駆動輪とする車両の下部構造を対象として、少なくとも車両後側の部分が、トンネルパネルにより構成されたフロアトンネル内に侵入した状態で配置された変速機と、前記変速機から車両後側に向かって延び、前記変速機からの動力を前記後輪に伝達するプロペラシャフトと、前記フロアトンネルの車両左側及び車両右側において、フロアパネルの下側に配置された左右のバッテリユニットと、を備え、前記変速機の車両後側の部分は、前記各バッテリユニットの車両前側かつ上側の部分に近接して配置されており、前記各バッテリユニットは、前記フロアトンネルの車幅方向の両側端部に沿うように、車両前後方向に延びる内側面部をそれぞれ有し、前記各バッテリユニットには、前記内側面部の前端部を車幅方向の内側から覆うインナープロテクタがそれぞれ取り付けられており、前記各インナープロテクタの車幅方向外側の面部には、補強リブがそれぞれ形成されている、という構成とした。
【0010】
この構成によると、変速機の車両後側の部分がフロアトンネル内に侵入した状態であるため、車両前突時には、変速機はフロアトンネル内に進入する。フロアトンネルの位置には、バッテリユニットの内側面部が位置している。また、変速機の車両後側の部分は、バッテリユニットの車両前側かつ上側の部分に近接して配置されている。このため、車両前突時には、変速機とバッテリユニットの内側面部とが当接するおそれがある。
【0011】
これに対して、前記構成では、バッテリユニットに、内側面部の前端部を覆うインナープロテクタが取り付けられている。これにより、車両前突時に、変速機が左右のバッテリユニットの一方に接近するように後退したとしても、変速機とバッテリユニットの内側面部とが直接当接することが抑制される。この結果、バッテリユニットの損傷が抑制される。
【0012】
また、この構成により、車両前突時に、インナープロテクタと変速機とが当接して、インナープロテクタに衝突荷重が入力されたとしても、インナープロテクタが破損することが抑制される。結果として、バッテリユニットの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0013】
ここに開示された技術の第2の態様では、後輪を駆動輪とする車両の下部構造を対象として、少なくとも車両後側の部分が、トンネルパネルにより構成されたフロアトンネル内に侵入した状態で配置された変速機と、前記変速機から車両後側に向かって延び、前記変速機からの動力を前記後輪に伝達するプロペラシャフトと、前記フロアトンネルの車両左側及び車両右側において、フロアパネルの下側に配置された左右のバッテリユニットと、を備え、前記変速機の車両後側の部分は、前記各バッテリユニットの車両前側かつ上側の部分に近接して配置されており、前記各バッテリユニットは、前記フロアトンネルの車幅方向の両側端部に沿うように、車両前後方向に延びる内側面部をそれぞれ有し、前記各バッテリユニットには、前記内側面部の前端部を車幅方向の内側から覆うインナープロテクタがそれぞれ取り付けられており、前記各バッテリユニットの前記内側面部は、車幅方向の内側に突出する突出部をそれぞれ有し、前記各インナープロテクタは、前記各内側面部における前記突出部よりも上側の領域にそれぞれ配置されているとともに、前記各突出部に軸状締結部材によりそれぞれ固定されており、前記各軸状締結部材は、上下方向に延びるようにそれぞれ締結されている、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、変速機とインナープロテクタとが当接して、インナープロテクタに衝突荷重が入力されたとしても、該荷重を軸状締結部で適切に受けることができる。これにより、インナープロテクタがバッテリユニットから剥離することを適切に抑制することができる。
【0015】
前記車両の下部構造において、前記各インナープロテクタは、実際に前記内側面部を覆うプロテクト部と、前記車両の車体構成部材に接続される車体接続部と、をそれぞれ有し、前記各インナープロテクタの前記車体接続部は、前記プロテクト部と比較して、車両前後方向の幅が小さい、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、インナープロテクタが車体構成部材に接続されるため、インナープロテクタは、バッテリユニットを車体に対して取付支持するブラケットの役割も果たす。また、インナープロテクタが車体構成部材に接続されることで、変速機とインナープロテクタとが当接したときに入力される衝突荷重を車体で受けることができる。さらに、インナープロテクタの車体接続部が、プロテクト部と比較して車両前後方向の幅が小さいことで、軽量化を図ることができる。したがって、バッテリユニットの損傷を抑制しつつ車両の軽量化も図ることができる。
【0017】
前記第1の態様において、前記補強リブは、上下方向に延びる複数の縦リブを含む、という構成でもよい。
【0018】
すなわち、変速機の車両後側の部分は、バッテリユニットの車両前側かつ上側の部分に近接して配置されているため、車両前突時には、変速機は、後退するとともに、上側から下側に向かって進む。このため、インナープロテクタには、上下方向に衝突荷重が入力される可能性が高い。したがって、複数の縦リブを含むことで、インナープロテクタの破損を効果的に抑制することができる。
【0019】
前記第1の態様において、前記補強リブは、車両前後方向に延びる横リブを含み、前記横リブの少なくとも一部は、前記トンネルパネルと同じ高さ位置に位置する。
【0020】
