(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240910BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240910BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20240910BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20240910BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20240910BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240910BHJP
B60L 50/16 20190101ALN20240910BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60L15/20 J ZHV
B60W20/12
B60K6/445
B60W20/50
B60W10/06 900
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2021025812
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 洋充
(72)【発明者】
【氏名】荒川 諒太
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163406(JP,A)
【文献】特開2019-214251(JP,A)
【文献】特開平10-044894(JP,A)
【文献】特開2019-123336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60L 15/20
B60W 20/12
B60K 6/445
B60W 20/50
B60W 10/06
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載システム
と、地図情報を含むナビゲーション装置とを備える車両の走行制御装置であって、
前記走行制御装置は、
前記車載システムの異常発生に基づいて前記車両が退避走行に移行し、前記退避走行中に前記車両のイグニッションスイッチをオフにすると前記車両の再始動が制限される所定状態になると判断した場合、前記所定状態になる旨を報知
し、
前記退避走行中に前記地図情報を取得して前記車両の現在位置が高速道路上であるか否かを判断し、前記現在位置が前記高速道路上である場合、前記高速道路上におけるユーザの安全確保を促す第1メッセージと、前記高速道路のキロポスト情報のメモを前記ユーザに指示する第2メッセージと、前記キロポスト情報を問う道路緊急ダイヤルへの通話を開始するボタンを伴う第3メッセージとを含む複数の指示を繰り返し報知する、
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動システムに異常が発生して退避走行モードに切換わった際に、制限された車両の状態をユーザに適切に通知する技術が知られている。退避走行モードにおいては、駆動システムが正常である場合に比べて走行性能が制限される。例えば、蓄電装置に蓄えられている電気量により走行可能距離が制限される(以上、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
退避走行モードにおいては、運転者や同乗者といったユーザの安全確保の観点から、車両の再始動を制限することも想定される。車両の再始動を制限することにより、駆動システムに異常が発生した車両の走行が抑制され、ユーザの安全を確保することができる。
【0005】
しかしながら、ユーザが退避走行モードにおける再始動の制限を把握していない場合もある。この場合、ユーザによっては一時的なつもりでイグニッションスイッチをオフして駆動システムを停止する可能性がある。ところが、その後ユーザが改めてイグニッションスイッチをオンして駆動システムの稼働を試みても、車両の再始動が制限されているため、駆動システムは稼働しない。車両の退避が不十分な状態でユーザがイグニッションスイッチをオフしていると、ユーザは困惑する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明では、退避走行中におけるユーザによるイグニッションスイッチのオフ行動を、安全な場所に駐車した後で行うよう注意を促す車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の走行制御装置は、車載システムと、地図情報を含むナビゲーション装置とを備える車両の走行制御装置であって、前記走行制御装置は、前記車載システムの異常発生に基づいて前記車両が退避走行に移行し、前記退避走行中に前記車両のイグニッションスイッチをオフにすると前記車両の再始動が制限される所定状態になると判断した場合、前記所定状態になる旨を報知し、前記退避走行中に前記地図情報を取得して前記車両の現在位置が高速道路上であるか否かを判断し、前記現在位置が前記高速道路上である場合、前記高速道路上におけるユーザの安全確保を促す第1メッセージと、前記高速道路のキロポスト情報のメモを前記ユーザに指示する第2メッセージと、前記キロポスト情報を問う道路緊急ダイヤルへの通話を開始するボタンを伴う第3メッセージとを含む複数の指示を繰り返し報知する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、退避走行中におけるユーザによるイグニッションスイッチのオフ行動を、安全な場所に駐車した後で行うよう注意を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は車両の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】
