IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京電力株式会社の特許一覧

特許7552379情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240910BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 110
H02J13/00 301B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021010136
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114038
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-11-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代電力ネットワーク安定化技術開発/研究開発項目[1]-2 慣性力等の低下に対応するための基盤技術の開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良彦
(72)【発明者】
【氏名】大原 尚
(72)【発明者】
【氏名】里 悠太
(72)【発明者】
【氏名】保坂 直貴
(72)【発明者】
【氏名】草柳 儀隆
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-211830(JP,A)
【文献】特開2016-214064(JP,A)
【文献】米国特許第10884038(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電機を含む交流連系系統内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、前記交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とに基づいて、前記第1周波数と前記第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、前記加重平均における重みの比を推定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1周波数及び前記第2周波数を変化させるイベントが生じたと推定される対象期間における前記第1周波数情報と、前記対象期間における第2周波数情報とに基づいて、前記フィッティング関数とともに前記重みの比を推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記重みの比は、前記複数の発電機のうち前記第1地点を含む第1領域内に含まれる1以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和と、前記複数の発電機のうち前記第2地点を含む第2領域内に含まれる1以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和との比であり、
前記第1領域に含まれる1以上の発電機と、前記第2領域に含まれる1以上の発電機との間には、重複がない、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
最小二乗法に基づいて、前記フィッティング関数とともに前記重みの比を推定する、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
推定した前記フィッティング関数に基づいて、前記交流連系系統における慣性中心の周波数についてのRoCoFを推定する、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数の発電機を含む交流連系系統内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、前記交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とを取得し、
取得した前記第1周波数情報と、取得した前記第2周波数情報とに基づいて、前記第1周波数と前記第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、前記加重平均における重みの比を推定する、
情報処理方法。
【請求項7】
コンピューターに、
複数の発電機を含む交流連系系統内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、前記交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とを取得させ、
取得された前記第1周波数情報と、取得された前記第2周波数情報とに基づいて、前記第1周波数と前記第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、前記加重平均における重みの比を推定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流連系系統の系統慣性を推定する技術についての研究、開発が行われている。交流連系系統は、1つ以上の発電機を含み、これら1つ以上の発電機による同期発電が行われる交流電力系統のことである。また、交流連系系統の系統慣性は、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体(すなわち、発電機の回転子、タービン等)の慣性モーメントの総和のことである。
【0003】
ここで、交流連系系統では、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体は、すべて同期回転し、系統周波数として1つの周波数を作る。このため、交流連系系統における発電機の脱落等によって交流連系系統の系統慣性が変化すると、系統周波数が動揺する。系統周波数の動揺は、交流連系系統による電力の供給品質、発電機同士の同期の安定性に影響を与えることがある。従って、交流連系系統の系統慣性は、交流連系系統による電力の安定供給の観点から、常に一定値以上であることが求められている。このような事情から、交流連系系統の系統慣性を精度よく推定することが望まれることも少なくない。
【0004】
交流連系系統の系統慣性を推定する方法として、RoCoF(Rate of Change of Frequency)法が知られている。RoCoF法は、系統周波数が動揺した場合における系統周波数についてのRoCoF(すなわち、系統周波数の変化率)を推定し、推定したRoCoFに基づいて、交流連系系統の系統慣性を推定する方法のことである。
【0005】
ここで、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の運動エネルギーは、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントと見做すことができる。これは、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の運動エネルギーが、回転体の慣性モーメントに、回転体の角速度の二乗(すなわち、回転体の周波数の二乗)を乗じることによって求められるからである。従って、交流連系系統では、交流連系系統の系統慣性を、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の運動エネルギーの総和として算出することができる。そして、このような運動エネルギーの総和は、運動エネルギーの総和を示す数式を時間微分することにより得られる動揺方程式によって、系統周波数についてのRoCoFと関係付けることができる。RoCoF法は、この動揺方程式を用いて、当該RoCoFに基づいて、交流連系系統の系統慣性(より正確には、当該系統慣性と見做すことができる運動エネルギーの総和)を求める方法である。本明細書では、RoCoF法が既知であるため、RoCoF法についてこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0006】
