(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240910BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240910BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20240910BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610D
H05K7/06 C
H05K7/20 B
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2021020808
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇哉
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169602(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241310(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105391(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088684(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/009930(WO,A1)
【文献】特開2018-093711(JP,A)
【文献】特開2020-088086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H05K 7/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに取り付けられるリレーと、
前記リレーの端子に接続されるバスバーと、
前記リレーに熱伝達可能に接続される第1放熱部材と、を備え、
前記ケースが、第1ケース部材と、前記第1ケース部材に連結され前記第1ケース部材との間に収容空間を形成する第2ケース部材とを備え、
前記第1放熱部材が、前記収容空間において前記第1ケース部材に積層される第1積層部を有し、
前記バスバーが、前記ケースの外部において前記第1ケース部材及び前記第1積層部に積層される第2積層部を有している、電気接続箱。
【請求項2】
前記収容空間において、前記第1積層部と前記第2ケース部材との間に配置されかつ前記第1積層部及び前記第2ケース部材に積層される第2放熱部材をさらに備えている、請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記第1放熱部材が金属製であり、
前記第2放熱部材が合成樹脂製である、請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記第1ケース部材又は前記第2ケース部材には、曲げ変形に抗する突条が形成されている、請求項2又は3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記突条が、前記第1ケース部材における前記第1積層部側の面に形成されている、請求項4に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記ケースが、前記第1積層部と前記第2積層部との積層方向である第1方向に垂直な第2方向に突出する突出部を有しており、
前記突出部に、前記第1放熱部材の前記第1積層部及び前記第2放熱部材が配置されており、前記突条が、前記第2方向に延びている、請求項4又は5に記載の電気接続箱。
【請求項7】
前記第1放熱部材が、前記リレーの端子に接続される、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気接続箱。
【請求項8】
前記第1放熱部材と前記バスバーとが前記リレーの端子の位置において重ねられている、請求項7に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車において、バッテリから複数の車載機器に電力を供給するために、バッテリからの電線は、電気接続箱(「ジャンクションボックス」とも称される。)に一旦接続され、その電気接続箱から各車載機器にそれぞれ接続される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の電気接続箱は、バッテリーケース内に収容されるものであり、カバー上側部材及びカバー下側部材を有する機器カバーと、機器カバーに収容されたリレーと、リレーの端子に接続されたバスバーとを有している。バスバーは、一端部がリレーの端子に接続され、他端部が機器カバーに取れ付けられたコネクタ端子に接続され、このコネクタ端子がバッテリ等の他の機器に電線を介して接続される。
