(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】二次電池の検査方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H01M10/48 A
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2020215147
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2020104538
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 慎太郎
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131076(JP,A)
【文献】特開2010-277873(JP,A)
【文献】特開2019-087485(JP,A)
【文献】特開2019-087409(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111077(WO,A1)
【文献】特開2013-098132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池を構成する複数の単電池の再利用の可否を検査するための二次電池の検査方法であって、
前記組電池から解体された前記単電池に対して、前記組電池を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、拘束するステップと、
前記単電池の露出している平面部分の変形量を測定するステップと、
前記単電池の前記変形量がしきい値よりも高い場合には、前記単電池の再利用が不可能であると判定し、前記変形量が前記しきい値よりも低い場合には、前記単電池の再利用が可能であると判定するステップとを含む、二次電池の検査方法。
【請求項2】
前記検査方法は、拘束荷重を作用させた状態で予め定められた期間が経過するまで前記単電池を保管するステップと、
保管後の前記変形量が前記しきい値よりも高い場合には、前記単電池の再利用が不可能であると判定し、保管後の前記変形量が前記しきい値よりも低い場合には、前記単電池の再利用が可能であると判定するステップとをさらに含む、請求項1に記載の二次電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される組電池を構成する複数の二次電池が再利用可能であるか否かを検査する技術が知られている。
【0003】
たとえば、特開2016-131076号公報(特許文献1)には、二次電池の再利用可能であるか否かについて以下のように判定する技術が開示されている。すなわち、組電池の圧縮荷重が測定され、測定された圧縮荷重がしきい値以下であると判定された組電池については二次電池の分離が可能であり、かつ、二次電池の再利用が可能であると判定される。また、圧縮荷重がしきい値以下でないと判定された組電池については、組電池の状態で再利用可能な状態であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、組電池の状態で圧縮荷重を測定する場合には、複数の二次電池において生じる荷重上昇が平均化された値が測定されることになるため、複数の二次電池のいずれかにおいても再利用可能であるか否かを判定することができない場合がある。さらに、複数の二次電池のうちの一部において内圧上昇が小さい場合には、他の二次電池において異常が発生している場合でも組電池の圧縮荷重がしきい値未満となり、二次電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定することができない場合がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、組電池を構成する複数の二次電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定する二次電池の検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に係る二次電池の検査方法は、組電池を構成する複数の単電池の再利用の可否を検査するための二次電池の検査方法である。この検査方法は、組電池から解体された単電池に対して、組電池を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、拘束するステップと、単電池の露出している平面部分の変形量を測定するステップと、単電池の変形量がしきい値よりも高い場合には、単電池の再利用が不可能であると判定し、変形量がしきい値よりも低い場合には、単電池の再利用が可能であると判定するステップとを含む。
【0008】
このようにすると、組電池から解体された単電池に対して、組電池を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、拘束した状態で、単電池の露出している平面部分の変形量が測定されるので、変形量に基づいて組電池を構成する単電池が再利用可能であるか否かを精度高く判定することができる。
【0009】
