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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ケーブル終端検出方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240910BHJP
   H02G 1/12 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
H02G1/12 002
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021011891
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115341
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖人
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 大生
(72)【発明者】
【氏名】和哥山 拓也
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140455(JP,A)
【文献】特開2014-176917(JP,A)
【文献】特開平03-221392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H02G 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状のケーブルの終端を検出するケーブル終端検出方法であって、
互いに交差する2軸をX軸およびZ軸としたとき、
前記X軸に沿う方向に離間して配置され、前記X軸に沿う方向に相対的に移動することができ、共に前記Z軸に沿う方向に開閉する第1把持部および第2把持部を有するハンドを用い、前記第1把持部および前記第2把持部によって前記ケーブルを長手方向に離間した2カ所で把持する把持ステップと、
前記ハンドにより前記ケーブルを把持した状態で、前記ハンドに対して前記ケーブルを前記X軸に沿う方向の前記第1把持部側に相対的に移動させる移動ステップと、
前記第2把持部に前記ケーブルと接触するように配置されている触覚センサーにより前記第2把持部から前記ケーブルが抜けたことを検出し、前記第1把持部と前記第2把持部との間に前記ケーブルの終端が位置することを検出する検出ステップと、
前記ケーブルの終端が前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置するときに前記ハンドと前記ケーブルとの相対的な移動を停止する停止ステップと、
前記第1把持部と前記第2把持部とを相対的に前記X軸に沿って移動させ、前記第2把持部を前記ケーブルの終端よりも前記第1把持部側に位置させる第2把持部移動ステップと、
前記第2把持部によって前記ケーブルを把持する第2把持部把持ステップと、を含むことを特徴とするケーブル終端検出方法。
【請求項2】
前記検出ステップでは、前記触覚センサーに加わる前記X軸に沿う方向の力に基づいて前記第2把持部から前記ケーブルが抜けたことを検出する請求項1に記載のケーブル終端検出方法。
【請求項3】
前記検出ステップでは、前記触覚センサーに加わる前記Z軸に沿う方向の力に基づいて前記第2把持部から前記ケーブルが抜けたことを検出する請求項1または2に記載のケーブル終端検出方法。
【請求項4】
前記X軸および前記Z軸に交差する軸をY軸としたとき、
前記検出ステップでは、前記触覚センサーに加わる前記Y軸に沿う方向の力に基づいて前記ケーブルの状態を検出する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のケーブル終端検出方法。
【請求項5】
前記第2把持部把持ステップの後に、
前記ケーブルの終端に対して所定の作業を行う作業ステップを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載のケーブル終端検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル終端検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ケーブルの終端を検出することのできるロボット装置が記載されている。特許文献1のロボット装置では、把持部でケーブルを把持したまま、把持部をケーブルの終端側にスライドさせ、把持部がケーブルの終端に接続されたコネクターと当接することにより生じる力を検出することによりケーブルの終端を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-176917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような方法では、ケーブルの終端にコネクターのようなケーブルよりも径が大きい部材が配置されていなければ、ケーブルの終端を検出することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のケーブル終端検出方法は、線状のケーブルの終端を検出するケーブル終端検出方法であって、