なお、交流連系系統において、系統周波数は、通常、時間的に小さく動揺しながらも、常に一定の範囲内の値を保つように制御されている。このため、RoCoF法により交流連系系統の系統慣性を推定するために用いるRoCoFを得るためには、当該範囲から逸脱するほど系統周波数が大きく変化する必要がある。そこで、RoCoF法による交流連系系統の系統慣性の推定では、交流連系系統からの発電機の脱落、交流連系系統に接続される負荷の脱落等のイベントが生じた場合における系統周波数についてのRoCoFが用いられることが多い。何故なら、当該場合、系統周波数は、ランプ状(1次関数的)に大きく変化することが知られているからである。これは、当該場合、1つ以上の多くの測定地点において測定される電力が、ステップ状(階段関数状)に大きく変化するためである。測定地点は、交流連系系統に含まれる地点のうち系統周波数が測定される地点のことであり、例えば、変電所等である。
【0007】
これに関し、交流連系系統においてイベントが生じた時刻として、RoCoFが0.4[Hz/s]を下回った時刻を用いて、RoCoF法により、交流連系系統の系統慣性を推定する方法が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】「実測結果に基づく系統周波数特性の推定手法の開発」、電力中央研究所報告、研究報告:T94016、平成7年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、交流連系系統においてイベントが生じた場合、イベントによる系統周波数の動揺の仕方(例えば、系統周波数についてのRoCoF)は、発電機間動揺等により、互いに異なる複数の測定地点のそれぞれ毎に異なることが知られている。このため、ある特定の1つの地点を測定地点として測定された系統周波数に基づいて、RoCoF法により交流連系系統の系統慣性を推定すると、交流連系系統の系統慣性を精度よく推定することができないことがある。
【0010】
これに対し、交流連系系統内の予め決められた複数の測定地点それぞれにおいて系統周波数を測定し、当該複数の測定地点毎の系統周波数の適切な加重平均に基づいて、RoCoF法により交流連系系統の系統慣性を精度よく推定できることが知られている。しかしながら、このような加重平均における理想的な重みは、測定地点のそれぞれが代表する発電機群の慣性モーメントの合計に比例した係数として決められる。ここで、重みの合計が1でなければならないことから、このような加重平均で必要なことは、測定地点別の慣性モーメント合計の比である。しかしながら、一般的に、系統慣性の推定が必要な場合において、このような比は、未知である。その結果、RoCoF法により交流連系系統の系統慣性の推定精度を向上させるために必要な適切な重み係数の設定が困難であるとともに、重み係数の設定に人の主観が入る場合があり、結果の客観性が乏しい場合があった。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、複数の地点において測定された周波数に基づくRoCoF法による交流連系系統の系統慣性の推定精度を向上させることができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、複数の発電機を含む交流連系系統内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、前記交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とに基づいて、前記第1周波数と前記第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、前記加重平均における重みの比を推定する、情報処理装置である。
【0013】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置が、前記第1周波数及び前記第2周波数を変化させるイベントが生じたと推定される対象期間における前記第1周波数情報と、前記対象期間における第2周波数情報とに基づいて、前記フィッティング関数とともに前記重みの比を推定する、構成が用いられてもよい。
【0014】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置が、前記重みの比は、前記複数の発電機のうち前記第1地点を含む第1領域内に含まれる1以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和と前記複数の発電機のうち前記第2地点を含む第2領域内に含まれる1以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和との比であり、前記第1領域に含まれる1以上の発電機と、前記第2領域に含まれる1以上の発電機との間には、重複がない、構成が用いられてもよい。
【0015】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置が、最小二乗法に基づいて、前記フィッティング関数とともに前記重みの比を推定する、構成が用いられてもよい。
【0016】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置が、推定した前記フィッティング関数に基づいて、前記交流連系系統における慣性中心の周波数についてのRoCoFを推定する、構成が用いられてもよい。
【0017】
また、本発明の他の態様は、複数の発電機を含む交流連系系統内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、前記交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とを取得し、取得した前記第1周波数情報と、取得した前記第2周波数情報とに基づいて、前記第1周波数と前記第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、前記加重平均における重みの比を推定する、情報処理方法である。
【0018】
また、本発明の他の態様は、コンピューターに、複数の発電機を含む交流連系系統内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、前記交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とを取得させ、取得された前記第1周波数情報と、取得された前記第2周波数情報とに基づいて、前記第1周波数と前記第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、前記加重平均における重みの比を推定させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の地点において測定された周波数に基づくRoCoF法による交流連系系統の系統慣性の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】情報処理システム1の構成の一例を示す図である。
図2】情報処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】情報処理装置20の機能構成の一例を示す図である。
図4】情報処理装置20が交流連系系統Rの系統慣性を推定する処理の流れの一例を示す図である。
図5】数値検討に用いたモデル系統を説明するための図である。
図6】本実施形態において説明した推定方法によるフィッティング関数の推定結果の一例を示す図である。
図7図6に示したフィッティング関数とともに、交流連系系統Xの慣性中心の周波数の波形を表示させたグラフの一例を示す図である。
