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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
E03D13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020214926
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100749
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 和正
(72)【発明者】
【氏名】古田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】永冨 洋文
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-31641(JP,A)
【文献】特開2019-178573(JP,A)
【文献】特開2020-122328(JP,A)
【文献】特開2016-69874(JP,A)
【文献】特開2001-329600(JP,A)
【文献】特開2017-8660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便を受けるボウル面と、
前記ボウル面の上部において前記ボウル面へと洗浄水を吐出する吐水装置と、
前記ボウル面の左右の両側部から前記ボウル面の前部まで下降しながら延びており、前記吐水装置から吐出される洗浄水の一部を前記ボウル面の前部へと導く棚部と
を備える小便器であって、
前記吐水装置は、
前記ボウル面に向けて洗浄水を吐出可能に開口する吐水開口部と、
給水源から前記吐水開口部の内部に洗浄水を供給する給水流路と
を備え、
前記吐水開口部は、
前側の壁を形成する前壁部と、前記ボウル面側となる後側の壁を形成するとともに前記ボウル面と接している後壁部とを有し、当該吐水開口部から吐出される洗浄水のうち最も水勢の強い主流部が前記棚部の上端部へと向かうように設定され
前記主流部が前記上端部の外側よりも内側において強い水勢となるように設定されること
を特徴とする小便器。
【請求項2】
小便を受けるボウル面と、
前記ボウル面の上部において前記ボウル面へと洗浄水を吐出する吐水装置と、
前記ボウル面の左右の両側部から前記ボウル面の前部まで下降しながら延びており、前記吐水装置から吐出される洗浄水の一部を前記ボウル面の前部へと導く棚部と
を備える小便器であって、
前記吐水装置は、
前記ボウル面に向けて洗浄水を吐出可能に開口する吐水開口部と、
給水源から前記吐水開口部の内部に洗浄水を供給する給水流路と
を備え、
前記吐水開口部は、
前側の壁を形成する前壁部と、前記ボウル面側となる後側の壁を形成するとともに前記ボウル面と接している後壁部とを有し、当該吐水開口部から吐出される洗浄水のうち最も水勢の強い主流部が前記棚部の上端部へと向かうように設定され、
前記吐水装置は、
前記前壁部および前記後壁部の間に形成されるスリット状の通水路と、前記通水路の前後方向の幅が一部幅狭に形成される幅狭部と、前記後壁部から前方へと突出し、前記幅狭部を形成する突出部と、前記突出部の下面から下方へと突出するとともに前記ボウル面からは離れている突起とを有すること
を特徴とする小便器。
【請求項3】
小便を受けるボウル面と、
前記ボウル面の上部において前記ボウル面へと洗浄水を吐出する吐水装置と、
前記ボウル面の左右の両側部から前記ボウル面の前部まで下降しながら延びており、前記吐水装置から吐出される洗浄水の一部を前記ボウル面の前部へと導く棚部と
を備える小便器であって、
前記吐水装置は、
前記ボウル面に向けて洗浄水を吐出可能に開口する吐水開口部と、
給水源から前記吐水開口部の内部に洗浄水を供給する給水流路と
を備え、
前記吐水開口部は、
前側の壁を形成する前壁部と、前記ボウル面側となる後側の壁を形成するとともに前記ボウル面と接している後壁部とを有し、当該吐水開口部から吐出される洗浄水のうち最も水勢の強い主流部が前記棚部の上端部へと向かうように設定され、
前記棚部の上端部は小便器前部よりも上側に位置すること
を特徴とする小便器。
【請求項4】
前記棚部は、
前記上端部の近傍が内側へと傾斜している順傾斜部、または前記上端部の近傍が平坦となっている平坦部を有すること
を特徴とする請求項に記載の小便器。
【請求項5】
前記ボウル面は、
左右の両端部から内側向きの側壁を形成するように前方へと立ち上がる左右の側面部を有し、
前記左右の側面部は、
前記ボウル面の正面視において、下方に向かうにつれて所定の角度以上の傾斜角で内側へと集束する形状であること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、ボウル面が、ボウル面の左右の両端部から内側向きの側壁を形成するように前方へと立ち上がる側面部を有し、ボウル面の中央上部に、ボウル面に向けて洗浄水を吐出するスプレッダが設けられた小便器が知られている。
