(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ハウジングおよびこれを備えた装置組立体
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20240910BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B61L23/00 A
B61B1/02
(21)【出願番号】P 2020206624
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】杉立 好正
(72)【発明者】
【氏名】相澤 知禎
(72)【発明者】
【氏名】高田 義教
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-17869(JP,A)
【文献】特開2011-16421(JP,A)
【文献】特開2016-191650(JP,A)
【文献】特開2013-206204(JP,A)
【文献】特開平7-329772(JP,A)
【文献】特開2018-131071(JP,A)
【文献】特開2004-198698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
B61B 1/02
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が走行する軌道の側方に設置される装置を収容するハウジングであって、
前記装置を収容する収容空間を形成するハウジング本体と、
前記ハウジング本体の中央部に対して前記列車の進行方向の前寄りの位置に設けられており、前記装置が取り付けられる装置設置部と、
を備える、ハウジング。
【請求項2】
前記ハウジング本体が、前記収容空間内に配置された前記装置を部分的に露出させる開口部を有する、
請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記ハウジング本体が、前記進行方向の後側で、前記装置の側部を覆う第1側壁を有し、前記開口部が、前記第1側壁に形成されている、
請求項2に記載のハウジング。
【請求項4】
前記ハウジング本体が、前記装置の上面を覆う上壁を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項5】
前記ハウジング本体の底部が、開放されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項6】
前記装置設置部が、前記ハウジング本体を前記装置に取り付ける取付具を挿通する取付具挿通穴によって構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項7】
前記装置設置部が、前記収容空間内での前記装置の前記進行方向における位置を調整する位置調整機構を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項8】
前記位置調整機構が、前記進行方向に間隔をあけて設けられ、前記ハウジング本体を前記装置に取り付ける取付具を挿通する複数の取付具挿通穴によって構成される、
請求項7に記載のハウジング。
【請求項9】
前記位置調整機構が、前記収容空間内において前記中央部に対して前記進行方向の一方側で前記装置を位置決めする第1の取付具挿通穴と、前記収容空間内において前記中央部に対して前記進行方向の他方側で前記装置を位置決めする第2の取付具挿通穴と、を含む、請求項8に記載のハウジング。
【請求項10】
前記位置調整機構が、前記収容空間内において前記中央部で前記装置を位置決めする中央取付具挿通穴を含む、
請求項9に記載のハウジング。
【請求項11】
前記装置が、走査光を偏向しながら射出し、走査光の反射光に基づいて物体を検知する走査器である、
請求項1から10のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のハウジングと、
列車が走行する軌道の側方に設置されるとともに、前記ハウジング本体の中央部に対して前記列車の進行方向の前寄りで前記収容空間内に収容される装置と、
を備える、装置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車が走行する軌道の側方に設置される装置を収容するハウジング、およびこれを備えた装置組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道の側方に設置される装置の例として、プラットホームからの転落者を検知する転落検知システムの走査器を挙げることができる(例えば、特許文献1および2を参照)。
走査器は、レーザ等の走査光を透過させる透過部を有している。走査器は、プラットホームの下方で、透過部を介して軌道に向け、レーザ等の走査光を射出する。走査範囲内に転落者がいれば、走査光が転落者で反射し、その反射光が透過部を透過する。走査器は、入力された反射光に基づき、転落者がいることを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-111423号公報
【文献】特開平8-119107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塵芥や鉄粉等の異物が、走行中の列車により巻き上げられ、走査器に付着することがある。走査器の透過部が異物で汚れると、走査器の外部へ射出された走査光の光量が低下し、更には、走査器の内部へ進入する反射光の光量が低下する。すると、走査光が転落者で反射していたとしても、走査器は、反射光の入力を認識することができず、転落者がいることを検知することができない。
【0005】
よって、転落検知システムを継続的に安定的に稼働させるためには、メンテナンス作業の一環として、走査器の性能を維持あるいは回復すべく、走査器を定期的に清掃する必要がある。清掃周期が短いほど、メンテナンス作業は煩雑となる。