ある実施の形態において、検査方法は、拘束荷重を作用させた状態で予め定められた期間が経過するまで単電池を保管するステップと、保管後の変形量がしきい値よりも高い場合には、単電池の再利用が不可能であると判定し、保管後の変形量がしきい値よりも低い場合には、単電池の再利用が可能であると判定するステップとをさらに含む。
【0010】
このようにすると、たとえば、解体された時点の単電池の変形量がしきい値よりも高い場合でも、経時変化によって変形量がしきい値よりも低くなる場合に当該単電池の再利用が可能であると判定することができる。そのため、単電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、組電池を構成する複数の二次電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定する二次電池の検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態における組電池の構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る二次電池の検査方法による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】単電池の拘束方法の一例を説明するための図である。
【
図5】単電池の上面部分における計測位置を説明するための図である。
【
図6】変形例における単電池の変形量の測定位置の一例を説明するための図である。
【
図7】変形例において、測定位置を含み、単電池の幅方向の端面と平行な平面による単電池の断面を示す図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る二次電池の検査方法による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態における組電池1の構成の一例を示す図である。
図2は、組電池1の上面の構成の一例を示す図である。
【0015】
図1および
図2に示すように、組電池1は、エンドプレート7,8と、拘束バンド9と、複数の単電池10と、複数の冷却板20とを備える。複数の単電池10は、列置方向L(
図2参照)に沿って一列に複数個(たとえば、10個)配置される。また、複数の単電池10は、厚さ方向の端面が隣接する単電池10の厚さ方向の端面と対向するように配置される。複数の冷却板20は、複数の単電池10の間の各々に設けられる。複数の単電池10と冷却板20とによって電池列40が形成されている。
【0016】
電池列40には、列置方向Lから挟み込むようにエンドプレート7,8が設けられる。電池列40およびエンドプレート7,8には、列置方向Lについてエンドプレート7,8間の距離が拡大することを抑制するように拘束バンド9が設けられる。
【0017】
拘束バンド9は、単電池10の上面側であって、かつ、幅方向についての両端部と、単電池10の下面側であって、かつ、幅方向についての両端部との4個所に設けられる。
【0018】
単電池10は、密閉型の二次電池であり、上面に開口部を有する直方形状の電池ケース11と、開口部を閉塞(封止)する蓋体13と、電池ケース11内に収容される扁平形状の電極体(図示せず)とを含む。蓋体13には、安全弁13jと、正極外部端子19bと、負極外部端子19cとが設けられる。蓋体13の全周が溶接によって電池ケース11の開口部に接合されている。これにより、単電池10内が密閉状態とされている。安全弁13jは、単電池10の内圧が上昇して開弁圧に達すると、安全弁13jが開裂することで単電池10の密閉状態を解放し、単電池10内のガスを電池外部に排出する。
【0019】
電極体は、たとえば、シート状の正極および負極をシート状のセパレータを介して捲回して構成される。この電極体には、正極外部端子19bと電気的に接続する正極接続部材と、負極外部端子19cと電気的に接続する負極接続部材とが溶接されている。
【0020】
本実施の形態の組電池1では、複数の単電池10と冷却板20とからなる電池列40に対し、この電池列40を挟むエンドプレート7,8によって列置方向Lに所定の拘束荷重(圧縮荷重)を加えた状態で、これらを4つの拘束バンド9を組み付けることにより、電池列40とエンドプレート7,8とが一体的に拘束される。
【0021】
また、
図1および
図2に示すように、組電池1では、列置方向Lにおいて隣り合う単電池10の正極外部端子19bと負極外部端子19cとが、バスバー3により電気的に接続されている。
【0022】
より詳細には、バスバー3は、矩形形状の金属板によって構成され、正極外部端子19bおよび負極外部端子19cを挿通可能とする貫通孔が2つ形成されている。バスバー3の一方の貫通孔内に正極外部端子19bを挿通させた状態で、正極外部端子19bの雄ねじにナット5を螺合させて、正極外部端子19bとバスバー3とが締結される。さらに、他方の貫通孔内に負極外部端子19cを挿通させた状態で、負極外部端子19cの雄ねじにナット5を螺合させて、負極外部端子19cとバスバー3とが締結される。このようにして、隣接する単電池10がバスバー3によって接続されることによって、組電池1を構成する複数の単電池10が電気的に直列に接続される。
【0023】
