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特許7552318ソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法
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  • 特許-ソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240910BHJP
   A61P 27/14 20060101ALN20240910BHJP
   A61K 31/785 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
G02C7/04
A61P27/14
A61K31/785
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020203312
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021092778
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2019221827
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】土田 衛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聖奈
(72)【発明者】
【氏名】原田 英治
(72)【発明者】
【氏名】石田 実咲
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/26637(WO,A1)
【文献】特開2011-75943(JP,A)
【文献】特開平11-335301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0100801(US,A1)
【文献】特開2016-74629(JP,A)
【文献】特開2017-151437(JP,A)
【文献】特開2019-60917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
A61K31/785
A61K31/80
A61P27/14
A61P37/08
C08F230/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の共重合体(P1)と、共重合体(P2)もしくは共重合体(P3)と、水とを混合する、前記共重合体の合計含有量が0.001~5.0w/v%であるソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤の製造方法
共重合体(P1):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が300,000~800,000である共重合体
共重合体(P2):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が900,000~1,500,000である共重合体
共重合体(P3):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が10,000~200,000である共重合体
【化1】
(式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【化2】
(式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項2】
以下の共重合体(P1)と、共重合体(P2)もしくは共重合体(P3)と、水とを混合する、前記共重合体の合計含有量が0.001~5.0w/v%であるソフトコンタクトレンズ用花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法
共重合体(P1):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が300,000~800,000である共重合体
共重合体(P2):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が900,000~1,500,000である共重合体
共重合体(P3):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が10,000~200,000である共重合体
【化3】
(式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【化4】
(式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の構造を有する共重合体と水とを含むソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内におけるソフトコンタクトレンズ装用者は、その手軽さや、便利さゆえに、利用者が急増しており、1000万人を超えると見られている。また、日本国内における花粉症の有病率は日本国民の1/3にものぼると推定されており(非特許文献1)、その数は3000万人にもなると考えられる。このため、ソフトコンタクトレンズ装用者の多くは花粉症も併発している状況であると考えられる。
花粉症はアレルギー反応によるものであり、例えば、スギなどから飛散した花粉や、これら花粉から放出される花粉タンパクなどが、角膜表面やソフトコンタクトレンズ表面へと付着、吸着することで症状が生じ、花粉症による代表的な症状としては、鼻汁や流涙などが挙げられる。
【0003】
これら花粉症によるアレルギー症状を治療、緩和、予防するためには、薬学的・化学的な手法として、抗アレルギー薬を配合した医薬品や点眼剤による治療、緩和を行うもの(特許文献1)や、物理的な手法として眼鏡やマスクなどを装着し、そもそも花粉や花粉タンパクなどの角膜表面やソフトコンタクトレンズ表面への接触を避けるもの(特許文献2、特許文献3)、などが知られている。薬学的・化学的な手法は高い有効性を発現するものの眠気を誘発するなどの副作用も有ることが知られており、また、物理的な手法については角膜表面やソフトコンタクトレンズ表面に花粉や花粉タンパクが付着、吸着する前であれば有効であるが、一旦、角膜表面やソフトコンタクトレンズ表面に花粉や花粉タンパクが付着、吸着することで、その有効性は失われてしまうことも知られている。更に、ソフトコンタクトレンズ装着時や装用中にいたっては、一度、花粉や花粉タンパクが付着すると、涙液や、人工涙液等の点眼剤、洗眼剤などで洗い流すことは難しく、長時間にわたって、アレルギー症状は持続する懸念もあった。