図8】情報処理装置20が測定装置11から第1周波数情報と電力情報とを取得する処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、ある地点において測定された電力の周波数と称した場合、当該地点において測定された電圧の周波数、又は、当該地点において測定された電流の周波数のことを意味する。
【0022】
<情報処理システムの構成>
まず、実施形態に係る情報処理システム1の構成について説明する。図1は、情報処理システム1の構成の一例を示す図である。
【0023】
情報処理システム1は、交流連系系統の系統慣性を推定する。
【0024】
ここで、交流連系系統は、1つ以上の発電機を含み、これら1つ以上の発電機による同期発電が行われる交流電力系統のことである。例えば、日本における中部、北陸、関西、中国、四国、九州から成る範囲の交流電力系統(中西系統と呼ばれることがある)は、交流連系系統の一例である。交流連系系統の系統慣性は、交流連系系統に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体(すなわち、発電機の回転子、タービン等)の慣性モーメントの総和のことである。以下では、一例として、情報処理システム1が、図1に示した交流連系系統Rの系統慣性を推定する場合について説明する。
【0025】
交流連系系統Rは、1つ以上の発電機として、発電機PP1~発電機PP4の4つの発電機を含む。交流連系系統Rでは、これら4つの発電機による同期発電が行われる。また、交流連系系統Rでは、これら4つの発電機それぞれの回転体は、すべて同期回転し、系統周波数として1つの周波数を作る。ここで、系統周波数は、回転体の回転についての周波数であるが、交流連系系統Rに含まれる地点のうち系統周波数が測定される地点において測定される電力の周波数と実用上等価であることが知られている。このため、系統周波数の測定は、当該電力の周波数を測定することによって行われる。なお、交流連系系統Rには、上記の4つの発電機に加えて、変電所等の他の設備が含まれている。しかしながら、図1では、図を簡略化するため、当該他の設備が省略されている。また、交流連系系統Rは、3つ以下の発電機を含む構成であってもよく、5つ以上の発電機を含む構成であってもよい。
【0026】
発電機PP1~発電機PP4のそれぞれは、例えば、火力発電、水力発電、原子力発電、太陽光発電、地熱発電、潮力発電等により電力の供給を行う発電機である。発電機PP1~発電機PP4のうちの一部又は全部は、互いに同じ種類の発電により電力の供給を行う発電機であってもよく、互いに異なる種類の発電により電力の供給を行う発電機であってもよい。
【0027】
また、情報処理システム1は、RoCoF(Rate of Change of Frequency)法に基づく方法により、交流連系系統Rの系統慣性を推定する。
【0028】
RoCoF法は、系統周波数が動揺した場合における系統周波数についてのRoCoF(すなわち、系統周波数の変化率)を推定し、推定したRoCoFに基づいて、交流連系系統の系統慣性を推定する方法のことである。一般的な交流連系系統において、系統周波数は、通常、時間的に小さく動揺しながらも、常に一定の範囲内の値を保つように制御されている。これは、交流連系系統Rについても同様である。このため、RoCoF法により交流連系系統の系統慣性を推定するために用いるRoCoFを得るためには、当該範囲から逸脱するほど系統周波数が大きく変化する必要がある。そこで、RoCoF法による交流連系系統Rの系統慣性の推定では、交流連系系統Rからの発電機の脱落、交流連系系統に接続される負荷の脱落等のイベントが生じた場合における系統周波数についてのRoCoFが用いられることが多い。何故なら、当該場合、系統周波数は、ランプ状(1次関数的)に大きく変化することが知られているからである。これは、当該場合、測定地点において測定される電力が、ステップ状(階段関数状)に大きく変化するためである。測定地点は、交流連系系統Rに含まれる地点のうち系統周波数が測定される地点のことであり、例えば、変電所等である。
【0029】
ここで、交流連系系統Rにおいてイベントが生じた場合、イベントによる系統周波数の動揺の仕方(例えば、系統周波数についてのRoCoF)は、交流連系系統Rに含まれる4つの発電機についての発電機間動揺等により、互いに異なる複数の測定地点のそれぞれ毎に異なることが知られている。このため、ある特定の1つの地点を測定地点として測定された系統周波数に基づいて、RoCoF法により交流連系系統Rの系統慣性を推定すると、交流連系系統Rの系統慣性を精度よく推定することができないことがある。
【0030】
これに対し、交流連系系統R内の予め決められた複数の測定地点のそれぞれにおいて系統周波数を測定し、当該複数の測定地点毎の系統周波数の加重平均に基づいて、RoCoF法により交流連系系統Rの系統慣性を精度よく推定できることが知られている。しかしながら、このような方法の加重平均における理想的な重みは、測定地点のそれぞれが代表する発電機群の慣性モーメントの合計に比例した係数として決められる。ここで、重みの合計が1でなければならないことから、このような加重平均で必要なことは、測定地点別の慣性モーメントの比である。しかしながら、一般的に、系統慣性の推定が必要な場合において、このような比は、未知である。その結果、RoCoF法により交流連系系統Rの系統慣性の推定精度を向上させるために必要な適切な重み係数の設定が困難であるとともに、重み係数の設定に人の主観が入り込む場合があり、客観性に乏しい場合があった。
【0031】
そこで、情報処理システム1は、交流連系系統R内の予め決められた複数の測定地点のそれぞれ毎に、時刻毎の系統周波数を示す周波数情報を取得する。情報処理システム1は、取得した複数の周波数情報に基づいて、これら複数の測定地点のそれぞれにおいて測定された系統周波数の時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する。例えば、当該複数の測定地点が、交流連系系統R内の予め決められた第1地点と、交流連系系統R内の予め決められた第2地点との2つの地点である場合、情報処理システム1は、第1地点における電力を第1電力とし、第1電力の周波数を第1周波数とし、第2地点における電力を第2電力とし、第2電力の周波数を第2周波数とし、時刻毎の第1周波数を示す第1周波数情報と、時刻毎の第2周波数を示す第2周波数情報とを取得する。そして、情報処理システム1は、取得した第1周波数情報と、取得した第2周波数情報とに基づいて、第1周波数と第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する。また、例えば、当該複数の地点が、交流連系系統R内の予め決められた第1地点と、交流連系系統R内の予め決められた第2地点と、交流連系系統R内の予め決められた第3地点との3つの地点である場合、情報処理システム1は、第1地点における電力を第1電力とし、第1電力の周波数を第1周波数とし、第2地点における電力を第2電力とし、第2電力の周波数を第2周波数とし、第3地点における電力を第3電力とし、第3電力の周波数を第3周波数とし、時刻毎の第1周波数を示す第1周波数情報と、時刻毎の第2周波数を示す第2周波数情報と、時刻毎の第3周波数を示す第3周波数情報とを取得する。そして、情報処理システム1は、取得した第1周波数情報と、取得した第2周波数情報と、取得した第3周波数情報とに基づいて、第1周波数と第2周波数と第3周波数との加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する。これにより、情報処理システム1は、交流連系系統R内の予め決められた複数の測定地点において測定された系統周波数に基づくRoCoF法による交流連系系統Rの系統慣性の推定精度を向上させることができる。
【0032】
