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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】メモリ制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/16 20060101AFI20240910BHJP
   G06F 12/00 20060101ALI20240910BHJP
   G06F 12/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G11C16/16
G06F12/00 597U
G06F12/02 530E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021036806
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137330
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上松 尚
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-225922(JP,A)
【文献】特開2009-295241(JP,A)
【文献】特開2012-68765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/16
G06F 12/00
G06F 12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板(7)上のpウエル上に設けられた物理セクタ(Ps0、Ps1)を有し、前記物理セクタは、ワードラインに接続された論理セクタ(Lg0~Lg63)を複数含み、前記論理セクタの一部であるページ単位でデータの書き込みが行われ、前記論理セクタ単位でデータの消去が行われ、前記物理セクタ単位で消去電圧が印加されるメモリデバイス(4)において、書き込み及び消去に係る動作を制御するメモリ制御方法であって、
前記物理セクタは、少なくとも二つのセクタ(Ps01、Ps02)に論理分割され、
論理分割された物理セクタの単位で一括消去が行われるメモリ制御方法。
【請求項2】
前記論理セクタへの書き込みは、予め決められた順番で行われる請求項1に記載のメモリ制御方法。
【請求項3】
前記論理セクタに任意のデータが書き込まれた時、書き込みを行ったことを示す書き込み完了フラグがさらに書き込まれ、当該書き込み完了フラグに基づいて、次に書き込みを行う前記論理セクタのアドレスが判定される請求項1または2に記載のメモリ制御方法。
【請求項4】
前記論理分割された物理セクタにデータが書き込み済みであるか未書き込みであるかの判断に基づき、次に書き込みを行う前記論理セクタのアドレスが判定される請求項1または2に記載のメモリ制御方法。
【請求項5】
前記論理分割された物理セクタの未書き込みメモリセルの容量が判定され、
前記未書き込みメモリセルが所定の容量閾値以下の場合、前記論理分割された物理セクタの単位で一括消去が行われる請求項1~4のいずれか一項に記載のメモリ制御方法。
【請求項6】
前記論理分割された物理セクタのデータが一括消去される前に、当該論理分割された物理セクタに書き込まれている任意のデータが、未書き込みの別の前記論理分割された物理セクタにコピーされる請求項1~5のいずれか一項に記載のメモリ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的に一括消去可能な不揮発性メモリ、すなわちフラッシュメモリにおいて、消去を頻繁に行うと、消去ディスターブにより非消去対象データのデータ化けが発生するという課題があることが知られている。
【0003】
例えば特許文献1によると、消去ディスターブは、選択したメモリセルの消去中において、非選択状態のメモリセルに印加される電圧により、非選択状態のメモリセルのフローティングゲートの電荷保持量が変化することを意味する。ディスターブは、希望しないメモリセルのしきい値電圧が変化するものであり、対策を講じない場合、記憶情報が失われるという結果をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3397847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等にも指摘されている通り、フラッシュメモリでは、論理セクタのデータ消去時、同一物理セクタ内の論理セクタが消去ストレスの影響を受け、書き込み済みデータのデータ化けが発生する可能性がある。通常、フラッシュメモリは、数千回の消去ストレスの印加に対して非消去セクタのデータ化けが無いように設計されることが多い。しかし、内部動作パラメータやメモリの設計仕様により、数十回の消去ストレスで消去ディスターブによるデータ化けが発生する場合がある。
