(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240910BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240910BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2020197767
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航
(72)【発明者】
【氏名】林 岳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146702(WO,A1)
【文献】特開2013-125194(JP,A)
【文献】特開2009-109798(JP,A)
【文献】特開2017-171041(JP,A)
【文献】特開2019-132990(JP,A)
【文献】中国実用新案第208198111(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23 - 35/235
G02B 5/00 - 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示器と、
この表示器から発せられる表示光を反射する反射エリアを有する反射部材と、
この反射部材を載置する第1のケース体と、
この第1のケース体とともに前記反射部材を挟んで保持する第2のケース体と、を備え、
前記反射部材は、
透明基板に反射層が形成されており、
この反射層を有する前記反射エリアと、前記反射層よりも外側に前記反射層が形成されない透明エリアと、を同一面に設け、
前記第1のケース体は、前記反射部材に当接する弾性片を有し、
この弾性片と前記反射部材との当接箇所は、前記透明エリアに重なるように設けられ、
前記第2のケース体は、開口部を有する遮光性の枠状に形成され、前記透明エリアを覆う
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のヘッドアップディスプレイに関し、例えば、ウインドシールドに表示像を投影する表示装置として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のヘッドアップディスプレイにあっては、例えば、特許文献1に記載のごとく、車両のウインドシールド(投影部材)に表示器からの表示光を投射して虚像を表示するものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイは、車両のインストルメントパネル内部に取り付けられており、表示光を発する表示素子と、表示素子の真上に位置し、表示素子が発した表示光を凹面鏡側に反射させるコールドミラー(反射部材)と、このコールドミラーによって反射された表示光を投影部材側に投射するための凹面鏡と、表示素子とコールドミラーと凹面鏡とを収容するハウジングとを備え、コールドミラー並びに凹面鏡によって反射された表示光をハウジングに形成された出射部(透光性カバー)を通じて投影部材に投影して虚像表示を行うものである。
【0004】
また、コールドミラーは、例えば、黒色合成樹脂からなる複数のケース体によって挟み込まれた状態で取り付けられる構成が一般的となっている。なお、コールドミラーとケース部材とで、反射器が構成されてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように取り付けられたコールドミラーや各ケース体は、寸法公差があるためコールドミラーを最適な位置でケース体に取り付ける必要がある。しかしながら、一方のケース体における最適位置にコールドミラーを重ねた状態を保ちながら、更に他方のケース体を重ねる必要があり、組付け作業が煩雑になってしまう課題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目し、組付け作業が容易となるヘッドアップディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヘッドアップディスプレイは、
画像を表示する表示器と、
この表示器から発せられる表示光を反射する反射エリアを有する反射部材と、
この反射部材を載置する第1のケース体と、
この第1のケース体とともに前記反射部材を挟んで保持する第2のケース体と、を備え、
前記反射部材は、
透明基板に反射層が形成されており、
この反射層を有する前記反射エリアと、前記反射層よりも外側に前記反射層が形成されない透明エリアと、を同一面に設け、
前記第1のケース体は、前記反射部材に当接する弾性片を有し、
この弾性片と前記反射部材との当接箇所は、前記透明エリアに重なるように設けられ、
前記第2のケース体は、開口部を有する遮光性の枠状に形成され、前記透明エリアを覆う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヘッドアップディスプレイは、組付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の車両用ヘッドアップディスプレイの概略図。
【
図5】同実施形態の第1のケース体とコールドミラーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明を車両用のヘッドアップディスプレイに適用した一実施形態を説明する。
【0014】
ヘッドアップディスプレイによる投影表示は、
図1に示すように車両10のインストルメントパネル11内部に設けられた表示ユニットである表示装置12が投射する表示光Lを車両10のウインドシールド13で車両10の運転者(利用者)14の方向に反射させ、虚像Vを表示するものである。換言すれば、ヘッドアップディスプレイは、後述する液晶表示器(表示器)20から発せられる表示光(表示像)Lをウインドシールド13に出射(投射)し、この出射によって得られた表示像(虚像)Vを利用者14に視認させるものである。これにより利用者14は、虚像Vを車両10の前方風景と重畳させて観察できる。
