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特許7552373電力系統の潮流予測システム、及び潮流予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電力系統の潮流予測システム、及び潮流予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240910BHJP
   G16Z 99/00 20190101ALI20240910BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G06Q50/06
G16Z99/00
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021006433
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110801
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 秀央
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031481(JP,A)
【文献】特開2019-126157(JP,A)
【文献】特開2018-038170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16Z 99/00
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家に電力を供給する配電線の潮流を予測する潮流予測システムであって、
プロセッサ及び記憶装置を有する一つ以上の情報処理装置を用いて構成され、
電力の利用についての需要家の契約に関する情報を含む需要家契約情報、
需要家の電力の利用履歴を含む需要家電力履歴、
発電所から配電線への電力の供給契約に関する情報を含む発電所情報、
発電所から配電線への電力の供給履歴に関する情報を含む発電所供給電力履歴、
配電線が存在する地域の地勢に関する情報を含む地勢情報、
配電線を流れる潮流の履歴に関する情報を含む配電線潮流履歴、
を記憶する記憶部と、
前記需要家契約情報、前記需要家電力履歴、前記発電所情報、前記発電所供給電力履歴、及び前記地勢情報を説明変数とし、前記配電線潮流履歴を目的変数とする学習データを生成する学習データ生成部、
前記学習データに基づき、前記説明変数を入力として前記目的変数を出力する機械学習モデルである予測モデルを学習する予測モデル学習部、
既知の前記説明変数と、未来の時点について予測した前記説明変数との差分の情報である予測差分を前記既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を前記予測モデルに入力して前記目的変数を生成する予測処理部と、
を備える、電力系統の潮流予測システム。
【請求項2】
需要家に電力を供給する配電線の潮流を予測する潮流予測システムであって、
プロセッサ及び記憶装置を有する一つ以上の情報処理装置を用いて構成され、
電力の利用についての需要家の契約に関する情報を含む需要家契約情報、
需要家の電力の利用履歴を含む需要家電力履歴、
発電所から配電線への電力の供給契約に関する情報を含む発電所情報、
発電所から配電線への電力の供給履歴に関する情報を含む発電所供給電力履歴、
配電線が存在する地域の地勢に関する情報を含む地勢情報、
配電線を流れる潮流の履歴に関する情報を含む配電線潮流履歴、
配電線の需要の履歴に関する情報を含む配電線需要履歴、及び、
配電線に接続する電力設備の需要の履歴に関する情報を含む電力設備需要履歴、
を記憶する記憶部と、
前記需要家契約情報、前記需要家電力履歴、前記発電所情報、前記発電所供給電力履歴、及び前記地勢情報を説明変数とし、前記配電線潮流履歴、前記配電線需要履歴、及び前記電力設備需要履歴を目的変数とする学習データを生成する学習データ生成部、
前記学習データに基づき、前記説明変数を入力として前記目的変数を出力する機械学習モデルである予測モデルを学習する予測モデル学習部、
既知の前記説明変数と、未来の時点について予測した前記説明変数との差分の情報である予測差分を前記既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を前記予測モデルに入力して前記目的変数を生成する予測処理部と、
を備える、電力系統の潮流予測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力系統の潮流予測システムであって、
前記電力設備は、配電線及び当該配電線とともに用いられる変圧器である、
電力系統の潮流予測システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力系統の潮流予測システムであって、
前記予測処理部が生成した前記目的変数をユーザに提示するユーザインタフェースを備える、電力系統の潮流予測システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力系統の潮流予測システムであって、
前記地勢情報は、配電線が存在する地域を撮影した航空写真の画像データから取得される情報を含む、
電力系統の潮流予測システム。
【請求項6】
需要家に電力を供給する配電線の潮流を予測する方法であって、
情報処理装置が、
電力の利用についての需要家の契約に関する情報を含む需要家契約情報、
需要家の電力の利用履歴を含む需要家電力履歴、
発電所から配電線への電力の供給契約に関する情報を含む発電所情報、
発電所から配電線への電力の供給履歴に関する情報を含む発電所供給電力履歴、
配電線が存在する地域の地勢に関する情報を含む地勢情報、
配電線を流れる潮流の履歴に関する情報を含む配電線潮流履歴、
を記憶するステップ、
前記需要家契約情報、前記需要家電力履歴、前記発電所情報、前記発電所供給電力履歴、及び前記地勢情報を説明変数とし、前記配電線潮流履歴を目的変数とする学習データを生成するステップ、
前記学習データに基づき、前記説明変数を入力として前記目的変数を出力する機械学習モデルである予測モデルを学習するステップ、及び、
既知の前記説明変数と、未来の時点について予測した前記説明変数との差分の情報である予測差分を前記既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を前記予測モデルに入力して前記目的変数を生成するステップ、
を実行する、電力系統の潮流予測方法。
【請求項7】