【0006】
この問題に対し、半導体メーカーによるフラッシュメモリ自体のディスターブ耐性を向上させる製品開発とは別に、フラッシュメモリを使用するユーザーの視点から、消去ディスターブが発生しにくくなるように使用方法を改善するアプローチに着目する。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、フラッシュメモリの消去ディスターブを回避するメモリ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メモリデバイスにおいて、書き込み及び消去に係る動作を制御するメモリ制御方法に係る。メモリデバイスは、シリコン基板(7)上のpウエル上に設けられた物理セクタ(Ps0、Ps1)を有し、物理セクタは、ワードラインに接続された論理セクタ(Lg0~Lg63)を複数含む。このメモリデバイスは、論理セクタの一部であるページ単位でデータの書き込みが行われ、物理セクタ単位で消去電圧が印加される。
【0009】
本発明では、物理セクタは、少なくとも二つのセクタ(Ps01、Ps02)に論理分割され、論理分割された物理セクタの単位で一括消去が行われる。
【0010】
物理セクタ内で消去が任意に行われると、消去電圧が印加される度に同一物理セクタ内の非消去対象論理セクタへも消去ストレスが発生するため、消去ストレスの印加回数が増大する。それに対し、本発明のメモリ制御方法では、書き込み可能な論理セクタが有るときは消去を行わず、書き込み可能な論理セクタが無くなった時点で一括消去するように制御する。これにより、書き込み済みセルに対する消去ストレスの発生が1回のみになる。したがって、消去ディスターブを回避することができる。
【0011】
好ましくは、論理セクタへの書き込みは、予め決められた順番で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フラッシュメモリの概略構成を示す図。
図2】電動パワーステアリング装置の概略構成図。
図3】電動パワーステアリング装置における1マイコン仕様の制御部内部にフラッシュメモリが搭載された構成例1の図。
図4】電動パワーステアリング装置における1マイコン仕様の制御部に対し外付けフラッシュメモリが接続された構成例2の図。
図5】電動パワーステアリング装置における2マイコン仕様の制御部内部にフラッシュメモリが搭載された構成例3の図。
図6】電動パワーステアリング装置における2マイコン仕様の制御部に対し外付けフラッシュメモリが接続された構成例4の図。
図7】本実施形態のメモリ制御方法の概念を説明する図。
図8】フローチャート中の記号n、mの意味を説明する補足図。
図9】第1実施形態のメモリ制御方法のフローチャート。
図10】第2実施形態のメモリ制御方法のフローチャート。
図11図10のS01Bのサブフローチャート。
図12】論理分割された物理セクタ単位での一括消去のフローチャート。
図13】比較例のメモリ制御方法の概念を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のメモリ制御方法の実施形態を図面に基づいて説明する。このメモリ制御方法は、メモリデバイスにおいて、書き込み及び消去に係る動作を制御する方法である。フラッシュメモリ、又は、フラッシュメモリを搭載したマイコンが「メモリデバイス」に相当する。
【0014】
図1を参照し、「メモリデバイス」としてのフラッシュメモリの概略構成について説明する。フラッシュメモリ4は、シリコン基板7上のpウエル上に設けられた物理セクタを有する。物理セクタは、ワードラインに接続された論理セクタを複数含む。このフラッシュメモリ4は、論理セクタの一部であるページ単位でデータの書き込みが行われ、論理セクタ単位でデータの消去が行われ、物理セクタ単位でデータの消去電圧が印加される。
【0015】
図1において、物理セクタ0の符号をPs0と記し、物理セクタ1の符号をPs1と記す。物理セクタ0はpウエル0上に設けられており、物理セクタ1はpウエル1上に設けられている。また、論理セクタ0の符号をLg0と記し、論理セクタ1の符号をLg1と記す。
【0016】
フラッシュメモリは、内部動作パラメータやメモリの設計仕様により、数十回の消去ストレスで消去ディスターブによるデータ化けが発生する場合がある。そこで本実施形態では、フラッシュメモリの消去ディスターブを回避するメモリ制御方法を提供することを目的とする。
【0017】
