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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 27/04 20060101AFI20240910BHJP
   A01D 33/00 20060101ALI20240910BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A01D27/04
A01D33/00
A01G7/00 603
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021004640
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109380
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083750(JP,A)
【文献】特開平06-141649(JP,A)
【文献】特開平09-191747(JP,A)
【文献】特開平06-141645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00-33/14
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と後輪とにより走行する車体と、
前記車体に配置され、前記車体より下方に位置する圃場の収穫物を検出する検出部と、
前記車体に配置され、前記収穫物を把持する把持装置と、
前記車体に配置され、前記収穫物の茎や根を裁断する裁断部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記収穫物が収穫に適しているか可能か否かを判別するとともに、前記収穫物が収穫に適していると判別された場合には、前記把持装置を制御して前記把持装置で収穫物を把持させ、前記裁断部を制御して前記収穫物の茎や根を裁断させる制御部と、
を備え
前記把持装置および前記裁断部は、前記前輪と前記後輪との間の前記車体の下方に設け、
前記把持装置は、前記車体の下方で昇降フレームにより上下方向に移動可能に支持されると共に、前記車体の下方でスライドレールにより前後方向に移動可能に支持される
ことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
前記収穫物を把持可能な把持位置と、前記収穫物から退避した退避位置との間で移動可能な前記把持装置と、
前記収穫物の茎や根を裁断する裁断部であって、前記収穫物の茎や根を裁断可能な裁断位置と、前記収穫物から退避した退避位置との間で移動可能な前記裁断部と、
前記収穫物が収穫に適していると判別された場合には、前記把持装置を把持位置に移動させ且つ前記裁断部を裁断位置に移動させ、前記収穫物が収穫不適と判別された場合には、前記把持装置を退避位置に移動させ且つ前記裁断部を退避位置に移動させる前記制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記裁断部で処理された収穫物を収容部に向けて搬送する搬送装置であって、前記裁断部と一体的に左右方向に移動可能な前記搬送装置、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記検出部は、前記車体の前端に配置され、
前記把持装置は、前記検出部の後方に配置された
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の収穫機。
【請求項5】
収穫物の少なくとも下方の一部を把持可能な前記把持装置を備え、
前記把持装置は、前記収穫物を把持した状態で上方に移動することで前記収穫物の根を圃場から引き抜く、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場から、野菜を収穫する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
人参や大根等の根菜類を収穫する収穫機について、下記の特許文献1に記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1(特開2005-333917号公報)には、野菜収穫機(1)の収穫部(5)で収穫された収穫物が収穫部(5)の後部で選別ベルト(6b)に送られ、選別部(6)において、操縦者または補助作業者が選別ベルト(6b)上の不良作物を手で選別除去し、除去されなかった収穫物が選別ベルト(6b)の下流端にある収容部(7)の収容袋(B)に収容される構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-333917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術の問題点)
