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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び電源回路
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240910BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 305
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020219834
(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公開番号】P2022104712
(43)【公開日】2022-07-11
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 加津郎
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-189435(JP,A)
【文献】特開2020-189430(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005457(WO,A1)
【文献】特開平10-058676(JP,A)
【文献】特開2012-240280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出装置であって、
駆動することで液体を吐出する駆動部と、
前記駆動部に電源電圧を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
前記電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
一端が前記電源電圧出力回路と電気的に接続され、他端が前記駆動部と電気的に接続され、第1制御端子の入力に基づいて動作する第1トランジスターと、
前記電源電圧出力回路と電気的に接続された第1端子、前記駆動部と電気的に接続された第2端子、及び前記第1トランジスターの制御端子と電気的に接続された第3端子を含む集積回路装置と、
を有し、
前記集積回路装置は、
一端が前記第1端子と電気的に接続され、他端が前記第2端子と電気的に接続され、第2制御端子の入力に基づいて動作する第2トランジスターと、
前記第3端子と電気的に接続され、前記第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路と、
前記第2制御端子と電気的に接続され、前記第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路と、
を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記電源電圧出力回路が前記電源電圧の出力を開始した場合、
前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを非導通に制御し、前記第2トランジスター制御回路は、前記第2トランジスターを導通に制御し、
その後、前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを導通に制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記集積回路装置は、前記電源電圧の電圧値を検出する検出回路を含み、
前記電源電圧出力回路が前記電源電圧の出力を開始した場合、
前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを非導通に制御し、前記第2トランジスター制御回路は、前記第2トランジスターを導通に制御し、
前記検出回路が、前記電圧値が所定の値よりも大きいことを検出した場合に、前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを導通に制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記集積回路装置は、第1動作モードと第2動作モードとを有し、
前記第1動作モードにおいて、前記第1トランジスター制御回路が前記第1トランジスターの動作を制御する制御条件と、前記第2動作モードにおいて、前記第1トランジスター制御回路が前記第1トランジスターの動作を制御する制御条件とは異なり、
前記第1動作モードにおいて、前記第2トランジスター制御回路が前記第2トランジスターの動作を制御する制御条件と、前記第2動作モードにおいて、前記第2トランジスター制御回路が前記第2トランジスターの動作を制御する制御条件とは異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記集積回路装置は、
前記駆動部と電気的に接続された第4端子と、
前記第4端子と電気的に接続され、前記電源電圧が前記駆動部に伝搬する伝搬経路の電荷を放出する放電回路と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動部は、圧電素子を含み、前記圧電素子が駆動することで液体を吐出する液体吐出ヘッドである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
駆動部に電源電圧を供給する電源回路であって、
前記電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
一端が前記電源電圧出力回路と電気的に接続され、他端が前記駆動部と電気的に接続され、第1制御端子の入力に基づいて動作する第1トランジスターと、
前記電源電圧出力回路と電気的に接続された第1端子、前記駆動部と電気的に接続された第2端子、及び前記第1トランジスターの制御端子と電気的に接続された第3端子を含む集積回路装置と、
を有し、
前記集積回路装置は、
一端が前記第1端子と電気的に接続され、他端が前記第2端子と電気的に接続され、第2制御端子の入力に基づいて動作する第2トランジスターと、
前記第3端子と電気的に接続され、前記第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路と、
前記第2制御端子と電気的に接続され、前記第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路と、
を含む、
ことを特徴とする電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドから液体を吐出することで媒体に画像を形成する液体吐出装置などの電子機器では、液体吐出ヘッド等の駆動部に対して、所望の電圧値の電圧を供給することで、当該駆動部が動作を開始し、所望の動作を実行する。しかしながら、駆動部に電源電圧を供給する場合、電源電圧の供給経路に設けられた容量素子等に起因して突入電流が生じる場合がある。このような突入電流は、電流量が大きく、液体吐出装置などの電子機器を構成する回路素子に異常を生じさせるおそれがあり、様々な対策が取られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電源電圧供給経路に突入電流低減回路を設け、電源電圧の供給開始時に、当該突入電流低減回路が有するスイッチ素子をパルス駆動することで、突入電流の電流値を低減し、液体吐出装置などの電子機器を構成する回路素子に異常を生じさせるおそれを低減することが可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-189430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような突入電流低減回路を構成する回路素子には、駆動部を駆動するための電源電圧に起因した大きな電流が流れるとともに、駆動部の特性に応じて最適な部品の選定が求められるが故に、ディスクリート部品が広く使用されている。しかしながら、突入電流低減回路をディスクリート部品で構成した場合、突入電流低減回路を含む電源回路の回路規模が大きくなり、その結果、突入電流低減回路を含む電源回路の小型化が困難であるとの問題が生じた。すなわち、特許文献1に記載の発明に対して、突入電流低減回路を含む電源回路の小型化のとの観点において、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
液体を吐出する液体吐出装置であって、
駆動することで液体を吐出する駆動部と、
前記駆動部に電源電圧を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
前記電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
一端が前記電源電圧出力回路と電気的に接続され、他端が前記駆動部と電気的に接続され、第1制御端子の入力に基づいて動作する第1トランジスターと、
前記電源電圧出力回路と電気的に接続された第1端子、前記駆動部と電気的に接続された第2端子、及び前記第1トランジスターの制御端子と電気的に接続された第3端子を含む集積回路装置と、
を有し、
前記集積回路装置は、
一端が前記第1端子と電気的に接続され、他端が前記第2端子と電気的に接続され、第2制御端子の入力に基づいて動作する第2トランジスターと、
前記第3端子と電気的に接続され、前記第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路と、
前記第2制御端子と電気的に接続され、前記第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路と、
を含む。
【0007】
本発明に係る電源回路の一態様は、
駆動部に電源電圧を供給する電源回路であって、
前記電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
一端が前記電源電圧出力回路と電気的に接続され、他端が前記駆動部と電気的に接続され、第1制御端子の入力に基づいて動作する第1トランジスターと、
前記電源電圧出力回路と電気的に接続された第1端子、前記駆動部と電気的に接続された第2端子、及び前記第1トランジスターの制御端子と電気的に接続された第3端子を含む集積回路装置と、
を有し、
前記集積回路装置は、
一端が前記第1端子と電気的に接続され、他端が前記第2端子と電気的に接続され、第2制御端子の入力に基づいて動作する第2トランジスターと、
前記第3端子と電気的に接続され、前記第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路と、
前記第2制御端子と電気的に接続され、前記第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の概略構成を示す図である。
図2】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図3】駆動信号COMの一例を示す図である。
図4】駆動信号選択制御回路の機能構成を示す図である。
図5】吐出部の1個分に対応する選択回路の電気構成を示す図である。
図6】デコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
図7】駆動信号選択制御回路の動作を説明するための図である。
図8】吐出部の概略構成を示す図である。
図9】駆動信号出力回路と電源回路との電気的接続関係を示す図である。
図10】駆動信号出力回路の機能構成を示す図である。
図11】駆動信号放電回路の構成を示す図である。
図12】基準電圧信号出力回路の構成を示す図である。
図13】VHV制御信号出力回路の構成を示す図である。
図14】状態信号入出力回路の構成を示す図である。
図15】エラー信号入出力回路の構成を示す図である。
図16】電源回路の構成を示す図である。
図17】電圧VHVのプリントヘッド及び駆動信号出力回路への供給を開始する場合の動作を説明するための図である。
図18】第2実施形態における電源回路の構成を示す図である。