図2はHVECUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3(a)は所定メッセージの一例である。
図3(b)は所定状態になる旨を表すメッセージの一例である。
【
図4】
図4は繰り返される複数の指示メッセージの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、HV(Hybrid Vehicle:ハイブリッド自動車)を表す車両20は、エンジン22と、エンジンECU(Electronic Control Unit)24と、プラネタリギヤ30と、を備える。また、車両20は、モータMG1,MG2と、モータECU40と、インバータ41,42と、を備える。さらに、車両20は、バッテリ50と、バッテリECU52と、昇圧コンバータ56と、HVECU70と、を備える。その他、図示しないが、車両20はバッテリ50と昇圧コンバータ56との間にDC/DCコンバータを備える。DC/DCコンバータはバッテリ50の電力を補機用バッテリに供給する。なお、補機用バッテリはECU、イグナイタ、ライトといった各種の補機や後述する車載システムに電力を供給する。
【0013】
エンジンECU24、モータMG1,MG2、モータECU40、インバータ41,42、バッテリ50、バッテリECU52、昇圧コンバータ56などによって車両20の駆動システムを含む車載システムが構成される。車両20は、HV走行モードや電動走行(EV走行)モードといった通常走行モードで走行する。HV走行モードはエンジン22の動作を伴って走行するモードである。EV走行モードはエンジン22の動作を伴わずにバッテリ50の電力に従って走行するモードである。
【0014】
エンジンECU24、モータECU40、バッテリECU52、及びHVECU70はいずれもCPU(Central Processing Unit)を中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。これらの各ECUは、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)やデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。なお、ROMはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性メモリを含んでいる。
【0015】
エンジン22はガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する。エンジン22はエンジンECU24により制御される。エンジン22の排気通路には、排気浄化装置23とPMフィルタ25が取り付けられている。排気浄化装置23には、排気中の未燃焼燃料や窒素酸化物を除去する触媒23aが充填されている。PMフィルタ25はセラミックスやステンレスなどにより多孔質フィルタとして形成されている。PMフィルタ25は煤などの粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。
【0016】
エンジンECU24には、エンジン22の動作を制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ(不図示)からのクランクポジションを挙げることができる。また、各種センサからの信号として、排気通路の排気浄化装置23の上流側に取り付けられた空燃比センサ23bからの空燃比を挙げることができる。さらに、各種センサからの信号として、排気浄化装置23の下流側に取り付けられた酸素センサ23cからの酸素信号などを挙げることができる。その他、各種センサからの信号として、PMフィルタ25の上流側に取り付けられた第1圧力センサ25aからの第1圧力、及びPMフィルタ25の下流側に取り付けられた第2圧力センサ25bからの第2圧力も挙げることができる。
【0017】
一方、エンジンECU24は出力ポートを介してエンジン22の動作を制御するための種々の制御信号を出力する。種々の制御信号としては、例えば、燃料噴射弁への駆動信号や、スロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号を挙げることができる。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、HVECU70からの制御信号によりエンジン22の動作を制御する。また、エンジンECU24は、必要に応じてエンジン22の動作状態に関するデータをHVECU70に出力する。
【0018】