このような問題は、軌道の側方に設置され、列車で巻き上げられた異物が付着しやすく、汚れにより低下した性能を回復すべく定期清掃を要する装置において、同様に生じる。
【0006】
そこで本発明は、軌道の側方に設置される装置あるいはこれを備えたシステムのメンテナンス作業を省力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハウジングは、列車が走行する軌道の側方に設置される装置を収容する。ハウジングは、装置を収容する収容空間を形成するハウジング本体と、ハウジング本体の中央部に対して列車の進行方向の前寄りの位置に設けられており、装置が取り付けられる装置設置部と、を備える。
上記構成によれば、軌道の側方に設置される装置が、収容空間内に収容される。列車によって巻き上げられた異物から装置をハウジング本体で保護することができ、装置への異物の付着を抑制することができる。装置の清掃周期を長くすることが許容され、メンテナンス作業が省力化される。
【0008】
ここで、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた過程で、本件発明者は、ある軌道上における列車の進行方向が上りおよび下りのうち1つで固定されている場合、その軌道の側方に装置が設置されていると、「入線側」の装置側部が、「出線側」の装置側部よりも、より酷く汚れるとの知見を得た。なお、「入線側」は、装置に近づいてくる列車の先頭車両と正対する側であり、列車の進行方向の後側と対応する。「出線側」は、装置から遠ざかっていく列車の最後尾車両と正対する側であり、列車の進行方向の前側と対応する。
【0009】
更に、本件発明者は、仮に装置がハウジングに収容されていたとしても、装置がハウジング内で列車の進行方向の中央部に配置されている場合には、入線側の装置側部が、出線側の装置側部よりも、より酷く汚れるとの知見を得た。
装置設置部は、このような知見を基に着想されている。装置設置部により、装置は、収容空間内で、ハウジング本体の中央部に対して列車の進行方向の前寄りに位置付けられる。換言すれば、装置は、出線側にオフセットされた状態で収容空間内に収容される。
【0010】
入線側の装置側部は、仮に装置が中央部に配置されていれば付着するはずであった異物から遠ざけられる。よって、入線側の装置側部が汚れにくくなり、装置の清掃周期をより一層長くすることが許容される。
ハウジング本体が、収容空間内に配置された装置を部分的に露出させる開口部を有してもよい。
【0011】
装置の機能上、ハウジングを完全な密閉構造にすることができず、装置を部分的に露出させる開口が必要な場合がある。例えば、装置が転落検知システムの走査器の場合、走査光および反射光を通過させるため、開口が必要となる。開口があれば、異物が収容空間内に進入する機会が増し、異物が装置に付着する機会が増すと考えられる。このような場合にあっても、上記のとおり、入線側の装置側部が汚れにくいため、装置の清掃周期を長くすることが許容される。
【0012】
ハウジング本体が、進行方向の後側で、装置の側部を覆う第1側壁を有してもよい。開口部が、第1側壁に形成されていてもよい。
第1側壁は、進行方向の後側で装置の側部を覆う。換言すれば、第1側壁は、入線側の装置側部を覆う。このため、入線側の装置側部に付着するはずだった異物から装置を保護することができる。
【0013】
ハウジング本体がこのような第1側壁を有していても、装置の機能上、その第1側壁に開口を設ける必要が生じる場合がある。この場合、入線側の装置側部が、第1側壁の開口部を介し、部分的に露出する。異物が、列車の進行方向に飛びながら第1側壁の開口部を介して収容空間内へ進入し、入線側の装置側部に付着する機会が増すと考えられる。
このような場合にあっても、装置は収容空間内で出線側にオフセットされており、入線側の装置側部が、第1側壁の開口部を介して収容空間内に進入する異物から遠ざけられる。入線側の装置側部が汚れにくくなり、装置の清掃周期を長くすることが許容される。
【0014】
ハウジング本体が、装置の上面を覆う上壁を有してもよい。
上記構成によれば、列車によって巻き上げられた異物が装置の上面、あるいは、装置側部の上端部に落下して付着するのを防ぐことができる。装置の清掃周期をより一層長くすることが許容される。
ハウジング本体の底部が、開放されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、異物が収容空間内に進入しても、異物は自重で収容空間外へ落下する。異物が収容空間内で滞留および浮遊した後に装置に付着する機会を減らすことができ、また、ハウジングの内面が汚れにくくなる。装置およびハウジングの清掃周期を長くすることを許容される。
また、底部が開放されていれば、ハウジング本体を装置に対して相対的に上下方向に変位させることで、装置を収容空間内に入れたり、収容空間外へ出したりすることができる。装置を簡単に収容空間外へ出して装置の全体を露出させることができ、この露出状態で装置を十分に清掃することができる。
【0016】
装置設置部が、ハウジング本体を装置に取り付ける取付具を挿通する取付具挿通穴によって構成されてもよい。なお、「取付具」は、例えば、ボルト、ビス、リベットのように、ハウジング本体の装置への取付けに用いられる要素である。
上記構成によれば、取付具挿通穴に取付具を挿通することで、装置の収容空間内での進行方向における位置を容易に位置決めすることができる。
【0017】
装置設置部が、収容空間内での装置の進行方向における位置を調整する位置調整機構を有してもよい。
上記構成によれば、装置の進行方向における位置を調整することができ、入線側の装置側部が汚れない位置に、装置を配置することができる。
位置調整機構が、進行方向に間隔をあけて設けられ、ハウジング本体を装置に取り付ける取付具を挿通する複数の取付具挿通穴によって構成されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、複数の取付具挿通穴のいずれに取付具を挿通させるのか選択することで、装置の位置を容易に調整することができる。
