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特許7552455電池抵抗測定装置、車両、及び電池抵抗測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電池抵抗測定装置、車両、及び電池抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240910BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240910BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240910BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240910BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240910BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/10 L
H02J7/04 L
H02J7/00 P
B60L53/14
B60L58/12
B60L3/00 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021040348
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139807
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 勇人
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161490(JP,A)
【文献】特開2010-249770(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電気抵抗を測定する電池抵抗測定装置であって、
所定の条件が成立したか否かに基づいて、対象電池が、充電状態から、電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を出力する放電状態に切り替わったか否かを判断する判断部と、
前記対象電池が前記充電状態から前記放電状態に切り替わったと前記判断部が判断したタイミングで、前記対象電池の電気抵抗の測定を開始する測定部とを含む、電池抵抗測定装置。
【請求項2】
前記対象電池は、複数の並列セルブロックを含む組電池であり、
前記複数の並列セルブロックの各々は、並列接続された複数の二次電池を含み、
前記複数の並列セルブロックは、互いに直列に接続されており、
前記測定部は、前記組電池に含まれる少なくとも1つの並列セルブロックの電気抵抗を測定するように構成され、
前記電池抵抗測定装置は、前記組電池に含まれるいずれかの並列セルブロックを対象ブロックとして、前記対象ブロックの電気抵抗を用いて前記対象ブロックの断線の有無を診断する診断部をさらに備える、請求項1に記載の電池抵抗測定装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記対象ブロックの電気抵抗と、前記組電池において前記対象ブロックの隣に位置する並列セルブロックの電気抵抗との乖離度合いを用いて、前記対象ブロックの断線の有無を診断するように構成される、請求項2に記載の電池抵抗測定装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記組電池に含まれる各並列セルブロックの電気抵抗を測定するように構成され、
前記診断部は、前記対象ブロックを順次変更して、前記測定部によって測定された各並列セルブロックの電気抵抗を用いて、前記組電池における断線の有無を診断するように構成される、請求項2又は3に記載の電池抵抗測定装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記対象電池の放電中の電流及び電圧を測定し、測定された電流及び電圧を用いて、前記対象電池の電気抵抗を測定するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池抵抗測定装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池抵抗測定装置と、
前記対象電池と、
前記対象電池から電力の供給を受ける補機と、
複数種の制御モードを切り替える制御装置とを備える車両であって、
前記複数種の制御モードは、
前記対象電池が車両外部から電力の供給を受けているときに前記補機を前記対象電池から出力される電力で駆動することを禁止する禁止モードと、
前記対象電池が車両外部から電力の供給を受けているときに前記補機を前記対象電池から出力される電力で駆動することを許可する許可モードと、
を含み、
前記所定の条件は、
前記制御装置が前記許可モードを実行していることと、
車両外部から供給される電力によって前記対象電池の充電が開始された後に前記補機が駆動されたこととを含む、車両。
【請求項7】
前記補機は、車内の空調を行なう空調装置である、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記対象電池の温度に応じて入力制限値を設定し、前記対象電池の入力電力が前記入力制限値を超えないように前記対象電池の入力電流を制御するように構成され、
前記制御装置は、前記対象電池の温度が所定温度よりも低い場合の前記入力制限値が、前記対象電池の温度が前記所定温度よりも高い場合の前記入力制限値よりも低くなるように、前記入力制限値を設定するように構成され、
前記所定の条件は、前記対象電池の温度が前記所定温度よりも低いことをさらに含む、請求項6又は7に記載の車両。
【請求項9】
前記対象電池は、リチウムイオン二次電池を含み、
前記制御装置は、前記リチウムイオン二次電池の負極にリチウム金属が析出しないように前記入力制限値を設定する、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
電池の電気抵抗を測定する電池抵抗測定方法であって、
所定の条件が成立したか否かに基づいて、対象電池が、充電状態から、電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を出力する放電状態に切り替わったか否かを判断することと、
