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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電気機器収納盤
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240910BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240910BHJP
   H05K 7/18 20060101ALI20240910BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H02M7/48 Z
H05K7/20 G
H05K7/18 K
H02B1/56 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021036172
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136522
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】高田 広
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153166(JP,A)
【文献】特開2008-277482(JP,A)
【文献】特開2007-074865(JP,A)
【文献】特開2013-004598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
H05K 7/20
H02B 1/56
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の盤枠が組み付けられて成る箱状の盤と、
前記盤の内部空間を、上段空間部と下段空間部とに仕切る空間部仕切壁と、
前記上段空間部を、盤正面部側に位置する上段正面側収納室と盤背面部側に位置する上段背面側収納室とに仕切る上段仕切壁と、
前記下段空間部における盤正面部側に位置する下段正面側収納室と、
前記下段空間部における盤背面部側に位置し、前記下段正面側収納室と連通している下段背面側ダクトと、
を備え、
前記空間部仕切壁は、
前記上段正面側収納室と前記下段正面側収納室との両者間を連通している正面側連通口と、
前記上段背面側収納室と前記下段背面側ダクトとの両者間を連通している背面側連通口と、
を備え、
前記盤は、
盤正面部における前記上段空間部側に設けられ、前記上段正面側収納室と連通している上段吸気口と、
盤正面部における前記下段空間部側に設けられ、前記下段正面側収納室と連通している下段吸気口と、
盤天井部における前記上段背面側収納室側に設けられ、当該上段背面側収納室と連通している排気口と、
盤天井部における前記排気口側に設けられ、前記上段背面側収納室内の気体を前記盤の外周側に排気可能な通風機と、
を備えていることを特徴とする電気機器収納盤。
【請求項2】
前記下段正面側収納室に電気機器を収納している状態で、当該電気機器と盤正面部との両者間に介在する通風ガイドを、更に備え、
前記通風ガイドは、
前記空間部仕切壁における前記正面側連通口よりも盤正面部側の位置から盤底部側に延出し、その延出方向の先端部に近づくに連れて前記下段背面側ダクト側に近接するように傾斜して設けられ、
前記延出方向の先端部が、盤底部から所定距離を隔てて位置していることを特徴とする請求項1記載の電気機器収納盤。
【請求項3】
前記上段背面側収納室内を上段収納室と下段収納室とに仕切る収納室仕切壁を、更に備え、
前記収納室仕切壁は、前記盤の天地方向に交差する交差方向のうち一方側に、当該天地方向に貫通した収納室連通口が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電気機器収納盤。
【請求項4】
前記上段空間部には、低圧部品および高圧部品を含む複数個の電気部品が収納され、
前記電気部品のうち低圧部品は、前記上段正面側収納室に配置され、