この構成によると、インナープロテクタに車幅方向の衝突荷重が入力されたときには、横リブがトンネルパネルに当接して、該衝突荷重を車体で受けることができるようになる。これにより、バッテリユニットに衝突荷重が伝達されるのを抑制することができ、バッテリユニットの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0021】
前記第2の態様において、前記各インナープロテクタの車幅方向内側の面は、車幅方向において、前記各突出部の車幅方向内側の端部と略同じ位置に位置する、という構成でもよい。
【0022】
この構成によると、車両前突時に、変速機が突出部に引っ掛かって、バッテリユニットが脱落してしまうことを抑制することができる。結果として、バッテリユニットの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0023】
前記車両の下部構造において、前記各バッテリユニットには、前記各インナープロテクタの前端部を車両前側から覆うフロントプロテクタがそれぞれ取り付けられている、という構成でもよい。
【0024】
この構成によると、車両前突時に、変速機がインナープロテクタの前端部に引っ掛かって、インナープロテクタがバッテリユニットから剥離してしまうことを抑制することができる。結果として、バッテリユニットの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0025】
前記車両の下部構造において、前記変速機の車両後側の部分は、トランスファーを構成する、という構成でもよい。
【0026】
この構成によると、例えば、四駆の構成であったとしても、バッテリユニットの損傷を適切に抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、変速機の一部をフロアトンネルに侵入させて配置したとしても、車両前突時におけるバッテリユニットの損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、例示的な実施形態に係る下部構造を有する車両の駆動系を示す概略図である。
図2図2は、車両の運転席及び助手席周辺を下側から見た底面図である。
図3図3は、フロアトンネル内を車両右側から見た図である。
図4図4は、変速機における車両後側の部分の周辺を上側から見た平面図である。
図5図5は、左右のバッテリユニットを前側から見た図である。
図6図6は、左側バッテリユニットを右側から見た図である。
図7図7は、フロントプロテクタ及びインナープロテクタを示す斜視図である。
図8図8は、左側インナープロテクタの車幅方向外側の面を示す斜視図である。
図9図9は、図4のIX-IX線相当で切断した断面図であって、トンネルパネルから左側のサイドシルまでを含む断面図である。
図10図10は、図4のX-X線相当で切断した断面図であって、トンネルパネルから左側のサイドシルまでを含む断面図である。
図11図11は、左側インナープロテクタの車幅方向外側の面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において、車両1についての前、後、上及び下を、それぞれ単に前、後、上及び下という。また、後側から前側を見たときの左及び右を、それぞれ単に左及び右という。
【0030】
図1は、本実施形態に係る下部構造を適用した車両1の駆動系を概略的に示す。図2は、車両1の運転席及び助手席周辺の底面を詳細にしめす。図1は、車両1を下側から見たときの配置を示している。
【0031】
車両1は、ハイブリッド車両であり、駆動源としてのエンジン2及びモータ3と、エンジン2及びモータ3の少なくとも一方から伝達された駆動力を変速して伝達するトランスミッション4とを有する。エンジン2は、車室よりも前側に形成されたエンジンルーム内に、車幅方向の略中央の位置に縦置きされている。モータ3は、エンジン2の後側にダンパ5を介して配置されている。トランスミッション4は、モータ3の後側に縦置きされている。
【0032】
車両1は、左右の後輪7を駆動輪とする車両である。より詳細には、左右の前輪6と左右の後輪7との両方を駆動輪とする四駆の構成になっている。トランスミッション4の後部は、駆動力を前輪6と後輪7とに伝達するためのトランスファー4aとなっている。トランスファー4aからは、前側に向かって、フロントプロペラシャフト8が延びている。トランスファー4aからは、後側に向かってリアプロペラシャフト9が延びている。フロントプロペラシャフト8は、車幅方向の中央よりもやや右側に配置されている一方で、リアプロペラシャフト9は、車幅方向の略中央に配置されている。詳細は省略するが、トランスミッション4により変速された駆動力は、トランスファー4aにより、フロントプロペラシャフト8及びリアプロペラシャフト9にそれぞれ伝達される。そして、フロントプロペラシャフト8及びリアプロペラシャフト9を介して、駆動力が前輪6及び後輪7に伝達される。
【0033】
図2に示すように、トランスミッション4は、フロアトンネル10内に侵入した状態で、前側から後側に向かって下側に傾斜するように配置されている。トランスミッション4のトランスファー4aは、後述するバッテリユニット40L,40Rの前側かつ上側の部分に近接して配置されている。
【0034】
フロアトンネル10は、トンネルパネル11により形成されている。図3に示すように、トンネルパネル11は、その上端部が、前側から後側に向かって下側に傾斜するようになっている。このため、フロアトンネル10は、後側ほど上下方向に狭くなるようになっている。
【0035】
フロアトンネル10内には、リアプロペラシャフト9が配置されている。リアプロペラシャフト9は、トランスファー4aとラバーカップ4bを介して接続されている。リアプロペラシャフト9は、ラバーカップ3bの位置から、後側に向かって下側に傾斜して延びている。リアプロペラシャフト9の前後方向の中間の位置には、ユニバーサルジョイント