図19】第2実施形態における電圧VHVのプリントヘッド及び駆動信号出力回路への供給を開始する場合の動作を説明するための図である。
図20】第3実施形態における電源回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便
宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.第1実施形態
1.1 液体吐出装置の構成
第1実施形態に係る液体吐出装置は、外部のホストコンピューターから入力される画像データに応じてインクを吐出させることで、紙などの印刷媒体にドットを形成し、当該画像データに応じた文字、図形等を含む画像を印刷するインクジェットプリンターである。
【0011】
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。図1には、媒体Pが搬送される方向X、方向Xと交差し移動体2が往復動する方向Y、インクが吐出される方向Zを図示している。なお、本実施形態では、方向X、方向Y、方向Zは互いに直交する軸として説明するが、液体吐出装置1の各種構成が互いに直交して配置されていることに限るものではない。また、以下の説明において、移動体2が移動する方向Yを主走査方向と称する場合がある。
【0012】
図1に示すように、液体吐出装置1は、移動体2と、移動体2を方向Yに沿って往復動させる移動機構3とを備える。移動機構3は、移動体2の駆動源となるキャリッジモーター31と、両端が固定されたキャリッジガイド軸32と、キャリッジガイド軸32とほぼ平行に延在しキャリッジモーター31により駆動されるタイミングベルト33と、を有する。
【0013】
移動体2に含まれるキャリッジ24は、キャリッジガイド軸32に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト33の一部に固定されている。そして、キャリッジモーター31によりタイミングベルト33を駆動させることで、キャリッジ24は、キャリッジガイド軸32に案内されて方向Yに沿って往復動する。また、移動体2のうち、媒体Pと対向する部分には多数のノズルを有するプリントヘッド20が設けられている。プリントヘッド20には、ケーブル190を介して制御信号等が入力される。そして、プリントヘッド20は、入力される制御信号に基づいて、ノズルから液体の一例としてインクを吐出する。
【0014】
また、液体吐出装置1は、媒体Pを、方向Xに沿ってプラテン40上で搬送させる搬送機構4を備える。搬送機構4は、駆動源である搬送モーター41と、搬送モーター41により回転して媒体Pを方向Xに沿って搬送する搬送ローラー42と、を備える。
【0015】
以上のように構成された液体吐出装置1では、媒体Pが搬送機構4により搬送されるタイミングにおいて、プリントヘッド20からインクが吐出されることで、媒体Pの表面に画像が形成される。
【0016】
1.2 液体吐出装置の機能構成
図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図2に示すように、液体吐出装置1は、制御回路100、キャリッジモータードライバー35、キャリッジモーター31、搬送モータードライバー45、搬送モーター41、発振回路91、駆動信号出力回路51、電源回路52、及びプリントヘッド20を有する。
【0017】
制御回路100は、ホストコンピューターから入力された画像データに基づいて、各種構成を制御するための複数の制御信号等を生成し、対応する構成に出力する。具体的には、制御回路100は、キャリッジモータードライバー35に対して制御信号CTR1を供給する。キャリッジモータードライバー35は、制御信号CTR1に従ってキャリッジモ
ーター31を駆動する。これにより、図1に示す方向Yにおけるキャリッジ24の移動が制御される。また、制御回路100は、搬送モータードライバー45に対して制御信号CTR2を供給する。搬送モータードライバー45は、制御信号CTR2に従って搬送モーター41を駆動する。これにより、図1に示す方向Xにおける媒体Pの移動が制御される。
【0018】
また、制御回路100は、駆動信号出力回路51に対して、駆動データ信号DATAを出力するとともに、プリントヘッド20に対して、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHを出力する。
【0019】
発振回路91は、クロック信号MCKを駆動信号出力回路51に出力する。ここで、発振回路91は、図2に示すように制御回路100と独立した構成であってもよく、また、制御回路100の内部に構成されていてもよい。また、クロック信号MCKは、駆動信号出力回路51のほか、液体吐出装置1の各種構成にも供給されてもよい。
【0020】
電源回路52は、液体吐出装置1に入力される商用交流電源から液体吐出装置1の各部で使用される電源電圧としての電圧VHV,VDDを生成し出力する。電圧VHVは、例えば、42Vの直流電圧であって、駆動信号出力回路51やプリントヘッド20を含む液体吐出装置1の各部に供給される。また、電圧VDDは、例えば、3.3Vの直流電圧であって、駆動信号出力回路51やプリントヘッド20を含む液体吐出装置1の各部に供給される。
【0021】
駆動信号出力回路51には、電圧VHV,VDD、駆動データ信号DATA、及びクロック信号MCKが入力される。そして、駆動信号出力回路51は、入力される電圧VHV,VDD、駆動データ信号DATA、及びクロック信号MCKに基づいて、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSを生成しプリントヘッド20に出力する。ここで、基準電圧信号VBSは、駆動信号COMの基準となる電位の直流電圧であって、例えば、グラウンド電位、5V、6V等の一定電圧の信号である。なお、駆動信号出力回路51、及び電源回路52の構成、及び動作の詳細については後述する。
【0022】
プリントヘッド20は、駆動信号選択制御回路200と、複数の吐出部600とを有する。また、各吐出部600は、圧電素子60を含む。駆動信号選択制御回路200には、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、駆動信号COM、及び電圧VHVが入力される。そして、駆動信号選択制御回路200は、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び電圧VHVに基づいて、駆動信号COMを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。
【0023】
駆動信号VOUTは、複数の吐出部600のそれぞれに含まれる圧電素子60の一端に供給される。また、圧電素子60の他端には、駆動信号出力回路51が出力する基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、駆動信号VOUTと基準電圧信号VBSとの電位差により駆動する。この圧電素子60の駆動により、吐出部600からインクが吐出される。
【0024】
以上のように、液体吐出装置1は、圧電素子60を含み、圧電素子60が駆動することでインクを吐出するプリントヘッド20と、プリントヘッド20に電源電圧である電圧VHVを供給する電源回路52と、を備える。ここで、圧電素子60を含む、圧電素子60が駆動することでインクを吐出するプリントヘッド20が駆動部、及び液体吐出ヘッドの一例である。
【0025】
1.3 液体吐出ヘッドの構成及び動作
次に、プリントヘッド20が有する駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作について説明する。駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択制御回路200に入力される駆動信号COMの一例について図3を用いて説明する。その後、図4から図7を用いて、駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作について説明する。
【0026】
図3は、駆動信号COMの一例を示す図である。図3には、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1と、期間T1の後、次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T2と、期間T2の後、ラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T3とを示している。そして、この期間T1,T2,T3からなる周期が、媒体Pに新たなドットを形成する周期Taとなる。すなわち、図3に示すように、ラッチ信号LATは、媒体Pに新たなドットが形成される周期を規定する信号であり、チェンジ信号CHは、駆動信号COMに含まれる波形の切替タイミングを規定する信号である。
【0027】
図3に示すように、駆動信号出力回路51は、期間T1において台形波形Adpを生成する。台形波形Adpが圧電素子60に供給された場合、対応する吐出部600から所定量、具体的には中程度の量のインクが吐出される。また、駆動信号出力回路51は、期間T2において台形波形Bdpを生成する。台形波形Bdpが圧電素子60に供給された場合、対応する吐出部600から上記所定量よりも少ない小程度の量のインクが吐出される。また、駆動信号出力回路51は、期間T3において台形波形Cdpを生成する。台形波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、圧電素子60は、対応する吐出部600からインクが吐出されない程度に駆動する。したがって、台形波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、媒体Pにはドットが形成されない。この台形波形Cdpは、吐出部600のノズル開孔部付近のインクを微振動させてインクの粘度が増大することを防止するための波形である。以下の説明において、インクの粘度が増大することを防止するために、吐出部600からインクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動させることを「微振動」と称する。
【0028】
ここで、台形波形Adp、台形波形Bdp、及び台形波形Cdpのそれぞれの開始タイミングでの電圧値、及び終了タイミングでの電圧値は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する波形である。したがって、駆動信号出力回路51は、台形波形Adp,Bdp,Cdpが周期Taにおいて連続した波形の駆動信号COMを出力する。なお、図3に示す駆動信号COMの波形は一例であり、図3に示す波形に限られるものではない。
【0029】
図4は、駆動信号選択制御回路200の機能構成を示す図である。駆動信号選択制御回路200は、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択するか否かを切り替えことで、周期Taにおいて、圧電素子60に供給される駆動信号VOUTを生成し出力する。図4に示すように、駆動信号選択制御回路200は、選択制御回路210と、複数の選択回路230とを含む。
【0030】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び電圧VHVが供給される。選択制御回路210には、シフトレジスター212(S/R)とラッチ回路214とデコーダー216との組が、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、プリントヘッド20には、n個の吐出部600の総数と同数のn組のシフトレジスター212とラッチ回路214とデコーダー216との組が設けられている。
【0031】
シフトレジスター212は、対応する吐出部600毎に、印刷データ信号SIに含まれ