前記対象電池が前記充電状態から前記放電状態に切り替わったと判断された場合に、前記対象電池の電気抵抗の測定を開始することと、
を含む、電池抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池抵抗測定装置、車両、及び電池抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-031170号公報(特許文献1)には、車両に搭載された二次電池の内部抵抗を車両走行中に算出する方法が開示されている。この方法では、二次電池の充放電が頻繁に行なわれる車両走行中において、二次電池の分極状態(分極の影響度合い)、電圧、及び電流を繰り返し取得し、分極の影響度合いが小さいデータ(電圧及び電流)を選別し、分極の影響度合いが小さいデータ(電圧及び電流)のみを用いて、二次電池の内部抵抗を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-031170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載される電池抵抗測定方法において、分極の影響度合いが小さいデータ(電圧及び電流)を選別するためには、二次電池の分極状態を高い精度で測定することが必要になると考えられる。そして、二次電池の分極状態を高い精度で測定するためには、演算処理負荷が大きくなると考えられる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単かつ的確に電池の電気抵抗を測定できる電池抵抗測定装置、車両、及び電池抵抗測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係る電池抵抗測定装置は、対象電池の電気抵抗を測定する電池抵抗測定装置であって、次に示す判断部及び測定部を含む。
【0007】
判断部は、所定の条件が成立したか否かに基づいて、対象電池が、充電状態から、電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を出力する放電状態に切り替わったか否かを判断するように構成される。測定部は、対象電池が充電状態から上記放電状態に切り替わったと判断部が判断したタイミングで、対象電池の電気抵抗の測定を開始するように構成される。
【0008】
以下、電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を出力する電池の放電状態を、「放電状態(受電中)」とも称する。電池が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったと判断されたタイミングを、「充放電切替タイミング」と称する場合がある。
【0009】
対象電池の充放電切替タイミングでは、対象電池の充電中に生じた分極が対象電池の放電によって相殺されて小さくなる。また、対象電池の充放電切替タイミングでは、対象電池に供給される電力と、対象電池から出力される電力とが、略等しくなっている。このため、充放電切替タイミングで対象電池の電気抵抗の測定が開始されることで、電池電流が小さい期間において対象電池の電気抵抗を測定しやすくなる。電池電流が小さい期間においては、分極の影響が小さくなり、電池電圧と電池電流との関係が線形に近くなる。こうした期間に対象電池の電気抵抗を測定することで、対象電池の電気抵抗を高い精度で測定しやすくなる。他方、電池電流が大きい場合には、電池電圧と電池電流との関係が非線形になりやすいため、電池抵抗の測定精度が低下しやすくなる。
【0010】
以上説明したように、上記電池抵抗測定装置によれば、分極の影響が小さい期間に対象電池の電気抵抗を測定することができる。このため、電池の分極状態の測定精度が低くても、あるいは電池の分極状態の測定自体を行なわなくても、電池の電気抵抗を十分な精度で測定できる。このように、上記電池抵抗測定装置は、簡単かつ的確に電池の電気抵抗を測定することができる。
【0011】
対象電池は、複数の並列セルブロックを含む組電池であってもよい。複数の並列セルブロックの各々は、並列接続された複数の二次電池を含んでもよい。複数の並列セルブロックは互いに直列に接続されてもよい。測定部は、組電池に含まれる少なくとも1つの並列セルブロックの電気抵抗を測定するように構成されてもよい。上記電池抵抗測定装置は、組電池に含まれるいずれかの並列セルブロックを対象ブロックとして、対象ブロックの電気抵抗を用いて対象ブロックの断線の有無を診断する診断部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記対象電池では、断線(ヒューズ溶断及び締結緩みを含む)により、並列セルブロックの一部において電気的な接続が絶たれ、並列セルブロックから二次電池が離脱することがある。並列セルブロックにおいて、並列接続された複数の二次電池の少なくとも1つが離脱すると、並列セルブロックの電気抵抗が大きくなる。このため、上記診断部は、対象ブロックの電気抵抗に基づいて、対象ブロックの断線の有無を的確に診断することができる。
【0013】
上記診断部は、対象ブロックの電気抵抗と、組電池において対象ブロックの隣に位置する並列セルブロックの電気抵抗との乖離度合いを用いて、対象ブロックの断線の有無を診断するように構成されてもよい。
【0014】
以下、組電池において対象ブロックの隣に位置する並列セルブロックを、「隣ブロック」とも称する。
【0015】
上記診断部は、対象ブロックの電気抵抗と隣ブロックの電気抵抗との乖離度合い(以下、「抵抗乖離度」とも称する)を用いて、対象ブロックの断線の有無を診断する。抵抗乖離度が大きい場合には、対象ブロック及び隣ブロックのうち、電気抵抗が大きい並列セルブロックに断線が生じていると考えられる。乖離の程度を示すパラメータとしては、たとえば差又は比率を採用できる。両者の差(絶対値)が大きいほど両者の乖離の程度は大きいことになる。両者の比率が1に近いほど両者の乖離の程度は小さいことになる。抵抗乖離度は、対象ブロックの電気抵抗と隣ブロックの電気抵抗との比率であってもよい。
【0016】
上記診断部は、抵抗乖離度が所定の水準よりも大きく、かつ、対象ブロックの電気抵抗が隣ブロックの電気抵抗よりも大きい場合に、対象ブロックに断線が生じている(隣ブロックは断線無し)と判断してもよい。上記診断部は、抵抗乖離度が所定の水準よりも大きく、かつ、隣ブロックの電気抵抗が対象ブロックの電気抵抗よりも大きい場合に、隣ブロックに断線が生じている(対象ブロックは断線無し)と判断してもよい。
【0017】