需要家に電力を供給する配電線の潮流を予測する方法であって、
情報処理装置が、
電力の利用についての需要家の契約に関する情報を含む需要家契約情報、
需要家の電力の利用履歴を含む需要家電力履歴、
発電所から配電線への電力の供給契約に関する情報を含む発電所情報、
発電所から配電線への電力の供給履歴に関する情報を含む発電所供給電力履歴、
配電線が存在する地域の地勢に関する情報を含む地勢情報、
配電線を流れる潮流の履歴に関する情報を含む配電線潮流履歴、
配電線の需要の履歴に関する情報を含む配電線需要履歴、及び、
配電線に接続する電力設備の需要の履歴に関する情報を含む電力設備需要履歴、
を記憶するステップ、
前記需要家契約情報、前記需要家電力履歴、前記発電所情報、前記発電所供給電力履歴、及び前記地勢情報を説明変数とし、前記配電線潮流履歴、前記配電線需要履歴、及び前記電力設備需要履歴を目的変数とする学習データを生成するステップ、
前記学習データに基づき、前記説明変数を入力として前記目的変数を出力する機械学習モデルである予測モデルを学習するステップ、及び、
既知の前記説明変数と、未来の時点について予測した前記説明変数との差分の情報である予測差分を前記既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を前記予測モデルに入力して前記目的変数を生成するステップ、
を実行する、電力系統の潮流予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の潮流予測システム、及び潮流予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電設備の適切な運転計画の立案等を目的として、電力需要を精度よく予測するための様々な仕組みが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一時的に電力需要パターンが変化した場合であっても、予測対象日における電力需要を精度よく予測することを目的として構成された電力需要予測システムについて記載されている。電力需要予測システムは、電力需要量を変動させる要因となり得る変動要因の実績である変動要因実績データに、電力需要の実績である電力実績データを対応付けた学習データであって、互いに異なる期間に対応する学習データを用いて機械学習を実行することにより、電力需要を予測する学習済みモデルを複数生成し、電力需要を予測する対象となる予測対象日に応じて、複数の学習済みモデルの中からいずれか一つを、予測対象日における電力需要を予測する予測モデルとして選択し、選択した予測モデルを用いて、予測対象日における電力需要を予測する。
【0004】
また、特許文献2には、予測モデルによる電力需要量予測値を補正する方法において、予測対象日よりも前の一定期間の予測モデルの出力、電力需要量の実績値等を用いて学習した補正用ニューロにより、予測モデルの出力を補正する方法について記載されている。上記方法では、基準日に対する電力需要量の低減率が一定値以上の日を、補正用ニューロの学習対象日として選択し、補正用ニューロの学習対象期間を、電力需要量の変化特性に応じて変化させ、外挿の発生時に、他の補正手法を組み合わせて電力需要量を補正する。
【0005】
また、特許文献3には、電力使用実績が未知である需要家の電力需要を予測する電力需要予測システムについて記載されている。電力需要予測システムは、需要家の属性データと需要家の電力使用実績が属する電力需要パターンの識別データとを対応付けた既存需要家データを学習用データベースに蓄積し、需要家が複数の電力需要パターンのいずれで電力を使用するかを示すパターン予測データを当該需要家の属性データの入力に応じて出力する電力需要予測モデルを学習用データベースに基づき構築し、新たな需要家の属性データを電力需要予測モデルに入力して需要家のパターン予測データを取得し、パターン予測データに基づき、新たな需要家が複数の電力需要パターンのいずれで電力を使用するかの予測結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-204458号公報
【文献】特開平10-224990号公報
【文献】特開2020-35090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力会社においては、経年劣化に伴う交換、災害や事故等のリスク対策、設備の強靱化、設備のスマート化、運用コストの低減等を目的として、電力設備の計画的な更新を行っている。電力設備の更新に際しては、各配電線について個別に電力の需要(一般需要、高圧需要等)を予測(通常は発電所から需要家への下り潮流のみを予測)し、電力設備の拡充や代替について要否判断を行っている。
【0008】
ところで、近年、配電線を流れる潮流には、負荷電流以外に太陽光発電設備等の需要家側の発電設備に由来する発電電流が混在し、配電線の実測値から正確な負荷電流を知ることが難しくなってきている。また、需要の将来的な伸びについては、通常は過去数年間の伸び率や担当者の経験に基づき予測しているため、実際の需要の増加を必ずしも反映できない可能性があり、電力設備の必要量を適切に予測することが困難になってきている。また、需要の伸びについては、例えば、過去数年間の伸び率を元にして一律に需要を増加させており、実際の需要の増加を必ずしも正確に反映できていない可能性がある。また、再生可能エネルギー由来の発電電流により、設備容量を超過する事例が増えており、電力設備の更新に際しては、発電電流の伸びを正確に予測することが求められる。
【0009】
特許文献1に記載の電力需要予測システムは、過去の天候実績や電力需要を学習データとして学習した予測モデルを用いて予測対象日における施設の電力需要を予測し、施設内の運転設備(エアコン装置等)の運転計画を立案し、省エネルギー節電に寄与することを目的として構成されたものであり、配電線や変圧器等の電力設備の計画的な更新に際して必要となる情報である各配電線の潮流を予測する技術については開示されていない。また、特許文献2には、電力需要量の予測値を補正する技術が記載されているに過ぎず、また、特許文献3には、電力使用実績が未知である需要家の電力需要を予測する技術が記載されているに過ぎず、いずれの文献についても各配電線の潮流を予測する技術については開示されていない。
