(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液体吐出装置および液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20240910BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 501
B41J2/01 401
B41J2/01 201
(21)【出願番号】P 2020218872
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】四十物 孝憲
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014194(JP,A)
【文献】特開2015-139933(JP,A)
【文献】特開2014-151528(JP,A)
【文献】特開2008-023806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/18
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含有する液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに循環させる前記液体の流量を調節する循環機構と、
前記循環機構の動作を制御する制御装置と、を備える液体吐出装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、
前記液体に圧力を付与するための圧力室と、
前記圧力室と連通する供給流路と、
前記供給流路と連通するノズル流路と、
前記ノズル流路に設けられ、前記圧力室で付与された圧力によって前記液体を吐出す
るノズルと、
前記ノズル流路における前記ノズルを介した逆側に接続される排出流路と、を有し、
前記制御装置は、
粒子径の平均値が第1粒子径である粒子を含有する第1液体が前記液体吐出ヘッドに
供給される場合に、前記供給流路と前記ノズル流路と前記排出流路とにおける前記第1液
体の循環流量が第1流量となるように前記循環機構を制御し、
粒子径の平均値が前記第1粒子径よりも大きい第2粒子径である粒子を含有する第2
液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記第2液体の前記循環流量が前記第1
流量よりも小さい第2流量となるように前記循環機構を制御する、
液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記制御装置は、さらに、粒子径の平均値が前記第2粒子径よりも大きい第3粒子径で
ある粒子を含有する第3液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記第3液体の
前記循環流量が前記第2流量よりも小さい第3流量となるように前記循環機構を制御する
、
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記制御装置は、さらに、粒子径の平均値が前記第1粒子径である粒子を含有し、前記
第1液体が有する第1粘度よりも高い第2粘度を有する第4液体が前記液体吐出ヘッドに
供給される場合に、前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第4流量となるように前記
循環機構を制御する、
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記制御装置は、さらに、粒子径の平均値が前記第2粒子径である粒子を含有し、前記
第2液体の粘度である第3粘度よりも高い第4粘度を有する第5液体が前記液体吐出ヘッ
ドに供給される場合に、前記循環流量が前記第2流量よりも大きい第5流量となるように
前記循環機構を制御する、
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記制御装置は、
前記第1液体の単位時間あたりの吐出量を第1吐出量に設定する場合に、前記第1液
体の前記循環流量が前記第1流量となるように前記循環機構を制御し、
前記第2液体の前記吐出量を前記第1吐出量よりも大きい第2吐出量に設定する場合
に、前記第2液体の前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第6流量となるように前記
循環機構を制御する、
液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記制御装置は、
前記第2液体の単位時間あたりの吐出量を第3吐出量に設定する場合に、前記第2液
体の前記循環流量が前記第2流量となるように前記循環機構を制御し、
前記第2液体の前記吐出量を前記第3吐出量よりも大きい第4吐出量に設定する場合
に、前記循環流量が前記第2流量よりも大きい第7流量となるように前記循環機構を制御
する、
液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1液体と前記第2液体との両方が1つの前記液体吐出ヘッドに供給される、
液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1液体を供給される第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドとは異なる
第2液体吐出ヘッドであって、前記第2液体を供給される第2液体吐出ヘッドとを含む複
数の前記液体吐出ヘッドを備える、
液体吐出装置。
【請求項9】
液体吐出装置の制御方法であって、
粒子径の平均値が第1粒子径である粒子を含有する第1液体が液体吐出ヘッドに供給さ
れる場合に、前記液体吐出ヘッドの内部における前記第1液体の循環流量を第1流量とし
、
粒子径の平均値が前記第1粒子径よりも大きい第2粒子径である粒子を含有する第2液
体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記液体吐出ヘッドの内部における前記第
2液体の循環流量を、前記第1流量よりも小さい第2流量に設定する、
液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドにおいて、液体の吐出動作の安定性を向上するために、単位時間あたりの液体吐出量が大きくなるのに応じて液体の循環量を多くする技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、吐出される液体の物性が考慮されておらず、液体の性能が低下することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、粒子を含有する液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに循環させる前記液体の流量を調節する循環機構と、前記循環機構の動作を制御する制御装置と、を備える液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置では、前記液体吐出ヘッドは、前記液体に圧力を付与するための圧力室と、前記圧力室と連通する供給流路と、前記供給流路と連通するノズル流路と、前記ノズル流路に設けられ、前記圧力室で付与された圧力によって前記液体を吐出するノズルと、前記ノズル流路における前記ノズルを介した逆側に接続される排出流路と、を有する。前記制御装置は、粒子径の平均値が第1粒子径である粒子を含有する第1液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記供給流路と前記ノズル流路と前記排出流路とにおける前記第1液体の循環流量が第1流量となるように前記循環機構を制御し、粒子径の平均値が前記第1粒子径よりも大きい第2粒子径である粒子を含有する第2液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記第2液体の前記循環流量が前記第1流量よりも小さい第2流量となるように前記循環機構を制御する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、粒子を含有する液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに循環させる前記液体の流量を調節する循環機構と、前記循環機構の動作を制御する制御装置と、を備える液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置では、前記液体吐出ヘッドは、前記液体に圧力を付与するための圧力室と、前記圧力室と連通する供給流路と、前記供給流路と連通するノズル流路と、前記ノズル流路に設けられ、前記圧力室で付与された圧力によって前記液体を吐出するノズルと、前記ノズル流路における前記ノズルを介した逆側に接続される排出流路と、を有する。前記制御装置は、第1粘度を有する第1液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記ノズル流路における前記第1液体の循環流量が第1流量となるように前記循環機構を制御し、前記第1粘度よりも大きい粘度である第2粘度を有する第4液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第4流量となるように前記循環機構を制御する。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、液体吐出装置の制御方法が提供される。この液体吐出装置の制御方法は、粒子径の平均値が第1粒子径である粒子を含有する第1液体が液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記液体吐出ヘッドの内部における前記第1液体の循環流量を第1流量とし、粒子径の平均値が前記第1粒子径よりも大きい第2粒子径である粒子を含有する第2液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記液体吐出ヘッドの内部における前記第2液体の循環流量を、前記第1流量よりも小さい第2流量に設定する。
