(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】バッテリパックの振動抑制構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20240910BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240910BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240910BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240910BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240910BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20240910BHJP
【FI】
B60K11/06
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6556
H01M50/242
(21)【出願番号】P 2020218176
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 将希
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綱一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼井 一成
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-292216(JP,A)
【文献】特開2016-197502(JP,A)
【文献】特開2012-111466(JP,A)
【文献】特開2014-201141(JP,A)
【文献】米国特許第05620057(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
B60K 6/28
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6556
H01M 50/242
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールと、
送風ファンに接続され、前記送風ファンから前記バッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、
前記送風ファン、前記バッテリモジュールおよび前記送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、
前記バッテリケースの底面よりも上方に配置され、前記送風ファンが載置される載置部材を有する台座部を備え、
前記送風ダクトは、前記台座部の上方に配置され車幅方法に延びる車幅方向延伸部を備え、
前記車幅方向延伸部は、車両下方に延びて前記載置部材に固定されるダクト脚部を、前記載置部材の上方に有し、
前記ダクト脚部は、前記車幅方向延伸部の延伸方向と直交する断面における車両上下方向の中央部よりも下方の部位であって、前記車幅方向延伸部の断面における車両前後方向で中央部から前方に偏倚した部位に設けられ、
前記車幅方向延伸部は、延伸方向と直交する断面における底部の前端部に、その内周面が湾曲形状に形成された湾曲形状部を有し、
前記ダクト脚部は前記湾曲形状部に接続され、
前記湾曲形状部は、前記ダクト脚部に接続される肉厚部を有して
おり、前記肉厚部は、前記車幅方向延伸部の延伸方向と直交する断面上で下方ほど肉厚が大きくなるように形成されていることを特徴とするバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項2】
前記バッテリケースは、傾斜面からなるケース傾斜部を有し、
前記車幅方向延伸部は、車両上下方向で前記ケース傾斜部に対向し、前記ケース傾斜部と平行な傾斜面からなるダクト傾斜部を有し、
前記ダクト脚部は、前記ダクト傾斜部の下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックの振動抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にあっては、複数のバッテリモジュールを備えるバッテリパックを搭載し、このバッテリパックの電力を走行用のモータに供給することがある。従来のバッテリパックとして、特許文献1に記載されるものが知られている。特許文献1に記載のバッテリパックは、電池ユニット部と充放電制御部とファン配置部を外装ケース内に収容して構成されている。そして、ファン配置部においては、その下部の一端に外気取入口が開口し、他端が送給通路に接続された外気取入通路が配設され、その上部にファンが配設されるとともに、ファンの上面に開口した吸入口と排出通路とが接続ダクトにて接続されている(段落0019、0020、