このため、ソフトコンタクトレンズ表面や角膜表面に対して、花粉や花粉タンパクの付着、吸着を抑制することで、花粉症の症状や不快感を緩和、軽減できる技術開発が求められていたものの、これらに対する技術開発は十分ではなく、有効な手法は知られてなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-203791号公報
【文献】特開2017-134100号公報
【文献】特開2014-111147号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】環境省、花粉症環境保健マニュアル―2014年1月改訂版―
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ソフトコンタクトレンズの表面に対し、花粉及び/又は花粉タンパクの吸着を抑制することで、花粉症の症状を緩和し、不快感を改善するソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ソフトコンタクトレンズに対して、特定構造の共重合体及び水を含む材料を用いることで、花粉粒子及び/又は花粉タンパクの吸着を抑制できること、更には、花粉症の症状を緩和し、不快感を改善する花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法に関する技術を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法とは以下の[1]~[2]の通りである。
【0008】
[1]以下の共重合体(P1)と、共重合体(P2)もしくは共重合体(P3)と、水とを混合する、前記共重合体の合計含有量が0.001~5.0w/v%であるソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤の製造方法
共重合体(P1):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が300,000~800,000である共重合体
共重合体(P2):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が900,000~1,500,000である共重合体
共重合体(P3):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が10,000~200,000である共重合体
【化1】
(式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【化2】
(式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[2]以下の共重合体(P1)と、共重合体(P2)もしくは共重合体(P3)と、水とを混合する、前記共重合体の合計含有量が0.001~5.0w/v%であるソフトコンタクトレンズ用花粉タンパク吸着抑制剤の製造方法
共重合体(P1):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が300,000~800,000である共重合体
共重合体(P2):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が900,000~1,500,000である共重合体
共重合体(P3):式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有し、式(1a)で表される構成単位のモル数をna、式(1b)で表される構成単位のモル数をnbとした際の各構成単位のモル比率na:nbが80~35:20~65であり、重量平均分子量が10,000~200,000である共重合体
【化3】
(式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【化4】
(式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を用いることで、ソフトコンタクトレンズの装着時における花粉の吸着及び花粉タンパクの吸着を抑制でき、更には、花粉症の症状を緩和し、不快感をも改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】花粉タンパク吸着性試験の結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤は、共重合体(P)と水とを含有する。
以下に本発明の詳細を説明する。
【0012】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、濃度や重量平均分子量の範囲など)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組合せることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組合せて、「10以上90以下」とする事ができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載においても、同様に「10~90」とすることができる。
本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタアクリル(メタクリル)を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレート(メタクリレート)を意味する。
【0013】
<ソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤>
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤は、式(1a)及び式(1b)で表される構成単位を有する共重合体(P)と、水を含有する。式(1a)で表される構成単位(以下、構成単位(1a)ともいう)は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位であり、式(1b)で表される構成単位(以下、構成単位(1b)ともいう)は、後述する特定のアルキル基含有(メタ)アクリレートに基づく構成単位である。