【0008】
本開示の第4の形態によれば、液体吐出装置の制御方法が提供される。この液体吐出装置の制御方法は、第1粘度を有する第1液体が液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記液体吐出ヘッドの内部における前記第1液体の循環流量を第1流量とし、前記第1粘度よりも大きい粘度である第2粘度を有する第4液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記液体吐出ヘッドの内部における前記第4液体の循環流量を、前記第1流量よりも大きい第4流量に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の一例を示す説明図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線の断面図である。
【
図4】液体吐出ヘッドを-Z方向から見た平面図である。
【
図6】インクの粘度と、ノズルNz内のインクが有する粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7】色材の粒子径と、粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】インクの吐出量と、粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】循環流量と、粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図10】本実施形態の制御装置が実行する液体吐出装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図11】他の実施形態1に係る液体吐出装置のパラメーター設定を示す説明図である。
【
図12】他の実施形態2に係る液体吐出装置のパラメーター設定を示す説明図である。
【
図13】他の実施形態3に係る液体吐出装置のパラメーター設定を示す説明図である。
【
図14】他の実施形態4に係る液体吐出装置のパラメーター設定を示す説明図である。
【
図15】他の実施形態4に係る液体吐出装置のパラメーター設定を示す第2の説明図である。
【
図16】他の実施形態5に係る液体吐出装置のパラメーター設定を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100の一例を示す説明図である。第1実施形態の液体吐出装置100は、例えば、印刷用紙などの媒体PPにインクを吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPには、印刷用紙のほか、樹脂フィルムや布帛等の任意の印刷対象が利用されてよい。
図1には、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とが示されている。X軸方向には、+X方向と、+X方向とは反対の方向である-X方向とが含まれる。Y軸方向には、+Y方向と、+Y方向とは反対の方向である-Y方向とが含まれる。Z軸方向には、+Z方向と、+Z方向とは反対の方向である-Z方向とが含まれる。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは互いに直交している。
図1に示すX軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向との各方向は、
図1以降の各図においても共通する。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置100は、粒子を含有する液体を吐出する複数の液体吐出ヘッド1と、1または複数の制御装置90と、液体容器93と、循環機構94と、を備えている。制御装置90は、例えば、CPUまたはFPGA等のマイクロプロセッサーと、半導体メモリー等の記憶回路とを含むマイクロコンピューターである。制御装置90は、記憶回路に予め格納されたプログラムを実行することにより、液体吐出装置100の各部の動作を制御する。
【0012】
液体容器93には、液体が貯留されている。液体としては、例えば、色材としての顔料が溶媒中に分散されたインクを用いることができる。液体は、顔料を含有するインクのほか、染料を含有するインクや、顔料と染料との双方を色材として含有するインクであってもよい。インクには、一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物が含まれる。液体容器93としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンク等を採用することができる。
【0013】
本実施形態では、制御装置90は、液体容器93に貯留されるインクの粘度やインクに含有される顔料等の色材の粒子径の情報を取得することができる。制御装置90による液体の粘度や粒子径の取得方法としては、例えば、液体容器93に備えられる図示しないチップに予め記憶された粘度や粒子径の情報を制御装置90が検出してもよく、液体吐出装置100の使用者が手動で制御装置90に入力してもよい。本実施形態では、液体容器93には、色彩が相違する複数の種類のインクが貯留されている。具体的には、液体容器93には、後述する第1液体と、第2液体との二種類の液体が個別に貯留されている。
【0014】
循環機構94は、液体容器93に貯留された液体を、液体吐出ヘッド1に供給するポンプである。本実施形態では、循環機構94は、制御装置90による制御のもとで、液体容器93に貯留される複数の種類の液体のうちいずれかの液体を選択して、一の液体吐出ヘッド1に供給することができる。すなわち、本実施形態の液体吐出ヘッド1には、制御装置90が液体の種類を切り換えることによって、複数の種類の液体のそれぞれが個別に供給され得る。循環機構94は、後述するように、制御装置90による制御のもとで、液体吐出ヘッド1内のインクの循環流量を調節することができる。循環機構94は、液体吐出ヘッド1内に貯留されたインクを回収し、回収したインクを、液体吐出ヘッド1に還流させる。
【0015】
本実施形態の液体吐出装置100は、さらに、移動機構91と、搬送機構92とを備えている。移動機構91は、制御装置90による制御のもとで、媒体PPを+Y方向に向かって搬送する。搬送機構92は、複数の液体吐出ヘッド1を収容する収納ケース921と、収納ケース921が固定された無端ベルト922とを備える。搬送機構92は、制御装置90による制御のもとで、収納ケース921が固定された無端ベルト922を動作させることによって、液体吐出ヘッド1をX軸方向に沿って往復移動させる。媒体PPの搬送方向と、液体吐出ヘッド1の移動方向とは、直交のみには限らず、所定の角度で交差していてもよい。液体容器93及び循環機構94は、液体吐出ヘッド1とともに収納ケース921に収納されもよい。
【0016】
図1に示すように、制御装置90は、液体吐出ヘッド1を駆動するための駆動信号Comと、液体吐出ヘッド1を制御するための制御信号SIとを液体吐出ヘッド1に出力する。液体吐出ヘッド1は、制御信号SIによる制御のもとで駆動信号Comにより駆動されて、液体吐出ヘッド1に設けられた複数のノズルの一部または全部からインクを吐出させる。本実施形態において、インクの吐出方向は、+Z方向である。液体吐出ヘッド1は、移動機構91による媒体PPの搬送と、搬送機構92による液体吐出ヘッド1の往復動とを連動させながらノズルからインクを吐出させて、媒体PPの表面にインクを着弾させる。この結果、媒体PPの表面に所望の画像が形成される。インクの吐出方向は、+Z方向に限らず、X-Y平面に交差する任意の方向であってもよい。
【0017】
図2から
図5を用いて液体吐出ヘッド1の詳細について説明する。
図2は、液体吐出ヘッド1の分解斜視図である。
図3は、
図2におけるIII-III線の断面図である。
図4は、液体吐出ヘッド1を-Z方向から見た平面図である。
図2に示すように、液体吐出ヘッド1は、ノズル基板60と、連通板2と、圧力室基板3と、振動板4と、貯留室形成基板5と、配線基板8と、コンプライアンスシート61と、コンプライアンスシート62と、を備えている。
【0018】
図2に示すように、ノズル基板60は、Y軸方向に沿って長尺な板状部材である。ノズル基板60は、X-Y平面と略平行となるように配置されている。ノズル基板60は、例えば、エッチング等の半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ノズル基板60には、M個のノズルNzが形成される。Mは、1以上の自然数である。ノズルNzは、ノズル基板60に設けられた貫通孔である。本実施形態では、ノズル基板60において、M個のノズルNzは、Y軸方向に延在するノズル列Lnを形成するように配列されている。
【0019】
