(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】積層体及びそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240910BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020563289
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050547
(87)【国際公開番号】W WO2020138048
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018247979
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石丸 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】早田 智章
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-144395(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126563(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150997(WO,A1)
【文献】特開2018-177317(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層/接着層/シーラント層の3層がこの順番で積層されてなり、前記基材層はポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル、またはポリプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィン、またはナイロンを主たる構成成分とするポリアミドからなり、
前記シーラント層はポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエテルからなり、
前記シーラント層同士を140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときの積層体のシール強度が
33N/15mm以上70N/15mm以下であ
り、厚みが7μm以上120μm以下である積層体。
【請求項2】
基材層がポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
さらにガスバリア層が積層されてなることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の積層体。
【請求項4】
突刺し強度が0.4N/μm以上0.6N/μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
シーラント層を構成するポリエステル系成分のモノマー成分として、エチレングリコール以外のジオールモノマー成分、及び/又はテレフタル酸以外の酸成分を含有し、該ジオール成分がネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、及びジエチレングリコールからなる群より選択されてなる1種以上であり、該酸成分はイソフタル酸であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の積層体を少なくとも1層に有していることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性と耐破袋性に優れた積層体およびそれを用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品および工業製品に代表される流通物品の多くに、シーラントフィルムをヒートシール又はラミネートして得られた積層フィルムが、包装体や蓋材等の包装材として用いられている。包装材の最内面(内容物と接する面)には、高いシール強度を示すポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMA等のコポリマー樹脂からなるシーラント層が設けられている。これらの樹脂は、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができることが知られている。
しかし特許文献1に記されているようなポリオレフィン系樹脂からなる無延伸のシーラントフィルムは、油脂や香料等の有機化合物からなる成分を吸着しやすいため、内容物の香りや味覚を変化させやすいという欠点を持っている。そのため、化成品、医薬品、食品等の包装にポリオレフィン系樹脂からなるシーラント層を最内層として使用するのは適さないケースが多い。
【0003】
一方、特許文献2に記されているようなアクリロニトリル系樹脂からなるシーラントは、化成品、医薬品、食品等に含まれる有機化合物を吸着しにくいため、包装材の最内層として使用するのに適している。しかし、アクリロニトリル系フィルムは、低温域(150℃以下)におけるヒートシール強度が低いという問題がある。製袋工程において、ヒートシール温度が高温になると、シールバーのメンテナンス頻度が増えてしまうので生産性の観点で好ましくない。また、製袋の歩留まりを向上させるために、製袋ラインの高速化が進んでおり、この要求に対してもシール温度は低温であることが好ましい。アクリロニトリル系樹脂からなるシーラントは、これらの要求を満足できていない。
【0004】
このような問題に鑑みて、特許文献3には有機化合物の非吸着性と低温シール性をもったポリエステル系シーラントが開示されている。しかし、特許文献3のシーラントは、ヒートシールしたときの熱により、熱収縮を起こすだけでなく、シーラントが融けて穴が空いてしまうという問題があった。例えばシーラントを用いた包装体を作製するとき、シーラントが熱収縮すると袋の形が崩れてしまうだけでなく、穴あきが生じると袋としての保存機能を果たすことができないため好ましくない。このように、特許文献3のシーラントには、耐熱性に改善の余地があった。
【0005】
そこで、特許文献4には耐熱性を向上させたシーラントが開示されている。特許文献4に記載のシーラントは、ヒートシール性を有する層とそれ以外の層を分け、これらの層の熱特性をそれぞれ別々に制御することにより、ヒートシール性と耐熱性を満足させている。ただし、液体や重量物の包装体を構成するシーラントに、特許文献4に記載のシーラントを用いた場合、包装体が落下したときに破袋してしまう問題があった。また、特許文献4に記載のシーラントを用いた包装体は、外部からの突刺しや内容物に角がある場合に容易に穴があいてしまう問題もあった。
【0006】
かかる問題点を解決するため、例えば特許文献5にはポリブチレンテレフタレートを60重量%以上含むヒートシール性二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。特許文献5のフィルムは突刺し強度が従来のポリエステル系フィルムに比べて改善されているものの、230℃でなければヒートシール強度が発現しないため、シール時の熱収縮が大きくなるといった問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3817846号公報
【文献】特開平7-132946号公報
【文献】国際公開第2014-175313号公報
【文献】国際公開WO2018/150997号公報
【文献】特開2016-203630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解消することを課題とするものである。すなわち、本発明の課題は、内容物の成分吸着が少なく、低温域で高いヒートシール強度を有し、耐破袋性に優れた積層体を提供することにある。同時に、本発明の課題は、前記の積層体を少なくとも一層として含む包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成よりなる。
1.少なくとも基材層/接着層/シーラント層の3層がこの順番で積層されてなり、
前記基材層はポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル、またはポリプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィン、またはナイロンを主たる構成成分とするポリアミドからなり、前記シーラント層はポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエテルからなり、前記シーラント層同士を140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときの積層体のシール強度が8N/15mm以上70N/15mm以下である積層体。
2.基材層がポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルからなることを特徴とする1.に記載の積層体。
3.さらにガスバリア層が積層されてなることを特徴とする1.または2.いずれかに記載の積層体。
4.突刺し強度が0.4N/μm以上0.6N/μm以下であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の積層体。
5.シーラント層を構成するポリエステル系成分のモノマー成分として、エチレングリコール以外のジオールモノマー成分、及び/又はテレフタル酸以外の酸成分を含有し、該ジオール成分がネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、及びジエチレングリコールからなる群より選択されてなる1種以上であり、該酸成分はイソフタル酸であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の積層体。