互いに交差する2軸をX軸およびZ軸としたとき、
前記X軸に離間して配置され、共に前記Z軸に沿う方向に開閉する第1把持部および第2把持部を有するハンドを用い、前記第1把持部および前記第2把持部によって前記ケーブルを長手方向に離間した2カ所で把持する把持ステップと、
前記ハンドにより前記ケーブルを把持した状態で、前記ハンドに対して前記ケーブルを前記X軸に沿う方向の前記第1把持部側に相対的に移動させる移動ステップと、
前記第2把持部に前記ケーブルと接触するように配置されている触覚センサーにより前記第2把持部から前記ケーブルが抜けたことを検出し、前記第1把持部と前記第2把持部との間に前記ケーブルの終端が位置することを検出する検出ステップと、を含む。
【0006】
本発明のハンドは、互いに交差する2軸をX軸およびZ軸としたとき、
前記X軸に沿う方向に相対的に移動し、共に前記Z軸に沿う方向に開閉する第1把持部および第2把持部と、
前記第2把持部に配置されている触覚センサーと、
前記触覚センサーを覆う弾性体と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】好適な実施形態に係るロボットの全体構成を示す斜視図である。
図2図1のロボットが有するハンドを示す斜視図である。
図3図2に示すハンドの指先部分を示す断面図である。
図4図2に示すハンドの指先部分を示す断面図である。
図5】ケーブルの終端検出工程を示すフローチャートである。
図6】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図7】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図8】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図9】終端検出作業中に加わるX軸方向の力を示すグラフである。
図10】終端検出作業中に加わるZ軸方向の力を示すグラフである。
図11】終端検出作業中に加わるY軸方向の力を示すグラフである。
図12】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図13】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図14】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図15】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
図16】ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のケーブル終端検出方法およびハンドを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1は、好適な実施形態に係るロボットの全体構成を示す斜視図である。図2は、図1のロボットが有するハンドを示す斜視図である。図3および図4は、それぞれ、図2に示すハンドの指先部分を示す断面図である。図5は、ケーブルの終端検出工程を示すフローチャートである。図6ないし図8は、それぞれ、ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。図9は、終端検出作業中に加わるX軸方向の力を示すグラフである。図10は、終端検出作業中に加わるZ軸方向の力を示すグラフである。図11は、終端検出作業中に加わるY軸方向の力を示すグラフである。図12ないし図16は、それぞれ、ケーブルの終端検出方法を説明するための斜視図である。
【0010】
なお、以下では、説明の便宜上、図2図4図6図8図12図16において互いに直交する3つの軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示し、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印方向先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。
【0011】
図1に示すロボット1は、ベース11と、ベース11に対して回動可能に連結された胴体12と、胴体12の左右に連結された一対の多関節アーム13、14と、胴体12に設けられたステレオカメラ15および信号灯16と、胴体12の背面側に設けられたモニター17と、多関節アーム13、14の先端部に装着されたハンド2A、2Bと、これら各部を制御するロボット制御装置18と、を有する。