以下では、一例として、交流連系系統R内の予め決められた複数の測定地点が、交流連系系統R内の予め決められた第1地点、第2地点、第3地点のそれぞれである場合について説明する。なお、第1地点、第2地点、第3地点のそれぞれは、互いに重複しない地点である。また、第1地点、第2地点、第3地点のそれぞれは、後述するように、交流連系系統R内において系統周波数を測定可能な地点のうち、イベント発生時における動揺の仕方が互いに異なる系統周波数を測定可能な地点である。例えば、第1地点、第2地点、第3地点のそれぞれは、変電所であるが、変電所に限られるわけではない。
【0033】
情報処理システム1は、測定装置11と、測定装置12と、測定装置13と、情報処理装置20を備える。
【0034】
測定装置11は、交流連系系統R内の予め決められた第1地点に設けられる。測定装置11は、第1地点における時刻毎の系統周波数を測定する。測定装置11は、例えば、PMU(Phasor Measurement Unit)である。なお、測定装置11は、PMUに代えて、系統周波数を測定可能な他の装置であってもよい。以下では、説明の便宜上、測定装置11により測定された系統周波数を、第1周波数と称し、第1周波数を示す情報を、第1周波数情報と称して説明する。
【0035】
測定装置11は、無線又は有線により、情報処理装置20と通信可能に接続される。
【0036】
測定装置12は、交流連系系統R内の予め決められた第2地点に設けられる。測定装置12は、第2地点における時刻毎の系統周波数を測定する。測定装置12は、例えば、PMUである。なお、測定装置12は、PMUに代えて、系統周波数を測定可能な他の装置であってもよい。以下では、説明の便宜上、測定装置12により測定された系統周波数を、第2周波数と称し、第2周波数を示す情報を、第2周波数情報と称して説明する。
【0037】
測定装置12は、無線又は有線により、情報処理装置20と通信可能に接続される。
【0038】
測定装置13は、交流連系系統R内の予め決められた第3地点に設けられる。測定装置13は、第3地点における時刻毎の系統周波数を測定する。測定装置13は、例えば、PMUである。なお、測定装置13は、PMUに代えて、系統周波数を測定可能な他の装置であってもよい。以下では、説明の便宜上、測定装置13により測定された系統周波数を、第3周波数と称し、第3周波数を示す情報を、第3周波数情報と称して説明する。
【0039】
測定装置13は、無線又は有線により、情報処理装置20と通信可能に接続される。
【0040】
情報処理装置20は、時刻毎に測定装置11により測定された第1周波数を示す第1周波数情報を、測定装置11から取得する。情報処理装置20は、取得した第1周波数情報を時刻毎に記憶する。また、情報処理装置20は、時刻毎に測定装置12により測定された第2周波数を示す第2周波数情報を、測定装置12から取得する。情報処理装置20は、取得した第2周波数情報を時刻毎に記憶する。また、情報処理装置20は、時刻毎に測定装置13により測定された第3周波数を示す第3周波数情報を、測定装置13から取得する。情報処理装置20は、取得した第3周波数情報を時刻毎に記憶する。
【0041】
情報処理装置20は、このようにして取得した第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報の3つの周波数情報に基づいて、第1周波数と第2周波数と第3周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形フィットするフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する。より具体的には、情報処理装置20は、後述する目的関数を最小化させる最適化問題を解くことによって、当該フィッティング関数と、当該重みの比とを一緒に推定する。
【0042】
そして、情報処理装置20は、推定したフィッティング関数に応じたRoCoFを推定する。情報処理装置20は、推定したRoCoFに基づくRoCoF法により、交流連系系統Rの系統慣性を推定する。これにより、情報処理装置20は、複数の測定地点において測定された系統周波数に基づくRoCoF法による交流連系系統Rの系統慣性の推定精度を向上させることができる。
【0043】
ここで、フィッティング関数と重みの比との推定を行う際、情報処理装置20は、予め記憶した第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報のそれぞれから、受け付けた操作に応じた期間の第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報のそれぞれを読み出す。そして、情報処理装置20は、読み出した第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報に基づいて、第1周波数と第2周波数と第3周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する。例えば、情報処理装置20は、受け付けた操作に応じて、第1時刻、第2時刻のそれぞれを特定する。そして、情報処理装置20は、特定した第1時刻から、特定した第2時刻までの対象期間における第1周波数情報を、記憶部22に予め記憶された第1周波数情報から読み出す。また、情報処理装置20は、対象期間における第2周波数情報を、記憶部22に予め記憶された第2周波数情報から読み出す。また、情報処理装置20は、対象期間における第3周波数情報を、記憶部22に予め記憶された第3周波数情報から読み出す。第1時刻は、イベントによる系統周波数の動揺が始まったと推定される時刻のことである。第2時刻は、イベントによる系統周波数の動揺が終わったと推定される時刻のことである。なお、情報処理装置20は、例えば、予め記憶した第1周波数情報~第3周波数情報のうちの一部又は全部と、機械学習のモデル等とに基づいて、第1時刻の候補、第2時刻の候補のそれぞれを推定し、推定した第1時刻の候補を第1時刻として特定し、推定した第2時刻の候補を第2時刻として特定する構成であってもよい。すなわち、上記において説明したユーザーから受け付けた操作に応じた第1時刻、第2時刻の特定は、機械学習等の機能によりユーザーの介在なしに自動的に、又は、ユーザーによる部分的な介在を伴い半自動的に、行われてもよい。
【0044】
<フィッティング関数と重みの比それぞれの推定方法>
以下、前述のフィッティング関数と重みの比とのそれぞれの推定方法について説明する。
【0045】
ここで、第1時刻から第2時刻までの期間をn-1等分し、第1時刻を時刻tとし、第2時刻を時刻tとする。これにより、前述の対象機間の任意の時刻を、tによって表すことができる。ただし、nは、1以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。また、iは、1以上n以下の閉区間に含まれる整数のうちのいずれかの整数を示す。
【0046】
ある1つの測定地点X1(例えば、第1地点~第3地点のいずれか)において測定される系統周波数の波形にフィットするフィッティング関数は、以下の式(1)によって表される目的関数Jを最小化する最適化問題を解くことにより推定される。
【0047】
【数1】
【0048】
上記の式(1)の括弧内第1項は、対象期間内に測定地点X1において時刻tに測定された系統周波数を示す。式(1)の括弧内第2項は、対象期間内に測定地点X1において測定された系統周波数の波形にフィットさせるフィッティング関数の値のうち、時刻tにおける値を示す。このフィッティング関数は、例えば、指数関数、2次以上の多項式等である。以下では、一例として、以下の式(2)に示すように、このフィッティング関数が5次の多項式である場合について説明する。
【0049】
【数2】
【0050】
上記の式(2)に示したa、a、a、a、a、aのそれぞれは、5次の多項式における実数係数である。ここで、n個の測定地点(例えば、第1地点~第3地点の3つの地点)のそれぞれにおいて測定される系統周波数の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数は、以下の式(3)に示す目的関数Jを最小化する最適化問題を解くことにより推定される。ここで、nは、2以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。