6.前記1.~5.のいずれかに記載の積層体を少なくとも1層に有していることを特徴とする包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、内容物の成分吸着が少なく、低温域で高いヒートシール強度を有し、耐破袋性に優れている。そのため、包装材料として使用すると高いシール強度を発現することができ、落下や外部刺激からも内容物を保護する機能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、少なくとも基材層/接着層/シーラント層の3層がこの順番で積層されてなり、前記基材層はポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルまたはポリプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィンまたはナイロンを主たる構成成分とするポリアミドからなり、前記シーラント層はポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエテルからなり、前記シーラント層同士を140℃、0.2MPa、2秒でシールしたときの積層体のシール強度が8N/15mm以上70N/15mm以下である積層体である。
【0012】
以下、本発明の積層体について説明する。
1.積層体の層構成、厚み、層比率
本発明の積層体は、ヒートシール性と耐破袋性とを両立させるため、ヒートシール層(シーラント層と称する場合がある)と基材の各層を少なくとも一層ずつ有していなければならず、これら少なくとも2つの層を積層させるために接着層を有した3層以上でなければならない。さらに、所定のヒートシール強度を満たすため、ヒートシール層は積層体における最表層のどちらか一方に設けなければならない。基材は、積層体の最表層、中間層(4層以上の場合)いずれに位置しても構わない。すなわち本発明を包装体として使用するときの最外層から、基材層/接着層/ヒートシール層がこの順番で積層された構成でなければならない。
【0013】
本発明の積層体の層構成は前記の3層に加えて、ガスバリア層を設けた4層構成であると好ましい。ガスバリア層は金属または金属酸化物を主たる構成成分とする無機薄膜から構成されることが好ましく、最表層、中間層いずれに位置しても構わない。ガスバリア層は透明であるとより好ましい。
【0014】
また、本発明の積層体は、包装体としての意匠性を向上させるため、文字や図柄を記載した印刷層を設けてもよい。印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキ等、公知のものを用いることができる。印刷層数は1層であってもよく、複数層であってもよい。印刷を複数色にして意匠性を向上させるためには、複数層からなる印刷層があると好ましい。印刷層は、最表層、中間層いずれに位置しても構わない。
【0015】
本発明の好ましい構成としては、包装体として使用するときの最外層から、基材層/印刷層/接着層/シーラント層、または基材層/ガスバリア層/印刷層/接着層/シーラント層、または基材層/ガスバリア層/接着層/シーラント層等が挙げられる。
各層に関する構成要件は後述する。
【0016】
また、本発明の積層体は、必要に応じてさらに基材層又はシーラント層に積層されるアンカーコート層やガスバリア層に積層されるオーバーコート層を設けることもできる。これらの層を設けることにより、積層体のガスバリア性や耐擦過性を向上させることができる。
【0017】
積層体の厚みは特に限定されないが、3μm以上200μm以下が好ましい。積層体の厚みが3μmより薄いとヒートシール強度の不足や印刷等の加工が困難になるおそれがありあまり好ましくない。また積層体の厚みが200μmより厚くても構わないが、積層体の使用重量が増えてコストが高くなるので好ましくない。積層体の厚みは5μm以上160μm以下であるとより好ましく、7μm以上120μm以下であるとさらに好ましい。
【0018】
ヒートシール層の積層体全体の厚みに対する層比率は、20%以上~80%以下であると好ましい。ヒートシール層の層比率が20%より少ない場合、積層体のヒートシール強度が低下してしまうため好ましくない。ヒートシール層の層比率が80%よりも高くなると、積層体のヒートシール性は向上するが、耐熱性が低下してしまうため好ましくない。ヒートシール層の層比率は、30%以上~70%以下がより好ましい。
【0019】
基材層の積層体全体の厚みに対する層比率は、20%以上~80%以下であると好ましい。基材層の層比率が20%より少ない場合、包装体としたときの耐破袋性が低下してしまうため好ましくない。基材層の層比率が80%よりも高くなると、積層体より包装袋を作製した際の耐破袋性は向上するが、相対的にヒートシール層の厚みが低下してしまうため好ましくない。基材層比率は、30%以上~70%以下がより好ましい。
【0020】
ガスバリア層の厚みについて、無機薄膜層をガスバリア層として、該無機薄膜層を蒸着金属または蒸着金属酸化物とする場合は2nm以上100nm以下であると好ましい。この層の厚みが2nmを下回ると、ガスバリア性が低下しやすくなるため好ましくない。一方、この層の厚みが100nmを上回っても、それに相当するガスバリア性の向上効果はなく、製造コストが高くなるため好ましくない。無機薄膜層の厚みは、5nm以上97nm以下であるとより好ましく、8nm以上94nm以下であるとさらに好ましい。
【0021】
ガスバリア層を金属箔とする場合は、金属箔の厚みが3μm以上200μm以下であると好ましい。この層の厚みが3μmを下回ると、ガスバリア性が低下しやすくなるため好ましくない。一方、この層の厚みが200nmを上回っても、それに相当するガスバリア性の向上効果はなく、製造コストが高くなるため好ましくない。無機薄膜層(金属箔)の厚みは、5μm以上197μm以下であるとより好ましく、8μm以上194μm以下であるとさらに好ましい。
【0022】
また、本発明の積層体の最表層(ヒートシール層を含む)には、フィルム表面の印刷性や滑り性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理などを施した層を設けることも可能であり、本発明の要件を逸しない範囲で任意に設けることができる。
【0023】
2.積層体の特性
2.1.ヒートシール強度
本発明の積層体のヒートシール層同士を温度140℃、シールバー圧力0.2MPa、シール時間2秒でヒートシールした際のヒートシール強度は、8N/15mm以上70N/15mm以下の必要がある。
ヒートシール強度が8N/15mm未満であると、シール部分がボイル処理等で容易に剥離されるため、包装体として用いることができない。ヒートシール強度は12N/15mm以上が好ましく、14N/15mm以上がより好ましい。ヒートシール強度は大きいことが好ましいが、現状得られる上限は60N/15mm程度である。ヒートシール強度の上限は69N/15mmであっても実用上は十分好ましいものといえる。
【0024】
2.2.衝撃強度
本発明の積層体は、衝撃強度が0.9J以上3.0J以下であると好ましい。 衝撃強度が0.9Jを下回ると、積層体を包装体として落下させたときに容易に破袋してしまうため好ましくない。衝撃強度の下限は1Jであるとより好ましく、1.1Jであるとさらに好ましい。一方、衝撃強度は高ければ高いほど好ましいが、本発明の技術水準では3.0Jが上限である。衝撃強度の上限は2.9Jであっても実用上は十分好ましいものといえる。
【0025】
2.3.突刺し強度
本発明の積層体は、突刺し強度が0.4N/μm以上0.6N/μm以下であると好ましい。突刺し強度が0.4N/μmを下回ると、積層体を包装体としたときに、外部からの突刺しや内容物に角がある場合に容易に穴があいてしまうため好ましくない。突刺し強度の下限は0.42N/μmであるとより好ましく、0.44N/μmであるとさらに好ましい。一方、突刺し強度は高ければ高いほど好ましいが、本発明の技術水準では0.6N/μmが上限である。突刺し強度の上限は0.59N/μmであっても実用上は十分好ましいものといえる。
【0026】
2.4.熱収縮率
本発明の積層体は、98℃の温湯中で3分間に亘って処理した場合における幅方向、長手方向の温湯熱収縮率がいずれも-5%以上5%以下であると好ましい。温湯熱収縮率が5%を超えると、積層体を用いて作製した袋をレトルト処理などの加熱処理をした場合に、袋の変形が大きくなって元の形状を保てなくなるだけでなく、無機物からなる層にクラックが生じてガスバリア性が低下してしまうため好ましくない。温湯熱収縮率は4%以下であるとより好ましく、3%以下であるとさらに好ましい。一方、温湯熱収縮率が-5%を下回る場合、積層体が伸びることを意味しており、収縮率が高い場合と同様に袋が元の形状を維持できにくくなるため好ましくない。積層体の温湯熱収縮率は-4%以上4%以下であるとより好ましく、-3%以上3%以下であるとさらに好ましい。
【0027】
2.5.内容物の種類と吸着量
本発明の積層体は、化成品、医薬品、食品等に含まれる有機化合物を吸着しにくい特徴がある。通常、積層体を包装体として使用する際、ヒートシール層を最内層とするため、本項で記載する、本発明の積層体の吸着量とは、ヒートシール層が内容物を吸着する量を示す。
【0028】
前記の有機化合物としては、例えばd-リモネン、シトラール、シトロネラール、p-メンタン、ピネン、テルピネン、ミルセン、カレン、ゲラニオール、ネロール、シトロネラール、テルピネオール、l-メントール、ネロリドール、ボルネオール、dl-カンファー、リコピン、カロテン、トランス-2-ヘキセナール、シス-3-ヘキセノール、β-イオノン、セリネン、1-オクテン-3-オール、ベンジルアルコール、オクタールツロブテロール塩酸塩、酢酸トコフェロールなどの香気成分や薬効成分が挙げられる。
【0029】
積層体への吸着量は、吸着条件(吸着物質の濃度、保管期間、温度等)によって異なるが、後述の実施例に示す方法で1週間保管した場合の吸着量が0μg/cm2以上2μg/cm2であると好ましい。吸着量0μg/cm2は、内容物がシーラントに全く吸着していないことを示す。吸着量は1.8μg/cm2以下であるとより好ましく、1.6μg/cm2以下であるとさらに好ましい。
【0030】
