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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240910BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240910BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G02F1/1337 505
G02F1/13 505
G02F1/1333
G02F1/1337 530
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021028267
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129556
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】石川 智也
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-046574(JP,A)
【文献】特開2001-201734(JP,A)
【文献】特開2005-300735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0141682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極を有する第1基板と、
共通電極を有し、表示領域の外側に見切り部を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間において、前記見切り部の外側に配置されるシール
材と、
前記シール材の内側に配置され、液晶を含む液晶層と、を備え、
前記第1基板は、前記液晶を配向させる第1配向膜と、前記シール材と接するとともに
前記見切り部の外側に枠状に配置されるイオン吸着性の第1吸着膜と、を有し、
前記第1配向膜は、第1蒸着膜と、前記第1蒸着膜と前記液晶層との間に配置される第
2蒸着膜と、を含み、
前記第2蒸着膜および前記第1吸着膜は、長軸方向が前記液晶層の厚さ方向と交差する
カラムを含み、
前記第1吸着膜の厚さは、前記第2蒸着膜の厚さより厚く、
平面視において、前記第1配向膜の端部は、前記第1吸着膜の内側の端部と重なるよう
に配置されている、電気光学装置。
【請求項2】
平面視において、前記第1吸着膜は、前記シール材と重なるように配置されている、請
求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記シール材は、前記第1吸着膜を介して前記第1基板と接する、請求項1に記載の電
気光学装置。
【請求項4】
前記第1吸着膜の前記カラムは、酸化ケイ素から成り、
前記第1吸着膜の厚さは、約70nmであり、
前記第2蒸着膜の厚さは、約20nmである、請求項1または請求項2に記載の電気光
学装置。
【請求項5】
前記第1蒸着膜の厚さは、約40nmであり、
前記第1蒸着膜の密度は、前記第2蒸着膜の密度より大きい、請求項3に記載の電気光
学装置。
【請求項6】
前記シール材は、硬化性を有する樹脂を含む、請求項1から請求項のいずれか1項に
記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第2基板は、前記液晶を配向させる第2配向膜と、前記シール材と接して配置され
るイオン吸着性の第2吸着膜と、を有し、
前記第2配向膜は、第3蒸着膜と、前記第3蒸着膜と前記液晶層との間に配置される第
4蒸着膜と、を含み、
前記第4蒸着膜および前記第2吸着膜は、長軸方向が前記液晶層の厚さ方向と交差する
カラムを含み、
前記第2吸着膜の厚さは、前記第4蒸着膜の厚さより厚い、請求項1から請求項のい
ずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1吸着膜と前記見切り部とは、平面的に重ならない、請求項1から請求項のい
ずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気光学装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光変調装置として、液晶装置などの電気光学装置を用いたプロジェクターが知られていた。このようなプロジェクターでは、液晶装置に入射する光束密度が直視型の液晶装置に比べて大きくなる。さらに、プロジェクションマッピングなどの光源の高輝度化によって、液晶装置の液晶層にシール材などに由来するイオン性不純物が溶出し易くなっていた。イオン性不純物は、液晶層中に滞留して液晶の配向の乱れや駆動速度および電圧保持率の低下を誘発し、液晶装置の表示品質を低下させる要因となることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、液晶層に接する第1無機配向膜と、液晶層に対して第1無機配向膜を介して配置される第1無機絶縁膜と、を有する液晶装置が開示されている。該液晶装置では、第1無機絶縁膜は液晶層の厚さ方向に沿って真空蒸着法にて形成され、第1無機配向膜はイオンアシスト蒸着法による斜方蒸着にて形成される。このような形態の液晶装置では、第1無機絶縁膜の厚さを第1無機配向膜の厚さよりも厚くすることにより、耐光性が向上する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-46574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の液晶装置では、第1無機絶縁膜の厚さを第1無機配向膜の厚さよりも厚くすると、表示領域の隅にシミ状の表示不良が発生し易くなるという課題があった。