(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】回転子、モータ、および、駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240910BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2020571883
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032467
(87)【国際公開番号】W WO2021039930
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】201910801529.6
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徐 豫偉
(72)【発明者】
【氏名】羅 大殷
(72)【発明者】
【氏名】林 信男
(72)【発明者】
【氏名】顔 聖展
(72)【発明者】
【氏名】顔 國智
(72)【発明者】
【氏名】劉 承宗
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-067772(JP,A)
【文献】特開2000-270525(JP,A)
【文献】特開2006-121765(JP,A)
【文献】特開2006-223052(JP,A)
【文献】特開2018-082540(JP,A)
【文献】特開2013-046421(JP,A)
【文献】特開平08-336246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された電磁鋼板で構成されており、前記電磁鋼板が前記電磁鋼板を貫通する複数の貫通孔群を有し、各前記貫通孔群が複数の貫通孔を有する回転子であって、
各前記貫通孔群における少なくとも1つの前記貫通孔内には、磁石が収容されており、各前記貫通孔群における前記磁石が収容されていない少なくとも一部には、導電材料が設けられており、
前記回転子を軸方向に見たときに、前記磁石に接近した周方向の両側において、前記磁石の一方側の磁束通路の幅が前記磁石の他方側の磁束通路の幅よりも大き
く、
前記回転子を軸方向に見たときに、前記回転子の磁極の中心軸をd軸とし、前記d軸と45°の差がある軸をq軸とするとき、前記貫通孔群の形態は、該貫通孔群を構成する各々の前記貫通孔の前記
回転子の表面側端部においては、該貫通孔群を通る前記q軸に関して対称である、ことを特徴とする回転子。
【請求項2】
前記磁石は、軸方向に見たとき、当該少なくとも1つの貫通孔の周方向の中間位置に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記磁石が収容された前記少なくとも1つの貫通孔
において、該貫通孔の前記磁石に密接した部位の径方向の幅が周方向一方側と周方向他方側とで異なり、
前記磁石に密接した周方向一方側の貫通孔の径方向の幅が前記磁石の径方向の幅よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項4】
各前記貫通孔群は、軸方向に見たとき、周方向において等間隔で配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項5】
各貫通孔群における複数の貫通孔は、軸方向に見たとき、径方向において相互に平行して配列されている、ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項6】
各前記貫通孔群における前記磁石が収容された貫通孔は、当該貫通孔群の径方向の内側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項7】
前記磁石が収容されていない各前記貫通孔には、前記導電材料が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項8】
前記回転子を軸方向に見たとき、各前記貫通孔群において、径方向に最も内側にある前記磁石を除いて他の磁石の一方側の端部は、径方向の外側に傾斜している、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項9】
前記回転子を軸方向に見たとき、前記回転子の磁極の中心軸をd軸とし、前記d軸と45°の差がある軸をq軸とすると、
前記磁石の中心が前記q軸にあり、各前記貫通孔群において、径方向に最も内側にある前記磁石を除いて他の磁石の他方側の端部は、径方向の内側に傾斜している、ことを特徴とする請求項8に記載の回転子。
【請求項10】