【0003】
このような小便器には、ボウル面の前部をより確実に洗浄するために、ボウル面の左右の側面部からボウル面の前部にかけて棚部が設けられ、スプレッダから左右の側方に広がるように吐出された洗浄水が棚部に乗り、洗浄水が棚部にガイドされることで、棚部から流下することを抑えながらボウル面の前部まで洗浄水を到達させるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-31641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の小便器では、スプレッダから左右の側方に吐出されて棚部に乗った洗浄水が、スプレッダから吐出されて棚部の外側に広がった洗浄水のボウル面の内側へと戻る流れによって、その一部が棚部から叩き落とされ、ボウル面の前部まで到達する洗浄水に損失が生じることがある。ボウル面の前部まで到達する洗浄水に損失が生じると、汚れやすいボウル面の前部の洗浄が不十分となり、洗浄性および清潔性が低下するおそれがある。また、スプレッダから吐出された洗浄水は一様な水勢強度とすることは難しく、水勢の強弱に幅があることに配慮した狙いを設けることは不可避である。
【0006】
なお、スプレッダからの洗浄水量を増やすことで、洗浄水に損失が生じても損失分を補うことができるが、近年の節水化の流れから好ましくない。
【0007】
実施形態の一態様は、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る小便器は、小便を受けるボウル面と、前記ボウル面の上部において前記ボウル面へと洗浄水を吐出する吐水装置と、前記ボウル面の左右の両側部から前記ボウル面の前部まで下降しながら延びており、前記吐水装置から吐出される洗浄水の一部を前記ボウル面の前部へと導く棚部とを備える小便器であって、前記吐水装置は、前記ボウル面に向けて洗浄水を吐出可能に開口する吐水開口部と、給水源から前記吐水開口部の内部に洗浄水を供給する給水流路とを備え、前記吐水開口部は、前側の壁を形成する前壁部と、前記ボウル面側となる後側の壁を形成するとともに前記ボウル面と接している後壁部とを有し、当該吐水開口部から吐出される洗浄水のうち最も水勢の強い主流部が前記棚部の上端部へと向かうように設定されることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、吐水開口部から吐出される洗浄水のうち最も水勢の強い主流部が棚部に乗り、棚部にガイドされながらボウル面の前部へと到達する。その際、吐水開口部からの洗浄水のうち棚部の外側に広がった洗浄水が棚部を流れる洗浄水(主流部)に合流するが、棚部の外側に広がった(棚部に乗らなかった)洗浄水は棚部に乗った主流部に比べて少量であり、後から棚部に合流しても棚部を流れる洗浄水(主流部)を叩き落とすほどの水勢はないため、棚部に乗った洗浄水の多くをボウル面の前部へと到達させることができる。これにより、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0010】
また、上記した小便器では、前記棚部は、前記上端部の近傍が内側へと傾斜している順傾斜部、または前記上端部の近傍が平坦となっている平坦部を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、吐水開口部から吐出される洗浄水の主流部が棚部に乗りやすくなるだけでなく、主流部が棚部の入り口となる上端部に衝突した際に水勢が落ちるのを抑えることができる。また、主流部が棚部の上端部に衝突して棚部の外側に大きく広がってしまい、その後の棚部を流れる洗浄水(主流部)を叩き落とすような流れを抑制することができる。これにより、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0012】
また、上記した小便器では、前記吐水開口部は、前記主流部が前記上端部の外側よりも内側において強い水勢となるように設定されることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、吐水開口部から吐出される洗浄水の主流部が上端部の内側に衝突して、棚部に乗ってボウル面の前部に向かう流れと、上端部から内側における下方に向かう流れとが形成される。これにより、一旦は棚部に乗ったものの、その後に外側に大きく広がり、さらにその後に棚部を流れる洗浄水(主流部)を叩き落とすような流れが生じにくい。このため、棚部に乗った洗浄水の多くをボウル面の前部へと到達させることができ、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0014】