9aが設けられている。リアプロペラシャフト9は、ユニバーサルジョイント9aにより、前突時には上下方向及び左右方向に回動するようになっている。
【0036】
リアプロペラシャフト9におけるユニバーサルジョイント9aの前側には、ラバーカップ9bが設けられている。ラバーカップ9bの位置には、リアプロペラシャフト9を支持する支持ブラケット9cが設けられている。支持ブラケット9cは、ラバーカップ9bを下側から覆うようなU字状をなしており、左右の端部がトンネルパネル11に設けられた補強用のアッパトンネルレイン12にボルトで接続されている。
【0037】
トンネルパネル11の左右の端部には、前後方向に延びるサイドトンネルレイン13がそれぞれ設けられている。各サイドトンネルレイン13は、トンネルパネル11を補強するための部材である。各サイドトンネルレイン13は、トンネルパネル11との間に閉断面を構成するように、トンネルパネル11の内側部分にそれぞれ溶接により接続されている。
【0038】
トンネルパネル11の左右には、車室フロアを構成する左右一対のフロアパネル30がそれぞれ設けられている。フロアパネル30は、前後方向及び車幅方向(左右方向)に水平に広がっている。図9及び図10に示すように、左側のフロアパネル30の右側端部は、トンネルパネル11の左側端部と溶接により接続されている。右側のフロアパネル30の左側端部は、トンネルパネル11の右側端部と溶接により接続されている。左右のフロアパネル30は、トンネルパネル11により左右に連結されている。各フロアパネル30とトンネルパネル11との各接続部は、トンネルパネル11とサイドトンネルレイン13との接続部と同じか、又は該接合部よりも車幅方向外側に位置している。
【0039】
左右のフロアパネル30の前端部には、左右のトーボード32が、左側同士及び右側同士でそれぞれ溶接により接続されている。左右のトーボード32は、左右のフロアパネル30の前端部から前側に向かって上方に傾斜するように延びている。左右のトーボード32の上端部は、車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネル(図示省略)の下端部に接合されている。左側のトーボード32の右側端部は、トンネルパネル11の左側端部と溶接により接続されている。右側のトーボード32の左側端部は、トンネルパネル11の右側端部と溶接により接続されている。
【0040】
左右のフロアパネル30の下面及び左右のトーボード32の下面には、前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム21がそれぞれ接続されている。左右のフロアフレーム21は、車幅方向に互いに離間するように、後側に向かって車幅方向外側にそれぞれ傾斜ながら延びた後、互いに平行になるように後側に向かって真っ直ぐに延びている。図9及び図10に示すように、各フロアフレーム21は、上側が開口した断面U字状をなしている。フロアフレーム21は、フロアパネル30及びトーボード32との間に閉断面が構成されるように、左右のフロアパネル30の下面及び左右のトーボード32の下面に、溶接により接続されている。
【0041】
左右のフロアパネル30の車幅方向外側の端部には、前後方向に延びる左右一対のサイドシル22が接続されている。左右のサイドシル22は、左右のフロアフレーム21よりも車幅方向外側にそれぞれ位置している。図9及び図10に示すように、左側のサイドシル22は、左側のフロアパネル30の左側端部と溶接により接続されている。右側のサイドシル22は、右側のフロアパネル30の右側端部と溶接により接続されている。
【0042】
図2に示すように、左右のフロアフレーム21の前端部と左右のサイドシル22の前端部とは、左右のガセット23により、左側同士及び右側同士でそれぞれ接続されている。
【0043】
図1及び図2に示すように、トランスファー4aよりも後側の領域において、フロアトンネルの左側及び右側には、モータ3を駆動するための電力が蓄積されたバッテリユニット40L,40Rが左右に分かれて配置されている。左側バッテリユニット40Lは、助手席の下方に配置されており、右側バッテリユニット40Rは、運転席の下方に配置されている。左右のバッテリユニット40L,40Rは、コネクタにより、互いに電気的に接続されている。左側バッテリユニット40Lの右側端部及び右側バッテリユニット40Rの左側端部は、上下方向から見て、僅かにフロアトンネル10と重複するようになっている。バッテリユニット40L,40Rの詳細については後述する。
【0044】
図2に示すように、左右のバッテリユニット40L,40Rのやや前側の位置には、トランスファー4a(すなわち、トランスミッション4)を支持するミッション支持メンバ33が設けられている。ミッション支持メンバ33は、図4に示すように、バッテリユニット40L,40Rの各前面部43L,43R(以下、左側前面部43L及び右側前面部43Rという)と対向するように、左側前面部43L及び右側前面部43Rに接近して配置されている。ミッション支持メンバ33は、前後方向から見て、上側に向かって車幅方向外側に広がるようなU字状をなしている。ミッション支持メンバ33は、前後方向から見て、フロアトンネル10を跨ぐように車体に取り付けられている。
【0045】