る2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を一旦保持する。詳細には、吐出部600に対応した段数のシフトレジスター212が互いに縦続接続されているとともに、シリアルで供給された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段に転送される。なお、図4には、シフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが供給される上流側から順番に1段、2段、…、n段と表記している。
【0032】
n個のラッチ回路214のそれぞれは、対応するシフトレジスター212で保持された印刷データ[SIH,SIL]をラッチ信号LATの立ち上がりでラッチする。n個のデコーダー216の各々は、対応するラッチ回路214によってラッチされた2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をデコードして選択信号Sを生成し、選択回路230に供給する。
【0033】
選択回路230は、吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、1個のプリントヘッド20が有する選択回路230の数は、プリントヘッド20に含まれる吐出部600の総数と同じである。選択回路230は、デコーダー216から供給される選択信号Sに基づいて、駆動信号COMの圧電素子60への供給を制御する。
【0034】
図5は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の電気構成を示す図である。図5に示すように、選択回路230は、インバーター232、及びトランスファーゲート234を有する。また、トランスファーゲート234は、NMOSトランジスターであるトランジスター235と、PMOSトランジスターであるトランジスター236とを含む。
【0035】
選択信号Sは、デコーダー216からトランジスター235のゲート端子に供給される。また選択信号Sは、インバーター232によって論理反転されて、トランジスター236のゲート端子にも供給される。トランジスター235のドレイン端子、及びトランジスター236のソース端子は、トランスファーゲート234の一端である端子TG-Inに接続されている。トランスファーゲート234の端子TG-Inには、駆動信号COMが入力される。そして、トランジスター235、及びトランジスター236が、選択信号Sに従ってオン又はオフに制御されることで、トランジスター235のソース端子とトランジスター236のドレイン端子とが共通に接続されているトランスファーゲート234の他端である端子TG-Outから、駆動信号VOUTが出力される。この駆動信号VOUTが出力されるトランスファーゲート234の端子TG-Outは、圧電素子60の後述する電極611と電気的に接続されている。なお、以下の説明において、トランジスター235及びトランジスター236が導通状態に制御されている場合をオンと称し、トランジスター235及びトランジスター236が非導通状態に制御されている場合をオフと称する場合がある。
【0036】
次に、図6を用いてデコーダー216のデコード内容について説明する。図6は、デコーダー216におけるデコード内容を示す図である。デコーダー216には、2ビットの印刷データ[SIH,SIL]、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。そして、デコーダー216は、例えば、印刷データ[SIH,SIL]が「中ドット」を規定する[1,0]である場合、期間T1,T2,T3でH,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。ここで、選択信号Sの論理レベルは、不図示のレベルシフターによって、電圧VHVに基づく高振幅論理にレベルシフトされる。
【0037】
図7は、駆動信号選択制御回路200の動作を説明するための図である。図7に示すように駆動信号選択制御回路200には、印刷データ信号SIがクロック信号SCKに同期してシリアルで供給され、吐出部600に対応するシフトレジスター212において順次転送される。そして、クロック信号SCKの供給が停止すると、シフトレジスター212
のそれぞれには、吐出部600に対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷データ信号SIは、シフトレジスター212における最終n段、…、2段、1段の吐出部600に対応した順番で供給される。
【0038】
ここで、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。図7に示すLT1、LT2、…、LTnは、1段、2段、…、n段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]をである。
【0039】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、図6に示される内容に従う論理レベルの選択信号Sを出力する。
【0040】
印刷データ[SIH,SIL]が[1,1]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において台形波形Adpを選択し、期間T2において台形波形Bdpを選択し、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、図7に示す大ドットに対応する駆動信号VOUTが生成される。したがって、吐出部600から、中程度の量のインクと、小程度の量のインクが吐出される。よって、媒体Pには、当該インクが結合することで、大ドットが形成される。また、印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において台形波形Adpを選択し、期間T2において台形波形Bdpを選択せず、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、図7に示す中ドットに対応する駆動信号VOUTが生成される。したがって、吐出部600から、中程度の量のインクが吐出される。よって、媒体Pには、中ドットが形成される。また、印刷データ[SIH,SIL]が[0,1]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において台形波形Adpを選択せず、期間T2において台形波形Bdpを選択し、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、図7に示す小ドットに対応する駆動信号VOUTが生成される。したがって、吐出部600から、小程度の量のインクが吐出される。よって、媒体Pには、小ドットが形成される。また、印刷データ[SIH,SIL]が[0,0]の場合、選択回路230は、選択信号Sに従い、期間T1において台形波形Adpを選択せず、期間T2において台形波形Bdpを選択せず、期間T3において台形波形Cdpを選択する。その結果、図7に示す微振動に対応する駆動信号VOUTが生成される。したがって、吐出部600からインクは吐出されず、微振動が生じる。
【0041】
以上のように、駆動信号選択制御回路200は、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMに含まれる台形波形を選択することで、駆動信号VOUTが生成し、吐出部600に出力する。ここで、図8を用いて圧電素子60を含む吐出部600の構成及び動作について説明する。図8は、吐出部600を含むようにプリントヘッド20を切断した場合の吐出部600の概略構成を示す図である。
【0042】
図8に示されるように、プリントヘッド20は、吐出部600とリザーバー641とを含む。リザーバー641には、インクが供給口661からインクが導入される。なお、リザーバー641は、インクの色毎に設けられている。
【0043】
吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズル651を含む。振動板621は、キャビティー631と圧電素子60との間に設けられる。そして、振動板621は、上面に設けられた圧電素子60が駆動することで変位する。すなわち、振動板621は、変位することで、キャビティー631の内部容積を拡大/縮小させるダイヤフラムとして機能する。キャビティー631の内部には、インクが充填されて
いる。また、キャビティー631は、圧電素子60の駆動により内部容積が変化する圧力室として機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。
【0044】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,612で挟んだ構造である。電極611には駆動信号VOUTが供給され、電極612には基準電圧信号VBSが供給される。このような構造の圧電素子60は、電極611と電極612との電位差に応じて駆動する。そして圧電素子60の駆動に伴い、電極611,612、及び振動板621の中央部分が両端部分に対して上下方向に変位する。そして、振動板621の変位に伴いキャビティー631の内部容積が変化することで、キャビティー631の内部に充填されたインクが、ノズル651から吐出される。
【0045】
1.4 駆動信号出力回路、及び電源回路の構成、及び動作
次に駆動信号出力回路51、及び電源回路52の構成、及び動作について説明する。図9は、駆動信号出力回路51と電源回路52との電気的接続関係を示す図である。図9に示すように電源回路52は、駆動信号出力回路51に電圧VDDを供給するとともに、駆動信号出力回路51が出力するVHV制御信号VHV_CNTに基づいて電圧VHVを駆動信号出力回路51、及びプリントヘッド20に出力する。そして、駆動信号出力回路51は、電源回路52が出力する電圧VDDに基づいて動作することで、電圧VHVの電圧値に応じた駆動信号COMを生成し出力する。
【0046】
ここで、電源回路52が出力する電圧VHVは、ヒューズ80を介して駆動信号出力回路51に供給されるとともに、ヒューズ80,81を介して駆動信号出力回路51、及びプリントヘッド20に供給される。以下の説明において、電源回路52が出力し、ヒューズ80に入力される電圧VHVを電圧VHVaと称し、ヒューズ80から出力され駆動信号出力回路51、及びヒューズ81に入力される電圧VHVを電圧VHVbと称し、ヒューズ81から出力され駆動信号出力回路51、及びプリントヘッド20に入力される電圧VHVを電圧VHVcと称する場合がある。また、電圧VHVaが伝搬する伝搬経路を伝搬配線aと称し、電圧VHVbが伝搬する伝搬経路を伝搬配線bと称し、電圧VHVcが伝搬する伝搬経路を伝搬配線cと称する場合がある。すなわち、伝搬配線a,b,cの少なくともいずれかが伝搬経路の一例である。
【0047】
1.4.1 駆動信号出力回路の構成、及び動作
まず、駆動信号出力回路51の機能構成について図10を用いて説明する。図10は、駆動信号出力回路51の機能構成を示す図である。図10に示すように、駆動信号出力回路51は、集積回路500、増幅回路550、復調回路560、及び帰還回路570を含む。そして、駆動信号出力回路51は、入力される電圧VDD,VHVb,VHVc、クロック信号MCK、及び駆動データ信号DATAに基づいて駆動信号COMを出力する。また、駆動信号出力回路51は、制御回路100との間では、エラー信号ERR、及び状態信号BUSYが相互に伝搬されている。
【0048】
集積回路500は、増幅制御信号生成回路502、内部電圧生成回路400、発振回路410、クロック選択回路420、異常検出回路430、レジスター制御回路440、駆動信号放電回路450、基準電圧信号出力回路460、VHV制御信号出力回路470、状態信号入出力回路480、及びエラー信号入出力回路490を含む。
【0049】
内部電圧生成回路400には、電圧VDDが供給される。内部電圧生成回路400は、入力される電圧VDDを昇圧することで、例えばDC7.5Vの電圧GVDDを生成する。電圧GVDDは、後述するゲート駆動部540を含む集積回路500の各種構成に入力される。