図1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載のバッテリパックは、ファンケース内に駆動モータ及び制御回路基板を配置し、駆動モータ及び制御回路基板をうず形室から区分する防水部材を設け、防水部材に形成された駆動モータの出力軸の貫通孔をシールするシール筒部を設けている(段落0021、0022、
図2参照)。これにより、制御回路基板への塩分や水分やダストの付着を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバッテリパックにあっては、外装ケースの内側に接続ダクトが近接して配置されている場合、振動した外装ケースが接続ダクトに接触し、外装ケースの振動が接続ダクトを介してファン等の他の部品に伝達されて破損等の不具合を生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、バッテリケースの振動を抑制できるバッテリパックの振動抑制構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バッテリモジュールと、送風ファンに接続され、前記送風ファンから前記バッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、前記送風ファン、前記バッテリモジュールおよび前記送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、前記バッテリケースの底面よりも上方に配置され、前記送風ファンが載置される載置部材を有する台座部を備え、前記送風ダクトは、前記台座部の上方に配置され車幅方法に延びる車幅方向延伸部を備え、前記車幅方向延伸部は、車両下方に延びて前記載置部材に固定されるダクト脚部を、前記載置部材の上方に有し、前記ダクト脚部は、前記車幅方向延伸部の延伸方向と直交する断面における車両上下方向の中央部よりも下方の部位であって、前記車幅方向延伸部の断面における車両前後方向で中央部から前方に偏倚した部位に設けられ、前記車幅方向延伸部は、延伸方向と直交する断面における底部の前端部に、その内周面が湾曲形状に形成された湾曲形状部を有し、前記ダクト脚部は前記湾曲形状部に接続され、前記湾曲形状部は、前記ダクト脚部に接続される肉厚部を有しており、前記肉厚部は、前記車幅方向延伸部の延伸方向と直交する断面上で下方ほど肉厚が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、バッテリケースの振動を抑制できるバッテリパックの振動抑制構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を搭載する車両のフロアパネルおよびバッテリパックの底面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を搭載する車両のバッテリパックの後部の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すバッテリパックのIV-IV方向の矢視断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すバッテリパックのV-V方向の矢視断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示すバッテリパックのVI-VI方向の矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るバッテリパックの振動抑制構造は、バッテリモジュールと、送風ファンに接続され、送風ファンからバッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、送風ファン、バッテリモジュールおよび送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、バッテリケースの底面よりも上方に配置され、送風ファンが載置される載置部材を有する台座部を備え、送風ダクトは、車両下方に延びて載置部材に固定されるダクト脚部を、載置部材の上方に有し、ダクト脚部は、送風ダクトにおける、車両上下方向の中央部よりも下方の部位であって、車両前後方向で中央部から偏倚した部位に設けられていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るバッテリパックの振動抑制構造は、バッテリケースの振動を抑制できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造について、図面を用いて説明する。