【0010】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、電力系統を構成する各配電線の潮流を精度よく予測し、電力設備の需要を適切に予測することが可能な、電力系統の潮流予測システム、及び潮流予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、需要家に電力を供給する配電線の潮流を予測する潮流予測システムであって、プロセッサ及び記憶装置を有する一つ以上の情報処理装置を用いて構成され、電力の利用についての需要家の契約に関する情報を含む需要家契約情報、需要家の電力の利用履歴を含む需要家電力履歴、発電所から配電線への電力の供給契約に関する情報を含む発電所情報、発電所から配電線への電力の供給履歴に関する情報を含む発電所供給電力履歴、配電線が存在する地域の地勢に関する情報を含む地勢情報、配電線を流れる潮流の履歴に関する情報を含む配電線潮流履歴、を記憶する記憶部と、前記需要家契約情報、前記需要家電力履歴、前記発電所情報、前記発電所供給電力履歴、及び前記地勢情報を説明変数とし、前記配電線潮流履歴を目的変数とする学習データを生成する学習データ生成部、前記学習データに基づき、前記説明変数を入力として前記目的変数を出力する機械学習モデルである予測モデルを学習する予測モデル学習部、 既知の前記説明変数と、未来の時点について予測した前記説明変数との差分の情報である予測差分を前記既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を前記予測モデルに入力して前記目的変数を生成する予測処理部と、を備える。
【0012】
このように、本発明の潮流予測システムは、需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報を説明変数とし、配電線潮流履歴を目的変数とする学習データに基づき学習した予測モデルに、既知の説明変数と、未来の時点について予測した説明変数との差分の情報である予測差分を既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を予測モデルに入力することにより目的変数を生成し、配電線について予測対象日に予測される潮流(逆潮流を含む。以下同様。)を自動的に推定するので、配電線毎の潮流を効率よく予測することができる。また、発電所情報や発電所供給電力履歴、配電線が存在する地域の地勢情報をも加味して予測モデルを生成するので、過去数年間の伸び率等の単純な予測や担当者の経験に基づく予測に比べて配電線毎の潮流を精度よく予測することができる。そしてユーザは、予測された配電線毎の潮流に基づき、精度よく電力設備の需要を予測することができる。
【0013】
本発明のうちの他の一つは、需要家に電力を供給する配電線の潮流を予測する潮流予測システムであって、プロセッサ及び記憶装置を有する一つ以上の情報処理装置を用いて構成され、電力の利用についての需要家の契約に関する情報を含む需要家契約情報、需要家の電力の利用履歴を含む需要家電力履歴、発電所から配電線への電力の供給契約に関する情報を含む発電所情報、発電所から配電線への電力の供給履歴に関する情報を含む発電所供給電力履歴、配電線が存在する地域の地勢に関する情報を含む地勢情報、配電線を流れる潮流の履歴に関する情報を含む配電線潮流履歴、配電線の需要の履歴に関する情報を含む配電線需要履歴、及び、配電線に接続する電力設備の需要の履歴に関する情報を含む電力設備需要履歴、を記憶する記憶部と、前記需要家契約情報、前記需要家電力履歴、前記発電所情報、前記発電所供給電力履歴、及び前記地勢情報を説明変数とし、前記配電線潮流履歴、前記配電線需要履歴、及び前記電力設備需要履歴を目的変数とする学習データを生成する学習データ生成部、前記学習データに基づき、前記説明変数を入力として前記目的変数を出力する機械学習モデルである予測モデルを学習する予測モデル学習部、既知の前記説明変数と、未来の時点について予測した前記説明変数との差分の情報である予測差分を前記既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を前記予測モデルに入力して前記目的変数を生成する予測処理部と、を備える。
【0014】
このように、本発明の潮流予測システムは、需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報を説明変数とし、配電線潮流履歴、配電線需要履歴、及び変圧器需要履歴を目的変数とする学習データに基づき学習した予測モデルに、既知の説明変数と、未来の時点について予測した説明変数との差分の情報である予測差分を既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を予測モデルに入力することにより目的変数を生成し、配電線について予測対象日に予測される潮流を自動的に推定するので、配電線毎の潮流及び電力設備(配電線、変圧器等)の将来的な需要を効率よく予測することができる。また、発電所情報や発電所供給電力履歴、配電線が存在する地域の地勢情報をも加味して予測モデルを生成するので、過去数年間の伸び率等の単純な予測や担当者の経験に基づく予測に比べて配電線毎の潮流及び電力設備の需要を精度よく予測することができる。
【0015】
本発明のうちの他の一つは、上記潮流予測システムであって、前記予測処理部が生成した前記目的変数をユーザに提示するユーザインタフェースを備える。
【0016】
このように、本発明の潮流予測システムは、予測処理部が生成した前記目的変数をユーザに提示するユーザインタフェースを備えるので、ユーザは予測処理部が生成した目的変数を容易に参照することができる。
【0017】
本発明のうちの他の一つは、上記潮流予測システムであって、前記地勢情報は、配電線が存在する地域を撮影した航空写真の画像データから取得される情報を含む。
【0018】
このように、本発明の潮流予測システムは、配電線が存在する地域を撮影した航空写真の画像データから取得される情報を含むので、航空写真から取得される様々な特徴量を予測モデルに反映して精度よく目的変数を生成することができる。
【0019】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電力系統を構成する各配電線の潮流を精度よく予測し、電力設備の需要を適切に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】潮流予測システムが備える主な機能を示す図である。
図2】潮流予測システムの実現に用いる情報処理装置のハードウェアの一例である。
図3】需要家契約情報の一例である。
図4】需要家電力履歴の一例である。
図5】発電所情報の一例である。
図6】発電所供給電力履歴の一例である。
図7】地勢情報の一例である。
図8】配電線潮流履歴の一例である。