【0050】
増幅制御信号生成回路502は、端子DATA-Inから入力される駆動データ信号DATAに含まれる駆動信号COMの波形を規定するデータ信号に基づいて、増幅制御信号Hgd,Lgdを生成する。増幅制御信号生成回路502は、DACインターフェース(DAC_I/F:Digital to Analog Converter Interface)510、DAC部520、変調部530、及びゲート駆動部540を含む。
【0051】
DACインターフェース510には、端子DATA-Inから供給される駆動データ信号DATAと、端子CLK-Inから供給されるクロック信号MCKとが入力される。DACインターフェース510は、クロック信号MCKに基づいて駆動データ信号DATAを積算し、駆動信号COMの波形を規定する例えば10bitの駆動データdAを生成する。DAC部520には、駆動データdAが入力される。DAC部520は、入力される駆動データdAをアナログ信号の元駆動信号aAに変換する。この元駆動信号aAは、駆動信号COMの増幅前の目標となる信号である。変調部530には、元駆動信号aAが入力される。変調部530は、元駆動信号aAにパルス幅変調を施した変調信号Msを出力する。ゲート駆動部540には、電圧VHV,GVDD及び変調信号Msが入力される。ゲート駆動部540は、入力される変調信号Msを電圧GVDDに基づき増幅するとともに、電圧VHVに基づいて高振幅論理にレベルシフトした増幅制御信号Hgdと、入力される変調信号Msの論理レベルを反転し、電圧GVDDに基づき増幅した増幅制御信号Lgdとを生成する。すなわち、増幅制御信号Hgdと増幅制御信号Lgdとは互いに排他的にHレベルとなる。増幅制御信号Hgdは、端子Hg-Outを介して集積回路500から出力され、増幅回路550に入力される。同様に、増幅制御信号Lgdは、端子Lg-Outを介して集積回路500から出力され、増幅回路550に入力される。
【0052】
増幅回路550は、増幅制御信号Hgd,Lgdに基づき動作することで増幅変調信号AMsを出力する。増幅回路550は、トランジスター551,552を含む。なお、
トランジスター551,552のそれぞれは、例えばNチャンネル型のFET(Field Effect Transistor)である。
【0053】
トランジスター551のドレイン端子には、電圧VHVが供給される。トランジスター551のゲート端子には端子Hg-Outを介して増幅制御信号Hgdが供給される。トランジスター551のソース端子はトランジスター552のドレイン端子と電気的に接続している。また、トランジスター552のゲート端子には、端子Lg-Outを介して増幅制御信号Lgdが供給される。トランジスター552のソース端子はグラウンドに接続している。以上のように接続されたトランジスター551は、増幅制御信号Hgdに応じて動作し、トランジスター552は、増幅制御信号Lgdに応じて動作する。すなわち、トランジスター551とトランジスター552とは排他的にオンとなる。これにより、トランジスター551のソース端子と、トランジスター552のドレイン端子との接続点には、変調信号Msを電圧VHVに基づいて増幅した増幅変調信号AMsが生成される。
【0054】
増幅回路550で生成された増幅変調信号AMsは、復調回路560に入力される。復調回路560は、コイル561とコンデンサー562を含む。コイル561の一端は、トランジスター551のソース端子、及びトランジスター552のドレイン端子と共通に接続されている。また、コイル561の他端は、コンデンサー562の一端と接続されている。コンデンサー562の他端は、グラウンドに接続されている。すなわち、コイル561とコンデンサー562とは、ローパスフィルターを構成する。そして、当該ローパスフィルターに増幅変調信号AMsが供給されることで、増幅変調信号AMsが復調され、駆動信号COMが生成される。この駆動信号COMが、駆動信号出力回路51から出力される。
【0055】
また、復調回路560が生成した駆動信号COMは、帰還回路570を介して変調部530に帰還される。帰還回路570は、抵抗571,572を含む。抵抗571の一端は、コイル561の他端と接続され、抵抗571の他端は、抵抗572の一端と接続されている。抵抗572の他端には、電圧VHVcが供給される。そして、抵抗571の他端、及び抵抗572の一端は、端子Com-Disで共通に接続され、端子Com-Disを介して復調回路560と接続されている。すなわち、変調部530には、駆動信号COMが帰還回路570を介して、電圧VHVcでプルアップされて帰還する。
【0056】
ここで、以下の説明において、集積回路500に含まれる増幅制御信号生成回路502、増幅回路550、復調回路560、及び帰還回路570を含む構成を、駆動データ信号DATAに基づいて駆動信号COMを生成する駆動信号生成回路501と称する場合がある。
【0057】
発振回路410は、集積回路500の動作タイミングを規定するクロック信号LCKを生成し出力する。クロック信号LCKは、クロック選択回路420、及び異常検出回路430に入力される。
【0058】
クロック選択回路420には、クロック信号MCK,LCK、及びクロック選択信号CSWが入力される。クロック選択回路420は、クロック選択信号CSWの論理レベルに基づいてクロック信号MCKをクロック信号RCKとしてレジスター制御回路440に出力するのか、又はクロック信号LCKをクロック信号RCKとしてレジスター制御回路440に出力するのかを切り替える。なお、本実施形態においてクロック選択回路420は、クロック選択信号CSWがHレベルの場合にクロック信号MCKをクロック信号RCKとしてレジスター制御回路440に出力し、クロック選択信号CSWがLレベルの場合にクロック信号LCKをクロック信号RCKとしてレジスター制御回路440に出力するとして説明する。
【0059】
異常検出回路430は、発振異常検出部431、動作異常検出部432、及び電源電圧異常検出部433を含む。
【0060】
発振異常検出部431には、発振回路410が出力するクロック信号LCKが入力される。発振異常検出部431は、入力されるクロック信号LCKが正常であるか否かを検出し、検出結果に基づく論理レベルのクロック選択信号CSW、及びエラー信号NESを出力する。例えば、発振異常検出部431は、クロック信号LCKの周波数、及び電圧レベルの少なくとも一方を検出する。そして、発振異常検出部431は、クロック信号LCKの周波数、及び電圧レベルの少なくとも一方が異常である場合、Hレベルのクロック選択信号CSWをクロック選択回路420に出力するとともに、Hレベルのエラー信号NESをレジスター制御回路440に出力する。また、発振異常検出部431は、クロック信号LCKの周波数、及び電圧レベルの双方が正常である場合、Lレベルのクロック選択信号CSWをクロック選択回路420に出力するとともに、Lレベルのエラー信号NESをレジスター制御回路440に出力する。
【0061】
動作異常検出部432には、駆動信号出力回路51の各種構成の動作状態を示す動作状態信号ASSが入力される。動作異常検出部432は、入力される動作状態信号ASSの論理レベルに基づいて、駆動信号出力回路51の各種構成が正常に動作しているか否かを検出する。本実施形態では、駆動信号出力回路51の各種構成のいずれかが異常である場合、Hレベルの動作状態信号ASSが動作異常検出部432に入力される。そして、動作異常検出部432にHレベルの動作状態信号ASSが入力された場合、動作異常検出部432は、Hレベルのエラー信号NESをレジスター制御回路440に出力する。
【0062】
電源電圧異常検出部433には、プリントヘッド20に供給される電圧VHVcが入力される。電源電圧異常検出部433は、電圧VHVcの電圧値を検出する。そして、電源電圧異常検出部433は、電圧VHVcの電圧値に基づいて、プリントヘッド20に供給される電圧VHVcの電圧レベルが正常であるか否かを検出する。本実施形態では、電源電圧異常検出部433において、プリントヘッド20に供給される電圧VHVcの電圧レベルが異常であると判断された場合、電源電圧異常検出部433は、Hレベルのエラー信号FESをレジスター制御回路440に出力する。
【0063】
レジスター制御回路440は、シーケンスレジスター441、状態レジスター442、及びレジスター制御部443を含む。シーケンスレジスター441、及び状態レジスター442は、クロック信号MCKに同期して駆動データ信号DATAとして入力される動作情報を保持する。そして、レジスター制御部443は、クロック信号RCKに同期して、シーケンスレジスター441、及び状態レジスター442に保持された情報に基づいて、制御信号CNT1~CNT6を生成し出力する。これにより、駆動信号出力回路51の動作が制御される。
【0064】
制御信号CNT1は、駆動信号放電回路450に入力される。駆動信号放電回路450は、駆動信号出力回路51から出力される駆動信号COMに基づく電荷の放出を制御する。図11は、駆動信号放電回路450の構成を示す図である。駆動信号放電回路450は、抵抗451、トランジスター452、及びインバーター453を含む。なお、以下の説明では、トランジスター452をNMOSトランジスターとして説明する。
【0065】
抵抗451の一端は、端子Com-Disと接続されている。抵抗451の他端は、トランジスター452のドレイン端子と接続されている。トランジスター452のソース端子は、グラウンドに接続されている。また、トランジスター452のゲート端子には、インバーター453を介して制御信号CNT1が入力される。以上のように構成された駆動信号放電回路450にHレベルの制御信号CNT1が入力された場合、トランジスター452はオフに制御される。したがって、駆動信号放電回路450は、端子Com-Disに蓄えられている電荷の放出を行わない。一方、駆動信号放電回路450にLレベルの制御信号CNT1が入力された場合、トランジスター452はオンに制御される。したがって、駆動信号放電回路450は、端子Com-Disに蓄えられている電荷の放出を行う。すなわち、駆動信号放電回路450は、制御信号CNT1に基づいて、駆動信号COMがプリントヘッド20に供給される経路に蓄えられた電荷を放出する。
【0066】
制御信号CNT2は、基準電圧信号出力回路460に入力される。基準電圧信号出力回路460は、圧電素子60に供給される基準電圧信号VBSを生成し出力する。図12は、基準電圧信号出力回路460の構成を示す図である。基準電圧信号出力回路460は、コンパレーター461、トランジスター462,463、抵抗464,465,466、及びインバーター467を含む。なお、以下の説明では、トランジスター462をPMOSトランジスターとして、また、トランジスター463をNMOSトランジスターとして説明する。
【0067】
コンパレーター461の入力端(-)には基準電圧Vrefが供給される。また、コンパレーター461の入力端(+)は抵抗464の一端、及び抵抗465の一端と共通に接続されている。コンパレーター461の出力端は、トランジスター462のゲート端子と接続されている。トランジスター462のソース端子には、電圧GVDDが供給される。トランジスター462のドレイン端子は、抵抗464の他端、抵抗466の一端、及び基準電圧信号VBSが出力される端子VBS-Outと共通に接続されている。抵抗466の他端はトランジスター463のドレイン端子と接続されている。トランジスター463のゲート端子にはインバーター467を介して制御信号CNT2が入力される。トランジ
スター463のソース端子、及び抵抗465の他端はグラウンドと接続されている。
【0068】
以上のように構成された基準電圧信号出力回路460において、コンパレーター461の入力端(+)に供給される電圧が、コンパレーター461の入力端(-)に供給される基準電圧Vrefよりも大きい場合、コンパレーター461は、Hレベルの信号を出力する。このとき、トランジスター462はオフに制御される。したがって、端子VBS-Outには、電圧GVDDが供給されない。一方、コンパレーター461の入力端(+)に供給される電圧が、コンパレーター461の入力端(-)に供給される基準電圧Vrefより小さい場合、コンパレーター461は、Lレベルの信号を出力する。このとき、トランジスター462は、オンに制御される。したがって、端子VBS-Outには、電圧GVDDが供給される。すなわち、基準電圧信号VBSを抵抗464,465とで分圧した電圧値と、基準電圧Vrefとが等しくなるようにコンパレーター461が動作することにより、基準電圧信号出力回路460は、電圧GVDDに基づく一定電圧値の基準電圧信号VBSを生成する。