ミッション支持メンバ33のU字部分は、前後方向に広がる幅広の形状をなしている。ミッション支持メンバ33の左右の上端部は、該ミッション支持メンバ33を車体に取り付けるための取付部33aとなっている。左右の取付部33aは、図4に示すように、ミッション支持メンバ33の他の部分よりも前側及び後側に突出している。各取付部33aには、ボルト101が通る複数の孔33b(ここでは、3つずつ、合計6つ)がそれぞれ設けられている。
【0046】
図2及び図4に示すように、ミッション支持メンバ33の右側には、エンジン2から排気ガスが通る排気管28が配置されている。排気管28は、エンジン2からトランスミッション4及びミッション支持メンバ33の右側を迂回してフロアトンネル10に向かって延びた後、フロアトンネル10内を通って、後側に向かって延びている。排気管28は、ミッション支持メンバ33の右側の位置に、排気浄化装置29を有する。排気浄化装置29は、横長の楕円形状をなしており、内部に排気浄化触媒29aを有する。排気管28は、右側バッテリユニット40Rの前面部43R(より詳細には、後述の右側フロントプロテクタ60R)とミッション支持メンバ33と同じ高さ位置において、右側バッテリユニット40Rの前面部43Rとミッション支持メンバ33との間を通って、フロアトンネル10内に侵入するように構成されている。
【0047】
次に、左側バッテリユニット40L及び右側バッテリユニット40Rの周辺構成について詳細に説明する。
【0048】
先ず、左側バッテリユニット40Lの周辺構成について説明する。図2及び図5に示すように、左側バッテリユニット40Lは、箱状をなしていて、底面視では略矩形状をなしている。左側バッテリユニット40Lは、左側前面部43Lと、左側前面部43Lの車幅方向外側の端部から前後方向に延びる左側外側面部44Lと、左側前面部43Lの車幅方向内側の端部から前後方向に延びる左側内側面部45Lと、左側前面部43Lの上端部から車両後側に向かって水平に広がる左側上面部46Lと、左側前面部43Lの下端部から左側上面部46Lと上下方向に対向して広がる左側下面部47Lと、左側前面部43Lと前後方向に対向する左側後面部48Lと、を有する。左側バッテリユニット40Lの各面部43L~48Lの端縁同士は、それぞれ一体となっている。左側前面部43Lは、車幅方向内側の部分が、車幅方向外側の部分に対して、後側に位置している。これにより、左側バッテリユニット40Lを出来る限り大きくしつつ、ミッション支持メンバ33を配置
する空間が形成されるようになる。
【0049】
図5及び図6に示すように、左側バッテリユニット40Lは、上下方向に分割された第1左側ケース41Lと第2左側ケース42Lとを有する。第1左側ケース41Lは、左側上面部46Lを含むケースであって、相対的に上側に位置する。第2左側ケース42Lは、左側下面部47Lを含むケースであって、相対的に下側に位置する。第1左側ケース41Lは、下端部に、端縁に沿って延びるフランジ41aLを有し、第2左側ケース42Lは、上端部に、端縁に沿って延びるフランジ42aLを有する。第1左側ケース41Lと第2左側ケース42Lとは、互いのフランジを上下方向に突き合わせた状態で、ボルトによって接続されている。第1左側ケース41Lと第2左側ケース42Lとの当接部分には、シール部材が配置されている。各フランジ41aL,42aLは、左側内側面部45Lから車幅方向内側に向かって突出する突出部に相当する。
【0050】
左側バッテリユニット40Lは、複数のブラケットを介して車体に支持されている。具体的には、左側バッテリユニット40Lの左側外側面部44Lには、第1左側ブラケット51Lと第2左側ブラケット52Lとが取り付けられている。また、左側バッテリユニット40Lの左側内側面部45Lには、第3左側ブラケット53Lが取り付けられている。
【0051】
第1左側ブラケット51Lは、左側外側面部44Lにおける前後方向の中間位置に取り付けられる一方、第2左側ブラケット52Lは、左側外側面部44Lにおける後端の位置に取り付けられている。第1左側ブラケット51Lの下部は、図5に示すように、第2左側ケース42Lにボルトで取り付けられている。第2左側ブラケット52Lの下部は、図示は省略するが、第2左側ケース42Lにボルトで取り付けられている。第1左側ブラケット51L及び第2左側ブラケット52Lの上端部は、左側のフロアフレーム21の下面に、ボルトで固定されている(図9には、第1左側ブラケット51Lと左側のフロアフレーム21との接続部のみを示す)。
【0052】
第3左側ブラケット53Lは、左側内側面部45Lにおける前後方向の中間位置に取り付けられている。図6に示すように、第3左側ブラケット53Lの下部は、第1左側ケース41Lのフランジ41aLと第2左側ケース42Lのフランジ42aLに、上側からボルトによって取り付けられている。第3左側ブラケット53Lの上端部は、アッパトンネルレイン12にボルトにより固定されている。図3には、後述の第3右側ブラケット53Rとアッパトンネルレイン12との接続部分を示しており、第3左側ブラケット53Lとアッパトンネルレイン12との接続部分は、アッパトンネルレイン12と重複していて見えていない。
【0053】
図2図6に示すように、左側内側面部45Lの前側の部分には、左側内側面部45Lを車幅方向内側から覆う左側インナープロテクタ70Lが取り付けられている。左側インナープロテクタ70Lは、前突時において、トランスファー4aごとトランスミッション4がフロアトンネル10内に進入してきたときに、トランスファー4aが左側バッテリユニット40Lの左側内側面部45Lに当接するのを抑制するための部材である。また、左側インナープロテクタ70Lは、トランスファー4aが第1左側ケース41Lのフランジ部分に引っ掛かることで、左側バッテリユニット40Lに衝突荷重が下向きにかかって、左側バッテリユニット40Lが車体から外れてしまうことを抑制するための部材である。左側インナープロテクタ70Lは、例えば、鋳鉄で構成されている。