特許文献1に記載の技術では、収穫物を一斉に収穫した後に選別する構成であるが、収穫に適さない小さいものもまとめて収穫してしまう。小さいものも収穫すると、不良や規格外のものとして廃棄されるものが増えるとともに、小さすぎると収穫機で収穫し損ねたり、想定していない箇所に収穫物が進入して機械故障の原因となる恐れもある。
【0006】
本発明は、収穫物を選択的に収穫可能な収穫機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
前輪と後輪とにより走行する車体と、
前記車体に配置され、前記車体より下方に位置する圃場の収穫物を検出する検出部と、
前記車体に配置され、前記収穫物を把持する把持装置と、
前記車体に配置され、前記収穫物の茎や根を裁断する裁断部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記収穫物が収穫に適しているか可能か否かを判別するとともに、前記収穫物が収穫に適していると判別された場合には、前記把持装置を制御して前記把持装置で収穫物を把持させ、前記裁断部を制御して前記収穫物の茎や根を裁断させる制御部と、
を備え
前記把持装置および前記裁断部は、前記前輪と前記後輪との間の前記車体の下方に設け、
前記把持装置は、前記車体の下方で昇降フレームにより上下方向に移動可能に支持されると共に、前記車体の下方でスライドレールにより前後方向に移動可能に支持される
ことを特徴とする収穫機である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記収穫物を把持可能な把持位置と、前記収穫物から退避した退避位置との間で移動可能な前記把持装置と、
前記収穫物の茎や根を裁断する裁断部であって、前記収穫物の茎や根を裁断可能な裁断位置と、前記収穫物から退避した退避位置との間で移動可能な前記裁断部と、
前記収穫物が収穫に適していると判別された場合には、前記把持装置を把持位置に移動させ且つ前記裁断部を裁断位置に移動させ、前記収穫物が収穫不適と判別された場合には、前記把持装置を退避位置に移動させ且つ前記裁断部を退避位置に移動させる前記制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の収穫機である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記裁断部で処理された収穫物を収容部に向けて搬送する搬送装置であって、前記裁断部と一体的に左右方向に移動可能な前記搬送装置、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の収穫機である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記検出部は、前記車体の前端に配置され、
前記把持装置は、前記検出部の後方に配置された
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の収穫機である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
収穫物の少なくとも下方の一部を把持可能な前記把持装置を備え、
前記把持装置は、前記収穫物を把持した状態で上方に移動することで前記収穫物の根を圃場から引き抜く、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の収穫機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、収穫に適していると判別された収穫物を、車体の下方で上下方向および前後方向に移動可能な把持装置で、車体下方の圃場から選択的に収穫可能な収穫機を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて、収穫物が収穫に適している場合に、把持装置で収穫物を把持して収穫することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加えて、裁断部と搬送装置の位置関係がずれることが抑制され、搬送装置に送られる収穫物の根や茎が裁断不良な状態となることが抑制される。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の効果に加えて、前端の検出部で検出された収穫物の位置に応じて、後方に配置された把持装置を収穫物の位置に移動させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかに記載の効果に加えて、収穫物を抱え込むように把持して持ち上げることで、収穫物を収穫できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の収穫機の概略説明図である。
図2図2は実施の形態の把持装置の要部説明図であり、図2(A)は側面図、図2(B)は下方から見た図である。