各前記貫通孔群において、径方向に最も内側にある前記磁石を除いて他の磁石の貫通孔に対する他の部分は、前記q軸の径方向の外側にずれている、ことを特徴とする請求項9に記載の回転子。
【請求項11】
積層鉄心で構成されており、周方向に配置された極スロットと、隣接した極スロットの間に形成された歯と、前記極スロットに収容されたコイルと、を有する固定子と、
請求項1~10のいずれか1項に記載の回転子と、を備え、
前記回転子は、径方向に前記固定子に対向
する、ことを特徴とするモータ。
【請求項12】
請求項11に記載のモータを備える、ことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同期リラクタンスモータの回転子では、回転子を構成する電磁鋼板の中央には複数の貫通孔があり、これらの貫通孔が磁束バリアというエアギャップを形成し、これらのエアギャップにより、リラクタンスの差が生じ、モータに電流が流れると、リラクタンスの差に起因してリラクタンストルクが発生する。
モータの効率をさらに向上させ、モータの電力係数を高めるために、従来技術では、磁束バリアに磁石が挿入されたことで、余計な磁束を発生して磁束トルクを生み出し、モータの出力にリラクタンストルクと磁束トルクの合成が含まれるようになり、それにより、より高い効率が得られる。
【0003】
ただし、現在、磁石によって支援される同期リラクタンスモータでは、磁石が挿入されたことで、モータの回転時、固定子による磁束以外、磁石による磁束も存在する。そして、磁石による磁束が固定子による磁束と合流すると、回転子の回転方向での磁束が高すぎてしまい、当該回転方向での磁束密度が過渡飽和するようになるという問題が生じ、それにより、磁石を効果的に利用してモータの性能を向上させることができなくなる。
回転方向での磁束密度が過渡飽和するようになる問題を改善するために、現在、磁束バリアごとに異なるサイズの磁石を挿入することで最適な磁石の使用量を調整する方案が既に提案されている。また、回転子の磁束バリア内にリブ部の構造を設置することで磁石から発生した磁束の一部が当該リブ部の構造から流通するようになるという方案(特許文献1)も提案されている。
ここで注意すべきなのは、以上の背景技術に対する紹介は、本願の技術案に対してより明瞭かつ完全な説明を行いやすくするためのものであって、当業者が理解しやすいように供するものに過ぎない。それらの方案が本願の背景技術の部分に記載されていることだけで、上記の技術方案が当業者によって公知されたものであると認定してはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開公報特開2006-067772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方案では、磁石のサイズが多種であることを求めているので、量産の製造上、便利なものとは言えず、また、一部の磁石のサイズが増大すると、モータの自己起動性に影響を及ぼすこと、および、リブ部を追加する方案では、回転子の構造が大きく変動して修正されたので、モータのリラクタンス特性に影響を及ぼし、リラクタンストルクが弱化してしまうことを発明者が見出している。
【0006】
上記問題の少なくとも1つを解決するために、本願の実施例では、磁束密度の局部が飽和したことを改善することができ、磁石を効果的に利用してモータの性能を向上させることができる回転子、モータ、および、駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施例の一つの側面によれば、回転子は、積層された電磁鋼板で構成されており、前記電磁鋼板が前記電磁鋼板を貫通する複数の貫通孔群を有し、各前記貫通孔群が複数の貫通孔を有する回転子である。各前記貫通孔群における少なくとも1つの前記貫通孔内には、磁石が収容されており、各前記貫通孔群における前記磁石が収容されていない少なくとも一部には、導電材料が設けられている。前記回転子を軸方向に見たときに、前記磁石に接近した周方向の両側において、前記磁石の一方側の磁束通路の幅が前記磁石の他方側の磁束通路の幅よりも大きい。同じく、前記回転子を軸方向に見たときに、前記回転子の磁極の中心軸をd軸とし、前記d軸と45°の差がある軸をq軸とするとき、前記貫通孔群の形態は、該貫通孔群を構成する各々の前記貫通孔の前記回転子の表面側端部においては、該貫通孔群を通る前記q軸に関して対称である。
【0008】
本願の実施例の他の側面によれば、モータは、積層鉄心で構成されており、周方向に配置された極スロットと、隣接した極スロットの間に形成された歯と、前記極スロットに収容されたコイルと、を有する固定子と、上記側面に記載の回転子と、を備える。前記回転子は、径方向に前記固定子に対向しており、前記モータの軸方向の軸線を中心として回転可能となっている。