【0004】
リレーは、接点が開閉を繰り返すことによって発熱する。そのため、この種の電気接続箱においては、機器カバーの外部への放熱が必要となる。特許文献1記載の電気接続箱では、バスバーの一端部と他端部との間に位置する中間部とカバー下側部材との間、及び、カバー下側部材とバッテリーケースとの間にそれぞれ放熱シートが設けられ、バスバー、一方の放熱シート、カバー下側部材、及び他方の放熱シートが上下に積層されている。そして、リレーの端子からバスバーに伝わる熱は、2枚の放熱シート及びカバー下側部材を介してバッテリーケースに伝達されることで、放散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の技術では、バスバーが放熱のために用いられているため、バスバーの中間部をカバー下側部材付近まで近づける必要があり、バスバーの構造が複雑化及び大型化するという欠点がある。また、近年、電気自動車やハイブリッド自動車においてはリレーの発熱が大きくなる傾向にあるため、より放熱性を高めた電気接続箱が求められている。
【0007】
本開示は、バスバーの複雑化や大型化を招くことなくリレーの熱を効率よく放散することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電気接続箱は、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるリレーと、
前記リレーの端子に接続されるバスバーと、
前記リレーに熱伝達可能に接続される第1放熱部材と、を備え、
前記ケースが、第1ケース部材と、前記第1ケース部材に連結され前記第1ケース部材との間に収容空間を形成する第2ケース部材とを備え、
前記第1放熱部材が、前記収容空間において前記第1ケース部材に積層される第1積層部を有し、
前記バスバーが、前記ケースの外部において前記第1ケース部材及び前記第1積層部に積層される第2積層部を有している。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電気接続箱によれば、バスバーの大型化や複雑化を招くことなくリレーの熱を効率よく放散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】電気接続箱のリレー及びバスバーを示す正面図である。
【
図4】ケースの下ケース部材の一部を斜め上側から見た斜視図である。
【
図5】ケースの上ケース部材の一部を斜め上側から見た斜視図である。
【
図6】ケースの上ケース部材の一部を斜め下側から見た斜視図である。
【
図9】バスバー及び放熱構造の構成部品を示す斜視図である。
【
図10】バスバー及び放熱構造の構成部品を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の概要]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下が含まれる。
【0012】
(1) 実施形態の電気接続箱は、
ケースと、
前記ケースに取り付けられるリレーと、
前記リレーの端子に接続されるバスバーと、
前記リレーに熱伝達可能に接続される第1放熱部材と、を備え、
前記ケースが、第1ケース部材と、前記第1ケース部材に連結され前記第1ケース部材との間に収容空間を形成する第2ケース部材とを備え、
前記第1放熱部材が、前記収容空間において前記第1ケース部材に積層される第1積層部を有し、
前記バスバーが、前記ケースの外部において前記第1ケース部材及び前記第1積層部に積層される第2積層部を有している。
【0013】
上記構成の電気接続箱によれば、リレーに熱伝達可能に接続される第1放熱部材を有しているので、リレーで発生する熱を、バスバーだけでなく第1放熱部材に伝達し、第1放熱部材側から外部へ放熱することができる。したがって、バスバーを放熱のために複雑化及び大型化しなくてもよい。バスバーの第2積層部と、ケースの第1ケース部材と、第1放熱部材の第1積層部とが積層して配置されているので、バスバー側の電力供給経路と第1放熱部材側の放熱経路とを第1ケース部材で区画することができる。
【0014】
(2) 好ましくは、前記収容空間において、前記第1積層部と前記第2ケース部材との間に配置されかつ前記第1積層部及び前記第2ケース部材に積層される第2放熱部材をさらに備えている。
