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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20240910BHJP
   E05F 15/611 20150101ALI20240910BHJP
   E05F 15/53 20150101ALI20240910BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B60J5/04 C
E05F15/611
E05F15/53
B60J5/00 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021003549
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108513
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】竹下 直幸
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-063367(JP,A)
【文献】特開2020-112002(JP,A)
【文献】特開2004-122874(JP,A)
【文献】特開2005-256423(JP,A)
【文献】特開2013-154784(JP,A)
【文献】特開昭59-038483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
E05F 15/611
E05F 15/53
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部に設けた乗降口を開閉自在に覆う観音開き式の車両用ドアであって、
該車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、側突荷重を側部車体に伝達する荷重伝達部材と、
前記車両用ドアの内部に配置され、前記車両用ドアを開閉させる開閉装置と
車幅方向内側に位置するドアインナパネルと、
前記車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、前記ドアインナパネルに接合された補強部材とを備え、
前記開閉装置は、
車両前後方向に沿った水平断面において、前記荷重伝達部材の車幅方向外側の端面よりも車幅方向内側に配置され
前記補強部材は、
前記開閉装置よりも車幅方向外側を通って、前記開閉装置に車幅方向で重なり合うように配置された
車両用ドア。
【請求項2】
前記開閉装置は、
前記車両用ドアの下部に配置され、前記車両用ドアを開閉させる駆動ユニットと、
該駆動ユニットよりも車両上方に配置され、前記駆動ユニットの動作を制御する制御ユニットとで構成され、
前記補強部材は、
少なくとも前記制御ユニットよりも車両下方に下端が位置するように形成された
請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
車両側部に設けた乗降口を開閉自在に覆う観音開き式の車両用ドアであって、
該車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、側突荷重を側部車体に伝達する荷重伝達部材と、
前記車両用ドアの内部に配置され、前記車両用ドアを開閉させる開閉装置とを備え、
該開閉装置は、
車両前後方向に沿った水平断面において、前記荷重伝達部材の車幅方向外側の端面よりも車幅方向内側に配置されるとともに、前記側部車体と前記車両用ドアとを連結するドアヒンジよりも車幅方向内側に配置された
車両用ドア。
【請求項4】
前記開閉装置は、
側面視において、前記荷重伝達部材と前記ドアヒンジとの間に配置された
請求項3に記載の車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば乗員が乗降する乗降口を覆うとともに、乗員の操作によって自動的に開閉するような観音開き式の車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、車両側部に設けた乗員が乗降する乗降口は、車体に開閉自在に支持された車両用ドアで覆われている。
【0003】
この車両用ドアとしては、例えば、乗降口の前端縁をなす車体に開閉自在に支持されたフロントドアと、乗降口の後端縁をなす車体に開閉自在に支持されたリアドアとで構成された、所謂、観音開き式の車両用ドアが知られている。