【0014】
<2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(1a)>
構成単位(1a)は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位であり、下記の式(1a)で表され、式(1a’)で表される単量体の重合によって得られる。
【化5】
【0015】
【化6】

式(1a)及び式(1a’)において、Rは水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0016】
本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(1a)を有することによって、花粉吸着抑制作用と花粉タンパク吸着抑制作用を発現することができる。本発明に用いる共重合体(P)中の構成単位(1a)の含有量は10~90モル%であり、好ましくは20~85モル%であり、より好ましくは30~80モル%であり、さらに好ましくは35~80モル%である。含有量が10モル%未満であると、花粉吸着抑制作用と花粉タンパク吸着抑制作用が弱くなる。含有量が90モル%より多いと、共重合体(P)が超親水性となることで、ソフトコンタクトレンズ表面への吸着力が弱くなり、花粉吸着抑制作用と花粉タンパク吸着抑制作用が弱くなる。
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの好適な例として、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。
【0017】
<アルキル基含有(メタ)アクリレートに基づく構成単位(1b)>
構成単位(1b)は、アルキル基含有(メタ)アクリレートに基づく構成単位であり、下記の式(1b)で表され、式(1b’)で表される単量体の重合によって得られる。
【化7】

【化8】

式(1b)及び式(1b’)において、Rは水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。Rは炭素数4~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0018】
炭素数4~18の直鎖状アルキル基としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。炭素数4~18の分岐状アルキル基としては、t-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソへプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基などが挙げられる。
は、より好ましくは、n-ブチル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基等である。
アルキル基含有(メタ)アクリレートの好適な例として、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
本発明の用いる共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(1b)を有することによって、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位を有する重合体のソフトコンタクトレンズへの吸着性を高めることができる。更に、本発明に用いる共重合体(P)は、構成単位(1b)だけでなく、構成単位(1a)を同一の高分子鎖中に有することで、ソフトコンタクトレンズへの吸着性と、花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用を兼ね備えた共重合体となる。
【0020】
本発明に用いる共重合体(P)中の構成単位(1b)の含有量は、90~10モル%であり、好ましくは80~15モル%であり、より好ましくは70~20モル%であり、さらに好ましくは65~20モル%である。含有量が10モル%未満であると、ソフトコンタクトレンズへの吸着が弱くなり、花粉吸着抑制作用と花粉タンパク吸着抑制作用の付与効果が弱くなる。含有量が90モル%より多いと共重合体が不溶となるため、ソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を調製することが困難になる。
【0021】
本発明に用いる共重合体(P)の分子鎖中に含まれる、構成単位(1a)及び構成単位(1b)を形成する単量体の好適な組合せは、以下の通りである。
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びブチルメタクリレート;
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びラウリルメタクリレート;
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びステアリルメタクリレート;
本発明に用いる共重合体(P)は、構成単位(1a)及び構成単位(1b)以外の構成単位を含んでいてもよいが、好ましくは、構成単位(1a)及び構成単位(1b)のみからなる。
【0022】
上記式(1a)及び式(1b)で表される各構成単位のモル比率na:nbは90~10:10~90である。ここで、naは共重合体(P)における上記式(1a)で表される構成単位のモル数であり、nbは共重合体(P)における上記式(1b)で表される構成単位のモル数である。naが大きすぎること又はnbが小さすぎることにより前記範囲を外れる場合は、共重合体(P)のソフトコンタクトレンズ表面への吸着力が弱くなる。naが小さすぎて前記範囲を外れる場合は、共重合体(P)の花粉吸着抑制作用と花粉タンパク吸着抑制作用が弱くなる。nbが大きすぎて前記範囲を外れる場合は、共重合体(P)が不溶となるため、ソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を調製することが困難になる。
モル比率na:nbは、好ましくは85~20:15~80であり、より好ましくは80~30:20~70であり、さらに好ましくは80~35:20~65である。
【0023】