前記電気部品のうち高圧部品は、前記上段背面側収納室に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の電気機器収納盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種々の電力設備,電気設備等に適用されている電気機器収納盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力設備,電気設備等で適用されている電気機器収納盤(例えば直列多重インバータ等を収納する盤;以下、単に盤と適宜称する)においては、パワー半導体等(IGBT等)のような発熱性の電子部品や制御回路等を具備している電気機器(例えばインバータユニット等の電子部品ユニット)を収納し、当該盤の内部空間(以下、単に盤内部空間と適宜称する)を適宜冷却して温度上昇を抑制できるようにした構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、複数個の盤枠(例えばパネル状や柱状の盤枠)が組み付けられて成る箱状の盤が開示されている(例えば特許文献1の図1等)。この盤においては、例えば盤内部空間における盤正面部側等に、電気機器を収納する収納室が形成され、当該盤内部空間における盤背面部側には、当該盤の天地方向に延在するようにダクト(排気側のダクト)が形成されている。また、盤正面部や盤天井部等においては、吸気口や排気口が設けられ、通風機(吸気ファンや排気ファン)が適宜備えられている。
【0004】
盤内部空間においては、前記のように電気機器を収納する他に、低圧部品(電気的低圧な部品;例えば制御ユニット,リレー回路,UPS等)や高圧部品(電気的高圧な部品;例えばリアクトル,コンデンサ,抵抗等)等の種々の電気部品を収納することもある。
【0005】
例えば特許文献2においては、盤内部空間を多段状に区分し、その区分された各段に対して複数種類の電気機器を適宜振り分けて収納している構成(以下、多段収納構成と適宜称する)が開示されている(例えば特許文献2の図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5648188号公報
【文献】特許第6088157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多段収納構成において、単に盤内部空間の盤背面部側にダクトを設けてしまうと、各段の収納スペースが狭くなってしまい、所望の収納を実現することが困難となるおそれがある。
【0008】
盤内部空間の冷却効率の向上の観点では、例えば当該盤内部空間の盤正面部側にもダクト(吸気側のダクト)を設け、吸気効率(吸気面積)を大きくすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、多段収納構成において、単に盤内部空間の盤背面部側および盤正面部側の両方にダクトを設けた場合には、各段の収納スペースを更に狭めてしまうことになる。さらに、当該ダクトに係る部品点数の増加等により、盤内部空間の圧力損失が大きくなったり、盤構造の複雑化や大型化を招き、結果的に、所望の冷却効率が得られないおそれもある。
【0010】
本発明は、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、盤内部空間の収納効率,冷却効率に貢献可能な電気機器収納盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る電気機器収納盤は、前記の課題を解決できる創作であり、その一態様は、複数個の盤枠が組み付けられて成る箱状の盤と、前記盤の内部空間を、上段空間部と下段空間部とに仕切る空間部仕切壁と、前記上段空間部を、盤正面部側に位置する上段正面側収納室と盤背面部側に位置する上段背面側収納室とに仕切る上段仕切壁と、前記下段空間部における盤正面部側に位置する下段正面側収納室と、前記下段空間部における盤背面部側に位置し、前記下段正面側収納室と連通している下段背面側ダクトと、を備えたものとする。
【0012】
また、前記空間部仕切壁は、前記上段正面側収納室と前記下段正面側収納室との両者間を連通している正面側連通口と、
前記上段背面側収納室と前記下段背面側ダクトとの両者間を連通している背面側連通口と、を備えたものとする。
【0013】