さらに、昨今では、観音開き式の車両用ドアが、乗員の操作によって自動的に開閉するものも知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、特許文献1の車両用ドアには、車両用ドアを開閉させるためのエアシリンダやリンク機構などの開閉装置が内蔵されている。このため、特許文献1では、車両側方からの衝突物が車両用ドアに衝突した場合、車両側方からの側突荷重が開閉装置に加わることで、開閉装置に意図しない不具合が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-278447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑み、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合を防止できる車両用ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両側部に設けた乗降口を開閉自在に覆う観音開き式の車両用ドアであって、該車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、側突荷重を側部車体に伝達する荷重伝達部材と、前記車両用ドアの内部に配置され、前記車両用ドアを開閉させる開閉装置と、車幅方向内側に位置するドアインナパネルと、前記車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、前記ドアインナパネルに接合された補強部材とを備え、前記開閉装置は、車両前後方向に沿った水平断面において、前記荷重伝達部材の車幅方向外側の端面よりも車幅方向内側に配置され、前記補強部材は、前記開閉装置よりも車幅方向外側を通って、前記開閉装置に車幅方向で重なり合うように配置されたことを特徴とする。
【0008】
上記車両用ドアは、車両前方側に位置するフロントドアまたは車両後方側に位置するリアドアのいずれか一方、もしくはその両方のことをいう。
この発明によれば、車両用ドアは、側突荷重が開閉装置に加わる前に、荷重伝達部材を介して側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0009】
このため、車両側方から衝突物が衝突した際、車両用ドアは、開閉装置に加わる側突荷重を低減することができる。これにより、車両用ドアは、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合を防止することができる。
【0010】
さらにこの発明は、車幅方向内側に位置するドアインナパネルと、前記車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、前記ドアインナパネルに接合された補強部材とを備え、前記補強部材は、前記開閉装置よりも車幅方向外側を通って、前記開閉装置に車幅方向で重なり合うように配置されたことを特徴とする
【0011】
この構成によれば、車両用ドアは、側突荷重が開閉装置に加わる前に、補強部材を介して側突荷重をドアインナパネルに伝達することができる。このため、車両用ドアは、車両側方から開閉装置へ向けて衝突物が衝突した場合であっても、開閉装置に加わる側突荷重を低減することができる。
これにより、車両用ドアは、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合をより防止することができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記開閉装置は、前記車両用ドアの下部に配置され、前記車両用ドアを開閉させる駆動ユニットと、該駆動ユニットよりも車両上方に配置され、前記駆動ユニットの動作を制御する制御ユニットとで構成され、前記補強部材は、少なくとも前記制御ユニットよりも車両下方に下端が位置するように形成されてもよい。
この構成によれば、車両用ドアは、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合をさらに防止することができる。
【0013】
具体的には、車両用ドアの下部に駆動ユニットが配置されているため、車両用ドアは、車両用ドアの上下方向略中央に駆動ユニットが位置する場合に比べて、衝突物が駆動ユニットに衝突し難くすることができる。このため、車両用ドアは、駆動ユニットに加わる側突荷重を低減することができる。
【0014】
さらに、制御ユニットと補強部材とが車幅方向で重なり合うため、車両用ドアは、側突荷重が少なくとも制御ユニットに略直接的に加わることを補強部材によって防止できる。このため、衝突物が制御ユニットに向けて衝突した場合であっても、車両用ドアは、制御ユニットの損傷を防止することができる。
これにより、車両用ドアは、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合をさらに防止することができる。
【0015】