【0069】
以上のように構成された基準電圧信号出力回路460にHレベルの制御信号CNT2が入力された場合、トランジスター463はオフに制御される。したがって、抵抗466、及びトランジスター463を介して端子VBS-Outとグラウンドとを電気的に接続する経路は、ハイインピーダンスに制御される。その結果、端子VBS-Outから、一定電圧値の基準電圧信号VBSが出力される。一方、基準電圧信号出力回路460にLレベルの制御信号CNT2が入力された場合、トランジスター463はオンに制御される。したがって、端子VBS-Outは抵抗466を介してグラウンドと電気的に接続される。その結果、グラウンド電位の基準電圧信号VBSが出力される。換言すれば、基準電圧信号出力回路460にLレベルの制御信号CNT2が入力された場合、基準電圧信号出力回路460は、基準電圧信号VBSの出力を停止する。
【0070】
制御信号CNT3は、VHV制御信号出力回路470に入力される。VHV制御信号出力回路470は、電源回路52に供給されるVHV制御信号VHV_CNTを出力する。図13は、VHV制御信号出力回路470の構成を示す図である。VHV制御信号出力回路470は、トランジスター471を含む。なお、以下の説明では、トランジスター471をPMOSトランジスターとして説明する。
【0071】
トランジスター471のソース端子には、電圧VDDが供給される。トランジスター471のドレイン端子は、端子VHV_CNT-Outと接続されている。トランジスター471のゲート端子には、制御信号CNT3が入力される。以上のように構成されたVHV制御信号出力回路470にLレベルの制御信号CNT3が入力された場合、端子VHV_CNT-Outには、電圧VDDが供給され、Hレベルの制御信号CNT3が入力された場合、端子VHV_CNT-Outには、グラウンド電位の信号が供給される。すなわち、VHV制御信号出力回路470は、制御信号CNT3の論理レベルが反転し、電圧VDDで増幅された信号をVHV制御信号VHV_CNTとして出力する。
【0072】
VHV制御信号出力回路470から出力されたVHV制御信号VHV_CNTは、図9に示すように、電源回路52に入力される。そして、詳細は後述するが、電源回路52は、入力されるVHV制御信号VHV_CNTに基づいて、電圧VHVを駆動信号出力回路51、及びプリントヘッド20に供給するのか否かを制御する。すなわち、VHV制御信号VHV_CNTは、電源回路52の出力を制御する信号である。
【0073】
制御信号CNT4は、状態信号入出力回路480に入力される。状態信号入出力回路480は、駆動信号出力回路51の動作状態を示す状態信号BUSYを出力するとともに、他の構成から出力された状態信号BUSYを入力する。ここで、他の構成とは、例えば液
体吐出装置1が複数の駆動信号出力回路51を有する場合における異なる駆動信号出力回路51であってもよく、また、制御回路100であってもよい。図14は、状態信号入出力回路480の構成を示す図である。状態信号入出力回路480は、トランジスター481、及びインバーター482を含む。なお以下の説明では、トランジスター481をPMOSトランジスターとして説明する。また、インバーター482は、集積回路500のCOMS入力端子として機能する。すなわち、状態信号入出力回路480は、レジスター制御回路440から出力される制御信号CNT4に基づいて、端子BUSY-Outから状態信号BUSYを出力するとともに、端子BUSY-Outに入力される信号をレジスター制御回路440に入力する。なお、図14には、レジスター制御回路440から出力される制御信号CNT4を制御信号CNT4-outとして図示し、レジスター制御回路440に入力される制御信号CNT4を制御信号CNT4-inとして図示している。
【0074】
トランジスター481のソース端子には、電圧GVDDが供給される。また、トランジスター481のドレイン端子は、インバーター482の入力端、及び端子BUSY-Outと接続されている。また、トランジスター481のゲート端子には、レジスター制御回路440から出力される制御信号CNT4-outが入力される。また、インバーター482の出力端からレジスター制御回路440に入力される制御信号CNT4-inが出力される。以上のように構成された状態信号入出力回路480にLレベルの制御信号CNT4が入力された場合、端子BUSY-Outには、電圧GVDDが供給される。すなわち、Hレベルの状態信号BUSYが出力される。
【0075】
制御信号CNT5は、エラー信号入出力回路490に入力される。エラー信号入出力回路490は、駆動信号出力回路51に異常が生じているか否かを示すエラー信号ERRを出力するとともに、他の構成から出力されたエラー信号ERRを入力する。ここで、他の構成とは、例えば液体吐出装置1が複数の駆動信号出力回路51を有する場合における異なる駆動信号出力回路51であってもよく、また、制御回路100であってもよい。図15は、エラー信号入出力回路490の構成を示す図である。エラー信号入出力回路490は、トランジスター491、及びインバーター492を含む。なお以下の説明では、トランジスター491をPMOSトランジスターとして説明する。また、インバーター492は、集積回路500のCOMS入力端子として機能する。すなわち、エラー信号入出力回路490は、レジスター制御回路440から出力される制御信号CNT5に基づいて、端子ERR-Outからエラー信号ERRを出力するとともに、端子ERR-Outに入力される信号をレジスター制御回路440に入力する。なお、図15には、レジスター制御回路440から出力される制御信号CNT5を制御信号CNT5-outとして図示し、レジスター制御回路440に入力される制御信号CNT5を制御信号CNT5-inとして図示している。
【0076】
トランジスター491のソース端子には、電圧GVDDが供給される。また、トランジスター491のドレイン端子は、インバーター492の入力端、及び端子ERR-Outと接続されている。また、トランジスター491のゲート端子には、レジスター制御回路440から出力される制御信号CNT5-outが入力される。また、インバーター492の出力端からは、レジスター制御回路440に入力される制御信号CNT5-inが出力される。以上のように構成されたエラー信号入出力回路490にLレベルの制御信号CNT5が入力された場合、端子ERR-Outには、電圧GVDDが供給される。すなわち、Hレベルのエラー信号ERRが出力される。
【0077】
以上のように、駆動信号出力回路51が、状態信号入出力回路480及びエラー信号入出力回路490を備えることで、液体吐出装置1が、複数の駆動信号出力回路51を有する場合に、駆動信号出力回路51間でエラー情報、及び動作情報を共有することが可能となる。したがって、複数の駆動信号出力回路51のいずれかで異常が生じた場合に、当該
異常を示す状情報に基づいて、異常が生じていない他の駆動信号出力回路51の動作を制御することが可能となる。
【0078】
制御信号CNT6は、増幅制御信号生成回路502に入力される。増幅制御信号生成回路502に制御信号CNT6が入力された場合、駆動信号生成回路501が生成する駆動信号COMの波形は、駆動データ信号DATAによらず、制御信号CNT6により規定される。具体的には、制御信号CNT6は、駆動信号生成回路501が所定の電圧値で一定となる駆動信号COMを生成するための信号であってもよく、また、駆動信号生成回路501が、グラウンド電位で一定となるような、駆動信号COMを生成するための信号であってもよい。
【0079】
以上のように構成された駆動信号出力回路51では、クロック信号MCKと同期して駆動データ信号DATAとして入力される動作情報が、シーケンスレジスター441に保持される。そして、レジスター制御部443が、シーケンスレジスター441に保持された動作情報に基づいて、駆動信号出力回路51のシーケンス制御を実行する。その後、シーケンス制御が実行されることで、当該シーケンス制御の実行に伴う動作モードを示す情報が状態レジスター442に保持される。レジスター制御回路440は、状態レジスター442に保持された動作モードを示す情報に基づいて、制御信号CNT1~CNT6の出力を制御する。これにより、駆動信号出力回路51から出力される各種信号が制御される。
【0080】
1.4.2 電源回路の構成、及び動作
次に、図16を用いて電源回路52の構成、及び動作について説明する。図16は、電源回路52の構成を示す図である。図16に示すように、電源回路52は、電圧VHVを出力する電源電圧出力回路71と、一端であるソース端子が電源電圧出力回路71と電気的に接続され、他端であるドレイン端子がプリントヘッド20と電気的に接続され、ゲート端子の入力に基づいて動作するトランジスター72と、端子Dc,Gs,Sc,Ld,Vciを含む集積回路73と、電圧VHVを降圧することで電圧VDDを生成する降圧回路74と、を有する。
【0081】
電源電圧出力回路71には、不図示の商用交流電源から交流電源電圧が供給される。電源電圧出力回路71は、供給される交流電源電圧を42Vの直流電圧である電圧VHVに変換し、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51を含む液体吐出装置1の各部に供給する。すなわち、電源電圧出力回路71は、電源電圧である電圧VHVを出力する。このような電源電圧出力回路71としては、例えば、交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバーターであって、フライバック回路等を用いることができる。そして、電源電圧出力回路71が出力した電圧VHVは、降圧回路74、トランジスター72のソース端子、及び集積回路73の端子Dcに供給される。
【0082】
降圧回路74は、入力される電圧VHVを降圧することで、例えば3.3Vの直流電圧の電圧VDDを生成し、駆動信号出力回路51を含む液体吐出装置1の各種構成に出力する。このような降圧回路74は、降圧レギュレータ回路や抵抗分圧回路など、既知のDC/DCコンバーター回路により構成されている。
【0083】
集積回路73は、制御部730と、トランジスター740,750とを含み、端子Dc,Gs,Sc,Ld,Vciを介して、集積回路73の外部の回路と電気的に接続している。
【0084】
制御部730は、外部Tr制御部731、内部Tr制御部732、及び放電Tr制御部733を含み、駆動信号出力回路51から端子Vciを介して入力されるVHV制御信号VHV_CNTの論理レベルに基づいて動作する。
【0085】
外部Tr制御部731は、端子Gsと電気的に接続している。そして、外部Tr制御部731は、制御部730に入力されるVHV制御信号VHV_CNTの論理レベルに基づいて、端子Gsにゲート信号Sgdを出力する。内部Tr制御部732は、トランジスター740のゲート端子と電気的に接続している。そして、内部Tr制御部732は、制御部730に入力されるVHV制御信号VHV_CNTの論理レベルに基づいて、トランジスター740の動作を制御するゲート信号Rgdを出力する。放電Tr制御部733は、トランジスター750のゲート端子と電気的に接続している。そして、内部Tr制御部732は、制御部730に入力されるVHV制御信号VHV_CNTの論理レベルに基づいて、トランジスター750の動作を制御するゲート信号Dgdを出力する。
【0086】