この構成によれば、リレーの熱を、第1放熱部材、第2放熱部材、及び第2ケース部材に伝達し、第2ケース部材側から外部へ放散することができ、バスバー側への熱伝達を抑制することができる。また、第1ケース部材と第2ケース部材との間に第1放熱部材の第1積層部と第2放熱部材とを挟み込むことで第1放熱部材と第2放熱部材とを密着させることができ、第1放熱部材と第2放熱部材との間の熱伝達を効率よく行うことができる。
【0015】
(3) 好ましくは、前記第1放熱部材が金属製であり、前記第2放熱部材が合成樹脂製である。
この構成によれば、金属製の第1放熱部材の第1積層部で合成樹脂製の第2放熱部材を圧縮して両者を強く密着させることができる。
【0016】
(4) 好ましくは、前記第1ケース部材又は前記第2ケース部材には、曲げ変形に抗する突条が形成されている。
この構成によれば、第1ケース部材と第2ケース部材との間に第1放熱部材の第1積層部と第2放熱部材とを挟み込んだ場合に、第1ケース部材又は第2ケース部材の曲げ変形が突条によって抑制され、第1積層部と第2放熱部材とを確実かつ均一に密着させることができる。
【0017】
(5) 好ましくは、前記突条が、前記第1ケース部材における前記第1積層部側の面に形成されている。
この構成によれば、第1ケース部材における曲げ変形が突条によって抑制される。第1ケース部材の突条と第1放熱部材の第1積層部とを接触させることで、両者の接触面積を少なくすることができ、第1放熱部材から第1ケース部材側への熱伝達を抑制することができる。
【0018】
(6) 好ましくは、前記ケースが、前記第1積層部と前記第2積層部との積層方向である第1方向に垂直な第2方向に突出する突出部を有しており、前記突出部に、前記第1放熱部材の前記第1積層部及び前記第2放熱部材が配置されており、前記突条が、前記第2方向に延びている。
この構成によれば、ケースの突出部は、第2方向の先端側が第1方向に曲げ変形しやすくなるので、突条が第2方向に延びていることによって突出部の曲げ変形を効果的に抑制することができる。
【0019】
(7) 好ましくは、前記第1放熱部材が、前記リレーの端子に接続される。
この構成によれば、リレーの内部の接点で発生する熱を端子を介して第1放熱部材に効率よく伝達することができる。
【0020】
(8) 好ましくは、前記第1放熱部材と前記バスバーとが前記リレーの端子の位置において重ねられている。
この構成によれば、リレーの端子からバスバーに電圧を付与し、リレーの端子から第1放熱部材に熱を伝達することができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。
【0022】
[電気接続箱の全体構成]
図1は、実施形態に係る電気接続箱の斜視図である。
図2は、実施形態に係る電気接続箱の平面図である。なお、以下の説明において、上、下、前、後、左、及び右という記載は、図面に示された矢印に従っている。例えば
図1において、互いに直交する矢印X,Y,Zのうち、矢印Xが示す方向(第3方向)を左右方向、矢印Yが示す方向(第2方向)を前後方向、矢印Zが示す方向(第1方向)を上下方向としている。ただし、これらの記載は一例にすぎず、例えば、方向Xを前後方向又は上下方向、方向Yを左右方向又は上下方向、方向Zを前後方向又は左右方向と読み替えてもよい。
【0023】
電気接続箱10は、自動車のバッテリと複数の車載機器との間に接続される部品である。電気接続箱10は、ジャンクションボックス(JB)とも称される。電気接続箱10は、ケース11と、リレー12と、バスバー13と、を備える。
【0024】
ケース11は、上面に凹凸を有するが、全体として上下方向Zに偏平な箱形状に形成されている。ケース11は、平面視において略長方形状に形成されている。本実施形態では、ケース11の長辺L1が左右方向Xに沿って配置され、短辺L2が前後方向に沿って配置されている。ケース11の前面と後面とには、前後方向Yに突出する突出部25が設けられている。ケース11の四隅と長辺L1の中間部とにはボス部11aが設けられている。ボス部11aは、車両のシャーシやバッテリボックス等の被取付部材100(
図7参照)にボルト等の締結具でケース11を取り付けるために用いられる。
【0025】
リレー12は、バッテリと車載機器との間に電気的に接続され、バッテリから車載機器への電気信号のオンオフを制御する部品である。リレー12は、例えば機械式リレーであり、内部にコイル、バネ等を収容している。リレー12は、ケース11の上面側に取り付けられ、上部側が露出している。本実施形態では、