また、棚部の上端部が順傾斜部または平坦部を有する場合には、主流部よりも外側を流れる少量の洗浄水が順傾斜部または平坦部によって棚部を流れる洗浄水(主流部)に、棚部を流れる洗浄水を叩き落とすことなく、合流するようになり、多量の洗浄水をボウル面の前部に到達させることができる。これにより、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0015】
また、上記した小便器では、前記吐水装置は、前記前壁部および前記後壁部の間に形成されるスリット状の通水路と、前記通水路の前後方向の幅が一部幅狭に形成される幅狭部と、前記後壁部から前方へと突出し、前記幅狭部を形成する突出部と、前記突出部の下面から下方へと突出するとともに前記ボウル面からは離れている突起とを有することを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、吐水開口部から洗浄水が吐出された後、通水路に残存している洗浄水が突起に集まり、集まった洗浄水は突起から落下するため、通水路に残存している洗浄水を落とし切ることができる。これにより、吐水開口部からの滴々の発生を抑制することができる。
【0017】
また、上記した小便器では、前記ボウル面は、左右の両端部から内側向きの側壁を形成するように前方へと立ち上がる左右の側面部を有し、前記左右の側面部は、前記ボウル面の正面視において、下方に向かうにつれて所定の角度以上の傾斜角で内側へと集束する形状であることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、ボウル面の左右の側面部にはアールがほとんどないような、棚部の外側に広がった洗浄水の内側へと戻る流れによって棚部を流れる洗浄水(主流部)が叩き落とされやすいボウル面において、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
実施形態の一態様によれば、汚れやすいボウル面の前部をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る小便器を示す正面図である。
図2図2は、図1におけるA-A線断面図である。
図3図3は、吐水装置を示す斜視図である。
図4図4は、吐水開口部を示す模式的な正面図である。
図5図5は、ボウル面における洗浄水の流れの説明図である。
図6図6は、棚部の上端部近傍における本例の洗浄水の流れの説明図である。
図7図7は、棚部の上端部近傍における比較例の洗浄水の流れの説明図である。
図8図8は、(a)棚部の上端部近傍の一例の説明図であり、(b)棚部の上端部近傍の他の例の説明図である。
図9図9は、棚部を示す側面図である。
図10図10は、突起による排水機能の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する小便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
まず、図1および図2を参照して実施形態に係る小便器1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る小便器1を示す正面図である。図2は、図1におけるA-A線断面図である。
【0023】
なお、各図には、説明の便宜上、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。この場合、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方、Z軸の正方向を上方、Z軸の負方向を下方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0024】
また、以下では、小便器1の後述するボウル面21において、左右方向の中心線へと向かう側を内側、中心線から離れる側を外側という。
【0025】
図1および図2に示すように、小便器1は、小便器本体2と、自動洗浄ユニット3とを備える。なお、小便器1は、トイレ室の壁面に設置される壁掛け式であるが、トイレ室の床面に設置される床置き式であってもよい。
【0026】
小便器本体2は、陶器製である。なお、小便器本体2は、陶器製に限定されず、樹脂製であってもよいし、ステンレスのような金属製であってもよいし、陶器と樹脂とを組み合わせたものであってもよい。小便器本体2は、ボウル面21を有する。ボウル面21は、ボウル面21の前方に立った使用者の小便を受ける。ボウル面21は、正面部22と、左右の側面部23とを有する。
【0027】