【0054】
左側インナープロテクタ70Lは、実際に左側内側面部45Lを覆う左側プロテクト部71Lと、車体構成部材に接続される左側車体接続部72Lとを有する。左側車体接続部72Lは、左側プロテクト部71Lの上端部に設けられている。
【0055】
左側プロテクト部71Lは、左側内側面部45Lの第1左側ケース41Lの部分を覆っている。左側プロテクト部71Lは、図6図8に示すように、上側に向かって徐々に前後方向の幅が狭くなっている。具体的には、左側プロテクト部71Lの前端部は、左側車体接続部72Lに向かって後側に傾斜している一方、左側プロテクト部71Lの後端部は、上側に向かって真っ直ぐに延びて、前側に向かってカーブした後、左側車体接続部72Lに向かって傾斜して延びている。このため、左側車体接続部72Lは、左側プロテクト部71Lと比較して、車両前後方向の幅が小さくなっている。
【0056】
図9及び図10に示すように、左側プロテクト部71Lの車幅方向内側の面(つまり、右側の面)は、車幅方向において、上下のフランジ41aL,42aLの車幅方向内側の端と略同じ位置に位置する。
【0057】
図7及び図8に示すように、左側プロテクト部71Lの車幅方向外側の面(つまり、左側の面)には、左側インナープロテクタ70Lを左側バッテリユニット40Lに取り付けるための2つの左側取付部73Lが設けられている。左側取付部73Lは、左側プロテクト部71Lの前側かつ下側の端部と、後側かつ下側の端部とにそれぞれ設けられている。各左側取付部73Lには、ボルト102(軸状締結部材)が上下方向に延びるように挿入されている。ボルト102は、図9に示すように、上下方向に延びる姿勢のまま、上下のフランジ41aL,42aLにそれぞれ締結されている(図9では後側の左側取付部73Lのみを示す)。これにより、左側インナープロテクタ70Lが左側バッテリユニット40Lの上下のフランジ41aL,42aLに固定される。
【0058】
左側プロテクト部71Lの車幅方向外側の面(つまり、左側の面)には、複数の補強リブが設けられている。補強リブは、上下方向に延びる複数(ここでは5つ)の左側縦リブ74Lと、前後方向に延びる1つの左側横リブ75Lとを含む。各左側縦リブ74Lは、左側横リブ75Lに近づくほど幅広になっている。複数の左側縦リブ74Lのうち最も前側に位置する左側縦リブ74Lは、前側の左側取付部73Lと一体になっている。複数の左側縦リブ74Lのうち最も後側に位置する左側縦リブ74Lは、後側の左側取付部73Lと一体になっている。
【0059】
左側横リブ75Lは、最も後側に位置する左側縦リブ74Lの位置から、左側縦リブ74Lの上下方向の中間部分を通って、前側に向かって真っ直ぐに延びた後、左側プロテクト部71Lの前端部に沿って、最も前側に位置する左側縦リブ74Lの上端部と一体になっている。左側横リブ75Lは、各左側縦リブ74Lと一体になっている。左側横リブ75Lは、図10に示すように、トンネルパネル11と同じ高さ位置に位置している。左側横リブ75Lは、左側縦リブ74Lよりも車幅方向外側に突出していて、その先端がトンネルパネル11の近傍に位置している。
【0060】
図7及び図8に示すように、左側車体接続部72Lは、左側プロテクト部71Lの上端部から上側に向かって延びた後、車幅方向内側に向かって略直角に湾曲して延びている。左側車体接続部72Lは、アッパトンネルレイン12にボルト103で固定されている。図10に示すように、ボルト103は、上下方向の延びる姿勢でアッパトンネルレイン12に設けられたウェルドナットに締結されている。
【0061】
各左側取付部73Lが左側バッテリユニット40Lに取り付けられ、左側車体接続部72Lがアッパトンネルレイン12に接続されることで、左側バッテリユニット40Lは、左側インナープロテクタ70Lを介して車体に支持されるようになる。つまり、左側インナープロテクタ70Lは、ブラケットの役割も果たしている。尚、図3には、後述の右側インナープロテクタ70Rとアッパトンネルレイン12との接続部分を示しており、左側インナープロテクタ70Lとアッパトンネルレイン12との接続部分は、アッパトンネル
レイン12と重複していて見えていない。
【0062】
図4図7に示すように、左側バッテリユニット40Lの左側前面部43Lには、該左側前面部43Lの車幅方向内側の部分を前側から覆う左側フロントプロテクタ60Lが設けられている。左側フロントプロテクタ60Lは、前突時にミッション支持メンバ33が後退したときに、左側バッテリユニット40Lとミッション支持メンバ33とが直接衝突するのを抑制するためのものである。
【0063】
左側フロントプロテクタ60Lの車幅方向内側の端部は、左側インナープロテクタ70Lの前端部よりも車幅方向内側に位置している。これにより、左側インナープロテクタ70Lの前端部の一部は、前側から見て、左側フロントプロテクタ60Lの車幅方向内側の端部で覆われている。また、左側フロントプロテクタ60Lの車幅方向内側の端部は、車幅方向内側に向かって後側に傾斜している。つまり、左側フロントプロテクタ60Lは、車幅方向においても、左側インナープロテクタ70Lの前端部を覆っている。
【0064】
左側フロントプロテクタ60Lは、2箇所の左前側取付部61L,62Lにより左側バッテリユニット40Lに取り付けられている。
【0065】