図2に示すように、2個のリレー12がケース11に取り付けられている。具体的には、2個のリレー12が、左右方向Xに並べて設けられている。左側に配置されたリレー12は、前端面に2個の端子12aを有している。右側に配置されたリレー12は、後端面に2個の端子12aを有している。各リレー12において、2個の端子12aは左右方向Xに並べて配置されている。ケース11に取り付けられるリレー12の個数は特に限定されるものではなく、1個でもよいし3個以上でもよい。
【0026】
本実施形態のリレー12は、通常の電圧(例えば、12V、24V等)よりも高い電圧(例えば30V以上)で動作可能な高電圧リレーである。リレー12は、高電圧の印加に起因して高温になりやすい。そのため、電気接続箱10は、後述する放熱構造50を備えている。
【0027】
図3は、電気接続箱のリレー及びバスバーを示す正面図である。特に、
図3は、
図2における左側のリレー12及びバスバー13を示している。
図1~
図3に示すように、バスバー13は、一端部14がリレー12と電気的に接続され、他端部15が車載機器又はバッテリの他の機器と電気的に接続される導電性を有する部材である。バスバー13は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属により形成される。リレー12がオン状態になると、バスバー13に電流が流れる。
【0028】
バスバー13は、リレー12の2個の端子12aのそれぞれに1個ずつ取り付けられている。バスバー13は、1枚の帯板をL字状に折り曲げることによって形成されている。バスバー13は、互いに直交する第1片14と、第2片15とを備える。第1片14は、リレー12に接続され、第2片15は、他の機器に接続される。第1片14には、リレー12に接続するための接続孔14a(
図8参照)が形成されている。第2片15には、他の機器への電線を接続するための接続孔15aが形成されている。
【0029】
図8は、
図2のB-B線断面図である。
バスバー13の一端部(第1片14)は、接続部材16によってリレー12の端子12aに取り付けられる。本実施形態の接続部材16は、ねじである。接続部材16は、バスバー13の第1片14の接続孔14aに挿入され、リレー12の端子12aに設けられた雌ねじ孔12bに取り付けられる。また、接続部材16は、後述する放熱板(第1放熱部材)51をリレー12の端子12aに取り付けるためにも用いられる。すなわち、接続部材16は、バスバー13と放熱板51との双方をリレー12の端子12aに固定する。
【0030】
図3に示すように、左右に並べて配置されたバスバー13の第2片15は、互いに上下方向Zの高さが異なっている。具体的に、右側のバスバー13の第2片15は、左側のバスバー13の第2片15よりも高い位置に配置されている。
【0031】
[ケースの構造]
図4は、ケースの下ケース部材の一部を斜め上側から見た斜視図である。
図5は、ケースの上ケース部材の一部を斜め上側から見た斜視図である。
図6は、ケースの上ケース部材の一部を斜め下側から見た斜視図である。
図4~
図6は、
図2における左側のリレー12及びバスバー13の周辺におけるケース11の形状を示している。以下、当該リレー12及びバスバー13の近傍におけるケース11の構造について説明する。
【0032】
ケース11は、絶縁性を有する素材、例えば、ガラス繊維やタルクを含むポリプロピレン等の合成樹脂材により形成されている。ケース11は、上ケース部材(第1ケース部材)21と下ケース部材(第2ケース部材)22とを有する。
上ケース部材21は、
図5に示すように、天板21aと、天板21aの外周に設けられた外周壁21bとを有する。天板21aの上面には、リレー台23と、バスバー台24とが形成されている。リレー台23には、リレー12が載置された状態で固定される。バスバー台24上には、バスバー13の第2片15が配置される(
図3参照)。バスバー13の第1片14は、リレー台23に固定されたリレー12の端子12aに接続される。ケース11の突出部25の上面は、バスバー台24として用いられる。
【0033】
図6に示すように、上ケース部材21における天板21aの下面には、複数の突条44と、位置決め突起(位置決め部)45とが設けられている。複数の突条44は、前後方向Yに延び、左右方向Xに並べて配置されている。複数の突条44は、上ケース部材21の曲げ変形に対する剛性を高めるためのリブとして機能する。
【0034】
位置決め突起45は、天板21aの下面から下方に延びている。位置決め突起45は、円柱状に形成されている。位置決め突起45は、後述する放熱構造50を構成する複数の部材をケース11に対して位置決めするために用いられる。突条44及び位置決め突起45の具体的な作用については後述する。