【0009】
本願の実施例の別の側面によれば、駆動装置は、上記側面に記載のモータを備える。
【発明の効果】
【0010】
本願の実施例による有益な効果の一つは以下の通りである。磁石の一側の磁束通路の幅を拡大することにより、磁束密度の飽和状況を改善することができ、磁石を効果的に利用してモータの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
後述する説明と図面を参照して、本願の特定な実施の形態は詳しく開示され、本願の原理が使用されることも示された。理解すべきことは、本願の実施の形態は、範囲上にそれで限定されていない。添付される特許請求の範囲の精神及び請求項の範囲内において、本願の実施の形態は多くの変更、修正及び均等物を含む。
【0012】
含まれた添付図面は、本願の実施例をさらに理解するために供されるもので、明細書の一部を構成し、本発明の好ましい実施形態を例示するとともに、文字記載と合わせて本発明の原理を説明するものである。自明なことに、後述する添付図面はただ本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わないことを前提として、それらの添付図面に基づいて、他の添付図面を取得することができる。
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本願の第一方面の実施例における回転子の一実施例の平面図である。
【
図1B】
図1Bは、本願の第一方面の実施例における回転子の一実施例の平面図である。
【
図1C】
図1Cは、本願の第一方面の実施例における回転子の一実施例の平面図である。
【
図2A】
図2Aは、本願の第一方面の実施例における回転子の他の一実施例の平面図である。
【
図2B】
図2Bは、本願の第一方面の実施例における回転子の他の一実施例の平面図である。
【
図2C】
図2Cは、本願の第一方面の実施例における回転子の他の一実施例の平面図である。
【
図3A】
図3Aは、本願の第一方面の実施例における回転子の別の一実施例の平面図である。
【
図3B】
図3Bは、本願の第一方面の実施例における回転子の別の一実施例の平面図である。
【
図3C】
図3Cは、本願の第一方面の実施例における回転子の別の一実施例の平面図である。
【
図4A】
図4Aは、本願の第一方面の実施例における回転子のさらに別の一実施例の平面図である。
【
図4B】
図4Bは、本願の第一方面の実施例における回転子のさらに別の一実施例の平面図である。
【
図4C】
図4Cは、本願の第一方面の実施例における回転子のさらに別の一実施例の平面図である。
【
図8】
図8は、本願の第二方面の実施例におけるモータの分解概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、下記の明細書によれば、本願の上記及びその他の特徴がより明瞭になるであろう。明細書及び図面から、本願の特定実施形態は具体的に開示され、本願の原理を採用可能な実施形態の一部が示されるが、本願は記載される実施形態に限らないということにも注意すべきである。逆に、本願には、添付される請求の範囲内に属するすべての修正、変形及び均等物を含むこととする。
【0015】
本願の実施例では、用語である「第1の」、「第2の」などは、異なる要素を、名称上に区別させるために用いられるが、それらの要素の空間的配列又は時間的順序などを示すものではなく、それらの要素はそれらの用語によって限られていない。用語である「及び/または」は、関連して挙げられた用語のうちの1つまたは複数のいずれか又は全ての組み合わせを含む。用語である「含む」、「備える」、「有する」などは、記述の特徴、要素、素子または部品の存在を指すが、1つまたは複数の他の特徴、要素、素子または部品の存在又は添加が排除されていない。
【0016】
本願の実施例では、単数態様を示す「一」、「当該」などは、複数態様を含み、「1種」又は「1類」として広義的に理解されるべきであるが、「1つ」の意味に限られていない。また、用語である「前記」は、上下文に別途で説明した場合を除き、単数態様も複数態様も含むものとして理解されるべきである。また、用語である「による」は、上下文に別途で説明した場合を除き、「少なくとも一部は……による」と理解されるべきであり、用語である「基づく」は、上下文に別途で説明した場合を除き、「少なくとも一部は……に基づく」と理解されるべきである。
【0017】
本願の以下の説明では、説明の便宜上、回転子(モータ)の中心軸が延伸する方向またはそれと平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とした半径方向を「径方向」と呼び、中心軸周りの方向を「周方向」と呼ぶことにする。ただし、それらは、説明の便宜上、設定したものに過ぎず、回転子(モータ)の使用時や製造時の向きを限定するものではない。