位置調整機構が、収容空間内において中央部に対して進行方向の一方側で装置を位置決めする第1の取付具挿通穴と、収容空間内において中央部に対して進行方向の他方側で装置を位置決めする第2の取付具挿通穴と、を含んでもよい。
【0019】
上記構成によれば、軌道上の列車の進行方向が上りであるのか下りであるのかに応じて、装置を第1の取付具挿通穴を用いてハウジング本体に取り付けるか、第2の取付具挿通穴を用いてハウジング本体に取り付けるか、選択することができる。列車の進行方向に関わらず、装置を出線側にオフセットすることができる。
位置調整機構が、収容空間内において中央部で装置を位置決めする中央取付具挿通穴を含んでもよい。
【0020】
上記構成によれば、軌道上の列車の進行方向が上りと下りの両方である場合に、装置をハウジングの中央部に配置することが許容される。したがって、装置の両側部をなるべく汚れにくくすることができる。
装置が、走査光を偏向しながら射出し、走査光の反射光に基づいて物体を検知する走査器であってもよい。
【0021】
上記構成によれば、軌道の側方に設置された走査器の清掃周期を短くすることができ、走査器のメンテナンス作業を省力化することができる。
本発明に係る装置組立体は、上記のハウジングと、装置とを備える。装置は、列車が走行する軌道の側方に設置されるとともに、ハウジング本体の中央部に対して列車の進行方向の前寄りで収容空間内に収容される。
【0022】
この装置組立体は、上記のハウジングの技術的特徴と同一のまたは対応する技術的特徴を具備する。したがって、列車によって巻き上げられた異物から装置をハウジング本体で保護することができる。また、入線側の装置側部を異物から遠ざけることができる。装置(特に、入線側の装置側部)が汚れにくくなるので、装置の清掃周期を長くすることが許容される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、軌道の側方に設置される装置あるいはこれを備えたシステムのメンテナンス作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る装置組立体を、軌道、プラットホームおよび列車とともに示す平面図である。
【
図2】(A)が、装置組立体の平面視断面図である。(B)が、装置組立体の正面視断面図である。
【
図3】(A)が、紙面右側が入線側で固定されている場合における装置組立体を示す平面視断面図、(B)が、入線側と出線側とが固定されていない場合における装置組立体を示す平面視断面図、(C)が、紙面左側が入線側で固定されている場合における装置組立体を示す平面視断面図である。
【
図4】軌道の側方に設置されている状態の装置組立体を示す斜視図である。
【
図5】ハウジング本体を上かつ前から見て示す斜視図である。
【
図6】ハウジング本体を上かつ後から見て示す斜視図である。
【
図7】前ハウジング部材を上かつ前から見て示す斜視図である。
【
図8】上ハウジング部材を上かつ後から見て示す斜視図である。
【
図9】(A)が下梁部材の平面図である。(B)が下梁部材の正面図である。
【
図10】装置組立体を下かつ後から見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。全図を通じて同一のまたは対応する要素には同一の符号を付して詳細説明の重複を省略する。
(方向)
図1は、本発明の実施形態に係る装置組立体1を上から見て示す。なお、「幅方向」は、軌道Rの幅方向であり、上下方向および軌道Rの延在方向と直交する。装置組立体1は、軌道Rおよびその上を走行する列車Tから見て、幅方向外方に設置されている。すなわち、装置組立体1は、軌道Rの側方に設置されている。
【0026】
本実施形態では、装置組立体1の前面が、軌道Rに向けられる。装置組立体1の「横方向」は、上下方向および装置組立体1の前後方向と直交する。装置組立体1が軌道Rの側方に設置された状態において、装置組立体1の前後方向は、軌道Rの幅方向と略平行であり、装置組立体1の横方向は、軌道Rの延在方向と略平行である。
ここで、
図1に示すように、装置組立体1が設置された軌道Rにおいて、全ての列車Tが、軌道Rの延在方向の「一方側」(
図1の紙面右側)から「他方側」(
図1の紙面左側)に向けて走行するものと仮定する。
【0027】
装置組立体1の「一方側」の側部は、装置組立体1に近づいてくる列車Tの先頭車両と正対する。この「一方側」(軌道Rの延在方向の一方側、装置組立体1の横方向の一方側かつ
図1の紙面右側)が、列車Tの進行方向の「入線側」あるいは「後側」となる。装置組立体1の「他方側」の側部は、装置組立体1から遠ざかっていく列車Tの最後尾車両と正対する。この「他方側」(軌道Rの延在方向の他方側、装置組立体1の横方向の他方側かつ
図1の紙面左側)が、列車Tの進行方向の「出線側」あるいは「前側」となる。
【0028】
(走査器)
装置組立体1は、軌道Rの側方に設置された装置と、装置を収容するハウジング3とを備える。プラットホームPの下方に設置された走査器2Aは、ハウジング3に収容されて装置組立体1を構成する装置の好適例である。
走査器2Aは、筐体10および透過部11を有している。筐体10は、発光部、偏向部、受光部および検知部(いずれも詳細図示を省略)のような、走査器2Aの構成要素を収容する。透過部11は、光透過性を有し、筐体10の前面に設けられている。透過部11は、正面視で走査器2Aの横方向に延びる帯状に形成され、平面視で円弧状に形成されている。
【0029】
走査器2Aは、筐体10内の発光部でレーザ等の走査光SLを発光する。走査光SLは、透過部11を通過し、筐体10の内部から外部へ射出される。走査光SLは偏向部で偏向されながら射出され、それにより2次元的な走査範囲SRが形成される。偏向部は、ガルバノミラーやポリゴンミラー等の偏向器と、偏向器を回転駆動するアクチュエータとで構成される。走査器2Aは、筐体10の前面を軌道Rに向け、走査光SLを水平に射出する姿勢で、軌道Rの側方に設置される。よって、走査範囲SRは、水平面を成す。
【0030】