トランジスター740は、PMOSトランジスターであって、一端であるソース端子は端子Dcと電気的に接続し、他端であるドレイン端子は端子Scと電気的に接続し、ゲート端子は制御部730が有する内部Tr制御部732と電気的に接続している。そして、トランジスター740は、内部Tr制御部732が出力するゲート信号Rgdに基づいて動作する。ここで、図16に示すように、端子Dcは、集積回路73の外部に設けられた電源電圧出力回路71、及びトランジスター72のソース端子と電気的に接続し、端子Scは、電源回路52から電圧VHVが供給される図16では不図示のプリントヘッド20と電気的に接続している。そして、トランジスター740は、ゲート信号Rgdに基づいて動作することで、電源電圧出力回路71からソース端子に供給される電圧VHVを、ドレイン端子から出力するか否かを切り替える。すなわち、トランジスター740は、ゲート信号Rgdに基づいて電圧VHVをプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給するか否かを切り替える。
【0087】
トランジスター750は、NMOSトランジスターであって、一端であるドレイン端子が端子Ldと電気的に接続し、他端であるソース端子にはグラウンド電位が供給される。そして、ゲート端子は制御部730が有する放電Tr制御部733と電気的に接続している。そして、トランジスター750は、放電Tr制御部733が出力するゲート信号Dgdに基づいて動作する。ここで、端子Ldは、電源回路52から電圧VHVが供給される図16では不図示のプリントヘッド20と電気的に接続している。そして、トランジスター750は、ゲート信号Dgdに基づいて動作することで、プリントヘッド20に供給される電圧VHVが伝搬される伝搬経路であって、図9に示す伝搬配線a,b,cに蓄えられた電荷を放出する。
【0088】
トランジスター72は、PMOSトランジスターであって、一端であるソース端子が電源電圧出力回路71と電気的に接続し、他端であるドレイン端子がプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51と電気的に接続し、ゲート端子が集積回路73の端子Gsと電気的に接続している。そして、トランジスター72は、端子Gsを介して集積回路73が有する外部Tr制御部731からゲート端子に入力されるゲート信号Sgdに基づいて動作する。すなわち、トランジスター72は、集積回路73の内部に設けられたトランジスター740と並列に接続されている。そして、トランジスター72は、ソース端子に供給される電圧VHVをドレイン端子から出力するか否かを切り替える。すなわち、トランジスター72は、ゲート信号Sgdに基づいて電圧VHVをプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給するか否かを切り替えるスイッチ回路として機能する。
【0089】
以上のように、本実施形態における電源回路52は、電源電圧である電圧VHVを出力する電源電圧出力回路71と、一端であるソース端子が電源電圧出力回路71と電気的に接続され、他端であるドレイン端子がプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51と電気的に接続され、ゲート端子に入力されるゲート信号Sgdに基づいて動作するトランジスター72と、電源電圧出力回路71と電気的に接続された端子Dc、プリントヘッド2
0及び駆動信号出力回路51と電気的に接続された端子Sc、及びトランジスター72のゲート端子と電気的に接続された端子Gsを含む集積回路73、を有し、また、集積回路73は、一端であるソース端子が端子Dcと電気的に接続され、他端であるドレイン端子が端子Scと電気的に接続され、ゲート端子の入力に基づいて動作するトランジスター740と、端子Gsと電気的に接続され、集積回路73の外部に設けられたトランジスター72の動作を制御する外部Tr制御部731と、トランジスター740のゲート端子と電気的に接続され、トランジスター740の動作を制御する内部Tr制御部732と、を含む。換言すれば、電源回路52は、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51を含む各種構成に電源電圧としての電圧VHVを供給するか否かを切り替えるトランジスター72と、トランジスター72と並列に接続され、集積回路73の内部において、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51を含む各種構成に電源電圧としての電圧VHVを供給するか否かを切り替えるトランジスター740とを有する。
【0090】
これにより、トランジスター72,740の少なくとも一方で、突入電流を低減するとともに、トランジスター72,740の少なくとも他方が、定常動作時においてプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51に電源電圧としての電圧VHVを供給することができる。その結果、従来、ディスクリート部品で構成されていた突入電流低減回路を集積回路73として構成できるが故に、電源回路52の小型化が実現できるとともに、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51に電源電圧としての電圧VHVの供給の制御をディスクリートで構成されたトランジスター72とすることで、プリントヘッド20が有するノズル数の変動や、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMの波形が変更されることに起因して、出力する電流量が変更となった場合であっても、当該仕様変更に対して容易に対応することができ、汎用性の高い電源回路52を提供することができる。
【0091】
ここで、本実施形態における電源回路52の動作について、図17を用いて説明する。図17は、電圧VHVのプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51への供給を開始する場合の動作を説明するための図である。
【0092】
図17に示すように、時刻t0以前において、電源電圧出力回路71が電圧VHVを出力している。この場合において、外部Tr制御部731、及び内部Tr制御部732は、トランジスター72,740を非導通に制御している。すなわち、電源回路52は、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に電圧VHVを供給していない。また、時刻t0以前の期間において、放電Tr制御部733は、トランジスター750を導通に制御する。これにより、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51には、グラウンド電位の信号が供給される。すなわち、トランジスター72を含む各種回路素子で生じたリーク電流に起因した意図しない電位の信号がプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51に供給されない。これにより、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51に誤動作が生じるおそれが低減される。
【0093】
そして、時刻t0において、駆動信号出力回路51がHレベルのVHV制御信号VHV_CNTを電源回路52が有する集積回路73に出力する。集積回路73が有する制御部730にHレベルのVHV制御信号VHV_CNTが供給されることで、内部Tr制御部732は、パルス信号のゲート信号Rgdを生成し、トランジスター740のゲート端子に供給するとともに、放電Tr制御部733は、トランジスター750を非導通に制御する。すなわち、内部Tr制御部732が、間欠的に導通となるようにトランジスター740を制御する。これにより、図17に示すように電圧VHVaの電位が徐々に増加する。
【0094】
以上のように、時刻t0において内部Tr制御部732がパルス信号のゲート信号Rgdを生成し、トランジスター740に供給することで、電圧VHVaの電位が急峻に増加するおそれが低減する。その結果、電圧VHVのプリントヘッド20、及び駆動信号出力
回路51への供給を開始する際に生じる突入電流を小さくすることができる。すなわち、大電流の突入電流が生じるおそれが低減される。ここで、内部Tr制御部732が出力するパルス信号であるゲート信号Rgdのパルス幅、及びデューティーは、電圧VHVの電位、負荷容量、突入電流の大きさ、及びトランジスター740の温度に応じて変更可能であってもよい。
【0095】
そして、集積回路73が有する制御部730にHレベルのVHV制御信号VHV_CNTが供給された後、所定の時間tbが経過した時刻t1において、外部Tr制御部731は、トランジスター72を導通にするゲート信号Sgdを出力する。これにより、電圧VHVは、トランジスター72を介して電圧VHVaとしてプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給される。ここで、時刻t0~時刻t1の期間において、トランジスター740が間欠に駆動されているが故に、トランジスター72のドレイン側の電位が徐々に増加している。そのため、時刻t1におけるトランジスター72のソース端子側に供給される電圧VHVの電位と、トランジスター72のドレイン端子側から出力される電圧VHVaの電位との差は小さく、それ故に、時刻t1において、トランジスター72を導通に制御した場合であっても、大電流の突入電流が生じるおそれが低減されている。
【0096】
そして、トランジスター72が導通に制御された後、所定の時間tcが経過した時刻t2において、内部Trは、トランジスター740を非導通に制御する。その結果、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51には、トランジスター72を介して電圧VHVが供給される。
【0097】
すなわち、本実施形態における電源回路52は、電源電圧出力回路71が電圧VHVの出力を開始した場合、外部Tr制御部731は、トランジスター72を非導通に制御し、内部Tr制御部732は、トランジスター740を導通に制御する。これにより、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給される電圧VHVの電位を徐々に増加させることが可能となり、大電流の突入電流が生じるおそれが低減する。そして、その後の時刻t1において、外部Tr制御部731は、トランジスター72を導通に制御することで、トランジスター72を介して、電圧VHVがプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給される。
【0098】
ここで、本実施形態では、時刻t0~時刻t1の期間において、外部Tr制御部731が、トランジスター72を非導通に制御し、内部Tr制御部732が、トランジスター740を導通に制御し、時刻t1において、外部Tr制御部731が、トランジスター72を導通に制御するとして説明を行ったが、時刻t0~時刻t1の期間において、外部Tr制御部731が、トランジスター72を導通に制御し、内部Tr制御部732が、トランジスター740を非導通に制御し、時刻t1において、内部Tr制御部732が、トランジスター740を導通に制御してもよい。
【0099】
しかしながら、上述のように、突入電流は、トランジスター72、又はトランジスター740を、パルス信号を用いてパルス駆動することで低減している。すなわち、電圧VHVがプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給される際に生じる突入電流は、トランジスター72、又はトランジスター740を駆動するパルス信号のパルス幅、及びデューティーを調整することで、任意に対応できる。これに対して、定常状態において、電圧VHVがプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給されることにより生じる電流は、プリントヘッド20が有するノズル数や、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMに起因した電流により規定される。
【0100】