図2に示すように、ノズル基板60の-Z方向側の面上には、連通板2が設けられている。連通板2は、Y軸方向に沿って長尺な板状部材である。連通板2は、X-Y平面と略平行となるように配置されている。連通板2は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。
【0020】
図2に示すように、連通板2には、インクの流路が形成されている。具体的には、連通板2には、Y軸方向に延在する一つの共通供給流路RA1と、Y軸方向に延在する一つの共通排出流路RA2とが形成されている。
図3に示すように、連通板2には、さらに、M個のノズルNzのそれぞれに対応するM個のノズル流路RN、M個の供給流路RR1、M個の排出流路RR2、M個の連通流路RK1、M個の連通流路RK2、M個の連通流路RX1、ならびにM個の連通流路RX2が形成されている。連通板2には、M個のノズルNzに共通に設けられた一つの連通流路RX1が形成されてもよく、M個のノズルNzに共通に設けられた一つの連通流路RX2が形成されてもよい。
【0021】
図3に示すように、連通流路RX1は、共通供給流路RA1と接続されている。連通流路RX1は、X軸方向に沿って共通供給流路RA1から-X方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RX1には、連通流路RK1が接続されている。連通流路RK1は、Z軸方向に沿って連通流路RX1から-Z方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RK1は、後述する圧力室CB1の一端に接続されている。圧力室CB1の他端には、供給流路RR1が接続されている。供給流路RR1は、圧力室CB1からZ軸方向に沿って+Z方向に向かって延在するように設けられている。供給流路RR1は、ノズル流路RNの一端に接続されている。ノズル流路RNには、ノズル流路RNに対応する一つのノズルNzが設けられている。なお、
図2、
図3に示すように、本実施形態ではノズル流路RNのノズルNz近傍では、ノズル流路RNのノズルNz近傍以外に比べ、流路の+Z方向の幅が大きく、且つ、+Y方向の幅が大きくなっている。これにより、ノズルNz近傍でのインクの流速を上げ、ノズルNz近傍でインクの増粘等が滞留することを防ぎ、吐出特性の低下を抑えることができる。但し、本実施形態はこの系に限定されるものではなく、例えばノズル流路RNのノズルNz近傍と、ノズル流路RNのノズルNz近傍以外とで、流路の+Z方向の幅が同じであり、且つ、+Y方向の幅も同じであっても良い。
【0022】
ノズル流路RNの他端には、排出流路RR2が接続されている。排出流路RR2は、Z軸方向に沿ってノズル流路RNから-Z方向に向かって延在するように設けられている。排出流路RR2は、後述する圧力室CB2の一端に接続されている。圧力室CB2の他端には、連通流路RK2が接続されている。連通流路RK2は、圧力室CB2からZ軸方向に沿って+Z方向に向かって延在するように設けられている。連通流路RK2には、連通流路RX2の一端が接続されている。連通流路RX2は、X軸方向に沿って連通流路RK2から-X方向に延在するように設けられている。連通流路RX2の他端は、共通排出流路RA2に接続されている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、連通板2の+Z方向側の面には、共通供給流路RA1、連通流路RX1、ならびに連通流路RK1を閉塞するように、コンプライアンスシート61が設けられている。コンプライアンスシート61には、例えば、弾性材料が用いられる。コンプライアンスシート61は、共通供給流路RA1、連通流路RX1、ならびに連通流路RK1内のインクの圧力変動を吸収する。連通板2の+Z方向側の面には、共通排出流路RA2、連通流路RX2、ならびに連通流路RK2を閉塞するように、コンプライアンスシート62が設けられている。コンプライアンスシート62は、例えば、弾性材料であり、共通排出流路RA2、連通流路RX2、ならびに連通流路RK2内のインクの圧力変動を吸収する。
【0024】
図2および
図3に示すように、連通板2の-Z方向側の面上には、貯留室形成基板5が設けられている。貯留室形成基板5は、Y軸方向に長尺な部材である。貯留室形成基板5は、例えば、樹脂材料の射出成形により形成される。貯留室形成基板5の内部には、インクの流路が形成されている。具体的には、貯留室形成基板5には、一つの共通供給流路RB1と、一つの共通排出流路RB2とが形成されている。共通供給流路RB1は、共通供給流路RA1と連通し、共通排出流路RB2は、共通排出流路RA2と連通する。
【0025】
貯留室形成基板5には、共通供給流路RB1と連通する導入口51と、共通排出流路RB2と連通する排出口52とが設けられている。共通供給流路RB1には、液体容器93からのインクが導入口51を介して供給される。また、共通排出流路RB2に貯留されたインクは、排出口52を介して回収される。
【0026】
本実施形態において、循環機構94によって液体容器93から導入口51に供給されたインクは、共通供給流路RB1を経由して、共通供給流路RA1に流入する。共通供給流路RA1に流入したインクの一部は、連通流路RX1および連通流路RK1に分流されて、各圧力室CB1に流入する。圧力室CB1に流入したインクの一部は、供給流路RR1と、ノズル流路RNと、排出流路RR2とをこの順に経由して、圧力室CB2に流入する。圧力室CB2に流入したインクの一部は、連通流路RK2と、連通流路RX2とをこの順に経由した後に、共通排出流路RA2で合流され、共通排出流路RB2を経由して、排出口52から排出される。以下の説明において、共通供給流路RA1から共通排出流路RA2までのインクの流路を、循環流路RJとも呼ぶ。具体的には、循環流路RJには、共通供給流路RA1と、連通流路RX1と、連通流路RK1と、圧力室CB1と、供給流路RR1と、ノズル流路RNと、排出流路RR2と、圧力室CB2と、連通流路RK2と、連通流路RX2と、共通排出流路RA2とが含まれる。
図4に示すように、共通供給流路RA1と、共通排出流路RA2とは、M個のノズルNzのそれぞれに対応するM個の循環流路RJによって接続されている。
【0027】
図2および
図3に示すように、貯留室形成基板5には、開口50が設けられている。開口50の内側には、圧力室基板3と、振動板4と、配線基板8とが設けられている。圧力室基板3は、Y軸方向に長尺な板状部材である。圧力室基板3は、連通板2の-Z方向側の面上に設けられている。圧力室基板3は、X-Y平面に略平行となるように配置されている。圧力室基板3は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。圧力室基板3には、インクの流路が形成されている。具体的には、圧力室基板3には、M個のノズルNzのそれぞれに対応するM個の圧力室CB1およびM個の圧力室CB2が形成されている。
【0028】
圧力室CB1は、連通流路RK1と供給流路RR1とを連通するように、X軸方向に延在して設けられている。圧力室CB2は、連通流路RK2と排出流路RR2とを連通するように、X軸方向に延在して設けられている。以下の説明において、圧力室CB1および圧力室CB2を区別しない場合には、圧力室CBqとも呼ぶ。
【0029】
振動板4は、Y軸方向に長尺な板状部材である。
図2および
図3に示すように、振動板4は、圧力室基板3の-Z方向側の面上に設けられている。振動板4は、弾性的に振動可能な部材であり、圧力室CBq内の液体に圧力を付与する。振動板4は、X-Y平面に略平行となるように配置されている。振動板4の-Z方向側の面上には、M個の圧力室CB1のそれぞれに対応するM個の圧電素子PZ1と、M個の圧力室CB2のそれぞれに対応するM個の圧電素子PZ2と、が設けられている。以下の説明において、圧電素子PZ1および圧電素子PZ2を区別しない場合には、圧電素子PZqとも呼ぶ。圧電素子PZqは、駆動信号Comの電気エネルギーを運動エネルギーに変換する、エネルギー変換素子である。本実施形態において、圧電素子PZqは、駆動信号Comの電位変化に応じて変形する受動素子である。
【0030】
配線基板8は、振動板4の-Z方向側に実装されている。配線基板8は、制御装置90と、液体吐出ヘッド1とを電気的に接続するための部品である。配線基板8としては、例えば、FPCまたはFFC等の可撓性の配線基板が用いられる。配線基板8には、駆動回路81が実装されている。駆動回路81は、制御信号SIに基づいて、圧電素子PZqに駆動信号Comを供給するか否かを切り替える。
【0031】
図5は、圧電素子PZqの近傍を拡大した断面図である。
図5に示すように、圧電素子PZqは、下部電極ZDqと、上部電極ZUqとの間に、圧電体ZMqを介在させた積層体である。圧電素子PZqの+Z方向側には、圧力室CBqが設けられている。下部電極ZDqには、所定の基準電位が供給される。駆動回路81は、配線810を介して、上部電極ZUqに対して駆動信号Comを供給する。圧電素子PZ1に供給される駆動信号Comを、駆動信号Com1とも呼び、圧電素子PZ2に供給される駆動信号Comを、駆動信号Com2とも呼ぶ。本実施形態では、ノズルNzからインクを吐出させる際に、駆動回路81がノズルNzに対応する圧電素子PZ1に供給する駆動信号Com1の波形と、駆動回路81がノズルNzに対応する圧電素子PZ2に供給する駆動信号Com2の波形とが、略同じである。
【0032】