図1から
図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のバッテリパックの上下前後左右方向とし、車両の前後方向に対して直交する方向が左右方向、バッテリパックの高さ方向が上下方向である。
【0012】
図1から
図6は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を示す図である。
【0013】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、車体2を備えている。車体2は、左右で一対のサイドメンバ11と、一対のサイドメンバ11に連結されたフロアパネル2Aとを有している。フロアパネル2Aの車両幅方向の中央部には、車両前後方向に延びるフロアトンネル2Bが形成されている。
【0014】
フロアパネル2Aの下側にはバッテリパック20が配置されている。バッテリパック20は、車両1の図示しないモータに電力を供給する。バッテリパック20は、一対のサイドメンバ11の間に配置されている。
【0015】
図2、
図3において、バッテリパック20は、車両前後方向および車両幅方向に並べられた複数のバッテリモジュール61からなるバッテリモジュール群60と、バッテリモジュール群60の後部の上方に配置された送風ファン55(
図2参照)とを備えている。
【0016】
バッテリモジュール群60の後方には、バッテリモジュール61と同様の構成を有するバッテリモジュール62(
図5参照)が設けられている。送風ファン55はバッテリモジュール62の上部に配置されている。
【0017】
また、バッテリパック20はバッテリケース21を備えている。バッテリケース21は、樹脂製の送風ダクト70と、バッテリモジュール61、62と、送風ファン55とを収納している。送風ダクト70は、送風ファン55に接続されており、送風ファン55からバッテリモジュール61に空気を送っている。送風ダクト70は、全体としてバッテリモジュール群60の外周に沿って延びている。
【0018】
図5において、バッテリケース21は、下側ケース40と上側ケース30とからなる。上側ケース30は
図5において破線で表されている。バッテリケース21は、下側ケース40の外縁部に形成されたフランジ部41と上側ケース30の外縁部に形成されたフランジ部31とを締結することにより一体化されている。
【0019】
下側ケース40には、複数のバッテリモジュール61が固定されている。下側ケース40は、複数のバッテリモジュール61の下面および側面を覆っている。上側ケース30は、下側ケース40を上方から塞いだ状態で、複数のバッテリモジュール61の上面を覆っている。
【0020】
図2において、送風ダクト70は、車両幅方向に延びる第1ダクト部材71と、車両前後方向に延びる第2ダクト部材73と、第1ダクト部材71と第2ダクト部材73とに接続される中間ダクト部材72と、を有している。このように、送風ダクト70は、複数の部材に分割された分割構造を有している。
【0021】
なお、本実施例では、バッテリパック20が全体として左右対称に構成されており、送風ダクト70がバッテリケース21内の車両幅方向の両端部に空気を送る構造であるため、第1ダクト部材71は車両幅方向の両方に延びている。バッテリケース21内の車両幅方向の一端部に空気を送る構造を採用する場合、第1ダクト部材71は車両幅方向の一端部側に延びていればよい。したがって、第1ダクト部材71は車両幅方向の少なくとも一方に延びていればよい。
【0022】
バッテリケース21の外部の空気は、第1ダクト部材71、中間ダクト部材72、第2ダクト部材73を順次通過してバッテリモジュール群60に供給される。したがって、第1ダクト部材71は中間ダクト部材72に対して上流側のダクト部材であり、第2ダクト部材73は中間ダクト部材72に対して下流側のダクト部材である。
【0023】
第1ダクト部材71は全体として車両幅方向に延びている。第1ダクト部材71は、バッテリモジュール群60の後部の上方に配置されている。第1ダクト部材71には送風ファン接続部71Aが設けられており、送風ファン接続部71Aは後方向に延びており、その後端部で送風ファン55に接続されている。
【0024】
第1ダクト部材71は分岐部71Bを有しており、分岐部71Bは送風ファン接続部71Aの前端部に設けられており、車両幅方向に延びている。分岐部71Bは、車両幅方向の左方向と右方向にそれぞれ分岐し、バッテリモジュール群60の後部に沿って延びている。第1ダクト部材71の下流側端部(左端部)は左方を向いて開口している。
【0025】
中間ダクト部材72は、第1ダクト部材71の分岐部71Bの下流側端部に接続されている。中間ダクト部材72は、車両幅方向に延びて第1ダクト部材71に接続される車両幅方向延伸部72Aと、車両前後方向に延びて第2ダクト部材73に連結される車両前後方向延伸部72Cと、車両幅方向延伸部72Aと車両前後方向延伸部72Cとに連通するように屈曲する屈曲部72Bと、を有している。