本発明の積層体は、ポリエステル系成分からなるヒートシール層を有しているため、類似した化学構造をもつ有機化合物に対しては吸着性が高まる恐れがある。具体的には、シーラントを構成するポリエステル系樹脂が構成成分の繰り返し単位中に酸素原子を4つ有するため、有機化合物の化学構造として、酸素原子数が多い(4つに近づく)ほど、シーラントに対する有機化合物の溶解度が増加して吸着性が高まる傾向にある。例えば、酸素原子が2つあるオイゲノールや酸素原子が3つあるサリチル酸メチルを含んだ内容物を包装すると、吸着量が2μg/cm2を超えやすくなってしまうため好ましくない。
【0031】
3.積層体の構成原料
3.1.ヒートシール層
本発明の積層体を構成するヒートシール層の原料種は、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものである。ここで、「主たる構成成分とする」とは、全構成成分量を100モル%としたとき、50モル%以上含有することを指す。
【0032】
また、本発明のポリエステル系樹脂層に使用するポリエステルにエチレンテレフタレート以外の成分を1種以上含むことが好ましい。エチレンテレフタレート以外の成分が存在することによって、ヒートシール層のヒートシール強度が向上するためである。耐熱層においては、エチレンテレフタレート以外の成分は少ない方が好ましいが、エチレンテレフタレート以外の成分を含むことによって、ヒートシール層との収縮率差を少なくすることができ、積層体のカールを小さくする効果がある。各成分の含有量はヒートシール層と耐熱層で異なるため後述する。エチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸以外の成分となりうるジカルボン酸モノマーとしては、例えばイソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸が挙げられる。上記のカルボン酸成分の中でも、イソフタル酸を用いることでヒートシール層同士のヒートシール強度を8N/15mm以上としやすくなるので好ましい。ただし、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)はポリエステル中に含有させないことが好ましい。
【0033】
また、エチレンテレフタレートを構成するエチレングリコール以外の成分となりうるジオールモノマーとしては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール等の長鎖ジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。ただし、ポリエステルには炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリンなど)を含有させないことが好ましい。
さらに、ポリエステルを構成する成分として、ε-カプロラクトンやテトラメチレングリコールなどを含むポリエステルエラストマーを含んでいてもよい。ポリエステルエラストマーは、ポリエステル系樹脂層の融点を下げる効果があるため、特にヒートシール層に好適に使用することができる。
【0034】
これらのなかでも、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコールのいずれか1種以上を用いることでヒートシール層同士のヒートシール強度を8N/15mm以上としやすくなるので好ましい。ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールのいずれか1種以上を用いることがより好ましく、ネオペンチルグリコールを用いることが特に好ましい。
本発明の積層体の構成するヒートシール層に用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸およびエチレングリコール以外の成分となるジカルボン酸モノマーおよび/又はジオールモノマーの含有量が25モル%以上であることが好ましく、27モル%以上がより好ましく、29モル%以上が特に好ましい。また、前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマー含有量の上限は50モル%である。
ヒートシール層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーが25モル%より低い場合、溶融樹脂をダイから押し出した後に例え急冷固化したとしても、後の延伸および熱固定工程で結晶化してしまうため、ヒートシール強度を8N/15mm以上とすることが困難となってしまうため好ましくない。
【0035】
一方、ヒートシール層に含まれる前記エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーが50モル%以上である場合、フィルムのヒートシール強度を高くすることができるものの、ヒートシール層の耐熱性が極端に低くなるため、ヒートシールするときにシール部の周囲がブロッキング(加熱用部材からの熱伝導によって、意図した範囲よりも広い範囲でシールされてしまう現象)してしまうため、適切なヒートシールが困難となる。エチレンテレフタレート以外の成分となるモノマーの含有量は48モル%以下であるとより好ましく、46%以下であると特に好ましい。
【0036】
3.2.基材層
本発明を構成する基材層はポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルまたはポリプロピレンを主たる構成成分とするポリオレフィンまたはナイロン(ナイロン4・6、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12から選択されてなる1種以上)を主たる構成成分とするポリアミドからなり、一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムであることが好ましい。市販品を使用してもよく、例えば、東洋紡社製エステル(登録商標)エステルフィルムE5102、東洋紡社製エスペットフィルムT4100、T6140、東洋紡社製ハーデン(登録商標)フィルムN1100、N2100、東洋紡社製パイレン(登録商標)フィルムP2261、P2161などが挙げられる。また、ポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするフィルムを基材層として使用してもよい。近年、プラスチックリサイクルの効率化を目指して包装体の構成素材を統一化しようとする「モノマテリアル化」の意識が高まっていることから、基材層はヒートシール層と同じポリエステル系樹脂であると好ましい。具体的には、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするのが好ましく、主たる構成成分がポリブチレンテレフタレートであるとより好ましい。以下では、基材層にポリエステル樹脂を用いたときの説明を記載する。
【0037】
基材層に含まれるポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート樹脂の含有率は60モル%以上であると好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。60モル%未満であると積層体の衝撃強度および突刺し強度が低下してしまうおそれがある。
ポリブチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは重合時に1,4-ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生物以外は含まれないことである。
【0038】
ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり最も好ましくは100モル%である。グリコール成分としてエチレングリコールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは重合時の副生成物であるジエチレングリコールが2モル%以下の含有量となることである。
本発明に用いられる基材層は、二軸延伸を行う時の製膜性や積層体の力学特性を調整する目的で、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂を含有することもできる。
【0039】
上記2つ以外のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂のほか、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸が共重合されたポリエステル樹脂や、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分が共重合されたポリエステル樹脂が挙げられる。しかし、ポリアルキレンオキサイドを含むものは適さない。
【0040】
これらポリエステル樹脂の添加量の上限としては、40モル%以下が好ましく、より好ましくは30モル%以下が好ましく、さらに10モル%以下が好ましく、特に5モル%以下が好ましい。上記ポリエステル樹脂の添加量が40モル%を超えると、積層体の衝撃強度や突刺し強度が不十分となるほか、ガスバリア性が低下するおそれがある。
【0041】
本発明の積層体を構成するヒートシール層、基材層の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。また、積層体の滑り性を良好にする滑剤としての微粒子を、少なくとも積層体の最表層に添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができる。例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムなどをあげることができ、有機系微粒子としては、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は、コールターカウンタにて測定したときに0.05~3.0μmの範囲内で必要に応じて適宜選択することができる。
【0042】