上記測定部は、組電池に含まれる各並列セルブロックの電気抵抗を測定するように構成されてもよい。上記診断部は、対象ブロックを順次変更して、測定部によって測定された各並列セルブロックの電気抵抗を用いて、組電池における断線の有無を診断するように構成されてもよい。こうした構成によれば、組電池における断線の有無を的確に診断することが可能になる。
【0018】
上記測定部は、対象電池の放電中の電流及び電圧を測定し、測定された電流及び電圧を用いて、対象電池の電気抵抗を測定するように構成されてもよい。
【0019】
充放電切替タイミングで対象電池の電気抵抗の測定が開始されることで、上記測定部によって測定される対象電池の放電中の電流及び電圧の関係は線形に近くなる。このため、上記測定部は、測定された電流及び電圧に基づいて、対象電池の電気抵抗(たとえば、二次電池の内部抵抗)を高い精度で測定しやすくなる。
【0020】
本開示の第2の観点に係る車両は、上述したいずれか一項に記載の電池抵抗測定装置と、対象電池と、対象電池から電力の供給を受ける補機と、複数種の制御モードを切り替える制御装置とを備える。複数種の制御モードは、対象電池が車両外部から電力の供給を受けているときに補機を対象電池から出力される電力で駆動することを禁止する禁止モードと、対象電池が車両外部から電力の供給を受けているときに補機を対象電池から出力される電力で駆動することを許可する許可モードとを含む。電池抵抗測定装置における上記所定の条件は、制御装置が許可モードを実行していること(以下、「要件A」とも称する)と、車両外部から供給される電力によって対象電池の充電が開始された後に補機が駆動されたこと(以下、「要件B」とも称する)とを含む。
【0021】
上記車両では、制御装置が禁止モードと許可モードとを切り替えることができる。制御装置は、対象電池の充電中における所定の補機の使用を禁止モードによって禁止することで、対象電池の充電の進行を速めることができる。また、制御装置は、許可モードによって所定の補機の使用を許可することで、ユーザの利便性を向上させることができる。上記制御装置は、ユーザからの入力に応じて、禁止モードと許可モードとを切り替えるように構成されてもよい。
【0022】
上記車両では、許可モードによって駆動が許可される所定の補機が、対象電池から出力される電力によって駆動される。所定の補機は、消費電力の大きい補機(たとえば、空調装置、又は各種ヒータ)を含んでもよい。対象電池が車両外部から電力の供給を受けているときに、消費電力の大きい補機が駆動されると、対象電池に供給される電力よりも大きい電力が対象電池から出力されやすくなる。このため、要件A及びBの両方が満たされるときには、対象電池が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わりやすくなる。このため、上記車両では、前述の判断部が、所定の条件が成立したか否かに基づいて、対象電池が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったか否かを的確に判断しやすくなる。
【0023】
上記車両において、要件A及びBの各々は、上記所定の条件が成立するために必要な要件であり、要件A及びBの少なくとも1つが満たされない場合には、上記所定の条件が成立しない。上記所定の条件は、要件A及びBの両方が満たされたときに成立してもよいし、要件A及びBに加えて他の要件(追加の要件)が満たされたときに成立してもよい。要件A及びBに対する追加の要件は任意に設定できる。
【0024】
上記車両において、電池抵抗測定装置と、制御装置とは、分割された2つのユニットであってもよいし、共通のユニット(すなわち、電池抵抗測定装置と制御装置との両方の機能を有する単一のユニット)であってもよい。
【0025】
対象電池から電力の供給を受ける上記補機は、車内の空調を行なう空調装置であってもよい。
【0026】
一般に、空調装置の消費電力は大きい。このため、対象電池が車両外部から電力の供給を受けているときに、対象電池から供給される電力によって空調装置が駆動されると、対象電池に供給される電力よりも大きい電力が対象電池から出力されやすい。
【0027】
車両に搭載された対象電池は、車両において走行用の電力を貯蔵してもよい。上記車両は電動車両であってもよい。電動車両は、当該車両に搭載された電池(たとえば、対象電池)から供給される電力を用いて走行するように構成される車両である。電動車両には、EV(電気自動車)及びPHV(プラグインハイブリッド車両)のほか、FCV(燃料電池車)、レンジエクステンダーEVなども含まれる。
【0028】
上記制御装置は、対象電池の温度に応じて入力制限値を設定し、対象電池の入力電力が入力制限値を超えないように対象電池の入力電流を制御するように構成されてもよい。上記制御装置は、対象電池の温度が所定温度よりも低い場合の入力制限値が、対象電池の温度が所定温度よりも高い場合の入力制限値よりも低くなるように、入力制限値を設定するように構成されてもよい。電池抵抗測定装置における上記所定の条件は、対象電池の温度が所定温度よりも低いこと(以下、「要件C」とも称する)をさらに含んでもよい。
【0029】
上記車両では、制御装置が、対象電池の入力電力が入力制限値を超えないように、対象電池の入力電流を制御する。入力制限値は、対象電池の劣化を抑制するために設定されてもよい。上記車両では、入力制限値が対象電池の温度に応じて設定される。対象電池の温度が所定温度よりも低い場合には、入力制限値が低くなる。対象電池に供給される電力は入力制限値によって制限されるため、入力制限値が低いときに補機が駆動されると、対象電池から出力される電力が、対象電池に供給される電力よりも大きくなりやすくなる。このため、要件A~Cの全てが満たされるときには、対象電池が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わりやすくなる。上記車両では、前述の判断部が、所定の条件が成立したか否かに基づいて、対象電池が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったか否かを的確に判断しやすくなる。
【0030】
上記車両において、要件A~Cの各々は、上記所定の条件が成立するために必要な要件であり、要件A~Cの少なくとも1つが満たされない場合には、上記所定の条件が成立しない。上記所定の条件は、要件A~Cが満たされたときに成立してもよいし、要件A~Cに加えて他の要件(追加の要件)が満たされたときに成立してもよい。要件A~Cに対する追加の要件は任意に設定できる。