【0018】
(第一方面の実施例)
本願の第一方面の実施例は、回転子を提供する。
図1A、
図1B、および、
図1Cは、本願の第一方面の実施例における回転子の一実施例の平面図である。
図1A、
図1B、および、
図1Cは、それぞれ、磁石が1層収容された場合、磁石が2層収容された場合、および、磁石が3層収容された場合を示す。
図2A、
図2B、および、
図2Cは、本願の第一方面の実施例における回転子の他の一実施例の平面図である。
図2A、
図2B、および、
図2Cは、それぞれ、磁石が1層収容された場合、磁石が2層収容された場合、および、磁石が3層収容された場合を示す。回転子は、軸方向に積層された電磁鋼板で構成されているので、
図1と
図2には、1枚の電磁鋼板の軸方向の一端面が示される。
【0019】
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、回転子10は、積層された電磁鋼板11で構成されており、電磁鋼板11は、電磁鋼板11を貫通する複数の貫通孔群12を有し、その中の1つの貫通孔群12が
図1A、
図1B、および、
図1C中の点線枠で示されたように、各貫通孔群12は複数の貫通孔13を有し、即ち、
図1A、
図1B、および、
図1Cはそれぞれ、4つの貫通孔群12を示し、各貫通孔群12が3つの貫通孔13を有する。
【0020】
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、各貫通孔群12における少なくとも1つの貫通孔13内には、磁石131が収容されており、各貫通孔群12における磁石131が収容されていない少なくとも一部には、導電材料(図示せず)が設けられており、回転子10を軸方向に見たときに、磁石131に接近した周方向の両側において、磁石131の一方側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の他方側S2の磁束通路の幅d2よりも大きい。
【0021】
例えば、
図1Aに示すように、各貫通孔群12における径方向に最も内側にある貫通孔13内には磁石131が収容された場合、磁石131の反時計回り側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きい。そのとき、当該回転子10の構造で構成されたモータが反時計回りに回転する。
【0022】
図1Bに示すように、各貫通孔群12における径方向の内側の2層にある貫通孔13内にはそれぞれ、磁石131が収容された場合、磁石131の反時計回り側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きい。そのとき、当該回転子10の構造で構成されたモータが反時計回りに回転する。
【0023】
図1Cに示すように、各貫通孔群12における各層の貫通孔13内にはそれぞれ、磁石131が収容された場合、中間層にある貫通孔13内の磁石131の反時計回り側S1の磁束通路の幅d1を磁石131の時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくすることができ、そのとき、当該回転子10の構造で構成されたモータが反時計回りに回転する。各層の貫通孔13内にはいずれも、磁石131が収容された場合、
図1Cに示したように中間層にある磁束通路の幅が異なるとは限らず、径方向の最も内側の2層にある貫通孔13内の磁石131の反時計回り側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくなってもよいし、または、3層の貫通孔13内の磁石131の反時計回り側S1の磁束通路のいずれの幅d1も磁石131の時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくなってもよい。
【0024】
図2Aに示すように、各貫通孔群12における径方向に最も内側にある貫通孔13内には磁石131が収容された場合、磁石131の時計回り側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の反時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きい。そのとき、当該回転子10の構造で構成されたモータが時計回りに回転する。
【0025】