本発明の積層体を構成するヒートシール層、基材層の中に粒子を配合する方法として、例えば、ポリエステル系樹脂(レジン)を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールや水、そのほかの溶媒に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法や、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とを混練押出し機を用いてブレンドする方法なども挙げられる。
【0043】
3.3.接着層
本発明の積層体における接着層として、ドライラミネート用接着剤や押出ラミネートによる樹脂層を使用することができる。接着剤は1液型(乾燥タイプ)、2液型(硬化反応タイプ)いずれであっても構わない。ドライラミネートの場合は市販のポリウレタン系やポリエステル系のドライラミネーション用接着剤を用いることができる。代表例としては、DIC社製ディックドライ(登録商標)LX-703VL、DIC社製KR-90、三井化学社製タケネート(登録商標)A-4、三井化学社製タケラック(登録商標)A-905などである。押出ラミネートの場合は、層間、又は層とその他の層の間にポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂を溶融させて接着させるが、層等の表面の接着性を高めるためにアンカーコート層を積層しておくことも好ましい。
接着層は、接着剤をヒートシール層または基材層どちらか一方のフィルムに塗布し、その後、接着剤が乾燥または反応して接着剤が硬化することによって形成される。本発明の積層体において、接着剤乾燥後の接着層の厚みは1μm以上6μm以下であると好ましく、2μm以上5μm以下であるとより好ましい。
【0044】
3.4.基材層、接着層、シーラント層以外の樹脂層
本発明の積層体は、前述の基材層、接着層、シーラント層以外の樹脂層を設けていてもよい。この樹脂層を設けることにより、積層体の耐熱性や機械強度がさらに向上するため好ましい。さらに、樹脂層はヒートシール層を製膜するときに共押出によって積層され、ヒートシール層と同一工程で製膜されることが好ましい。ヒートシール層が製膜工程中で受ける張力によって意図せずに伸長される、熱固定中に融解して落下するといった問題を回避できるようになる。樹脂層を構成する原料種は、上述の「3.1.ヒートシール層」で記載したエチレンテレフタレートからなるポリエステル、又はエチレンテレフタレートを主たる構成成分としてヒートシール層よりもエチレンテレフタレートの含有量が多いポリエステルであることが好ましい。
【0045】
3.5.ガスバリア層
本発明の積層体に用いることのできるガスバリア層の原料種は、従来から公知の材料を使用することができ、所望のガスバリア性等を満たすために目的に合わせて適宜選択することができる。ガスバリア層として、無機薄膜層が好ましい。無機薄膜層の原料種としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉄、マンガン等の金属、これら金属の1種以上を含む無機物または無機化合物があり、該当する無機化合物としては、前記金属の酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの無機物または無機化合物は単体で用いてもよいし、複数で用いてもよい。特に、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを単体(一元体)または併用(二元体)で使用することにより、積層体の透明性を向上させることができるため好ましい。無機化合物の成分が酸化ケイ素と酸化アルミニウムの二元体からなる場合、酸化アルミニウムの含有量は20質量%以上80質量%以下であると好ましく、25質量%以上70質量%以下であるとより好ましい。酸化アルミニウムの含有量が20質量%以下の場合、無機薄膜層の密度が下がり、ガスバリア性が低下する恐れがあるため好ましくない。また、酸化アルミニウムの含有量が80質量%以上であると、無機薄膜層の柔軟性が低下してクラックが発生しやすくなり、結果としてガスバリア性が低下する恐れが生じるため好ましくない。
無機薄膜層に使用する金属酸化物の酸素/金属の元素比は、1.3以上1.8未満であればガスバリア性のバラツキが少なく、常に優れたガスバリア性が得られるため好ましい。酸素/金属の元素比は、酸素および金属の各元素の量をX線光電子分光分析法(XPS)で測定し、酸素/金属の元素比を算出することで求めることができる。
【0046】
3.6.アンカーコート層
本発明の積層体には、上記のガスバリア層を成膜する前に、あらかじめ基材層やヒートシール層にアンカーコートを施してもよい。アンカーコートを施すことにより、樹脂層と無機薄膜層との密着を高め、積層体のガスバリア性がさらに向上する。
アンカーコート層を構成する樹脂、架橋剤、化合物等の種類としては特に限定されず、オキサゾリン基含有樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はこれらの樹脂より2種以上を含む混合物、ポリビニルアセタールとポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とシランカップリング剤を組み合わせたもの、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランをはじめとした珪素化合物あるいはその加水分解物と水酸基を有する水溶性高分子との混合物、シリコン系樹脂、ポリシラザン系樹脂とシラン化合物系樹脂との混合物等を用いることができる。
アンカーコート層の成膜方法としては特に限定されず、公知の方法を任意に採用することができる。基材層やヒートシール層といった樹脂層の製膜工程中にコーティング工程を設けるインラインコート法、基材層やヒートシール層としてのフィルムをロールとして巻き取った後にコーティングを行うオフラインコート法いずれの方法でも構わない。オフラインコート法は、樹脂フィルムを巻き取った後、別の設備で巻き出してコーティングする分だけ生産性が劣るためインラインコート法が好ましい。インラインコート法では通常、下記4.1.「ポリエステル系樹脂層の製膜条件」で挙げた4.1.2.「第一(縦)延伸」または4.1.3.「中間熱処理」の後でコーティングを施し、4.1.4.「第二(横)延伸」から4.1.5.「最終熱処理」までの間(テンター内)で溶媒を乾燥させることとなる。そのため、コーティング液を乾燥する最高温度は、最終熱処理温度に依ることとなるが、通常は65℃以上250℃以下であれば十分である。コーティングの方法としては特に限定されず、グラビアコート法、リバースコート法、ディッピング法、ローコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法、ダイコート法、バーコート法等、公知の方法を採用することができる。
【0047】
3.7.オーバーコート層
本発明の積層体には、上記のガスバリア層を成膜した後、その上にオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコートを施すことにより、積層体の耐擦過性やガスバリア性が向上する。
オーバーコート層の種類は特に限定されないが、ウレタン系樹脂とシランカップリング剤からなる組成物、有機ケイ素およびその加水分解物からなる化合物、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する水溶性高分子等、従来から公知の材料を使用することができ、所望のガスバリア性等を満たすために目的に合わせて適宜選択することができる。これらの中でも、ウレタン系樹脂とシランカップリング剤からなる組成物は、積層体の柔軟性を維持しながらガスバリア性を向上させることができるため好ましい。
また、オーバーコート層は、本発明の目的を損なわない範囲で、帯電防止性、紫外線吸収性、着色、熱安定性、滑り性等を付与する目的で、各種添加剤が1種類以上添加されていてもよく、各種添加剤の種類や添加量は、所望の目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
4.積層体の製造条件
4.1.ヒートシール層の製膜方法
4.1.1.溶融押し出し
本発明の積層体を構成するヒートシール層(以下、4.1.の範囲で「フィルム」と記載するものは、ヒートシール層を指す)は、上記3.「積層体の構成原料」中の3.1.「ヒートシール層」で記載したポリエステル原料を、押し出し機により溶融押し出しして未延伸の積層フィルムを形成し、それを以下に示す所定の方法により延伸することによって得ることができる。なお、フィルムがヒートシール層以外の層を含む場合、各層を積層させるタイミングは延伸の前後いずれであっても構わない。ヒートシール層は、後述の4.1.4.「最終熱処理」で融点以上の温度で加熱するため、単層であると加熱炉内でフィルムが融解して落下してしまう懸念がある。そのため、ヒートシール層とは別に耐熱性のある層を積層させるのが好ましい。延伸前に積層させる場合、各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々の押し出し機によって溶融押し出しし、樹脂流路の途中でフィードブロック等を用いて接合させる方法を採用するのが好ましい。延伸後に積層させる場合、それぞれ別々に製膜したフィルムを接着剤によって貼りあわせるラミネート、単独または積層させたフィルムの表層に溶融させたポリエステル樹脂を流して積層させる押出ラミネートを採用するのが好ましい。これらの中でも、延伸前に各層を積層させる方法が好ましい。
ポリエステル樹脂は、前記のように、エチレンテレフタレート以外の成分となり得るモノマーを適量含有するように、ジカルボン酸成分とジオール成分の種類と量を選定して重縮合させることで得ることができる。また、チップ状のポリエステルを2種以上混合してポリエステル系樹脂層の原料として使用することもできる。
【0049】
原料樹脂を溶融押し出しするとき、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後、押出機を利用して200~300℃の温度で溶融してフィルムとして押し出す。押し出しはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0050】