図3図3は実施の形態の裁断装置及び搬送装置の説明図である。
図4図4は実施の形態において把持装置と裁断装置と搬送装置との位置関係の説明図である。
図5図5は実施の形態の収穫機の要部説明図であり、図5(A)は側方から見た要部説明図、図5(B)は位置調整部の拡大図である。
図6図6は実施の形態の制御部が備えている各機能をブロック図で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0015】
図1は本発明の収穫機の概略説明図である。
図1において、本発明の収穫機1は、車体2を有する。
車体2は、前端部の前フレーム3と、後端部の後フレーム4と、前フレーム3と後フレーム4との間を接続する左右一対の横フレーム6,6とを有する。前フレーム3の左右両端には、下方に延びる前側縦フレーム7,7が支持されている。後フレーム4の左右両端には、下方に延びる後側縦フレーム8,8が支持されている。前側縦フレーム7,7の下端と後側縦フレーム8,8の下端との間は、前後方向に延びる左右一対の下フレーム9,9で接続されている。
【0016】
実施の形態の後側縦フレーム8,8は、前側縦フレーム7,7よりも上端が上方まで延びており、後フレーム4よりも上方に突出している。前側縦フレーム7,7の上端と、後側縦フレーム8,8の上端との間は、左右一対の上フレーム11,11で接続されている。上フレーム11,11は、後方に行くにつれて上方に傾斜して配置されている。
前側縦フレーム7,7の下端には、左右一対の前輪12,12が回転可能に支持されている。後側縦フレーム8,8の下端には、左右一対の後輪13,13が回転可能に支持されている。実施の形態の収穫機1では、前輪12,12が図示しないモータで駆動される構成となっているが、後輪13,13が駆動される構成とすることも可能である。また、車輪12,13が駆動せず、作業者が手で押すことで走行する構成とすることも可能である。
【0017】
(把持装置の説明)
図1において、横フレーム6,6の内側には、スライドレール21が配置されている。スライドレール21の間には、左右方向に延びるスライドフレーム22が支持されている。スライドフレーム22は、スライドレール21に沿って前後方向に移動可能に支持されている。スライドフレーム22は、図示しないアクチュエータの作動に伴って前方の収穫位置と後方の受け渡し位置との間で移動する。
スライドフレーム22の下側には、スライダ23が配置されている。スライダ23は、スライドフレーム22に沿って左右方向に移動可能に支持されている。スライダ23も図示しないアクチュエータの作動に伴って、スライドフレーム22に沿って左右方向に移動する。
【0018】
スライダ23の下側には、下方に延びる筒状の昇降フレーム24が上下方向に移動可能に支持されている。昇降フレーム24には、上下方向に沿った歯が形成されたラック(図示せず)が形成されており、スライダ23に支持されたピニオンギア(図示せず)がラックの歯に噛み合っている。したがって、ピニオンギアの回転に伴ってラックが上下方向に移動し、昇降フレーム24が下方の収穫位置と上方の退避位置との間で移動する。なお、ピニオン・ラックの機構は従来公知であるため詳細な説明は省略する。
【0019】
また、各部位を移動させる構成は、例示したアクチュエータやピニオン・ラックに限定されず、ボールスプラインを利用した昇降機構としたり、油圧シリンダやエアシリンダ等で作動、昇降させたり、ステップモータ等、従来公知の種々の構成に変更可能である。
【0020】
図2は実施の形態の把持装置の要部説明図であり、図2(A)は側面図、図2(B)は下方から見た図である。
昇降フレーム24の下端には、挟持部(把持部)の一例としての挟持アーム26が配置されている。挟持アーム26は、左腕部27と右腕部28とを有する。左腕部27および右腕部28は、下部に外側に膨らんだ膨出部27a,28aを有し、下端に底壁27b,28bが形成されている。
また、底壁27b,28bの内端側の前後方向中央部には、収穫物の根本の部分に対応する半円状の切欠き27c,28cが形成されている。したがって、図2(B)に示すように、2つの切欠き27c,28cが向かい合うことで略円形の孔が構成されることとなる。
左腕部27および右腕部28の内面には、保護部の一例としてのスポンジ27d,28dが配置されている。スポンジ27d,28dは、膨出部27a,28aの内部に収穫物が収容された場合に、内部の収穫物を保護するための部材(緩衝部材)である。
【0021】
図2(A)において、左腕部27と右腕部28は、上端部で、昇降フレーム24の下端に回転軸29を中心として回転可能に支持されている。
回転軸29よりも下方の位置において、左腕部27と右腕部28との間には、前後一対のバネ31が装着されている。バネ31は、左腕部27および右腕部28の下端が互いに接近する方向の弾性力を作用させている。