図9】予測モデル学習処理を説明するフローチャートである。
図10】電力設備需要予測処理を説明するフローチャートである。
図11】予測結果提示画面の一例である。
図12】第2実施形態の潮流予測システムが備える主な機能を示す図である。
図13】配電線需要履歴の一例である。
図14】変圧器需要履歴の一例である。
図15】第2実施形態の予測モデル学習処理を説明するフローチャートである。
図16】第2実施形態の電力設備需要予測処理を説明するフローチャートである。
図17】第2実施形態の予測結果提示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態について説明する。尚、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して説明を省略することがある。
【0023】
[第1実施形態]
図1に、第1実施形態として説明する情報処理システムである電力系統における潮流を予測するシステム(以下、「潮流予測システム1」と称する。)が備える主な機能を示している。潮流予測システム1は、電力系統を構成する配電線の潮流(逆潮流を含む。以下同様)を予測することにより、電力設備の経年劣化に伴う代替、電力設備(配電線、変圧器等)の強靱化、電力設備のスマート化、運用コストの低減、災害や事故等のリスク対策等を目的として行われる電力設備の計画的な更新等に際して電力設備の需要予測に係る作業を支援する。
【0024】
潮流予測システム1は、機械学習モデル(後述する予測モデル120)を用いて、電力系統を構成する配電線毎の潮流(電力の需要(一般需要、高圧需要等))を予測し、予測した配電線毎の潮流に基づき、配電線とともに用いられる各種電力設備の需要(電力設備の将来的な必要量)を予測する。これにより、例えば、担当者の経験に頼ることなく、電力設備の需要を適切に把握し、電力設備の拡充/補充の要否や代替要否等の判断等を効率よく適切に行うことが可能になる。尚、本実施形態では、電力設備の例として、配電線と変圧器を取り上げるが、電力設備の種類は必ずしも限定されない。
【0025】
同図に示すように、潮流予測システム1は、記憶部110、需要家情報管理部125、発電所情報管理部130、地勢情報管理部135、設備情報管理部140、学習データ生成部150、予測モデル学習部155、予測処理部160、及び予測結果提示部170の各機能を有する。
【0026】
上記機能のうち、記憶部110は、需要家契約情報111、需要家電力履歴112、発電所情報113、発電所供給電力履歴114、地勢情報115、配電線潮流履歴116、学習データ119、及び予測モデル120を記憶する。
【0027】
需要家契約情報111は、電力の供給者(本例では電力会社であるものとする)との間で電力の利用契約を行っている者(以下、「需要家」と称する。)の上記利用契約に関する情報(以下、「需要家契約情報」と称する。)を含む。需要家契約情報111は、例えば、電力会社によって管理される、顧客管理情報等が管理されているマスターデータベースから提供される。
【0028】
需要家電力履歴112は、各需要家の電力の利用履歴に関する時系列の情報(以下、「需要家電力履歴」と称する。)を含む。需要家電力履歴112は、例えば、電力会社等によって管理される、スマートメータや電力計(電力量計)等の電力計測機器から読み取られたデータが管理されているデータベースから提供される。
【0029】
発電所情報113は、配電線に電力を供給している発電所に関する情報(以下、「発電所情報」と称する。)を含む。上記発電所には、電力会社が運用する発電所だけでなく、配電線への電力の供給について電力会社と電力の供給契約を行っている発電所(小売電気事業者等が運用する発電所)に関する情報も管理される。発電所情報113は、例えば、電力会社等によって管理される、発電所に関する情報が管理されているデータベースから提供される。
【0030】
発電所供給電力履歴114は、各発電所の発電電力の履歴に関する時系列の情報(以下、「発電所供給電力履歴」と称する。)を含む。上記情報は、例えば、電力会社等によって管理されている、各発電所の情報が管理されているデータベースから提供される。
【0031】
地勢情報115は、各配電線が存在する地域を航空機やドローン等を用いて撮影した航空写真の画像データや当該航空写真から取得される地勢(宅地の状況(面積、建造物(一般家屋、工場等)の数等)、交通の状況(道路や鉄道の整備状況、水路の数等)、農地や山林の状況(遊休農地の面積等)等)に関する時系列の情報(以下、「地勢情報」と称する。)を含む。尚、地勢情報は、例えば、今後の負荷電力の増減や供給電力の増減に大きな影響を与える要因(パラメータ)となる情報を含む(例えば、住宅や工場の建設により配電線の負荷電力の増大する場合や、遊休農地を利用した発電所の建設により配電線への供給電力が増大する場合等)。
【0032】
配電線潮流履歴116は、各配電線の潮流に関する時系列の情報(以下、「配電線潮流履歴」と称する。)を含む。上記情報は、例えば、電力会社等によって管理される、電力設備(配電線、変圧器等)に附随して設けられている電力計(電力量計)から取得した情報が管理されているデータベースから提供される。尚、各配電線の潮流は、例えば、各配電線に接続する需要家の電力量計(スマートメータ、機械式電力量計、パワーコンディショナ等)から得られる電力(消費電力(負荷電力))や、インターネット等から取得される気象情報もしくは近隣の発電所の発電状況(最大定格電力と発電電力の比等)から推定される発電電力)の実測値に基づき求める。また、再生可能エネルギーを利用する発電所(太陽光発電所、風力発電所等)から配電線に供給される電力は、例えば、上記の発電所にて計測される情報を利用する。
【0033】
配電線需要履歴117は、電力設備としての配電線の需要に関する履歴(配電線の現在の設置状況、配電線の過去の増減設や代替の履歴等)に関する時系列の情報(以下、「配電線需要履歴」と称する。)を含む。上記情報は、例えば、電力会社等によって管理されている、電力設備に関する情報を管理するデータベースから提供される。
【0034】
変圧器需要履歴118は、配電線とともに用いられる電力設備である変圧器(配電用変圧器等)の需要に関する履歴(変圧器の現在の設置状況、変圧器の過去の増減設や代替の履歴等)に関する時系列の情報(以下、「変圧器需要履歴」と称する。)を含む。上記情報は、例えば、電力会社等によって管理される、電力設備に関する情報が管理されているデータベースから提供される。
【0035】