プラネタリギヤ30はシングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤ,リングギヤ,キャリアには、モータMG1の回転子、駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36、エンジン22のクランクシャフト26がそれぞれ接続されている。
【0019】
モータMG1は、永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子を備える周知の同期発電電動機として構成されており、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、モータMG1と同様に同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。モータMG1,MG2は、モータECU40によってインバータ41,42を制御することにより駆動する。
【0020】
インバータ41,42は駆動電圧系電力ライン54aによって昇圧コンバータ56に接続されている。駆動電圧系電力ライン54aには、平滑用の平滑コンデンサ57と放電用の放電抵抗58とが並列に接続されている。昇圧コンバータ56は電池電圧系電力ライン54bによってバッテリ50及びSMR(System Main Relay)55に接続されている。SMR55は電池電圧系電力ライン54bのバッテリ50の出力端子側に取り付けられている。電池電圧系電力ライン54bの昇圧コンバータ56側には平滑用のフィルタコンデンサ59が接続されている。
【0021】
モータECU40には、モータMG1,MG2の駆動を制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置などが入力ポートを介して入力されている。また、モータECU40には、平滑コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサからの平滑コンデンサ57の電圧である駆動電圧系電圧や、フィルタコンデンサ59の端子間に取り付けられた電圧センサからのフィルタコンデンサ59の電圧である電池電圧系電圧なども入力されている。
【0022】
モータECU40は、出力ポートを介してインバータ41,42や昇圧コンバータ56を駆動するための制御信号などを出力する。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2の駆動を制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。
【0023】
バッテリ50は例えばリチウムイオン二次電池を含んでいる。バッテリ50はインバータ41,42を介してモータMG1,MG2に電力のやりとりをする。バッテリ50はDC/DCコンバータを介して補機用バッテリに電力を供給する。バッテリECU52はバッテリ50を管理する。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号が入力ポートを介して入力されている。例えば、バッテリECU52には、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサからの電池電圧や、バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた電流センサからの電池電流などが入力されている。
【0024】
バッテリECU52はHVECU70と通信しており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、例えば電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合などを算出する。
【0025】
HVECU70には、駆動制御などに必要な各種信号、例えば、イグニッションスイッチ(IGスイッチと表記)80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションが入力されている。また、HVECU70には、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションなども入力されている。さらに、HVECU70には、GPS(Global Positioning System)88が特定した車両20の現在位置や、運転席近傍に取り付けられたナビゲーション装置(ナビ装置と表記)89からの各種情報などが入力ポートを介して入力されている。
【0026】
なお、GPS88はGPS衛星が発信する電波を受信し、受信した電波に基づいて地表又は地図上における車両20の現在位置を特定する。また、ナビゲーション装置89は道路情報やキロポスト情報などの道路地図情報などを記憶する。道路情報には、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速道路といった道路の種類などの情報が含まれる。キロポスト情報には、高速道路の中央分離帯や路側帯に100メートル間隔で設置されたいくつかのキロポストの情報とGPS88によって特定されたキロポストの設置位置とを対応付けた情報が含まれる。GPS88が車両20の現在位置を特定すると、特定した現在位置に対応するキロポストの情報を特定することができる。
【0027】