次に、右側バッテリユニット40Rの周辺構成について説明する。右側バッテリユニット40Rの周辺構成は、詳細な形状は左側バッテリユニット40Lとは異なるが、基本的な構成は、左側バッテリユニット40Lと左右対称になるように構成されている。このため、右側バッテリユニット40Rの周辺構成については、左側バッテリユニット40Lsの周辺構成と異なる部分のみを詳細に説明し、左側バッテリユニット40Lの周辺構成と共通する部分は、適宜、詳細な説明を省略する。
【0066】
図2及び図5に示すように、右側バッテリユニット40Rは、箱状をなしていて、底面視では略矩形状をなしている。右側バッテリユニット40Rは、右側前面部43Rと、右側前面部43Rの車幅方向外側の端部から前後方向に延びる右側外側面部44Rと、右側前面部43Rの車幅方向内側の端部から前後方向に延びる右側内側面部45Rと、右側前面部43Rの上端部から車両後側に向かって水平に広がる右側上面部46Rと、右側前面部43Rの下端部から右側上面部46Rと上下方向に対向して広がる右側下面部47Rと、右側前面部43Rと前後方向に対向する右側後面部48Rと、を有する。右側バッテリユニット40Rの各面部43R~48Rの端縁同士は、それぞれ一体となっている。右側前面部43Rは、車幅方向内側の部分が、車幅方向外側の部分に対して、後側に位置している。
【0067】
図5図9、及び図10に示すように、右側バッテリユニット40Rは、上下方向に分割された第1右側ケース41Rと第2右側ケース42Rとを有する。第1右側ケース41Rは、下端部に、端縁に沿って延びるフランジ41aRを有し、第2右側ケース42Rは、上端部に、端縁に沿って延びるフランジ42aRを有する。第1右側ケース41Rと第2右側ケース42Rとは、互いのフランジを上下方向に突き合わせた状態で、ボルトによって接続されている。第1右側ケース41Rと第2右側ケース42Rとの当接部分には、シール部材が配置されている。各フランジ41aR,42aRは、右側内側面部45Rから車幅方向内側に向かって突出する突出部に相当する。
【0068】
右側バッテリユニット40Rは、複数のブラケットを介して車体に支持されている。具体的には、右側バッテリユニット40Rの右側外側面部44Rには、第1右側ブラケット51Rと第2右側ブラケット52Rとが取り付けられている。また、右側バッテリユニット40Rの右側内側面部45Rには、第3右側ブラケット53Rが取り付けられている。第1~第3右側ブラケット51R~53Rの構成は、第1~第3左側ブラケット51L~
53Lと左右対称であるため、詳細な説明を省略する。
【0069】
図4及び図5に示すように、右側内側面部45Rの前側の部分には、右側内側面部45Rを車幅方向内側から覆う右側インナープロテクタ70Rが取り付けられている。右側インナープロテクタ70Rの右側バッテリユニット40Rに対する作用は、左側インナープロテクタ70Lの左側バッテリユニット40Lに対する作用と同じであるため、詳細な説明を省略する。右側インナープロテクタ70Rは、例えば、鋳鉄で構成されている。
【0070】
右側インナープロテクタ70Rは、実際に右側内側面部45Rを覆う右側プロテクト部71Rと、車体構成部材に接続される右側車体接続部72Rとを有する。右側車体接続部72Rは、右側プロテクト部71Rの上端部に設けられている。
【0071】
右側プロテクト部71Rは、右側内側面部45Lの第1右側ケース41Rの部分を覆っている。右側プロテクト部71Rは、図7に示すように、前後に対称な形状をなしていて、下側から上側に真っ直ぐに延びた後、右側車体接続部72Rに向かって徐々に前後方向の幅が狭くなっている。右側車体接続部72Rは、右側プロテクト部71Rと比較して、車両前後方向の幅が小さくなっている。
【0072】
図9及び図10に示すように、右側プロテクト部71Rの車幅方向内側の面(つまり、左側の面)は、車幅方向において、上下のフランジ41aR,42aRの車幅方向内側の端と略同じ位置に位置する。
【0073】
図4図7及び図8に示すように、右側プロテクト部71Rの車幅方向外側の面(つまり、右側の面)には、右側インナープロテクタ70Rを右側バッテリユニット40Rに取り付けるための2つの右側取付部73Rが設けられている。右側取付部73Rは、右側プロテクト部71Rの前側かつ下側の端部と、後側かつ下側の端部とにそれぞれ設けられている。各右側取付部73Rには、ボルト104(軸状締結部材)が上下方向に延びるように挿入されている。ボルト104は、図9に示すように、上下方向に延びる姿勢のまま、上下のフランジ41aR,42aRにそれぞれ締結されている(図9では後側の右側取付部73Rのみを示す)。これにより、右側インナープロテクタ70Rが右側バッテリユニット40Rの上下のフランジ41aR,42aRに固定される。
【0074】
図11に示すように、右側プロテクト部71Rの車幅方向外側の面(つまり、左側の面)には、複数の補強リブが設けられている。補強リブは、上下方向に延びる複数(ここでは5つ)の右側縦リブ74Rと、前後方向に延びる1つの右側横リブ75Rとを含む。各右側縦リブ74Rは、右側横リブ75Rに近づくほど幅広になっている。複数の右側縦リブ74Rのうち最も前側に位置する右側縦リブ74Rは、前側の右側取付部73Rと一体になっている。複数の右側縦リブ74Rのうち最も後側に位置する右側縦リブ74Rは、後側の右側取付部73Rと一体になっている。
【0075】
右側横リブ75Rは、最も後側に位置する右側縦リブ74Rの上端部から、右側縦リブ74Rの上下方向の中間部分を通って、前側に向かって真っ直ぐに延びた後、最も前側に位置する右側縦リブ74Rの上端部と一体になっている。右側横リブ75Rは、各右側縦リブ74Rと一体になっている。右側横リブ75Rは、図10に示すように、トンネルパネル11と同じ高さ位置に位置している。右側横リブ75Rは、右側縦リブ74Rよりも車幅方向外側に突出していて、その先端がトンネルパネル11の近傍に位置している。