そして、前記盤は、盤正面部における前記上段空間部側に設けられ、前記上段正面側収納室と連通している上段吸気口と、盤正面部における前記下段空間部側に設けられ、前記下段正面側収納室と連通している下段吸気口と、盤天井部における前記上段背面側収納室側に設けられ、当該上段背面側収納室と連通している排気口と、盤天井部における前記排気口側に設けられ、前記上段背面側収納室内の気体を前記盤の外周側に排気可能な通風機と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
前記一態様においては、前記下段正面側収納室に電気機器を収納している状態で、当該電気機器と盤正面部との両者間に介在する通風ガイドを、更に備え、前記通風ガイドは、前記空間部仕切壁における前記正面側連通口よりも盤正面部側の位置から盤底部側に延出し、その延出方向の先端部に近づくに連れて前記下段背面側ダクト側に近接するように傾斜して設けられ、前記延出方向の先端部が、盤底部から所定距離を隔てて位置していることを特徴としても良い。
【0015】
また、前記上段背面側収納室内を上段収納室と下段収納室とに仕切る収納室仕切壁を、更に備え、前記収納室仕切壁は、前記盤の天地方向に交差する交差方向のうち一方側に、当該天地方向に貫通した収納室連通口が設けられていることを特徴としても良い。
【0016】
また、前記上段空間部には、低圧部品および高圧部品を含む複数個の電気部品が収納され、前記電気部品のうち低圧部品は、前記上段正面側収納室に配置され、前記電気部品のうち高圧部品は、前記上段背面側収納室に配置されていることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0017】
以上示したように本発明によれば、電気機器収納盤において内部空間の収納効率,冷却効率に貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】盤1A(または盤1B、または盤1C)を説明するための概略斜視図。
図2】盤正面部11を取り除いた状態において盤1A内を臨んだ概略構成図。
図3】盤側面部13aを取り除いた状態において盤1A内を臨んだ概構成略図。
図4】盤1Aの概略断面図(図3のX-X線断面に相当する概略断面図)。
図5】盤正面部11を取り除いた状態において盤1B内を臨んだ概略構成図。
図6】盤側面部13aを取り除いた状態において盤1B内を臨んだ概構成略図。
図7】盤1Cの概略断面図(図3のX-X線断面に相当する概略断面図)。
図8】盤正面部11を取り除いた状態において盤1C内を臨んだ概略構成図。
図9】収納室仕切壁5を説明するための概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態の電気機器収納盤は、多段収納構成の内部空間において単に盤背面部側や盤正面部側にダクトを設けたような構成(以下、単に従来構成と適宜称する)とは、全く異なるものである。
【0020】
すなわち、本実施形態の盤は、盤内部空間を上段空間部と下段空間部とに仕切る空間部仕切壁と、前記上段空間部を盤正面部側の上段正面側収納室と盤背面部側の上段背面側収納室とに仕切る上段仕切壁と、前記下段空間部において盤正面部側に設けられた下段正面側収納室と、前記下段空間部において盤背面部側に設けられた下段背面側ダクトと、を備えているものである。
【0021】
また、前記空間部仕切壁においては、前記上段正面側収納室と前記下段正面側収納室との両者間を連通している正面側連通口と、前記上段背面側収納室と前記下段背面側ダクトとの両者間を連通している背面側連通口と、を備えているものである。
【0022】
そして、盤天井部の排気口側に設けられた通風機を稼動することにより、盤正面部に設けられた上段吸気口,下段吸気口から外気を取り込んで、盤内部空間に通気させることができる構成となっている。
【0023】
具体的に、上段吸気口から取り込んだ外気においては、まず上段正面側収納室に取り込まれた後、正面側連通口を介して下段正面側収納室に移動してから、下段背面側ダクト,背面側連通口,上段背面側収納室,排気口の順で移動して、盤の外周側に排気されることとなる。
【0024】
すなわち、上段正面側収納室においては、正面側連通口を介して下段正面側収納室と連通している構成であり、収納スペース兼ダクト(吸気側のダクト)として機能させることが可能なものと言える。
【0025】
また、下段吸気口から取り込んだ外気においては、まず下段正面側収納室に取り込まれた後、下段背面側ダクト,背面側連通口,上段背面側収納室,排気口の順で移動して、盤の外周側に排気されることとなる。