【0031】
上記対象電池は、リチウムイオン二次電池を含んでもよい。制御装置は、リチウムイオン二次電池の負極にリチウム金属が析出しないように入力制限値を設定するように構成されてもよい。
【0032】
上記車両では、リチウムイオン二次電池の負極にリチウム金属が析出することを、入力制限値によって抑制できる。
【0033】
本開示の第3の観点に係る電池抵抗測定方法は、対象電池の電気抵抗を測定する電池抵抗測定方法であって、所定の条件が成立したか否かに基づいて、対象電池が、充電状態から、電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を出力する放電状態に切り替わったか否かを判断することと、対象電池が充電状態から上記放電状態に切り替わったと判断された場合に、対象電池の電気抵抗の測定を開始することとを含む。
【0034】
上記電池抵抗測定方法によれば、前述した電池抵抗測定装置と同様、簡単かつ的確に電池の電気抵抗を測定することが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本開示によれば、簡単かつ的確に電池の電気抵抗を測定できる電池抵抗測定装置、車両、及び電池抵抗測定方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図2図1に示したバッテリに含まれる組電池と監視モジュールとの各々の構成を示す図である。
図3図1に示した車両制御装置の詳細構成を示す図である。
図4図2に示した組電池の温度と入力制限値(Win)との関係を規定するマップを示す図である。
図5図1に示した車両制御装置によって実行される制御モードの切替えに係る処理を示すフローチャートである。
図6図5に示した処理で用いられる選択画面の一例を示す図である。
図7】許可モードにおいて、低温の組電池が外部充電され、かつ、外部充電開始後に空調装置が駆動された場合の、組電池の電流の一例を示す図である。
図8】禁止モードにおいて、外部充電中の組電池の電流の一例を示す図である。
図9】許可モードにおいて、高温の組電池が外部充電され、かつ、外部充電開始後に空調装置が駆動された場合の、組電池の電流の一例を示す図である。
図10図1に示した組電池の外部充電中に測定開始条件が成立する場合の、組電池の電流の推移の一例を示す図である。
図11】本開示の実施の形態に係る組電池について、実測された電流と電圧との関係を示すグラフである。
図12】充電中の並列セルブロックに断線が生じたときの電流の一例を示す図である。
図13】本開示の実施の形態に係る電池抵抗測定方法を示すフローチャートである。
図14図13に示した電池診断処理の詳細を示すフローチャートである。
図15図13に示した処理の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、フローチャート中の各ステップは、単に「S」と表記する。また、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)を、「ECU」と表記する場合がある。また、車両用給電設備(Electric Vehicle Supply Equipment)を、「EVSE」と表記する場合がある。
【0038】
図1は、この実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。図1を参照して、車両50は、走行用の電力を蓄電するバッテリ300と、バッテリ300の充電制御及び放電制御を行なうECU500とを備える。車両50は、バッテリ300に蓄えられた電力のみを用いて走行可能な電気自動車(EV)であってもよいし、バッテリ300に蓄えられた電力とエンジン(図示せず)の出力との両方を用いて走行可能なプラグインハイブリッド車(PHV)であってもよい。
【0039】
この実施の形態では、バッテリ300が組電池130を含む。組電池130は、複数の二次電池(以下、「セル」とも称する)が互いに電気的に接続されて構成される。この実施の形態では、セルとしてリチウムイオン二次電池を採用する。ただし、セルはリチウムイオン二次電池以外の二次電池(たとえば、ニッケル水素電池)であってもよい。セルは、液系二次電池であってもよいし、全固体二次電池であってもよい。組電池130は、本開示に係る「対象電池」の一例に相当する。組電池130の具体的な構成については後述する(図2参照)。
【0040】
バッテリ300は、組電池130の状態を監視する監視モジュール140をさらに含む。監視モジュール140は、組電池130の状態を検出する電池センサと、電池センサの出力信号を処理する信号処理回路とを含み、信号処理回路によって処理されたセンサ信号をECU500へ出力する。この実施の形態では、組電池130の電圧、電流、及び温度を検出する電圧センサ、電流センサ、及び温度センサを、上記電池センサとして採用する。信号処理回路としては、たとえば汎用のIC(集積回路)を採用できる。ECU500は、監視モジュール140の出力に基づいて組電池130の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC(State Of Charge)、及び内部抵抗)を取得することができる。監視モジュール140の具体的な構成については後述する(図2及び図3参照)。
【0041】
車両50は、接触充電のためのインレット110及びDC充電器120を備える。インレット110及びDC充電器120は、EVSE40の給電方式に対応する。この実施の形態では、EVSE40として、直流電力を提供するDC給電設備を採用する。EVSE40は急速充電器であってもよい。EVSE40は充電ケーブル41を備える。充電ケーブル41は、EVSE40の本体に接続される。充電ケーブル41は、常にEVSE40の本体に接続されていてもよいし、EVSE40の本体に対して着脱可能であってもよい。充電ケーブル41は、先端にコネクタ42を有し、内部に電力線を含む。EVSE40は、電源PSから電力の供給を受けて、コネクタ42に直流電力を出力する。電源PSは、たとえば電力会社のような電気事業者によって提供される電力網であってもよい。電源PSはEVSE40に交流電力を供給してもよい。EVSE40は、交流電力を直流電力に変換した後、コネクタ42へ直流電力を出力してもよい。
【0042】