その後、押し出しで溶融されたフィルムを急冷することにより、未延伸のフィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
フィルムは、無延伸、一軸延伸(縦(長手)方向、横(幅)方向のいずれか少なくとも一方向への延伸)、二軸延伸いずれの方式で製膜されてもよい。本発明の積層体の衝撃強度や突き刺し強度等の機械強度や生産性の観点からは、一軸延伸であることが好ましく、二軸延伸であるとより好ましい。以下では、最初に縦延伸、次に横延伸を実施する縦延伸-
横延伸による逐次二軸延伸法について説明するが、順番を逆にする横延伸-縦延伸であっても、主配向方向が変わるだけなので構わない。また、同時二軸延伸法でも構わない。
【0051】
4.1.2.縦延伸
縦方向(長手方向)の延伸は、未延伸フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へと導入するとよい。縦延伸にあたっては、予熱ロールでフィルム温度がTg~Tg+40℃になるまで予備加熱することが好ましい。フィルム温度がTgより低いと、縦方向に延伸する際に延伸しにくくなり、破断が生じやすくなるため好ましくない。またTg+40℃より高いとロールにフィルムが粘着しやすくなり、ロールへのフィルムの巻き付きや連続生産によるロールの汚れやすくなるため好ましくない。
フィルム温度が65℃~90℃になったら縦延伸を行う。縦延伸倍率は、1倍以上5倍以下とすると良い。1倍は縦延伸をしていないということなので、横一軸延伸フィルムを得るには縦の延伸倍率を1倍に、二軸延伸フィルムを得るには1.1倍以上の縦延伸となる。また縦延伸倍率の上限は何倍でも構わないが、あまりに高い縦延伸倍率だと横延伸しにくくなって破断が生じやすくなるだけでなく、分子配向角(ボーイング)が大きくなってしまうので、5倍以下であると好ましい。
【0052】
また、縦延伸後にフィルムを長手方向へ弛緩すること(長手方向へのリラックス)により、縦延伸で生じたフィルム長手方向の収縮率を低減することができる。さらに、長手方向へのリラックスにより、テンター内で起こるボーイング現象(歪み)を低減することができる。後工程の横延伸や最終熱処理ではフィルム幅方向の両端が把持された状態で加熱されるため、フィルムの中央部だけが長手方向へ収縮するためである。長手方向へのリラックス率は0%以上70%以下(リラックス率0%はリラックスを行わないことを指す)であることが好ましい。長手方向へのリラックス率の上限は、使用する原料や縦延伸条件よって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明のポリエステル系シーラントにおいては、長手方向へのリラックス率は70%が上限である。長手方向へのリラックスは、縦延伸後のフィルムを65℃~100℃以下の温度で加熱し、ロールの速度差を調整することで実施できる。加熱手段はロール、近赤外線、遠赤外線、熱風ヒータ等のいずれも用いる事ができる。また、長手方向へのリラックスは縦延伸直後でなくとも、例えば横延伸(予熱ゾーン含む)や最終熱処理でも長手方向のクリップ間隔を狭めることで実施することができ(この場合はフィルム幅方向の両端も長手方向へリラックスされるため、ボーイング歪みは減少する)、任意のタイミングで実施できる。
長手方向へのリラックス(リラックスを行わない場合は縦延伸)の後は、一旦フィルムを冷却することが好ましく、表面温度が20~40℃の冷却ロールで冷却することが好ましい。
【0053】
4.1.3.横延伸
縦延伸の後、テンター内でフィルムの幅方向(長手方向と直交する方向)の両端際をクリップによって把持した状態で、Tg~Tg+50℃で3~5倍程度の延伸倍率で横延伸を行うことが好ましい。横方向の延伸を行う前には、予備加熱を行っておくことが好ましく、予備加熱はフィルム表面温度がTg-10℃~Tg+40℃になるまで行うとよい。
横延伸の後は、フィルムを積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させることが好ましい。テンターの横延伸ゾーンに対し、その次の最終熱処理ゾーンでは温度が高いため、中間ゾーンを設けないと最終熱処理ゾーンの熱(熱風そのものや輻射熱)が横延伸工程に流れ込んでしまう。この場合、横延伸ゾーンの温度が安定しないため、フィルムの厚み精度が悪化するだけでなく、ヒートシール強度や収縮率などの物性にもバラツキが生じてしまう。そこで、横延伸後のフィルムは中間ゾーンを通過させて所定の時間を経過させた後、最終熱処理を実施するのが好ましい。この中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの走行に伴う随伴流、横延伸ゾーンや最終熱処理ゾーンからの熱風を遮断することが重要である。中間ゾーンの通過時間は、1秒~5秒程度で充分である。1秒より短いと、中間ゾーンの長さが不充分となって、熱の遮断効果が不足する。一方、中間ゾーンは長い方が好ましいが、あまりに長いと設備が大きくなってしまうので、5秒程度で充分である。
【0054】
4.1.4.最終熱処理
中間ゾーンの通過後は最終熱処理ゾーンにて、160℃以上 250℃以下で熱処理を
行うことが好ましい。熱処理温度が160℃未満であると、積層体の98℃温湯収縮率が5%よりも高くなってしまうため好ましくない。熱処理温度が高くなるほどフィルムの収縮率は低下するが、250℃よりも高くなるとフィルムのヘイズが15%よりも高くなる、フィルムの分子配向角が30℃を超える、最終熱処理工程中にフィルムが融けてテンター内に落下するといった問題が生じやすくなるため好ましくない。
最終熱処理の際、テンターの幅方向におけるクリップ間距離を任意の倍率で縮めること(幅方向へのリラックス)によって幅方向の収縮率を低減させることができる。そのため、最終熱処理では、0%以上10%以下の範囲で幅方向へのリラックスを行うことが好ましい(リラックス率0%はリラックスを行わないことを指す)。幅方向へのリラックス率が高いほど幅方向の収縮率は下がるものの、リラックス率(横延伸直後のフィルムの幅方向への収縮率)の上限は使用する原料や幅方向への延伸条件、熱処理温度によって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明に用いるヒートシール層においては、幅方向へのリラックス率は10%が上限である。
【0055】
さらに、最終熱処理の際に、テンターの長手方向におけるクリップ間距離を任意の倍率で縮めること(長手方向へのリラックス)によって長手方向の収縮率を低減させることができる。そのため、最終熱処理時における長手方向へのリラックスは好ましい態様である。長手方向へのリラックス率が高いほど長手方向の収縮率が下がるものの、リラックス率(横延伸直後のフィルムの長手方向への収縮率)の上限は使用する原料や長手方向への延伸・リラックス条件、熱処理温度によって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明のヒートシール層においては、長手方向へのリラックス率は10%が上限である。
【0056】
また、最終熱処理ゾーンの通過時間は2秒以上20秒以下が好ましい。通過時間が2秒以下であると、フィルムの表面温度が設定温度に到達しないまま熱処理ゾーンを通過してしまうため、熱処理の意味をなさなくなる。通過時間は長ければ長いほど熱処理の効果が上がるため、2秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。ただし、通過時間を長くしようとすると、設備が巨大化してしまうため、実用上は20秒以下であれば充分である。
【0057】
4.1.5.冷却
最終熱処理通過後は冷却ゾーンにて、10℃以上30℃以下の冷却風でフィルムの実温度をガラス転移温度(Tg)以下になるまで冷却させる必要がある。 このとき、冷却風の温度を下げたり、風速を上げたりして冷却効率を向上させることが好ましい。なお実温度とは、非接触の放射温度計で測定したフィルム表面温度のことである。テンター出口のフィルムが十分に冷却されず、フィルムの実温度がTgを上回っていると、フィルムがクリップから解放された後も熱収縮を起こすため、フィルムの特性や厚みが変化してしまうおそれがある。ヒートシール層以外の層を、上記4.1.「ヒートシール層の製膜方法」中の4.1.1.「溶融押し出し」で記載した方法で積層させている場合は、テンター出口のフィルムの実温度がいずれか低い層のTgより低い温度にする必要がある。ヒートシール層以外の層を積層させている場合にテンター出口のフィルムの実温度がガラス転移温度を上回ると、クリップで把持していたフィルム両端部が解放されたときにフィルムが熱収縮してしまうだけでなく、熱収縮率の大きい層の方へカールしてしまうため好ましくない。
【0058】
冷却ゾーンの通過時間は2秒以上20秒以下が好ましい。通過時間が2秒以下であると、フィルムの表面温度がガラス転移温度に到達しないまま冷却ゾーンを通過してしまうため、カールが大きくなってしまう。通過時間は長ければ長いほど冷却効果が上がるため、2秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。ただし、通過時間を長くしようとすると、設備が巨大化してしまうため、実用上は20秒以下であれば充分である。
後は、フィルム両端部を裁断除去しながら巻き取れば、ヒートシール層としてのフィルムロールが得られる。
【0059】
4.2.基材層の製膜方法
4.2.1.溶融押し出し
本発明の積層体を構成する基材層(以下、4.2.の範囲で「フィルム」と記載するものは、基材層を指す)は、上記3.「積層体の構成原料」中の3.2.「基材層」で記載した原料を、押し出し機により溶融押し出しして未延伸の積層フィルムを形成し、それを以下に示す所定の方法により延伸することによって得ることができる。ここでは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートについて説明する。なお、フィルムが基材層以外の層を含む場合、各層を積層させるタイミングは延伸の前後いずれであっても構わない。延伸前に積層させる場合、各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々の押し出し機によって溶融押し出しし、樹脂流路の途中でフィードブロック等を用いて接合させる方法を採用するのが好ましい。延伸後に積層させる場合、それぞれ別々に製膜したフィルムを接着剤によって貼りあわせるラミネート、単独または積層させたフィルムの表層に溶融させたポリエステル樹脂を流して積層させる押出ラミネートを採用するのが好ましい。これらの中でも、延伸前に各層を積層させる方法が好ましい。また、フィルムを延伸するときの過剰な結晶化を抑制する目的で、スタティックミキサーや多層フィードブロックによって同一樹脂を4層以上に多層積層してもよい。