【0015】
表示装置12は、
図2に示すように液晶表示器(表示器)20と、第1反射器30と、第2反射器40と、ハウジング50とから主に構成されている。
【0016】
液晶表示器20は、配線基板Rに実装された発光ダイオードからなる光源21と、この光源21からの照明光を透過して表示光Lを形成するように光源21の前方側(真上)に位置するTFT型の液晶表示素子(表示素子)22とから主に構成される。このことは、液晶表示素子22の背後(直下)に光源21が設けられ、液晶表示素子22は、光源21から発せられる光により、所定情報(後述する表示すべき情報)を表示することを意味している。かかる液晶表示器20は、表示光Lの出射側の面が第1反射器30の後述するコールドミラー31に対向するようにしてハウジング50内に設けられ、表示光Lの光軸がコールドミラー31に交わるような位置や向きにて固定保持される。
【0017】
また液晶表示素子22は、図示しない素子駆動回路によって表示すべき情報、例えば車両10の速度やエンジン回転数、時刻、経路案内画像を、数値やアイコン等で表示する。液晶表示器20は、可視波長域の光からなる表示光Lを出力するもので、例えば、白色を発する光源21を適用でき、この光源21から発する光を液晶表示素子22が透過することで所望の画像を含む表示光Lを出力する。なお、前記表示すべき情報は、車両の速度やエンジン回転数などの車両情報に限らず、あらゆる表示形態を採用できる。
【0018】
第1反射器30は、コールドミラー(反射部材)31と、このコールドミラー31を取り付けるための取付部材である第1,第2のケース体32,33とを有している。
【0019】
コールドミラー31は、略矩形状のガラス基板(透明基板)31aと、このガラス基板31aの片面(第2反射器40の後述する凹面鏡と向かい合う面)に形成された第1の反射層(反射面)31bとからなるものである。第1の反射層31bは、膜厚が異なる多層の干渉膜からなるものであり、蒸着等の方法で形成されている。また、コールドミラー31は、液晶表示器20が発した表示光Lを、第2反射器40(前記凹面鏡)側へ反射させるような位置に傾斜状態にて設けられる。
【0020】
なお、コールドミラー31は、液晶表示器20の発光波長域を含む可視波長域(450~750nm)の光を高い反射率(例えば80%以上)で反射し、前記可視波長域以外の光を低い反射率で反射するものである。この場合、コールドミラー31は、前記可視波長域以外の特に赤外波長域の光(赤外線あるいは太陽光の熱線)を低い反射率(例えば15%以下)にて反射するものが適用される。なお、第1の反射層31bにて反射されない光は、コールドミラー31を透過するように構成される。
【0021】
また本実施形態の場合、コールドミラー31並びに液晶表示器20は、ハウジング50の後述する透光性カバーから直接臨めない位置に設けられ、前記太陽光等の外部からの光(外光)が直接、当たらない構造となっている。このため、ハウジング50には、図示しない内壁部を備えている。
【0022】
第1,第2のケース体32,33は、例えば黒色の合成樹脂材料からなり、コールドミラー31を挟み込むように保持している。かかる第1,第2のケース体32,33は、所定の固定手段によりハウジング50に固定されている。
【0023】
第2反射器40は、コールドミラー31(つまり、液晶表示素子22)からの表示光Lを反射させる凹面鏡41と、この凹面鏡41を保持するミラーホルダ42とを備えている。
【0024】
凹面鏡41は、凹面を有するポリカーボネートからなる樹脂基板に第2の反射層41aを蒸着形成している。かかる凹面鏡41は、その第2の反射層41aがコールドミラー31並びに前記透光性カバーに対向し、前記透光性カバーから臨める位置に傾斜状態にて設けられる。
【0025】
また凹面鏡41は、コールドミラー31からの表示光Lを拡大しつつ、前記透光性カバー(車両10のウインドシールド13)側へ反射(投射)させるものである。このことは、凹面鏡41が、コールドミラー31によって反射された表示光Lを拡大し、この拡大された表示光Lを前記透光性カバーを通じてウインドシールド13に投射することを意味している。なお、凹面鏡41は、ミラーホルダ42に両面粘着部材により接着されている。ミラーホルダ42は、合成樹脂(例えばABS樹脂)からなるものであり、ハウジング50に固定される。
【0026】
ハウジング50は、例えば黒色の遮光性合成樹脂材料からなり、略箱型形状に形成され、その内部空間である空間部51に液晶表示器20や第1反射器30、並びに第2反射器40を保持して収容するものであり、第2反射器40における凹面鏡41の上部(ウインドシールド13側)が開口する開口窓部52を備えてなる。
【0027】
またハウジング50には、開口窓部52を塞ぐように出射部である透光性カバー53が設けられている。かかる透光性カバー53は、透光性の合成樹脂材料(例えばアクリル樹脂)を適用しており、湾曲形状(曲面形状)に形成され、凹面鏡41で反射された表示光Lが透過(通過)する光透過性部材としての機能を有している。つまり、コールドミラー31並びに凹面鏡41によって反射された表示光Lは、ハウジング50に形成された透光性カバー53を通じてウインドシールド13に投影され、これにより虚像Vの表示が行われることになる。
【0028】
次に、第1反射器30について、
図3乃至
図6を用いて詳述する。
【0029】
図3は、第1のケース体32を示す図であり、
図4に示すコールドミラー31を載置した状態を
図5に示す。また、
図6は、さらに第2のケース体33を重ねて組付けた第1反射器30を示す。
【0030】
第1のケース体32は、平板状のコールドミラー31が載置する平滑な載置面32aと、コールドミラー31が載置された状態(