本発明に用いる共重合体(P)の重量平均分子量は、10,000~2,000,000であり、好ましくは50,000~1,500,000であり、更に好ましくは100,000~1,000,000である。重量平均分子量が10,000より小さいと共重合体のソフトコンタクトレンズへの吸着力が弱まり、花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用が得られなく恐れがあり、重量平均分子量が2,000,000より大きいと取り扱い性が困難になる恐れがある。
なお、共重合体(P)の重量平均分子量は、GPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)測定により、ポリエチレングリコール換算で求められる。
【0024】
本発明の共重合体(P)は、特定の重量平均分子量の1種を用いてもよいが、相異なる重量平均分子量の2種以上を混合して、用いてもよい。相異なる重量平均分子量の2種以上を混合して用いることで、これら共重合体(P)のソフトコンタクトレンズへの密着性がさらに向上し、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用が向上する。
【0025】
2種を併用する場合は、重量平均分子量が300,000~800,000である共重合体(P1)と重量平均分子量が900,000~1,500,000の共重合体(P2)との組み合わせ、又は重量平均分子量が300,000~800,000である共重合体(P1)と重量平均分子量が10,000~200,000である共重合体(P3)との組み合わせが好ましい。
共重合体(P1)と共重合体(P2)の比率は質量比で1:9~9:1、好ましくは3:7~7:3、更に好ましくは4:6~6:4である。
共重合体(P1)と共重合体(P3)の比率は質量比で1:9~9:1、好ましくは3:7~7:3、更に好ましくは4:6~6:4である。
【0026】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤は、共重合体(P)0.001~5.0w/v%と、水とを含有する。また、溶媒として、水とアルコールとの混合溶媒を用いてもよい。該アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。この場合、共重合体(P)を、水又は上記混合溶媒に0.001~5.0w/v%となるように溶解させることにより、本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を得ることができる。共重合体(P)の濃度が0.001w/v%未満では、十分な花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用を得られなくなり、共重合体(P)の濃度が5.0w/v%を超えても、配合量に見合った花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用を得られない恐れがある。
共重合体(P)の濃度は、好ましくは0.01~5.0w/v%であり、より好ましくは0.01~2.0w/v%であり、さらに好ましくは0.01~1.0w/v%である。
【0027】
本発明に用いる水は、医薬品製造用もしくはこれと同等程度の品質を持つ水であれば、いずれを用いてもよく、たとえば、日本薬局方に記載の水等を用いることができる。
本発明の共重合体(P)をソフトコンタクトレンズに用いることにより、ソフトコンタクトレンズ装用中における花粉の吸着や、花粉タンパクの吸着を抑制することができ、花粉症の症状の緩和と不快感の改善効果を付与することができる。
【0028】
本発明のソフトコンタクトレンズ用である花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤は、どのような花粉に対しても、ソフトコンタクトレンズへの吸着抑制作用を発現できる。具体的には、日本スギ花粉、ヒノキ花粉、アカマツ花粉、クロマツ花粉、イチョウ花粉、シラカバ花粉、ヨモギ花粉、セイタカアワダチソウ花粉、ブタクサ花粉、ススキ花粉、カナムグラ花粉、イネ花粉などに対して有効である。
【0029】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤は、共重合体(P)、及び、水以外にも必要に応じて一般に眼科用製剤に使用できる充血除去成分、消炎・収斂成分、ビタミン類、アミノ酸類、サルファ剤、糖類、清涼化剤、無機塩、有機酸の塩、酸、塩基、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤、ムチン分泌促進剤等を配合することが出来る。
【0030】
充血除去成分としては、例えば、エピネフリンまたはその塩、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリンまたはその塩、フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリンが挙げられる。
【0031】
消炎・収斂成分としては、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリンまたはその塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸またはその塩、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化リゾチームが挙げられる。
【0032】
ビタミン類としては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウムが挙げられる。
【0033】
アミノ酸類としては、例えば、アスパラギン酸またはその塩、アミノエチルスルホン酸が挙げられる。
サルファ剤としては、例えば、スルファメトキサゾールまたはその塩、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウムが挙げられる。
【0034】
糖類としては、例えば、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロースが挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフルが挙げられる。
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ砂、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