【0060】
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分の種類と量を選定して重縮合させることで得ることができる。また、チップ状のポリエステルを2種以上混合してポリエステル系樹脂層の原料として使用することもできる。
原料樹脂を溶融押し出しするとき、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後、押出機を利用して200~300℃の温度で溶融してフィルムとして押し出す。押し出しはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0061】
その後、押し出しで溶融されたフィルムを急冷することにより、未延伸のフィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
フィルムは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸いずれの方式で製膜されてもよい。本発明の積層体の衝撃強度や突き刺し強度等の機械強度や生産性の観点からは、一軸延伸であることが好ましく、二軸延伸であるとより好ましい。以下では、最初に縦延伸、次に横延伸を実施する縦延伸-横延伸による逐次二軸延伸法について説明するが、順番を逆にする横延伸
-縦延伸であっても、主配向方向が変わるだけなので構わない。また、同時二軸延伸法でも構わない。
【0062】
4.2.2.縦延伸
縦方向の延伸は、未延伸フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へと導入するとよい。縦延伸にあたっては、予熱ロールでフィルム温度がTg~Tg+40℃になるまで予備加熱することが好ましい。フィルム温度がTgより低いと、縦方向に延伸する際に延伸しにくくなり、破断が生じやすくなるため好ましくない。またTg+40℃より高いとロールにフィルムが粘着しやすくなり、ロールへのフィルムの巻き付きや連続生産によるロールの汚れやすくなるため好ましくない。
【0063】
フィルム温度がTg~Tg+40℃になったら縦延伸を行う。縦延伸倍率は、1倍以上5倍以下とすると良い。1倍は縦延伸をしていないということなので、横一軸延伸フィルムを得るには縦の延伸倍率を1倍に、二軸延伸フィルムを得るには1.1倍以上の縦延伸となる。また縦延伸倍率の上限は何倍でも構わないが、あまりに高い縦延伸倍率だと横延伸しにくくなって破断が生じやすくなるため、5倍以下であると好ましい。
【0064】
4.2.3.横延伸
縦延伸の後、テンター内でフィルムの幅方向(長手方向と直交する方向)の両端際をクリップによって把持した状態で、Tg~Tg+50℃で3~5倍程度の延伸倍率で横延伸を行うことが好ましい。横方向の延伸を行う前には、予備加熱を行っておくことが好ましく、予備加熱はフィルム表面温度がTg-10℃~Tg+40℃になるまで行うとよい。
横延伸の後は、フィルムを積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させることが好ましい。テンターの横延伸ゾーンに対し、その次の最終熱処理ゾーンでは温度が高いため、中間ゾーンを設けないと最終熱処理ゾーンの熱(熱風そのものや輻射熱)が横延伸工程に流れ込んでしまう。この場合、横延伸ゾーンの温度が安定しないため、フィルムの厚み精度が悪化してしまう。そこで、横延伸後のフィルムは中間ゾーンを通過させて所定の時間を経過させた後、最終熱処理を実施するのが好ましい。この中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの走行に伴う随伴流、横延伸ゾーンや最終熱処理ゾーンからの熱風を遮断することが重要である。中間ゾーンの通過時間は、1秒~5秒程度で充分である。1秒より短いと、中間ゾーンの長さが不充分となって、熱の遮断効果が不足する。一方、中間ゾーンは長い方が好ましいが、あまりに長いと設備が大きくなってしまうので、5秒程度で充分である。
【0065】
4.2.4.最終熱処理
中間ゾーンの通過後は最終熱処理ゾーンにて、180℃以上280℃以下で熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度が180℃未満であると、積層体の98℃温湯収縮率が5%よりも高くなってしまうため好ましくない。熱処理温度が高くなるほどフィルムの収縮率は低下するが、280℃よりも高くなると最終熱処理工程中にフィルムが融けてテンター内に落下するといった問題が生じやすくなるため好ましくない。
【0066】
最終熱処理の際、テンターの幅方向におけるクリップ間距離を任意の倍率で縮めることによって幅方向の収縮率を低減させることができる。そのため、最終熱処理では、0%以上5%以下の範囲で幅方向へのリラックスを行うことが好ましい。幅方向へのリラックス率が高いほど幅方向の収縮率は下がるものの、リラックス率の上限は使用する原料や幅方向への延伸条件、熱処理温度によって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明に用いる基材層においては、幅方向へのリラックス率は5%が上限である。
【0067】
さらに、最終熱処理の際に、テンターの長手方向におけるクリップ間距離を任意の倍率で縮めることによって長手方向の収縮率を低減させることができる。長手方向へのリラックス率が高いほど長手方向の収縮率が下がるものの、リラックス率(横延伸直後のフィルムの長手方向への収縮率)の上限は使用する原料や長手方向への延伸・リラックス条件、熱処理温度によって決まるため、これを超えてリラックスを実施することはできない。本発明のヒートシール層においては、長手方向へのリラックス率は5%が上限である。
【0068】
また、最終熱処理ゾーンの通過時間は2秒以上20秒以下が好ましい。通過時間が2秒以下であると、フィルムの表面温度が設定温度に到達しないまま熱処理ゾーンを通過してしまうため、熱処理の意味をなさなくなる。通過時間は長ければ長いほど熱処理の効果が上がるため、2秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。ただし、通過時間を長くしようとすると、設備が巨大化してしまうため、実用上は20秒以下であれば充分である。
【0069】
4.2.5.冷却
最終熱処理通過後は冷却ゾーンにて、10℃以上30℃以下の冷却風でフィルムの実温度をガラス転移温度(Tg)以下になるまで冷却させる必要がある。このとき、冷却風の温度を下げたり、風速を上げたりして冷却効率を向上させることが好ましい。なお実温度とは、非接触の放射温度計で測定したフィルム表面温度のことである。テンター出口のフィルムが十分に冷却されず、フィルムの実温度がTgを上回っていると、フィルムがクリップから解放された後も熱収縮を起こすため、フィルムの特性や厚みが変化してしまうおそれがある。ヒートシール層以外の層を、上記4.1.「ヒートシール層の製膜方法」中の4.2.1.「溶融押し出し」で記載した方法で積層させている場合は、テンター出口のフィルムの実温度がいずれか低い層のTgより低い温度にする必要がある。ヒートシール層以外の層を積層させている場合にテンター出口のフィルムの実温度がガラス転移温度を上回ると、クリップで把持していたフィルム両端部が解放されたときにフィルムが熱収縮してしまうだけでなく、熱収縮率の大きい層の方へカールしてしまうため好ましくない。
【0070】
冷却ゾーンの通過時間は2秒以上20秒以下が好ましい。通過時間が2秒以下であると、フィルムの表面温度がガラス転移温度に到達しないまま冷却ゾーンを通過してしまうため、カールが大きくなってしまう。通過時間は長ければ長いほど冷却効果が上がるため、2秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。ただし、通過時間を長くしようとすると、設備が巨大化してしまうため、実用上は20秒以下であれば充分である。
後は、フィルム両端部を裁断除去しながら巻き取れば、基材層としてのフィルムロールが得られる。
【0071】
4.3.ガスバリア層の積層方法
本発明の積層体におけるガスバリア層の積層方法は特に限定されず、本発明の目的を損なわない限り公知の製造方法を採用することができる。例えば金属材料を真空蒸着法、スパッター法、イオンブレーティングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などで蒸着する方法が挙げられる。さらに、アルミ箔等の金属箔をフィルムにラミネートする方法を採用してもよい。これらの中でも、特に生産の速度や安定性の観点から真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法における加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱等を用いることができる。また、反応性ガスとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用いたりしてもよい。また、基板にバイアス等を加える、基板温度を上昇あるいは冷却する等、本発明の目的を損なわない限りは条件を変更してもよい。
【0072】
4.4.オーバーコート層の成膜方法
本発明の積層体におけるオーバーコートを積層する方法は特に限定されず、グラビアコート法、リバースコート法、ディッピング法、ローコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法、ダイコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法が使用でき、所望の目的に応じて適宜選択することができる。