またこの発明は、車両側部に設けた乗降口を開閉自在に覆う観音開き式の車両用ドアであって、該車両用ドアの内部を車両上下方向に延びるとともに、側突荷重を側部車体に伝達する荷重伝達部材と、前記車両用ドアの内部に配置され、前記車両用ドアを開閉させる開閉装置とを備え、該開閉装置は、車両前後方向に沿った水平断面において、前記荷重伝達部材の車幅方向外側の端面よりも車幅方向内側に配置されるとともに、前記側部車体と前記車両用ドアとを連結するドアヒンジよりも車幅方向内側に配置されたことを特徴とする。
【0016】
の構成によれば、荷重伝達部材及びドアヒンジが開閉装置よりも車幅方向外側に位置するため、車両用ドアは、側突荷重が開閉装置に加わる前に、荷重伝達部材及びドアヒンジの両方、またはいずれか一方を介して、側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0017】
このため、車両側方から衝突物が衝突した際、車両用ドアは、開閉装置に加わる側突荷重をより低減することができる。これにより、車両用ドアは、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合を確実に防止することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記開閉装置は、側面視において、前記荷重伝達部材と前記ドアヒンジとの間に配置されてもよい。
この構成によれば、車両用ドアは、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合をより確実に防止することができる。
【0019】
具体的には、荷重伝達部材とドアヒンジとの間に開閉装置が配置されているため、例えば車両前後方向に長い大きな衝突物が衝突した場合、車両用ドアは、側突荷重が開閉装置に加わる前に、荷重伝達部材及びドアヒンジの両方を介して側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0020】
あるいは、開閉装置に対して車両前方側または車両後方側にオフセットした位置に衝突物が衝突した場合であっても、車両用ドアは、側突荷重が開閉装置に加わる前に、荷重伝達部材及びドアヒンジのいずれか一方を介して、側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0021】
これにより、車両用ドアは、開閉装置に加わる側突荷重をより安定して低減できるため、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、側突荷重による開閉装置の意図しない不具合を防止できる車両用ドアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両右側から見た車両の外観を示す側面図。
図2】サイドドアが開いた状態における車両の外観を示す側面図。
図3】ドアアウタパネルを取外した状態におけるリアドアの外観を示す側面図。
図4図3中のA-A矢視断面図。
図5図3中のB-B矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車両1は、右ハンドル車であって、乗員が乗降する乗降口Gを覆うとともに、乗員の操作によってリアドア20が自動的に開閉するような車両である。このような車両1のリアドア20について、図1から図5を用いて説明する。
【0025】
なお、図1は車両右側から見た車両1の側面図を示し、図2はサイドドアが開いた状態における車両1の側面図を示し、図3はドアアウタパネル22を取外した状態におけるリアドア20の側面図を示し、図4図3中のA-A矢視断面図を示し、図5図3中のB-B矢視断面図を示している。
【0026】
また、図中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印IN及び矢印OUTは車幅方向を示しており、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。加えて、図中の上側は車両上方を示し、図中の下側は車両下方を示している。
【0027】
まず、車両1は、図1及び図2に示すように、車両右側の前輪2と後輪3との間において、車両前後方向または車両上下方向に延びる閉断面部材で側部車体を構成するとともに、乗員が乗降する乗降口Gを構成している。
【0028】
具体的には、車両1の側部車体は、図1に示すように、車両前後方向に延びるサイドシル4と、サイドシル4の前部から上方へ延びるヒンジピラー5と、サイドシル4の後部から上方へ延びるリアピラー6とを備えている。
【0029】
さらに、車両1の側部車体は、図1に示すように、側面視において、ヒンジピラー5の上端から車両上方後方へ延びるフロントピラー7と、フロントピラー7の上端をリアピラー6の上端に連結するルーフレール8とを備えている。
【0030】