図2Bに示すように、各貫通孔群12における径方向の内側の2層にある貫通孔13内にはそれぞれ、磁石131が収容された場合、磁石131の時計回り側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の反時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きい。そのとき、当該回転子10の構造で構成されたモータが時計回りに回転する。
【0026】
図2Cに示すように、各貫通孔群12における各層の貫通孔13内にはそれぞれ、磁石131が収容された場合、中間層にある貫通孔13内の磁石131の時計回り側S1の磁束通路の幅d1を磁石131の反時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくすることができ、そのとき、当該回転子10の構造で構成されたモータが時計回りに回転する。各層の貫通孔13内にはいずれも、磁石131が収容された場合、
図2Cに示したように中間層にある磁束通路の幅が異なるとは限らず、径方向の最も内側の2層にある貫通孔13内の磁石131の時計回り側S1の磁束通路の幅d1が磁石131の反時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくなってもよいし、または、3層の貫通孔13内の磁石131の時計回り側S1の磁束通路のいずれの幅d1も磁石131の反時計回り側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくなってもよい。
【0027】
そのような構成によれば、磁石の一側の磁束通路の幅を拡大することにより、磁束密度の飽和状況を改善することができるとともに、モータの自己起動性を保持しながら、リラクタンストルクを高め、磁石を効果的に利用してモータの性能を向上させることができる。
【0028】
1つまたは複数の実施例では、
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、磁石131は、軸方向に見たとき、例えば、当該磁石が位置する貫通孔13の周方向の略中間の位置に位置してもよい。それにより、回転子10の磁束トルクを増加することができる。しかし、本願は、それに限らず、磁石131は、当該磁石が位置する貫通孔13内の任意の位置に位置してもよい。
【0029】
1つまたは複数の実施例では、
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、各貫通孔群12は、軸方向に見たとき、周方向に等間隔で配置されており、かつ、各貫通孔群12における複数の貫通孔が、径方向において相互に平行して配列されている。
そのような構成によれば、回転子10における磁力線のバランスが取れて、均一な磁束が実現される。
【0030】
1つまたは複数の実施例では、
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、電磁鋼板11は、4つの貫通孔群12を備えていてもよい。しかし、本願は、それに限らず、貫通孔群12の数が他の数であってもよい。一般には、貫通孔群の数は、リラクタンスモータの極数によって決められてもよい。
また、図には、各貫通孔群12における貫通孔13が3つあることが示されているが、本願では、それに限らず、即ち、各貫通孔群12における貫通孔13の数が他の数であってもよい。
【0031】
1つまたは複数の実施例では、各貫通孔群12における磁石131が収容された貫通孔13は、当該貫通孔群12の径方向の内側に位置する。即ち、例えば、
図1Aと
図2Aに示すように、各貫通孔群12における1層の貫通孔13内には磁石131が収容された場合、当該磁石131が径方向の最も内側の1層にある貫通孔13内に位置するが、
図1Bと
図2Bに示すように、各貫通孔群12における2層の貫通孔13内にはそれぞれ、磁石131が収容された場合、当該磁石131が径方向の内側の2層にある貫通孔13内に位置する。
【0032】
1つまたは複数の実施例では、磁石131が収容されていない各貫通孔13には導電材料(図示せず)が設けられており、当該導電材料は、例えば、各貫通孔13における磁石131が収容されていない空間に充填されてもよい。そのような構成によれば、当該回転子10を備えたモータの自己起動性を効果的に確保することができる。しかし、本願は、それに限らず、各貫通孔13における磁石131が収容されていない空間の一部には、導電材料が設けられてもよい。
【0033】
図3A、
図3B、および、
図3Cは、本願の第一方面の実施例における回転子の別の一実施例の平面図である。
図3A、
図3B、および、
図3Cは、それぞれ、磁石が1層収容された場合、磁石が2層収容された場合、および、磁石が3層収容された場合を示す。
図4A、
図4B、および、
図4Cは、本願の第一方面の実施例における回転子のさらに別の一実施例の平面図である。
図4A、
図4B、および、