インレット110は、充電ケーブル41のコネクタ42と接続可能に構成される。DC充電器120は、インレット110とバッテリ300との間に位置し、DC給電設備に対応する回路を含む。DC充電器120は、たとえばフィルタ回路及び充電リレーを含む。充電リレーは、インレット110からバッテリ300までの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。インレット110は、車両50の外部から供給される電力を受電し、その電力をDC充電器120へ出力するように構成される。DC充電器120は、インレット110が受電した電力をバッテリ300の充電に適した電力に変換し、変換された電力をバッテリ300へ出力するように構成される。
【0043】
EVSE40の本体につながる充電ケーブル41のコネクタ42が駐車状態の車両50のインレット110に接続(プラグイン)されることによって、車両50が充電可能状態(すなわち、EVSE40から給電を受けられる状態)になる。充電可能状態の車両50では、外部充電(すなわち、EVSE40から供給される電力によってバッテリ300を充電すること)が可能になる。外部充電が実行されるときには充電リレーが閉状態(接続状態)にされ、外部充電が実行されないときには充電リレーが開状態(遮断状態)にされる。
【0044】
なお、図1には、EVSE40の給電方式に対応するインレット110及びDC充電器120のみを示しているが、車両50は、複数種の給電方式(たとえば、AC方式及びDC方式)に対応できるように複数のインレット及び充電器を備えてもよい。
【0045】
ECU500は、プロセッサ501、RAM(Random Access Memory)502、記憶装置503、及びタイマ504を含んで構成される。ECU500は、たとえばマイクロコンピュータである。プロセッサ501としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。RAM502は、プロセッサ501によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置503は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置503は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置503には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置503に記憶されているプログラムをプロセッサ501が実行することで、ECU500における各種制御が実行される。ただし、ECU500における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、ECU500が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0046】
タイマ504は、設定時刻の到来をプロセッサ501に知らせるように構成される。タイマ504に設定された時刻になると、タイマ504からプロセッサ501へその旨を知らせる信号が送信される。この実施の形態では、タイマ504としてタイマ回路を採用する。ただし、タイマ504は、ハードウェア(タイマ回路)ではなく、ソフトウェアによって実現してもよい。また、ECU500は、ECU500に内蔵されるリアルタイムクロック(RTC)回路(図示せず)を利用して現在時刻を取得できる。
【0047】
車両50は、走行駆動部150と、入力装置160と、報知装置170と、駆動輪Wとをさらに備える。図1には1つの駆動輪Wしか示していないが、車両50は4つの車輪(駆動輪Wを含む)を備える。ただし、車両50の車輪の数は任意であり、3輪又は5輪以上であってもよい。また、車両50の駆動方式も任意であり、前輪駆動、後輪駆動、及び4輪駆動のいずれであってもよい。
【0048】
走行駆動部150は、PCU(Power Control Unit)151とMG(Motor Generator)152とを含み、組電池130に蓄えられた電力を用いて車両50を走行させるように構成される。PCU151は、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)と(いずれも図示せず)を含んで構成される。PCU151は、ECU500によって制御される。MG152は、たとえば三相交流モータジェネレータである。MG152は、PCU151によって駆動され、駆動輪Wを回転させるように構成される。PCU151は、組電池130から供給される電力を用いてMG152を駆動する。また、MG152は、回生発電を行ない、発電した電力を組電池130に供給するように構成される。SMRは、組電池130からMG152までの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両50の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0049】
入力装置160は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置160は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号をECU500へ出力する。通信方式は有線でも無線でもよい。入力装置160の例としては、各種スイッチ、各種ポインティングデバイス、キーボード、タッチパネルが挙げられる。入力装置160は、カーナビゲーションシステムの操作部であってもよい。入力装置160は、音声入力を受け付けるスマートスピーカであってもよい。
【0050】
報知装置170は、ECU500から要求があったときに、ユーザ(たとえば、車両50の乗員)へ所定の報知処理を行なうように構成される。報知装置170は、表示装置(たとえば、タッチパネルディスプレイ)、スピーカ、及びランプ(たとえば、MIL(故障警告灯))の少なくとも1つを含んでもよい。報知装置170は、メータパネル、ヘッドアップディスプレイ、又はカーナビゲーションシステムであってもよい。
【0051】
車両50は、DC/DCコンバータ310と、空調装置320とをさらに備える。空調装置320は、車両50の車室内の空調を行なうように構成される。空調装置320は、空調のための電動コンプレッサ(図示せず)を含む。車両50のユーザは、入力装置160を操作して、空調装置320に車室の暖房又は冷房を行なわせることができる。DC/DCコンバータ310は、バッテリ300と空調装置320との間に位置し、バッテリ300から空調装置320へ供給される直流電力を遮断したり変圧したりするように構成される。DC/DCコンバータ310は、ECU500によって制御される。バッテリ300の電力を空調装置320へ供給するときには、バッテリ300から空調装置320への電力供給経路が接続され、バッテリ300から出力された直流電力がDC/DCコンバータ310によって所定の直流電力に変換されて空調装置320に供給される。