そして、車両1の側部車体は、図2に示すように、乗員が乗降する乗降口Gを、サイドシル4、ヒンジピラー5、リアピラー6、フロントピラー7、及びルーフレール8で囲われた開口で構成している。
【0031】
この乗降口Gは、図1及び図2に示すように、車両前方に配置されたフロントドア10と、フロントドア10の車両後方に配置されたリアドア20とで構成されたサイドドアによって、開閉自在に覆われている。
【0032】
車両1のサイドドアは、図1及び図2に示すように、フロントドア10が図示を省略したドアヒンジを介してヒンジピラー5に開閉自在に支持され、リアドア20がドアヒンジ21(図4参照)を介してリアピラー6に開閉自在に支持された所謂、観音開き式のドアである。
【0033】
より詳しくは、フロントドア10は、図1及び図2に示すように、開いた状態において、運転席Sへの乗降が可能なように、乗降口Gの前部を開閉自在に覆っている。
一方、リアドア20は、図1及び図2に示すように、開いた状態において、後席(図示省略)への乗降が可能なように、乗降口Gの後部を開閉自在に覆っている。
【0034】
なお、リアドア20は、フロントドア10が開いた状態において、開閉可能に構成されている。さらに、リアドア20は、運転席Sに着座した乗員が、車室内に設けた操作スイッチを操作することで、自動的に開閉可能に構成されている。
【0035】
引き続き、上述したような車両1のリアドア20について詳述する。
リアドア20は、図3から図5に示すように、車両1の外観意匠面をなすドアアウタパネル22と、ドアアウタパネル22に対して車幅方向内側に位置するドアインナパネル23とで内部中空形状となるように構成されている。
【0036】
さらに、リアドア20の内部には、図4に示すように、ドアインナパネル23の後部を覆うヒンジレインフォースメント24と、車両上下方向に延びるセンターピラー25と、リアドア20を自動的に開閉させるための開閉装置26と、開閉装置26を保護する補強部材27とを備えている。
【0037】
詳述すると、ドアアウタパネル22は、図4に示すように、車両前後方向に沿った水平断面において、外観意匠面をなすアウタ本体221と、アウタ本体221の前端から車幅方向内側へ延びる前壁部222と、前壁部222から車両前方へ延びる前端フランジ部223とを備えている。
【0038】
このドアアウタパネル22のアウタ本体221は、上端縁及び下端縁が、それぞれリアドア20の上端縁及び下端縁を形成するようにドアインナパネル23に接合され、後端縁が、リアドア20の後端縁を形成するようにドアインナパネル23にヘミング加工によって連結されている。
【0039】
また、ドアインナパネル23は、図4に示すように、ドアアウタパネル22のアウタ本体221に対して車幅方向内側に所定間隔を隔てて対面するインナ本体231と、インナ本体231の後端から延設された後壁部232と、後壁部232から車両後方へ延びる後端フランジ部233とを備えている。
【0040】
さらに、ドアインナパネル23は、図5に示すように、インナ本体231の下端から延設された底面部234と、底面部234から車両下方へ延びる下端フランジ部235と、インナ本体231の上端から延設された上端フランジ部236(図3参照)とを備えている。
【0041】
具体的には、インナ本体231は、図3及び図4に示すように、車両前後方向に沿った水平断面の断面形状が車幅方向に厚みを有する略板状であって、リアドア20が閉じた状態において乗降口Gの後部を覆うように、サイドシル4、リアピラー6、及びルーフレール8に沿った形状に形成されている。
【0042】
さらに、インナ本体231の上部には、図3に示すように、リアドア20のウインドウガラスが配置されるウインドウ開口231aが開口形成されている。
このようなインナ本体231の前端縁は、図4に示すように、後述するセンターピラー25を挟んでドアアウタパネル22の前端フランジ部223に接合されることで、リアドア20の前端縁を形成している。
【0043】
後壁部232は、図4に示すように、アウタ本体221に近接する位置までインナ本体231の後端から車幅方向外側へ向けて延設されている。この後壁部232の車両後方には、図4に示すように、リアピラー6とリアドア20とを連結するドアヒンジ21が、後述するセンターピラー25よりも車幅方向外側の位置に締結固定されている。
【0044】
なお、ドアヒンジ21は、車両上下方向に所定間隔を隔てて2つ配置され、リアドア20よりも車両後方の外観意匠面をなすボディアウタパネル9を挟んで、リアピラー6の車幅方向外側の側面部6a(図4参照)に締結されている。
【0045】
後端フランジ部233は、図4に示すように、アウタ本体221に略平行に後壁部232から車両後方へ向けて延設されている。この後端フランジ部233の後端縁は、図4に示すように、ドアアウタパネル22のアウタ本体221にヘミング加工によって連結されることで、リアドア20の後端縁を形成している。