HVECU70は、出力ポートを介してSMR55への駆動信号や、運転席の前方のインストールパネルに取り付けられたディスプレイ90への表示信号などの制御信号を出力する。ディスプレイ90はタッチパネルを備えていてもよい。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と各種の制御信号やデータのやりとりを行なっている。したがって、HVECU70はエンジンECU24を介してエンジン22を間接的に制御することができ、また、モータECU40を介して、モータMG1,MG2を間接的に制御することができる。
【0028】
次に、
図2乃至
図4を参照して、HVECU70が実行する処理について説明する。HVECU70は、車載システムが起動している間、車両20の走行及び停車に関わらず、定期的に(例えば1秒周期など)各種の処理を実行する。
【0029】
まず、HVECU70は車載システムにシステム異常が発生したか否かを判断する(ステップS1)。より詳しくは、HVECU70は上述した各種信号やデータの入力の有無や、入力された各種信号やデータに基づいて推定される数値に基づいてシステム異常が発生したか否かを判断する。システム異常が発生していない場合(ステップS1:NO)、HVECU70は処理を終了する。
【0030】
一方、システム異常が発生した場合(ステップS1:YES)、HVECU70は退避走行モードに移行する(ステップS2)。退避走行モードは第1退避走行モードと第2退避走行モードの2種類の走行モードを含んでいる。第1退避走行モードは退避走行モード中にイグニッションスイッチ80をオフしても、車両20の再始動が制限されず、改めてイグニッションスイッチ80をオンして車両20の再始動が可能な走行モードである。一方、第2退避走行モードは退避走行モード中にイグニッションスイッチ80をオフすると、運転者や同乗者といったユーザの安全を確保するために、車両20の再始動が制限(例えば禁止など)される走行モードである。システム異常が発生した場合、HVECU70は車載システムの中の異常部位(具体的には故障部位)を特定し、特定した異常部位に応じて、通常走行モードから第1退避走行モードと第2退避走行モードのどちらかに移行する。
【0031】
例えば特定した異常部位が電池電圧系電力ライン54bであれば、HVECU70は第2退避走行モードに移行する。電池電圧系電力ライン54bが断線してシステム異常が発生した場合、イグニッションスイッチ80をオフからオンに切り替えても、バッテリ50の電力をモータMG1に供給することができない。この結果、モータMG1はプラネタリギヤ30を介してエンジン22を始動することができず、車両20を再始動することができない。
【0032】
また、特定した異常部位がモータMG1であれば、HVECU70は第2退避走行モードに移行する。異常部位がモータMG1の場合、バッテリ50はモータMG2に電力を供給することができ、モータMG2の動力で車両20は退避走行することができる。しかしながら、退避走行中にバッテリ50の電力が枯渇するおそれがある。バッテリ50の電力が枯渇すると、イグニッションスイッチ80をオフからオンに切り替えても、バッテリ50の電力をモータMG1に供給することができず、上記同様、車両20を再始動することができない可能性がある。
【0033】
さらに、特定した異常部位が例えばDC/DCコンバータであれば、HVECU70は第2退避走行モードに移行する。異常部位がDC/DCコンバータの場合、バッテリ50から補機用バッテリへの電力供給が制限(又は遮断)され、補機用バッテリの電力が枯渇する。補機用バッテリの電力が枯渇すると、車載システムを起動できず、車両20を再始動することができない可能性がある。
【0034】
このように、システム異常が発生し、バッテリ50や補機用バッテリの電力を利用できなくなる又はその可能性がある場合に、HVECU70は第2退避走行モードに移行する。第2退避走行モードへの移行と併せて、HVECU70は第2退避走行モードに移行する原因に応じた再始動不可情報を保持する。一方で、システム異常が発生しても、バッテリ50や補機用バッテリの電力を利用できる場合には、HVECU70は第1退避走行モードに移行する。この場合、HVECU70は上述した再始動不可情報に相当する情報を保持しない。
【0035】
ステップS2の処理で退避走行モードに移行すると、HVECU70は車両20の再始動が可能か否かを判断する(ステップS3)。例えば、HVECU70が上述した再始動不可情報を保持していない場合、HVECU70は車両20の再始動が可能であると判断する(ステップS3:YES)。この場合、HVECU70は所定メッセージをディスプレイ90に表示する(ステップS4)。例えば
図3(a)に示すように、HVECU70は「安全な場所に停車してから、販売店に連絡してください。」といった所定メッセージを表示する。HVECU70が再始動不可情報を保持しない第1退避走行モードであれば、ユーザがイグニッションスイッチ80をオフした後に改めてオンに切り替えても、車両20を再始動することができる。
【0036】
一方、HVECU70が再始動不可情報を保持している場合、HVECU70は車両20の再始動が可能でないと判断する(ステップS3:NO)。この場合、HVECU70は車両20の再始動が制限される所定状態になる旨をディスプレイ90に表示する(ステップS5)。すなわち、HVECU70はディスプレイ90を通じてユーザに車両20の再始動が制限される所定状態になる旨を報知する。例えば