【0035】
下ケース部材22は、
図4に示すように、底板22aと、底板22aの外周に設けられた外周壁22bとを有する。底板22aには、シート台58が設けられている。シート台58は、平面視で矩形状に形成されている。
図8に示すように、下ケース部材22の底板22aは、シート台58の部分がわずかに上側に位置ずれした状態で形成されている。そのため、シート台58の上面58aは、その周囲の底板22aの上面よりも上側に突出している。シート台58の下面58bは、その周囲の底板22aの下面よりも上側に凹んでいる。
【0036】
シート台58の上面58aには、後述する放熱構造50の上側放熱シート(第2放熱部材)52が配置される。シート台58の下面58bには、放熱構造50の下側放熱シート(第3放熱部材)53が配置される。シート台58の上面58aにおける左右方向Xの中央には、前後方向Yに延びる突条58cが形成されている。
【0037】
図2に示すように、ケース11は、上ケース部材21と下ケース部材22とを連結する複数の連結部28~31を有している。以下、左側のリレー12に接続される2個のバスバー13の近傍における第1~第4連結部28~31について説明する。
【0038】
第1連結部28は、ケース11の突出部25の先端部において上ケース部材21と下ケース部材22とを連結する。第2連結部29は、第1連結部28に対して前後方向Yに間隔をあけた位置で上ケース部材21と下ケース部材22とを連結する。第2連結部29は、ケース11の外周部よりも内部側に配置されている。第3連結部30及び第4連結部31は、突出部25の左右方向Xの両側において上ケース部材21と下ケース部材22とを連結する。
【0039】
第1連結部28、第3連結部30、及び第4連結部31は、向きが異なるだけで同一の構成を有している。そのため、以下においては、第1連結部28を代表としてその構成について説明する。
【0040】
第1連結部28は、
図3に示すように、上ケース部材21に設けられた係合部34と、下ケース部材22に設けられた被係合部35とを有する。
係合部34は、
図5及び
図6にも示すように、正面視で略U字形状に形成されている。係合部34は、その下端において左右方向Xに延びる爪受け部34aを有している。
【0041】
被係合部35は、
図4にも示すように、下ケース部材22の外周壁22bから外方に突出する爪部35aを有する。この爪部35aは、爪受け部34aに上側から係合する。この係合により、上ケース部材21と下ケース部材22とが上下方向Zに離れないように連結される。
【0042】
第3連結部30は、突出部25の左側面に設けられ、第1連結部28を左側に90°回転させた構造を有している。第4連結部31は、突出部25の右側面に設けられ、第1連結部28を右側に90°回転させた構造を有している。
【0043】
図2に示すように、第2連結部29は、2個のバスバー13に対応するように左右に並べて2か所に設けられている。第2連結部29は、
図8に示すように、上ケース部材21に設けられた係合部37と、下ケース部材22に設けられた被係合部38とを有している。係合部37は、
図6にも示すように、上ケース部材21の天板21aの下面から下方に突出している。係合部37は板状であり、前後方向Yに対して垂直に配置されている。被係合部38は、
図4にも示すように、下ケース部材22の底板22aから上方に突出している。
【0044】
図12は、
図8のD部拡大図である。
係合部37の下端には後方へ屈曲するフック部37aが形成されている。被係合部38の上端には前方へ屈曲するフック部38aが形成されている。係合部37のフック部37aと、被係合部38のフック部38aとは上下方向Zに係合している。係合部37は、下ケース部材22の底板22aに形成された開口41に挿入されている。被係合部38は、上ケース部材21に形成された開口40に挿入されている。係合部37は、開口40の前端縁に形成され、被係合部38は、開口41の後端縁に形成されている。
【0045】
係合部37におけるフック部37aの上面37bと、被係合部38におけるフック部38aの下面38bとは、それぞれ係合面を構成する。両係合面37b、38bは互いに上下に接触している。両係合面37b、38bは、前下がり形状に傾斜している。そのため、例えば、係合部37と被係合部38とが係合した状態で上ケース部材21と下ケース部材22とに上下に離反するような力がかかると、係合面37b、38bの傾斜によって係合部37と被係合部38とが互いに前後に引き寄せられる。そのため、係合部37と被係合部38とがより強固に係合され、上ケース部材21と下ケース部材22との連結が維持される。