左腕部27および右腕部28の上端、すなわち、回転軸29よりも上方の位置には、作動ワイヤ32が支持されている。作動ワイヤ32の端は左腕部27に連結されており、作動ワイヤ32は、右腕部28の上端部を貫通した状態で配置されている。作動ワイヤ32には、図示しないアクチュエータが接続されており、作動ワイヤ32が引っ張られると、左腕部27および右腕部28の上端部の間隔が狭くなり、下端が互いに開く方向の力が作用する。したがって、作動ワイヤ32が引っ張られていない状態では、バネ31の弾性力で、挟持アーム26は図2(A)の実線で示す挟持位置(把持位置)に移動し、バネ31の弾性力よりも強い力で作動ワイヤ32が引っ張られると、挟持アーム26は図2(A)の一点鎖線で示す開放位置に移動する。
【0022】
前記符号21~32が付与された各部材により、実施の形態の把持装置33が構成されている。したがって、実施の形態の把持装置33では、挟持アーム26は、スライドレール21に沿って前後方向に移動可能であり、スライドフレーム22に沿って左右方向に移動可能であるとともに、昇降フレーム24で上下方向にも移動可能である。
なお、例えば、昇降フレーム24を円柱状に構成して、昇降フレーム24を回転軸として挟持アーム26が回転可能な構成とすることも可能である。挟持アーム26が回転可能とした場合、収穫物の姿勢や葉の伸びる状態に応じて収穫しやすい方向に左腕部27と右腕部28とが広がるように、挟持アーム26を回転させることができる。このとき、挟持アーム26の回転位置を検出するためのセンサを設けることが望ましい。センサは、複数設けることが望ましく、例えば、回転位置を基準に対して0度、45度、90度、135度といった位置に配置することが望ましい。
【0023】
(裁断装置および搬送装置の説明)
図3は実施の形態の裁断装置及び搬送装置の説明図である。
図4は実施の形態において把持装置と裁断装置と搬送装置との位置関係の説明図である。
図1において、車体2の右側後部には、裁断装置41が配置されている。図1図3において、裁断装置41は、外周に刃が形成された左右一対の円板状の裁断部41a,41bを有する。裁断部41a,41bには、後述するモータ54からの駆動がロッド42を介して伝達される。したがって、モータ54が駆動されると、図4に示すように、裁断部41a,41bの上方近傍を挟持アーム26の底壁27b,28bが通過する際に、切欠き27c,28cから垂れ下がった収穫物の根の部分を裁断部41a,41bの外周の刃で裁断される。
図1において、裁断装置41の下方には、左右方向の外側に向けて下方に傾斜する排出樋(とい)43が配置されている。裁断部41a,41bで裁断された根は、排出樋43の上面に落下し、排出樋43の斜面に沿って、収穫機1の外部(圃場)に排出される。
【0024】
裁断装置41の後方には、第1の搬送装置の一例としての後方搬送装置51が配置されている。後方搬送装置51は、無端状の搬送コンベア52を有する。搬送コンベア52は、左右両側のチェーン52aと、チェーン52aどうしを接続する円柱状のスポンジバー52bと、を有する。スポンジバー52bは、チェーン52aの回転方向に沿って複数配置されている。スポンジバー52bには、予め定められた間隔をあけて桟(さん)52cが支持されている。実施の形態の桟52cは、左右方向に沿って凹凸が繰り返される形状に形成されている。なお、スポンジバー52bや桟52cは、収穫物の損傷を抑制するために弾性体の一例としてのスポンジ(発泡材料)やゴム等で構成することが好ましい。
【0025】
搬送コンベア52は、前後両端部が、ギア53,53で回転可能に支持されている。実施の形態の搬送コンベア52は、後側のギア53にモータ54から駆動が伝達されると回転する。
搬送コンベア52の上方には、前後方向に延びる左右一対の落下防止ガイド55が配置されている。落下防止ガイド55は、搬送コンベア52上の収穫物が左右方向から落下することを規制する。
【0026】
なお、本実施の形態では、裁断装置41と後方搬送装置51とは、モータ54が共通化されている。したがって、裁断装置41と後方搬送装置51は、一体的な構成となっており、裁断装置41と後方搬送装置51とは、車体2に対してユニットのように一体的に取付、取り外しが可能である。
【0027】
図5は実施の形態の収穫機の要部説明図であり、図5(A)は側方から見た要部説明図、図5(B)は位置調整部の拡大図である。
図1図5において、後方搬送装置51の後方には、第2の搬送装置の一例としてのリフトユニット56が配置されている。リフトユニット56の内部には、昇降搬送部の一例としてのリフト57が収容されている。図1において、リフト57は、右リフト57aおよび左リフト57bを有し、右リフト57aおよび左リフト57bは、搬送コンベア52と同様に構成されている。実施の形態では、右リフト57aおよび左リフト57bは上側に駆動用のギアが配置されているが、下側に配置することも可能である。なお、右リフト57aおよび左リフト57bでは、桟58が対向するように配置されており、右リフト57aおよび左リフト57bは、同期、連動して回転する。したがって、対向する一対の桟58の上面に収穫物の底面が支持された状態で、右リフト57aおよび左リフト57bが回転すると、収穫物が上方に向けて送られる。