【0051】
【数3】
【0052】
上記の式(3)は、式(1)を拡張した式である。式(3)の1段目右辺の括弧内第1項は、n個の測定地点(例えば、第1地点~第3地点の3つの地点)のそれぞれにおいて時刻tに測定された系統周波数の加重平均の結果として得られる周波数を示す。式(3)に示したwは、当該加重平均において、n個の測定地点のうちj番目の測定地点において測定された系統周波数に乗じる重みである。すなわち、式(3)においてwが乗算されている変数は、n個の測定地点のうちのj番目の測定地点において測定された系統周波数を示す。この目的関数Jを最小化する最適化問題において、未知数は、以下の式(4)及び式(5)に示すように、6個の実数係数と、n個の重みとのそれぞれである。すなわち、この最適化問題を解くことにより、前述のフィッティング関数の推定を行うとともに、当該加重平均における重みの比を推定することができる。
【0053】
【数4】
【0054】
【数5】
【0055】
上記の式(3)に示した目的関数Jは、行列とベクトルとを用いて、以下の式(6)及び式(7)のように表すことができる。
【0056】
【数6】
【0057】
【数7】
【0058】
ここで、上記の式(6)は、n個の測定地点のそれぞれにおいて測定された系統周波数の加重平均における重みの合計が1にならなければならないという条件によって重みwを消去することにより、以下の式(8)及び式(9)のように表し直すことができる。
【0059】
【数8】
【0060】
【数9】
【0061】
上記の式(8)は、以下の式(10)及び式(11)のように更に変形することができる。
【0062】
【数10】
【0063】
【数11】
【0064】
上記の式(10)は、最小二乗法の定式化として一般的な二次形式によって表されている。このため、式(10)を最小化する解は、以下の式(12)のように得られる。
【0065】
【数12】
【0066】
なお、上記の式(9)に示した行列B(式(9)では、行列Bの「B」は、太字によって示されている)の各要素を見れば分かる通り、n個の測定地点のそれぞれは、交流連系系統R内の地点のうち、イベント発生時における動揺の仕方が互いに異なる系統周波数を測定可能な地点でなければならない。何故なら、イベント発生時における動揺の仕方が互いに同じ系統周波数を測定可能な2つ以上の地点がn個の測定地点に含まれている場合、行列Bは、フルランクにならなくなってしまうためである。
【0067】
また、イベントが発生したと推定される時刻をtとし、上記の目的関数を最小化する最適化問題における未知数に時刻tが含まれる構成であってもよい。この場合、第1時刻である時刻tから時刻tまでの期間における系統周波数の波形が直線であると仮定すると、上記の式(10)によって表される目的関数Jは、以下の式(13)に示した目的関数JMeのように拡張することができる。
【0068】
【数13】
【0069】
ただし、上記の式(13)における行列A、行列Bのそれぞれ(式(13)では、行列Aの「A」と、行列Bの「B」は、太字によって示されている)は、以下の式(14)のように表される。
【0070】
【数14】
【0071】
上記の式(13)は、目的関数Jと同様に、以下の式(15)のように表すことができ、これを最小化する解として以下の式(16)が得られる。
【0072】
【数15】
【0073】
【数16】
【0074】
式(16)を見て分かる通り、目的関数JMeの解は、目的関数Jの解である式(12)と同様の形をしている。しかしながら、式(14)での行列Aには、上記のtが含まれている。このため、最小化される目的関数JMeの値はtに依存する。すなわち、この目的関数は、JMe(t)と書き表すことができる。イベントが発生したと推定される時刻の候補(例えば、tとして±0.2秒の範囲にある離散的に定義された時刻群)のそれぞれをtとして漏れなく用いて、それぞれの候補に対応するJMeを求めた場合において、JMeの値が最小となるtが、求めるべきtである。このとき、n個の測定地点のそれぞれ毎の重みと多項式係数も得られている。従って、このようにして、当該重みと、多項式におけるフィッティングパラメーターと、イベント発生時刻とを客観的に決めることができる。なお、このようにtを未知数として求める場合には、tは、イベントが発生したと推定される時刻の候補の最小の時刻と同じ、又は、当該時刻より過去の時刻である必要がある。
【0075】
ここで、上記の式(15)の左辺は、上記の式(10)において太字のAの上に「 ̄」が付されている変数により表されている行列(以下、行列Aバーと称す)が式(11)によって定義されるのと同様に、以下の式(17)のように定義される。
【0076】
【数17】
【0077】
なお、上記の式(17)の右辺の行列Aと、式(11)の右辺の行列Aとは、異なる行列である。また、式(15)のベクトルb及び式(17)の行列Bは、以下の式(18)のように定義される。
【0078】
【数18】
【0079】
<重みの比の解釈>
以下、上記において説明した推定方法により推定される重みの比の解釈について説明する。当該重みの比は、交流連系系統R内における領域(地域)毎の慣性モーメントの比として解釈することが妥当であると考えられる。すなわち、以下では、当該重みの比が、交流連系系統R内における領域毎の慣性モーメントの比として解釈することが妥当である理由について説明する。ここで、交流連系系統R内におけるある領域の慣性モーメントは、当該領域内に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和のことである。このような解釈が可能である場合、当該領域の慣性モーメントは、当該領域に含まれる測定地点において測定された系統周波数と対応付けられる。すなわち、例えば、n個の測定地点が前述の第1地点、第2地点、第3地点の3つの測定地点である場合、第1周波数は、第1地点を含む領域であり、且つ、第2地点及び第3地点を含まない第1領域に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和である第1慣性と対応付けられる。また、当該場合、第2周波数は、第2地点を含む領域であり、且つ、第1地点及び第3地点を含まない第2領域に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和である第2慣性と対応付けられる。また、当該場合、第3周波数は、第3地点を含む領域であり、且つ、第1地点及び第2地点を含まない第3領域に含まれる1つ以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和である第3慣性と対応付けられる。このような場合、第1周波数と第2周波数と第3周波数との加重平均において用いられる重みの比のうち、第1周波数に乗じられる重みの比は、第1慣性~第3慣性の和によって第1慣性を除した値となる。また、当該場合、第1周波数と第2周波数と第3周波数との加重平均において用いられる重みの比のうち、第2周波数に乗じられる重みの比は、第1慣性~第3慣性の和によって第2慣性を除した値となる。また、当該場合、第1周波数と第2周波数と第3周波数との加重平均において用いられる重みの比のうち、第3周波数に乗じられる重みの比は、第1慣性~第3慣性の和によって第3慣性を除した値となる。なお、第1領域に含まれる1つ以上の発電機と、第2領域に含まれる1つ以上の発電機と、第3領域に含まれる1つ以上の発電機との間には、重複がない。ここで、交流連系系統Rに含まれる4つの発電機のそれぞれ自身(又は当該4つの発電機それぞれの近傍)が測定地点である場合、交流連系系統R内における領域毎の慣性モーメントの比は、当該4つの発電機それぞれの慣性モーメントの比のことである。