【0052】
ECU500は、複数種の制御モードを切り替えるように構成される。複数種の制御モードは、通常モード及びマイルームモードを含む。通常モードは、組電池130がDC充電器120から電力の供給を受けているときに、組電池130から出力される電力で所定の補機(以下、「対象補機」と称する)を駆動することを禁止する制御モードである。マイルームモードは、組電池130がDC充電器120から電力の供給を受けているときに、組電池130から出力される電力で対象補機を駆動することを許可する制御モードである。この実施の形態では、対象補機が空調装置320である。車両50の補機は、車両50において電動走行以外で電力を消費する負荷である。車両50においては、ECU500、報知装置170、及び空調装置320の各々が、補機に該当する。ECU500及び報知装置170の各々は、図示しない補機バッテリから電力の供給を受ける。他方、電動走行のための動力を生成するMG152(走行用モータ)は補機には該当しない。通常モード、マイルームモードは、それぞれ本開示に係る「禁止モード」、「許可モード」の一例に相当する。空調装置320は、本開示に係る「補機」の一例に相当する。
【0053】
ECU500は、車両50のユーザからの入力に応じて通常モードとマイルームモードとを切り替える。ユーザは、入力装置160を通じて、ECU500に対して制御モードの切替えを指示することができる。組電池130の外部充電が実行されるときには、EVSE40(車両外部)からインレット110を通じてDC充電器120に電力が供給され、DC充電器120はその電力を組電池130へ出力する。組電池130がDC充電器120から電力の供給を受けているときには、原則としてECU500が通常モードを実行し、組電池130から出力される電力で空調装置320を駆動することを禁止する。ただし、ユーザがマイルームモードの実行をECU500に指示した場合には、ECU500は通常モードに代えてマイルームモードを実行する。これにより、組電池130から出力される電力で空調装置320を駆動することが許可される。通常モードにおいては、組電池130の外部充電中に、バッテリ300から空調装置320への電力供給経路がDC/DCコンバータ310によって遮断される。他方、マイルームモードにおいては、組電池130の外部充電中にもバッテリ300の電力が空調装置320に供給される。
【0054】
図2は、バッテリ300に含まれる組電池130及び監視モジュール140の各々の構成を示す図である。図1とともに図2を参照して、組電池130は、N個のセルスタック(すなわち、セルスタック200-1~200-N)を含む。Nは、5以上であってもよいし、30以上であってもよい。この実施の形態では、Nを10とする。監視モジュール140は、N個の電圧検出回路(すなわち、電圧検出回路141-1~141-N)と、1個の電流検出回路142と、1個の温度検出回路143とを含む。
【0055】
電流検出回路142には、セルスタック200-1~200-Nに流れる電流を検出する電流センサIBが搭載されている。電流検出回路142は、電流センサIBの出力信号を処理するように構成される。温度検出回路143には、組電池130の温度を検出する温度センサTBが搭載されている。温度検出回路143は、温度センサTBの出力信号を処理するように構成される。この実施の形態では、監視モジュール140に含まれる電流センサIB及び温度センサTBの各々の数が1つである。ただしこれに限られず、電流センサIB及び温度センサTBの数は適宜変更可能である。たとえば、セルスタックごと又は並列セルブロックごと又はセルごとに温度センサTBを設けてもよい。
【0056】
電圧検出回路141-1~141-Nは、それぞれセルスタック200-1~200-Nに設けられている。以下、区別して説明する場合を除いて、セルスタック200-1~200-Nの各々を「セルスタック200」と記載し、電圧検出回路141-1~141-Nの各々を「電圧検出回路141」と記載する。以下、セルスタック200及び電圧検出回路141の各々の構成について説明する。この実施の形態では、セルスタック200-1~200-Nの各々が同じ構成(すなわち、図2に示すセルスタック200の詳細構成)を有する。
【0057】
セルスタック200は、M個の並列セルブロック(すなわち、並列セルブロック100-1~100-M)を含む。1個の電圧検出回路141にM個の電圧センサ(すなわち、電圧センサVB-1~VB-M)が搭載されている。電圧センサVB-1~VB-Mは、それぞれ並列セルブロック100-1~100-Mの端子間電圧を検出するように構成される。Mは、5以上であってもよいし、30以上であってもよい。この実施の形態では、Mを10とする。
【0058】
並列セルブロック100-1~100-Mは、電力線PL13を介して直列に接続されている。各電力線PL13は、セルスタック200の内部において隣り合う並列セルブロック同士を直列に接続している。電力線PL,PLは、セルスタック200と外部とを接続するための電力線である。この実施の形態では、電力線PLがセルスタック200の正極側の電力線であり、電力線PLがセルスタック200の負極側の電力線である。以下、区別して説明する場合を除いて、並列セルブロック100-1~100-Mの各々を「並列セルブロック100」と記載する。
【0059】
各並列セルブロック100は、並列接続された複数のセル10(この実施の形態では、リチウムイオン二次電池)を含む。各並列セルブロック100に含まれるセル10の数は任意であるが、この実施の形態では3個とする。各並列セルブロック100において、3個のセル10の正極は電力線PL11によって並列に接続されており、3個のセル10の負極は電力線PL12によって並列に接続されている。電力線PL11及びPL12の各々は、ワイヤであってもよいし、金属板(たとえば、バスバー)であってもよい。並列セルブロック100に含まれる各セル10はヒューズ(図示せず)を介して電力線PL11又はPL12と接続されてもよい。
【0060】