図4Cは、それぞれ、磁石が1層収容された場合、磁石が2層収容された場合、および、磁石が3層収容された場合を示す。
図5は、
図3Aにおける点線枠A1の拡大図である。
図6は、
図3Bにおける点線枠A2の拡大図である。
図7は、
図3Cにおける点線枠A3の拡大図である。
【0034】
1つまたは複数の実施例では、以下のような方式により、磁石131の一方側S1の磁束通路の幅d1を磁石131の他方側S2の磁束通路の幅d2よりも大きくすることができる。
【0035】
例えば、
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、磁石131が収容された貫通孔13の径方向の幅を一致しないようにして、回転子10を軸方向に見たとき、磁石131に密接した一側S1の貫通孔13の径方向の幅D1が磁石131の径方向の幅Dよりも小さくなる。そのうち、
図1A、
図1B、および、
図1Cに示すように、磁石131に密接した反時計回り側S1の貫通孔13の径方向の幅D1が磁石131の径方向の幅Dよりも小さい。その場合、当該回転子10の構造を有するモータは反時計回りに回転する。また、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示すように、磁石131に密接した時計回り側S1の貫通孔13の径方向の幅D1が磁石131の径方向の幅Dよりも小さい。その場合、当該回転子10の構造を有するモータは時計回りに回転する。
【0036】
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、及び、
図2Cに示した回転子の構造以外、本願の実施例では、例えば、磁石131に密接した位置での貫通孔13の径方向の幅D1が磁石131の径方向の幅Dよりも小さくなってもよい。即ち、磁石131の周方向の両側に密接した貫通孔13の径方向の幅D1がいずれも、磁石131の径方向の幅Dよりも小さい。その場合、当該回転子10の構造を有するモータは時計回りに回転してもよいし、反時計回りに回転してもよい。
【0037】
さらに、例えば、
図3A、
図3B、
図3C、
図4A、
図4B、および、
図4Cに示すように、回転子10を軸方向に見たとき、各貫通孔群12において、径方向に最も内側にある磁石131を除いて他の磁石131の一方側S1の端部は、径方向の外側に傾斜している。例えば、
図3Bと
図6に示すように、中間層にある磁石131の反時計回り側S1の端部は、径方向の外側に傾斜している。又は、
図3Cと
図7に示すように、中間層にある磁石131と最も外層の磁石131の反時計回り側S1の端部は、径方向の外側に傾斜している。その場合、当該回転子10の構造を有するモータは反時計回りに回転する。また、
図4Bに示すように、中間層にある磁石131の時計回り側S1の端部は、径方向の外側に傾斜している。又は、
図4Cに示すように、中間層にある磁石131と最も外層の磁石131の時計回り側S1の端部は、径方向の外側に傾斜している。その場合、当該回転子10の構造を有するモータは時計回りに回転する。
【0038】
図3Aと
図5に示すように、
図3Aと
図5に示した磁石131は、径方向の最も内側の層にある貫通孔13内のみに位置する。その場合、
図5に示すように、磁石131が収容されていない貫通孔13の中間部分が径方向の外側にずれていてもよい。そのときの磁石131が径方向の最も内側の層にある貫通孔13内のみに位置するので、磁束密度の飽和現象が最も内層の磁束通路に発生することしかできない。そのため、そのとき、中間層にある貫通孔13の径方向の内側辺L1の中間部分の左側が径方向の外側に傾斜しており(傾斜したL1が点線に示した通りであり、
図3AにおけるL1が径方向の外側に傾斜した実線で示され)、径方向の内側辺L1の中間部分の右側が不変のままであり、中間層にある貫通孔13の径方向の外側辺L2、最も外層の貫通孔13の径方向の内側辺L3、および、最も外側の貫通孔13の径方向の外側辺L4は、それぞれ、径方向の外側に平行移動している(平行移動したL2、L3およびL4は点線に示した通りであり、
図3AにおけるL2、L3、および、L4が径方向の外側に平行移動した実線で示され)。その場合、当該回転子10の構造を有するモータは反時計回りに回転する。
図4Aに示した構造は、
図3Aに示したものと類似し、
図4Aに示した回転子10の構造を有するモータは時計回りに回転する。
【0039】
そのような構成によれば、同様に、磁石131の一側S1の磁束通路の幅を拡大することにより、磁束密度の飽和状況を改善することができる。
【0040】
本願の実施例では、
図6と
図7に示すように、回転子10の磁極の中心軸をd軸とし、d軸と45°の差がある軸をq軸とする。