圧電素子PZqは、駆動信号Comの電位変化に応じて変形する。振動板4は、圧電素子PZqの変形に連動して振動する。振動板4の振動によって、圧力室CBq内の圧力は変動する。圧力室CBq内の圧力が変動することによって、圧力室CBqの内部に充填されたインクは、供給流路RR1、排出流路RR2、ならびにノズル流路RNを経由して、ノズルNzから吐出される。具体的には、駆動信号Com1により圧電素子PZ1が駆動される場合、圧力室CB1内部に充填されているインクの一部は、供給流路RR1とノズル流路RNとを経由して、ノズルNzから吐出される。駆動信号Com2により圧電素子PZ2が駆動される場合、圧力室CB2内部に充填されているインクの一部は、排出流路RR2とノズル流路RNとを経由して、ノズルNzから吐出される。
【0033】
本実施形態の液体吐出装置100は、共通供給流路RA1から循環流路RJを経由して共通排出流路RA2へとインクを循環させる。そのため、圧力室CBq内部のインクがノズルNzから吐出されない期間が存在する場合であっても、圧力室CBq内部及びノズル流路RN等において、インクが滞留することを低減または防止できる。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、圧力室CBq及びノズル流路RN内部のインクが増粘することを低減または防止し、ノズルNzからインクが吐出できなくなる吐出異常の発生を低減または防止することができる。
【0034】
本実施形態の液体吐出装置100は、圧力室CB1内部に充填されているインクと、圧力室CB2内部に充填されているインクとを、一つのノズルNzから吐出する。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、例えば、1個の圧力室CBq内部に充填されているインクのみをノズルNzから吐出する態様と比較して、ノズルNzからのインクの吐出量を増大させることができる。
【0035】
本実施形態の液体吐出装置100では、さらに、ノズルNzでの粒子存在確率のシミュレーション結果に基づいて、インクのパラメーターと、液体吐出ヘッド1の設定条件とが設定されている。粒子存在確率とは、インクの単位体積あたりに粒子が存在する確率を意味する。インクの性能を適正に発揮させる観点から、粒子存在確率は、高いことが好ましい。具体的には、粒子存在確率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0036】
インクのパラメーターには、インクの粘度と、インクに含有される色材の粒子径とが含まれる。液体吐出ヘッド1の設定条件には、液体吐出ヘッド1内のインクの循環流量と、ノズルNzからのインクの吐出量とが含まれる。インクの循環流量とは、例えば、供給流路RR1、ノズル流路RN、ならびに排出流路RR2などの液体吐出ヘッド1内の流路を流動するインクの流量を意味する。インクの循環流量は、循環機構94によって調節可能である。具体的には、循環機構94の出力を大きくすることにより、ノズル流路RNを流動するインクの循環流量は大きくなる。循環流量は、インクの増粘を抑制する観点から1E-13m2/s以上であることが好ましく、1E-12m2/s以上であることがより好ましい。ノズルNzからのインクの吐出量は、例えば、圧電素子PZqに供給する駆動信号Comの電位変化によって調節可能である。具体的には、圧電素子PZqに供給する駆動信号Comの電位変化を大きくすることにより、インクの吐出量は大きくなる。
【0037】
図6から
図9を用いて、インクのパラメーターおよび液体吐出装置100の設定条件と、ノズルNzでの粒子存在確率との相関を示すシミュレーションの結果について説明する。シミュレーションでは、インクのパラメーターとしてのインクの粘度およびインクに含有される色材の粒子径と、液体吐出装置100の設定条件としてのインクの循環流量およびノズルNzからのインクの吐出量との各因子が、ノズルNzでの粒子存在確率に与える影響について評価した。
【0038】
図6は、インクの粘度と、ノズルNz内のインクが有する粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
図6の縦軸は、インクの粘度を示し、横軸はノズルNzでの粒子存在確率を示している。液体吐出装置100の設定条件は、吐出量が3E-12m
2/sであり、循環流量が1.2E-9m
2/sである。インクに含有される色材の粒子径は5umである。
【0039】
図6に示すように、粘度が1mPa・sであるとき、ノズルNzでの粒子存在確率は、6.3%を示した。粘度が4mPa・sであるとき、粒子存在確率は、55.2%を示した。粘度が40mPa・sであるとき、粒子存在確率は、100%を示した。このように、ノズルNzでの粒子存在確率は、粘度が高くなるにしたがって上昇する。一般に、液体の粘度が低いほど、液体に含有される粒子は沈降し易くなる。そのため、液体に含有される粒子は、液体の流動による力的な影響を受けにくくなる。したがって、ノズルNzでの粒子存在確率がインクの粘度が低いほど小さくなるのは、粘度が低いインクがノズル流路RNを流動したとしても、粒子はインクの流動による力的な影響を受けにくく、ノズル流路RNからノズルNzには粒子が流動されにくいことに起因すると考えられる。
【0040】
図7は、インクに含有される粒子の粒子径と、ノズルNzでの粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
図7の縦軸は、色材の粒子径を示し、横軸はノズルNzでの粒子存在確率を示している。液体吐出装置100の設定条件としては、吐出量が3E-12m
2/sであり、循環流量が1.2E-9m
2/sである。インクの粘度は、4mPa・sで設定されている。
【0041】
図7に示すように、粒子径が5umであるとき、シミュレーションによる粒子存在確率は、55.2%を示した。粒子径が8umであるとき、粒子存在確率は、12.6%を示した。このように、ノズルNzでの粒子存在確率は、粒子径が大きくなるにしたがって減少する。一般に、液体に含有される粒子の粒子径が大きいほど、液体の流動による力的な影響を受けやすくなる。粒子径が大きくなるにしたがってノズルNzでの粒子存在確率が減少するのは、ノズル流路RNからノズルNzへと流動するインクの流動の影響を粒子が受けることにより、ノズルNzへと流動されやすくなることに起因すると考えられる。
【0042】
図8は、インクの吐出量と、ノズルNzでの粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
図8の縦軸は、ノズルNzからのインクの吐出量を示し、横軸はノズルNzでの粒子存在確率を示している。液体吐出装置100の設定条件としては、循環流量が1.2E-9m
2/sである。インクの粘度は、1mPa・sであり、インクに含有される色材の粒子径は5umである。
【0043】
図8に示すように、インクの吐出量が3E-12m
2/sであるとき、粒子存在確率は、6.3%を示した。吐出量が3E-10m
2/sであるとき、粒子存在確率は、93.4%を示した。このように、ノズルNzでの粒子存在確率は、吐出量が大きくなるにしたがって増加する。一般に、ノズルNzからのインクの吐出量が大きいほど、ノズルNzへのインクの供給量は大きくなる。インクの吐出量が大きくなるにしたがってノズルNzでの粒子存在確率が増加するのは、ノズルNzへ流動するインクの影響を受けて粒子がノズルNzへと供給されやすくなることに起因すると考えられる。
【0044】
図9は、循環流量と、ノズルNzでの粒子存在確率との相関を評価したシミュレーション結果を示すグラフである。
図9の縦軸は、インクの循環流量を示し、横軸はノズルNzでの粒子存在確率を示している。液体吐出装置100の設定条件としては、吐出量が3E-12m
2/sである。インクの粘度は、4mPa・sであり、インクに含有される色材の粒子径は5umである。
【0045】
図9に示すように、循環流量が1.2E-9m
2/sであるとき、粒子存在確率は、55.2%を示した。循環流量が1.5E-10m
2/sであるとき、粒子存在確率は、61.9%を示した。循環流量が7.5E-11m
2/sであるとき、粒子存在確率は、72.9%を示した。このように、ノズルNzでの粒子存在確率は、循環流量の減少にしたがって増加する。循環流量が大きいほど、ノズル流路RNのインクの流量は大きくなる。ノズル流路RNでのインクの流量が大きくなると、粒子はノズル流路RNのインクの流動による力的な影響を受けやすくなる。そのため、粒子は、ノズル流路RNからノズルNzには供給されにくくなることに起因すると考えられる。
【0046】
図10は、本実施形態の制御装置90が実行する液体吐出装置の制御方法を示すフローチャートである。本フローは、例えば、液体吐出装置100の電源がオンにされることにより開始する。本フローでは、吐出量は、固定値であり、3E-12m
2/sで設定されている。本フローは、液体容器93の取り替えが完了した際に開始されてもよい。本実施形態の液体吐出装置100では、インクの増粘を抑制する観点から循環流量を1E-12m
2/s以上に設定しつつ、インクの性能の低下を抑制する観点から粒子存在確率が60%以上となるように、インクのパラメーターおよび液体吐出装置100の設定条件に上述のシミュレーション結果を反映している。
【0047】
ステップS10では、制御装置90は、インクの粘度および粒子径の平均値の情報を取得する。制御装置90は、液体容器93に備えられる図示しないチップを検出して、液体容器93内のインクの粘度や粒子径の平均値といったインクのパラメーターを取得する。或いは、制御装置90は、液体吐出装置100内のインクの粘度や粒子径の平均値を測定する機構を備えていても良い。また、液体吐出装置100は、入力部とディスプレイとを備えてもよく、ユーザがディスプレイの表示にしたがって入力部へ入力することによって、制御装置90は、インクの粘度や粒子径の平均値を取得しても良い。ステップS20では、取得した粒子径の平均値が予め定められた閾値より大きいか否かを判定する。本実施形態では、ステップS20における予め定められた閾値は、6umで設定されている。取得した粒子径の平均値が6um以下である場合には(S20:NO)、制御装置90は、ステップS30に移行し、インクの粒子径を、第1粒子径と判定する。