詳しくは、第1無機配向膜の厚さが第1無機絶縁膜の厚さよりも薄くなることによって、第1無機配向膜のイオン吸着性が低下する。酸化ケイ素などから成る第1無機配向膜はイオン吸着性を有するが、厚さが薄くなることによりイオン吸着性が減衰し易くなる。そのため、表示領域を囲んで配置されるシール材から溶出したイオン性不純物は、表示領域外の第1無機配向膜で吸着され難くなる。イオン性不純物が表示領域まで拡散すると、シミ状の表示不良が発生し易くなっていた。すなわち、液晶層におけるイオン性不純物の拡散を抑制する電気光学装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気光学装置は、画素電極を有する第1基板と、共通電極を有し、表示領域の外側に見
切り部を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間において、前記見切り部
の外側に配置されるシール材と、前記シール材の内側に配置され、液晶を含む液晶層と、
を備え、前記第1基板は、前記液晶を配向させる第1配向膜と、前記シール材と接すると
ともに前記見切り部の外側に枠状に配置されるイオン吸着性の第1吸着膜と、を有し、前
記第1配向膜は、第1蒸着膜と、前記第1蒸着膜と前記液晶層との間に配置される第2蒸
着膜と、を含み、前記第2蒸着膜および前記第1吸着膜は、長軸方向が前記液晶層の厚さ
方向と交差するカラムを含み、前記第1吸着膜の厚さは、前記第2蒸着膜の厚さより厚
、平面視において、前記第1配向膜の端部は、前記第1吸着膜の内側の端部と重なるよう
に配置されている
【0007】
電子機器は、上記の電気光学装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置の構成を示す概略平面図。
図2】液晶装置の構成を示す模式断面図。
図3】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
図4】第1吸着膜および第2吸着膜などの配置を示す概略平面図。
図5】第1吸着膜および第2吸着膜などの構成を示す模式断面図。
図6】第2実施形態に係る第1吸着膜および第2吸着膜などの配置を示す概略平面図。
図7】第3実施形態に係る第1吸着膜および第2吸着膜などの配置を示す模式断面図。
図8】第4実施形態に係る電子機器としての投射型表示装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。+Z方向を上方、-Z方向を下方ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。また、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0010】
さらに、例えば基板に対して、基板上に、との記載は、基板の上に接して配置される場合、基板の上に他の構造物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接して配置され、一部が他の構造物を介して配置される場合のいずれかを表す。なお、基板上に設けられる膜や層などの構造物の厚さとは、基板の法線方向であるZ軸に沿う方向における距離を指す。
【0011】
1.第1実施形態
本実施形態では、電気光学装置として薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例示する。本実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置100の構成について、図1から図3を参照して説明する。図2は、図1の線分H-H’を含み、YZ平面に沿う断面を示している。図2では、図示の便宜上、液晶層に含まれる液晶の大きさや数を実際とは異ならせている。
【0012】
図1に示すように、液晶装置100は、第1基板である素子基板10、第2基板である対向基板20、および後述する液晶層を備える。素子基板10と対向基板20は平面的に略矩形である。素子基板10と対向基板20とは、対向基板20の外縁に沿って配置されるシール材60を介して重ねられて接合される。シール材60の内側には、複数の画素Pを含む表示領域Eが設けられる。複数の画素Pは、X軸およびY軸に沿う方向にマトリクス状に配置される。
【0013】
シール材60は、熱硬化性や紫外線硬化性などの硬化性を有する樹脂を含む。これにより、シール材60の原材料を素子基板10および対向基板20に塗工した後に樹脂を硬化させて、シール材60を所望の形状に形成することができる。シール材60には、樹脂や樹脂の硬化剤などの原材料に由来するイオン性不純物が含まれる。このようなイオン性不純物は液晶層へ溶出することがある。本実施形態の液晶装置100では、後述する第1吸着膜および第2吸着膜のイオン吸着性によって、液晶層へのイオン性不純物の拡散が抑えられる。
【0014】
素子基板10は、データ線駆動回路101、2つの走査線駆動回路102、検査回路103、および複数の外部接続用端子104を有する。素子基板10は平面的に対向基板20よりも大きい。素子基板10には、対向基板20と重ならない領域に複数の外部接続用端子104が設けられ、複数の外部接続用端子104とシール材60との間にデータ線駆動回路101が設けられる。
【0015】