学習データ119は、予測モデル120の学習(機械学習)に用いるデータである。学習データ119は、需要家契約情報111、需要家電力履歴112、発電所情報113、発電所供給電力履歴114、地勢情報115、及び配電線潮流履歴116から取得される情報に基づき生成される。
【0036】
予測モデル120は、予測モデル120の学習後に新たに取得された(もしくは新たに設定された)情報が反映された、需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報を説明変数として入力することにより、配電線の潮流を示す情報を出力するように構成された機械学習モデルである。予測モデル120は、例えば、勾配ブースティング(GBDT(Gradient Boosting Decision Tree))や深層学習(DNN(Deep Neural Network))により実現される。但し、予測モデル120の実現方法は必ずしも限定されない。尚、本実施形態では、説明変数に地勢情報を含めているが、地勢情報は必ずしも説明変数に含めなくてもよい。
【0037】
予測結果121は、予測処理部160により生成される、配電線の需要、及び変圧器の需要についての予測結果を示す情報を含む。
【0038】
図1に示した機能のうち、需要家情報管理部125は、需要家契約情報111及び需要家電力履歴112を管理(情報の取得と更新)する。また、発電所情報管理部130は、発電所情報113及び発電所供給電力履歴114を管理(情報の取得と更新)する。また、地勢情報管理部135は、地勢情報115を管理(情報の取得と更新)する。また、設備情報管理部140は、配電線潮流履歴116を管理(情報の取得と更新)する。
【0039】
学習データ生成部150は、需要家契約情報111、需要家電力履歴112、発電所情報113、発電所供給電力履歴114、及び地勢情報115から取得される情報(需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報)を説明変数とし、配電線潮流履歴116から取得される情報(配電線潮流履歴)を目的変数として組み合わせることにより学習データ119を生成する。
【0040】
予測モデル学習部155は、学習データ生成部150が生成した学習データ119に基づき予測モデル120の学習を行う。
【0041】
予測処理部160は、予測モデル120に、予測したい未来の日時(以下、「予測対象日時」と称する。)における説明変数(需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報)を入力することにより、上記予測対象日時における目的変数(配電線潮流履歴)を予測結果121として生成する。
【0042】
予測結果提示部170は、予測結果121をユーザに提示するためのユーザインタフェースを提供する。
【0043】
図2に、潮流予測システム1の実現に用いる情報処理装置のハードウェアの一例を示す。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、及び通信装置16を備える。尚、例示する情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、情報処理装置10によって提供される機能の全部又は一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。また、情報処理装置10によって提供される機能の全部又は一部は、例えば、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)等を利用して実現されるものであってもよい。また、潮流予測システム1は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて構成してもよい。
【0044】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0045】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0046】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0047】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0048】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0049】
入力装置14及び出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0050】
通信装置16は、他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置16は、インターネット等の通信ネットワークを介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等である。また、通信装置16は、需要家宅に設置されているスマートメータの制御を行う配電制御システム等の情報処理システムと通信する。
【0051】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0052】
潮流予測システム1が備える前述の各機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、潮流予測システム1を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)によって実現される。潮流予測システム1は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0053】
図3に、需要家契約情報111の一例を示している。例示する需要家契約情報111は、需要家ID1111、契約内容1112、及び適用開始日時1113の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。需要家契約情報111の一つのエントリは一つの需要家の一つの電気利用契約に対応している。
【0054】
上記項目のうち、需要家ID1111には、需要家の識別子である需要家IDが設定される。契約内容1112には、電力会社と需要家との間で締結されている電気利用契約の内容(契約種別、契約電流、契約容量、契約電力、契約負荷設備、使用場所、契約名義等)が設定される。適用開始日時1113には、当該電気利用契約の適用開始日時が設定される。尚、需要家契約情報111には、既に契約期間が終了している過去の電気利用契約についての情報も管理される。