ここで、走査器2Aが走査光SLを前へ射出しているとき、すなわち、走査光SLが軌道Rの幅方向へ射出されているときに、走査光SLの偏向角を0度とする。走査光SLは、偏向中心DC周りに、約-90度の偏向角から約+90度の偏向角までの概略180度の偏向範囲で偏向される。走査光SLは、1回の偏向操作で、偏向中心DCから軌道Rの延在方向の一方へ射出される状態(約-90度の偏向角で射出される状態)から、幅方向へ射出される状態(0度の偏向角で射出される状態)を経て、偏向中心DCから軌道Rの延在方向の他方へ射出される状態(約+90度の偏向角で射出される状態)となるまで、偏向される。この偏向操作が、偏向部によって高速で繰り返される。
【0031】
走査範囲SR内に物体が存在すると、走査光SLがその物体で反射する。反射光RLは、透過部11を通過し、筐体10の外部から内部へ進入する。受光部は、筐体10の内部で反射光RLを受光する。所定光量以上の反射光RLが受光されると、検知部は、走査範囲SR内に物体が存在することを検知する。
例えば、走査器2Aは、プラットホームPからの転落者の有無を検知するために用いられてもよい。走査器2Aは、軌道R上を走行する列車Tの車両Cの有無を検知するために用いられてもよい。走査器2Aは、軌道R上を走行する列車Tの車輪Wの停止を検知するために用いられてもよい。
【0032】
走査光SLの偏向中心DCは、平面視において円弧状の透過部11の中心と略同じ位置にある。透過部11は、走査光SLの偏向範囲に適合するよう、平面視で半円弧状に形成されている。透過部11の一端部は、筐体10の一方側の第1側面に設けられている。透過部11の他端部は、横方向において第1側面とは反対側の第2側面に設けられている。走査光SLは、偏向操作の初期において透過部11の一端部を通過し、偏向操作の終期において透過部11の他端部を通過する。
筐体10の前面が幅方向に向けられた状態において、第1側面は、軌道Rの延在方向の一方側に向けられ、第2側面は、軌道Rの延在方向の他方側に向けられる。別の言い方では、第1側面は、列車Tの進行方向の入線側または後側に向けられ、第2側面は、列車Tの進行方向の出線側または前側に向けられる。
【0033】
(ハウジング)
図2(A)は装置組立体1の平面視断面図、
図2(B)は装置組立体1の正面視断面図である。
図2(A)および
図2(B)を参照して、ハウジング3は、走査器2Aを収容し、異物90から走査器2Aを保護する。ハウジング3は、走査器2Aを収容する収容空間20を形成するハウジング本体21と、走査器2Aが取り付けられる装置設置部22とを備えている。
【0034】
ハウジング本体21は、前壁23、第1側壁24、第2側壁25および上壁26を有している。収容空間20は、これら壁23~26の内面に囲まれて形成されている。本実施形態では、ハウジング本体21が、底壁および後壁を有していない。ハウジング本体21および収容空間20は、底部および後部において開放されている。
前壁23は、走査器2A(筐体10)の前面を覆う。第1側壁24は、進行方向の入線側(後側)で、走査器2Aの一方側の側部(筐体10の第1側面)を覆う。第2側壁25は、進行方向の出線側(前側)で、走査器2Aの他方側の側部(筐体10の第2側面)を覆う。上壁26は、走査器2A(筐体10)の上面を覆う。
【0035】
本実施形態では、給電や信号送受信のためのハーネス13が、走査器2Aの上部に接続される。上壁26は、ハーネス通過口27を有している。ハーネス13は、走査器2Aの上部からハーネス通過口27を通ってハウジング3の外へと導かれている。
ハウジング本体21の高さは、走査器2Aの高さと同等あるいはそれよりも僅かに大きい。走査器2Aの上面が上壁26で覆われた状態において、走査器2Aの下端は、前壁23の下端縁と同じ位置あるいはこれより僅かに上方に位置付けられる。
【0036】
これに対し、走査器2Aの透過部11は、筐体10の前面から両側面にまで及んでいる。ハウジング3は、透過部11を透過する走査光SLおよび反射光RLを遮ることがないよう、走査器2Aを部分的に露出させる開口部30を有している。
前壁23、第1側壁24および第2側壁25は、平面視でU字状を呈している。開口部30は、前壁23、第1側壁24および第2側壁25の上下方向中間部において連続して形成され、平断面視でU字状に形成されている。
【0037】
開口部30は、ハウジング本体21の前壁23に形成された前開口部31と、前開口部31から連続する第1側開口部32および第2側開口部33とを有する。第1側開口部32は、第1側壁24の前端で前開口部31の一端と連続し、第1側壁24の前端から前後方向中間部まで後方へ延びている。第2側開口部33もこれと同様である。
前壁23は横方向に延び、第1側壁24および第2側壁25は前後方向に延びる。第1側壁24および第2側壁25は、走査器2Aの前後方向の寸法よりも僅かに長いのに対し、前壁23は、走査器2Aの横方向の寸法の数倍長い。前壁23は、第1側壁24および第2側壁25よりも長尺である。ハウジング本体21および収容空間20は、装置組立体1の横方向(列車Tの進行方向)に長尺である。そのため、後述のオフセット配置を実現することができる。
【0038】
なお、前壁23は、横方向に一対のテーパ部23a,23bを有する。また、前壁23は、一対のテーパ部23a,23bの間で一対のテーパ部23a,23bの横方向中央端部同士を接続する中央部23cを有する。テーパ部23a,23bは、横方向において中央から離れるに連れて後方に向かうようにして傾斜している。テーパ部23a,23bの横方向外端部は、側壁24,25の前端とそれぞれ接続されている。側壁24,25の前端は、テーパ部23a,23bの横方向中央端部(および中央部23c)に対し後方に位置する。中央部23cは、平面視で横方向に延びている。
【0039】
(オフセット配置)
装置設置部22は、ハウジング本体21の横方向の中央部に対し、列車Tの進行方向の前寄りに位置に設けられている。走査器2Aは、このような装置設置部22に取り付けられる。そのため、走査器2Aは、収容空間20内で、ハウジング本体21の横方向の中央部に対し、列車Tの進行方向の出線側にオフセットされる。
【0040】