【0026】
すなわち、上段背面側収納室においては、背面側連通口を介して下段背面側ダクトと連通している構成であり、収納スペース兼ダクト(排気側のダクト)として機能させることが可能なものと言える。
【0027】
したがって、本実施形態の盤によれば、盤内部空間の収納スペースを、単に電気機器等を収納するだけでなくダクトとして機能させることができるため、従来構成と比較して圧力損失を抑制し易く、優れた冷却効率を得ることが可能である。また、従来構成と比較して所望の収納スペースを確保し易いため、優れた収納効率を得ることも可能となる。さらに、従来構成と比較すると、ダクトに係る部品点数を抑制でき、盤構造の簡略化や小型化に貢献できる可能性もある。
【0028】
本実施形態の盤は、前述のように盤内部空間の収納スペースをダクトとして機能させることができる構成であれば、種々の分野(例えば直列多重インバータ等を収納する盤の分野)の技術常識を適宜適用して設計変形することが可能であり、その一例として以下に示す実施例1~3が挙げられる。なお、実施例1~3において、同様のものには同一符号を付する等により、詳細な説明を適宜省略する。
【0029】
≪実施例1による盤1A≫
<盤1Aの主な構成>
図1図4は、実施例1による盤1Aを説明するための概略構成図である。この盤1Aにおいては、パネル状や柱状の複数個の盤枠を略箱状に組み付けてなり、盤内部空間10が盤正面部11,盤背面部12,盤側面部13a,13b,盤天井部14,盤底部15によって囲繞された構成となっている。
【0030】
盤内部空間10においては、当該盤内部空間10の中央部にて盤1Aの水平方向に延在している平板状の空間部仕切壁16により、上段空間部2と下段空間部3とに仕切られている。具体的に、図中の空間部仕切壁16の場合、後述のリアクトルS31を支持することが可能な支持部16aを有した形状となっている。
【0031】
上段空間部2には、当該上段空間部2の中央部(図中では盤正面部11寄りの中央部)において、盤1Aの天地方向(以下、単に天地方向と適宜称する)および盤側面部13a,13bの両者間方向(以下、単に側面間方向と適宜称する)に延在するように、平板状の上段仕切壁17が設けられている。この上段仕切壁17により、上段空間部2においては、盤正面部11側に位置する上段正面側収納室21と、盤背面部12側に位置する上段背面側収納室22と、に仕切られている。
【0032】
下段空間部3においては、当該下段空間部3における盤正面部11側に、下段正面側収納室31が設けられている。また、下段空間部3における盤背面部12側には、下段正面側収納室31と連通するように、下段背面側ダクト(排気側のダクト)32が設けられている。
【0033】
空間部仕切壁16の盤正面部11側には、天地方向に貫通した正面側連通口18が設けられている。この正面側連通口18により、上段正面側収納室21と下段正面側収納室31との両者間が連通した構成となっている。
【0034】
空間部仕切壁16の盤背面部12側には、天地方向に貫通した背面側連通口19が設けられている。この背面側連通口19により、上段背面側収納室22と下段背面側ダクト32との両者間が連通した構成となっている。
【0035】
盤正面部11における上段空間部2側には、当該盤正面部11の肉厚方向に貫通した上段吸気口11aが設けられ、上段正面側収納室21に外気を取り込めるように構成されている。
【0036】
また、盤正面部11における下段空間部3側には、当該盤正面部11の肉厚方向に貫通した下段吸気口11bが設けられ、下段正面側収納室31に外気を取り込めるように構成されている。
【0037】
盤天井部14における上段背面側収納室22側には、当該盤天井部14の肉厚方向に貫通した排気口14aが設けられている。また、盤天井部14における排気口14a側には、当該排気口14aを覆うように通風機14bが設けられ、上段背面側収納室22内の気体(盤内部空間10に取り込まれた外気)を盤1Aの外周側に排気できるように構成されている。
【0038】