【0055】
図4に、需要家電力履歴112の一例を示している。例示する需要家電力履歴112は、需要家ID1121、配電線ID1122、期間1123、及び使用電力量1124の各項目を有する複数のエントリ(レコード)を含む。需要家電力履歴112の一つのエントリは、一つの需要家のある期間に対応している。
【0056】
上記項目のうち、需要家ID1121には、前述した需要家IDが設定される。 配電線ID1122には、当該需要家(需要家宅)が接続している配電線の識別子である配電線IDが設定される。期間1123には、使用電力量を計測した期間が設定される。使用電力量1124には、当該需要家の当該期間における使用電力量の実績が設定される。
【0057】
図5に、発電所情報113の一例を示している。例示する発電所情報113は、発電所ID1131、供給情報1132、及び適用開始日時1133の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。発電所情報113の一つのエントリは一つの需要家の一つの発電所に対応している。
【0058】
上記項目のうち、発電所ID1131には、発電所の識別子である発電所IDが設定される。供給情報1132には、当該発電所から供給される電力に関する情報(最大供給可能電力等)や当該発電所が電力会社以外が管理する発電所である場合における供給契約の内容等が設定される。適用開始日時1133には、当該エントリの情報の適用開始日時が設定される。尚、発電所情報113には、既に電力を供給していないが過去に電力を供給していた発電所の情報も管理される。
【0059】
図6に、発電所供給電力履歴114の一例を示している。例示する発電所供給電力履歴114は、発電所ID1141、期間1142、及び供給電力量1143の各項目を有する複数のエントリ(レコード)を含む。発電所供給電力履歴114の一つのエントリは、一つの発電所のある期間に対応している。
【0060】
上記項目のうち、発電所ID1141には、前述した発電所IDが設定される。 期間1142には、供給電力量を計測した期間が設定される。供給電力量1134には、当該発電所の当該期間(期間1142)における供給電力量の実績が設定される。
【0061】
図7に、地勢情報115の一例を示している。例示する地勢情報115は、地域ID1151、画像ID1152、撮影日時1153、特徴量群1154の各項目を有する複数のエントリ(レコード)を含む。地勢情報115の一つのエントリは一つの航空写真の画像データに対応している。
【0062】
上記項目のうち、地域ID1151には、電力会社が管轄する各地域の識別子である地域IDが設定される。画像ID1152には、当該地域を撮影した航空写真の画像データの識別子である画像IDが設定される。撮影日時1153には、当該画像データの航空写真が撮影された日時が設定される。特徴量群1154には、当該画像データから抽出された一つ以上の特徴量が設定される。特徴量は、人間系が設定してもよいし、例えば、所定の特徴量抽出手法(フィルタ法(Filter Method)、ラッパー法(Wrapper Method)、組み込み法(Embedded Method)等)により情報処理装置が自動的に抽出した特徴量を用いてもよい。
【0063】
図8に、配電線潮流履歴116の一例を示している。例示する配電線潮流履歴116は、配電線ID1161、期間1162、及び潮流情報1163の各項目を有する複数のエントリ(レコード)を含む。配電線潮流履歴116の一つのエントリは、一つの配電線のある期間に対応している。
【0064】
上記項目のうち、配電線ID1161には、前述した配電線IDが設定される。 期間1162には、当該配電線の潮流を計測した期間が設定される。潮流情報1163には、当該期間に計測した潮流に関する情報(有効電力、無効電力、皮相電力等)が設定される。
【0065】
続いて、潮流予測システム1が行う主な処理について説明する。
【0066】
図9は、潮流予測システム1が、予測モデル120の学習に際して行う処理(以下、「予測モデル学習処理S900」と称する。)を説明するフローチャートである。尚、予測モデル学習処理S900が実行されるタイミングは必ずしも限定されないが、潮流予測システム1は、例えば、前述した説明変数と目的変数の組み合わせの実測値が取得されたことや、ユーザから指示を受け付けたこと等を契機として予測モデル学習処理S900を実行する。
【0067】
同図に示すように、まず学習データ生成部150が、需要家契約情報111、需要家電力履歴112、発電所情報113、発電所供給電力履歴114、及び地勢情報115から取得される説明変数(需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報)と、配電線潮流履歴116、配電線需要履歴117、及び変圧器需要履歴118から取得される目的変数(配電線潮流履歴)とを組み合わせることにより、学習データ119を生成する(S1111)。尚、学習データ生成部150は、時系列的な対応をとる必要がある場合は各情報に含まれている時間情報(日時や期間)に基づき時系列的な対応をとりつつ、説明変数と目的変数を組み合わせて学習データ119を生成する。
【0068】
続いて、予測モデル学習部155が、学習データ119に基づき予測モデル120を学習する(S912)。
【0069】
尚、予測モデル学習部155が、学習済の予測モデル120について予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、例えば、学習データ119を学習用のデータと検証用のデータに分割し、予測モデル120の学習には学習用のデータを用いて学習を行い、予測モデル120の検証には検証用のデータを用いる。
【0070】
図10は、潮流予測システム1が、説明変数を予測モデル120に入力して目的変数を求め、求めた目的変数をユーザに提示する処理(以下、「電力設備需要予測処理S1000」と称する。)を説明するフローチャートである。
【0071】
まず予測処理部160は、目的変数(配電線の潮流)、配電線の需要、変圧器の需要)を予測しようとする日時(予測対象日時)と、当該予測対象日時における説明変数の予測差分(需要家契約情報の予測差分111a、発電所情報の予測差分112a、需要家電力の予測差分113a、発電所供給電力の予測差分114a、地勢情報の予測差分)とを取得する(S1011)。尚、予測差分は、例えば、情報処理装置を用いたシミュレーションにより求めた値でもよいし、ユーザインタフェースを介してユーザから受け付けてもよい。
【0072】