【0080】
このような解釈の妥当性を検証するため、以下では、交流連系系統Rにk個の発電機が含まれていると仮定する。また、以下では、交流連系系統Rに含まれるk個の発電機のそれぞれについての背後電圧及びインピーダンスが一定であり、且つ、交流連系系統Rに含まれるk個の発電機のそれぞれについての端子電圧及び周波数が制御されていないと仮定する。この場合、交流連系系統Rに含まれるk個の発電機それぞれの状態変数は、回転速度と位相角との2つである。また、以下では、交流連系系統Rの電力供給システムが安定であり、且つ、減衰振動モードに重複がないと仮定する。
【0081】
以上のような仮定を前提として、k個の発電機を含む物理系を表すバネ質点系では、零固有値1個と、指数関数的な減衰モードである指数減衰モードに対応する固有値1個と、減衰振動モードに対応する固有値(k-1)組とが、固有モードに対応する固有値として存在する。この場合、k個の発電機それぞれの回転速度(すなわち、周波数)に現れる固有モードの数は、指数減衰モード1個と、減衰振動モード(k-1)個との計k個である。
【0082】
このようなバネ質点系の定常状態にステップ状の外乱(例えば、前述のイベント等のように電力を変動させる現象)が与えられた場合、当該外乱が与えられた直後におけるk個の発電機それぞれの周波数の動揺は、以下に示した式(19)のように、前述のk個の固有モードの和となる。
【0083】
【数19】
【0084】
ここで、上記の式(19)の太字の「f」が用いられたf(t)は、k個の発電機それぞれの周波数の時刻tにおける値を成分として持つベクトルである。また、式(19)の太字の「T」が用いられたTは、k行k列の行列である。また、式(19)の太字の「T」が用いられたTは、k行(k-1)列の行列である。また、式(19)におけるσは、指数減衰モードにおける減衰係数である。また、式(19)におけるσ、σ、…、σのそれぞれは、各固有モードに対応する減衰係数である。また、式(19)におけるω、ω、…、ωのそれぞれは、各固有モードに対応する振動角周波数である。これらの行列及び定数は、交流連系系統Rの電力供給システム固有の特性を示しているだけではなく、交流連系系統Rに与えられた外乱の性状、当該電力供給システムへの当該外乱の関わり方等を示している。なお、上記の式(19)では、測定地点毎に振動の位相が異なり得ることを考慮して、正弦波と余弦波とが分けて記述されている。そして、式(19)の右辺第1項は、指数減衰モードが含まれているため、各固有モードの各測定地点への関わりを主として表している。従って、式(19)の右辺第2項は、振動成分の位相を左右する従属的・補助的な項と解釈される。
【0085】
一方、交流連系系統Rの慣性中心の周波数fCOIは、k個の発電機それぞれの回転速度(又は周波数)を、k個の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの比を重みとして加重平均することによって得られる。すなわち、周波数fCOIは、交流連系系統Rを代表する周波数である。ここでfCOIに発電機間の振動モードが現れず単調に変化することを説明する。ここで、k個の発電機のうちのw番目の発電機の定格回転時の運動エネルギーをEによって表すと、当該w番目の発電機の周波数fについての運動方程式は、以下の式(20)のように表すことができる。ここで、wは、1~kのうちのいずれかの整数であれば、如何なる整数であってもよい。
【0086】
【数20】
【0087】
ここで、上記の式(20)に示したf(t)は、k個の発電機のうちのw番目の発電機の時刻tにおける周波数である。また、式(20)に示したΔPは、w番目の発電機が供給する電力の変化量であり、外乱による電力の変化量である。また、式(20)に示したfは、交流連系系統Rの公称の系統周波数である。
【0088】
上記の式(20)のwについて左辺と右辺それぞれの和を取ると、以下の式(21)及び式(22)が得られる。
【0089】
【数21】
【0090】
【数22】
【0091】
従って、交流連系系統Rの慣性中心の周波数fCOIは、以下の式(23)及び式(24)のように表すことができる。
【0092】
【数23】
【0093】
【数24】
【0094】
ここで、上記の式(21)が系統全体の動きを表す微分方程式である。そして、その外乱は、交流連系系統R全体の電力の変化である。この微分方程式の解は、例えば、ΔPのステップ変化に対して直線状に変化する。なお、上記において記載していないが、より一般的には、式(21)の右辺に、系統周波数の変化分に比例する制動項と呼ばれる項が存在する。このため、この微分方程式の解は、指数減衰関数となる。また、ここでは、上記の式(23)により、上記のような発電機間振動モードを持たない性質を持つ慣性中心の周波数fCOIが、個別の発電機の周波数の加重平均であることと、その加重平均における重み係数が、個々の発電機の慣性モーメントに比例するものであることとが確認できている。言い換えれば,交流連系系統Rの慣性中心の周波数fCOIは、k個の発電機を含む物理系を表すバネ質点系の重心の速度に相当する。このアナロジーにおいても、このバネ質点系内部の減衰振動モードは、周波数fCOIを表す式に現れないはずである。そして、当該式には、指数減衰モードが現れるはずである。
【0095】
ここで、上記の式(19)を用いて、以下の式(25)のように、ある適当な重み係数w(wは太字)を用いて求めた交流連系系統Rの加重平均周波数の1つとしてf(t)を考える。
【0096】
【数25】
【0097】
ここで、上記の式(25)において、f(t)に振動モードが含まれていないと仮定する。このように仮定することは、以下の式(26)により示される状況が成り立っていることを意味する。なお、定数cは、適当な定数である(後に確定する)。
【0098】
【数26】
【0099】
従って、上記の式(26)に基づいて、以下の式(27)が成り立つ。
【0100】
【数27】
【0101】
上記の式(27)において太字の「w」が用いられた重みベクトルwは、その要素の合計が1である。このため、前述の任意の定数c1は、重みベクトルwと行列Tとから従属的に決まる。換言すると、これは、上記の式(27)を右辺から左辺を求める式として見た場合、k個の発電機を含む物理系を表すバネ質点系内部の減衰振動モードを相殺する重みベクトルwが、行列Tに基づいて一意に決まることを示している。更に換言すると、このような減衰振動モードを相殺するような重みベクトルwが得られた場合、当該重みベクトルwは、当該重みベクトルwを見つける方法が如何なる方法であれ、減衰振動モードを相殺する唯一のwである。
【0102】
以上のことから、振動成分を含まないようなf(t)が重みwにより得られた場合、以下の式(28)及び式(29)が成り立つ。
【0103】
【数28】
【0104】
【数29】
【0105】
すなわち、一定の条件下では、上記において説明した推定方法により推定される重みの比は、交流連系系統R内における領域毎の慣性モーメントの比として解釈することが妥当であると考えられる。なお、この解釈の妥当性は、後述する数値的検証の結果とも矛盾しないものとなっている。
【0106】
<情報処理装置のハードウェア構成>
以下、図2を参照し、情報処理装置20のハードウェア構成について説明する。図2は、情報処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0107】
情報処理装置20は、例えば、プロセッサー21と、記憶部22と、入力受付部23と、通信部24と、表示部25を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、情報処理装置20は、通信部24を介して測定装置11、測定装置12、測定装置13等と通信を行う。
【0108】