【0046】
なお、後端フランジ部233は、図4に示すように、リアピラー6の側面部6aに対して、ドアヒンジ21を挟んで車幅方向外側に対向配置されている。このため、上述したドアヒンジ21は、車幅方向外側からの側突荷重を、後端フランジ部233からリアピラー6へ伝達する機能を有している。
【0047】
底面部234は、図5に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、インナ本体231の下端から車幅方向外側へ向けて延設されている。なお、底面部234は、図5に示すように、車幅方向外側の端部が、後述するセンターピラー25の第2鉛直面255dに略同じ車幅方向の位置になるように、車幅方向外側へ向けて延設されている。
【0048】
下端フランジ部235は、図5に示すように、底面部234から車両下方へ向けて延設されている。この下端フランジ部235の下端縁は、ドアアウタパネル22のアウタ本体221の下端縁に接合されることで、リアドア20の下端縁を形成している。
【0049】
上端フランジ部236は、図3に示すように、詳細な図示を省略したルーフレール8の下面に沿うように、インナ本体231の上端から車幅方向外側へ向けて延設されている。この上端フランジ部236は、ドアアウタパネル22のアウタ本体221の上端縁に接合されることで、リアドア20の上端縁を形成している。
【0050】
また、ヒンジレインフォースメント24は、図4に示すように、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が、ドアインナパネル23の後壁部232及び後端フランジ部233に沿った断面形状に形成されている。このヒンジレインフォースメント24は、図3に示すように、ウインドウ開口231aの下端から後壁部232の下端に至る車両上下方向の長さで形成されている。
【0051】
また、センターピラー25は、図3及び図4に示すように、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が車幅方向外側へ突出した断面略ハット状であって、ドアインナパネル23の上端近傍から下端近傍に至る車両上下方向の長さに形成されている。このセンターピラー25は、ドアインナパネル23の前部に接合されることで、車両上下方向に延びる閉断面を形成している。
【0052】
なお、詳細な図示を省略するが、リアドア20は、センターピラー25に略同じ車両前後方向の位置において、下部がストライカ及びラッチを介してサイドシル4に連結され、上部がストライカ及びラッチを介してルーフレール8に連結されている。このため、センターピラー25は、リアドア20を補強するとともに、車両側方からの側突荷重をサイドシル4及びルーフレール8に伝達する荷重伝達部材として機能する。
【0053】
具体的には、センターピラー25は、図4に示すように、ドアインナパネル23に接合される前方フランジ部251及び後方フランジ部252と、前方フランジ部251及び後方フランジ部252を連結するピラー前面部253、ピラー後面部254、及びピラー側壁部255とで構成されている。
【0054】
前方フランジ部251は、図3及び図4に示すように、車幅方向に厚みを有する略板状であって、インナ本体231の前端縁に沿って車両上下方向に延びる形状に形成されている。
後方フランジ部252は、図3及び図4に示すように、車幅方向に厚みを有する略板状であって、ウインドウ開口231aの車両前方側をとおって、車両上下方向に延びる形状に形成されている。
【0055】
ピラー前面部253は、図4に示すように、ドアアウタパネル22の前壁部222に沿うように、前方フランジ部251から車幅方向外側へ向けて延設されている。
ピラー後面部254は、図4に示すように、後方フランジ部252から車幅方向外側、かつ僅かに車両前方へ向けて延設されている。
【0056】
ピラー側壁部255は、図4に示すように、ドアアウタパネル22のアウタ本体221とドアインナパネル23のインナ本体231との間における車幅方向略中央において、ピラー前面部253とピラー後面部254とを連結するように形成されている。
【0057】
さらに、ピラー側壁部255は、図3に示すように、側面視において、ウインドウ開口231aの下端近傍からリアドア20の下端近傍にかけて、車両下方ほど車両前後方向の長さが漸次長くなるように形成されている。
【0058】
このピラー側壁部255は、図5に示すように、ウインドウ開口231aよりも車両下方において、車幅方向外側の面が、車両上方から車両下方へ向かうほど、車幅方向外側に位置するように形成されている。
【0059】
より詳しくは、ピラー側壁部255は、図5に示すように、背面視において、車幅方向外側の面が、第1傾斜面255a、第1鉛直面255b、第2傾斜面255c、及び第2鉛直面255dで構成されている。