【0046】
[放熱構造の構成]
図7は、
図2のA-A線断面図である。
図9は、バスバー及び放熱構造の構成部品を示す斜視図である。
図10は、バスバー及び放熱構造の構成部品を示す分解斜視図である。
図7及び
図8に示すように、放熱構造50は、放熱板(第1放熱部材)51と、上側放熱シート(第2放熱部材)52と、下側放熱シート(第3放熱部材)53と、を有する。放熱板51及び上側放熱シート52は、
図10に示すように、2個のバスバー13に対応して2個設けられている。下側放熱シート53は、左右に並べて配置された2個の放熱板51及び2個の上側放熱シート52に対応して1個設けられている。
図7及び
図8に示すように、放熱板51の下部と上側放熱シート52とは、上ケース部材21と下ケース部材22との間に形成される収容空間27内に配置される。
【0047】
放熱板51は、金属製である。具体的に、放熱板51は、バスバー13と同一の素材、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、又は、アルミニウム合金により形成される。放熱板51は、1枚の帯板をL字状に折り曲げることによって形成されている。放熱板51は、互いに直交する第1片55と第2片56とを有する。
【0048】
放熱板51の第1片55は、
図8に示すように、接続部材16によってリレー12の端子12aに取り付けられている。具体的に、第1片55には、接続部材16が挿入される接続孔55aが貫通して形成されている。放熱板51の第1片55は、バスバー13の第1片14に重ねられている。放熱板51の第1片55は、バスバー13の第1片14とリレー12との間に配置されている。リレー12において発生する熱は、端子12aから放熱板51とバスバー13との双方に伝達される。
【0049】
放熱板51の第1片55の下端は上ケース部材21の天板21aに形成されたスリット26を通過してケース11内に配置されている。
放熱板51の第2片56は、バスバー13の第2片15の下側に配置されている。放熱板51の第2片56とバスバー13の第2片15との間には、上ケース部材21の天板21aが配置されている。したがって、バスバー13の第2片15と、上ケース部材21の天板21aと、放熱板51の第2片56とは、この順で上から下へ積層されている。放熱板51の第2片56は、上ケース部材21の天板21aに積層される第1積層部を構成している。バスバー13の第2片15は、上ケース部材21の天板21a及び第1積層部56に積層される第2積層部を構成している。
【0050】
図7に示すように、上ケース部材21の天板21aの下面には、複数の突条44が形成されており、この突条44の下端が、放熱板51の第2片56の上面に接している。
【0051】
図7及び
図8に示すように、上側放熱シート52は、放熱板51の第2片56の下側に積層されている。上側放熱シート52は、
図10に示すように、平面視で矩形状に形成されたシート材である。上側放熱シート52は、熱伝導性を有する合成樹脂、例えば、アクリル、その他のアクリル系材料、シリコン系材料等によって形成される。上側放熱シート52は、放熱板51の第2片56の下面に接着される。上側放熱シート52は、下ケース部材22におけるシート台58上に載置される。したがって、上側放熱シート52は、放熱板51の第2片56と下ケース部材22のシート台58との間に挟まれる。
【0052】
上述したように、上ケース部材21と下ケース部材22とが第1~第4連結部28~31により連結されると、放熱板51の第2片(第1積層部)56と上側放熱シート52とは上ケース部材21と下ケース部材22とによって挟まれ、圧縮される。これにより、放熱板51の第2片56と上側放熱シート52とが密着する。
【0053】
図7及び
図8に示すように、下側放熱シート53は、下ケース部材22におけるシート台58の下側に積層されている。したがって、下側放熱シート53は、下ケース部材22の底板22aの下面のうち、上側に凹んだ部分に配置されている。下側放熱シート53は、
図10に示すように、平面視で矩形状に形成されたシート材である。下側放熱シート53は、熱伝導性を有する合成樹脂、例えば、アクリル、その他のアクリル系材料、シリコン系材料等によって形成される。
【0054】
図7及び
図8に示すように、下側放熱シート53の下面は、電気接続箱10が取り付けられる被取付部材100の上面に接触している。下側放熱シート53は、ケース11のボス部11a(