次に図2図6を参照し、電動パワーステアリング装置における操舵アシストモータの制御部にフラッシュメモリを用いた構成例について説明する。フラッシュメモリは、モータの通電制御に係る制御情報や異常情報等の記憶に用いられる。
【0018】
図2に、電動パワーステアリング装置1を含むステアリングシステム99の全体構成を示す。図2にはコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置を例示するが、ラックアシスト式でもよい。制御ユニット1は、例えばモータ80と一体に構成されている。なお図2では、電動パワーステアリング装置及び制御ユニットの符号として、図3図4に対応する符号「1」、「10」を用いる。図5図6に対応する場合、符号が「2」、「20」に代わる。
【0019】
ステアリングシステム99は、ハンドル91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98および電動パワーステアリング装置90等を含む。ステアリングシャフト92の先端に設けられたピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には一対の車輪98が設けられている。ドライバがハンドル91を回転させると、ハンドル91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によりラック軸97の直線運動に変換され、ラック軸97の変位量に応じた角度に一対の車輪98が操舵される。
【0020】
電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクセンサ94、制御ユニット10、モータ80等を含む。操舵トルクセンサ94はドライバの操舵トルクを検出する。制御ユニット10は、操舵トルク等の情報から演算された要求トルクに応じて電圧指令を演算し、インバータで生成した電力をモータ80に供給する。モータ80が出力した操舵アシストトルクは、減速ギアを介してステアリングシャフト92に伝達される。
【0021】
図3図6に、電動パワーステアリング装置の制御部を構成するマイコンにフラッシュメモリが利用された構成例を示す。図3及び図4は、特開2019-119417号公報(対応US公報:US2019/0210637A1)の図3に対応し、1マイコン仕様の制御部にフラッシュメモリが利用されている。図5及び図6は、同文献の図15に対応し、2マイコン仕様の制御部にフラッシュメモリが利用されている。
【0022】
まず図3図4を参照する。電動パワーステアリング装置1は、制御ユニット10及びモータ80を備える。モータ80は二組の三相巻線組180、280を有する二重巻線式の三相ブラシレスモータである。制御ユニット10は、各巻線組180、280に対応して設けられた二系統のインバータ110、210、回転角センサ30、及び、一つのマイコン50を含む。回転角センサ30は二つのセンサ部130、230を含み、モータ80の角度情報を演算する。
【0023】
マイコン50は、二系統の通電制御部150、250、角度演算部55、及び異常監視部56を含む。各系統の通電制御部150、250は、電流フィードバック制御により、インバータ110、210から巻線組180、280への通電を制御する。角度演算部55は、回転角センサ30から取得した角度情報に基づいて電気角θを演算する。電気角θは、通電制御部150、250においてベクトル制御の座標変換演算等に用いられる。異常監視部56は、回転角センサ30の異常を監視する。
【0024】
フェールセーフ性が要求される電動パワーステアリング装置では、このような冗長構成を用いることで、一方の系統に異常が生じた場合でも、正常な他方の系統で操舵アシストモータの駆動を継続することができるようにしている。その分、マイコン50が処理する情報量は増大し、各種情報を頻繁に記憶、更新する必要が生じる。
【0025】
図3に示す構成例1では、マイコン50の内部にフラッシュメモリ43が搭載されている。図4に示す構成例2では、各マイコン50に外付けフラッシュメモリ44が接続されている。フラッシュメモリ43、44は、マイコン50の制御演算に関する情報や異常情報等を記憶する。
【0026】
次に図5図6を参照する。図5図6において図3図4と実質的に同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。電動パワーステアリング装置2は、制御ユニット20及びモータ80を備える。制御ユニット20は、各巻線組180、280に対応して設けられた二系統のインバータ110、210、二つのセンサ部130、230、及び、二つのマイコン160、260を含む。つまり、マイコンを含む全ての構成要素が系統毎に冗長的に設けられている。
【0027】