係る点を加味すると、電圧VHVが供給される際に生じる突入電流を、集積回路73の内部に設けられたトランジスター740で低減し、また、定常動作時にプリントヘッド2
0や駆動信号出力回路51に供給される電圧VHVを、トランジスター72を介して供給することで、電源回路52が大型化になることなく、さらに汎用性を高めた電源回路52を提供することができる。
【0101】
ここで、トランジスター72が第1トランジスターの一例であり、トランジスター740が第2トランジスターの一例であり、トランジスター750が放電回路の一例である。また、トランジスター72のゲート端子が第1制御端子の一例であり、トランジスター740のゲート端子が第2制御端子の一例である。また、トランジスター72の動作を制御する外部Tr制御部731が第1トランジスター制御回路の一例であり、トランジスター740の動作を制御する内部Tr制御部732が第2トランジスター制御回路の一例である。また、端子Dcが第1端子の一例であり、端子Scが第2端子の一例であり、端子Gsが第3端子の一例であり、端子Ldが第4端子の一例である。そして、トランジスター740、外部Tr制御部731、内部Tr制御部732、及びトランジスター750を含み、端子Dc,Sc,Gs,Ldを介して外部と電気的に接続される集積回路73が集積回路装置の一例である。
【0102】
1.5作用効果
以上のように本実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52は、電源電圧である電圧VHVを出力する電源電圧出力回路71と、一端であるソース端子が電源電圧出力回路71と電気的に接続され、他端であるドレイン端子がプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51と電気的に接続され、ゲート端子に入力されるゲート信号Sgdに基づいて動作するトランジスター72と、電源電圧出力回路71と電気的に接続された端子Dc、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51と電気的に接続された端子Sc、及びトランジスター72のゲート端子と電気的に接続された端子Gsを含む集積回路73、を有し、また、集積回路73は、一端であるソース端子が端子Dcと電気的に接続され、他端であるドレイン端子が端子Scと電気的に接続され、ゲート端子の入力に基づいて動作するトランジスター740と、端子Gsと電気的に接続され、集積回路73の外部に設けられたトランジスター72の動作を制御する外部Tr制御部731と、トランジスター740のゲート端子と電気的に接続され、トランジスター740の動作を制御する内部Tr制御部732と、を含む。換言すれば、電源回路52は、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51を含む各種構成に電源電圧としての電圧VHVを供給するか否かを切り替えるトランジスター72と、トランジスター72と並列に接続され、集積回路73の内部において、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51を含む各種構成に電源電圧としての電圧VHVを供給するか否かを切り替えるトランジスター740とを有する。
【0103】
これにより、トランジスター72,740の少なくとも一方で、突入電流を低減するとともに、トランジスター72,740の少なくとも他方が、定常動作時においてプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51に電源電圧としての電圧VHVを供給することができる。その結果、従来、ディスクリート部品で構成されていた突入電流低減回路を集積回路73として構成できるが故に、電源回路52の小型化が実現できるとともに、プリントヘッド20及び駆動信号出力回路51に電源電圧としての電圧VHVの供給の制御をディスクリートで構成されたトランジスター72とすることで、プリントヘッド20が有するノズル数の変動や、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMの波形が変更されることに起因して、出力する電流量が変更となった場合であっても、当該仕様変更に対して容易に対応することができ、汎用性の高い電源回路52を提供することができる。
【0104】
2.第2実施形態
第2実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52について説明する。第2実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52を説明するにあたり、第1実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52と同様の構成については、同じ符号を付し、その
説明を省略、若しくは簡略化する。
【0105】
図18は、第2実施形態における電源回路52の構成を示す図である。図18に示すように、第2実施形態における電源回路52は、集積回路73が電圧VHVaの電圧値を検出する電圧検出回路760を含む点で、第1実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52と異なる。
【0106】
電圧検出回路760は、集積回路73が有する端子Vdiを介して、電圧VHVaの電圧値を検出する。電圧検出回路760は、電圧VHVaの電圧値が所定の閾値電圧Vthを上回った場合に、電圧検出信号Vdetを制御部730に出力する。そして、制御部730に電圧VHVaが閾値電圧Vthを上回ったことを示す電圧検出信号Vdetが入力されると、外部Tr制御部731は、トランジスター72を導通に制御するためのゲート信号Sgdを出力する。
【0107】
図19は、第2実施形態における電圧VHVのプリントヘッド20及び駆動信号出力回路51への供給を開始する場合の動作を説明するための図である。
【0108】
図19に示すように、第2実施形態における電源回路52は、第1実施形態における電源回路52と同様に、時刻t0以前において、電源電圧出力回路71は、電圧VHVを出力し、外部Tr制御部731、及び内部Tr制御部732は、トランジスター72,740を非導通に制御し、放電Tr制御部733は、トランジスター750を導通に制御する。これにより、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51には、グラウンド電位の信号が供給される。
【0109】
そして、時刻t0において、HレベルのVHV制御信号VHV_CNTが電源回路52の集積回路73に供給されることで、集積回路73が有する制御部730の内の内部Tr制御部732は、パルス信号のゲート信号Rgdを生成し、トランジスター740のゲート端子に供給するとともに、放電Tr制御部733は、トランジスター750を非導通に制御する。これにより、電圧VHVaの電位が徐々に増加する。
【0110】
そして、集積回路73が有する電圧検出回路760が電圧VHVaの電位が閾値電圧Vthを上回ったことを検出した時刻t1aにおいて、外部Tr制御部731は、トランジスター72を導通にするゲート信号Sgdを出力する。これにより、電圧VHVは、トランジスター72を介して電圧VHVaとしてプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に供給される。
【0111】
その後、所定の時間tdが経過した時刻t2aにおいて、内部Tr制御部732は、トランジスター740を非導通に制御する。これにより、プリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51には、トランジスター72を介して電圧VHVが供給される。
【0112】
すなわち、第1実施形態における電源回路52は、外部Tr制御部731が経過時間に基づいてトランジスター72の導通、非導通を制御していたのに対して、第2実施形態における電源回路52では、外部Tr制御部731は、トランジスター72から出力される電圧VHVaの電位に基づいて、トランジスター72の導通、非導通を制御する。すなわち、第2実施形態における電源回路52は、集積回路73は、電圧VHVの電圧値を検出する電圧検出回路760を含み、電源電圧出力回路71が電圧VHVの出力を開始した場合、外部Tr制御部731は、トランジスター72を非導通に制御し、内部Tr制御部732は、トランジスター740を導通に制御する。そして、電圧検出回路760が、電圧VHVの電圧値が所定の値である閾値電圧Vthよりも大きいことを検出した場合に、外部Tr制御部731は、トランジスター72を導通に制御する。
【0113】
これにより、電圧VHVaにより実際に蓄えられる電荷量に応じて、集積回路73の動作を制御することが可能となり、その結果、より高い精度で、大電流の突入電流がプリントヘッド20、及び駆動信号出力回路51に生じるおそれがさらに低減する。
【0114】
すなわち、第2実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52では、大電流の突入電流が生じるおそれをさらに低減しつつ、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0115】
ここで、電圧検出回路760が検出回路の一例である。
【0116】
3.第3実施形態
第3実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52について説明する。第3実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52を説明するにあたり、第1実施形態、及び第2実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52と同様の構成については、同じ符号を付し、その説明を省略、若しくは簡略化する。
【0117】
図20は、第3実施形態における電源回路52の構成を示す図である。図20に示すように、第3実施形態における電源回路52は、集積回路73が動作モードを切り替えるためのモード信号MODEが入力される端子Miを有する点で、第1実施形態、及び第2実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52と異なる。
【0118】
集積回路73に入力されるモード信号MODEは、集積回路73の動作モードを切り替える信号であり、例えば、図2に示す制御回路100が出力する。そして、集積回路73は、入力されるモード信号MODEに基づいて、図17に示す内部Tr制御部732がパルス信号のゲート信号Rgdを生成し、トランジスター740に供給する期間である所定の時間tbを変更しても良く、また、集積回路73は、入力されるモード信号MODEに基づいて、図19に示す閾値電圧Vthの電位を変更しても良い。
【0119】
すなわち、モード信号MODEにより規定される第1動作モードにおいて、外部Tr制御部731がトランジスター72の動作を制御する制御条件と、第2動作モードにおいて、外部Tr制御部731がトランジスター72の動作を制御する制御条件とは異なり、また、モード信号MODEにより規定される第1動作モードにおいて、内部Tr制御部732がトランジスター740の動作を制御する制御条件と、第2動作モードにおいて、内部Tr制御部732がトランジスター740の動作を制御する制御条件とは異なる。
【0120】
電圧VHVが供給されるプリントヘッド20が有するノズル数や駆動信号出力回路51の回路構成によって、電圧VHVが供給される構成の容量成分が異なる。そのため、電圧VHVの供給が開始された後、当該電圧VHVにより電荷が蓄えられるのに要する時間も異なる。また、電圧VHVの電圧値も使用される機器の条件により異なる。そのため、一意に期間Tb、及び閾値電圧Vthの値を規定した場合、電源回路52の汎用性が低下する。
【0121】