【0073】
乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。乾燥方法において、加熱温度は、60℃以上200℃以下程度の範囲内が好ましく、80℃以上180℃以下程度の範囲内がより好ましい。乾燥温度が60℃以上であると、所望のバリア性が発現され良好である。乾燥温度が180℃以下であると、蒸着短時間であれば、基材の変形や蒸着膜にクラックが発生することがないため好ましい。
【0074】
4.5.積層体の接着方法
本発明の積層体において、ヒートシール層と基材層(必要に応じて、いずれかの層に積層されたガスバリア層、アンカーコート層、オーバーコート層を含む)を、接着層を介して積層するには、まず、接着層を構成する接着剤をいずれか一方のフィルムに塗布する。その後、もう一方のフィルムを、接着剤を塗布した面に貼りあわせ、接着剤を乾燥させて溶剤を揮発させる。乾燥条件は、接着剤によって異なるが、例えば40℃環境下で1日以上放置する等により接着剤が硬化する。
【0075】
5.包装体の構成、製袋方法
上記特性を有する積層体は、包装体として好適に使用することができる。本発明の積層体は単独で袋にすることもできるが、他の材料を積層してもよい。積層体を構成する他の層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを構成成分に含む無延伸フィルム、他の非晶性ポリエステルを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ナイロンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム、ポリプロピレンを構成成分に含む無延伸、一軸延伸または二軸延伸フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。包装体に積層体を用いる方法は特に限定されず、塗布形成法、ラミネート法、ヒートシール法といった従来公知の製造方法を採用することができる。
包装体は、少なくとも一部が本発明に係る積層体で構成されていてもよいが、包装体の全部に上述の積層体が存在している構成が、包装体のガスバリア性が向上するため好ましい。また、包装体は、本発明の積層体がどの層にきてもよいが、内容物に対する非吸着性、袋を製袋するときのシール強度を考慮すると、本発明の積層体のヒートシール層が袋の最内層となる構成が好ましい。
【0076】
本発明の積層体を有する包装体を製袋する方法は特に限定されず、ヒートバー(ヒートジョー)を用いたヒートシール、ホットメルトを用いた接着、溶剤によるセンターシール等の従来公知の製造方法を採用することができる。
本発明の積層体を有する包装体は、食品、医薬品、工業製品等の様々な物品の包装材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0077】
次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
積層体の評価方法は以下の通りである。なお、積層体の面積が小さいなどの理由で長手方向と幅方向が直ちに特定できない場合は、仮に長手方向と幅方向を定めて測定すればよく、仮に定めた長手方向と幅方向が真の方向に対して90度違っているからといって、とくに問題を生ずることはない。
【0078】
<積層体の評価方法>
[ヒートシール強度]
ヒートシール強度はJIS Z1707に準拠して測定した。具体的な手順を示す。ヒートシーラーにて、サンプルのヒートシール面同士を接着した。ヒートシール条件は、上バー温度140℃、下バー温度30℃、圧力0.2MPa、時間2秒とした。接着サンプルは、シール幅が15mmとなるように切り出した。剥離強度は、万能引張試験機「DSS-100」(島津製作所製)を用いて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度は、15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。
【0079】
[衝撃強度]
JIS K7160-1996に準じて、株式会社東洋精機製作所製のインパクトテスターを用い、23℃の雰囲気下における積層体の衝撃打ち抜きに対するエネルギーを測定した。
【0080】
[突刺し強度]
食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準 第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して23℃下で突刺し強度を測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺し速度50mm/分で積層体のヒートシール層(最内層側)から突き刺し、針がフィルムを貫通する際の強度を測定した。なお、突き刺し強度は、積層体の単位厚みあたり(N/μm)で計算した。
【0081】
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度はJIS K7126 B法に準じて測定した。水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN-W3/33MG MOCON社製)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下において、積層体のヒートシール層側から無機薄膜層側に調湿ガスが透過する方向で水蒸気透過度を測定した。なお、測定前には湿度65%RH環境下で、サンプルを4時間放置して調湿した。
【0082】
[酸素透過度]
酸素透過度はJIS K7126-2法に準じて測定した。酸素透過量測定装置(OX-TRAN 2/20 MOCOM社製)を用いて、温度23度、湿度65%RHの雰囲気下において、積層体のヒートシール層側から無機薄膜層側に酸素が透過する方向で酸素透過度を測定した。なお、測定前には湿度65%RH環境下で、サンプルを4時間放置して調湿した。
【0083】
[温湯熱収縮率]
サンプルを10cm×10cmの正方形に裁断し、98±0.5℃の温水中に無荷重状態で3分間浸漬して収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から出した。その後、サンプルの縦および横方向の寸法を測定し、下式2にしたがって各方向の熱収縮率を求めた。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) 式2
縦および横方向の熱収縮率を以下の基準で評価した。判定基準は以下の通りである。
判定○ 熱収縮率 5%以下
判定× 熱収縮率 5%以上
【0084】
[落袋評価]
積層体を15cm四方の大きさにカットし、シーラントが内側になるように2枚を重ね合わせ、3方を温度140℃、圧力0.2MPa、時間0.2秒、幅1.0cmでヒートシールすることで内寸13cmの3方シール袋を得た。
得られた3方シール袋の中に、水を吸わせて重量を300gに調整したキムタオル(登録商標、日本製紙クレシア製、サイズ380mm×330mm)5枚を丸めて入れ、上記と同じヒートシール条件で4方目の口を閉じ、4方シール袋を作製した。
【0085】
得られた4方シール袋を室温0℃の環境下、高さ100cmの位置からコンクリート板の上に5回連続で落下させ、以下に示すように、袋が破れるまでの回数を落袋スコアとして求めた。なお、落袋スコアは5回試行後の和として算出した(最高4点×5回=20点満点)。
1回目で破袋 0点
2回目で破袋 1点
3回目で破袋 2点
4回目で破袋 3点
5回目で破袋 4点
落袋スコア10点以上を合格(○)とし、9点以下を不合格(×)とした。
【0086】
[吸着性]
積層体を10cm×10cmの正方形に裁断し、ヒートシール面を内側にした状態で2枚を重ね、フィルムの端部より1cmの位置をヒートシールして袋を作成した。袋に内容物0.5mlの入ったアルミカップを入れ、積層体端部より1cmの位置をヒートシールして袋を閉じて密閉した。前記内容物にはD-リモネン(東京化成工業株式会社製)、L-メントール(ナカライテスク株式会社製)を使用した。30℃環境下で20時間保持した後、袋のアルミカップの口部に接する面より5cm×5cmの正方形を切り取り、切り取った積層体を抽出溶媒4mlに浸した状態で、超音波で30分間抽出した。抽出溶媒には99.8%エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた。島津製作所社製のガスクロマトグラフ「GC-14B」を用いて抽出溶液中の内容物の濃度を定量した。ガスクロマトグラフは、カラムに「GC-14A Glass I.D.2.6φx1.1m PET-HT 5% Uniport HP 80/100(ジーエルサイエンス社製)」、検出器にFID,キャリアガスにN2を用い、キャリアガス流量35ml/分、注入量1μlにて面積百分率法で定量した。吸着量はヒートシール面1cm2あたりの吸着量(μg/cm2)で示し、低吸着性を以下のように判定した。
判定○ 0μg/cm2以上、2μg/cm2未満
判定× 2μg/cm2以上
【0087】
<ポリエステル原料の調製>
[合成例1]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.7Paの減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(A)を得た。このポリエステル(A)は、ポリエチレンテレフタレートである。ポリエステル(A)の組成を表1に示す。
【0088】
[合成例2]
合成例1と同様の手順でモノマーを変更したポリエステル(B)~(G)を得た。各ポリエステルの組成を表1に示す。表1において、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、BDは1,4-ブタンジオール、NPGはネオペンチルグリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、DEGはジエチレングリコールである。なお、ポリエステル(G)の製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して7,000ppmの割合で添加した。各ポリエステルは、適宜チップ状にした。ポリエステル(B)~(G)の組成を表1に示す。