図中の盤1Aにおける下段正面側収納室31の場合、当該下段正面側収納室31に収納された電気機器と盤正面部11との間に対し、天地方向および側面間方向に延在するように平板メッシュ状の保護カバー33が設けられている。この保護カバー33においては、当該保護カバー33の肉厚方向に貫通した通気孔33aがメッシュ状に設けられており、これにより、下段正面側収納室31内の通気を妨げないように、当該下段正面側収納室31に収納した電気機器を遮蔽して保護できる構成となっている。
【0039】
<盤1Aの収納構成例>
盤1Aにおいては、種々の電気機器や電気部品を収納することが可能であるが、例えば図2図4中の二点鎖線で示すように、インバータユニットS1,低圧部品S2,高圧部品S3を有した直列多重インバータ(以下、多重インバータSと適宜称する)を収納することが挙げられる。
【0040】
図中の盤1Aの場合、下段正面側収納室31に、複数個(図中では、天地方向に5段,側面間方向に3列で配列して15個)のインバータユニットS1が収納されている。このインバータユニットS1は、特に限定されるものではないが、その一例として、パワー半導体等(IGBT等)のような発熱性の電子部品や制御回路等を具備した構成が挙げられる。
【0041】
下段正面側収納室31には、複数個のインバータユニットS1が、天地方向および側面間方向に所定間隔を隔てて配列(天地方向5段,側面間方向3列で配列)するように収納されている。
【0042】
上段正面側収納室21には、低圧部品S2が収容されている。この低圧部品においても、特に限定されるものではないが、その一例として、制御ユニット,リレー回路(例えば通風機14bに係るリレー回路),UPS等の電気的低圧(例えば高圧部品S3と比較して低圧)な部品が挙げられる。
【0043】
上段背面側収納室22には、高圧部品S3が収納されている。この高圧部品S3においても、特に限定されるものではないが、その一例として、図示するようにリアクトルS31,コンデンサS32,抵抗S33等の電気的高圧(例えば低圧部品S2と比較して高圧)な部品を有してなる出力フィルタ等が挙げられる。
【0044】
<盤1Aの通気構成例>
盤1Aにおいて、通風機14bを稼動して上段背面側収納室22内の気体を排気すると、盤内部空間10が、盤1Aの外周側よりも負圧となる。これにより、上段吸気口11aから上段正面側収納室21に対して外気が取り込まれると共に、下段吸気口11bから下段正面側収納室31に対して外気が取り込まれる。
【0045】
このように上段吸気口11a,下段吸気口11bから取り込まれた外気(以下、それぞれを単に上段側取込外気,下段側取込外気と適宜称し、必要に応じて纏めて単に取込外気と適宜称する)は、例えば図中の直線状矢印で示すように盤内部空間10を移動し、排気口14aおよび通風機14bを介して盤1の外周側に排気される。これにより、盤内部空間10が冷却されて、温度上昇が抑制されることとなる。
【0046】
具体的に、上段正面側収納室21に収納されている低圧部品S2は、上段側取込外気により、冷却(吸熱)されることとなる。
【0047】
下段正面側収納室31に収納されているインバータユニットS1は、下段取込外気と、上段正面側収納室21内から正面側連通口18を経由して移動した上段側取込外気と、により冷却されることとなる。
【0048】
上段背面側収納室22に収納されている高圧部品S3は、下段正面側収納室31内から下段背面側ダクト32,背面側連通口19を順に経由して移動した取込外気により、冷却されることとなる。
【0049】
以上のように、通風機14bを稼動して盤1Aを通気させることにより、多重インバータSのうち冷却要求が比較的高い部位の一つであるインバータユニットS1を、高圧部品S3よりも優先的に冷却することができる。
【0050】
例えば一般的な多重インバータSの場合、高圧部品S3は、インバータユニットS1よりも比較的高い温度で動作することが考えられる。このため、たとえ下段正面側収納室31を通過した後の取込外気(例えばインバータユニットS1の動作熱を吸熱した取込外気)であっても、上段背面側収納室22に収納されている高圧部品S3を十分冷却することが可能となる。
【0051】
<その他>
上段吸気口11a,下段吸気口11b,排気口14a,正面側連通口18,背面側連通口19(以下、これらを纏めて単に各種通気口と適宜称する)の形状等は、適宜設定することが可能であり、特に限定されるものではない。その一例としては、スリット状,円形状,矩形状等の孔が1つ以上穿設されて成る態様が挙げられる。また、各種通気口に図外のフィルタ等を設けることにより、盤内部空間10に対して異物等が混入しないように防止(あるいは盤内部空間10から異物が排出しないように防止)することも挙げられる。