プロセッサー21は、情報処理装置20の全体を制御する。プロセッサー21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサー21は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の他のプロセッサーであってもよい。プロセッサー21は、記憶部22に格納された各種のプログラムを実行する。
【0109】
記憶部22は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部22は、情報処理装置20に内蔵されるものに代えて、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部22は、情報処理装置20が処理する各種の情報、各種の画像、各種のプログラム等を格納する。
【0110】
入力受付部23は、キーボード、マウス、タッチパッド等の入力装置である。なお、入力受付部23は、表示部25と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0111】
通信部24は、例えば、アンテナ、USB等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0112】
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイパネル、あるいは、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等を含む表示装置である。
【0113】
<情報処理装置の機能構成>
以下、図3を参照し、情報処理装置20の機能構成について説明する。図3は、情報処理装置20の機能構成の一例を示す図である。
【0114】
情報処理装置20は、記憶部22と、入力受付部23と、通信部24と、表示部25と、制御部26を備える。
【0115】
制御部26は、情報処理装置20の全体を制御する。制御部26は、例えば、取得部261と、推定部262と、表示制御部263と、記憶制御部264を備える。制御部26が備えるこれらの機能部は、例えば、プロセッサー21が、記憶部22に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0116】
取得部261は、各種の情報を取得する。例えば、取得部261は、測定装置11から第1周波数情報を取得する。また、例えば、取得部261は、測定装置12から第2周波数情報を取得する。また、例えば、取得部261は、測定装置13から第3周波数情報を取得する。
【0117】
推定部262は、各種の推定を行う。例えば、推定部262は、交流連系系統Rの系統慣性を推定する。
【0118】
表示制御部263は、各種の画像を生成する。表示制御部263は、生成した画像を、表示部25に表示させる。
【0119】
記憶制御部264は、取得部261により取得された各種の情報を、記憶部22に記憶させる。
【0120】
<情報処理装置が系統慣性を推定する処理>
以下、図4を参照し、情報処理装置20が交流連系系統Rの系統慣性を推定する処理について説明する。図4は、情報処理装置20が交流連系系統Rの系統慣性を推定する処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、情報処理装置20が、図4に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、当該処理を開始する操作を受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、情報処理装置20のユーザーが、当該タイミングにおいて、第1時刻、第2時刻のそれぞれを決めている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、当該タイミングよりも過去の時刻毎の第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報のそれぞれが記憶部22に記憶されている場合について説明する。なお、当該ユーザーは、例えば、第1周波数、第2周波数、第3周波数のうちの一部又は全部の時間的な変化を示すグラフの波形に基づいて、目視によって第1時刻及び第2時刻のそれぞれを決定してもよく、他の方法により第1時刻及び第2時刻を決定してもよい。
【0121】
推定部262は、推定期間、第1時刻、第2時刻のそれぞれを入力する操作を受け付けるまで待機する(ステップS110)。
【0122】
推定部262は、第1時刻、第2時刻のそれぞれを入力する操作を受け付けたと判定した場合(ステップS110-YES)、第1時刻、第2時刻のそれぞれを特定する(ステップS120)。図4では、ステップS120の処理を、「時刻特定」として示している。
【0123】
次に、推定部262は、ステップS120において特定した第1時刻及び第2時刻に基づいて、対象期間を算出する。そして、推定部262は、算出した対象期間における第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報のそれぞれを記憶部22から抽出して読み出す(ステップS130)。
【0124】
次に、推定部262は、ステップS130において記憶部22から読み出した第1周波数情報、第2周波数情報、第3周波数情報の3つの周波数情報に基づいて、第1周波数と第2周波数と第3周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットさせるフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する(ステップS140)。なお、ステップS140の推定を行う方法については、既に説明済であるため、説明を省略する。
【0125】
次に、推定部262は、ステップS140における推定結果として得られたフィッティング関数に基づいて、当該フィッティング関数に応じたRoCoFを推定する(ステップS150)。ステップS150の推定を行う方法については、既に説明済であるため、説明を省略する。なお、第1周波数と第2周波数と第3周波数との時刻毎の加重平均における重みの比は、前述した通り、第1領域内に含まれる1つ以上の発電機(例えば、発電機PP1)それぞれの回転体の慣性モーメントの総和と、第2領域内に含まれる1つ以上の発電機(例えば、発電機PP2及び発電機PP4)それぞれの回転体の慣性モーメントの総和と、第3領域内に含まれる1つ以上の発電機(例えば、発電機PP3)それぞれの回転体の慣性モーメントの総和との比と解釈することができる。このような解釈の下では、当該RoCoFは、交流連系系統Rの慣性中心の周波数についてのRoCoFであると解釈することができる。
【0126】
次に、推定部262は、ステップS150において推定したRoCoFに基づいて、RoCoF法により、交流連系系統Rの系統慣性を推定する(ステップS160)。
【0127】
次に、表示制御部263は、ステップS160において推定部262が推定した系統慣性を示す情報を、表示部25に表示させ(ステップS170)、図4に示したフローチャートの処理を終了する。
【0128】
<フィッティング関数の推定の数値的検証>
以下、図4に示したフローチャートの処理によって行われたフィッティング関数の推定の数値的検証について説明する。なお、当該数値的検証には、数式モデルで表現された三つの発電機で構成するモデル系統が使用されている。ここで、図5は、モデル系統を説明するための図である。今回使用したモデル系統は、発電機G1~発電機G3の3つの発電機と、負荷L1及び負荷L2の2つの負荷とが図5に示したように接続された交流連系系統Xを数値的に再現している。発電機G1には、計測ユニットP1が設けられている。発電機G2には、計測ユニットP2が設けられている。発電機G3には、計測ユニットP3が設けられている。計測ユニットP1~計測ユニットP3のそれぞれは、PMUである。このようなモデル系統において、発電機G2に機械入力として外乱EXを与える。この外乱EXは、このモデル系統における擬似的なイベントの一例である。
【0129】