なお、「出線側にオフセット」とは、走査器2Aの横方向中心線C2Aが、ハウジング3の横方向中心線C3よりも進行方向の前寄り(出線側)に位置している状態をいう。ハウジング3の横方向中心線C3が、平面視で走査器2Aと重なっていてもよい。
装置設置部22は、ハウジング本体21を走査器2Aに取り付ける取付具81を挿通させる複数の取付具挿通穴40によって構成される。複数の取付具挿通穴40は、ハウジング本体21の第1側壁24および第2側壁25の後端部同士を接続する連結部28a,28bを貫通している。連結部28a,28bは、上下に対を成している。取付具挿通穴40は、上側の連結部28aにも下側の連結部28bにも形成される。
【0041】
本実施形態では、走査器2Aの背面側(筐体10の背面そのもの、および、走査器2Aを支持して筐体10の背面側に配置された部材を含む)が、4つの取付具81を用いて、装置設置部22に上下左右の4点で取り付けられる。つまり、4つの取付具81が、上側の連結部28aで横方向に離れた2つの取付具挿通穴40と、下側の連結部28bで横方向に離れた2つの取付具挿通穴40それぞれに後から挿通される。走査器2Aの背面側には、取付具81が係合する取付具係合穴(図示せず)が設けられている。4つの取付具81は、走査器2Aの背面側の取付具係合穴に後から挿し込まれる。これにより、ハウジング本体21が、連結部28a,28bを介し、走査器2Aに取り付けられる。
【0042】
取付具81は、例えば、ボルト、ビス、リベットのように、2つの部材を互いに取り付け合うための要素であれば、どのようなものでもよい。
ここで、列車Tが走行すると、塵芥や鉄粉等の異物90が巻き上げられる。異物90は、進行方向の前方へ飛ばされやすい。そのため、異物90は、走査器2Aの出線側の側部よりも、入線側の側部に付着しやすい。
【0043】
他方、走査器2Aの透過部11は、走査器2Aの両側部にも設けられている。異物90が走査器2Aに付着すると、筐体10の内部から外部へ射出される走査光SLの光量が低下し、筐体10の外部から内部へ進入する反射光RLの光量が低下する。これにより、検知部が、物体を検知することができなくなる可能性がある。走査器2Aの性能を維持または回復するには、走査器2Aを定期的に清掃する必要がある。
【0044】
本実施形態によれば、軌道Rの側方に設置される走査器2Aが、ハウジング3の収容空間20内に収容される。列車Tによって巻き上げられた異物90から走査器2Aをハウジング本体21で保護することができ、走査器2Aへの異物90の付着を抑制することができる。
走査器2Aの機能上、ハウジング3は、完全な密閉構造にすることができない。ハウジング3は、走査光SLおよび反射光RLを遮らず通過させるため、走査器2Aの一部(特に、透過部11)を露出させる開口部30を有している。走査光SLの偏向範囲が概略180度に及ぶため、開口部30は、ハウジング本体21の前壁23から両側壁24,25にわたって設けられている。このため、前方へ飛ばされた異物90が、前開口部31の横方向一端部や第1側開口部32を介し、収容空間20内に進入するおそれがある。
【0045】
走査器2Aは、装置設置部22により、収容空間20内で、ハウジング本体21の中央部に対し、列車Tの進行方向の前寄りに位置付けられている。換言すれば、走査器2Aは、出線側にオフセットされた状態で収容空間20内に収容される。入線側の側部は、仮に走査器2Aが中央部に配置されていれば付着するはずであった異物90から遠ざけられる。異物90が前開口部31の横方向一端部や第1側開口部32を介して収容空間20内に進入したとしても、その異物90が入線側の側部に付着する機会を減らすことができる。
【0046】
このように、走査器2Aが異物90で汚れにくくなるため、走査器2Aの清掃周期を長くすることが許容される。走査器2Aあるいはこれを備えるシステム(転落検知システム、車両検知システムまたは停車検知システム)のメンテナンス作業を省力化することができる。
走査器2Aの上面は、上壁26で覆われる。このため、異物90が走査器2Aの上面、あるいは、走査器2Aの両側部の上端部に落下して付着するのを防ぐことができる。ハウジング本体21の底部は、開放されている。このため、異物90が収容空間20内に進入しても、異物90は自重で収容空間20外へ落下する。異物90が収容空間20内で滞留および浮遊した後に走査器2Aに付着する機会を減らすことができ、また、ハウジング3の内面が汚れにくくなる。したがって、走査器2Aの清掃周期を一層長くすることを許容される。
【0047】
(位置調整)
図3(A)~
図3(C)を参照して、装置設置部22は、収容空間20内での走査器2Aの進行方向における位置を調整する位置調整機構29を有する。位置調整機構29は、複数の取付具挿通穴40によって構成される。
上記の説明でも、上下左右の4点で走査器2Aを支持するために、4つの取付具挿通穴40が上下の連結部28a,28bに分かれていた。位置調整機構29は、この最低限の4つよりも多数の取付具挿通穴40によって構成される。これら取付具挿通穴40は、上下の連結部28a,28bに分かれて設けられており、また、各連結部28a,28bに横方向に間隔をおいて設けられている。
【0048】
位置調整機構29は、収容空間20内において横方向の中央部に対して一方側で走査器2Aを位置決めする第1の取付具挿通穴41と、収容空間20内において横方向の中央部に対して他方側で走査器2Aを位置決めする第2の取付具挿通穴42と、収容空間内において横方向の中央部で走査器2Aを位置決めする中央取付具挿通穴43とを含む。
走査器2Aを4点で取り付けるため、第1の取付具挿通穴41は4つである。上側の連結部28a,28bに、2つの第1の取付具挿通穴41が設けられ、下側の連結部28a,28bに、2つの第1の取付具挿通穴41が設けられる。第2の取付具挿通穴42も中央取付具挿通穴43も4つである。
【0049】
本実施形態では、上下の連結部28a,28bの各々に、5つの取付具挿通穴40が等間隔をおいて横方向に並んで配置されている。5つのうち中央の取付具挿通穴40は、ハウジング3の横方向中心線C3上に配置される。