シール材60と表示領域Eとの間には、表示領域Eを囲む見切り部24が設けられる。見切り部24は、略矩形であって、2辺がY軸に沿い、他の2辺がX軸に沿う。Y軸に沿う上記2辺には、各々走査線駆動回路102が平面的に重ねられて配置される。2つの走査線駆動回路102は、配線107を介して電気的に接続される。X軸に沿う上記2辺のうち、+Y方向の1辺には検査回路103が平面的に重ねられて配置される。検査回路103は、後述するデータ線と電気的に接続される。
【0016】
データ線駆動回路101および2つの走査線駆動回路102は、外部接続用端子104と電気的に接続される。対向基板20の四隅には上下導通部106が設けられる。
【0017】
図2に示すように、素子基板10と対向基板20とは、シール材60を介してZ軸に沿う方向に対向して、離間されて配置される。液晶層50は、素子基板10と対向基板20との間に配置され、素子基板10、対向基板20、およびシール材60に囲まれる。液晶層50は液晶50aを含む。液晶50aは正または負の誘電異方性を有する。本実施形態では負の誘電異方性を有する液晶50aを採用する。ここで、液晶50aとは、液晶50aを構成する個々の液晶分子、または個々の液晶分子の集合体を指す。
【0018】
素子基板10は、基板本体としての基板10s、トランジスターとしてのTFT30などを含む配線層、画素電極15、第1配向膜としての配向膜18、および第1吸着膜91aを有する。素子基板10では、液晶層50に向かって、基板10s、上記配線層、および画素電極15がこの順番で配置され、さらにその上方に配向膜18および第1吸着膜91aが設けられる。
【0019】
配向膜18は、上方の面が液晶層50に面し、画素電極15と液晶層50との間に配置される。配向膜18は、第1蒸着膜18aおよび第2蒸着膜18bを含む。第1吸着膜91aはイオン吸着性を有する。イオン吸着性とは、液晶層50中のイオン性不純物などを捕捉する特性をいう。第1吸着膜91aは、シール材60と接して配置され、シール材60の下方の面と接する領域と、液晶層50に面する領域とを有する。第1吸着膜91aには酸化ケイ素などの無機材料が採用される。
【0020】
対向基板20は、基板本体としての基板20s、見切り部24、絶縁層25、共通電極21、第2配向膜としての配向膜22、および第2吸着膜91bを有する。対向基板20では、液晶層50に向かって、基板20s、見切り部24、絶縁層25、および共通電極21がこの順番で配置され、さらにその-Z方向に配向膜22および第2吸着膜91bが設けられる。
【0021】
配向膜22は、下方の面が液晶層50に面し、共通電極21と液晶層50との間に配置される。配向膜22は、第3蒸着膜22aおよび第4蒸着膜22bを含む。第2吸着膜91bはイオン吸着性を有する。第2吸着膜91bは、シール材60と接して配置され、シール材60の上方の面と接する領域と、液晶層50に面する領域とを有する。第2吸着膜91bには酸化ケイ素などの無機材料が採用される。
【0022】
配向膜18,22は液晶装置100の光学設計に基づいて形成される。配向膜18,22は、液晶層50の液晶50aを配向させる機能を有する。液晶50aの配向状態は、後述する画像信号に応じて印加される電圧によって変化する。
【0023】
配向膜18,22は、負の誘電異方性を有する液晶50aを略垂直配向させる。配向膜18,22には、例えば、酸化ケイ素などの無機材料が採用される。配向膜18は、第1蒸着膜18aおよび第2蒸着膜18bの2層から成ることに限定されない。配向膜22は、第3蒸着膜22aおよび第4蒸着膜22bの2層から成ることに限定されない。配向膜18,22は、それぞれ3層以上の層を有していてもよい。
【0024】
配向膜18,22は、プレチルトを与えて液晶50aを垂直配向させる。プレチルトの傾斜方向は、X軸およびY軸と交差する方向に沿う。液晶層50が駆動されると、配向膜18,22に対してプレチルトが与えられて垂直配向された液晶50aは、配向状態が上記傾斜方向において変化する。液晶層50のオンとオフとの駆動を繰り返すと、液晶50aはプレチルトの傾斜方向に倒れたり、初期の配向状態に戻ったりする挙動を繰り返す。ここで、配向膜18,22の表面が沿うXY平面に対して、負の誘電異方性を有する液晶50aが、90°未満のプレチルト角を与えられて倒立する配向状態を略垂直配向という。配向膜18,22、第1吸着膜91a、および第2吸着膜91bの詳細については後述する。
【0025】
基板10s,20sには、例えば、ガラス基板や石英基板などの透光性および絶縁性を有する平板が採用される。本明細書において透光性とは、可視光の透過率が50%以上であることをいう。
【0026】
液晶装置100は、透過型であって、対向基板20側である+Z方向から光Lが入射し、液晶層50を介して素子基板10から出射する。光Lは液晶層50を透過する際に、液晶50aの配向状態に応じて変調される。液晶装置100に対する光Lの入射方向は、上記に限定されず、素子基板10から光Lが入射する構成であってもよい。また、液晶装置100は、透過型であることに限定されず、反射型であってもよい。液晶装置100には、ノーマリーホワイトモードやノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。液晶装置100は、光Lの入射側と出射側とに偏光素子を備えてもよい。
【0027】
図3に示すように、液晶装置100は、互いに絶縁された信号配線として、データ線6、走査線3および容量線8を各々複数有する。走査線3はX軸に沿って延在し、データ線6および容量線8はY軸に沿って延在する。なお、容量線8は、Y軸に沿う構成に限定されず、X軸に沿う構成であってもよい。
【0028】