正面部22は、その上部から下部まで使用者に対向するように開いた円弧形状(アーチ形状)に形成される。正面部22は、その上部22aが、略平坦な面であるかまたは左右方向に連続する僅かな凹状の曲面であり、その中央部22bが、左右方向に連続する凹状の曲面であるとともに前後方向に連続する凹状の曲面である。
【0028】
また、図2に示すように、正面部22の底部22cは、鉢形状に形成され、使用者の尿や後述する吐水装置32から吐出された洗浄水を集めて、底部22cに形成された排出口24へと尿や洗浄水を導く。排出口24には、目皿(図示せず)が取り付けられる。なお、排出口24に流入した尿や洗浄水は、排出口24に接続されたトラップ管路25を流れ、トラップ管路25に接続された排水管路(図示せず)へと排出される。
【0029】
左右の側面部23は、正面部22の左右の両端部から前方へと立ち上がるように形成される。すなわち、左右の側面部23は、正面部22の左右の両端部から内側向きの側壁を形成する。ボウル面21の正面視において、左右の側面部(左側面部)は、図1における一方の破線から他方の破線までの部位において、下方に向かうにつれて、アールがほとんどないような所定の角度(たとえば、水平線を0°とした場合、60°)以上の傾斜角で内側へと集束する形状である。このため、ボウル面21を前方から見ると、縦長の略二等辺三角形である。
【0030】
また、ボウル面21は、棚部26をさらに有する。棚部26は、ボウル面21に設けられる。棚部26は、ボウル面21から内側へと突出して段状に形成され、ボウル面21の左右の両側部(正面部22の左右の両側部、または左右の側面部23)からボウル面21の前部27まで下降しながら延びている。棚部26は、吐水装置32から吐出される洗浄水の一部が乗ることで、洗浄水の一部を前部27へと導く。
【0031】
自動洗浄ユニット3は、制御装置31と、吐水装置32とを備える。制御装置31は、後述する人体検知センサなどからの検知信号および所定の制御プログラムなどに基づいて、各部を制御する。なお、制御装置31は、小便器本体2に収納部がある場合には、収納部の内部に設置されてもよいし、小便器本体2に収納部がない場合には、たとえば、トイレ室の壁内に設置されてもよい。
【0032】
吐水装置32は、ボウル面21における正面部22の上部22aに配置される。吐水装置32は、正面部22の上部22aにおいて、ボウル面21へと洗浄水を吐出する。なお、吐水装置32については、図3および図4などを用いて後述する。
【0033】
また、自動洗浄ユニット3は、制御装置31および吐水装置32の他、図示しない、給水管、流量調整弁、開閉弁、給水流路および人体検知センサをさらに備える。給水管は、水道などの給水源から洗浄水を供給する管である。流量調整弁は、給水管に設けられ、給水管を開閉する弁である。開閉弁は、給水管に設けられ、洗浄水を供給および停止する弁である。給水流路は、開閉弁から吐水装置32へと洗浄水を供給する流路である。なお、吐水装置32は、給水流路の先端部に取り付けられる。
【0034】
人体検知センサは、小便器1(ボウル面21)の前方に立つ使用者を検知するセンサである。自動洗浄ユニット3では、たとえば、使用者が小便器1の前方に立つと、人体検知センサが使用者を検知し、検知信号を制御装置31へと送信し、制御装置31が検知信号を受信すると、制御装置31が使用者の存在を認識する。
【0035】
また、自動洗浄ユニット3では、使用者が小便器1のボウル面21に放尿を終え、放尿を済ませた使用者が小便器1の前方から立ち去り、人体検知センサが非検知状態となると、制御装置31は使用者が立ち去ったと判断する。
【0036】
制御装置は、使用者が立ち去ったと判断すると、洗浄動作を開始する。なお、小便器1における洗浄動作には、制御装置31が配管などの設備保護のために必要と判断した場合には小便器1に洗浄水を流す洗浄動作を開始する、いわゆる設備保護洗浄動作が含まれてもよい。
【0037】
次に、図3および図4を参照して吐水装置32について説明する。図3は、吐水装置32を示す斜視図である。なお、図3には、前面板を取り外した状態を示している。図4は、吐水開口部33を示す模式的な正面図である。図3に示すように、吐水装置32は、円管形状のスプレッダであり(以下、吐水装置32をスプレッダという)、吐水開口部33と、給水流路(以下、スプレッダ給水流路という)34とを備える。
【0038】
吐水開口部33は、ボウル面21に向けて洗浄水を吐出可能に開口する開口部である。給水流路34は、水道などの給水源から給水管、流量調整弁、開閉弁および給水流路を流れてきた洗浄水を吐水開口部33の内部に供給する流路である。スプレッダ給水流路34は、円管形状であり、ボウル面21の裏側(壁側)から表側に延びており、スプレッダ32の内部に供給された洗浄水を吐水開口部33に供給する。
【0039】