【0026】
車両前後方向延伸部72Cは、バッテリモジュール61とバッテリケース21との間の隙間に配置されている。また、車両前後方向延伸部72Cは、バッテリケース21の側壁42に沿って前方に延びている。中間ダクト部材72の車両幅方向延伸部72Aの上流側端部(右端部)は、右方を向いて開口しており、第1ダクト部材71の下流側端部(左端部)に接続されている。
【0027】
第2ダクト部材73の上流側端部は、車両前後方向延伸部72Cの下流側端部に接続されている。第2ダクト部材73は、バッテリモジュール群60の側方を通るように配置され、バッテリモジュール群60とバッテリケース21との隙間に沿って延びている。
【0028】
第2ダクト部材73の図示しない下流側端部は、バッテリモジュール群60の内部まで延びており、複数のバッテリモジュール61に空気を供給している。
【0029】
図2において、バッテリパック20は、バッテリモジュール群60の後方に、テーブル形状の台座部90を備えている。台座部90は、送風ファン55が載置される平板状の載置部材91と、載置部材91を支持する複数の脚部材92、93を有している。脚部材92、93は、載置部材91の車両幅方向端部の下面とバッテリケース21の底面とに接続されている。このため、載置部材91は、バッテリケース21の底面よりも上方に配置されている。したがって、送風ファン55は、バッテリケース21の底面よりも上方に配置されている。
【0030】
送風ダクト70は、バッテリケース取付部80(
図2参照)を有しており、このバッテリケース取付部80はバッテリケース21に固定される。バッテリケース取付部80において送風ダクト70をバッテリケース21に固定することにより、送風ダクト70の振動を抑制し、かつ、この送風ダクト70に接続される送風ファン55の振動を抑制することができる。
【0031】
図2において、バッテリケース取付部80は第2ダクト部材73に設けられている。バッテリケース取付部80は、第2ダクト部材73から左方に延び、バッテリケース21の側壁42に固定されている。なお、バッテリケース21の側壁42には、図面に表れていない固定部が設けられており、この固定部は、バッテリケース取付部80の下面に固定されている。このように、第2ダクト部材73は、バッテリケース取付部80においてバッテリケース21に支持されている。
【0032】
脚部材92は、左右で一対設けられており、載置部材91とバッテリケース21の底面とに接続されている。脚部材93は、脚部材93の後方において、左右で一対設けられており、載置部材91とバッテリケース21の底面とに接続されている。なお、
図2には、左側の脚部材92、93のみが表されている。脚部材92、93は本発明における脚部材を構成する。本実施例では、脚部材92と中間ダクト部材72とは車両幅方向で対向して配置されている。また、車両平面視で、中間ダクト部材72の屈曲部72Bと脚部材92とは車両上下方向で対向して配置されている。また、脚部材92は、車両上下方向で、第1ダクト部材71の下方に配置されている。言い換えれば、脚部材92を車両幅方向から見た場合、脚部材92と第1ダクト部材71とは、車両上下方向に重なっている。
【0033】
図1において、バッテリケース21の側面には、バッテリケース21を車体2に支持する複数の車体マウント部22、23、24が設けられている。車体マウント部22、23、24は、それぞれ左右で一対設けられている。
【0034】
図2において、バッテリケース取付部80と車体マウント部22とは車両幅方向で対向して配置されている。車体マウント部22は本発明における車体マウント部を構成する。一方、車体マウント部23は、バッテリモジュール群60の後方、かつ、車両前後方向で車体マウント部22の後方に配置されている。また、車体マウント部23は、送風ファン55と車両幅方向に対向する位置に配置されている。車体マウント部24(
図1参照)は、車両前後方向で車体マウント部22の前方に配置されている。
【0035】
図4、
図5において、中間ダクト部材72の屈曲部72Bは、車両前方側ほど車両上下方向で下方に向かうように傾斜している。したがって、車両上下方向で、中間ダクト部材72の下流側端部は、中間ダクト部材72の上流側端部よりも下方に配置されている。そのため、第2ダクト部材73は、第1ダクト部材71よりも車両上下方向で下方に配置されている。なお、屈曲部72Bは、平面視でL字状に屈曲しているだけでなく、側面視で傾斜しており、3次元的に曲げられた立体形状を有しているため、全方向に対して剛性が高くなっている。
【0036】