上下の連結部28a,28bに設けられた5つの取付具挿通穴40のうち一方側末端の取付具挿通穴40と、中央の取付具挿通穴40の2つが、第1の取付具挿通穴41である。上下の連結部28a,28bに設けられた5つの取付具挿通穴40のうち他方側末端の取付具挿通穴40と、中央の取付具挿通穴40の2つが、第2の取付具挿通穴42である。中央の取付具挿通穴40は、第1の取付具挿通穴41と第2の取付具挿通穴42とを兼ねており、そのため、連結部28a,28bに形成される取付具挿通穴40の個数が削減されている。上下の連結部28a,28bに設けられた5つの取付具挿通穴40のうち中央の取付具挿通穴40の両側で隣接した2つの取付具挿通穴40が、中央取付具挿通穴43である。
【0050】
図1および
図2(A)および
図2(B)の例では、列車Tが一方側から他方側へ進行している。一方側が入線側、他方側が出線側となる。列車Tの進行方向がこの方向で固定されている場合には、
図3(A)に示すように、4つの取付具81は、4つの第2の取付具挿通穴42にそれぞれ挿通される。これら4つの取付具81が走査器2Aの背面側に挿し込まれることで、走査器2Aは、収容空間20内で横方向の他方側、すなわち、進行方向の出線側にオフセットされる。したがって、上記したとおり、入線側の側部が汚れにくくなる。
【0051】
列車Tが他方側から一方側へ進行する場合には、一方側が出線側、他方側が入線側となる。列車Tの進行方向がこの方向で固定されている場合、
図3(C)に示すように、4つの取付具81は、4つの第1の取付具挿通穴41にそれぞれ挿通される。これら4つの取付具81が走査器2Aの背面側に挿し込まれることで、走査器2Aは、収容空間20内で横方向の一方側、すなわち、進行方向の出線側にオフセットされる。したがって、上記したとおり、入線側の側部が汚れにくくなる。
【0052】
同じ軌道R上で、一部の列車Tが一方側から他方側へ進行し、一部の列車Tが他方側から一方側へ進行する場合がある。このように列車Tの進行方向が固定されていない場合、
図3(B)に示すように、4つの取付具81は、4つの中央取付具挿通穴43にそれぞれ挿通される。これら4つの取付具81が走査器2Aの背面側に挿し込まれることで、走査器2Aは、収容空間20内で横方向の中央部に配置される。これにより、走査器2Aの両側部がなるべく汚れにくくなる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、取付具挿通穴40に取付具81を挿通するだけで、走査器2Aの収容空間20内での進行方向における位置を容易に位置決めすることができる。複数の取付具挿通穴40のいずれに取付具81を挿通させるのか選択することで、走査器2Aの位置を容易に調整することができる。また、位置の調整により、入線側の側部が汚れない位置に、走査器2Aを配置することができる。
【0054】
第1の取付具挿通穴41を用いれば、走査器2Aが、収容空間20内において一方側にオフセットされる。第2の取付具挿通穴42を用いれば、走査器2Aが、収容空間20内において他方側にオフセットされる。一方側が入線側であるのか他方側が入線側であるのかに応じて、第1の取付具挿通穴41と第2の取付具挿通穴42のどちらを用いるのか選択すれば、走査器2Aは出線側にオフセットされる。列車Tの進行方向が固定されていない場合には、中央取付具挿通穴43を用いることで、走査器2Aを汚れにくくすることができる。
【0055】
このように、上り列車が走行する軌道Rに設置される走査器2Aに対しても、下り列車が走行する軌道Rに設置される走査器2Aに対しても、上り列車と下り列車の両方が走行する軌道Rに設置される走査器2Aに対しても、同じ共通のハウジング3を適用して、装置組立体1を構成することができる。このため、ハウジング3の生産効率が向上する。
図2(B)を参照して、第1の取付具挿通穴41を用いて一方側にオフセットされた状態、第2の取付具挿通穴42を用いて他方側にオフセットされた状態、および、中央取付具挿通穴43を用いて中央部に配置された状態の3つの配置状態に対応して、3つのハーネス通過口27が上壁26に設けられている。この場合、2つのハーネス通過口27が、ハーネス12の通過に使用されない。これら2つのハーネス通過口27は、開けたままでもよいし、プラグ82で閉塞されてもよい。使用されない取付具挿通穴40についても、これと同様である。
以下、
図4~
図10を参照して、走査器2Aを軌道Rに設置するための構造およびハウジング3の具体的構造について説明する。以降の説明では、単なる一例として、ハウジング本体21が、中央取付具挿通穴43を用いて走査器2Aに取り付けられている。
【0056】
(走査器の設置)
図4に示すように、走査器2Aは、軌道Rの側方において、軌道Rから所定高さに位置付けられる。走査器2Aを所定高さで位置決めする手段は、特に限定されない。図示されるように、バラスト軌道の場合には、ポール91が、軌道Rの側方で積まれたバラスト(砕石や砂利)に挿し込まれることで、軌道Rに支持される。ポール91には、ブラケット92が取り付けられる。走査器2Aは、このブラケット92に固定される。走査器2Aは、ブラケット92およびポール91を介して軌道Rに支持されている。バラストがない場合においても、ポール91は適宜の固定手段で軌道R上に固定される。
【0057】
ブラケット92は、走査器2Aの軌道Rに対する姿勢を調整する姿勢調整機構の一例である。ブラケット92は、ポール91に対する上下方向の位置を調整可能に、ポール91に取り付けられている。ブラケット92は、ポール91に対する、軌道Rの幅方向の軸周りの姿勢、軌道Rの延在方向の軸周りの姿勢および上下方向の軸周りの姿勢を調整可能に、ポール91に取り付けられている。ブラケット92のポール91に対する位置および姿勢を調整することで、走査器2Aの軌道Rからの高さおよび走査器2Aの軌道Rに対する姿勢を調整することができる。これにより、前述したとおり、筐体10の前面が幅方向に向けられ、走査光SLが水平に射出される。
【0058】
(ハウジング構成部品)
図5は、ハウジング本体21を上かつ前から見た斜視図、