なお、スプレッダ給水流路34は、上記した開閉弁(図示せず)の下流側に配置されており、開閉弁が開弁状態から閉弁状態へと変化した直後では、スプレッダ給水流路の内部が洗浄水で満たされた状態であり、開閉弁の下流側に存在し、かつ、吐水されていない洗浄水が残水として徐々に吐水開口部から流出するようになるが、スプレッダ給水流路34が円管形状であるため、残水がスプレッダ給水流路34から徐々に流出するときには、残水が中央へと集まりながら流出する。
【0040】
吐水開口部33は、上壁331と、前壁部332と、後壁部333と、通水路334と、突出部335と、幅狭部336と、突起337とを有する。上壁331は、吐水開口部33の左右の上端面を形成する。前壁部332は、吐水開口部33の内部に設けられ、吐水開口部33の前側(前方側)の壁を形成する。前壁部332では、スプレッダ給水流路34から供給された洗浄水が衝突して左右に広がる。
【0041】
後壁部333は、吐水開口部33の内部に設けられ、ボウル面21側となる後側(後方側)の壁を形成する。後壁部333は、ボウル面21と接している。通水路334は、前壁部332と後壁部333との間において、スリット状に形成される。通水路334は、左右方向に扇形状に開口しており、左右の上壁と前壁部と後壁部との間において、扇形の開口通路を形成する。このような吐水開口部33は、洗浄水を、左右方向に広がるように吐出する。また、この場合、スプレッダから吐出された洗浄水は、一様な水勢強度とすることは難しく、水勢の強弱に幅があることに配慮した吐水方向の狙い付けをしなければならない。
【0042】
後壁部333は、その中央の上部領域において、スプレッダ給水流路34の出口と接続されている。突出部335は、後壁部333に設けられる。突出部335は、後壁部333から前壁部332に向けて台状に突出する、すなわち、前方へと突出している。幅狭部は、突出部335によって通水路334に形成される。幅狭部336は、通水路334の前後方向の幅を一部幅狭とする。
【0043】
突起337は、前後方向に長い矩形ブロック状であり、突出部335の下面に設けられ、突出部335の下面から下方へと突出している。また、突起337は、ボウル面21からは離れている。すなわち、突起337は、ボウル面21に対しては所定間隔をあけて設けられている。なお、突起337は、たとえば、左右の幅が0.5mm程度、上下の高さ(厚み)が0.5mm程度に形成される。
【0044】
このような突起337は、たとえば、スプレッダ32の組み付け時において、組み付け作業者が触手によって識別可能な目印にもなる。また、このような突起337は、突出部335の下面にあるため視覚方向的に見難い部分であるが、触覚で分かるようにすることも配慮していることになる。
【0045】
このような吐水開口部33では、吐水開口部33から吐出される洗浄水Wのうち、吐水開口部33の正面視における扇形の端(辺)の近傍において、吐水される幅範囲に限定されず、最も水勢の強い主流部W1が吐出される。また、このような吐水開口部33では、主流部W1の内側において、主流部よりも水勢の弱い洗浄水W2が吐出される。したがって、吐水開口部33では、主流部W1の吐水方向を、上壁331の左右方向の幅(すなわち、上壁331の左右の開放角度α)を調整することで、設定することができる。
【0046】
次に、図5を参照して、スプレッダ32(吐水開口部33)から吐出される洗浄水Wの吐水方向、およびボウル面21における洗浄水Wの流れの態様について説明する。図5は、ボウル面21における洗浄水Wの流れの説明図である。なお、図5には、小便器1の斜視図を示している。図5に示すように、スプレッダ32から吐出される洗浄水Wの主流部W1、すなわち、吐水開口部33(図4参照)から吐出される洗浄水Wの主流部W1は、棚部26の上端部26aへと向かうように設定される。
【0047】
吐水開口部33から吐出された主流部W1は、棚部26の上端部26aへと向かい、上端部26aから棚部26の上面26bに乗り、棚部26の上面26bを流れてボウル面21の前部27へと到達する。この場合、吐水開口部33から吐出された洗浄水Wは、棚部26よりも外側への広がりが抑えられるため、主流部W1よりも内側に主流部W1よりも水勢の弱い洗浄水W2が吐出される。
【0048】
ここで、図6および図7を参照して棚部26における洗浄水Wの流れについてさらに説明する。図6は、棚部26の上端部26a近傍における本例の洗浄水Wの流れの説明図である。図7は、棚部26の上端部26a近傍における比較例の洗浄水Wの流れの説明図である。なお、図6および図7には、棚部26の上面26bをガイドされながら流れる洗浄水Wの態様を模式的に示している。
【0049】
図6に示すように、本例(本実施形態)では、吐水開口部33(図4参照)から棚部26の上端部26aに向けて吐出された洗浄水Wの主流部W1は、棚部26の上端部26aから棚部26の上面26bに乗り、上面26bにガイドされながらボウル面21の前部27(図5参照)まで流れる。