【0076】
図7に示すように、右側車体接続部72Rは、右側プロテクト部71Rの上端部から上側に向かって延びた後、車幅方向内側に向かって略直角に湾曲して延びている。右側車体接続部72Rは、アッパトンネルレイン12にボルト105で固定されている。図10
示すように、ボルト105は、上下方向の延びる姿勢でアッパトンネルレイン12に設けられたウェルドナットに締結されている。
【0077】
各右側取付部73Rが右側バッテリユニット40Rに取り付けられ、右側車体接続部72Rがアッパトンネルレイン12に接続されることで、右側バッテリユニット40Rは、右側インナープロテクタ70Rを介して車体に支持されるようになる。つまり、右側インナープロテクタ70Rは、ブラケットの役割も果たしている。
【0078】
図4図5、及び図7に示すように、右側バッテリユニット40Rの右側前面部43Rには、該右側前面部43Rの車幅方向内側の部分を前側から覆う右側フロントプロテクタ60Rが設けられている。右側フロントプロテクタ60Rは、前突時にミッション支持メンバ33が後退したときに、右側バッテリユニット40Rとミッション支持メンバ33とが直接衝突するのを抑制するためのものである。
【0079】
右側フロントプロテクタ60Rの車幅方向内側の端部は、右側インナープロテクタ70Rの前端部よりも車幅方向内側に位置している。これにより、右側インナープロテクタ70Rの前端部の一部は、前側から見て、右側フロントプロテクタ60Rの車幅方向内側の端部で覆われている。また、右側フロントプロテクタ60Rの車幅方向内側の端部は、車幅方向内側に向かって後側に傾斜している。つまり、右側フロントプロテクタ60Rは、車幅方向においても、右側インナープロテクタ70Rの前端部を覆っている。
【0080】
右側フロントプロテクタ60Rは、2箇所の右前側取付部61R,62Rにより右側バッテリユニット40Rに取り付けられている。
【0081】
ここで、本実施形態のように、トランスミッション4のトランスファー4aがフロアトンネル10内に侵入するように配置されている場合、前突時には、トランスファー4aは、フロアトンネル10内に進入しながら後退する。また、リアプロペラシャフト9にユニバーサルジョイント9aが設けられているため、前突時には、リアプロペラシャフト9は左右方向(車幅方向)に回動することがある。リアプロペラシャフト9が左右方向に回動すると、トランスファー4aは、斜め左側又は斜め右側に後退する。このため、トランスファー4aと左側又は右側バッテリユニット40L,40Rとが当接するおそれがある。特に、トランスファー4aは、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rの前側かつ上側の部分に近接して配置されているとともに、後側に向かって下側に傾斜しているため、前突時には、左側又は右側内側面45L,45Rを斜め下側にこすりながら後退するおそれがある。
【0082】
これに対して、本実施形態では、左側及び右側内側面45L,45Rに、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rが設けられているため、前突時に、トランスファー4aが左側及び右側内側面45L,45Rに当接するのを抑制することができる。これにより、前突時に、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rが損傷するのを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、左側及び右側内側面部45L,45Rは、車幅方向内側に向かって突出するフランジ41aL,42aL,41aR,42aRが設けられているため、前突時には、トランスファー4aが該フランジ41aL,42aL,41aR,42aRに引っ掛かって、左側又は右側内側面部45L,45Rを脱落させてしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rのプロテクト部71L,71Rの車幅方向内側の面は、車幅方向において。フランジ41aL,42aL,41aR,42aRの車幅方向内側の端と略同じ位置であるため、トランスファー4aが該フランジ41aL,42aL,41aR,42aRに引っ掛かるのを効果
的に抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態では、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rは、上下方向に延びる複数の左側及び右側縦リブ74L,74Rと、前後方向に延びる左側及び右側横リブ75L,75Rを含む補強リブを有する。これにより、前突時に、トランスファー4aから左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rに衝突荷重が入力されたとしても、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rが破損するのを抑制することができる。この結果、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rが損傷するのをより効果的に抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、左側及び右側横リブ75L,75Rは、トンネルパネル11と同じ高さ位置に位置する。すなわち、トランスファー4aが斜めに後退して、左側又は右側インナープロテクタ70L,70Rに当接したときには、当接したインナープロテクタには車幅方向(左右方向)の衝突荷重が入力される。