図5において、屈曲部72Bの車両幅方向の内側の曲率R1は、屈曲部72Bの車両幅方向の外側の曲率R2よりも小さく形成されている。言い換えれば、屈曲部72Bの車両幅方向の内側の部分の湾曲形状は、外側の部分の湾曲形状と比較して、曲率半径の大きな緩い湾曲形状である。
【0037】
図2において、中間ダクト部材72の下流側端部(前端部)と第2ダクト部材73の上流側端部(後端部)とは、車両幅方向に対向して開口している。詳しくは、中間ダクト部材72の車両前後方向延伸部72Cの下流側端部の開口部72Fは右方を向いて開口し、第2ダクト部材73の上流側端部の開口部73Bは左方を向いて開口している。
【0038】
中間ダクト部材72の下流側端部の開口部72Fと第2ダクト部材73の上流側端部の開口部73Bとの接続面であるダクト接続面97は、車両前後方向に延びている。ダクト接続面97において、開口部72Fと開口部73Bとは、凹凸の嵌め合わせにより互いに接続および結合されている。
【0039】
ダクト接続面97の車両前後方向の両端側には、一対の固定部としての上流側固定部82と下流側固定部81とが設けられている。そして、上流側固定部82と下流側固定部81とにおいて、中間ダクト部材72と第2ダクト部材73とが互いに固定されている。また、車両平面視で、一対の固定部を結ぶ線を仮想線Lとしたとき、この仮想線Lはダクト接続面97に交差している。
【0040】
上流側固定部82は、ダクト接続面97のバッテリケース取付部80から遠い側に設けられている。一方、下流側固定部81は、ダクト接続面97のバッテリケース取付部80に近い側に設けられている。下流側固定部81は、バッテリケース取付部80に接続されている。
【0041】
ここで、本実施例では、中間ダクト部材72の上流側端部と下流側端部とがともに右方を向いて開口している。これにより、バッテリケース21に分割構造の送風ダクト70を組付ける組付け工程において、先ず、送風ダクト70の第1ダクト部材71および第2ダクト部材73をバッテリケース21に組付けておき、次いで、中間ダクト部材72を、第1ダクト部材71および第2ダクト部材73に接続されるように、車両幅方向で右方に移動させることによりバッテリケース21に組付けることができる。このため、中間ダクト部材72を右方へ移動させるだけで、中間ダクト部材72が第1ダクト部材71および第2ダクト部材73に接続されるので、中間ダクト部材72の組付けを容易に効率的に行うことができる。
【0042】
また、中間ダクト部材72の上流側端部と下流側端部とがともに右方を向いて開口しているので、中間ダクト部材72の下流側端部が車両前方を向いて開口している場合と比較して、ダクト接続面97における中間ダクト部材72と第2ダクト部材73との接続面積および接続剛性を大きくすることができる。このため、中間ダクト部材72を第2ダクト部材73によって強固に支持することができるので、中間ダクト部材72の剛性を向上させることができ、中間ダクト部材72に支持される載置部材91および送風ファン55の振動を抑制できる。
【0043】
また、載置部材91が車両幅方向内側(右方)に変位したことに伴って中間ダクト部材72が車両幅方向内側に変位した場合であっても、中間ダクト部材72の下流側端部が、強固に接続されたダクト接続面97を介して、第2ダクト部材73の上流側端部によって車両幅方向外側(左方)に戻される。このため、中間ダクト部材72の車両幅方向の変位が抑制され、載置部材91および送風ファン55の振動を抑制できる。
【0044】
図2において、中間ダクト部材72の車両幅方向延伸部72Aは、ダクト脚部94を一体的に有している。ダクト脚部94は、載置部材91の上方に配置されており、車両下方に延びて載置部材91に固定されている。ダクト脚部94は、載置部材91に設けられた突出部91Aに固定されている。突出部91Aは、載置部材91の前端部に設けられており、前方に円弧状に突出している。このように、送風ファン55が載置される載置部材91は、ダクト脚部94を介して中間ダクト部材72の車両幅方向延伸部72Aに支持されている。
【0045】
ダクト脚部94は、バッテリケース取付部80に対して、車両前後方向で後方、かつ、車両幅方向で右方に配置されている。このように、本実施例では、ダクト脚部94とバッテリケース取付部80とが、車両前後方向および車両幅方向で異なる位置に配置されている。
【0046】
図2において、車両幅方向延伸部72Aは、載置部材91における車両前後方向の中央位置よりも車両前後方向延伸部72C側(前方)に配置されている。車両平面視で、ダクト脚部94は、車両前後方向で車両幅方向延伸部72Aから車両前後方向延伸部72C側(前方)に延びている。
【0047】
図6において、ダクト脚部94は、送風ダクト70の車両幅方向延伸部72Aにおける、車両上下方向の中央部よりも下方の部位であって、車両前後方向で中央部から偏倚(オフセット)した部位に設けられている。本実施例では、ダクト脚部94は、車両幅方向延伸部72Aの延伸方向に直交する断面において、車両上下方向中央部の位置C1よりも下部であって、車両前後方向で中央部の位置C2から前方に偏倚した位置に取り付けられている。