【0050】
この場合、吐水開口部33は、主流部W1が棚部26の上端部26aの外側よりも内側において強い水勢となるように、洗浄水Wの吐水方向が設定される。吐水開口部33は、主流部W1が棚部26の上端部26aの中心線Lよりも内側に向かうように、洗浄水Wの吐水方向が設定される。
【0051】
図7に示すように、比較例では、吐水開口部33から吐出された洗浄水Wは、主流部W1が棚部26よりも外側に向かうように吐水方向が設定される。この場合、棚部26よりも外側に広がった主流部W1は、左右の側面部(左側面部)23を流れており、下方へと流れる途中で重力によって、より内側の棚部26へと向かう流れとなる。
【0052】
そして、外側から棚部26に向かう主流部W1には重力加速度が付加されており、強い水勢のまま棚部26の上面26bを流れる洗浄水Wに衝突して、棚部26の上面26bから洗浄水Wを叩き落としてしまう。このため、比較例では、ボウル面21の前部27(図5参照)まで到達する洗浄水Wが少量となる。
【0053】
これに対し、本例では、吐水開口部33から吐出された洗浄水Wの棚部26よりも外側への広がりが抑えられるため、一旦外側に広がった強い水勢の洗浄水Wが棚部26の上面26bを流れる洗浄水Wに衝突して棚部26の上面26bから洗浄水Wを叩き落とすことはない。
【0054】
次に、図8を参照して棚部26の上端部26a近傍における上面26bの形状について説明する。図8(a)は、棚部26の上端部26a近傍の一例の説明図である。図8(b)は、棚部26の上端部26a近傍の他の例の説明図である。なお、図8(a),(b)には、棚部26の上端部26a近傍における上下方向の模式的な断面図を示している。
【0055】
上記したように、棚部26は、洗浄水Wが流れる上面26bを有する。図8(a)に示すように、棚部26の上面26bは、上端部26aにおいて、ボウル面21の内側に傾斜している順傾斜部261を有する。
【0056】
また、図8(b)に示すように、棚部26の上面26bは、上端部26aにおいて、水平方向に平坦となっている平坦部262を有する。なお、平坦部262は、厳密な平坦でなくてよく、略平坦であればよい。
【0057】
ここで、図9を参照して棚部26の全体の形状について説明する。図9は、棚部26を示す側面図である。棚部26は、上記したように、ボウル面21の左右側部の領域からボウル面21の前部27の領域まで下降しながら延びており、ボウル面21の左右側部の領域上を流下する洗浄水の一部を前部27の領域へと導く。
【0058】
また、図9に示すように、棚部26は、ボウル面21に対して左右方向に延びた平面である、上記した上面26bを形成する。このような棚部26の上面26bは、洗浄水が流れやすいような流路を形成し、洗浄水を棚部26に沿って棚部26の左右の下端部まで導くことができる。このように、棚部26を設けることで、比較的少量の洗浄水でも、ボウル面21の前部27の領域まで洗浄水を到達させることができ、ボウル面21を広範囲において確実に洗浄することができる。
【0059】
また、棚部26は、その上部領域において、ボウル面21の内側を向いて傾斜している、図8(a)示す順傾斜部(第1順傾斜部という)261と、内側向きのボウル面21に対して外側を向いて傾斜している傾斜面である逆傾斜部263と、棚部26の下部領域において、ボウル面21の内側を向いて傾斜している傾斜面である第2順傾斜部264とを有する。棚部26は、小便器本体2(または、ボウル面21)の左右の中心線に対して左右対称となるように形成される。
【0060】
なお、棚部26は、その上端部26aを図8(b)に示す平坦部262とする場合は、上方から、平坦部262、第1順傾斜部261、逆傾斜部263、第2順傾斜部264の順に配置される。
【0061】
次に、図10を参照して吐水開口部33の突起337による排水機能について説明する。図10は、突起337による排水機能の説明図である。なお、図10には、吐水開口部33の模式的な正面図を示している。上記したように、吐水開口部33における突出部335の下面には突起337が設けられる。
【0062】
図10に示すように、突出部335の中央に配置された突起337には、通水路334(図4参照)に残存している洗浄水W(残水W3)が重力によって、たとえば、左右方向から集まる。集まった残水W3は、水膜効果によって所定の量になるまで保持され、所定の量に達すると突起337から落下する。これにより、通水路334の残水W3をボウル面へと落とし切ることができる。
【0063】