この衝突荷重によりインナープロテクタが変形したときには、左側又は右側横リブ75L,75Rがトンネルパネル11に当接することで、衝突荷重を車体で受けることができる。これにより、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rの変形が抑制される。したがって、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rが損傷するのをより効果的に抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態では、左側インナープロテクタ70Lは、左側内側面部45Lの上下のフランジ41aL,42aLにボルト102より固定されており、右側インナープロテクタ70Rは、右側内側面部45Rの上下のフランジ41aR,42aRにボルト104より固定されており、ボルト102,104は、上下方向に延びるようにそれぞれ締結されている。これにより、前突時に、左側又は右側インナープロテクタ70L,70Rとトランスファー4aとが当接して、左側又は右側インナープロテクタ70L,70Rに衝突荷重が入力されたとしても、ボルト102又はボルト104により該衝突荷重を受けることができる。この結果、前突時に、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rが左側及び右側内側面部45L,45Rのそれぞれから剥離することが抑制される。したがって、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rが損傷するのをより効果的に抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rには、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rの前端部を車両前側から覆う左側及び右側フロントプロテクタ60L,60Rがそれぞれ取り付けられている。これにより、前突時に、トランスファー4aが左側又は右側インナープロテクタ70L,70Rの前端部に引っ掛かって、左側又は右側インナープロテクタ70L,70Rが左側又は右側バッテリユニット40L,40Rから剥離してしまうことを抑制することができる。結果として、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態では、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rは、左側及び右側車体接続部72L,72Rを介して車体構成部材(アッパトンネルレイン12)に接続されている。これにより、トランスファー4aと左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rとが当接したときに入力される衝突荷重を車体で受けることができる。この結果、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rの損傷を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では、左側及び右側車体接続部72L,72Rは、左側及び右側プロテクト部71L,71Rと比較して、前後方向の幅が小さくなっている。これにより、左側及び右側バッテリユニット40L,40Rの損傷を抑制しつつ、車両1の軽量化も図ることができる。
【0090】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0091】
例えば、前述の実施形態では、車両1は四駆であった。これに限らず、例えば、FR式であってもよい。車両1がFR式の場合には、トランスファー4aとフロントプロペラシャフト8が省略される。また、車両1は、エンジン2を備えずに、駆動源としてモータ3のみを備える電気自動車であってもよい。
【0092】
また、前述の実施形態では、左側及び右側インナープロテクタ70L,70Rは、左側及び右側車体接続部72L,72Rを有しており、ブラケットとしても機能していた。これに限らず、左側及び右側車体接続部72L,72Rについては省略してもよい。
【0093】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
ここに開示された技術は、後輪を駆動輪とする車両の下部構造として有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 車両
2 エンジン
4 トランスミッション(変速機)
4a トランスファー(変速機)
9 リアプロペラシャフト
10 フロアトンネル
30 フロアパネル
33 ミッション支持メンバ(支持部材)
40L,40R 左側バッテリユニット,右側バッテリユニット
41aL,41aR フランジ(突出部)
42aL,42aR フランジ(突出部)
43L,43R 左側前面部,右側前面部
45L,45R 左側内側面部,右側内側面部
60L,60R 左側フロントプロテクタ,右側フロントプロテクタ
70L,70R 左側インナープロテクタ,右側インナープロテクタ
71L,71R 左側プロテクト部,右側プロテクト部
72L,72R 左側車体接続部,右側車体接続部
74L,74R 左側縦リブ,右側縦リブ
75L,75R 左側横リブ,右側横リブ
102 ボルト(軸状締結部)
104 ボルト(軸状締結部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11