【0052】
また、多重インバータSの収納性やメンテナンス性等を考慮して、盤正面部11において図外のヒンジ等を介して開閉可能な扉構造(観音扉構造,片開き扉構造等)にしたり、上段仕切壁17,保護カバー33等を着脱自在な構成にすることが挙げられる。
【0053】
通風機14bにおいては、例えば回転式ファン・ブレードを備えて成るものを適用することが挙げられる。
【0054】
以上示したような盤1Aによれば、盤内部空間10の上段正面側収納室21,上段背面側収納室22を、単に低圧部品S2や高圧部品S3を収納するだけでなくダクトとして機能させることができる。また、従来構成と比較して、所望の収納スペースを確保し易く、ダクトに係る部品点数を抑制できる。
【0055】
これにより、従来構成と比較して、所望の収納効率,冷却効率が得られ易くなり、盤構造の簡略化や小型化に貢献し易くもなる。
【0056】
≪実施例2による盤1B≫
盤1Aの下段正面側収納室31においては、取込外気の流量分布を均一化し、当該下段正面側収納室31に収納されている各インバータユニットS1を同様に冷却することが好ましい。
【0057】
しかしながら、例えば天地方向の寸法が大きくなってしまうと(例えば収納するインバータユニットS1の収納段数が多くなると)、下段正面側収納室31の盤底部15側に近づくに連れて上段側取込外気の流量が減少し、当該上段側取込外気による冷却効果が小さくなってしまう。
【0058】
すなわち、当該下段正面側収納室31の盤底部15側に収納されている各インバータユニットS1を所望通りに冷却(例えば各インバータユニットS1を同様に冷却)できず、多重インバータSの動作が不安定になるおそれもある。
【0059】
例えば、通風機14bの大型化や高出力化を図ることにより、下段正面側収納室31の取込外気の流量分布の均一化を図ることが考えられるが、盤構造の大型化や高コスト化を招くおそれがある。
【0060】
そこで、本実施例2では、図5図6に示すような盤1Bを構成することにより、下段正面側収納室31の取込外気の流量分布を均一化し易くした。
【0061】
<盤1Bの主な構成>
図5図6に示す盤1Bは、下段正面側収納室31におけるインバータユニットS1と盤正面部11との両者間(吸気ダクト)に、通風ガイド4が設けられている。
【0062】
この通風ガイド4は、空間部仕切壁16における正面側連通口18よりも盤正面部11側の位置から、盤底部15側に垂れ下がって延出するように設けられている。
【0063】
また、通風ガイド4は、前記延出方向の先端部41に近づくに連れて下段背面側ダクト32側に近接するように、傾斜した姿勢となっている。
【0064】
さらに、通風ガイド4の先端部41は、盤底部15から所定距離を隔てて位置(図中では盤底部15側から2段目,3段目に収納されているインバータユニットS1間に位置)している。先端部41と盤底部15との両者間(以下、単に両者間隙と適宜称する)においては、保護カバー33が設けられており、下段側取込外気が通過できるように構成されている。
【0065】
図中の先端部41においては、当該先端部41から下段背面側ダクト32側に折曲された形状の折曲部42を、有している。
【0066】
以上示したような盤1Bによれば、盤1Aと同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、下段正面側収納室31における上段側取込外気の移動経路を、当該下段正面側収納室31の空間部仕切壁16側に狭めるように制限(図中では盤底部15側から3段目,4段目,5段目に収納されているインバータユニットS1の収納領域に制限)できる。これにより、下段正面側収納室31の空間部仕切壁16側を移動する上段側取込外気において、所望の流量が得られ易くなる。
【0067】
一方、下段正面側収納室31における下段側取込外気の移動経路は、当該下段正面側収納室31の盤底部15側に狭めるように制限(図中では盤底部15側から1段目,2に収納されているインバータユニットS1の収納領域に制限)できる。これにより、下段正面側収納室31の盤底部15側を移動する下段側取込外気において、所望の流量が得られ易くなる。
【0068】