前記後方搬送装置51とリフト57により、収穫物を収容部60に搬送する搬送装置51,57が構成されている。
【0028】
図5(A)において、リフトユニット56の上方には、前斜め上方に傾斜する上ガイド59が、後側縦フレーム8,8に支持されている。したがって、リフト57で持ち上げられた収穫物は、上ガイド59で前方にガイドされる。
上ガイド59の前方には、収容部60が配置されている。収容部60は、前フレーム3や上フレーム11,11に下端が支持され且つ上方に延びる側壁60aや上フレーム11に沿って後斜め上方に向けて傾斜する底壁60bで囲まれた内部の空間により構成されている。したがって、リフト57で持ち上げられた収穫物は、収容部60に収容される。この時、底壁60bが前方に向けて斜め下向きに傾斜しており、収穫物は底壁60bに沿って滑るようにして前方に送られて収容される。なお、収容部60の上方は開放されており、作業者が収穫物を収容部60から自由に取り出し可能である。
【0029】
図5において、リフトユニット56のハウジングは、下端の回転軸61を中心として車体2に回転可能に支持されている。図5において、リフトユニット56には、作業者が把持して収穫機1の操縦が可能なハンドル56aが設けられている。リフトユニット56の左方外側部には、位置調整部の一例としてのロックユニット62が支持されている。ロックユニット62は、固定の板金プレート63と、板金プレート63を貫通し且つ左右方向に移動可能なロックピン64とを有する。ロックピン64は、バネ66により常時左右方向の内側に向けて力を受けている。
板金プレート63に対応して、後側縦フレーム8,8の上部には、後方に延びる部分弧状のプレート67が支持されている。プレート67には、間隔をあけて複数のロック孔68が形成されている。各ロック孔68は、ロックピン64が貫通可能に構成されている。したがって、ロックピン64を作業者が手で外側に引っ張ることで、ロック孔68からロックピン64が抜けて、リフトユニット56が回転軸61を中心として回転可能な状態となる。ロックピン64から作業者が手を離すと、バネ66の力でロックピン64がロック孔68に嵌まる方向に移動する。そして、ロックピン64がロック孔68にはまると、リフトユニット56の回転が規制(ロック)される。
【0030】
したがって、作業者が、収穫機1を圃場に出し入れするときや、運搬用の車両に搬入、搬出する時、倉庫に搬入、搬出する際に、ハンドル56aを握って操縦することが可能であり、ロックピン64を操作することでハンドル56aの操作位置を調整可能である。特に、段差を乗り越える際や旋回をする際にハンドル56aに体重をかけて収穫機1の車体2の前輪12を浮かせたい場合があるが、ハンドル56aの操作位置をより後ろ側に調整することで、体重をかけやすくすることが可能である。
なお、より体重をかけやすくするために、リフトユニット56の下方の後側縦フレーム8,8に、足を乗せて踏み込むことが可能な足踏みプレート69が設置されている。
【0031】
なお、リフトユニット56が後方に回動した状態で、リフト57が作動すると、事故が発生する恐れがあるため、インターロックスイッチやセンサ等を設けて、リフトユニット56が後方に回動した状態では、リフト57が作動しないようにしたり、収穫機1の電源をオフにしたりする構成とすることが望ましい。
【0032】
図1において、車体2の左後部には、制御部71が配置されている。制御部71の内部には、通信ユニットや制御回路等が収容されている。
また、車体2の前端部には、下方(圃場)を撮影可能なカメラユニット72が設置されている。検出部の一例としてのカメラユニット72には、撮像部材であるカメラだけでなく、地面や収穫物までの距離を計測する距離センサも配置されている。
【0033】
(実施の形態の制御部の説明)
図6は実施の形態の制御部が備えている各機能をブロック図で示した図である。
図6において、制御部71は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部71は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部71は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部71は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。よって、制御部71は、いわゆるマイクロコンピュータ(コンピュータ装置の一例)により構成されており、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0034】