【0048】
ステップS40では、制御装置90は、取得したインクの粘度と、予め定められた閾値とを比較する。本実施形態では、ステップS40における予め定められた閾値は、3mPa・sで設定されている。インクの粘度が3mPa・s以下である場合には(S40:NO)、制御装置90は、ステップS50に移行し、インクの粘度を、第1粘度と判定する。含有する粒子の粒子径が第1粒子径であり、粘度が第1粘度であるインクを第1液体とも呼ぶ。
【0049】
ステップS60では、制御装置90は、第1液体の循環流量が第1流量となるように循環機構94の動作を制御する。第1流量とは、1E-12m2/sから1E-11m2/sまでの範囲に含まれる吐出量を意味する。本実施形態において、第1流量は、6.40E-11m2/sで設定されている。循環流量は、設定値に対して-20%から+20%までの誤差を有してよく、粒子存在確率のばらつきを抑制する観点から設定値に対して-10%から+10%までの誤差以内であることが好ましい。制御装置90は、循環流量を第1流量に設定すると本フローを終了する。
【0050】
ステップS40において、インクの粘度が3mPa・sよりも大きい場合には(S40:YES)、制御装置90は、ステップS52に移行し、インクの粘度を、第1粘度よりも大きい第2粘度と判定する。含有する粒子の平均粒子径が第1粒子径であり、粘度が第2粘度であるインクを第4液体とも呼ぶ。
【0051】
ステップS62では、制御装置90は、第1液体の第1粘度よりも高い第2粘度を有する第4液体での粒子存在確率を60%以上とするために、第4液体の循環流量が第1液体での第1流量よりも大きい第4流量となるように、循環機構94の動作を制御する。本実施形態において、第4流量は、1.50E-10m2/sである。制御装置90は、循環流量を第4流量に設定すると本フローを終了する。
【0052】
ステップS20において、取得した粒子径の平均値が6umよりも大きい場合には(S20:YES)、制御装置90は、ステップS32に移行し、インクの粒子径を、第1粒子径よりも大きい第2粒子径と判定する。ステップS42では、制御装置90は、取得したインクの粘度と、予め定められた閾値とを比較する。本実施形態では、ステップS42における予め定められた閾値は、ステップS40と同様に3mPa・sで設定されている。ステップS42での閾値は、ステップS40とは異なる値で設定されてもよい。
【0053】
インクの粘度が3mPa・s以下である場合には(S42:NO)、制御装置90は、ステップS54に移行し、インクの粘度を、第3粘度と判定する。第3粘度は、第4粘度よりも小さい粘度であれば足り、例えば、第1粘度と等しくてもよい。含有する粒子の平均粒子径が第2粒子径であり、粘度が第3粘度を有するインクを第2液体とも呼ぶ。
【0054】
ステップS64では、制御装置90は、第2液体の循環流量を、第2流量に設定する。本実施形態において、第2流量は、1.80E-11m2/sである。第2液体が第1液体に含有される粒子の第1粒子径よりも大きい第2粒子径を有することから、第2流量は、粒子存在確率を60%以上とするために、第1流量よりも小さい循環流量で設定されている。なお、本実施形態の液体吐出装置100では、第2液体が第1流量で供給される場合には、ノズルNzでの粒子存在確率は60%未満を示す。制御装置90は、第2液体の循環流量を設定すると本フローを終了する。
【0055】
ステップS42において、インクの粘度が3mPa・sよりも大きい場合には(S42:YES)、制御装置90は、ステップS56に移行し、インクの粘度が、第3粘度よりも高い第4粘度と判定する。第4粘度は、第3粘度よりも大きい粘度であれば足り、例えば、第2粘度と等しくてもよい。含有する粒子の平均粒子径が第2粒子径であり、粘度が第4粘度であるインクを第5液体とも呼ぶ。
【0056】
ステップS66では、制御装置90は、第5液体の循環流量を、第5流量に設定する。本実施形態において、第5流量は、7.70E-11m2/sである。第5液体が第2液体の第3粘度よりも高い第4粘度を有することから、第5流量は、粒子存在確率を60%以上とするために、第2液体の第2流量よりも大きい第5流量で設定されている。制御装置90は、第5液体の循環流量を設定すると本フローを終了する。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態の液体吐出装置100によれば、制御装置90は、第1液体に含有される粒子の第1粒子径よりも大きい第2粒子径を有する粒子を含有する第2液体が供給される場合には、循環流量が第1流量よりも小さい第2流量となるように循環機構94を制御する。本実施形態の液体吐出装置100は、粒子径が大きくなることによって低下し得るノズルNzでの粒子存在確率を、循環流量を低下させることにより補填することができる。したがって、異なる粒子径を有するインクが液体吐出ヘッド1に供給される場合であっても、インクが含有する粒子の粒子径に対応する循環流量に調節することにより、インクの増粘を抑制しつつ、粒子存在確率が低下することによってインクの性能が低下する不具合の発生を低減または抑制することができる。
【0058】
本実施形態の液体吐出装置100によれば、制御装置90は、粒子径の平均値が第2粒子径である粒子を含有し、第2液体が有する第3粘度よりも高い第4粘度を有する第5液体が液体吐出ヘッド1に供給される場合に、循環流量が第2流量よりも大きい第5流量となるように循環機構94を制御する。本実施形態の液体吐出装置100では、粘度が高くなることによって増加し得る粒子存在確率に対応する分だけ、循環流量を増加させる余剰を得ることができる。したがって、粘度が高いインクが供給される場合に、粒子存在確率が低下することによってインクの性能が低下する不具合の発生を低減しつつ、循環流量をより増加させることによって、インクの増粘をより低減させることができる。
【0059】
本実施形態の液体吐出装置100によれば、制御装置90は、粒子径の平均値が第1粒子径である粒子を含有し、第1液体が有する第1粘度よりも高い第2粘度を有する第4液体が液体吐出ヘッド1に供給される場合に、循環流量が第1流量よりも大きい第4流量となるように循環機構94を制御する。本実施形態の液体吐出装置100では、粒子径が小さく、かつ粘度が高くなることによってノズルNzでの粒子存在確率はより増加し得る。そのため、粒子径が小さく、かつ粘度が高くなることによって増加し得る粒子存在確率に対応する分だけ、循環流量を増加させる余剰を得ることができる。したがって、粒子径が小さく粘度が高いインクが供給される場合に、インクを循環させて増粘をより抑制しつつ、インクの性能の低下を抑制することができる。
【0060】
本実施形態の液体吐出装置100によれば、液体容器93に貯留される第1液体と、第2液体とを含む複数の種類の液体のすべてを一の液体吐出ヘッド1に供給することができる。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、複数の種類のインクが供給される場合であっても、インクの種類に応じてインクの増粘を抑制しつつ、インクの性能の低下を抑制することができる。
【0061】
本実施形態の液体吐出装置100によれば、第1液体を第1流量で液体吐出ヘッドに供給する場合に、ノズルNzでの粒子存在確率は60%以上であり、第2液体を第2流量で液体吐出ヘッドに供給する場合のノズルNzでの粒子存在確率は60%以上である。したがって、本実施形態の液体吐出装置100は、第1液体および第2液体のインクとしての性能が低下することを低減または抑制することができる。
【0062】
B.他の実施形態:
(B1)
図11は、他の実施形態1に係る液体吐出装置100のパラメーター設定を示す説明図である。粘度VCは、1mPa・sであり、吐出量VAは3E-12m
2/sである。
図11には、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とするために必要な循環流量の設定値が、インク内に含有される粒子の粒子径PSごとに示されている。
図11に示すように、本実施形態の液体吐出装置100では、供給されるインクの粒子径PSが大きくなるにしたがって、循環流量が小さくされるように設定されている。これにより、異なる粒子径PSを有するインクが供給される場合であっても、それぞれの粒子径PSに対応する循環流量となるように循環機構94を制御し、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とすることができる。なお、
図11から
図16までに示す循環流量は、図中に記載される値のみには限定されず、記載される値に対して-20%から+20%までの範囲内であればよい。循環流量は、ノズルNzでの粒子存在確率のばらつきを抑制する観点から-10%から+10%までの範囲よりも小さいことが好ましい。
【0063】
上記第1実施形態では、第1粒子径を有する場合の循環流量としての第1流量が、例えば、6.40E-11m
2/sであり、第1粒子径よりも大きい第2粒子径を有する場合の循環流量としての第2流量が、例えば、1.80E-11m
2/sである例を示した。これに対して、