上述したような構成を有する組電池1は、たとえば、ハイブリッド自動車や電気自動車(以下、ハイブリッド自動車等と記載する)の駆動用電源として使用される。ハイブリッド自動車等の駆動用電源として使用されていた組電池1は、何らかの理由(たとえば、ハイブリッド自動車等を廃車にする場合や新しい組電池への交換等)により、ハイブリッド自動車等から取り外されて、市場から回収される。このように市場から回収された組電池1においては、組電池1自体が再利用可能であったり、あるいは、再利用可能な状態の単電池10が含まれていたりする場合がある。
【0024】
そのため、たとえば、以下のような検査によって、再利用可能か否かの判定が行なわれる場合を想定する。すなわち、組電池1の拘束荷重が測定され、測定された拘束荷重がしきい値以下であると判定された組電池1については、単電池10の分離が可能であり、かつ、単電池10の再利用が可能であると判定されるものとする。また、拘束荷重がしきい値以下でないと判定された組電池1については、組電池1の状態で再利用可能な状態であると判定されるものとする。
【0025】
しかしながら、上述のように組電池1の状態で拘束荷重を測定する場合には、複数の単電池10において生じる荷重上昇が平均化された値が測定されることになるため、複数の単電池10の各々が再利用可能であるか否かを判定することができない場合がある。さらに、複数の単電池10の一部において内圧上昇の程度が小さい場合には、他の単電池10において内圧上昇の程度が大きい場合でも、組電池1の状態での拘束荷重がしきい値以下となる場合には、異常判定できない場合がある。その結果、単電池10の再利用が可能であるか否かを精度高く判定することができない場合がある。
【0026】
そこで、本実施の形態においては、二次電池の検査方法として少なくとも以下の処理が行なわれる。すなわち、組電池1から解体された単電池10に対して、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、単電池10が拘束される。そして、拘束された単電池10の露出している平面部分の変形量が測定される。単電池10の変形量がしきい値よりも高い場合には、単電池10の再利用が不可能であると判定される。また、変形量がしきい値よりも低い場合には、単電池10の再利用が可能であると判定される。
【0027】
このようにすると、変形量に基づいて組電池1を構成する単電池10が再利用可能であるか否かを精度高く判定することができる。
【0028】
以下、本実施の形態に係る二次電池の検査方法について詳細に説明する。
図3は、第1の実施の形態に係る二次電池の検査方法による処理の一例を示すフローチャートである。
【0029】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100において、使用済の組電池1が回収される。たとえば、車両(新車または中古車等)の販売店においてハイブリッド自動車等から組電池1が回収される。なお、回収された組電池1を特定する情報がサーバ等に登録されてもよい。組電池1を特定する情報は、たとえば、製造番号やシリアル番号などの製造段階で付与される情報であってもよいし、組電池1の回収時に整理番号として付与される情報であってもよい。
【0030】
S102にて、組電池1が解体されるとともに、組電池1から複数の単電池10が回収される。具体的には、組電池1に設けられる拘束バンド9と、複数の単電池10間を接続するバスバー3とが取り外されることによって組電池1が解体され、解体された組電池1から複数の単電池10が回収される。なお、回収された単電池10を特定する情報が上述のサーバ等に登録されてもよい。単電池10を特定する情報は、たとえば、製造番号やシリアル番号などの製造段階で付与される情報であってもよいし、組電池1の解体時に整理番号として付与される情報であってもよい。
【0031】
S104にて、回収された単電池10が拘束される。回収された複数の単電池10のうちのいずれかが拘束される。単電池10は、後述するようにその上面部分の変形量が測定できるように上面部分を露出した状態で拘束される。拘束対象の単電池10は、たとえば、上述のサーバ等に登録された複数の単電池のうちの後述する再利用の可否が判定済でない単電池10が選択される。
【0032】
図4は、単電池10の拘束方法の一例を説明するための図である。
図4に示すように、たとえば、3個の単電池10が厚さ方向の端面が対向するように配置され、3個の単電池10による電池列が構成される。3個の単電池10によって構成される電池列の配置方向について両端部が2つのエンドプレート7aによって挟み込まれる。3個の単電池10によって構成される電池列と2つのエンドプレート7aとに対して、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させた状態で、3個の単電池10と2つのエンドプレート7aとが拘束バンド9aを用いて拘束される。拘束バンド9aは、単電池10の上面側であって、かつ、幅方向についての両端部と、単電池10の下面側であって、かつ、幅方向についての両端部との4個所に設けられる。単電池10の拘束は、たとえば、3個の単電池10により構成される電池列および2つのエンドプレート7a対して、配置方向についての拘束荷重を作用させる装置と、拘束バンド9aを電池列および2つのエンドプレート7aに組み付ける装置と、それらの装置の動作を制御する制御装置とを用いて行なわれる。拘束対象の単電池10の厚さ方向の端面には、たとえば、拘束荷重を検出する検出装置が設けられてもよい。拘束バンド9aの長さは、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重が維持されるように調整されてもよいし、あるいは、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重を単電池10に対して作用されるように調整機構により調整可能としてもよい。