【0012】
このような構成のロボット1では、ステレオカメラ15を用いてワーク、工具等の位置を確認しながら所定の作業を行う。特に、本実施形態では、ケーブルCの終端を検出する作業を行う。また、信号灯16によってロボット1の状態、例えば、駆動状態、正常停止状態、異常停止状態等を容易に確認することができる。また、モニター17にロボット1に関する情報が表示されるため、ロボット1の状態を簡単に確認することができる。モニター17は、例えば、タッチパネルになっており、タッチパネルを操作することによって、表示画面を切り替えたり、ロボット1に指令を与えたり、与えた指令を変更したりすることができる。
【0013】
ロボット制御装置18は、図示しないホストコンピューターからロボット1の位置指令を受け、胴体12および各多関節アーム13、14が位置指令に応じた位置となるように各部の駆動を制御する。ロボット制御装置18は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行する。
【0014】
次に、ハンド2A、2Bについて簡単に説明する。なお、ハンド2A、2Bは、互いに同様の構成であるため、以下では、ハンド2A、2Bを「ハンド2」と総称して説明する。
【0015】
図2に示すように、ハンド2は、多関節アーム13、14の先端部に接続されるベース20と、ベース20に支持された第1把持部21および第2把持部22を有する。第1把持部21は、Z軸方向に並び、Z軸方向に開閉可能な2本の指部211、212を有する。同様に、第2把持部22は、Z軸方向に並び、Z軸方向に開閉可能な2本の指部221、222を有する。また、第1、第2把持部21、22は、X軸方向に相対的に移動でき、接近/離間が可能となっている。なお、指部211、212の開閉、指部221、222の開閉および第1、第2把持部21、22の接近/離間は、それぞれ、一対のラック231、232とピニオン233とからなるラック・アンド・ピニオン機構23と、ピニオン233を回転させるモーター24と、により実現されている。
【0016】
また、図3および図4に示すように、指部211の指部212と対向する面211aには触覚センサー251が配置されており、指部211、212でケーブルCを把持するとケーブルCからの反力を受ける。同様に、指部221の指部222と対向する面221aには触覚センサー252が配置されており、指部221、222でケーブルCを把持するとケーブルCからの反力を受ける。触覚センサー251、252は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の力をそれぞれ独立して検出することができる。触覚センサー251、252としては、その機能を発揮することができれば、特に限定されない。
【0017】
また、触覚センサー251、252は、それぞれ、ゴム材料等の弾性材料で構成された弾性体261、262で覆われている。ケーブルCの動きに追従するようにして弾性体261、262が変形することにより、ケーブルCの動きに応じた力が触覚センサー251、252に伝わり易くなる。そのため、後述すように、ケーブルCの終端をより精度よく検出することができる。
【0018】
また、指部212の指部211と対向する面212aであって触覚センサー251と対向する位置にはケーブルCが係合する溝271が配置されている。図4に示すように、溝271にケーブルCを係合させることにより、より確実にケーブルCと弾性体261とを接触させることができ、ケーブルCからの反力を触覚センサー251に伝えることができる。また、第1把持部21からのケーブルCの意図しない離脱を効果的に抑制することもできる。同様に、指部222の指部221と対向する面222aであって触覚センサー252と対向する位置にはケーブルCが係合する溝272が配置されている。図4に示すように、溝272にケーブルCを係合させることにより、より確実にケーブルCと弾性体262とを接触させることができ、ケーブルCからの反力を触覚センサー252に伝えることができる。また、第2把持部22からのケーブルCの意図しない離脱を効果的に抑制することもできる。
【0019】
このようなハンド2によれば、後述するケーブルCの終端検出方法を行うのに適した構成となる。そのため、ケーブルCの終端検出方法の実施がより容易となる。なお、ハンド2の構成としては、第1、第2把持部21、22と、第2把持部22に配置された触覚センサー252と、を有する限り特に限定されない。
【0020】