【0060】
第1傾斜面255aは、図3及び図5に示すように、ウインドウ開口231aの下端近傍から車両下方へ向かうほど車幅方向外側へ傾斜した面である。なお、第1傾斜面255aは、リアドア20における車両上下方向の略中央近傍に至る範囲にかけて形成されている。
【0061】
第1鉛直面255bは、図5に示すように、背面視において、第1傾斜面255aの下端から、車両下方へ向かうほど車幅方向外側へ緩やかに傾斜したのち、車両下方へ向けて略鉛直に延びる面である。この第1鉛直面255bは、ドアインナパネル23の底面部234よりも車両上方の位置に下端が位置する車両上下方向の長さで形成されている。
【0062】
第2傾斜面255cは、図5に示すように、背面視において、第1鉛直面255bの下端から車両下方へ向かうほど車幅方向外側へ傾斜した面である。この第2傾斜面255cは、ドアインナパネル23の底面部234よりも車両上方、かつ車幅方向外側の位置に下端が位置するように形成されている。
【0063】
第2鉛直面255dは、図5に示すように、背面視において、第2傾斜面255cの下端から車両下方へ向けて略鉛直に延びる略平面である。この第2鉛直面255dは、ドアインナパネル23の底面部234よりも車両下方に下端が位置する車両上下方向の長さで形成されている。
【0064】
また、開閉装置26は、図4に示すように、車両前後方向におけるドアヒンジ21とセンターピラー25との間に配置され、図示を省略したブラケットを介して、ドアインナパネル23のインナ本体231に固定されている。
【0065】
この開閉装置26は、図示を省略したヒンジを介して、リアピラー6に連結されたアクチュエータによってリアドア20を開閉させる駆動ユニット261と、乗員が操作する操作スイッチに接続されるとともに、駆動ユニット261の動作を制御する制御ユニット262とで構成されている。
【0066】
具体的には、駆動ユニット261は、詳細な図示を省略したモーター、リンク機構、及びアクチュエータなどで構成されている。この駆動ユニット261は、図3に示すように、側面視において、リアドア20の下部に配置されている。
【0067】
さらに、駆動ユニット261は、図4及び図5に示すように、ドアインナパネル23の底面部234の車両上方において、ドアヒンジ21及びセンターピラー25のピラー側壁部255よりも車幅方向内側の位置に配置されている。
【0068】
より詳しくは、駆動ユニット261は、図4及び図5に示すように、インナ本体231の後端フランジ部233よりも車幅方向内側、かつセンターピラー25の第1鉛直面255bよりも車幅方向内側の位置に配置されている。
つまり、駆動ユニット261は、センターピラー25における最も車幅方向外側の面である第2鉛直面255dよりも車幅方向内側に配置されている。
【0069】
一方、制御ユニット262は、図3に示すように、側面視において、駆動ユニット261よりも車両上方に配置されるとともに、リアドア20における車両上下方向の略中央近傍に上端が位置するように配置されている。
【0070】
さらに、制御ユニット262は、図4及び図5に示すように、ドアインナパネル23の底面部234の車両上方において、駆動ユニット261よりも僅かに車幅方向外側の位置、かつドアヒンジ21及びセンターピラー25のピラー側壁部255よりも車幅方向内側の位置に配置されている。
【0071】
より詳しくは、制御ユニット262は、図4及び図5に示すように、インナ本体231の後端フランジ部233よりも車幅方向内側、かつセンターピラー25の第1鉛直面255bよりも車幅方向内側の位置に、車幅方向外側の面が位置するように配置されている。
【0072】
つまり、制御ユニット262は、センターピラー25における最も車幅方向外側の面である第2鉛直面255dよりも車幅方向内側に配置されている。
なお、制御ユニット262は、図5に示すように、背面視において、車幅方向外側の面の上端近傍が、センターピラー25の第1傾斜面255aよりも車幅方向外側に位置している。
【0073】
また、補強部材27は、図3に示すように、側面視において、車両上下方向に延びる略帯状の部材であって、開閉装置26の車幅方向外側をとおって、開閉装置26に車幅方向で重なり合うように配置されている。
具体的には、補強部材27は、図3から図5に示すように、ドアインナパネル23のインナ本体231に接合された接合部271と、ドアアウタパネル22のアウタ本体221に近接配置された近接部272と、接合部271及び近接部272を連結する連結部273とで一体形成されている。
【0074】
接合部271は、図3及び図5に示すように、開閉装置26よりも車両上方の位置、すなわちリアドア20における車両上下方向の略中央よりも車両上方の位置において、ドアインナパネル23のインナ本体231に接合されている。なお、接合部271は、車幅方向に厚みを有する略板状に形成されている。