【0048】
詳しくは、ダクト脚部94の上部は車両幅方向延伸部72Aの前側の側面に接続されている。このように、ダクト脚部94の少なくとも一部(上部)が車両幅方向延伸部72Aの側面(前側の側面)に接続されている。また、ダクト脚部94および車両幅方向延伸部72Aを含む送風ダクト70は、樹脂材料を成型したものから構成されており、弾性変形することができる。これにより、上側ケース30から車両幅方向延伸部72Aに対して下方への荷重が作用した場合、車両幅方向延伸部72Aがその形状を保ったまま全体的に下方に変位する。そして、車両幅方向延伸部72Aの下方への変位に伴う荷重は、ダクト脚部94に対して曲げ応力として作用し、ダクト脚部94を湾曲させるように弾性変形させる。
【0049】
ダクト脚部94は、車両幅方向延伸部72Aに接続されるダクト上端部94Aと、載置部材91に固定されるダクト下端部94Bを有している。ダクト上端部94Aはダクト脚部94の上端部の部位であり、ダクト下端部94Bはダクト脚部94の下端部の部位である。ダクト下端部94Bは、送風ダクト70から車両前後方向に離れる方向に延びている。つまり、ダクト脚部94は、車両幅方向延伸部72Aから斜め下の前方に延びている。
【0050】
ダクト脚部94のダクト上端部94Aは、車両幅方向延伸部72Aにおける、車両上下方向の中央部(位置C1)よりも下方に位置している。言い換えれば、送風ダクト70を延伸方向から見た場合に、ダクト上端部94Aは、送風ダクト70の車両上下方向の中央部よりも下方に位置している。
【0051】
車両幅方向延伸部72Aは湾曲形状部72Hを有している。湾曲形状部72Hは、車両幅方向延伸部72Aの底部の前端部に配置されており、その断面上で内周面が湾曲形状に形成されている。ダクト脚部94は湾曲形状部72Hに設けられている。
【0052】
湾曲形状部72Hは、ダクト脚部94に接続される肉厚部72Jを有しており、肉厚部72Jは、送風ダクト70の断面上で下方ほど肉厚が大きくなるように形成されている。
【0053】
バッテリケース21の上側ケース30は、傾斜面からなるケース傾斜部32を有している。また、送風ダクト70は、ケース傾斜部32と平行な傾斜面からなるダクト傾斜部72Gを有している。ケース傾斜部32とダクト傾斜部72Gとは、車両上下方向で隙間を隔てて、近接して対向して配置されている。そして、ダクト脚部94は、ダクト傾斜部72Gの下部に設けられている。
【0054】
ダクト脚部94は、ダクト上端部94Aとダクト下端部94Bとを互いに接続する一対の縦壁部96を、ダクト上端部94Aとダクト下端部94Bとの幅方向端部に有している。
【0055】
ダクト脚部94は、その下端部に座面部95を有している。この座面部95は、載置部材91と平行な平板状に形成されており、載置部材91に固定される。一対の縦壁部96は座面部95に対して直角に交差している。
【0056】
ダクト脚部94は延出部98を有しており、この延出部98は、中間ダクト部材72の車両幅方向延伸部72Aの前側の面から下方に延びた後、斜め下の前方に延びて座面部95に接続されている。また、延出部98は、車両幅方向の両端において一対の縦壁部96と接続されている。したがって、ダクト脚部94を構成する延出部98、座面部95および一対の縦壁部96が互いに接続されているので、ダクト脚部94の剛性を向上させることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、バッテリパック20は、バッテリケース21の底面よりも上方に配置され、送風ファン55が載置される載置部材91を有する台座部90を備えている。また、送風ダクト70は、車両下方に延びて載置部材91に固定されるダクト脚部94を、載置部材91の上方に有している。そして、ダクト脚部94は、送風ダクト70における、車両上下方向の中央部よりも下方の部位であって、車両前後方向で中央部から偏倚した部位に設けられている。
【0058】
これにより、バッテリケース21の上側ケース30が振動して送風ダクト70に接触した場合、送風ダクト70の下方への変位を許容するようにダクト脚部94が変形するため、上側ケース30の振動をダクト脚部94が吸収できる。この結果、バッテリケース21の上側ケース30の振動を抑制できる。
【0059】
これに加え、ダクト脚部94は、下側ケース40の底面よりも上方に配置された載置部材91に固定されているので、ダクト脚部94を下側ケース40の底面に固定する場合と比較して、ダクト脚部94の上下方向の長さを短くできる。このため、ダクト脚部94の強度を維持しやすくなり、荷重が作用した際のダクト脚部94の損傷を抑制できる。