この実施の形態では、各並列セルブロック100が同じ数(より特定的には、3個)のセル10を含む。しかし、1つの並列セルブロックに含まれるセルの数は3個に限られず任意である。たとえば、各並列セルブロックが5個以上のセルを含んでもよい。また、並列セルブロックごとにセルの数が異なっていてもよい。
【0061】
セルスタック200-1~200-Nは、電力線PL3を介して直列に接続されることにより、組電池130を構成している。組電池130は、N×M個の並列セルブロック100を含む。組電池130に含まれる並列セルブロックの数は、50個以上であってもよいし、100個以上であってもよい。この実施の形態では、組電池130に含まれる並列セルブロックの数が100個である。組電池130の容量は、30Ah以上であってもよいし、100Ah以上であってもよい。
【0062】
電力線PL1,PL2は、組電池130と外部とを接続するための電力線である。この実施の形態では、電力線PL1が組電池130の正極側の電力線であり、電力線PL2が組電池130の負極側の電力線である。電力線PL1は、セルスタック200-1の電力線PLに相当する。電力線PL2は、セルスタック200-Nの電力線PLに相当する。この実施の形態では、電流センサIBが電力線PL2に配置される。ただしこれに限られず、電流センサIBは電力線PL1に配置されてもよい。電流センサIBは、各並列セルブロック100を構成する全てのセル10に流れる総電流を検出する。
【0063】
図3は、ECU500の詳細構成を示す図である。図1及び図2とともに図3を参照して、ECU500は、電池抵抗測定システム510と制御システム520とを含む。ECU500において、電池抵抗測定システム510は、本開示に係る「電池抵抗測定装置」の一例として機能し、制御システム520は、本開示に係る「制御装置」の一例として機能する。
【0064】
電池抵抗測定システム510は、判断部511と測定部512と診断部513とを含む。制御システム520は、充電制御部521とモード切替部522と空調制御部523とを含む。この実施の形態では、図1に示したプロセッサ501と、プロセッサ501により実行されるプログラムとによって、これら各部が具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0065】
ECU500は、監視モジュール140から組電池130の状態を取得する。電圧センサVB-1~VB-Mの各々の出力信号は、共通の電圧検出回路141を経て、ECU500に入力される。すなわち、各電圧検出回路141がM個のセンサ信号を処理してECU500へ出力する。電流センサIBの出力信号は電流検出回路142を経てECU500に入力される。温度センサTBの出力信号は温度検出回路143を経てECU500に入力される。
【0066】
充電制御部521は、組電池130の入力電力が入力制限値を超えないように組電池130の入力電流を制御するように構成される。充電制御部521は、温度検出回路143から組電池130の温度を取得し、組電池130の温度に応じて入力制限値を設定するように構成される。以下では、入力制限値を「Win」と表記する場合がある。この実施の形態に係る充電制御部521は、以下に説明する図4に示すマップに基づいてWinを設定する。
【0067】
図4は、組電池130の温度とWinとの関係を規定するマップを示す図である。この実施の形態では、放電側の電力を正(+)、充電側の電力を負(-)で表わす。ただし、電力の大きさを比較するときは、符号(+/-)によらず絶対値で比較する。すなわち、値が0に近い電力ほど小さい。
【0068】
図4を参照して、線L1で示されるマップは、組電池130の温度とWinとの関係を規定している。このマップによれば、低温領域では組電池130の温度が高くなるほどWinが負側に大きくなり、組電池130の温度が上記低温領域よりも高くなると、Winが略一定になる。このマップは、組電池130に含まれるリチウムイオン二次電池(セル10)の負極にリチウム金属が析出しないように、組電池130の温度ごとのWinを規定する。充電制御部521は、上記マップを用いることで、リチウムイオン二次電池の負極にリチウム金属が析出しないようにWinを設定することができる。充電制御部521は、上記マップに従い、組電池130の温度がTh1よりも低い場合のWinが、組電池130の温度がTh1よりも高い場合のWinよりも低くなるように、Win(入力制限値)を設定する。図4中のTh1は、本開示に係る「所定温度」の一例に相当する。図4中に示す温度T及びTについては後述する。
【0069】
再び図1及び図2とともに図3を参照して、充電制御部521は、上記マップに基づいて設定したWinを組電池130の入力電力が超えないように組電池130の入力電流を制御する。充電制御部521は、たとえばDC充電器120を制御することにより、組電池130の入力電流を調整できる。なお、入力電力がWinを超えることは、入力電力がWinよりも負側に大きくなる(すなわち、0に対して負側に遠ざかる)ことを意味する。なお、図4には入力制限値(Win)のみを示しているが、組電池130の入力制限値(入力電力の上限値)に加えて、組電池130の出力制限値(出力電力の上限値)が設定されてもよい。
【0070】
モード切替部522は、前述した制御モードの切替えを実行するように構成される。モード切替部522は、たとえば以下に説明する図5に示す処理を実行する。
【0071】
図5は、ECU500によって実行される制御モードの切替えに係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、組電池130の外部充電中に、ユーザが入力装置160に対して所定の操作(画面表示操作)を行なうと、開始される。
【0072】
図1図3とともに図5を参照して、S101では、報知装置170が選択画面を表示するように、モード切替部522が報知装置170を制御する。選択画面は、制御モードの選択(より具体的には、通常モードとマイルームモードとのいずれか一方を選択する入力)をユーザに促す画面である。
【0073】
図6は、選択画面の一例を示す図である。図5とともに図6を参照して、この選択画面は、メッセージM1と、「マイルームモード」の選択肢M2と、「キャンセル」の選択肢M3と、カーソルM4とを表示して、選択肢M2,M3のいずれかを選択することをユーザに促す。ユーザは、たとえば入力装置160を操作することによって、選択肢M2,M3のいずれかを選択することができる。たとえば、入力装置160がカーソルキー(矢印ボタン)及び決定ボタンを含んでもよい。そして、ユーザは、カーソルキーによって選択肢M2,M3のいずれかにカーソルM4を合わせて決定ボタンを押すことで、選択肢M2,M3のいずれかを選択してもよい。