図11に示すように、制御装置90は、さらに、粒子径PSの平均値が第2粒子径よりも大きい第3粒子径である粒子を含有する第3液体が液体吐出ヘッド1に供給される場合に、第3液体の循環流量が第2流量よりも小さい第3流量となるように循環機構94を制御してもよい。第3粒子径とは、例えば、13umであり、第3流量とは、例えば、7.30E-12m
2/sである。
【0064】
この形態の液体吐出装置100は、例えば、3種類以上の粒子径のように、異なる粒子径PSを有する複数の種類の液体が液体吐出ヘッド1に供給される場合であっても、それぞれの液体に対応する循環流量に調節することができる。したがって、異なる3種類以上の粒子径を有するインクが供給される場合であっても、インクを循環させて増粘を抑制しつつ、インクの性能の低下を抑制することができる。
【0065】
(B2)上記第1実施形態では、ステップS20において、粒子径の大きさを確認した後に、ステップS40またはステップS42において、インクの粘度を確認する例、すなわち、粒子径、粘度の順序で液体のパラメーターを確認する形態を示した。これに対して、液体吐出装置100は、粘度を確認した後に粒子径を確認してもよい。
【0066】
図12は、他の実施形態2に係る液体吐出装置100のパラメーター設定を示す説明図である。粒子径PSは、5umであり、吐出量VAは3E-12m
2/sである。
図12には、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とするために必要な循環流量の設定値が、インクの粘度VCごとに示されている。
図12に示すように、本実施形態の液体吐出装置100では、供給されるインクの粘度VCが大きくなるにしたがって、循環流量が大きくされるように設定されている。これにより、異なる粘度VCを有するインクが供給される場合であっても、それぞれの粘度VCに対応する循環流量となるように循環機構94を制御し、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上にすることができる。
【0067】
本実施形態の液体吐出装置100は、制御装置90は、第1粘度を有するインクが液体吐出ヘッド1に供給される場合に、循環流量が第1流量となるように循環機構94を制御する。具体的には、第1粘度は、例えば、1mPa・sであり、第1流量は、例えば、6.40E-11である。さらに、制御装置90は、第1粘度よりも大きい第2粘度を有する第4液体が液体吐出ヘッド1に供給される場合に、循環流量が第1流量よりも大きい第4流量となるように循環機構94を制御する。第2粘度は、4mPa・sであり、第4流量は、1.50E-10である。
【0068】
この形態の液体吐出装置100によれば、例えば、粘度が異なる複数の種類の液体が供給される場合であっても、それぞれの粘度に対応する循環流量に調節することができる。したがって、異なる粘度を有するインクが供給される場合であっても、インクの増粘を抑制しつつ、インクの性能の低下を抑制することができる。本実施形態の液体吐出装置100では、粘度が高くなることによって増加し得る粒子存在確率に対応する分だけ、循環流量を増加させている。したがって、粘度が高いインクが供給される場合に、インクの増粘をより抑制しつつ、インクの性能の低下を抑制することができる。
【0069】
本実施形態の液体吐出装置100は、制御装置90は、さらに、第2粘度よりも大きい第5粘度を有する第6液体が液体吐出ヘッド1に供給される場合に、第6液体の循環流量が第4流量よりも大きい第8流量となるように循環機構94を制御する。例えば、第5粘度は、40mPa・sであり、第8流量は、9.80E-9m2/sである。
【0070】
この形態の液体吐出装置100によれば、例えば、3種類以上の粘度のように、粘度VCが異なる複数の種類の液体のそれぞれに対応する循環流量に調節することができる。したがって、異なる3種類以上の粘度を有するインクが液体吐出ヘッド1に供給される場合であっても、インクを循環させて増粘を抑制しつつ、インクの性能の低下を抑制することができる。
【0071】
(B3)
図13は、他の実施形態3に係る液体吐出装置100のパラメーター設定を示す説明図である。粒子径PSは、8umであり、吐出量VAは3E-12m
2/sである。
図13には、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とするために必要な循環流量の設定値が、インクの粘度VCごとに示されている。上記第1実施形態では、制御装置90は、平均粒子径が第2粒子径である場合に、粘度VCが予め定められた閾値である3mPa・s以下である場合に循環流量を第2流量に設定し、3mPa・sよりも大きい場合には、第2流量よりも大きい第5流量となるように循環機構94を制御する例を示した。これに対して、
図13に示すように、例えば、供給されるインクの粘度VCが3mPa・sよりも大きく10mPa・s以下である場合に循環流量を第5流量となるように制御し、さらに、10mPa・sよりも大きい粘度VCのインクが供給される場合には、例えば、10~20mPa・s、20~30mPa・sのように、それぞれの粘度VCの範囲ごとに対応する循環流量が設定されていてもよい。
【0072】
(B4)上記第1実施形態では、吐出量は、3E-12m2/sの固定値である例を示した。これに対して、液体吐出装置100は、吐出量に応じて循環流量を調節してもよい。
【0073】
図14は、他の実施形態4に係る液体吐出装置100のパラメーター設定を示す説明図である。粒子径PSは、5umであり、粘度VCは1mPa・sである。
図14には、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とするために必要な循環流量の設定値が、ノズルNzからのインクの吐出量VAごとに示されている。具体的には、ノズルNzからの吐出量VAが大きくなるにしたがって、循環流量が大きくされるように設定されている。これにより、ノズルNzからの吐出量VAが複数の種類に変更される場合であっても、それぞれの吐出量VAに対応する循環流量となるように循環機構94を制御し、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上にすることができる。
【0074】
制御装置90は、
図10に示すステップS20で粒子径PSを確認した後に、第1液体の単位時間あたりの吐出量VAを確認してもよい。吐出量VAが第1吐出量である場合に、第1液体の循環流量が第1流量となるように循環機構94を制御してよい。具体的には、第1吐出量は、3E-12m
2/sであり、第1流量は、6.40E-11m
2/sである。また、ステップS20で粒子径PSを確認した後に、第2液体の吐出量VAを第1吐出量よりも大きい第2吐出量としてもよく、この場合において、第2液体の循環流量が第1流量よりも大きい第6流量となるように循環機構94を制御してもよい。具体的には、第2吐出量は、3E-10m
2/sであり、第6流量は、1.20E-9m
2/sである。
【0075】
この形態の液体吐出装置100によれば、循環流量を増加させて、インクの増粘をより抑制させることができるとともに、循環流量の増加に伴い減少し得る粒子存在確率を、吐出量VAを大きくさせることによって補填することができる。したがって、ノズルNzの粒子存在確率の低下を抑制することによってインクの性能の低下を抑制しつつ、循環量を増加させてインクの増粘の発生をより確実に低減または抑制することができる。
【0076】
制御装置90は、
図10に示すステップS20で粘度VCを確認した後に、インクの単位時間あたりの吐出量VAの大きさを確認してもよい。例えば、制御装置90は、ステップS20を実行した後に、インクの吐出量VAを第1吐出量とする場合に、循環流量が第1流量となるように循環機構94を制御し、吐出量VAを第1吐出量よりも大きい第2吐出量とする場合に、循環流量が第1流量よりも大きい第6流量となるように循環機構94を制御してもよい。具体的には、第2吐出量は、3E-10m
2/sであり、第6流量は、1.20E-9m
2/sである。この形態の液体吐出装置100によれば、吐出量の増加により高くなる粒子存在確率に対応する分だけ、循環流量を大きくさせることにより、第1液体の性能の低下を抑制しつつ、循環量を増加させてインクの増粘の発生をより確実に低減または抑制することができる。
【0077】
図15は、他の実施形態4に係る液体吐出装置100のパラメーター設定を示す第2の説明図である。粒子径PSは、8umであり、粘度VCは1mPa・sである。
図15には、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とするために必要な循環流量の設定値が、吐出量VAごとに示されている。具体的には、吐出量VAが大きくなるにしたがって、循環流量が大きくなるように設定されている。液体吐出装置100は、吐出量VAに対応する循環流量となるように循環機構94を制御してもよい。
【0078】
制御装置90は、ステップS20を実行した後に、ステップS42において、吐出量が予め定められた閾値よりも大きいか否かを判定してもよい。例えば、ステップS42において、第2液体の吐出量VAを第3吐出量とする場合に、循環流量が第2流量となるように循環機構94を制御する。また、第2液体の吐出量VAを第3吐出量よりも大きい第4吐出量とする場合には、循環流量が第2流量よりも大きい第7流量となるように循環機構94を制御してもよい。具体的には、第3吐出量は、3E-12であり、第4吐出量は、3E-10である。第3吐出量は、上述した第1吐出量と等しく、第4吐出量は、上述した第2吐出量と等しいが、第1吐出量や第2吐出量以外の任意の吐出量で設定されてもよい。