以上説明したように、実施形態に係る小便器1によれば、吐水開口部33から吐出される洗浄水Wのうち最も水勢の強い主流部W1が棚部26に乗り、棚部26にガイドされながらボウル面21の前部27へと到達する。その際、吐水開口部33からの洗浄水Wのうち棚部26の外側に広がった洗浄水Wが棚部26を流れる洗浄水W(主流部W1)に合流するが、棚部26の外側に広がった洗浄水Wは棚部26に乗った主流部W1に比べて少量であり、後から棚部26に合流しても棚部26を流れる洗浄水W(主流部W1)を叩き落とすほどの水勢はないため、棚部26に乗った洗浄水Wの多くをボウル面21の前部27へと到達させることができる。これにより、汚れやすいボウル面21の前部27をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0064】
また、棚部26がその上端部26aの近傍において順傾斜部261または平坦部262を有することで、吐水開口部33から吐出される洗浄水Wの主流部W1が棚部26に乗りやすくなるだけでなく、主流部W1が棚部26の上端部26aに衝突した際に水勢が落ちるのを抑えることができる。また、主流部W1が棚部26の上端部26aに衝突して棚部26の外側に大きく広がってしまい、その後の棚部26を流れる洗浄水W(主流部W1)を叩き落とすような流れを抑制することができる。これにより、汚れやすいボウル面21の前部27をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0065】
また、吐水開口部33において、主流部W1が上端部26aの外側よりも内側において強い水勢となるように設定されるため、吐水開口部33から吐出される洗浄水Wの主流部W1が上端部26aの内側に衝突して、棚部26に乗ってボウル面21の前部27に向かう流れと、上端部26aから内側における下方に向かう流れとが形成される。これにより、一旦は棚部26に乗ったものの、その後に外側に大きく広がり、さらにその後に棚部26を流れる洗浄水W(主流部W1)を叩き落とすような流れが生じにくい。このため、棚部26に乗った洗浄水Wの多くをボウル面21の前部27へと到達させることができ、汚れやすいボウル面21の前部27をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0066】
また、棚部26の上端部26aが順傾斜部261または平坦部262を有する場合には、主流部W1よりも外側を流れる少量の洗浄水Wが順傾斜部261または平坦部262によって棚部26を流れる洗浄水W(主流部W1)に、棚部26を流れる洗浄水Wを叩き落とすことなく、合流するようになり、多量の洗浄水Wをボウル面21の前部27に到達させることができる。これにより、汚れやすいボウル面21の前部27をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0067】
また、吐水開口部33において、突出部335の下面に突起337が設けられることで、吐水開口部33から洗浄水Wが吐出された後、通水路334に残存している洗浄水W(残水W3)が突起337に集まり、集まった洗浄水W(残水W3)は突起337から落下するため、通水路334の残水W3を落とし切ることができる。これにより、吐水開口部33からの滴々の発生を抑制することができる。
【0068】
また、ボウル面21において、ボウル面21を正面から見て、左右の側面部23が下方に向かうにつれて所定の角度(たとえば、60°)以上の傾斜角で内側へと集束する形状であることで、左右の側面部23にはアールがほとんどないような形状となる。このような、棚部26の外側に広がった洗浄水Wの内側へと戻る流れによって棚部26を流れる洗浄水W(主流部W1)が叩き落とされやすいボウル面21において、汚れやすいボウル面21の前部27をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0069】
なお、上記した実施形態では、自動洗浄ユニット3および吐水装置(スプレッダ)32を有し、ボウル面21への洗浄水の吐水を自動で行う構成であるが、これに限定されず、たとえば、ボウル面21への洗浄水の吐水を手動操作で行う構成であってもよい。このような構成であっても、上記した実施形態と同様、棚部26に乗った洗浄水の多くをボウル面21の前部27へと到達させることができ、これにより、汚れやすいボウル面21の前部27をより確実に洗浄することができ、洗浄性および清潔性を向上させることができる。
【0070】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 小便器
21 ボウル面
23 側面部
26 棚部
26a 上端部
27 前部
32 吐水装置(スプレッダ)
33 吐水開口部
34 給水流路(スプレッダ給水流路)
261 順傾斜部
262 平坦部
332 前壁部
333 後壁部
334 通水路
335 突出部
336 幅狭部
337 突起
W 洗浄水
W1 主流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10