続いて、予測処理部160は、受け付けた予測差分を、既知(既存)の需要家契約情報111、既知の需要家電力履歴112、既知の発電所情報113、既知の発電所供給電力履歴114、及び既知の地勢情報115の内容に反映することにより、予測対象日時における説明変数を生成する(S1012)。
【0073】
続いて、予測処理部160は、生成した説明変数を予測モデル120に入力することにより予測結果121を生成する(S1013)。
【0074】
続いて、予測結果提示部170が、生成された予測結果121の内容をユーザに提示する(S1014)。
【0075】
図11は、予測結果121の内容をユーザに提示する際に表示する画面(以下、「予測結果提示画面1100」と称する。)の一例である。同図に示すように、予測結果提示画面1100には、予測対象日の表示欄1101と、予測結果の表示欄1102とを有する。
【0076】
このうち予測対象日の表示欄1101には、図10のS1011で取得した予測対象日が表示される。予測結果の表示欄1102には、予測結果121の内容が表示される。本例では、予測結果の表示欄1102に、予測結果121の内容を示す表が表示されている。同図に示すように、上記の表は、配電線ID11021、及び潮流(逆潮流)最大値11022の各項目を有する。上記の表の一行は一つの配電線に対応している。上記項目のうち、配電線ID11021には、前述した配電線IDが設定される。潮流(逆潮流)最大値11022には、当該配電線について当該予測対象日に予測される潮流(本例では当該予測対象日における最大値)が設定される。
【0077】
尚、予測結果提示画面1100(もしくは別途生成する画面)に、ユーザから年度や月の指定を受け付ける機能(ユーザインタフェース)を設け、受け付けた期間における潮流(逆潮流)の最大値や負荷曲線等を表示するようにしてもよい。
【0078】
以上に説明したように、第1実施形態の潮流予測システム1は、需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報を説明変数とし、配電線潮流履歴を目的変数とする学習データに基づき学習した予測モデルに、既知の説明変数と、未来の時点について予測した説明変数との差分の情報である予測差分を既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を予測モデルに入力することにより目的変数を生成し、配電線について予測対象日に予測される潮流を自動的に推定するので、配電線毎の潮流を効率よく予測することができる。また、発電所情報や発電所供給電力履歴、配電線が存在する地域の地勢情報をも加味して予測モデルを生成するので、過去数年間の伸び率等の単純な予測や担当者の経験に基づく予測に比べて配電線毎の潮流を精度よく予測することができる。そしてユーザは、予測された配電線毎の潮流に基づき、精度よく電力設備の需要を予測することができる。
【0079】
[第2実施形態]
【0080】
図12に、第2実施形態として説明する潮流予測システム1が備える主な機能を示している。第2実施形態の潮流予測システム1は、第1実施形態の潮流予測システム1と類似の要素を多く含むので、以下、第1実施形態と異なる部分を中心として説明する。尚、第2実施形態として説明する潮流予測システム1は、例えば、図2に例示した情報処理装置10を用いて実現される。
【0081】
同図に示すように、第2実施形態の潮流予測システム1の記憶部110は、第1実施形態の潮流予測システム1の記憶部110が記憶する情報に加え、配電線需要履歴117、変圧器需要履歴118を記憶する。
【0082】
また、第2実施形態の潮流予測システム1の設備情報管理部140は、配電線潮流履歴116に加え、配電線需要履歴117、及び変圧器需要履歴118を管理(情報の取得や更新)する。
【0083】
第2実施形態の潮流予測システム1の学習データ生成部150は、需要家契約情報111、需要家電力履歴112、発電所情報113、発電所供給電力履歴114、及び地勢情報115から取得される情報(需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報)を説明変数とし、配電線潮流履歴116、配電線需要履歴117、及び変圧器需要履歴118から取得される情報(配電線潮流履歴、配電線需要履歴、及び変圧器需要履歴)を目的変数として組み合わせることにより学習データ119を生成する。
【0084】
第2実施形態の潮流予測システム1の予測処理部160は、予測モデル120に、予測したい未来の日時(予測対象日時)における説明変数(需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報)を入力することにより、上記予測対象日時における目的変数(配電線潮流履歴、配電線の需要、及び変圧器の需要)を予測結果121として生成する。
【0085】
図13に、配電線需要履歴117の一例を示している。例示する配電線需要履歴117は、配電線ID1171、期間1172、配電線仕様情報1173、及び区間ID1174の各項目を有する複数のエントリ(レコード)を含む。配電線需要履歴117の一つのエントリは、ある期間に設置されていた(もしくは現在設置されている)一つの配電線に対応している。
【0086】
上記項目のうち、配電線ID1171には、前述した配電線IDが設定される。期間1172には、当該配電線が設置されていた期間(もしくは設置された日時)が設定される。配電線仕様情報1173には、当該配電線に関する情報(種類、仕様、長さ等)が設定される。区間ID1174には、当該配電線が設置されている区間を示す識別子である区間IDが設置される。
【0087】
図14に、変圧器需要履歴118の一例を示している。例示する変圧器需要履歴118は、変圧器ID1181、期間1182、変圧器仕様情報1183、及び配電線ID1184の各項目を有する複数のエントリ(レコード)を含む。変圧器需要履歴118の一つのエントリは、ある期間に設置されていた(もしくは現在設置されている)一つの変圧系に対応している。
【0088】
上記項目のうち、変圧器ID1181には、変圧器の識別子である変圧器IDが設定される。期間1182には、当該変圧器が設置されていた期間(もしくは設置された日時)が設定される。変圧器仕様情報1183には、当該変圧器に関する情報(種類、仕様、容量等)が設定される。配電線ID1184には、当該変圧器が設置されている配電線の配電線IDが設定される。
【0089】