ここで、計測ユニットP1が設けられている発電機G1は、前述の第1地点の一例である。すなわち、計測ユニットP1により測定される系統周波数は、第1周波数の一例である。計測ユニットP2が設けられている発電機G2は、第2地点の一例である。すなわち、計測ユニットP2により測定される系統周波数は、第2周波数の一例である。計測ユニットP3が設けられている発電機G3は、第3地点の一例である。すなわち、計測ユニットP3により測定される系統周波数は、第3周波数の一例である。
【0130】
図6は、本実施形態において説明した推定方法によるフィッティング関数の推定結果の一例を示す図である。
【0131】
図6に示したグラフの横軸は、対象期間における第1時刻からの経過時間を示す。また、当該グラフの縦軸は、推定された周波数を示す。また、当該グラフ上にプロットされた曲線PL1は、対象期間内における第1周波数の波形(時間的な変化)を示す。また、当該グラフ上にプロットされた曲線PL2は、対象期間内における第2周波数の波形(時間的な変化)を示す。また、当該グラフ上にプロットされた曲線PL3は、対象期間内における第3周波数の波形(時間的な変化)を示す。そして、当該グラフ上にプロットされた曲線FF1は、第1周波数と第2周波数と第3周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数として推定されたフィッティング関数を示す。なお、加重平均における重みは、フィッティング誤差が最小となるようにフィッティング関数とともに推定されている。
【0132】
図6に示した通り、推定されたフィッティング関数は、擬似的なイベントとして外乱を発生させた時刻1[s]から先の期間において、曲線PL1~曲線PL3それぞれの中心を通っている(すなわち、曲線PL1~曲線PL3の平均になっている)ように見える。これは、情報処理装置20による重み係数及びフィッティング関数の推定精度が高いことを意味している。すなわち、情報処理装置20は、複数の測定地点において測定された系統周波数に基づくRoCoF法による交流連系系統Rの系統慣性の推定精度を向上させることができる。
【0133】
一方、図7は、図6に示したフィッティング関数とともに、交流連系系統Xの慣性中心の周波数の波形を表示させたグラフの一例を示す図である。
【0134】
図7に示したグラフの横軸は、対象期間における第1時刻からの経過時間を示す。また、当該グラフの縦軸は、推定された周波数を示す。また、当該グラフ上にプロットされた曲線FF2は、交流連系系統Xの慣性中心の周波数の波形を示す。なお、交流連系系統Xの慣性中心の周波数は、数値計算において、発電機G1~発電機G3それぞれの回転体の慣性モーメントが既知であるため、モデル系統において算出することが可能である。
【0135】
図7に示した通り、推定されたフィッティング関数は、交流連系系統Xの慣性中心の周波数の波形と重なっている。この結果は、フィッティング関数とともに推定された重みの比が、交流連系系統X内における領域(地域)毎の慣性モーメントの比として解釈することが妥当であることを意味している。
【0136】
<情報処理装置が測定装置から情報を取得する処理>
以下、図8を参照し、情報処理装置20が測定装置11から情報を取得する処理を例に挙げて、情報処理装置20が測定装置11、測定装置12、測定装置13のそれぞれから情報を取得する処理について説明する。また、以下では、一例として、情報処理装置20が測定装置11から第1周波数情報とともに電力情報を取得する場合について説明する。図8は、情報処理装置20が測定装置11から第1周波数情報と電力情報とを取得する処理の流れの一例を示す図である。情報処理装置20は、例えば、測定装置11から情報を取得する処理を開始する操作を受け付けた場合、測定装置11から情報を取得する処理を終了する操作を受け付けるまでの間、所定のサンプリング周期が経過する毎に、図8に示したフローチャートの処理を繰り返し行う。
【0137】
取得部261は、測定装置11から第1周波数情報及び電力情報を取得する(ステップS210)。図8では、ステップS210の処理を、「情報取得」として示している。なお、取得部261は、第1周波数情報及び電力情報を取得する要求を測定装置11へ出力することにより、第1周波数情報及び電力情報を測定装置11から取得する構成であってもよい。また、取得部261は、測定装置11から出力された第1周波数情報及び電力情報を測定装置11から取得する構成であってもよい。
【0138】
次に、記憶制御部264は、ステップS210において取得部261により取得された第1周波数情報及び電力情報を、記憶部22に記憶させ(ステップS220)、処理を終了する。
【0139】
なお、情報処理装置20は、第1周波数情報と電力情報とのそれぞれを異なるタイミングで取得する構成であってもよい。また、情報処理装置20は、第1周波数情報と電力情報とのそれぞれを異なるタイミングで記憶部22に記憶させる構成であってもよい。
【0140】
以上のように、実施形態に係る情報処理装置(上記において説明した例では、情報処理装置20)は、複数の発電機(上記において説明した例では、発電機PP1~発電機PP4)を含む交流連系系統(上記において説明した例では、交流連系系統R)内の予め決められた第1地点における時刻毎の電力の周波数を第1周波数として示す第1周波数情報と、交流連系系統内の予め決められた第2地点における時刻毎の電力の周波数を第2周波数として示す第2周波数情報とに基づいて、第1周波数と第2周波数との時刻毎の加重平均の結果として得られる周波数の波形にフィットするフィッティング関数とともに、当該加重平均における重みの比を推定する。これにより、情報処理装置は、複数の地点において測定された周波数に基づくRoCoF法による交流連系系統の系統慣性の推定精度を向上させることができる。
【0141】
また、情報処理装置は、第1周波数及び第2周波数を変化させるイベントが生じたと推定される対象期間における第1周波数情報と、対象期間における第2周波数情報とに基づいて、フィッティング関数とともに重みの比を推定する、構成が用いられてもよい。
【0142】
また、情報処理装置では、重みの比は、複数の発電機のうち第1地点を含む第1領域内に含まれる1以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和と、複数の発電機のうち第2地点を含む第2領域内に含まれる1以上の発電機それぞれの回転体の慣性モーメントの総和との比であり、第1領域に含まれる1以上の発電機と、第2領域に含まれる1以上の発電機との間には、重複がない、構成が用いられてもよい。
【0143】
また、情報処理装置は、最小二乗法に基づいて、フィッティング関数とともに重みの比を推定する、構成が用いられてもよい。
【0144】
また、情報処理装置は、推定したフィッティング関数に基づいて、交流連系系統における慣性中心の周波数についてのRoCoFを推定する、構成が用いられてもよい。
【0145】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0146】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、測定装置11、測定装置12、測定装置13、情報処理装置20等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0147】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0148】
1…情報処理システム、11…測定装置、12…測定装置、13…測定装置、20…情報処理装置、21…プロセッサー、22…記憶部、23…入力受付部、24…通信部、25…表示部、26…制御部、261…取得部、262…推定部、263…表示制御部、264…記憶制御部、PP1、PP2、PP3、PP4…発電機、R…交流連系系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8