第1マイコン160は、通電制御部150、角度演算部165、及び異常監視部166を含む。通電制御部150は、電流フィードバック制御により、第1インバータ110から第1巻線組180への通電を制御する。角度演算部165は、第1センサ部130から取得した角度情報に基づいて電気角θ1を演算する。電気角θ1は、通電制御部150においてベクトル制御の座標変換演算等に用いられる。異常監視部166は、第1センサ部130の異常を監視する。
【0028】
第2マイコン260は、通電制御部250、角度演算部265、及び異常監視部266を含む。通電制御部250は、電流フィードバック制御により、第2インバータ210から第2巻線組280への通電を制御する。角度演算部265は、第2センサ部230から取得した角度情報に基づいて電気角θ2を演算する。電気角θ2は、通電制御部250においてベクトル制御の座標変換演算等に用いられる。異常監視部266は、第2センサ部230の異常を監視する。
【0029】
図5に示す構成例3では、各マイコン160、260の内部にフラッシュメモリ143、243が搭載されている。図6に示す構成例4では、各マイコン160、260に外付けフラッシュメモリ144、244が接続されている。フラッシュメモリ143、144、243、244は、マイコン160、260の制御演算に関する情報や異常情報等を記憶する。
【0030】
上記の構成例1~4に共通し、車載システムでは走行中の制御情報、異常情報などの情報を記録する必要があり、市場においてもフラッシュメモリ43、44、143、144、243、244は、書き込みと消去とが繰り返されることとなる。
【0031】
次に図7および図13を参照し、本実施形態のメモリ制御方法の概念を、比較例と対比しつつ説明する。図13に比較例として、物理セクタ内のデータの書き込み及び消去を任意の順番で行うメモリ制御方法の概念を示す。比較例は、フラッシュメモリの技術分野における一般的な従来技術と認識される制御方法に相当する。
【0032】
図7図13には、図1との対照の意味で、物理セクタの符号Ps0、Ps1、及び、論理セクタの符号Lg0~Lg63を記載している。さらに図7には、「論理分割された物理セクタ」の符号としてPs01、Ps02を記載している。セクタの名称と符号とが実質的に重複するため、明細書中ではこれらの符号の記載を省略する。
【0033】
図13に示す比較例のフラッシュメモリでは、物理セクタ0に64個の論理セクタ0~論理セクタ63が含まれる。特定の論理セクタ(例えば論理セクタ4)で高頻度の書き込み及び消去を行うと、衝撃マークで示すように、消去ディスターブによって非選択の論理セクタのデータが消えたり、データ化けが発生したりする。
【0034】
それに対し本実施形態のフラッシュメモリでは、図7に示すように、物理セクタ0が予め少なくとも二つのセクタ、すなわち物理セクタ0_1及び物理セクタ0_2に論理分割されている。例えば物理セクタ0_1には32個の論理セクタ0~論理セクタ31が含まれ、物理セクタ0_2には32個の論理セクタ32~論理セクタ63が含まれる。
【0035】
物理セクタ0_1にデータが書き込まれるとき、論理セクタ0、論理セクタ1、論理セクタ2、論理セクタ3・・・の順に書き込まれる。物理セクタ0_1の全部の論理セクタにデータが書き込まれるまで消去は行われない。
【0036】
物理セクタ0_1のデータが消去される場合、必要なデータが物理セクタ0_2にコピーされてから物理セクタ0_1のデータが消去される。その後、物理セクタ0_2が使用される。物理セクタ0_2のデータが一杯になったら、同様に物理セクタ0_2のデータが物理セクタ0_1にコピーされてから物理セクタ0_2のデータが消去される。このように、論理分割された物理セクタの単位で一括消去が行われる。
【0037】
比較例のように、物理セクタ内で消去が任意に行われると、消去電圧が印加される度に同一物理セクタ内の非消去対象論理セクタへも消去ストレスが発生するため、消去ストレスの印加回数が増大する。それに対し、本実施形態のメモリ制御方法では、書き込み可能な論理セクタが有るときは消去を行わず、書き込み可能な論理セクタが無くなった時点で一括消去するように制御する。これにより、書き込み済みのセルに対する消去ストレスの発生が1回のみになる。したがって、消去ディスターブを回避することができる。
【0038】
続いて、図7に示すメモリ制御方法の概念を実現する具体的な動作方法について、第1及び第2実施形態に分け、フローチャート等を参照して説明する。フローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。第2実施形態において第1実施形態と実質的に同一のステップには同一のステップ番号を付して説明を省略する。また、一部異なるステップについては、第1実施形態のステップ番号の末尾に「A」、第2実施形態のステップ番号の末尾に「B」を付して区別する。