有機酸の塩としては、例えば、クエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0035】
酸としては、例えば、ホウ酸、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、塩酸が挙げられる。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミンが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンが挙げられる。
【0036】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、グリシンが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、塩酸ポリヘキサニドが挙げられる。
ムチン分泌促進剤としては、例えば、ジクアホソルナトリウム、レバミピドが挙げられる。
【0037】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を含む具体的な製品形態としては、眼科用製剤であれば特に制限はないが、次のようなものを挙げることができる。たとえば、点眼剤、コンタクトレンズ用装着液、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用洗浄保存液、コンタクトレンズ用充填液などのソフトコンタクトレンズ用ケア用品が挙げられる。
【0038】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤は、その花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用を高める観点から、FDA分類におけるグループIII及びグループIVのソフトコンタクトレンズ(イオン性ソフトコンタクトレンズ)へ適用することが好ましい。なお、FDA分類とは、米国食品医薬品局(FDA)にて規定されるソフトコンタクトレンズの分類であり、グループI:含水率50%未満で非イオン性のソフトコンタクトレンズ、グループII:含水率50%以上で非イオン性のソフトコンタクトレンズ、グループIII:含水率50%未満でイオン性のソフトコンタクトレンズ、グループIV:含水率50%以上でイオン性のソフトコンタクトレンズである、と定められている。
【0039】
グループIIIまたはグループIVに分類されるソフトコンタクトレンズとして具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。(括弧内の数値は含水率を示し、これに続き、ソフトコンタクトレンズを構成する主成分を示す。)
【0040】
(グループIIIのソフトコンタクトレンズ)
balafilcon A(36%、Tris-VC、NVP)
【0041】
(グループIVのソフトコンタクトレンズ)
etafilcon A(58%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、ocufilcon B(52%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、ocufilcon D(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、phemefilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・エトキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、vifilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・ポリビニルピロリドン・メタクリル酸)、methafilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・メタクリル酸)、bufilcon A(55%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸)、perfilcon A(71%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート・N-ビニルピロリドン・メタクリル酸)
【0042】
これらの中でも、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着抑制作用及び花粉タンパク吸着抑制作用の観点から、グループIVのソフトコンタクトレンズが好ましく、更に好ましくは、グループIVのソフトコンタクトレンズで、かつ、含水率55%以下のソフトコンタクトレンズである。
【実施例
【0043】
以下、本発明について実施例及び比較例により、本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑制剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、本実施例及び比較例に用いた共重合体は次の通りである。
【0044】
共重合体(P1): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比率na:nb)80:20、重量平均分子量:600,000〕である。
共重合体(P2): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比率na:nb)80:20、重量平均分子量:1,100,000〕である。
共重合体(P3): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比率na:nb)80:20、重量平均分子量:150,000〕である。
共重合体(P4): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比率na:nb)30:70、重量平均分子量:142,000〕である。
共重合体(P5): 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ステアリルメタクリレート共重合体〔共重合組成(モル比率na:nb)33:67、重量平均分子量:164,000〕である。