図15は、第2実施形態の潮流予測システム1が、予測モデル120の学習に際して行う処理(以下、「予測モデル学習処理S1500」と称する。)を説明するフローチャートである。尚、予測モデル学習処理S1500が実行されるタイミングは必ずしも限定されないが、潮流予測システム1は、例えば、前述した説明変数と目的変数の組み合わせの実測値が取得されたことや、ユーザから指示を受け付けたこと等を契機として予測モデル学習処理S1500を実行する。
【0090】
同図に示すように、まず学習データ生成部150が、需要家契約情報111、需要家電力履歴112、発電所情報113、発電所供給電力履歴114、及び地勢情報115から取得される説明変数(需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報)と、配電線潮流履歴116、配電線需要履歴117、及び変圧器需要履歴118から取得される目的変数(配電線潮流履歴、配電線需要履歴、変圧器需要履歴)とを組み合わせることにより、学習データ119を生成する(S1511)。尚、学習データ生成部150は、時系列的な対応をとる必要がある場合は各情報に含まれている時間情報(日時や期間)に基づき時系列的な対応をとりつつ、説明変数と目的変数を組み合わせて学習データ119を生成する。
【0091】
続いて、予測モデル学習部155が、学習データ119に基づき予測モデル120を学習する(S1512)。
【0092】
尚、予測モデル学習部155が、学習済の予測モデル120について予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、例えば、学習データ119を学習用のデータと検証用のデータに分割し、予測モデル120の学習には学習用のデータを用いて学習を行い、予測モデル120の検証には検証用のデータを用いる。
【0093】
図16は、第2実施形態の潮流予測システム1が、説明変数を予測モデル120に入力して目的変数を求め、求めた目的変数をユーザに提示する処理(以下、「電力設備需要予測処理S1600」と称する。)を説明するフローチャートである。
【0094】
まず予測処理部160は、目的変数(配電線の潮流)、配電線の需要、変圧器の需要)を予測しようとする日時(予測対象日時)と、当該予測対象日時における説明変数の予測差分(需要家契約情報の予測差分111a、発電所情報の予測差分112a、需要家電力の予測差分113a、発電所供給電力の予測差分114a、地勢情報の予測差分)とを取得する(S1611)。尚、予測差分は、例えば、情報処理装置を用いたシミュレーションにより求めた値でもよいし、ユーザインタフェースを介してユーザから受け付けてもよい。
【0095】
続いて、予測処理部160は、受け付けた予測差分を、既知(既存)の需要家契約情報111、既知の需要家電力履歴112、既知の発電所情報113、既知の発電所供給電力履歴114、及び既知の地勢情報115の内容に反映することにより、予測対象日時における説明変数を生成する(S1612)。
【0096】
続いて、予測処理部160は、生成した説明変数を予測モデル120に入力することにより予測結果121を生成する(S1613)。
【0097】
続いて、予測結果提示部170が、生成された予測結果121の内容をユーザに提示する(S1614)。
【0098】
図17は、予測結果121の内容をユーザに提示する際に表示する画面(以下、「予測結果提示画面1700」と称する。)の一例である。同図に示すように、予測結果提示画面1700には、予測対象日の表示欄1711と、予測結果の表示欄1712とを有する。
【0099】
このうち予測対象日の表示欄1711には、図16のS1611で取得した予測対象日が表示される。予測結果の表示欄1712には、予測結果121の内容が表示される。本例では、予測結果の表示欄1712に、予測結果121の内容を示す表が表示されている。同図に示すように、上記の表は、配電線ID17121、変圧器ID17122、潮流(逆潮流)最大値17123、要求配電線仕様17124、及び要求変圧器仕様17125の各項目を有する。上記の表の一行は一つの配電線に対応している。
【0100】
上記項目のうち、配電線ID17121には、前述した配電線IDが設定される。変圧器ID17122には、当該配電線に接続している、一つ以上の変圧器の変圧器IDが設定される。潮流(逆潮流)最大値17123には、当該配電線について当該予測対象日に予測される潮流の最大値が設定される。要求配電線仕様17124には、当該配電線が当該潮流に対応するために満たすべき仕様である要求配電線仕様が設定される。要求変圧器仕様17125には、当該配電線に接続している変圧器が当該潮流に対応するために満たすべき仕様である要求変圧器仕様が設定される。
【0101】
尚、予測結果提示画面1700(もしくは別途生成する画面)に、ユーザから年度や月の指定を受け付ける機能(ユーザインタフェース)を設け、受け付けた期間における潮流(逆潮流)の最大値や負荷曲線等を表示するようにしてもよい。
【0102】
以上に説明したように、第2実施形態の潮流予測システム1は、需要家契約情報、需要家電力履歴、発電所情報、発電所供給電力履歴、及び地勢情報を説明変数とし、配電線潮流履歴、配電線需要履歴、及び変圧器需要履歴を目的変数とする学習データに基づき学習した予測モデルに、既知の説明変数と、未来の時点について予測した説明変数との差分の情報である予測差分を既知の説明変数に反映することにより得られる説明変数を予測モデルに入力することにより目的変数を生成し、配電線について予測対象日に予測される潮流を自動的に推定するので、配電線毎の潮流及び電力設備(配電線、変圧器)の将来的な需要を効率よく予測することができる。また、発電所情報や発電所供給電力履歴、配電線が存在する地域の地勢情報をも加味して予測モデルを生成するので、過去数年間の伸び率等の単純な予測や担当者の経験に基づく予測に比べて配電線毎の潮流及び電力設備の需要を精度よく予測することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 潮流予測システム
110 記憶部
111 需要家契約情報
112 需要家電力履歴
113 発電所情報
114 発電所供給電力履歴
115 地勢情報
116 配電線潮流履歴
117 配電線需要履歴
118 変圧器需要履歴
119 学習データ
120 予測モデル
121 予測結果
125 需要家情報管理部
130 発電所情報管理部
135 地勢情報管理部
140 設備情報管理部
150 学習データ生成部
155 予測モデル学習部
160 予測処理部
170 予測結果提示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17