さらに、回転子10を軸方向に見たとき、磁石10の中心がq軸にあり、各貫通孔群12において、径方向に最も内側にある磁石131を除いて他の磁石131の他方側S2の端部は、径方向の内側に傾斜している(
図6と
図7には示されない)。そのような構成によれば、磁石131の一側S1の磁束通路の幅をさらに拡大することにより、磁束密度の飽和状況をさらに改善することができる。
【0041】
さらに、各貫通孔群12において、径方向に最も内側にある磁石131を除いて他の磁石131の貫通孔13に対する他の部分は、q軸の径方向の外側にずれている。即ち、
図6において、中間層にある貫通孔13の中間部分は当該貫通孔13の他の部分に対してq軸の径方向の外側にずれており、磁石131が当該貫通孔13の中間部分に位置する。そのため、中間層にある磁石131が貫通孔13の他の部分に対してq軸の径方向の外側にずれており、最も外層の磁石131が収容されていない貫通孔13の中間部分が径方向の外側にずれていることに相当する(平行移動した後は点線に示された通りであり、ずれる方式は
図5と類似したので、ここでは省略されたい)。
図7において、中間層と最も外層にある貫通孔13の中間部分は当該貫通孔13の他の部分に対して、それぞれ、q軸の径方向の外側にずれており、磁石131が当該貫通孔13の中間部分に位置する。そのため、中間層と最も外層にある磁石131が貫通孔13の他の部分に対してq軸の径方向の外側にずれていることに相当する。そのような構成によれば、磁石131の一側S1の磁束通路の幅をさらに拡大することにより、磁束密度の飽和状況をさらに改善することができる。
【0042】
本願の実施例では、磁石131の一方側S1の磁束通路の幅を他方側S2の磁束通路の幅よりも大きくすることは、上記実施形態に限らない。即ち、磁石131の一方側S1の磁束通路の幅を他方側S2の磁束通路の幅よりも大きくする如何なる方式はいずれも、本願に含まれる。
本願の実施例における回転子の構成によれば、磁石10の一側の磁束通路の幅を拡大することにより、磁束密度の飽和状況を改善することができ、磁石をさらに効果的に利用してモータの性能を向上させることができる。
【0043】
(第二方面の実施例)
本願の第二方面の実施例はモータを提供する。
図8は、本願の第二方面の実施例におけるモータの分解概略図である。
図8に示すように、モータ80は、積層鉄心で構成されており、周方向に配置された極スロット(図示せず)と、隣接した極スロットの間に形成された歯(図示せず)と、当該極スロットに収容されたコイル(図示せず)と、を有する固定子81と、回転子10と、を備え、回転子10は、径方向に固定子81に対向しており、モータ80の軸方向の軸線を中心として回転可能となっている。本願の第一方面の実施例では、回転子10の構造は既に詳しく説明されているので、その内容がここにも含まれ、関連した説明を省略されたい。
1つまたは複数の実施例では、モータ80の他の構成部材は従来技術と同じであり、ここには説明を省略されたい。
本願の実施例におけるモータの回転子の構成によれば、磁石10の一側の磁束通路の幅を拡大することにより、磁束密度の飽和状況を改善することができ、磁石をさらに効果的に利用してモータの性能を向上させることができる。
【0044】
(第三方面の実施例)
本願の第三方面の実施例は、本願の第二方面の実施例に記載のモータを備えた駆動装置を提供する。本願の第二方面の実施例では、当該モータの主な構造が既に詳しく説明されているので、その内容がここにも含まれ、関連した説明を省略されたい。
1つまたは複数の実施例では、当該駆動装置は、モータが装着された任意の装置であってもよい。当該モータは、産業用モータ、圧縮ポンプ、および、家電製品などによる動力伝達に適用できる。
本願の実施例における駆動装置のモータの構造によれば、最大のリラクタンストルクの発生時に対応した電流がなす角度を調整することができ、それにより、最大の磁束トルクの発生時に対応した電流がなす角度と最大のリラクタンストルクの発生時に対応した電流がなす角度とをなるべく、接近させ、または、一致にさせることができ、リラクタンストルクと磁束トルクの合成を最適化することができ、磁石による支援上の最適な利用率を実現することができる。
【0045】
以上、具体的な実施例を結び付けて、本願を説明した。しかし、当業者が理解すべきことは、それらの記載はいずれも例示的なものに過ぎず、本願の保護範囲に対する限定ではない。当業者は本願の精神と原理に基づいて、本願に対して種々変形や修正を行うことができるが、それらの変形と修正も本発明の範囲内に入っている。
【符号の説明】
【0046】
10 回転子、11 電磁鋼板、12 貫通孔群、13 貫通孔、131 磁石、80 モータ、d1・d2 磁束通路の幅、D 磁石の径方向の幅、D1 貫通孔の径方向の幅