【0075】
近接部272は、図4に示すように、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が車幅方向外側に突出した断面略ハット状であって、開閉装置26よりも車幅方向外側、かつドアアウタパネル22のアウタ本体221に近接する位置に配置されている。
【0076】
この近接部272は、図5に示すように、接合部271の下端に対して僅かに車両下方の位置に上端が位置するように配置されるとともに、制御ユニット262よりも車両下方の位置に下端が位置する車両上下方向の長さで形成されている。
【0077】
なお、近接部272は、図3及び図5に示すように、車両上下方向に所定間隔を隔てた位置で、接着剤Vを介して、ドアアウタパネル22のアウタ本体221に固定されている。
【0078】
連結部273は、図5に示すように、接合部271の下端から車幅方向外側、かつ僅かに車両下方へ向けて延設され、その先端が近接部272の上端に連結されている。この連結部273は、近接部272に連続する断面略ハット状に形成されている。
【0079】
このような構成のため、リアドア20は、車幅方向外側から衝突物が衝突した際、側突荷重が開閉装置26に加わる前に、センターピラー25、ドアヒンジ21、及び補強部材27で側突荷重を吸収開始するとともに、センターピラー25及びドアヒンジ21を介して、側突荷重を側部車体に伝達できる。
【0080】
以上のように、本実施形態における車両1のサイドドアは、車両側部に設けた乗降口Gを開閉自在に覆う観音開き式である。
このサイドドアのリアドア20は、リアドア20の内部を車両上下方向に延びるとともに、側突荷重を側部車体に伝達するセンターピラー25と、リアドア20の内部に配置され、リアドア20を開閉させる開閉装置26とを備えている。
【0081】
そして、開閉装置26は、車両前後方向に沿った水平断面において、センターピラー25のピラー側壁部255における車幅方向外側の面よりも車幅方向内側に配置されたものである。
これによれば、リアドア20は、側突荷重が開閉装置26に加わる前に、センターピラー25を介して側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0082】
このため、車両側方から衝突物が衝突した際、リアドア20は、開閉装置26に加わる側突荷重を低減することができる。これにより、リアドア20は、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合を防止することができる。
【0083】
また、リアドア20は、車幅方向内側に位置するドアインナパネル23と、リアドア20の内部を車両上下方向に延びるとともに、ドアインナパネル23に接合された補強部材27とを備えている。
この補強部材27は、開閉装置26よりも車幅方向外側を通って、開閉装置26に車幅方向で重なり合うように配置されたものである。
【0084】
この構成によれば、リアドア20は、側突荷重が開閉装置26に加わる前に、補強部材27を介して側突荷重をドアインナパネル23に伝達することができる。このため、リアドア20は、車両側方から開閉装置26へ向けて衝突物が衝突した場合であっても、開閉装置26に加わる側突荷重を低減することができる。
これにより、リアドア20は、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合をより防止することができる。
【0085】
また、開閉装置26は、リアドア20の下部に配置され、リアドア20を開閉させる駆動ユニット261と、駆動ユニット261よりも車両上方に配置され、駆動ユニット261の動作を制御する制御ユニット262とで構成されている。
【0086】
そして、補強部材27は、制御ユニット262よりも車両下方に下端が位置するように形成されたものである。
この構成によれば、リアドア20は、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合をさらに防止することができる。
【0087】
具体的には、リアドア20の下部に駆動ユニット261が配置されているため、リアドア20は、リアドア20の上下方向略中央に駆動ユニットが位置する場合に比べて、衝突物が駆動ユニット261に衝突し難くすることができる。このため、リアドア20は、駆動ユニット261に加わる側突荷重を低減することができる。
【0088】
さらに、制御ユニット262と補強部材27とが車幅方向で重なり合うため、リアドア20は、側突荷重が少なくとも制御ユニット262に略直接的に加わることを補強部材27によって防止できる。
【0089】
このため、衝突物が制御ユニット262に向けて衝突した場合であっても、リアドア20は、制御ユニット262の損傷を防止することができる。