このような問題に対して、集積回路73がモード信号MODEに基づいて切り替え可能な複数の動作モードを有することで、第3実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52では、電源回路52の汎用性をさらに高めることができる。すなわち、第3実施形態における液体吐出装置1、及び電源回路52では、第1実施形態、及び第2実施形態に示す液体吐出装置1、及び電源回路52と同様の作用効果を奏し、電源回路52の汎用性をさらに高めることができる。
【0122】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0123】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0124】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0125】
液体吐出装置の一態様は、
液体を吐出する液体吐出装置であって、
駆動することで液体を吐出する駆動部と、
前記駆動部に電源電圧を供給する電源回路と、
を備え、
前記電源回路は、
前記電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
一端が前記電源電圧出力回路と電気的に接続され、他端が前記駆動部と電気的に接続され、第1制御端子の入力に基づいて動作する第1トランジスターと、
前記電源電圧出力回路と電気的に接続された第1端子、前記駆動部と電気的に接続された第2端子、及び前記第1トランジスターの制御端子と電気的に接続された第3端子を含む集積回路装置と、
を有し、
前記集積回路装置は、
一端が前記第1端子と電気的に接続され、他端が前記第2端子と電気的に接続され、第2制御端子の入力に基づいて動作する第2トランジスターと、
前記第3端子と電気的に接続され、前記第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路と、
前記第2制御端子と電気的に接続され、前記第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路と、
を含む。
【0126】
この液体吐出装置によれば、電源回路において駆動部に電源電圧を供給する場合に、当該電源電圧が伝搬する経路に第1トランジスターと第2トランジスターとを並列に設け、第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路、及び第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路ととともに、第2トランジスターを1つの集積回路の内部に設けることで、電源回路を構成するディスクリート部品の点数を少なくすることができる。これにより、突入電流を低減しつつ、電源回路の小型化が可能となる。
【0127】
さらに、この液体吐出装置によれば、電源回路において電源電圧が伝搬する経路に設けられた第1トランジスターをディスクリート部品で構成することで、駆動部の仕様が変更となった場合であっても、当該電源電圧に基づいて生じる電流に応じて、容易に第1トランジスターを変更することができる。よって、突入電流を低減しつつ、汎用性の高い電源回路を備えた液体吐出装置を提供できる。
【0128】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記電源電圧出力回路が前記電源電圧の出力を開始した場合、
前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを非導通に制御し、前記第2トランジスター制御回路は、前記第2トランジスターを導通に制御し、
その後、前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを導通に制御してもよい。
【0129】
この液体吐出装置によれば、仕様の変更に伴い、電流値、電圧値が大きく変更するおそれがある定常時において、第1トランジスターが電源電圧を駆動部に供給することで、電源回路が大型化になることなく、電源回路において、液体吐出装置、及び駆動部に使用に応じた最適な特性の第1トランジスターを用いることができる。すなわち、突入電流を低減し、電源回路の小型化を阻害することなく、電源回路の汎用性をさらに高めることができる。
【0130】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記集積回路装置は、前記電源電圧の電圧値を検出する検出回路を含み、
前記電源電圧出力回路が前記電源電圧の出力を開始した場合、
前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを非導通に制御し、前記第2トランジスター制御回路は、前記第2トランジスターを導通に制御し、
前記検出回路が、前記電圧値が所定の値よりも大きいことを検出した場合に、前記第1トランジスター制御回路は、前記第1トランジスターを導通に制御してもよい。
【0131】
この液体吐出装置によれば、電源電圧が供給される駆動部の状態に応じた最適なタイミングで第1トランジスターを介した電源電圧の供給に切り替えることができる。
【0132】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記集積回路装置は、第1動作モードと第2動作モードとを有し、
前記第1動作モードにおいて、前記第1トランジスター制御回路が前記第1トランジスターの動作を制御する制御条件と、前記第2動作モードにおいて、前記第1トランジスター制御回路が前記第1トランジスターの動作を制御する制御条件とは異なり、
前記第1動作モードにおいて、前記第2トランジスター制御回路が前記第2トランジスターの動作を制御する制御条件と、前記第2動作モードにおいて、前記第2トランジスター制御回路が前記第2トランジスターの動作を制御する制御条件とは異なってもよい。
【0133】
この液体吐出装置によれば、電源回路が有する集積回路装置が、第1動作モード、及び第2動作モードを含む複数の動作モードを有することで、電源回路の小型化を阻害することがなく、汎用性をさらに高めることができる。
【0134】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記集積回路装置は、
前記駆動部と電気的に接続された第4端子と、
前記第4端子と電気的に接続され、前記電源電圧が前記駆動部に伝搬する伝搬経路の電荷を放出する放電回路と、
を有してもよい。
【0135】
この液体吐出装置によれば、電源電圧が伝搬する伝搬経路の電荷を放出する放電回路を備えることで、液体吐出装置や駆動部等、電源電圧の動作が停止している場合に、電源電圧により生じた残留電荷により、液体吐出装置や駆動部に意図しない電圧が供給されるおそれが低減する。さらに、当該放電回路を集積回路装置の内部に設けることで、電源回路をさらに小型化も可能となる。
【0136】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記駆動部は、圧電素子を含み、前記圧電素子が駆動することで液体を吐出する液体吐出ヘッドであってもよい。
【0137】
圧電素子等の容量性負荷は、その数量に応じて電流量が大きく変化する。そのため、駆動部が圧電素子を有する液体吐出ヘッドの場合、駆動部が有する圧電素子の数に応じて、様々な要求仕様に応える必要がある。このような問題に対して、この液体吐出装置によれば、電源回路の小型化を阻害することなく、汎用性の高い電源回路を提供できるが故に、駆動部が、圧電素子が駆動することで液体を吐出する液体吐出ヘッドであっても大型化することなく、突入電流に起因した誤動作が生じるおそれを低減することができる。
【0138】
電源回路の一態様は、
駆動部に電源電圧を供給する電源回路であって、
前記電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
一端が前記電源電圧出力回路と電気的に接続され、他端が前記駆動部と電気的に接続され、第1制御端子の入力に基づいて動作する第1トランジスターと、
前記電源電圧出力回路と電気的に接続された第1端子、前記駆動部と電気的に接続された第2端子、及び前記第1トランジスターの制御端子と電気的に接続された第3端子を含む集積回路装置と、
を有し、
前記集積回路装置は、
一端が前記第1端子と電気的に接続され、他端が前記第2端子と電気的に接続され、第2制御端子の入力に基づいて動作する第2トランジスターと、
前記第3端子と電気的に接続され、前記第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路と、
前記第2制御端子と電気的に接続され、前記第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路と、
を含む。
【0139】
この電源回路によれば、駆動部に電源電圧を供給する場合に、当該電源電圧が伝搬する経路に第1トランジスターと第2トランジスターとを並列に設け、第1トランジスターの動作を制御する第1トランジスター制御回路、及び第2トランジスターの動作を制御する第2トランジスター制御回路ととともに、第2トランジスターを1つの集積回路の内部に設けることで、電源回路を構成するディスクリート部品の点数を少なくすることができる。これにより、突入電流を低減しつつ、小型化が可能となる。
【0140】
さらに、この電源回路によれば、電源電圧が伝搬する経路に設けられた第1トランジスターをディスクリート部品で構成することで、駆動部の仕様が変更となった場合であっても、当該電源電圧に基づいて生じる電流に応じて、容易に第1トランジスターを変更することができる。よって、突入電流を低減しつつ、汎用性の高い電源回路を提供できる。
【符号の説明】
【0141】
1…液体吐出装置、2…移動体、3…移動機構、4…搬送機構、20…プリントヘッド、24…キャリッジ、31…キャリッジモーター、32…キャリッジガイド軸、33…タイミングベルト、35…キャリッジモータードライバー、40…プラテン、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、45…搬送モータードライバー、51…駆動信号出力回路、52…電源回路、60…圧電素子、71…電源電圧出力回路、72…トランジスター、73…集積回路、74…降圧回路、80,81…ヒューズ、91…発振回路、100…制御回路、190…ケーブル、200…駆動信号選択制御回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコ
ーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、235,236…トランジスター、400…内部電圧生成回路、410…発振回路、420…クロック選択回路、430…異常検出回路、431…発振異常検出部、432…動作異常検出部、433…電源電圧異常検出部、440…レジスター制御回路、441…シーケンスレジスター、442…状態レジスター、443…レジスター制御部、450…駆動信号放電回路、451…抵抗、452…トランジスター、453…インバーター、460…基準電圧信号出力回路、461…コンパレーター、462,463…トランジスター、464,465,466…抵抗、467…インバーター、470…VHV制御信号出力回路、471…トランジスター、480…状態信号入出力回路、481…トランジスター、482…インバーター、490…エラー信号入出力回路、491…トランジスター、492…インバーター、500…集積回路、501…駆動信号生成回路、502…増幅制御信号生成回路、510…DACインターフェース、520…DAC部、530…変調部、540…ゲート駆動部、550…増幅回路、551,552…トランジスター、560…復調回路、561…コイル、562…コンデンサー、570…帰還回路、571,572,576…抵抗、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、730…制御部、731…外部Tr制御部、732…内部Tr制御部、733…放電Tr制御部、740,750…トランジスター、760…電圧検出回路、P…媒体
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