図5に示す状態)において、コールドミラー31に押し圧力を加える突起32b有する複数の弾性片32cと、ハウジング50などの他の部材に位置決めしながらビス等で保持するための突起部や孔部を有する取付け部32dと、第2のケース体33と係合保持するための第1の係合部32eと、設けている。なお、弾性片32cの弾性変形によるコールドミラー31への応力(板厚方向に押し付ける力)にて、組付け状態(
図6に示す状態)において第1,第2のケース体32,33内でのコールドミラー31の振動を抑制する作用がある。
【0031】
コールドミラー31は、透明で平板状のガラス基板31aに、第2のケース体33の開口33aによって第2のケース体33に覆われない反射エリア31c(中央の領域)を少なくとも含む反射層31bと、反射層31bの外側に反射層31bが形成されない透明エリア31dが設けられる。透明エリア31dは、
図5に示すように、突起32bや弾性片32cと重なる位置に設けられ、コールドミラー31が載置された状態で突起32bの当接状態や位置を確認でき、さらに
図6に示すように、第2のケース体33によって覆われて隠される位置に形成される。このため、コールドミラー31や第2のケース体33を、第1のケース体32上に重ねて組付ける際、コールドミラー31の適正な向きや配置,状態を視認しながら行えるため作業性が良くなる。また、第2のケース体33で覆われることで反射エリア31cとして用いられない透明エリア31d箇所が視認して区別できるため、組付け作業時に把持しても問題ない箇所を容易に判別できる。
【0032】
第2のケース体33は、遮光性のものを適用でき、反射エリア31cの反射面を臨めるように開口33aを有する枠状に形成され、第1のケース体32との間に所望の配置のコールドミラー31を挟んで、第1の係合部32eに弾性を有して係合する第2の係合部33bを設けている。第2のケース体33は、上述のとおり、透明エリア31dやコールドミラー31の端面を覆い隠すように設けられる。
【0033】
斯かるヘッドアップディスプレイ(表示装置12)は、画像を表示する液晶表示器20と、この液晶表示器20から発せられる表示光Lを反射する反射エリア31cを有するコールドミラー31と、このコールドミラー31を載置する第1のケース体32と、この第1のケース体32とともにコールドミラー31を挟んで保持する第2のケース体33と、を備え、コールドミラー31は、ガラス基板(透明基板)31aに反射層31bが形成されており、この反射層31bを有する反射エリア31cと、反射層31bよりも外側に反射層31bが形成されない透明エリア31dと、を同一面に設ける。
【0034】
従って、第1反射器30の各構成部品を組付ける作業において、コールドミラー31の透明エリア31dを介して組付け状態(重ね状態)を確認できる。また、透明エリア31dによってコールドミラー31の把持箇所が分かり易い。このため、組付け作業を容易にできる。
【0035】
また、第2のケース体33は、コールドミラー31の側端(側端面)を囲うように枠状に形成され、透明エリア31dを覆うことによって、余計な光が利用者側へ達しないように遮光して塞ぐことができる。
【0036】
また、第1のケース体32は、コールドミラー31に当接する弾性片32cを有し、この弾性片32cとコールドミラー31との当接箇所は、透明エリア31dに重なるように設けられることによって、コールドミラー31の透明エリア31dを介して組付け状態を確認でき、コールドミラー31を第1,第2のケース体32,33によって保持してなる第1反射器30の組付け作業が容易となる。
【0037】
なお、本発明のヘッドアップディスプレイを上述した実施形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。例えば、上述実施形態にあっては、表示器として液晶表示器20を適用したものを示したが、表示器としてDMD(デジタルミラーデバイス)や、電磁駆動式のレーザ光走査型MEMSミラーを用いるなどして、画像を含む表示光を生成するものであればよく、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、第1のケース体32に突起32bを有する弾性片32cを設ける例を示したが、例えば、弾性片32cを設けず、または弾性片32cと併設して接着テープなどの接着部材を用いた第1のケース体32とコールドミラー31との接着保持構造を有することもできる。この場合、コールドミラー31の透明エリア31dを介して該接着部材を確認できるようにすることで、第1のケース体32へコールドミラー31を組付ける際に作業性を良好にする。
【0039】
また、反射部材として第1反射器30のコールドミラー31を例に示したが、ケース体に積層するミラーであれば上述実施形態と同様の構造を適用でき、例えば、光波長選択機能を有しないミラーであってもよい。また、凹面鏡等の曲形状のミラーの組付け構造として上述構成を適用することもでき、上述実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
本発明は、ヘッドアップディスプレイに関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載され、車両情報やターンバイターン表示等の経路案内、道路情報などを投影表示する表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0041】
10 車両
11 インストルメントパネル
12 表示装置(ヘッドアップディスプレイ)
13 ウインドシールド
14 運転者(利用者)
20 液晶表示器(表示器)
30 第1反射器
31 コールドミラー(反射部材)
31a ガラス基板(透明基板)
31b 反射層
31c 反射エリア
31d 透明エリア
32 第1のケース体
32c 弾性片
33 第2のケース体