画素電極15、TFT30および容量素子16は、走査線3とデータ線6および容量線8とによって区分された領域に画素Pごと設けられ、画素Pの画素回路を構成する。走査線3、データ線6および容量線8などの信号配線類は、上述の配線層に設けられる。
【0029】
走査線3は、スイッチング素子であるTFT30のゲートに電気的に接続される。データ線6は、TFT30のデータ線側ソースドレイン領域に電気的に接続される。走査線3は、同一行に設けられたTFT30のオン、オフを一斉に制御する。画素電極15は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域に電気的に接続される。
【0030】
データ線6は、上述のデータ線駆動回路101に電気的に接続され、データ線駆動回路101から供給される画像信号を画素Pに供給する。画像信号は、各データ線6へ線順次に供給されてもよく、隣り合う複数のデータ線6へグループごとに供給されてもよい。
【0031】
走査線3は、上述の走査線駆動回路102に電気的に接続され、走査線駆動回路102から供給される走査信号を画素Pに供給する。走査信号は、走査線3へ所定のタイミングにてパルス的に線順次で供給される。
【0032】
走査信号の入力によりTFT30が一定期間オン状態とされ、画像信号が所定のタイミングで画素電極15に印加される。画像信号は、画素電極15を介して液晶層50に所定レベルで書き込まれ、画素電極15と液晶層50を挟んだ共通電極21との間で一定期間保持される。このとき、画像信号に応じて印加される電圧によって、液晶50aの配向状態が変化する。保持された画像信号がリークするのを防ぐため、画素電極15と共通電極21との間に設けられた液晶容量に対して、容量素子16が電気的に並列接続される。容量素子16は、TFT30と容量線8との間の層に設けられる。
【0033】
液晶装置100における、第1吸着膜91a、第2吸着膜91b、および配向膜18,22などの構成について図4および図5を参照して説明する。図4では、対向基板20の外縁を破線としている。図5は、図4における線分J-J’を含み、XY平面と直交する断面である。線分J-J’は、後述する液晶50aのプレチルトの傾斜方向に沿う。図4および図5では、図を見易くするために、液晶装置100における一部の構成の図示を省略している。
【0034】
図4に示すように、第1吸着膜91aと第2吸着膜91bとは、平面視にて略矩形の枠状である。第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは、見切り部24の外側にあって、平面的に互いに重ねられて配置される。第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは、平面的にシール材60とは重なり、見切り部24とは重ならない。
【0035】
これにより、平面的に、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bと表示領域Eとの間には、見切り部24が介在する。そのため、第1吸着膜91aや第2吸着膜91bの形成時に、工程上のばらつきによって位置がずれても、第1吸着膜91aや第2吸着膜91bが見切り部24の領域に留まって表示領域Eに及ぶことが防止される。なお、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは、平面的に見切り部24と重なっていてもよい。
【0036】
第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの外縁は、上下導通部106を避けながら、対向基板20の外縁に沿って配置される。シール材60は、平面的に第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bと全領域において重なる。
【0037】
表示領域Eにおいて、図示しない液晶50aのプレチルトの傾斜方向は、例えば、Y軸と成す方位角θaが45°となるように設定される。プレチルトの傾斜方向は、第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bを斜方蒸着によって形成する際の蒸着方向によって規定される。該蒸着方向については後述する。
【0038】
表示領域Eにおいて、破線の矢印の方向は、素子基板10に対する第2蒸着膜18bの斜方蒸着の蒸着方向であって、右上から左下に向かう方向である。また、実線の矢印の方向は、対向基板20に対する第4蒸着膜22bの斜方蒸着の蒸着方向であって、左下から右上に向かう方向である。以降、上記の方位角θaを、液晶50aにおけるプレチルトの傾斜方向θaともいう。なお、傾斜方向θaが45°とは、表示領域Eの左下と右上とを含む方向に限定されず、左上と右下とを含む方向であってもよい。
【0039】
液晶装置100では、光Lの入射側および出射側に、図示しない偏光素子を各々配置して用いる。2つの偏光素子は、一方の偏光素子の透過軸または吸収軸がX軸またはY軸と平行となり、2つの偏光素子の透過軸または吸収軸が互いに直交するように、液晶装置100に配置される。
【0040】
第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bを形成する際の斜方蒸着の蒸着方向は、平面的に、所望する液晶50aのプレチルトの傾斜方向と一致させる。本実施形態では、表示領域Eにおける2つの偏光素子の透過軸または吸収軸に対して、液晶50aのプレチルトの方位角θaが45°で交差するように、第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bが配置される。これにより、画素電極15と共通電極21との間に駆動電圧を印加して液晶層50を駆動すると、液晶50aがプレチルトの傾斜方向に倒れて、高い透過率が得られる。