【0039】
まず図8を参照し、各フローチャート中で用いられる自然数の記号n、mの意味を説明する。図8に関しても、明細書中では、Ps0、Ps01、Ps02の符号の記載を省略する。nは、物理セクタの論理分割数を意味する。図8に示す例では、物理セクタ0は二つの物理セクタ0_1及び物理セクタ0_2に論理分割されており、「n=2」である。mは、n個に分割された物理セクタのセクタ番号を意味し、「1≦m≦n」の範囲で定義される。物理セクタ0_1のセクタ番号は「m=1」であり、物理セクタ0_2のセクタ番号は「m=2」である。
【0040】
フローチャートおよび以下の説明において文脈から自明な箇所では、「論理分割された物理セクタ」を省略し、単に「物理セクタ」又は「m番目セクタ」のように記す。フローチャート中の多くの箇所で、「m番目セクタ」は、現在処理対象となっているセクタを表す用語として用いられる。先頭セクタから、2番目、3番目・・・という順番で処理対象セクタを変更することを「処理対象セクタを繰り下げる」というように表現する。
【0041】
「m=1」である1番目セクタを「先頭セクタ」ともいい、「m=n」であるn番目セクタを「最終セクタ」ともいう。「n=2」の場合、物理セクタは先頭セクタ及び最終セクタのみで構成される。「n≧3」の場合、先頭セクタ及び最終セクタ以外の物理セクタを「中間セクタ」という。例えば「n=3」のとき、2番目セクタは中間セクタである。
【0042】
フローチャートの処理の主体は、例えばマイコン内のメモリ制御部である。フローチャートの説明では「メモリ制御部は、~する。」という能動態の文章が連続するのを避け、基本的に「物理セクタは、~される。」という受動態の文章で記載する。
【0043】
(第1実施形態)
図9を参照する。第1実施形態のメモリ制御方法では、データ書き込み時に、書き込みを行ったことを示す書き込み完了フラグが同時に書き込まれる。図9のルーチンは、書き込み要求によりスタートする。S01Aでは、書き込み完了フラグの確認により、現在有効な「論理分割された物理セクタ」が探索される。
【0044】
S10では、m番目セクタに空きページがあるか判断される。S10でYESの場合、S13で、m番目セクタにデータが書き込まれる。S14では、m番目セクタに書き込み完了フラグが書き込まれる。この書き込み完了フラグに基づいて、次に書き込みを行う論理セクタのアドレスが判定される。
【0045】
S10でNOの場合、S20に移行する。S20では「m=n」であるか、つまり空きページが無いセクタが最終セクタであるか判断される。最終セクタに空きページが無い場合、YESと判断される。
【0046】
S20でYESの場合、S21で「m=1」にセットされ、先頭セクタを処理対象セクタとして、S22~S24の処理が行われる。S22では、m番目セクタにn番目セクタ(すなわち最終セクタ)の任意のデータがコピーされる。S23では、m番目セクタにデータが書き込まれる。S24では、m番目セクタに書き込み完了フラグが書き込まれる。S25Aでは、n番目セクタ(すなわち最終セクタ)のフラグ及びデータが消去される。
【0047】
S20でNOの場合、S29で「m=m+1」に繰り下げられた後、S30で再び「m=n」であるか判断される。「n=2」の場合、S29後には「m=2」しかなく、S30では必ずYESと判断される。「n=3」の場合、S29後に「m=3」ならばS30でYESと判断され、S29後に「m=2」ならばS30でNOと判断される。
【0048】
S30でYESの場合、この時点でのm番目セクタを処理対象セクタとして、S32~S34の処理が行われる。S32では、m番目セクタに1~(m-1)番目セクタの任意のデータがコピーされる。S33では、m番目セクタにデータが書き込まれる。S34では、m番目セクタに書き込み完了フラグが書き込まれる。S35Aでは、1~(m-1)番目セクタのフラグ及びデータが消去される。
【0049】
「n≧3」の場合にS30でNOと判断されると、S10の前に戻って処理が繰り返される。「n=3」の場合、2回目ループのS30では必ずYESと判断される。つまり、論理分割された物理セクタ数nに応じて、最大(n-1)回のループが繰り返される。
【0050】
以上のように第1実施形態のメモリ制御方法では、論理セクタに任意のデータが書き込まれた時、書き込みを行ったことを示す書き込み完了フラグがさらに書き込まれる。そして、書き込み完了フラグに基づいて、次に書き込みを行う論理セクタのアドレスが判定される。書き込み完了フラグを用いることで、メモリ制御部による判別が容易となる。
【0051】