したがって、例えば通風ガイド4の延出方向寸法(すなわち両者間隙の寸法に相当),傾斜姿勢等を適宜設定することにより、下段正面側収納室31における取込外気の流量分布の均一化を図ることが可能となる。
【0069】
また、図中の通風ガイド4の場合、折曲部42を有した構成であるため、下段正面側収納室31における上段側取込外気や下段側取込外気が下段背面側ダクト32方向に整流され易くなる。
【0070】
≪実施例3による盤1C≫
盤1A,盤1Bの上段背面側収納室22に収納されている複数個の高圧部品S3の動作熱がそれぞれ異なる場合、通風機14bを適宜稼動しても、当該各高圧部品S3の一部(比較的高い動作熱を発生する高圧部品S3)の冷却が不十分となるおそれがある。
【0071】
例えば、図中の高圧部品S3が出力フィルタの場合、リアクトルS31においては、比較的高い動作熱を発生し易く、冷却が不十分となってしまうことが考えられる。
【0072】
そこで、本実施例3では、図7図9に示すような盤1Cを構成することにより、上段背面側収納室22に収納されている複数個の高圧部品S3のうちの一部(図中では比較的高い動作熱を発生し得るリアクトルS31)を、その残部(図中では比較的低い動作熱を発生し得るコンデンサS32,抵抗S33)と比較して、重点的に冷却し易くなるようにした。
【0073】
<盤1Cの主な構成>
図7図9に示す盤1Cは、上段背面側収納室22の中央部に、盤1Cの水平方向に延在している平板状の収納室仕切壁5が設けられている。この収納室仕切壁5により、上段背面側収納室22が上段収納室51と下段収納室52とに仕切られている。
【0074】
また、収納室仕切壁5は、当該収納室仕切壁5の盤側面部13b側において、天地方向に貫通した収納室連通口50が設けられている。
【0075】
図中の上段背面側収納室22の場合、上段収納室51の盤側面部13a側にコンデンサS32が配置されており、下段収納室52の盤側面部13a側には抵抗S33が配置されている。また、当該上段背面側収納室22の盤側面部13b側においては、リアクトルS31が収納室連通口50に挿通された姿勢で配置されている。
【0076】
以上示したような盤1Cによれば、盤1Aと同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、下段正面側収納室31内から下段背面側ダクト32,背面側連通口19を順に経由して上段背面側収納室22に移動した取込外気においては、その取込外気の移動経路が収納室連通口50を通過するように制限され、当該収納室連通口50付近での流速が速くなる(すなわち、当該取込外気の流量が大きくなる)。
【0077】
したがって、図中の盤1Cの場合には、収納室連通口50付近に配置されているリアクトルS31が、コンデンサS32,抵抗S33よりも冷却され易くなる。すなわち、上段背面側収納室22に収納した複数個の高圧部品S3の動作熱がそれぞれ異なる場合であっても、それら各高圧部品S3を十分に冷却し易くなる。
【0078】
なお、盤1Bにおいても、盤1Cと同様に、上段背面側収納室22に収納室仕切壁5を設けることが可能であり、これにより当該盤1Cと同様の作用効果を奏することとなる。
【0079】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0080】
例えば、盤1A~盤1Cに用いられる盤枠や、盤内部空間に設けられる空間部仕切壁16,上段仕切壁17,保護カバー33,通風ガイド4,収納室仕切壁5等においては、種々の材料を用いてなるものを適用することができ、その一例として金属材料,樹脂材料等を適宜選択して成るものが挙げられる。
【符号の説明】
【0081】
1A,1B,1C…盤
10…盤内部空間
11,12,13a,13b,14,15…盤枠(盤正面部,盤背面部,盤側面部,盤側面部,盤天井部、盤底部)
11a,11b…吸気口(上段吸気口,下段吸気口)
14a…排気口
14b…通風機
16…空間部仕切壁
17…上段仕切壁
18,19,50…連通口(正面側連通口,背面側連通口,収納室連通口)
21,22,31…収納室(上段正面側収納室,上段背面側収納室,下段正面側収納室)
32…下段背面側ダクト
4…通風ガイド
5…収納室仕切壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9