【0033】
S106にて、拘束された単電池10の電池特性値が測定される。本実施の形態においては、たとえば、電池容量値(満充電容量値)と内部抵抗値とが電池特性値として測定される。
【0034】
単電池10の電池容量は、公知の方法により測定される。たとえば、電池容量の測定対象となる単電池10は、SOC(State Of Charge)が100%(これに対応する電池電圧値)になるまで充電される。その後、SOCが0%(これに対応する電池電圧値)になるまで一定の電流値で当該単電池10が放電される。このときの放電電気量(放電電流の時間積算値)が、単電池10の電池容量値として測定される。
【0035】
また、単電池10の抵抗値についても公知の方法により測定される。たとえば、抵抗値の測定対象となる単電池10のSOCが60%の状態に調整される。そして、25℃の温度環境下で、1Cの一定電流値で10秒間の放電が当該単電池10に対して行なわれた後に電池電圧が測定される。さらに、放電電流値だけを、3C、5Cおよび10Cと異ならせて、それ以外は上記と同様の条件の放電が行なわれた後に電池電圧が測定される。その後、たとえば、横軸を放電電流値とし、縦軸を放電終了時の電池電圧値とした座標平面に、上記の放電により得られたデータがプロットされ、作成されたプロットデータに基づいて、最小二乗法により近似直線(一次式)が算出され、その傾きが単電池10の内部抵抗値として測定される。単電池10の電池特性値の測定は、たとえば、測定対象の単電池10の電流を検出する電流検出装置と、測定対象の単電池の電圧を検出する電圧検出装置と、単電池10を充電する充電装置と、放電電流を可変としつつ、単電池10を放電する放電装置と、充電装置および放電装置を制御可能な制御装置を用いて行なわれる。なお、制御装置は、電流検出装置の検出結果と、電圧検出装置の検出結果とを取得し、それらの検出結果を用いて充電装置および放電装置を制御しつつ、検出結果を用いてプロットデータの作成などの各種演算等を実行可能とする。
【0036】
S108にて、測定された電池特性値が許容範囲内であるか否かが判定される。たとえば、電池容量値についての許容範囲と、内部抵抗値についての許容範囲とが予め設定される。測定された電池容量値が電池容量値についての許容範囲内であって、かつ、測定された内部抵抗値が内部抵抗値についての許容範囲内である場合に、電池特性値が許容値範囲内であると判定される。電池特性値の判定は、たとえば、上述の制御装置を用いて行なわれる。制御装置のメモリには、電池容量値についての許容範囲と内部抵抗値についての許容範囲とが予め記憶される。
【0037】
電池特性値が許容範囲内であると判定される場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。なお、電池特性値が許容範囲内でないと判定される場合(S108にてNO)、処理はS114に移される。
【0038】
S110にて、測定対象となる単電池10の変形量が測定される。変形量の測定は、単電池10において露出している平面部分に予め設定される計測位置に対して行なわれる。本実施の形態においては、測定対象となる単電池10の上面部分の変形量が測定される。
図5は、単電池の上面部分における計測位置を説明するための図である。
図5には、
図4のA点、B点およびC点を含み、単電池10の幅方向の端面と平行な平面による、3個の単電池10に構成される電池列の断面図が示される。単電池10の上面部分の計測位置は、
図5に示すように、測定対象の単電池10の厚さ方向の両端部の位置(A点およびC点)と、中央部の位置(B点)とを含む。A点とB点とC点とは、単電池10の厚さ方向について一直線上に設定される。
【0039】
単電池10の変形量は、たとえば、レーザ変位計を用いて測定される。レーザ変位計は、レーザ変位計から測定位置までの距離を測定する。
図4および
図5の矢印に示すように、レーザ変位計を用いてレーザ変位計からA点、B点およびC点までの距離がそれぞれ測定される。A点とレーザ変位計までの距離と、C点とレーザ変位計までの距離の平均値が算出される。B点とレーザ変位計までの距離から算出された平均値を減算した値が測定対象となる単電池10の変形量として算出される。変形量の測定は、上述の制御装置を用いて行なわれる。
【0040】
S112にて、単電池10の変形量が許容範囲内であるか否かが判定される。たとえば、S110にて取得された変形量がしきい値を超えている場合に、単電池10の変化量が許容範囲内でない(単電池10が変形している)と判定される。変形の有無の判定は、たとえば、上述の制御装置を用いて行なわれる。上述の制御装置のメモリには、しきい値が予め記憶される。しきい値は、たとえば、実験等により適合される予め定められた値である。単電池10の変形量が許容範囲内でないと判定される場合(S112にてNO)、処理はS114に移される。
【0041】