【0079】
この形態の液体吐出装置100によれば、第2液体の循環流量を増加させることにより、第2液体の増粘を抑制させるとともに、循環流量の増加に伴って減少する粒子存在確率を、吐出量VAを大きくさせることによって補填することができる。したがって、第2液体の性能が低下することを抑制しつつ、第2液体の増粘の発生をより確実に防止または抑制することができる。
【0080】
(B5)上記第1実施形態では、ステップS20において、粒子径の大きさを確認したうえでステップS40またはステップS42においてインクの粘度を確認する形態、すなわち、粒子径、粘度の順序で液体のパラメーターを確認する形態を例として示した。これに対して、液体吐出装置100は、粘度、吐出量の順序で確認したうえで循環流量を設定してもよい。液体吐出装置100は、第1液体とは粘度が異なる第4液体に対しても、粒子存在確率が60%以上になる吐出量VAに対応する循環流量となるように循環機構94を制御してもよい。
【0081】
図16は、他の実施形態5に係る液体吐出装置100のパラメーター設定を示す説明図である。粒子径PSは、5umであり、粘度VCは4mPa・sである。
図16には、ノズルNzでの粒子存在確率を60%以上とするために必要な循環流量の設定値が、吐出量VAごとに示されている。具体的には、吐出量VAが大きくなるにしたがって、循環流量が大きくなるように設定されている。液体吐出装置100は、吐出量VAに対応する循環流量となるように循環機構94を制御してもよい。
【0082】
本実施形態の液体吐出装置100では、第1粘度よりも大きい粘度VCである第2粘度を有する第4液体が液体吐出ヘッド1に供給されるとき、第4液体の吐出量VAを第5吐出量とする場合には、第4液体の循環流量は、第4流量となるように循環機構94を制御する。第4液体の吐出量VAを第5吐出量よりも大きい第6吐出量とする場合には、第4液体の循環流量は、第4流量よりも大きい第9流量となるように循環機構94を制御する。具体的には、第4流量は、1.50E-10m2/sであり、第9流量とは、5.60E-9m2/sである。第5吐出量は、3E-12であり、第6吐出量は、3E-10である。第5吐出量は、上述した第1吐出量と等しく、第6吐出量は、上述した第2吐出量と等しいが、第1吐出量や第2吐出量以外の任意の吐出量で設定されてもよい。
【0083】
この形態の液体吐出装置100によれば、制御装置90は、第1粘度よりも大きい第2粘度を有する第4液体に対して、吐出量が大きくなる場合には循環流量が大きくなるように循環機構94を制御する。循環流量の増加に伴い減少し得る粒子存在確率を、吐出量VAを大きくさせることによって補填することができる。したがって、第4液体の性能の低下を抑制しつつ、第4液体の循環量を増加させて増粘の発生をより確実に防止または抑制することができる。
【0084】
(B6)上記第1実施形態では、一つのノズルNzおよびノズル流路RNに対し、供給流路RR1を介して連通する一つの圧力室CB1と、圧力室CB1に対応する一つの圧電素子PZ1と、排出流路RR2を介して連通する一つの圧力室CB2と、圧力室CB2に対応する一つの圧電素子PZ2とを備えている。これに対して、一つのノズルNzおよびノズル流路RNに対して、圧力室が4つ備えられ、各圧力室に対応する4つの圧電素子が備えられてもよい。例えば、一つのノズルNzおよびノズル流路RNに2つの供給流路RR1を介して連通する2つの圧力室CB1と、圧力室CB1のそれぞれに対応する2つの圧電素子PZ1と、2つの排出流路RR2を介して当該ノズル流路RNに連通する2つの圧力室CB2と、圧力室CB2のそれぞれに対応する2つの圧電素子PZ2と、を備えてよい。
【0085】
(B7)上記第1実施形態では、循環機構94は、液体容器93に貯留される複数の種類の液体が一の液体吐出ヘッド1に供給される例を示した。これに対して、液体吐出装置100は、例えば、上記第1実施形態で示した液体吐出ヘッド1と同様の構成を備える第1液体吐出ヘッドと、同じく液体吐出ヘッド1と同様の構成を備える第2液体吐出ヘッドとを含む複数の液体吐出ヘッドを備えていてよい。この場合において、循環機構94は、例えば、第1液体を第1液体吐出ヘッドに供給し、第2液体を第2液体吐出ヘッドに供給してよい。この形態の液体吐出装置100によれば、インクの種類ごとに異なる液体吐出ヘッドを用いることができるので、一の液体吐出ヘッドに複数の種類の液体が供給される態様と比較して、インクの種類ごとの循環流量や吐出量の条件の切り換えが容易になる。
【0086】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0087】
(1)本開示の一形態によれば、粒子を含有する液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに循環させる前記液体の流量を調節する循環機構と、前記循環機構の動作を制御する制御装置と、を備える液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置では、前記液体吐出ヘッドは、前記液体に圧力を付与するための圧力室と、前記圧力室と連通する供給流路と、前記供給流路と連通するノズル流路と、前記ノズル流路に設けられ、前記圧力室で付与された圧力によって前記液体を吐出するノズルと、前記ノズル流路における前記ノズルを介した逆側に接続される排出流路と、を有する。前記制御装置は、粒子径の平均値が第1粒子径である粒子を含有する第1液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記供給流路と前記ノズル流路と前記排出流路とにおける前記第1液体の循環流量が第1流量となるように前記循環機構を制御し、粒子径の平均値が前記第1粒子径よりも大きい第2粒子径である粒子を含有する第2液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記第2液体の前記循環流量が前記第1流量よりも小さい第2流量となるように前記循環機構を制御する。この形態の液体吐出装置によれば、粒子径が大きくなることによって低下し得る粒子存在確率を、循環流量を低下させることにより補填することができる。したがって、異なる粒子径を有するインクが液体吐出ヘッドに供給される場合であっても、粒子径に対応するインクの循環流量に調節することにより、インクの増粘を抑制しつつ、インクの性能が低下することを抑制することができる。
【0088】
(2)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、さらに、粒子径の平均値が前記第2粒子径よりも大きい第3粒子径である粒子を含有する第3液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記第3液体の前記循環流量が前記第2流量よりも小さい第3流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、異なる3種類の粒子径を有する液体が供給される場合であっても、液体を循環させて増粘を抑制しつつ、液体の性能の低下を抑制することができる。
【0089】
(3)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、さらに、粒子径の平均値が前記第1粒子径である粒子を含有し、前記第1液体が有する第1粘度よりも高い第2粘度を有する第4液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第4流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、粒子径が小さく粘度が高い液体が供給される場合に、液体を循環させて増粘をより抑制しつつ、液体の性能の低下を抑制することができる。
【0090】
(4)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、さらに、粒子径の平均値が前記第2粒子径である粒子を含有し、前記第2液体の粘度である第3粘度よりも高い第4粘度を有する第5液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記循環流量が前記第2流量よりも大きい第5流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、粘度が高い液体が供給される場合に、粒子存在確率が低下することによって液体の性能が低下する不具合の発生を低減しつつ、循環流量をより増加させることによって、液体の増粘をより低減させることができる。
【0091】
(5)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、前記第1液体の単位時間あたりの吐出量を第1吐出量に設定する場合に、前記第1液体の前記循環流量が前記第1流量となるように前記循環機構を制御し、前記第2液体の前記吐出量を前記第1吐出量よりも大きい第2吐出量に設定する場合に、前記第2液体の前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第6流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、粒子存在確率の低下を抑制することによって液体の性能の低下を抑制しつつ、循環量を増加させて液体の増粘の発生をより確実に低減または抑制することができる。
【0092】