以上、ロボット1の構成について簡単に説明した。次に、このロボット1を用いて行われるケーブルCの終端検出方法について詳細に説明する。なお、ケーブルCとしては、特に限定されないが、外周面に実質的に凹凸がなく、かつ終端にコネクター等の端子が接続されていないものであるのが好ましい。つまり、ケーブルCは、後述する移動ステップS2において第2把持部22に引っ掛かることなく、第2把持部22からスムーズに引き抜くことができる形状であることが好ましい。このような形状のケーブルCが本実施形態の終端検出方法に適している。
【0021】
図5に示すように、ケーブルの終端検出方法は、把持ステップS1と、移動ステップS2と、検出ステップS3と、停止ステップS4と、第2把持部移動ステップS5と、第2把持部把持ステップS6と、作業ステップS7と、を含む。以下、各ステップについて順に説明する。なお、以下の図6から図16では、説明の便宜上、ハンド2A、2Bを簡略化して図示する。
【0022】
<把持ステップS1>
まず、ロボット1は、ハンド2A、2BでケーブルCを把持する。ハンド2AではどのようにケーブルCを把持してもよい。一方、ハンド2Bでは、図6に示すように、第1把持部21と第2把持部22とをX軸方向に離間させ、第1把持部21および第2把持部22によって、ケーブルCをその長手方向に離間した2カ所でZ軸方向から挟み込むようにして把持する。ケーブルCを把持した状態では、図4に示したように、ケーブルCが溝271、272と係合し、弾性体261、262と接触する。そのめ、弾性体261、262がZ軸方向に潰れるように変形し、触覚センサー251、252にZ軸方向の力が作用する。
【0023】
ここで、ハンド2Aでは強くしっかりとケーブルCを把持する。一方、ハンド2BではケーブルCが第1、第2把持部21、22から離脱することなく、かつ、ケーブルCからの反力を触覚センサー251、252が検出することができる限りにおいて、軽い力でゆるくケーブルCを把持する。これにより、次の移動ステップS2において、より小さい力で、ハンド2Bに対してケーブルCを摺動させることができる。そのため、ケーブルCに加わる引っ張り応力をより小さく押させることができ、ケーブルCの断線を抑制することができる。
【0024】
また、ハンド2Bでは、第1把持部21と第2把持部22との離間距離Dを第2把持部22の幅Wよりも十分に大きく確保することが好ましい。これにより、後の工程がスムーズに行われる。
【0025】
<移動ステップS2>
次に、ロボット1は、触覚センサー251、252を初期化して出力を0(ゼロ)とする。次に、ロボット1は、図7に示すように、ハンド2BによりケーブルCを把持した状態で、ハンド2Bに対してケーブルCをX軸方向マイナス側すなわち第1把持部21側に相対的に移動させる。具体的には、多関節アーム13によってハンド2AをX軸方向マイナス側に動かしてケーブルCをX軸方向マイナス側に引っ張り、ハンド2Bに対してX軸方向マイナス側に移動させる。ただし、これに限定されず、多関節アーム14によってハンド2BをX軸方向プラス側に動かすことによりケーブルCをハンド2Bに対してX軸方向マイナス側に移動させてもよい。この移動は、後の停止ステップS4まで続けられる。
【0026】
この際、ケーブルCは、第1、第2把持部21、22に対して擦れながら移動する。つまり、摺動する。そのため、本ステップ中は、弾性体261、262がケーブルCの摺動によってX軸方向マイナス側に引っ張られるように変形し、当該変形によって接触センサー251、252にX軸方向の力Fxが作用する。つまり、移動ステップS2では、弾性体261、262がZ軸方向に潰れるように変形しつつ、X軸方向に引っ張られるように変形するため、接触センサー251、252にはこれに起因したZ軸方向の力FzとX軸方向の力Fxとが作用する。したがって、触覚センサー251、252からは、X軸方向の力FxとZ軸方向の力Fzとが出力される。
【0027】
<検出ステップS3>
移動ステップS2を続けると、図8に示すように、あるタイミングでケーブルCが第2把持部22から抜け、その終端Ceが第1把持部21と第2把持部22との間に位置する状態となる。第2把持部22からケーブルCが抜けると、ケーブルCとの摺動により生じる力Fz、Fxが触覚センサー252に作用しなくなるため、触覚センサー252から力Fx、Fzが出力されなくなる。したがって、ロボット1は、触覚センサー252からの出力の変化に基づいてケーブルCが第2把持部22から抜けたことを検出する。
【0028】
移動ステップS2中に触覚センサー252から出力される力Fx、Fzの一例を図9および図10に示す。図9および図10では、ステップ数0で触覚センサー252の出力を初期化し、ステップ数10で移動ステップS2を開始し、ステップ数29でケーブルCが第2把持部22から抜けたことを示している。このように、ケーブルCが第2把持部22から抜けることにより、触覚センサー252からの出力が明らかに変化するため、ロボット1は、ケーブルCが第2把持部22から抜けたことを容易に検出することができる。
【0029】