図1参照)がボルト等によって被取付部材100に取り付けられることで、下ケース部材22のシート台58と被取付部材100との間で圧縮される。これにより、下ケース部材22と下側放熱シート53とが密着し、下側放熱シート53と被取付部材100とが密着する。
【0055】
リレー12は、内部の接点が開閉することによって発熱する。リレー12で発生した熱は、端子12aから放熱板51とバスバー13とに伝達される。放熱板51には、上側放熱シート52、下ケース部材22、及び下側放熱シート53が積層され、バスバー13よりも熱容量が大きいので、リレー12で発生した熱はバスバー13よりも放熱板51側へ伝達される。放熱板51に伝達された熱は、上側放熱シート52、下ケース部材22(シート台58)、下側放熱シート53を経て被取付部材100に伝達され、被取付部材100から外部へ放散される。
【0056】
バスバー13の第2片15と放熱板51の第2片56との間には上ケース部材21が配置されており、上ケース部材21が、バスバー13側である電力の供給経路と、放熱板51側である放熱経路とを上下に区画している。そのため、リレー12で発生した熱を放熱板51側へ効率よく伝達し、放散することができる。
【0057】
放熱板51と上側放熱シート52とは、上ケース部材21と下ケース部材22とによって上下から挟まれ密着している。特に上側放熱シート52は放熱板51よりも軟質であるため、上下方向Zに圧縮されて放熱板51に強く密着する。これにより、放熱板51と上側放熱シート52との間の熱伝達が効率よく行われる。
【0058】
上ケース部材21は、天板21aの下面に突条44を有しており、この突条44によって天板21aの反り等の曲げ変形が抑制されている。そのため、天板21aによって放熱板51を上側放熱シート52に均一に押し付けることができ、上側放熱シート52の全体を放熱板51に密着させることができる。
【0059】
天板21aの突条44は、突出部25の突出方向である前後方向Yに沿って延びている。突出部25は、その先端部(前端部)が上下方向Zに曲げ変形しやすくなるので、突条44が前後方向Yに沿って延びていることで、突出部25の曲げ変形を効果的に抑制することができる。
【0060】
天板21aは、突条44の先端において放熱板51に接触しているので、放熱板51との接触面積を小さくすることができる。そのため、放熱板51から天板21aへの熱伝達を抑制し、放熱板51から上側放熱シート52側への放熱を促進することができる。
【0061】
突条44は、下ケース部材22の底板22aに形成されていてもよい。この場合、下ケース部材22の反り等の曲げ変形を突条44によって抑制することができる。また、突条は、上ケース部材21と下ケース部材22との双方に形成されていてもよい。突条44は、左右方向Xに沿って延びていてもよい。
【0062】
ケース11は、上ケース部材21と下ケース部材22とを連結する第1連結部28及び第2連結部29を備えている。第1連結部28と第2連結部29とは、放熱構造50である放熱板51及び上側放熱シート52を間に挟んで前後方向Yに間隔をあけて配置されている。第1連結部28は、ケース11の外周部(突出部25の先端部)に設けられるが、第2連結部29は、ケース11の外周部よりも内部側に配置されている。このような第1連結部28及び第2連結部29を備えることで、放熱板51と上側放熱シート52とを上下のケース部材21,22で挟み込んで確実に密着させることができ、両者の間の熱伝達を効率よく行うことができる。
【0063】
また、ケース11は、突出部25の左右両端部に、上ケース部材21と下ケース部材22とを連結する第3連結部30及び第4連結部31を備えている。そのため、上ケース部材21と下ケース部材22とは、放熱板51及び上側放熱シート52を四方から囲む位置で第1連結部28~第4連結部31によって連結される。これにより、放熱板51及び上側放熱シート52をより確実に密着させることができる。
【0064】
図8及び
図12に示すように、下ケース部材22の底板22aにおいて、第2連結部29の被係合部38は、底板22aを上下方向Zに貫通する開口41の近傍に形成されている。また、下ケース部材22は、
図4にも示すように、開口41と放熱板51との間に、上ケース部材21に向けて上方へ突出する壁部43を有している。この壁部43は、開口41の前端縁に位置している。壁部43の上端と上ケース部材21の天板21aとの間には、隙間tが形成されている。
【0065】