比較例用重合体(Q1):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単独重合体〔重量平均分子量:200,000〕である。
【0045】
上記した各共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)により測定した。GPCの測定条件は、以下のとおりである。
GPCシステム:高速液体クロマトグラフィーシステムCCP&8020シリーズ(東ソー株式会社製)
カラム:Shodex OHpak SB-802.5HQ(昭和電工株式会社製)、及びSB-806HQ(昭和電工株式会社製)を直列に接続
展開溶媒:20mMりん酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)
検出器:示差屈折率検出器、UV検出器(波長210nm)
分子量標準:EasiVial PEG/PEO(Agilent Technologies社製)
流速:0.5mL/分
カラム温度:45℃
サンプル:得られた共重合体を終濃度0.1重量%となるよう展開溶媒で希釈
【0046】
<リン酸緩衝液>
以下の花粉吸着性試験及び花粉タンパク吸着性試験には、リン酸緩衝液(以下、「PBS」という)を用いた。PBS(組成:塩化カリウム0.02w/v%、リン酸二水素カリウム0.02w/v%、塩化ナトリウム0.8w/v%、リン酸水素二ナトリウム0.115w/v%)は、シグマ-アルドリッチ製を使用した。
【0047】
<花粉吸着性試験(1)>
以下の手順に従い、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着性試験を実施した。
(1)ブリスターパックよりソフトコンタクトレンズを1枚取り出し、PBSで洗浄した。洗浄したソフトコンタクトレンズを24ウェルプレートへと入れ、各実施例もしくは各比較例の溶液 2mLを入れた。
(2)1時間浸漬、静置した。
(3)日本スギ花粉(ビオスタ製)及びPBSを用いて、日本スギ花粉濃度3mg/mLとなるように調製した(以下、「花粉溶液」という)。
(4)新たに24ウェルプレートを準備し、これに花粉溶液1.5mLを入れ、さらに(2)で準備したソフトコンタクトレンズを浸漬させた。浸漬の際、ソフトコンタクトレンズの両面に、十分に花粉を吸着させるため、約1時間ごとにソフトコンタクトレンズを反転させた。
(5)浸漬から5時間後にソフトコンタクトレンズを取り出し、10mLのPBSで十分に洗浄した。
(6)新たに24ウェルプレートを準備し、これに洗浄したソフトコンタクトレンズとPBS 2mLを入れ、5分間振とうした。
(7)顕微鏡を用いて、ソフトコンタクトレンズに吸着した花粉を計測した。
【0048】
<花粉吸着性試験(2)>
以下の手順に従い、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着性試験を実施した。
(1)ブリスターパックよりソフトコンタクトレンズを1枚取り出し、PBSで洗浄した。洗浄したソフトコンタクトレンズをガラスバイアルへと入れ、各実施例もしくは各比較例の溶液2mLを入れた。
(2)121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌をした。
(3)<花粉吸着性試験(1)>の(3)~(7)と同様な手順を実施した。
【0049】
なお、花粉吸着性試験(1)については、以下の基準を用いて、ソフトコンタクトレンズの種類別に花粉吸着抑制効果を判断した。
「ワンデーアクエアを用いた花粉吸着性試験」
比較例2-1を基準とし、以下の式を用いて花粉吸着抑制率を算出し、花粉吸着抑制効果の有無を判断した。
(花粉吸着抑制率)={1-((各実施例もしくは各比較例の花粉吸着量)/(比較例2-1の花粉吸着量))}×100
「ワンデーアキュビューモイストを用いた花粉吸着性試験」
比較例2-2を基準とし、以下の式を用いて花粉吸着抑制率を算出し、花粉吸着抑制効果の有無を判断した。
(花粉吸着抑制率)={1-((各実施例もしくは各比較例の花粉吸着量)/(比較例2-2の花粉吸着量))}×100
(判断基準)
花粉吸着抑制率70%以上 :花粉吸着抑制効果が極めて優れている
花粉吸着抑制率50%以上、70%未満:花粉吸着抑制効果が優れている
花粉吸着抑制率30%以上、50%未満:花粉吸着抑制効果を有している
花粉吸着抑制率30%未満 :花粉吸着抑制効果を有していない
【0050】
ただし、花粉吸着性試験(2)については、ワンデーアクエアを用いた場合の花粉吸着抑制率は比較例5-1を基準とし、ワンデーアキュビューモイストを用いた場合の花粉吸着抑制率は比較例5-2を基準として算出した。
【0051】
<花粉タンパク吸着性試験>
以下の手順に従い、ソフトコンタクトレンズへの花粉タンパク吸着性試験を実施した。
(1)花粉吸着性試験後のソフトコンタクトレンズを新たな24ウェルプレートへと移し、PBS 2mLを入れて30分間静置した。
(2)別に、ペルオキシダーゼ標識抗Cryj1抗体をPBSにて1000倍に希釈した。
(3)(2)で調製した溶液を、サンプル袋へ1mL入れ、更に、(1)にて準備したソフトコンタクトレンズを浸漬させ、室温で3時間振とうした。
(4)静置した後、浸漬したソフトコンタクトレンズを取り出し、PBS 20mLで十分にすすぎ、新たな24ウェルプレートへと入れた。
(5)PBS 2mLを加え、10分間の洗浄を行った。十分に洗浄することを目的に、再度、この洗浄操作を実施した。
(6)DAB Substrate Kit(SK-4100、Vector製)を用いてDAB発色溶液の調製を行い、24ウェルプレートへ1.2mLを添加した。
(7)(5)にて洗浄したソフトコンタクトレンズを、(6)の24ウェルプレートへと入れ、少なくとも約2時間反応させた。この後、精製水にて洗浄、吸光度測定を行い、ソフトコンタクトレンズに吸着した花粉タンパク量を計測した。
【0052】
[実施例1-1]
精製水約80gを量り、これに共重合体(P1)0.1g、ホウ酸1.0g、水酸化ナトリウム0.018g、塩化ナトリウム0.4gを量り、加えて、攪拌した。この後、全量100mLとなるように精製水を加えた。更に、無菌ろ過を行い、実施例1-1の溶液とした。その性状、pH、浸透圧を表1に示す。
【0053】
[実施例1-2~実施例1-8、比較例1-1~比較例1-4]
表1に記載の成分、分量にて、実施例1-1と同様に操作し、実施例1-2~実施例1-8、及び、比較例1-1~比較例1-4の溶液を調製した。
【0054】
[実施例2-1]