図6は、ハウジング本体21を上かつ後から見た斜視図である。ハウジング本体21は、前ハウジング部材51および上ハウジング部材52を組み付けることによって構成される。
前ハウジング部材51および上ハウジング部材52の材料および成形方法は、特に限定されない。前ハウジング部材51および上ハウジング部材52は、合成樹脂の射出成型によって成形されてもよいし、板金材のプレス加工によって成形されてもよい。以下では、特段断らない限り、板金材のプレス加工で成形された場合を例にとり説明する。
【0059】
図5~
図7に示すように、前ハウジング部材51は、前述した前壁23、第1側壁24および第2側壁25を有している。開口部30も、前ハウジング部材51に形成されている。前壁23、第1側壁24および第2側壁25が一体化されているため、開口部30が前壁23から両側壁24,25にまで連続していても、開口部30を単一の部品に設けることができる。第1側開口部32および第2側開口部33の後端は、第1側壁24,24の前後方向中間部に位置する。このため、前開口部31が前壁23の横方向全体にわたって設けられている一方で、前壁23の前開口部31よりも上方の部位は、第1側壁24および第2側壁25の後端部を介し、前壁23のうち前開口部31よりも下方の部位と連続する。
【0060】
開口部30を複数の部品に分けて設けた場合、走査光SLおよび反射光RLが確実に開口部30を通過できるようにするため、分かれた開口部30同士を綿密に位置合わせする必要がある。本実施形態では、開口部30が単一の部品に設けられており、走査光SLおよび反射光RLが確実に開口部30を通過する構造を平易に実現することができる。
前壁23の中央部には、ボルト挿通穴61が貫通して形成されている。第1側壁24の後端部および第2側壁25の後端部それぞれに、上下に分かれてボルト挿通穴62,63が貫通して形成されている。
【0061】
図5、
図6および
図8に示すように、上ハウジング部材52は、前述した上壁26を有している。上ハウジング部材52は、その横方向中央部において上壁26の前縁から下方に延びる前取付片64を有する。上ハウジング部材52は、その後端部において上壁26の両側縁部それぞれから下方に延びる一対の側取付片65を有する。前取付片64には、雌ねじ穴66が設けられている。一対の側取付片65それぞれに、雌ねじ穴67が設けられている。
【0062】
図5および
図6に戻り、前取付片64は中央部23cの背面に当接され、一対の側取付片65は、第1側壁24の内面および第2側壁25の内面にそれぞれ当接される。この状態で、ボルト(不図示)が、ボルト挿通穴61,62にハウジング本体21の外から挿通され、対応する雌ねじ穴66,67に螺合される。これにより、前ハウジング部材51と上ハウジング部材52とが組み付けられ、ハウジング本体21が構成される。
【0063】
側取付片65は、上壁26の側縁に対して上壁26の板厚分だけ横方向中央寄りの位置で曲げ加工することにより、上壁26と一体に形成されている。このため、側取付片65の外面は、平面視で上壁26の側縁と横方向に同じ位置にある。したがって、上壁26の側縁と、第1側壁24および第2側壁25の上縁との間のクリアランスをなくすことができる。
【0064】
前取付片64もこれと同様である。上壁26の前縁と前壁のテーパ部23a,23bの上縁との間のクリアランスをなくすことができる。これにより、異物90が前ハウジング部材51と上ハウジング部材52との間のクリアランスを通って進入する機会を減らすことができる。
図5、
図6および
図8に示すように、上ハウジング部材52は、前述した上側の連結部28aを有している。上側の連結部28aは、上壁26の後縁から下方に延びている。連結部28aの横方向の寸法は、上壁26の後端部の横方向の寸法と同じである。よって、上ハウジング部材52を前ハウジング部材51に組み付けると、連結部28aの側端面が第1側壁24および第2側壁25の内面に当接する。連結部28aの上下方向の寸法は、板厚に対して大きい。したがって、横方向の両端部を上下方向に曲げる荷重に対し、ハウジング本体21の強度が高くなる。また、横方向に圧縮する荷重に対し、ハウジング本体21の強度が高くなり、第1側壁24および第2側壁25の変形を抑えることができる。
【0065】
上ハウジング部材52には、上壁26の後端部を貫通するハーネス通過口27が設けられる。ハーネス通過口27は、略全体が上壁26に形成されているが、ハーネス通過口27の後端部は上側の連結部28aの上端部に及んでいる。よって、ハーネス通過口27は、逆L字状の断面を有している。このため、収容空間20からハウジング3の外に導き出されたハーネス12(
図2(B)および
図4を参照)を後方に取り回しやすい。
【0066】
上壁26にはパンチング加工でハーネス通過口27が予め形成される。ハーネス通過口27が形成されている部位で上壁26に曲げ加工が施される。これにより、連結部28aの形成とともに、連結部28aに及ぶハーネス通過口27を形成することができる。貫通口(ハーネス通過口27)が形成されている部位で曲げ加工を施すため、容易に加工を行うことができる。
【0067】
図9(A)および
図9(B)を参照して、ハウジング3は、ハウジング本体21の第1側壁24および第2側壁25の間に架け渡される下梁部材53を有している。下梁部材53は、前述した下側の連結部28bを有している。下梁部材53は、下側の連結部28bの横方向両縁部から後方に突出する一対の取付片68を有している。一対の取付片68には、雌ねじ穴69が設けられている。
【0068】
図10は、装置組立体1を下かつ後から見た斜視図である。下梁部材53は、第1側壁24および第2側壁25の後下端部同士を横方向に連結する。一対の取付片68の外面は、第1側壁24の内面および第2側壁25の内面それぞれに当接される。この状態で、ボルト(図示せず)が、ボルト挿通穴63にハウジング本体21の外から挿通され、対応する雌ねじ穴69に螺合される。
【0069】
ハウジング本体21は後部で開放される一方、上下一対の連結部28a,28bが、第1側壁24および第2側壁25の後端部同士を横方向に接続する。このため、ハウジング本体21をなるべく軽量化しながら堅牢な構造を実現することができる。