これにより、リアドア20は、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合をさらに防止することができる。
【0090】
また、開閉装置26は、車両前後方向に沿った水平断面において、側部車体とリアドア20とを連結するドアヒンジ21よりも車幅方向内側に配置されたものである。
この構成によれば、センターピラー25及びドアヒンジ21が開閉装置26よりも車幅方向外側に位置するため、リアドア20は、側突荷重が開閉装置26に加わる前に、センターピラー25及びドアヒンジ21の両方、またはいずれか一方を介して、側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0091】
このため、車両側方から衝突物が衝突した際、リアドア20は、開閉装置26に加わる側突荷重をより低減することができる。これにより、リアドア20は、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合を確実に防止することができる。
【0092】
またこ、開閉装置26は、側面視において、センターピラー25とドアヒンジ21との間に配置されたものである。
この構成によれば、リアドア20は、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合をより確実に防止することができる。
【0093】
具体的には、センターピラー25とドアヒンジ21との間に開閉装置26が配置されているため、例えば車両前後方向に長い大きな衝突物が衝突した場合、リアドア20は、側突荷重が開閉装置26に加わる前に、センターピラー25及びドアヒンジ21の両方を介して側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0094】
あるいは、開閉装置26に対して車両前方側または車両後方側にオフセットした位置に衝突物が衝突した場合であっても、リアドア20は、側突荷重が開閉装置26に加わる前に、センターピラー25及びドアヒンジ21のいずれか一方を介して、側突荷重を側部車体に伝達することができる。
【0095】
これにより、リアドア20は、開閉装置26に加わる側突荷重をより安定して低減できるため、側突荷重による開閉装置26の意図しない不具合をより確実に防止することができる。
【0096】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車両用ドアは、実施形態のリアドア20に対応し、
以下同様に、
荷重伝達部材は、センターピラー25に対応し、
荷重伝達部材の車幅方向外側の端面は、ピラー側壁部255の車幅方向外側の面に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0097】
例えば、上述した実施形態において、側突荷重を側部車体に伝達する荷重伝達部材として、センターピラー25を備えたリアドア20としたが、これに限定せず、側突荷重を側部車体に伝達可能な部材であれば、適宜の部材であってもよい。
【0098】
また、開閉装置26がリアドア20に内蔵された構成としたが、これに限定せず、開閉装置がフロントドア10に内蔵された構成であってもよい。あるいはフロントドア10及びリアドア20の双方にそれぞれ開閉装置が内蔵された構成であってよい。
【0099】
この場合、開閉装置が内蔵されたドアに、少なくとも側突荷重を側部車体に伝達する荷重伝達部材を配置するとともに、荷重伝達部材の車幅方向外側の面よりも車幅方向内側に開閉装置を配置する。
【0100】
また、制御ユニット262よりも車両下方に下端が位置する補強部材27としたが、これに限定せず、少なくとも制御ユニット262よりも車両下方に下端が位置する補強部材であれば、適宜の形状であってもよい。
【0101】
例えば、駆動ユニット261よりも車両下方に下端が位置する補強部材、あるいは開閉装置26の車両下方をとおって、下端がドアインナパネル23に接合された補強部材であってもよい。
【0102】
また、駆動ユニット261が車両下方に配置され、制御ユニット262が駆動ユニット261よりも車両上方に配置された開閉装置26としたが、これに限定せず、制御ユニット262が車両下方に配置され、駆動ユニット261が制御ユニット262よりも車両上方に配置された開閉装置であってもよい。
【0103】
また、駆動ユニット261と制御ユニット262とが別体で構成された開閉装置26としたが、これに限定せず、駆動ユニットと制御ユニットとが一体化された開閉装置であってもよい。
【符号の説明】
【0104】
20…リアドア
21…ドアヒンジ
23…ドアインナパネル
25…センターピラー
26…開閉装置
27…補強部材
255…ピラー側壁部
261…駆動ユニット
262…制御ユニット
G…乗降口
図1
図2
図3
図4
図5