【0041】
画素Pを駆動すると、XY平面に対して略垂直配向した液晶50aが傾斜方向θaに振られる挙動を示す。そのため、傾斜方向θaに向かう液晶50aの挙動、換言すれば流れが生じる。従来の液晶装置では、液晶層50に存在するイオン性不純物は、上記流れに沿って液晶層50中を移動して、やがて表示領域Eにおける傾斜方向θaの隅に滞留していた。イオン性不純物が滞留すると、イオン性不純物の偏在に由来するシミ状の表示不良が発生し易くなっていた。すなわち、従来の液晶装置におけるシミ状の表示不良は、表示領域Eの右上の隅および左下の隅に発生し易い傾向があった。
【0042】
図5に示すように、シール材60は、第1吸着膜91aを介して素子基板10と接し、第2吸着膜91bを介して対向基板20と接する。そのため、シール材60と第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bとの接触面積が拡大される。第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bはイオン吸着性を有するため、接触面積の拡大によってシール材60由来のイオン性不純物の液晶層50中への拡散がさらに抑制される。
【0043】
第1吸着膜91aは、素子基板10の主面、換言すればXY平面に対して、長軸方向が角度θcで交差する複数のカラムから成る。第1吸着膜91aのカラムの長軸方向は、液晶層50の厚さ方向であるZ軸に沿う方向と角度(90-θc)°で交差する。角度θcは、例えば約70°である。
【0044】
第1吸着膜91aのカラムは、酸化ケイ素の柱状結晶体である。該カラムは、PVD(Physical Vapor Deposition)法のうちの真空蒸着法にて形成される。具体的には、素子基板10の主面に対して角度θbで交差する蒸着方向Wから、酸化ケイ素を斜方蒸着することにより第1吸着膜91aのカラムが形成される。すなわち、該カラムの長軸方向は柱状結晶の成長方向でもある。なお、角度θbは角度θcと必ずしも一致せず、例えば、約45°である。第1吸着膜91aは、素子基板10に対して配向膜18が形成される前に設けられる。
【0045】
第2吸着膜91bのカラムは、酸化ケイ素の柱状結晶体である。該カラムは真空蒸着法にて形成される。具体的には、対向基板20の主面に対して角度θbで交差する蒸着方向Wから、酸化ケイ素を斜方蒸着することにより第2吸着膜91bのカラムが形成される。第2吸着膜91bは、対向基板20に対して配向膜22が形成される前に設けられる。
【0046】
第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは、複数のカラムの集合体であり、隣り合うカラムの間に間隙が存在する。第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの該間隙に、シール材60由来のイオン性不純物が捕捉されることによって、イオン吸着性が発現する。第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの厚さは、特に限定されないが、例えば約70nmである。第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの厚さを、第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bの厚さよりも厚くすることにより、イオン吸着性が十分に発現する。
【0047】
なお、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは、シール材60に由来しないイオン性不純物に対してもイオン吸着性を有する。シール材60に由来しないイオン性不純物とは、例えば、液晶50aに含まれるもの、液晶50aの劣化成分、および液晶装置100の製造工程で液晶層50に混入するものなどが挙げられる。
【0048】
配向膜18は、第1蒸着膜18aと第2蒸着膜18bとを含む。第2蒸着膜18bは液晶層50に面し、第1蒸着膜18aと液晶層50との間に配置される。配向膜22は、第3蒸着膜22aと第4蒸着膜22bとを含む。第4蒸着膜22bは液晶層50に面し、第3蒸着膜22aと液晶層50との間に配置される。
【0049】
第1蒸着膜18aは、素子基板10の主面に対して、+Z方向から垂直に蒸着されて形成される。第1蒸着膜18aは、長軸方向がZ軸に沿う複数のカラムから成る。第3蒸着膜22aは、対向基板20の主面に対して、-Z方向から垂直に蒸着されて形成される。第3蒸着膜22aは、長軸方向がZ軸に沿う複数のカラムから成る。
【0050】
第1蒸着膜18aは、素子基板10において、第1吸着膜91aが形成された後に真空蒸着法にて設けられる。第3蒸着膜22aは、対向基板20において、第2吸着膜91bが形成された後に真空蒸着法にて形成される。第1蒸着膜18aおよび第3蒸着膜22aの形成材料には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが採用される。
【0051】
第1蒸着膜18aおよび第3蒸着膜22aの密度は、第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bの密度より大きい。これは、真空蒸着法による垂直方向からの蒸着では、蒸着分子の持つエネルギーが斜方蒸着と比べて大きく、形成時の蒸着分子の再配列による緻密化が起こり易いためである。これにより、第1蒸着膜18aと素子基板10における下地の層との密着性、および第3蒸着膜22aと対向基板20における下地の層との密着性が向上する。第1蒸着膜18aおよび第3蒸着膜22aの厚さは、例えば、約40nmである。