本実施形態では、放熱板51の後方に第2連結部29が配置されており、第2連結部29の係合部37を挿入するための開口41が下ケース部材22に形成されている。そのため、放熱板51と被取付部材100とが空間を介して接近して配置される。放熱板51は導電性を有する部材であり、リレー12の端子12aから電圧が印加されるため、空間を介して被取付部材100に短絡する可能性が生じる。本実施形態では、放熱板51と被取付部材100との間に壁部43が設けられているので、放熱板51と被取付部材100との間の絶縁距離(沿面距離)を延長することができ、放熱板51と被取付部材100との間の絶縁性を高めることができる。
【0066】
図11は、
図2のC-C線断面図である。
図8及び
図11に示すように、上ケース部材21の天板21aに設けられた位置決め突起45は、放熱板51、上側放熱シート52、下ケース部材22、及び下側放熱シート53を上下方向Zに貫通している。
図10にも示すように、放熱板51の第2片56、上側放熱シート52、下側放熱シート53には、上下方向Zに貫通する位置決め孔56a、52a、53aが形成されている。また、下ケース部材22の底板22aにも、上下方向Zに貫通する位置決め孔58dが形成されている。上ケース部材21の位置決め突起45は、これらの位置決め孔56a、52a、53a、58dに挿入されることによって、上ケース部材21、放熱板51、上側放熱シート52、下ケース部材22、及び下側放熱シート53の相対的な位置決めを行う。これにより、これらの部材が適切な位置に配置される。
【0067】
位置決め突起45の下端部45aは、下側放熱シート53を貫通せずに挿入されるだけであってもよい。また、位置決め突起45の下端部45aは、
図8に仮想線で示すように、下側放熱シート53から下方に突出していてもよい。この場合、位置決め突起45の下端部45aを被取付部材100に形成された凹部(図示省略)に嵌合させることで、被取付部材100に対する電気接続箱10の位置決めをも位置決め突起45を用いて行うことができる。
【0068】
図10に示すように、左右に並べて配置される2個の放熱板51は、外形が略同一であるため、ケース11に組み付けるときに左右逆に組み付けてしまう恐れがある。本実施形態の2個の放熱板51には、互いに異なる位置に位置決め孔56aが形成されている。例えば左側の放熱板51には、位置決め孔56aが右側に偏って配置され、右側の放熱板51には、位置決め孔56aが左側に偏って配置されている。そのため、左右の放熱板51を逆に組み付けようとしても、上ケース部材21の各位置決め突起45を位置決め孔56aに挿入することができなくなるので、左右の放熱板51の誤組付を抑制することができる。
【0069】
位置決め突起45は、下ケース部材22に設けられていてもよい。この場合、下ケース部材22の底板22aから上方に突出して上側放熱シート52と放熱板51と上ケース部材21とに挿入される位置決め突起と、底板22aから下方に突出して下側放熱シート53に挿入される位置決め突起とを備えることができる。
【0070】
図8に示すように、放熱板51は、リレー12の端子12aに接続されている。そのため、リレー12内の接点で発生する熱を端子12aから放熱板51に効率よく伝達することができる。
【0071】
また、
図8に示すように、放熱板51とバスバー13とは、リレー12の端子12aの位置において重ねられている。そのため、当該端子12aからバスバー13に電圧を印加し、当該端子12aから放熱板51に熱を伝達することができる。
【0072】
《補記》
なお、上記の実施形態及び各種の変形例については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
10:電気接続箱
11:ケース
11a:ボス部
L1:長辺
L2:短辺
12:リレー
12a:端子
12b:雌ねじ孔
13:バスバー
14:第1片
14a:接続孔
15:第2片(第2積層部)
15a:接続孔
16:接続部材
21:上ケース部材(第1ケース部材)
21a:天板
21b:外周壁
22:下ケース部材(第2ケース部材)
22a:底板
22b:外周壁
23:リレー台
24:バスバー台
25:突出部
26:スリット
28:第1連結部
29:第2連結部
30:第3連結部
31:第4連結部
34:係合部
34a:爪受け部
35:被係合部
35a:爪部
37:係合部(第2連結部)
37a:フック部
37b:係合面
38:被係合部
38a:フック部
38b:係合面
40:開口
41:開口
43:壁部
44:突条
45:位置決め突起(位置決め部)
50:放熱構造
51:放熱板(第1放熱部材)
52:上側放熱シート(第2放熱部材)
52a:位置決め孔
53:下側放熱シート(第3放熱部材)
53a:位置決め孔
55:第1片
55a:接続孔
56:第2片(第1積層部)
56a:位置決め孔
58:シート台(下ケース部材)
58a:上面
58b:下面
58c:突条