図3(b)に示すように、HVECU70は「HVシステムに異常が発生し、退避走行モードに移行しています。退避走行モード中にイグニッションスイッチをオフすると、次回、車両を再始動できない状態になる可能性があります。安全な場所に退避、駐車した上で停止ください。」といった旨を表示する。このような表示により、ユーザによるイグニッションスイッチ80のオフ行動を、より安全な状態で行うことをサポートできる。
【0037】
ステップS5の処理が完了すると、次いで、HVECU70は車両20の現在位置が高速道路上であるか否かを判断する(ステップS6)。より詳しくは、HVECU70はナビゲーション装置89から地図情報を取得し、取得した地図情報とGPS88が特定した車両20の現在位置とに基づいて、車両20の現在位置が高速道路上であるか否かを判断する。車両20の現在位置が、例えば一般道路など、高速道路上でない場合(ステップS6:NO)、HVECU70は所定メッセージをディスプレイ90に表示する(ステップS7)。ステップS7で表示される所定メッセージは、
図3(a)を参照して説明した所定メッセージと基本的に同じであり、詳細な説明は省略する。なお、HVECU70がステップS7の処理を実行する際には、ステップS5の処理によりユーザは既に次回の起動時に走行できない可能性の情報を受け取っている。
【0038】
車両20の現在位置が高速道路上である場合(ステップS6:YES)、HVECU70は複数の指示メッセージをディスプレイ90に繰り返し表示する(ステップS8)。複数の指示メッセージはいずれも高速道路上におけるユーザの安全確保を促す指示を表すメッセージである。HVECU70はディスプレイ90を通じてユーザに高速道路上におけるユーザの安全確保を促す指示を報知する。
【0039】
例えば
図4に示すように、まず、HVECU70は数秒間「パーキングレンジ、サイドブレーキをかけ、ハザードランプを点灯してください。」といった第1指示メッセージを表示する。次に、HVECU70は数秒間「道路緊急ダイヤル(#9910)へ連絡してください(携帯電話も可能)。」及び「以下の高速道路キロポスト情報をメモしてください。」といった第2指示メッセージを高速道路キロポスト情報とともに表示する。なお、高速道路キロポスト情報は、HVECU70がナビゲーション装置89からキロポスト情報を取得し、取得したキロポスト情報とGPS88が特定した車両20の現在位置とに基づいて特定することにより表示することができる。
【0040】
第2指示メッセージの後、HVECU70は数秒間「車外へ退避してください。」及び「ガードレールの外側など、車両から離れた安全な場所から電話してください。」といった第3指示メッセージを第1ボタン91及び第2ボタン92とともに表示する。第1ボタン91は道路緊急ダイヤルへの通話を開始するボタンである。道路緊急ダイヤルへ連絡すると、高速道路キロポストが問われるため、ユーザは高速道路キロポスト情報をメモすることで速やかに返答することができる。第2ボタン92は繰り返される複数の指示メッセージの表示を停止するボタンである。HVECU70が第2ボタン92の押下を検出しない限り、第3指示メッセージの後に再び第1指示メッセージが表示され、以後、順に第2指示メッセージと第3指示メッセージが繰り返し表示される。そして、HVECU70が第2ボタン92の押下を検出すると、HVECU70は処理を終了する。
【0041】
このように、高速道路上でシステム異常が発生した場合、複数の指示メッセージを繰り返し表示することで、ユーザの気の動転を緩和することができる。
【0042】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、ディスプレイ90の表示によるユーザへの報知であったが、車両20が有するスピーカからの音又は音声の出力によるユーザへの報知であってもよい。
【0043】
また、車両20によっては、車両20がDCM(Data Communication Module:車載通信機)を搭載し、ユーザが運転支援等に関する様々な情報を提供する通信サービスを利用している場合がある。この場合、DCMを通じて車両20から通信サービスを提供するコンピュータに高速道路上でのシステム異常や退避走行の情報を送信してもよい。当該情報の受信に応じて、例えばコンピュータやコンピュータのオペレータがユーザの安全確保に繋がる情報を提供できれば、ユーザの困惑を緩和することができる。なお、この情報をコンピュータが受信した際、コンピュータ又はオペレータから高速道路を管理する事務所へ車両20に関する種々の連絡が届くようにしてもよい。
【0044】
さらに、システム異常発生時の車両20の現在位置を送信して、その現在位置にレッカー車が手配されるようにしてもよく、最寄りの販売店の連絡先が提供されるようにしてもよい。さらに、車両20が走行していた高速道路と同じ高速道路を走行する他車のナビゲーション装置に車両20のシステム異常や退避走行などの情報が提供されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
20 車両
24 エンジンECU(車載システムの一部)
40 モータECU(車載システムの一部)
41,42 インバータ(車載システムの一部)
50 バッテリ(車載システムの一部)
52 バッテリECU(車載システムの一部)
70 HVECU(走行制御装置)
80 イグニッションスイッチ
88 GPS
89 ナビゲーション装置
MG1,MG2 モータ(車載システムの一部)