実施例1-1の溶液、及び、ワンデーアクエア(クーパービジョンジャパン製ソフトコンタクトレンズ)を用いて、上記の花粉吸着性試験(1)を実施した。その結果を表2に示す。
【0055】
[実施例2-2~実施例2-8、比較例2-1~比較例2-4]
表2に記載の実施例もしくは比較例の溶液、及び、ソフトコンタクトレンズを用いて、花粉吸着性試験(1)を実施した。花粉吸着性試験(1)は、実施例2-1と同様に操作した。実施例2-2~実施例2-8、及び、比較例2-1~比較例2-4の花粉吸着性試験結果を表2に示す。
【0056】
[実施例3-1]
実施例1-1の溶液、ワンデーアクエア(クーパービジョンジャパン製ソフトコンタクトレンズ)を用い、試験対象とする花粉を日本スギ花粉から、表3記載のヒノキ花粉へと変更した以外は、実施例2-1と同様に操作して、花粉吸着性試験(1)を実施した。その結果を表3に示す。
【0057】
[実施例3-2~実施例3-8]
表3に記載した実施例の溶液、ソフトコンタクトレンズ、及び、各種花粉を用いて花粉吸着性試験(1)を実施した。花粉吸着性試験(1)は、実施例3-1と同様に操作した。実施例3-2~実施例3-8の花粉吸着性試験結果を表3に示す。
【0058】
[実施例4-1]
実施例1-1の溶液、及び、ワンデーアクエア(クーパービジョンジャパン製ソフトコンタクトレンズ)を用いて、上記の花粉タンパク吸着性試験を実施した。その結果を表4及び図1に示す。
【0059】
[実施例4-2、比較例4-1~比較例4-2]
表4に記載の実施例もしくは比較例の溶液、及び、ソフトコンタクトレンズを用いて花粉タンパク吸着性試験を実施した。花粉タンパク吸着性試験は、実施例4-1と同様に操作した。実施例4-2、及び、比較例4-1~比較例4-2の花粉タンパク吸着性試験結果を表4及び図1に示す。
【0060】
[実施例5-1]
実施例1-1の溶液、及び、ワンデーアクエア(クーパービジョンジャパン製ソフトコンタクトレンズ)を用いて、上記の花粉吸着性試験(2)を実施した。その結果を表5に示す。
【0061】
[実施例5-2~実施例5-4、比較例5-1~比較例5-2]
表5に記載の実施例もしくは比較例の溶液、及び、ソフトコンタクトレンズを用いて、花粉吸着性試験(2)を実施した。花粉吸着性試験(2)は、実施例5-1と同様に操作した。実施例5-2~実施例5-4、及び、比較例5-1~比較例5-2の花粉吸着性試験結果を表5に示す。
【0062】
[実施例6-1]
実施例5-1を実施したソフトコンタクトレンズを用いて上記の花粉タンパク吸着性試験を実施した。その結果を表6に示す。
【0063】
[実施例6-2、比較例6-1~比較例6-2]
表6に記載の実施例もしくは比較例の溶液、及び、ソフトコンタクトレンズを用いて花粉タンパク吸着性試験を実施した。花粉タンパク吸着性試験は、実施例6-1と同様に操作した。実施例6-2、及び、比較例6-1~比較例6-2の花粉タンパク吸着性試験結果を表6に示す。
【0064】
【表1】

ポリビニルピロリドン:ポリビニルピロリドンK-90、富士フィルム和光純薬製
塩化ナトリウム:日本薬局方 塩化ナトリウム、日医工製
ホウ酸:日本薬局方 ホウ酸、小堺製薬製
水酸化ナトリウム:日本薬局方 水酸化ナトリウム、小堺製薬製
水:日本薬局方 精製水、健栄製薬製
【0065】
【表2】

ワンデーアクエア:クーパービジョンジャパン製、度数:-3.00D、ベースカーブ:8.6mm、直径:14.2mm、含水率:55%、素材名:ocufilcon D(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸)、FDA分類:グループIV(イオン性ソフトコンタクトレンズ)
ワンデーアキュビューモイスト:ジョンソン・エンド・ジョンソン製、度数:-3.00D、ベースカーブ:9.0mm、直径:14.2mm、含水率:58%、素材名:etafilcon A(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸)、FDA分類:グループIV(イオン性ソフトコンタクトレンズ)
【0066】
実施例2-1、実施例2-3~実施例2-8、及び、比較例2-1の結果より、共重合体(P)を配合することで、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着が抑制されることが分かった。また、その花粉吸着抑制作用は、共重合体(P)の配合濃度に依存して向上した。更に、実施例2-2、比較例2-2~比較例2-3の結果より、ソフトコンタクトレンズ種を変えても、その花粉吸着抑制効果が発現することが分かり、比較例2-4の結果より、比較例用重合体(Q1)を用いることでは、花粉吸着抑制効果は十分でないことも分かった。
【0067】
【表3】
【0068】
実施例3-1~実施例3-8の結果より、共重合体(P)による花粉吸着抑制作用は、日本スギ花粉のみならず、各種花粉について作用を発現することが分かった。
【0069】
【表4】
【0070】
実施例4-1~実施例4-2、比較例4-1~比較例4-2の結果より、共重合体(P)を配合することで、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着抑制作用のみならず、花粉タンパクの吸着抑制作用をも発現した。花粉タンパクの吸着抑制作用は、ソフトコンタクトレンズの中でも、実施例4-1にて用いたソフトコンタクトレンズにて強く作用することが明らかとなった。
【0071】
【表5】

実施例5-1、実施例5-3~実施例5-4、及び、比較例5-1の結果より、共重合体(P)を配合することで、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着が抑制されることが分かった。また、実施例5-2、比較例5-2の結果より、ソフトコンタクトレンズ種を変えても、その花粉吸着抑制効果が発現することが分かった。
【0072】
【表6】

実施例6-1~実施例6-2、比較例6-1~比較例6-2の結果より、共重合体(P)を配合することで、ソフトコンタクトレンズへの花粉吸着抑制作用のみならず、花粉タンパクの吸着抑制作用をも発現した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のソフトコンタクトレンズ用花粉吸着抑止剤及び花粉タンパク吸着抑制剤を用いることで、花粉症の症状を緩和でき、不快感を改善できるソフトコンタクトレンズ用ケア用品を製造することができる。

図1