(6)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、前記第2液体の単位時間あたりの吐出量を第3吐出量に設定する場合に、前記第2液体の前記循環流量が前記第2流量となるように前記循環機構を制御し、前記第2液体の前記吐出量を前記第3吐出量よりも大きい第4吐出量に設定する場合に、前記循環流量が前記第2流量よりも大きい第7流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、第2液体の性能が低下することを抑制しつつ、第2液体の増粘の発生をより確実に防止または抑制することができる。
【0093】
(7)上記形態の液体吐出装置において、前記第1液体と前記第2液体との両方が1つの前記液体吐出ヘッドに供給されてよい。この形態の液体吐出装置によれば、複数の種類の液体が供給される場合であっても、供給される液体の種類に応じて液体の増粘を抑制しつつ、液体の性能の低下を抑制することができる。
【0094】
(8)上記形態の液体吐出装置において、前記第1液体を供給される第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドとは異なる第2液体吐出ヘッドであって、前記第2液体を供給される第2液体吐出ヘッドとを含む複数の前記液体吐出ヘッドを備えてよい。この形態の液体吐出装置によれば、液体の種類ごとに異なる液体吐出ヘッドを用いることができるので、一の液体吐出ヘッドに複数の種類の液体が供給される態様と比較して、液体の種類ごとの循環流量や吐出量の条件の切り換えが容易になる。
【0095】
(9)上記形態の液体吐出装置において、液体の単位体積あたりに粒子が存在する確率を粒子存在確率としたとき、前記第1液体を前記第1流量で前記液体吐出ヘッドに供給する場合に、前記ノズルにおいて、前記第1液体が有する前記粒子存在確率は60%以上であり、前記第2液体を前記第2流量で前記液体吐出ヘッドに供給する場合に、前記ノズルにおいて、前記第2液体が有する前記粒子存在確率は60%以上であってよい。この形態の液体吐出装置によれば、第1液体および第2液体の性能が低下することを低減または抑制することができる。
【0096】
(10)上記形態の液体吐出装置において、前記第2液体を前記第1流量で前記液体吐出ヘッドに供給する場合には、前記ノズルにおいて、前記第2液体が有する前記粒子存在確率は60%未満であってよい。この形態の液体吐出装置によれば、第2液体の性能が低下することを低減または抑制することができる。
【0097】
(11)本開示の他の形態によれば、粒子を含有する液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに循環させる前記液体の流量を調節する循環機構と、前記循環機構の動作を制御する制御装置と、を備える液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置では、前記液体吐出ヘッドは、前記液体に圧力を付与するための圧力室と、前記圧力室と連通する供給流路と、前記供給流路と連通するノズル流路と、前記ノズル流路に設けられ、前記圧力室で付与された圧力によって前記液体を吐出するノズルと、前記ノズル流路における前記ノズルを介した逆側に接続される排出流路と、を有する。前記制御装置は、第1粘度を有する第1液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記ノズル流路における前記第1液体の循環流量が第1流量となるように前記循環機構を制御し、前記第1粘度よりも大きい粘度である第2粘度を有する第4液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第4流量となるように前記循環機構を制御する。この形態の液体吐出装置によれば、粘度が高い液体が供給される場合に、液体の増粘をより抑制しつつ、液体の性能の低下を抑制することができる。
【0098】
(12)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、さらに、前記第2粘度よりも大きい粘度である第5粘度を有する第6液体が前記液体吐出ヘッドに供給される場合に、前記第6液体の前記循環流量が前記第4流量よりも大きい第8流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、異なる3種類以上の粘度を有する液体が液体吐出ヘッドに供給される場合であっても、液体を循環させて増粘を抑制しつつ、液体の性能の低下を抑制することができる。
【0099】
(13)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、前記第1液体の単位時間あたりの吐出量を第1吐出量に設定する場合に、前記第1液体の前記循環流量が前記第1流量となるように前記循環機構を制御し、前記第1液体の前記吐出量を前記第1吐出量よりも大きい第2吐出量に設定する場合に、前記第1液体の前記循環流量が前記第1流量よりも大きい第6流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、第1液体の性能の低下を抑制しつつ、循環量を増加させてインクの増粘の発生をより確実に低減または抑制することができる。
【0100】
(14)上記形態の液体吐出装置において、前記制御装置は、前記第4液体の単位時間あたりの吐出量を第5吐出量に設定する場合に、前記第4液体の前記循環流量が前記第4流量となるように前記循環機構を制御し、前記第4液体の前記吐出量を前記第5吐出量よりも大きい第6吐出量に設定する場合に、前記第4液体の前記循環流量が前記第4流量よりも大きい第9流量となるように前記循環機構を制御してよい。この形態の液体吐出装置によれば、第4液体の性能の低下を抑制しつつ、第4液体の循環量を増加させて増粘の発生をより確実に防止または抑制することができる。
【0101】
(15)上記形態の液体吐出装置において、前記第1液体と前記第4液体との両方が1つの前記液体吐出ヘッドに供給されてよい。この形態の液体吐出装置によれば、複数の種類の液体が供給される場合であっても、供給される液体の種類に応じて液体の増粘を抑制しつつ、液体の性能の低下を抑制することができる。
【0102】
(16)上記形態の液体吐出装置において、前記第1液体を供給される第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドとは異なる第2液体吐出ヘッドであって、前記第4液体を供給される第2液体吐出ヘッドとを含む複数の前記液体吐出ヘッドを備えてよい。この形態の液体吐出装置によれば、液体の種類ごとに異なる液体吐出ヘッドを用いることができるので、一の液体吐出ヘッドに複数の種類の液体が供給される態様と比較して、液体の種類ごとの循環流量や吐出量の条件の切り換えが容易になる。
【0103】
(17)上記形態の液体吐出装置において、液体の単位体積あたりに粒子が存在する確率を粒子存在確率としたとき、前記第1液体を前記第1流量で前記液体吐出ヘッドに供給する場合に、前記ノズルにおいて、前記第1液体が有する前記粒子存在確率は60%以上であり、前記第4液体を前記第4流量で前記液体吐出ヘッドに供給する場合に、前記ノズルにおいて、前記第4液体が有する前記粒子存在確率は60%以上であってよい。この形態の液体吐出装置によれば、第1液体および第4液体の性能が低下することを低減または抑制することができる。
【0104】
(18)上記形態の液体吐出装置において、前記第4液体を前記第1流量で前記液体吐出ヘッドに供給する場合には、前記ノズルにおいて、前記第4液体が有する前記粒子存在確率は60%未満であってよい。この形態の液体吐出装置によれば、第4液体の性能が低下することを低減または抑制することができる。
【0105】
本開示は、液体吐出装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、液体吐出装置の製造方法や液体吐出装置の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【0106】
本開示は、インクジェット方式に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置及びそれらの液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドにも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置およびその液体吐出ヘッドに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体吐出装置。
【0107】
「液滴」とは、液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【符号の説明】
【0108】
1…液体吐出ヘッド、2…連通板、3…圧力室基板、4…振動板、5…貯留室形成基板、8…配線基板、50…開口、51…導入口、52…排出口、60…ノズル基板、61,62…コンプライアンスシート、81…駆動回路、90…制御装置、91…移動機構、92…搬送機構、93…液体容器、94…循環機構、100…液体吐出装置、810…配線、921…収納ケース、922…無端ベルト、CB1,CB2,CBq…圧力室、Com,Com1,Com2…駆動信号、Ln…ノズル列、Nz…ノズル、PP…媒体、PZ1,PZ2,PZq…圧電素子、RA1…共通供給流路、RA2…共通排出流路、RB1…共通供給流路、RB2…共通排出流路、RJ…循環流路、RK1…連通流路、RK2…連通流路、RN…ノズル流路、RR1…供給流路、RR2…排出流路、RX1…連通流路、RX2…連通流路、ZDq…下部電極、ZMq…圧電体、ZUq…上部電極