S114にて、測定対象となる単電池10の再利用が不可能であると判定される。上述の制御装置は、たとえば、測定対象となる単電池10の再利用が不可能であると判定される場合には、測定対象となる単電池10を特定するための情報と再利用が不可能であるという情報と再利用の可否が判定済であることを示す情報とを関連づけてメモリ等の記憶装置に記憶する。測定対象となる単電池10を特定するための情報は、たとえば、製造番号やシリアル番号等の製造段階で付与される情報であってもよいし、あるいは、組電池1の解体時に整理番号として付与される情報であってもよい。上述の制御装置は、メモリに記憶された情報を上述のサーバに登録してもよい。その後に処理はS118に移される。
【0042】
なお、S110にて取得された変形量がしきい値以下である場合には、単電池10の変形量が許容範囲内である(すなわち、単電池10が変形していない)と判定される。単電池10の変形量が許容範囲内であると判定される場合(S112にてYES)、処理はS116に移される。
【0043】
S116にて、測定対象となる単電池10の再利用が可能であると判定される。上述の制御装置は、たとえば、測定対象となる単電池10の再利用が可能であると判定される場合には、測定対象となる単電池を特定するための情報と再利用が可能であるという情報と再利用の可否が判定済であることを示す情報とを関連付けてメモリ等の記憶装置に記憶する。上述の制御装置は、メモリに記憶された情報を上述のサーバに登録してもよい。その後に処理はS118に移される。
【0044】
S118にて、全ての単電池10の判定が完了した否かが判定される。上述の制御装置は、たとえば、記憶装置に記憶された情報や上述のサーバに登録された情報を用いて、回収された単電池10のうちの再利用の可否が判定済でない単電池10がない場合には、全ての単電池10の判定が完了したと判定する。全ての単電池10の再利用の可否についての判定が完了したと判定される場合(S118にてYES)、この処理は終了する。一方、全ての単電池10の再利用の可否についての判定が完了していないと判定される場合(S118にてNO)、処理はS104に戻される。
【0045】
以上のようなフローチャートに基づく本実施の形態に係る二次電池の検査方法による一連の動作の一例について説明する。
【0046】
たとえば、車両の販売店においてハイブリッド自動車等から組電池1が回収されると(S100)、解体されて複数の単電池10が回収される(S102)。回収された複数の単電池10のうちの再利用の可否が判定済でないいずれかが拘束され(S104)、拘束された単電池10の電池特性値が測定される(S106)。測定された電池特性が許容範囲内である場合には(S108にてYES)、単電池10の変形量が測定される(S110)。測定された単電池10の変形量がしきい値を超えている場合には単電池10の変形量が許容範囲内でないと判定され(S112にてNO)、測定対象となる単電池10の再利用が不可であると判定される(S114)。一方、変形量がしきい値以下である場合には単電池10の変形量が許容範囲内であると判定され(S112にてYES)、測定対象となる単電池10の再利用が可能であると判定される(S116)。このような再利用の可否の判定は、全ての単電池10に対して行なわれるまで実施される(S118にてNO)。
【0047】
以上のようにして、本実施の形態に係る二次電池の検査方法によると、組電池1から解体された単電池10に対して、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、拘束した状態で、単電池10の上面部分の変形量が測定されるので、変形量に基づいて組電池1を構成する単電池10が再利用可能であるか否かを精度高く判定することができる。したがって、組電池を構成する複数の二次電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定する二次電池の検査方法を提供することができる。
【0048】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、単電池10の変形量の測定位置を単電池10の上面部分に設定するものとして説明したが、単電池10の変形量の測定位置として単電池10の上面部分に特に限定されるものではない。単電池10の変形量の測定位置は、少なくとも単電池10において変形が発生しやすい部位であって、かつ、拘束された状態で露出した平面部分であればよく、たとえば、単電池10の幅方向の端面部分に設定されてもよいし、あるいは、単電池10の下面部分に設定されてもよい。
【0049】
さらに上述の実施の形態では、単電池10の変形量の測位位置として単電池10の上面部分に設定されたA点とB点とC点との3個所の測定位置を例示したが、測定位置の個数としては、3個所に限定されるものではなく、4個所以上の測定位置であってもよいし、あるいは、たとえば、A点からC点までの間の変形量を連続的に取得してもよい。
【0050】
図6は、変形例における単電池10の変形量の測定位置の一例を説明するための図である。
図7は、変形例において、測定位置を含み、単電池10の幅方向の端面と平行な平面による単電池10の断面を示す図である。なお、
図6および
図7のA点およびC点は、
図4および
図5のA点およびC点に相当する。
図6および
図7に示すように、単電池10の変形量を測定する場合には、レーザ変位計を用いてA点からC点までの間の変形量が連続的に取得され、取得された変形量のうちの最大値がしきい値を超えているか否かによって単電池10が変形しているか否かが判定されてもよい。