一方で、図8に示す状態では、第1把持部21からはケーブルCが抜けていない。そのため、触覚センサー251からは引き続き力Fx、Fzが出力される。したがって、触覚センサー251、252のうち触覚センサー252だけから力Fz、Fxが出力されなくなることにより、ロボット1は、第2把持部22からケーブルCが抜け、ケーブルCの終端Ceが第1把持部21と第2把持部22との間にあることを検出することができる。このように、力Fz、Fxに基づけば、第2把持部22からケーブルCが抜けたこと、さらには、ケーブルCの終端Ceが第1把持部21と第2把持部22との間にあることを簡単かつ確実に検出することができる。
【0030】
なお、移動ステップS2中、触覚センサー251、252からは上述の力Fx、Fzの他にもY軸方向の力Fyが出力される。力Fyからは、ケーブルCの状態、具体的には撓み具合を検出することができる。例えば、力Fyが強い程、その方向にケーブルCが撓んでいること検出することができる。そのため、ロボット1は、ケーブルCの状態を把握しながら移動ステップS2を行うことができる。これにより、移動ステップS2をよりスムーズに行うことができる。
【0031】
移動ステップS2中に触覚センサー252から出力される力Fyの一例を図11に示す。図11では、図9および図10と同様、ステップ数0で触覚センサー252の出力を初期化し、ステップ数10で移動ステップS2を開始し、ステップ数29でケーブルCが第2把持部22から抜けたことを示している。なお、力Fyの変化に基づいても、ケーブルCが第2把持部22から抜けたことを検出することができる。ただし、図11から分かるように、力Fyの大きさは、力Fx、Fzに比べて小さい。そのため、力Fyに基づく検出は、力Fx、Fzに基づく検出と比較して精度が低くなる可能性がある。
【0032】
<停止ステップS4>
ロボット1は、検出ステップS3によって、第2把持部22からケーブルCが抜け、その終端Ceが第1把持部21と第2把持部22との間にあることを検出したら、速やかに、ケーブルCのX軸方向マイナス側への引っ張りを停止する。これにより、図8に示したように、終端Ceが第1把持部21と第2把持部22との間に位置する状態が維持される。ここで、前述したように、第1把持部21と第2把持部22との離間距離Dが第2把持部22の幅Wよりも十分に広く設定されているため、第2把持部22からケーブルCが抜けた後、速やかに、ケーブルCのX軸方向マイナス側への引っ張りを停止することにより、第1把持部21からケーブルCの終端Ceまでの長さLを第2把持部22の幅Wよりも大きく確保することができる。これにより、後の作業が容易となる。
【0033】
<第2把持部移動ステップS5>
次に、第2把持部22を開いた状態とする。そして、図12に示すように、第1把持部21と第2把持部22とを相対的にX軸に沿って移動させ、第2把持部22をケーブルCの終端CeよりもX軸方向マイナス側すなわち第1把持部21側に位置させる。なお、図12では、ハンド2Bの構成上、第1把持部21をX軸方向プラス側に移動させると共に、第2把持部22をX軸方向マイナス側に移動させることにより、第2把持部22をケーブルCの終端CeよりもX軸方向マイナス側に位置させている。
【0034】
<第2把持部把持ステップS6>
次に、図13に示すように、第2把持部22つまり一対の指部221、222によってケーブルCを再び把持する。これにより、第1把持部21および第2把持部22によりケーブルCが把持され、第2把持部22からX軸方向プラス側にケーブルCの終端Ceが突出した状態となる。したがって、終端Ceにアプローチし易くなり、終端Ceに対して所定の作業を行い易くなる。
【0035】
<作業ステップS7>
次に、終端Ceに対して所定の作業を行う。前述したように、ケーブルCの終端Ceが第2把持部22から突出しているため、終端Ceに対して所定の作業を行い易くなる。所定の作業としては、特に限定されない。本実施形態では、まず、図14に示すように、ケーブルCの被膜を除去して内部の芯材C1を露出させ、図15に示すように、終端Ceを穴型の端子Tに挿入し、図16に示すように、これらを半田Hで接続する作業を行っている。
【0036】
以上、ロボット1を用いたケーブルCの終端検出方法について説明した。このような終端検出方法は、前述したように、線状のケーブルCの終端を検出するケーブル終端検出方法であって、互いに交差する2軸をX軸およびZ軸としたとき、X軸に離間して配置され、共にZ軸に沿う方向に開閉する第1把持部21および第2把持部22を有するハンド2Bを用い、第1把持部21および第2把持部22によってケーブルCを長手方向に離間した2カ所で把持する把持ステップS1と、ハンド2BによりケーブルCを把持した状態で、ハンド2Bに対してケーブルCをX軸に沿う方向の第1把持部21側に相対的に移動させる移動ステップS2と、第2把持部22にケーブルCと接触するように配置されている触覚センサー252により第2把持部22からケーブルCが抜けたことを検出し、第1把持部21と第2把持部22との間にケーブルCの終端Ceが位置することを検出する検出ステップS3と、を含む。このような方法によれば、簡単かつ容易にケーブルCの終端Ceを検出することができる。また、ハンド2Bで把持したまま終端Ceを検出することができるため、その後の作業にスムーズに移行することができ、作業効率が向上する。