【0089】
【0090】
[フィルム1]
ヒートシール層(A層)の原料としてポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルGを質量比9:60:24:7で混合し、それ以外の層(B層)の原料としてポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルGを質量比56:31:6:7で混合した。
【0091】
A層及びB層の混合原料はそれぞれ別々の二軸スクリュー押出機に投入し、いずれも270℃で溶融させた。それぞれの溶融樹脂は、流路の途中でフィードブロックによって接合させてTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸の積層フィルムを得た。積層フィルムは片側がA層、もう片側がB層(A層/B層の2種2層構成)となるように溶融樹脂の流路を設定し、A層とB層の厚み比率が50/50となるように吐出量を調整した。
【0092】
冷却固化して得た未延伸の積層フィルムを複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が80℃になるまで予備加熱した後に4.2倍に延伸した。縦延伸直後のフィルムを熱風ヒータで100℃に設定された加熱炉へ通し、加熱炉の入口と出口のロール間の速度差を利用して、長手方向に30%リラックス処理を行った。その後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。
【0093】
リラックス処理後のフィルムを横延伸機(テンター)に導いて表面温度が105℃になるまで5秒間の予備加熱を行った後、幅方向(横方向)に4.0倍延伸した。横延伸後のフィルムはそのまま中間ゾーンに導き、1.0秒で通過させた。なお、テンターの中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、最終熱処理ゾーンからの熱風と横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。
【0094】
その後、中間ゾーンを通過したフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、190℃で5秒間熱処理した。このとき、熱処理を行うと同時にフィルム幅方向のクリップ間隔を狭めることにより、幅方向に3%リラックス処理を行った。最終熱処理ゾーンを通過後はフィルムを30℃の冷却風で5秒間冷却した。このとき、テンター出口のフィルム実温度は45℃であった。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ30μmの二軸延伸フィルムを所定の長さにわたって連続的に製造した。得られたフィルムの特性は上記の方法によって評価した。製造条件を表2示す。
【0095】
[フィルム2]
A層の原料としてポリエステルBとポリエステルCとポリエステルGを質量比40:43:7で混合し、B層の原料としてフィルム1のB層と同じ比率で混合した。
A層及びB層の混合原料はそれぞれ別々の二軸スクリュー押出機に投入し、上記のフィルム1と同様の方法で溶融・積層させて吐出し、冷却固化させて未延伸の積層フィルムを得た。
この未延伸の積層フィルムを同時二軸延伸機に導いて表面温度が100℃になるまで5秒間の予備加熱を行った後、長手方向(縦方向)に3.6倍、幅方向(横方向)に4.2倍となるよう同時に二軸延伸した。同時二軸延伸した後のフィルムはそのまま中間ゾーンに導き、1.0秒で通過させた。なお、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、最終熱処理ゾーンからの熱風と横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。
【0096】
その後、中間ゾーンを通過したフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、210℃で10秒間熱処理した。このとき、熱処理を行うと同時にフィルム長手方向のクリップ間隔と幅方向のクリップ間隔を同時に狭めることにより、長手方向に18%、幅方向に3%のリラックス処理を行った。最終熱処理ゾーンを通過後はフィルムを30℃の冷却風で5秒間冷却した。このとき、テンター出口のフィルム実温度は45℃であった。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ30μmの二軸延伸フィルムを所定の長さにわたって連続的に製造した。得られたフィルムの特性は上記の方法によって評価した。製造条件を表2示す。
【0097】
[フィルム3]
フィルム3もフィルム1と同様にして、原料の配合比率、縦延伸、長手方向へのリラックス、横延伸、最終熱処理の各条件を変更したポリエステル系フィルムを製膜した。各フィルムの製造条件を表2に示す。
【0098】
[フィルム4]
A層の原料としてポリエステルEとポリエステルGを質量比95:5で混合し、二軸スクリュー押出機に投入して260℃で溶融させた。この溶融樹脂を単独でTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸の単層フィルムを得た。
この未延伸の単層フィルムを、フィルム1と同様に逐次二軸延伸方式により、縦延伸、横延伸、最終熱処理の各条件を変更したポリエステル系フィルムを製膜した。なお、フィルム4は、製膜工程中で長手方向へのリラックスは行わなかった。製造条件を表2示す。
【0099】
[フィルム5]
フィルム5は、東洋紡株式会社製パイレンフィルム-CT(登録商標)P1128-30μmを使用した。フィルム1~4と併せて表2に示す。
【0100】
【0101】
[フィルム6]
基材層(C層)の原料としてポリエステルAとポリエステルGを質量比95:5で混合し、二軸スクリュー押出機に投入して275℃で溶融させた。この溶融樹脂を単独でTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸の単層フィルムを得た。
この未延伸の単層フィルムを、フィルム1と同様に逐次二軸延伸方式により、縦延伸、横延伸、最終熱処理の各条件を変更したポリエステル系フィルムを製膜した。なお、フィルム6は、製膜工程中で長手方向へのリラックスは行わなかった。製造条件を表3示す。
【0102】
[フィルム7]
C層の原料としてポリエステルAとポリエステルEとポリエステルGを質量比13:80:7で混合し、二軸スクリュー押出機に投入して265℃で溶融させた。このとき、メルトラインを12エレメントのスタティックミキサーに接続して、同一樹脂を4096層に分割・積層させた。この溶融樹脂をTダイより吐出し、表面温度30℃に設定したチルロール上で冷却することによって未延伸のフィルム(原料樹脂種は上記の混合比率単一で、層数4096)を得た。
この未延伸のフィルムを、フィルム1と同様に逐次二軸延伸方式により、縦延伸、横延伸、最終熱処理の各条件を変更したポリエステル系フィルムを製膜した。なお、フィルム7は、製膜工程中で長手方向へのリラックスは行わなかった。製造条件を表3示す。
【0103】
[フィルム8]
フィルム8は、東洋紡株式会社製ハーデンフィルム(登録商標)N1100-15μmを使用した。フィルム1~7と併せて表3に示す。
【0104】
【0105】
[実施例1]
フィルム6の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を重量比13.5:1の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、フィルム1のB層側と貼りあわせ、40℃にて4日間エージングすることで積層体を得た。
得られた積層体の特性は上記の方法によって評価した。積層体の層構成、物性、包装体としたときの評価結果を表4に示す。
【0106】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、フィルムを変更して積層体を作製した。得られた積層体の特性は上記の方法によって評価した。表4に示す。
【0107】
[実施例3]
フィルム7の片側に、蒸着源としてアルミニウムを用いて、真空蒸着機にて酸素ガスを導入しながら真空蒸着法で酸化アルミニウム(Al2O3)薄膜をガスバリア層として成膜した。ガスバリア層の厚みは10nmであった。フィルム7のガスバリア層側とフィルム3のB層側とを、実施例1と同様の方法で貼りあわせて積層体を作製した。得られた積層体の特性は上記の方法によって評価した。表4に示す。
【0108】
[比較例1]
基材層を接着せず、ヒートシール層としてフィルム1のみを使用した。単体フィルムの特性は上記の方法によって評価した。表4に示す。
【0109】
[比較例2、3]
実施例1と同様の方法で、フィルムをそれぞれ変更して積層体を作製した。得られた積層体の特性は上記の方法によって評価した。表4に示す。なお、比較例2は140℃でのヒートシール強度がゼロだったので、包装体を作製できなかった。そのため、落袋評価と吸着性評価は行っていない。
【0110】
【0111】
[フィルムの評価結果]
表4より、実施例1から3までの積層体はいずれも、ヒートシール強度、衝撃強度、突刺し強度、熱収縮率、耐破袋性、非吸着性に優れており、良好な評価結果が得られた。また、実施例3の積層体はガスバリア層を設けたため、良好なガスバリア性を示した。
一方、比較例1のヒートシール層単独のフィルムは、衝撃強度と突刺し強度が低くなり、耐破袋性に劣る結果となった。
比較例2の積層体は140℃のヒートシール強度がゼロとなったため、包装体を作製するために積層体としては不適であった。
比較例3のシーラントは、ヒートシール層にオレフィン系のものを使用したため、非吸着性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明により、内容物の成分を吸着が少なく、低温域で高いヒートシール強度を有し、耐破袋性に優れた積層体を提供することができ、前記特徴を有した包装体を提供することができる。