【0051】
さらに上述の実施の形態では、単電池10を拘束する処理において、3個の単電池10を含む電池列をエンドプレート7aで挟み込んで拘束する場合を一例として説明したが、単電池10の電池列の個数として3個に限定されるものではなく、1個、2個または4個以上としてもよい。
【0052】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、二次電池の検査方法として、少なくとも以下の処理が行なわれるものとして説明した。すなわち、組電池1から解体された単電池10に対して、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、単電池10が拘束される。そして、拘束された単電池10の露出している平面部分の変形量が測定される。単電池10の変形量がしきい値よりも高い場合には、単電池10の再利用が不可能であると判定される。また、変形量がしきい値よりも低い場合には、単電池10の再利用が可能であると判定される。
【0053】
これに対して、第2の実施の形態では、二次電池の検査方法として、上述の処理に加えて、拘束荷重を作用させた状態で予め定められた期間が経過するまで単電池を保管するものとする。
【0054】
なお、第2の実施の形態における組電池1および単電池10の構成は、
図1に示した第1の実施の形態における組電池1および単電池10の構成と同様である。そのため、組電池1および単電池10の構成についての詳細な説明は繰り返さない。
【0055】
以下、本実施の形態に係る二次電池の検査方法について詳細に説明する。
図8は、第2の実施の形態に係る二次電池の検査方法による処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図8のS100、S102、S104、S106、S108、S100、S112、S114、S116およびS118の処理は、上述の第1の実施の形態において説明した
図3のS100、S102、S104、S106、S108、S100、S112、S114、S116およびS118の処理と比較して以下に説明する点を除きそれぞれ同じ処理を示す。そのため、それらの処理についてその詳細な説明は繰り返さない。
【0056】
S108にて、特性値が許容範囲内でないと判定される場合、あるいは、S112にて、変形量が許容範囲内でないと判定される場合、処理はS200に移される。
【0057】
S200にて、予め設定された保管温度であって、予め設定されたSOCであって、かつ、所定の拘束状態の下で、予め定められた保管時間が経過するまで単電池10が保管される。
【0058】
予め設定された保管温度は、たとえば、劣化を著しく加速させない程度の温度環境であって、実験等によって適合される予め定められた温度である。
【0059】
予め設定されたSOCは、劣化が促進されない所定の低SOCの範囲(たとえば、10%以下など)であって、実験等によって適合される予め定められたSOCである。
【0060】
予め定められた保管時間は、単電池10の内圧が低下する速度に基づいて変形量の変化の大きさがしきい値以下に収束する時間に所定のマージンを加算して設定され、実験等によって適合される予め定められた時間である。
【0061】
所定の拘束状態は、内圧の低下を促進するため、車載状態に相当する荷重範囲のうちの比較的高い拘束荷重が作用する状態である。拘束方法については、上述の第1の実施の形態における
図3のS104の処理にて説明した方法と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。なお、拘束荷重については、S104の処理における拘束荷重と同等の拘束荷重であってもよいし、あるいは、内圧の低下を促進するため、S104の処理における拘束荷重と異なる拘束荷重であってもよい。また、拘束荷重としては、たとえば、100N程度の荷重であってもよい。
【0062】
S202にて、測定対象となる単電池10の変形量が再測定される。変形量の測定方法については、上述の第1の実施の形態における
図3のS110の処理にて説明した方法と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0063】
S204にて、単電池10の変形量が許容範囲内であるか否かが判定される。なお、判定方法については、上述の第1の実施の形態における
図3のS112の処理にて説明した方法と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0064】
単電池10の変形量が許容範囲内でないと判定される場合(S204にてNO)、処理はS114に移される。また、単電池10の変形量が許容範囲内であると判定される場合(S204にてYES)、処理はS206に移される。
【0065】
S206にて、測定対象となる単電池10の電池特性値が再測定される。電池特性値および電池特性値の測定方法については、上述の第1の実施の形態における
図3のS106の処理にて説明した方法と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0066】