【0037】
また、前述したように、検出ステップS3では、触覚センサー252に加わるX軸に沿う方向の力Fxに基づいて第2把持部22からケーブルCが抜けたことを検出する。これにより、第2把持部22からケーブルCが抜けたことを簡単かつ確実に検出することができる。
【0038】
また、前述したように、検出ステップS3では、触覚センサー252に加わるZ軸に沿う方向の力Fzに基づいて第2把持部22からケーブルCが抜けたことを検出する。これにより、第2把持部22からケーブルCが抜けたことを簡単かつ確実に検出することができる。
【0039】
また、前述したように、X軸およびZ軸に交差する軸をY軸としたとき、検出ステップS3では、触覚センサー252に加わるY軸に沿う方向の力Fyに基づいてケーブルCの状態を検出する。これにより、ケーブルCの状態を簡単かつ確実に検出することができる。
【0040】
また、前述したように、第1把持部21および第2把持部22は、X軸に沿う方向に相対的に移動することができ、終端検出方法は、検出ステップS3の後に、ケーブルCの終端Ceが第1把持部21と第2把持部22との間に位置するときにハンド2BとケーブルCとの相対的な移動を停止する停止ステップS4と、第1把持部21と第2把持部22とを相対的にX軸に沿って移動させ、第2把持部22をケーブルCの終端Ceよりも第1把持部21側に位置させる第2把持部移動ステップS5と、第2把持部22によってケーブルCを把持する第2把持部把持ステップS6と、を含む。これにより、ハンド2の外側にケーブルCの終端Ceを突出させることができるため、その後の作業をスムーズに行うことができる。
【0041】
また、前述したように、終端検出方法は、第2把持部把持ステップS6の後に、ケーブルCの終端Ceに対して所定の作業を行う作業ステップS7を含む。ハンド2の外側にケーブルCの終端Ceを突出させることができるため、本ステップを容易に行うことができる。
【0042】
また、ハンド2Bは、前述したように、互いに交差する2軸をX軸およびZ軸としたとき、X軸に沿う方向に相対的に移動し、共にZ軸に沿う方向に開閉する第1把持部21および第2把持部22と、第2把持部22に配置されている触覚センサー252と、触覚センサー252を覆う弾性体262と、を有する。このような構成によれば、前述した終端検出方法に適した構成のハンド2Bとなる。
【0043】
以上、本発明のケーブル終端検出方法およびハンドを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した実施形態では、X軸、Y軸およびZ軸がそれぞれ直交しているが、X軸、Y軸およびZ軸は、交差していればよく、直交していなくてもよい。
【0044】
また、前述した実施形態では、ロボット1がハンド2Aを用いてケーブルCをハンド2Bに対してX軸方向マイナス側に引っ張っているが、ケーブルCを引っ張る方法としては、特に限定されず、例えば、別のロボットや装置を用いて引っ張ってもよい。また、例えば、ケーブルCの始端をロボット1とは別の固定部材に固定しておき、ハンド2BだけでケーブルCを把持し、ハンド2BをX軸方向プラス側にスライドさせることにより、ケーブルCをハンド2Bに対してX軸方向マイナス側に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ロボット、2…ハンド、2A…ハンド、2B…ハンド、11…ベース、12…胴体、13…多関節アーム、14…多関節アーム、15…ステレオカメラ、16…信号灯、17…モニター、18…ロボット制御装置、20…ベース、21…第1把持部、22…第2把持部、23…ピニオン機構、24…モーター、211…指部、211a…面、212…指部、212a…面、221…指部、221a…面、222…指部、222a…面、231…ラック、232…ラック、233…ピニオン、251…触覚センサー、252…触覚センサー、261…弾性体、262…弾性体、271…溝、272…溝、C…ケーブル、C1…芯材、Ce…終端、D…離間距離、Fx…力、Fy…力、Fz…力、H…半田、L…長さ、S1…把持ステップ、S2…移動ステップ、S3…検出ステップ、S4…停止ステップ、S5…第2把持部移動ステップ、S6…第2把持部把持ステップ、S7…作業ステップ、T…端子、W…幅
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