【0052】
第2蒸着膜18bは、平面的に、第1蒸着膜18aの上方に接して配置される。第2蒸着膜18bは、素子基板10の主面に対して、長軸方向が角度θdで交差する複数のカラムから成る。第2蒸着膜18bのカラムの長軸方向は、液晶層50の厚さ方向と角度(90-θd)°で交差する。
【0053】
第2蒸着膜18bは、素子基板10において、第1吸着膜91aおよび第1蒸着膜18aが形成された後に設けられる。本実施形態では、第2蒸着膜18bの形成材料に酸化ケイ素を採用し、真空蒸着法による斜方蒸着にて上記カラムを形成する。該斜方蒸着の方向は、第1吸着膜91aの蒸着方向Wと同じ方向とする。これにより、角度θdは角度θcと等しくなる。これにより、第1吸着膜91aと第2蒸着膜18bとを同様な方法で形成することができる。なお、角度θdは角度θcと等しいことに限定されない。
【0054】
第4蒸着膜22bは、平面的に、第3蒸着膜22aの-Z方向に接して配置される。第4蒸着膜22bは、対向基板20の主面に対して、長軸方向が角度θdで交差する複数のカラムから成る。第4蒸着膜22bのカラムの長軸方向は、液晶層50の厚さ方向と角度(90-θd)°で交差する。
【0055】
第4蒸着膜22bは、対向基板20において、第2吸着膜91bおよび第3蒸着膜22aが形成された後に設けられる。本実施形態では、第4蒸着膜22bの形成材料に酸化ケイ素を採用し、真空蒸着法による斜方蒸着にて上記カラムを形成する。該斜方蒸着の方向は、第2吸着膜91bの蒸着方向Wと同じ方向とする。これにより、角度θdは角度θcと等しくなる。これにより、第2吸着膜91bと第4蒸着膜22bとを同様な方法で形成することができる。なお、角度θdは角度θcと等しいことに限定されない。
【0056】
配向膜18,22による液晶50aのプレチルト角は、上述した形態において約85°となる。なお、プレチルトの傾斜方向は、液晶装置100の光学設計に応じて適宜設定される。
【0057】
第1吸着膜91aの厚さは、第2蒸着膜18bの厚さよりも厚く、第2吸着膜91bの厚さは、第4蒸着膜22bの厚さよりも厚い。第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bの厚さは、例えば、約20nmである。第1吸着膜91aの厚さが第2蒸着膜18bの厚さよりも厚く、第2吸着膜91bの厚さが第4蒸着膜22bの厚さより厚いため、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bのイオン吸着性を向上させることができる。
【0058】
配向膜18の一部である端部181は、第1吸着膜91aに乗り上げて配置される。端部181は、配向膜18を形成する領域を、平面的に第1吸着膜91aと重ねることによって形成される。そのため、端部181は第1吸着膜91aの上方に突出して配置される。
【0059】
配向膜22の一部である端部221は、第2吸着膜91bに乗り上げて配置される。端部221は、配向膜22を形成する領域を、平面的に第2吸着膜91bと重ねることによって形成される。そのため、端部221は第2吸着膜91bの-Z方向に突出して配置される。
【0060】
端部181は、第1吸着膜91a上にあって壁の様に作用する。端部221も、第2吸着膜91b上にあって壁の様に作用する。そのため、シール材60から液晶層50に溶出してくるイオン性不純物が、端部181,221によって、表示領域Eへ拡散し難くなる。これにより、イオン性不純物による表示不良をさらに低減することができる。
【0061】
第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bのイオン吸着性を確保する観点から、端部181,221による乗り上げは、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの一部に留めることが好ましい。すなわち、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの表面は液晶層50に面していることが好ましい。なお、端部181,221は省略されてもよい。
【0062】
素子基板10および対向基板20の表面には、シランカップリング剤による表面処理を施してもよい。具体的には、素子基板10の第2蒸着膜18bおよび対向基板20の第4蒸着膜22bの表面に、シランカップリング剤を用いてオルガノポリシロキサン膜を形成する。
【0063】
シランカップリング剤は、第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bの酸化ケイ素にシラノール基が結合して脱水縮合することにより、表面側に疎水基が配向したオルガノポリシロキサン膜と成る。この表面処理によって、第2蒸着膜18bおよび第4蒸着膜22bの表面は水に対する接触角が大きくなり、液晶装置100の耐光性を向上させることができる。シランカップリング剤による表面処理は、第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bの表面に施されてもよい。シランカップリング剤による表面処理の方法としては、公知の方法が採用可能である。
【0064】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0065】