論理セクタへの書き込みは、予め決められた順番で行われる。これにより、書き込みの有無を決められた手順で確実に判断することができる。また、書き込み済みセルに対しての消去電圧ストレスが1回のみになるように制御することができる。
【0052】
また、論理分割された物理セクタのデータが一括消去される前に、当該論理分割された物理セクタに書き込まれている任意のデータが、未書き込みの別の論理分割された物理セクタにコピーされる。これにより、使用の可能性のあるデータの消失が防止される。
【0053】
(第2実施形態)
図10図11を参照する。第2実施形態のメモリ制御方法では、物理セクタにデータが書き込み済みであるか未書き込みであるかが判断される。図10のルーチンは、書き込み要求によりスタートする。S01Bでは、現在有効な「論理分割された物理セクタ」が探索される。第1実施形態での「書き込み完了フラグの確認により、」という部分に対し探索方法が異なる。
【0054】
図11のサブフローチャートにS01Bの探索方法を示す。S02で「m=n」にセットされ、最終セクタから探索が開始される。S03では、m番目セクタの全てのページが未書き込みであるか判断される。m番目セクタの全てのページが未書き込みである場合、S03でYESと判断され、S06に移行する。m番目セクタの少なくとも一部のページが書き込み済みである場合、S03でNOと判断され、S05に移行する。
【0055】
補足すると、S03は、「m番目セクタの少なくとも一部のページが書き込み済み?」という逆の判断ステップS04に変更可能である。S04を用いると、YESと判断された場合、S05に移行し、NOと判断された場合、S06に移行する。
【0056】
S01Bの、現在有効な「論理分割された物理セクタ」を省略して「有効セクタ」と記す。S05では、「有効セクタ=m」がセットされる。つまり、書き込み可能な有効セクタとしてm番目セクタが選択される。S06では「m=m-1」にセットされ、探索対象が最終セクタから先頭セクタに向かって順に変更される。
【0057】
S07では「m=1」であるか、すなわち先頭セクタまで探索したか判断される。S07でNOの場合、S03又はS04の前に戻り、書き込み状態の判断が繰り返される。S07でYESの場合、S08で、「有効セクタ=1」がセットされる。つまり、書き込み可能な有効セクタとして先頭セクタが選択される。選択された有効セクタに基づいて、次に書き込みを行う論理セクタのアドレスが判定される。
【0058】
図10に戻り、S10~S35Bのステップ概略は第1実施形態の図9と同じである。図9に対し、書き込み完了フラグの書き込みに関するS14、S24、S34が無い。また、図9のS25A、S35Aの「フラグ&データを消去」に対し、図10のS25B、S35Bでは「データを消去」に変更されている。S01Bでセットされた有効セクタに基づき、S10以下のステップが、書き込み完了フラグに関する部分を除いて図9と同様に実行される。
【0059】
以上のように第2実施形態のメモリ制御方法では、論理分割された物理セクタにデータが書き込み済みであるか未書き込みであるかの判断に基づき、次に書き込みを行う論理セクタのアドレスが判定される。これにより、書き込み完了フラグを用いなくても第1実施形態と同様の制御が可能である。
【0060】
また、図12のフローチャートを参照し、論理分割された物理セクタ単位での一括消去について説明する。S41では、論理分割された物理セクタの未書き込みメモリセルの容量が所定の容量閾値以下であるか判断される。S41でYESの場合、S42で、論理分割された物理セクタ単位で一括消去が行われる。
【0061】
(その他の実施形態)
(1)本発明のメモリ制御方法を実現する具体的な動作方法は、図9図11のフローチャートに示される方法に限らない。例えば、現在有効な「論理分割された物理セクタ」を探索する順番を入れ替えてもよい。論理セクタへの書き込みは、必ずしも予め決められた順番で行われなくてもよい。
【0062】
(2)本発明のメモリ制御方法は、電動パワーステアリング装置の制御部に限らず、フラッシュメモリを利用したどのような装置の制御部に適用されてもよい。データの書き込み及び消去が頻繁に行われるシステムでは、本発明は特に有効である。
【0063】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0064】
4(43、44、143、144、243、244)・・・フラッシュメモリ(メモリデバイス)、
7・・・シリコン基板、
Ps0、Ps1・・・物理セクタ、
Ps01、Ps02・・・論理分割された物理セクタ、
Lg0~Lg63・・・論理セクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13