(制御部の機能)
制御部71は、制御部71と無線通信が可能なタブレット端末(情報処理装置、入力装置の一例)や、カメラユニット72やその他の図示しないセンサ等の信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行して、モータ54や、アクチュエータ等の各制御要素に制御信号を出力する機能を有している。すなわち、制御部71は次の機能を有している。
【0035】
収穫物の判別手段C1は、カメラユニット72の撮像結果に基づいて、収穫物の判別を行う。実施の形態の収穫物の判別手段C1は、収穫物が収穫に適しているか否かを判別する。具体的には、収穫物の撮影画像を画像解析して、収穫物の大きさや結球の状態が、予め登録された大きさや結球の状態に達するか否かを画像解析で判別する。また、実施の形態の収穫物の判別手段C1は、収穫物の位置(水平、前後、高さ)も判別する。
【0036】
把持装置の制御手段C2は、把持装置33を制御して、収穫物の収穫を行う。実施の形態の把持装置の制御手段C2は、収穫物の判別手段C1で収穫に適していると判別された収穫物の位置に、挟持アーム26を水平方向の位置を合わせるように移動させる。そして、挟持アーム26の作動ワイヤ32を作動させて、左腕部27と右腕部28とを開放させる。そして、車体2の移動にともなって挟持アーム26の前後方向の位置が収穫物の位置に対応する位置に移動すると、挟持アーム26を下降させる。左腕部27と右腕部28の間に収穫物が入る位置(把持位置)まで移動すると、作動ワイヤ32が緩められて、左腕部27と右腕部28とを閉じさせる。このとき、左腕部27と右腕部28の底壁27b,28bで、収穫物の下方が支持される(抱え込まれる)こととなるが、切欠き27c,28cの部分は、収穫物が支持されず、根や茎等が垂れ下がった状態となる。すなわち、収穫物の下方の一部が支持された状態となる。
【0037】
次に、挟持アーム26を上昇させることで、収穫物を圃場から引き抜く。そして、挟持アーム26の位置を裁断装置41の上方を通過させた後、後方搬送装置51の上方に移動させる。そして、後方搬送装置51の上方の位置で作動ワイヤ32を作動させて、左腕部27と右腕部28とを開放させて、収穫物を搬送コンベア52に落下させる。また、実施の形態の把持装置の制御手段C2は、作業の開始前や収穫物が収穫に適さないと判別された場合には、裁断装置41の前方且つ上方の所定の退避位置に挟持アーム26を退避、待機させる。
なお、退避位置は、この位置に限定されない。例えば、作業の終了時に、挟持アーム26を車体2の後方の位置に移動させることで、収穫機1の全体の重心の位置をハンドル56aのある後ろ側に近づけて、収穫機1を操縦しやすくすることも可能である。
【0038】
裁断装置の制御手段C3は、裁断装置41を制御して、収穫物の根等を裁断する。実施の形態の裁断装置の制御手段C3は、収穫作業が開始されると作動を開始し、収穫作業が終了すると作動が停止される。なお、挟持アーム26が収穫物を把持して後方搬送装置51に向けて送る場合にのみ裁断装置41を作動させ、それ以外は停止させる構成とすることも可能である。この場合、裁断装置41の駆動源と後方搬送装置51の駆動源がモータ54で共通化されていると、裁断装置41を停止させようとすると後方搬送装置51の搬送が停止してしまうため、裁断装置41の駆動源と後方搬送装置51の駆動源とは別の駆動源とすることが望ましい。
【0039】
搬送装置の制御手段C4は、後方搬送装置51やリフト57を制御して、収穫物を収容部60に向けて搬送する。実施の形態の搬送装置の制御手段C4は、収穫作業が開始されると作動を開始し、収穫作業が終了すると作動が停止される。なお、挟持アーム26が収穫物を把持して後方搬送装置51に向けて送る場合にのみ後方搬送装置51やリフト57を作動させることも可能である。
【0040】
(実施の形態の作用)
前記構成を備えた実施の形態の収穫機1では、カメラユニット72での撮像結果に基づいて、収穫物が収穫に適したものか否かの判別が行われ、収穫に適したと判別されたものが挟持アーム26で収穫される。したがって、実施の形態の収穫機1は、収穫物を選択的に収穫することができる。よって、作業者による手動の選別作業が不要となり、手間が省けるとともに、未成熟な収穫物を成熟前に収穫して廃棄することも抑制される。
【0041】
実施の形態では、主として白菜やキャベツ、レタス等の葉物野菜用の収穫機1を例示したがこれに限定されない。大根や人参等の根菜類の収穫機にカメラユニット72と制御部71を組み込んで、収穫に適した野菜を選択的に収穫するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…収穫機、
2…車体、
33…把持装置、
41…裁断部、
51,57…搬送装置、
71…制御部、
72…検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6