シール材60から液晶層50に溶出するイオン性不純物の拡散を抑制することができる。詳しくは、第2蒸着膜18bより厚く、イオン吸着性を有する第1吸着膜91aと、第4蒸着膜22bよりも厚く、イオン吸着性を有する第2吸着膜91bとが、シール材60と接して配置される。そのため、第1蒸着膜18aの厚さを第2蒸着膜18bの厚さより厚くし、第3蒸着膜22aの厚さを第4蒸着膜22bの厚さより厚くしても、シール材60由来のイオン性不純物が第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bに吸着され易くなる。これにより、液晶層50中でのイオン性不純物の拡散が抑えられる。すなわち、液晶層50におけるイオン性不純物の拡散を抑制する液晶装置100を提供することができる。
【0066】
2.第2実施形態
本実施形態では、電気光学装置としてTFTを備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例示する。本実施形態に係る液晶装置200は、第1実施形態の液晶装置100に対して、第1吸着膜および第2吸着膜の平面的な形状を異ならせたものである。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位に同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0067】
本実施形態の液晶装置200の構成について、図6を参照して説明する。図6では、図を見易くするために、対向基板20の外縁を破線とすることに加えて、液晶装置200における一部の構成の図示を省略している。なお、以下の図6における説明では、特に断りがない限り、液晶装置200を平面視した状態を述べるものとする。
【0068】
図6に示すように、液晶装置200は、第1基板としての素子基板10、第2基板としての対向基板20、および図示しない液晶層50を備える。素子基板10は、図示しない第1配向膜としての配向膜18と、シール材60と接して配置される第1吸着膜291aと、を有する。対向基板20は、図示しない第2配向膜としての配向膜22と、シール材60と接して配置される第2吸着膜291bと、を有する。
【0069】
第1吸着膜291aおよび第2吸着膜291bはイオン吸着性を有し、各々長軸方向が液晶層50の厚さ方向と交差するカラムを含む。第1吸着膜291aの厚さは、配向膜18の図示しない第2蒸着膜18bの厚さよりも厚い。第2吸着膜291bの厚さは、配向膜22の図示しない第4蒸着膜22bの厚さよりも厚い。
【0070】
第1吸着膜291aと第2吸着膜291bとは略矩形の枠状である。第1吸着膜291aおよび第2吸着膜291bは、見切り部24の外側にあって、互いに重ねられて配置される。第1実施形態の第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは内側の縁が矩形であったのに対して、第1吸着膜291aおよび第2吸着膜291bは内側の縁の四隅に各々湾曲部290が設けられる。液晶装置200は、第1実施形態の液晶装置100に対してこの点が異なる。
【0071】
第1吸着膜91aおよび第2吸着膜91bは、平面的にシール材60と重なり、4つの湾曲部290において見切り部24とも重なる。液晶装置200のその他の構成は、第1実施形態の液晶装置100と同様である。
【0072】
本実施形態によれば第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。4つの湾曲部290により、表示領域Eの外縁の四隅における第1吸着膜291aおよび第2吸着膜291bの面積が拡大する。そのため、シール材60から液晶層50に溶出するイオン性不純物の拡散をさらに抑制することができる。
【0073】
3.第3実施形態
本実施形態では、電気光学装置としてTFTを備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例示する。本実施形態に係る液晶装置300は、第1実施形態の液晶装置100に対して、第1吸着膜および第2吸着膜の平面的な形状を異ならせたものである。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位に同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0074】
本実施形態の液晶装置300の構成について、図7を参照して説明する。図7では、液晶装置300における第1実施形態の図5に相当する断面を示す。また、図を見易くするために、液晶装置300における一部の構成の図示を省略している。
【0075】
図7に示すように、液晶装置300は、第1基板としての素子基板10、第2基板としての対向基板20、および液晶層50を備える。素子基板10は、第1配向膜としての配向膜18と、シール材60と接して配置される第1吸着膜391aと、を有する。対向基板20は、第2配向膜としての配向膜22と、シール材60と接して配置される第2吸着膜391bと、を有する。
【0076】
第1吸着膜391aおよび第2吸着膜391bはイオン吸着性を有し、各々長軸方向が液晶層50の厚さ方向と交差するカラムを含む。第1吸着膜391aの厚さは、配向膜18の第2蒸着膜18bの厚さよりも厚い。第2吸着膜391bの厚さは、配向膜22の第4蒸着膜22bの厚さよりも厚い。
【0077】
第1吸着膜391aと第2吸着膜391bとは、平面的に略矩形の枠状である。第1吸着膜391aおよび第2吸着膜391bは、見切り部24の外側にあって、互いに重ねられて配置される。第1吸着膜391aおよび第2吸着膜391bは、平面的にシール材60と重なる。
【0078】