各ボルト挿通穴61~63は、段付きに形成され、内面側はボルトの軸部が挿通される径を有し、外面側は内面側よりも大径を有する。ボルトの頭部は、ボルト挿通穴61~63の段差面に突き当てられ、外面側の大径部分に収納される。ハウジング3の外面にボルトの頭部が露出せず、装置組立体1の美観が向上する。
【0070】
(組立・分解)
ハウジング3の組立順序、および、ハウジング3の走査器2Aへの組付け順序は特に限定されない。一例として、まず、上ハウジング部材52を前ハウジング部材51に組み付け、ハウジング本体21が構成される。次いで、下梁部材53をハウジング本体21に組み付け、ハウジング3が構成される。一方、走査器2Aは、ブラケット92に固定されている。走査器2Aの軌道Rに対する位置および姿勢は、規定どおりに調整されている。
【0071】
走査器2Aが軌道Rの側方に設置された状態で、ハウジング3が上から走査器2Aに被せられる。すなわち、前壁23が、走査器2Aの前面より前方に位置付けられ、上下の連結部28a,28bが、走査器2Aの背面より後方に位置付けられ、第1側壁24および第2側壁25が、走査器2Aの両側部より横方向外方に位置付けられる。ハウジング3の底部は開放されている。走査器2Aがこの開放された底部を通り抜けるように、ハウジング3を上から下へ移動させる。これにより、走査器2Aが収容空間20内に収容される。
【0072】
走査器2Aの背面側には、取付具81が係合する取付具係合穴(図示せず)が、上下左右の4点に設けられている。この4つの取付具係合穴は、走査器2Aの筐体10そのものに形成されていてもよいし、ブラケット92に形成されていてもよい。
走査器2Aが設置されている軌道R上での列車Tの進行方向に応じて、上下の連結部28a,28bに形成された複数の取付具挿通穴40のうち4つが、4点の取付具係合穴と前後方向に整合される。
図10は、軌道Rで上り列車と下り列車の両方が走行する場合を例示しており、4つの中央取付具挿通穴43が複数の取付具挿通穴40から選択されている。次いで、4つの取付具81が、ハウジング3の後から取付具挿通穴40に挿通され、取付具係合穴に係合される。これにより、走査器2Aが、収容空間20内でハウジング3に対する横方向(進行方向)における位置を調整した状態で、ハウジング3に取り付けられる。すなわち、走査器2Aの汚れを軽減可能な装置組立体1が構成される。
【0073】
ハウジング3の底部が開放されているため、ハウジング3の組立を完了した状態で、ハウジング3を走査器2Aに取り付けることができる。そのため、現場(軌道Rの側方)での部品組立作業を減らすことができる。ただし、走査器2Aの背面の上下方向中間部が下部よりも後方へ突出しているような場合には、ハウジング本体21を走査器2Aに上から被せてから、下梁部材53をハウジング本体21に取り付けてもよい。なお、上側の連結部28aは、組付時に走査器2Aと干渉するおそれがなく、上ハウジング部材52への一体化が許容される。これにより、ハウジング3の部品点数の削減が図られる。
【0074】
走査器2Aにハーネス12が接続済の状態であれば、ハーネス12が底部およびハーネス通過口27を通り抜けた状態にしてから、ハウジング3を上から下へ移動させればよい。ハウジング3を走査器2Aに組み付けた後に、ハーネス12を走査器2Aに接続することも可能である。取付具挿通穴40およびハーネス通過口27は、使用されずに開いたままのものもある。これらはプラグで適宜閉塞されてもよい。
【0075】
装置組立体1は、上記と逆の手順で分解される。取付具81を取り外し、ハウジング3を上へ移動させると、走査器2Aが収容空間20から離脱する。装置組立体1を分解しても、走査器2Aの軌道Rに対する位置および姿勢は変更されず、走査器2Aの動作を阻害しない。
【0076】
(清掃)
走査器2Aの清掃は、この分解状態で行われてもよい。組立と同様にして、分解も簡易に行えるため、清掃効率が向上する。
開口部30は、走査器2Aが想定されるとおりの機能を果たせるように、透過部11を露出させている。開口部30が、清掃作業時に、ハウジング3の外から走査器2Aにアクセスするためのメンテナンス口として利用されてもよい。例えば、ハウジング3の外前方から開口部30を介して収容空間20内へブラシ等の清掃具を挿入し、装置組立体1の組付状態において走査器2Aが清掃具で清掃されてもよい。
【0077】
また、ハウジング本体21および収容空間20は、後部において開放されている。ハウジング3の外後方から上下の連結部28a,28bの間を通り抜けるようにして収容空間20内へ清掃具を挿入し、装置組立体1の組付状態において走査器2Aが清掃されてもよい。分解および再組立を伴わずに清掃することができ、清掃効率が向上する。
【0078】
(変形例)
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更、追加および/または削除可能である。
位置調整機構が、5つの取付具挿通穴によって構成されている。取付具挿通穴の個数は特に限定されない。また、位置調整機構が、複数の取付具挿通穴によって構成され、それにより、走査器2Aの位置は離散的に調整される。位置調整機構は、例えばガイドレールによって構成されてもよく、走査器2Aの位置が連続的に調整されてもよい。また、ハウジング3は位置調整機能を有していなくてもよい。
【0079】
装置組立体1を構成してハウジング3に収容される装置として、走査器2Aを例示したが、走査器2A以外の軌道Rの側方に設置される装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 装置組立体
2A 走査器(装置)
3 ハウジング
10 筐体
11 透過部
20 収容空間
21 ハウジング本体
22 装置設置部
23 前壁
24 第1側壁
26 上壁
28 位置調整機構
30 開口部
31 前開口部
32 第1側開口部
33 第2側開口部
40 取付具挿通穴
41 第1取付具挿通穴
42 第2取付具挿通穴
43 中央取付具挿通穴
81 取付具
SL 走査光
RL 反射光
R 軌道
T 列車