S208にて、測定された電池特性値が許容範囲内であるか否かが判定される。なお、判定方法については、上述の第1の実施の形態における
図3のS108の処理にて説明した方法と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0067】
電池特性が許容範囲内であると判定される場合(S208にてYES)、処理はS116に移される。なお、電池特性値が許容範囲内でないと判定される場合(S208にてNO)、処理はS114に移される。
【0068】
以上のようなフローチャートに基づく本実施の形態に係る二次電池の検査方法による一連の動作の一例について説明する。
【0069】
たとえば、車両の販売店においてハイブリッド自動車等から組電池1が回収されると(S100)、解体されて複数の単電池10が回収される(S102)。回収された複数の単電池10のうちの再利用の可否が判定済でないいずれかが拘束され(S104)、拘束された単電池10の電池特性値が測定される(S106)。
【0070】
測定された電池特性値が許容範囲内である場合には(S108にてYES)、単電池10の変形量が測定される(S110)。測定された単電池10の変形量がしきい値を超えている場合には単電池10の変形量が許容範囲内でないと判定され(S112にてNO)、単電池10が所定の状態で保管される(S200)。あるいは、測定された電池特性値が許容範囲内でないと判定される場合にも(S108にてNO)、単電池10が所定の状態で保管される。単電池10は、所定の状態で保管されることによって内圧が低下し、変形量や電池特性値が変化する場合がある。
【0071】
保管後に単電池10の変形量が再測定され(S202)、再測定された単電池10の変形量がしきい値を超えている場合には(S204にてNO)、測定対象となる単電池10の再利用が不可であると判定される(S114)。
【0072】
一方、変形量がしきい値以下である場合には、単電池10の変形量が許容範囲内であると判定され(S204にてYES)、電池特性値が再測定される(S206)。再測定された単電池10の電池特性値が許容範囲内である場合には(S208にてYES)、測定対象となる単電池10の再利用が可能であると判定される(S116)。また、再測定された電池特性値が許容範囲内でないと場合には(S208にてNO)、測定対象となる単電池10の再利用が不可であると判定される(S114)。このような再利用の可否の判定は、全ての単電池10に対して行なわれるまで実施される(S118にてNO)。
【0073】
以上のようにして、本実施の形態に係る二次電池の検査方法によると、組電池1から解体された単電池10に対して、組電池1を構成した状態に相当する拘束荷重を作用させて、拘束した状態で、単電池10の上面部分の変形量が測定されるので、変形量に基づいて組電池1を構成する単電池10が再利用可能であるか否かを精度高く判定することができる。特に、単電池10を所定の状態で保管することによって、単電池10において経時変化が起こる場合がある。そのため、解体された時点の単電池の変形量がしきい値よりも高い場合でも、経時変化によって変形量がしきい値よりも低くなる場合に当該単電池の再利用が可能であると判定することができる。そのため、単電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定することができる。したがって、組電池を構成する複数の二次電池の再利用が可能であるか否かを精度高く判定する二次電池の検査方法を提供することができる。
【0074】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、単電池10の変形量の測定位置を単電池10の上面部分に設定するものとして説明したが、単電池10の変形量の測定位置として単電池10の上面部分に特に限定されるものではない。単電池10の変形量の測定位置は、少なくとも単電池10において変形が発生しやすい部位であって、かつ、拘束された状態で露出した平面部分であればよく、たとえば、単電池10の幅方向の端面部分に設定されてもよいし、あるいは、単電池10の下面部分に設定されてもよい。
【0075】
さらに上述の実施の形態では、単電池10の変形量の測位位置として単電池10の上面部分に設定されたA点とB点とC点との3個所の測定位置を例示したが、測定位置の個数としては、3個所に限定されるものではなく、4個所以上の測定位置であってもよいし、あるいは、たとえば、A点からC点までの間の変形量を連続的に取得してもよい。測定位置については、上述の第1の実施の形態において
図6および
図7を用いて説明したとおりである。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0076】
さらに上述の実施の形態では、単電池10を拘束する処理において、3個の単電池10を含む電池列をエンドプレート7aで挟み込んで拘束する場合を一例として説明したが、単電池10の電池列の個数として3個に限定されるものではなく、1個、2個または4個以上としてもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 組電池、3 バスバー、5 ナット、7,7a,8 エンドプレート、9,9a 拘束バンド、10 単電池、11 電池ケース、13 蓋体、13j 安全弁、19b 正極外部端子、19c 負極外部端子、20 冷却板、40 電池列。