第1吸着膜391aおよび第2吸着膜391bは、平面的に、内側の縁が図示しない表示領域E側に延長されており、この点が第1実施形態の液晶装置100と異なる。これにより、第1吸着膜391aおよび第2吸着膜391bは、平面的に見切り部24の外縁側と重なる。液晶装置300のその他の構成は、第1実施形態の液晶装置100と同様である。
【0079】
本実施形態によれば第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。第1吸着膜391aおよび第2吸着膜391bは、表示領域E側に平面的な面積が拡大して配置されるため、シール材60などに由来するイオン性不純物がさらに吸着され易くなる。これにより、イオン性不純物の拡散をさらに抑制することができる。
【0080】
4.第4実施形態
本実施形態に係る電子機器として投射型表示装置1000を例示する。
【0081】
図8に示すように、投射型表示装置1000は、ランプユニット1001、色分離光学系のダイクロイックミラー1011,1012、3個の液晶装置1B,1G,1R、反射ミラー1111,1112,1113、リレーレンズ1121,1122,1123、色合成光学系のダイクロイックプリズム1130、投射光学系の投射レンズ1140を備える。
【0082】
ランプユニット1001は、例えば、放電型の光源である。光源の方式はこれに限定されず、発光ダイオード、レーザーなどの固体光源を採用してもよい。
【0083】
ランプユニット1001から出射された光は、ダイクロイックミラー1011,1012によって、各々異なる波長域の3色の色光に分離される。3色の色光とは、略赤色の赤色光R、略緑色の緑色光G、略青色の青色光Bである。
【0084】
ダイクロイックミラー1011は、赤色光Rを透過し、赤色光Rよりも波長が短い、緑色光Gおよび青色光Bを反射する。ダイクロイックミラー1011を透過した赤色光Rは、反射ミラー1111で反射し、液晶装置1Rに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射した緑色光Gは、ダイクロイックミラー1012で反射した後、液晶装置1Gに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射した青色光Bは、ダイクロイックミラー1012を透過して、リレーレンズ系1120へ入射する。
【0085】
リレーレンズ系1120は、リレーレンズ1121,1122,1123、反射ミラー1112,1113を有する。青色光Bは、緑色光Gや赤色光Rと比べて光路が長いため、光束が大きくなりやすい。そのため、リレーレンズ1122を用いて光束の拡大を抑える。リレーレンズ系1120に入射した青色光Bは、リレーレンズ1121によって収束しつつ反射ミラー1112で反射して、リレーレンズ1122の近傍で収束する。そして、青色光Bは、反射ミラー1113およびリレーレンズ1123を経て、液晶装置1Bに入射する。
【0086】
投射型表示装置1000における、光変調装置である液晶装置1R,1G,1Bには、上記実施形態の電気光学装置としての液晶装置が適用される。上記実施形態の液晶装置は、液晶装置1R,1G,1Bに対して1つ以上に適用されればよく、全てに適用されることがより好ましい。
【0087】
液晶装置1R,1G,1Bのそれぞれは、投射型表示装置1000の上位回路と電気的に接続される。したがって、赤色光R、緑色光G、青色光Bの階調レベルを指定する各画像信号が外部回路から上位回路に供給されて処理されると、液晶装置1R,1G,1Bが駆動されて各色光が変調される。
【0088】
液晶装置1R,1G,1Bで変調された赤色光R、緑色光G、青色光Bは、ダイクロイックプリズム1130に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム1130は、入射した赤色光R、緑色光G、青色光Bを合成する。ダイクロイックプリズム1130では、赤色光Rおよび青色光Bが90度に反射し、緑色光Gが透過する。これにより、赤色光R、緑色光G、青色光Bは、カラー画像を表示する表示光として合成されて投射レンズ1140に入射する。
【0089】
投射レンズ1140は、投射型表示装置1000の外側を向いて配置される。表示光は、投射レンズ1140を介して拡大されて出射され、投射対象であるスクリーン1200に投射画像が投射される。
【0090】
本実施形態では、電子機器として投射型表示装置1000を例示したが、これに限定されない。本発明の電気光学装置は、例えば、投射型のHUD(Head-Up Display)、直視型のHMD(Head Mounted Display)、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、液晶テレビなどの電子機器に適用されてもよい。
【0091】
本実施形態によれば、液晶層50中のイオン性不純物の拡散が抑制されて液晶装置1R,1G,1Bの表示品質が向上する。そのため、投射画像の品質に優れる投射型表示装置1000を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
10…第1基板としての素子基板、15…画素電極、18…第1配向膜としての配向膜、18a…第1蒸着膜、18b…第2蒸着膜、20…第2基板としての対向基板、21…共通電極、22…第2配向膜としての配向膜、22a…第3蒸着膜、22b…第4蒸着膜、24…見切り部、50…液晶層、50a…液晶、60…シール材、91a…第1吸着膜、91b…第2吸着膜、100,200,300…電気光学装置としての液晶装置、1B,1G,1R…液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8