【0060】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、ダクト脚部94の少なくとも一部が送風ダクト70の側面に接続されている。
【0061】
これにより、ダクト脚部94は送風ダクト70の側方に取り付けられるので、上側ケース30が送風ダクト70に接触した場合に、ダクト脚部94を弾性変形させながら、送風ダクト70をその形状を維持したまま下方に変位させることができる。このため、上側ケース30の振動を抑制できる。
【0062】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、ダクト脚部94の上端は、送風ダクト70における、車両上下方向の中央部よりも下方に位置している。
【0063】
これにより、上側ケース30が送風ダクト70に接触した場合に、より送風ダクト70を下方に接触させて上側ケース30を受けることができ、上側ケース30の振動を抑制できる。
【0064】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、ダクト脚部94は、送風ダクト70に接続されるダクト上端部94Aと、載置部材91に固定されるダクト下端部94Bを有しており、ダクト下端部94Bは、送風ダクト70から車両前後方向に離れる方向に延びている。
【0065】
これにより、ダクト下端部94Bは、送風ダクト70が設けられる側とは逆方向(前方)に延びるため、上側ケース30が送風ダクト70に接触した場合に、より送風ダクト70を下方に変位するようにダクト脚部94を変形させることができる。このため、上側ケース30の振動を抑制できる。
【0066】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、送風ダクト70は、その断面上で内周面が湾曲形状に形成された湾曲形状部72Hを有し、ダクト脚部94は湾曲形状部72Hに設けられている。また、湾曲形状部72Hは、ダクト脚部94に接続される肉厚部72Jを有しており、肉厚部72Jは、送風ダクト70の断面上で下方ほど肉厚が大きくなるように形成されている。
【0067】
これにより、ダクト脚部94は、送風ダクト70のうち、湾曲形状および肉厚形状であることから強度の高い湾曲形状部72Hおよび肉厚部72Jにおいて強固に接続されるので、ダクト脚部94と湾曲形状部72Hとの接続部が損傷することを抑制できる。
【0068】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、バッテリケース21は、傾斜面からなるケース傾斜部32を有し、送風ダクト70は、車両上下方向でケース傾斜部32に対向し、ケース傾斜部32と平行な傾斜面からなるダクト傾斜部72Gを有している。そして、ダクト脚部94は、ダクト傾斜部72Gの下部に設けられている。
【0069】
これにより、バッテリケース21の上側ケース30のケース傾斜部32と、送風ダクト70のダクト傾斜部72Gとを、広い面積で面接触させることができる。このため、上側ケース30と送風ダクト70とが局所的に接触した場合の接触音の発生や送風ダクト70の損傷を抑制しながら、ダクト脚部94を変形させて上側ケース30の振動を抑制できる。
【0070】
また、接触音の発生や送風ダクト70の損傷を抑制できることにより送風ダクト70を上側ケース30により近づけて配置できるので、ダクト脚部94の上下方向の長さを短くでき、上側ケース30が送風ダクト70に接触したときのダクト脚部94の損傷を抑制できる。
【0071】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、ダクト脚部94は、ダクト上端部94Aとダクト下端部94Bとを互いに接続する一対の縦壁部96を、ダクト上端部94Aとダクト下端部94Bとの幅方向端部に有している。
【0072】
これにより、一対の縦壁部96によりダクト脚部94の剛性が向上するため、ダクト脚部94が大きく変形し過ぎることを抑制しつつ、上側ケース30が送風ダクト70に接触する際の荷重をダクト脚部94に受け持たせることができる。
【0073】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0074】
1...車両、20...バッテリパック、21...バッテリケース、30...上側ケース(バッテリケース)、32...ケース傾斜部、55...送風ファン、61,62...バッテリモジュール、70...送風ダクト、72...中間ダクト部材(送風ダクト)、72A...車両幅方向延伸部(送風ダクト)、72G...ダクト傾斜部、72H...湾曲形状部、72J...肉厚部、90...台座部、91...載置部材、94...ダクト脚部、94A...ダクト上端部、94B...ダクト下端部、96...縦壁部