【0074】
図5のS102では、ユーザによってマイルームモードが選択されたか否かを、モード切替部522が判断する。図6に示した選択画面において、ユーザが選択肢M2を選択すると、S102においてYESと判断される。他方、ユーザが選択肢M3を選択すると、S102においてNOと判断される。S101において選択画面が表示されてから、選択肢M2,M3のいずれも選択されずに所定時間(たとえば、100秒)が経過した場合にも、S102においてNOと判断される。
【0075】
再び図1図3とともに図5を参照して、S102においてYESと判断されると、S103でモード切替部522がマイルームモードを実行する。他方、S102においてNOと判断されると、S104でモード切替部522が通常モードを実行する。S103又はS104の処理が実行されると、モード切替部522は、S105において、報知装置170による選択画面の表示を終了する。S105の処理により、報知装置170は、非表示状態になってもよいし、選択画面の代わりにホーム画面を表示してもよい。S105の処理が実行されることによって、図5に示す一連の処理は終了する。
【0076】
再び図1及び図2とともに図3を参照して、空調制御部523は、空調装置320を制御するように構成される。たとえば、入力装置160が、空調装置320の操作パネルを含んでもよい。ユーザは、操作パネルを通じて、空調装置320の電源を入れたり、空調装置320の目標温度を入力したりすることができる。この実施の形態では、空調制御部523が、ユーザからの入力に基づいて、空調装置320を制御する。ただし、組電池130の外部充電中にモード切替部522が通常モードを実行しているときには、空調制御部523は空調装置320を駆動できない。通常モードにおいては、モード切替部522が、組電池130の外部充電中にDC/DCコンバータ310を制御して、バッテリ300から空調装置320への電力供給経路をDC/DCコンバータ310によって遮断する。これにより、組電池130の外部充電中における空調装置320の使用が禁止される。
【0077】
判断部511は、所定の条件(以下、「測定開始条件」と称する)が成立したか否かに基づいて、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったか否かを判断する。測定開始条件は、組電池130の外部充電が開始された後、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったときに成立するように設定される。放電状態(受電中)は、組電池130が、電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を出力する放電状態である。
【0078】
測定開始条件は、次に示す要件a~cを含む。この実施の形態では、要件a~cが満たされたときに測定開始条件が成立する。なお、要件cにおけるTh1は、図4中の「Th1」と同じ温度を意味する。
【0079】
(要件a)ECU500がマイルームモードを実行していること。
(要件b)組電池130の外部充電開始後に空調装置320が駆動されたこと。
【0080】
(要件c)組電池130の温度が所定温度(以下、「Th1」と表記する)よりも低いこと。
【0081】
以下、図7図10を用いて、測定開始条件について説明する。図7図10においては、放電側の電流を正(+)、充電側の電流を負(-)で表わしている。
【0082】
図7は、マイルームモード(許可モード)において、低温の組電池130が外部充電され、かつ、外部充電開始後に空調装置320が駆動された場合の、組電池130の電流の一例を示す図である。図7に示す例では、組電池130の温度が図4に示した温度Tである。図4とともに図7を参照して、マイルームモードにおいて、低温の組電池130が外部充電され、かつ、外部充電開始後に空調装置320が駆動された場合には、組電池130が、車両外部から電力の供給を受けながら、供給される電力よりも大きい電力を空調装置320へ出力する。組電池130の温度が低いため、Win(入力制限値)が小さくなる(図4)。この実施の形態では、組電池130の温度がTh1よりも低い場合には、Winが空調装置320の駆動電力よりも小さくなる。図7に示す例では、車両外部からDC充電器120を経て組電池130に-10Aの電流が入力される。組電池130の温度が温度T図4)である場合には、組電池130の入力電流が-10Aであるときに組電池130の入力電力がWinと一致する。組電池130の入力電流はWinによって制限される。組電池130は、Win相当の電力の供給を受けながら、空調装置320を駆動するための電力を出力する。図7に示す例では、15Aの電流が組電池130から空調装置320へ出力される。このため、組電池130は放電状態(受電中)になっている。組電池130の放電電流は、実質的には5Aになる。
【0083】
図8は、通常モード(禁止モード)において、外部充電中の組電池130の電流の一例を示す図である。図8に示す例では、組電池130の温度が図4に示した温度Tである。図4とともに図8を参照して、通常モードにおいて、外部充電中の組電池130は、空調装置320へ電力を出力しない。通常モードにおいては、組電池130の外部充電中に、DC/DCコンバータ310によって電力路が遮断され、空調装置320の駆動が禁止される。図8に示す例では、車両外部からDC充電器120を経て組電池130に-10Aの電流が入力され、組電池130から電流は出力されない。このように、図8に示す例では、組電池130が充電状態になっている。組電池130の充電電流は-10Aである。なお、マイルームモードにおいて組電池130の外部充電中にユーザが空調装置320を使用しない場合も、組電池130は図8に示す状態と同じ状態になる。
【0084】
図9は、マイルームモード(許可モード)において、高温の組電池130が外部充電され、かつ、外部充電開始後に空調装置320が駆動された場合の、組電池130の電流の一例を示す図である。図9に示す例では、組電池130の温度が図4に示した温度Tである。図4とともに図9を参照して、マイルームモードにおいて、高温の組電池130が外部充電され、かつ、外部充電開始後に空調装置320が駆動された場合には、組電池130が、車両外部から電力の供給を受けながら、供給される電力よりも小さい電力を空調装置320へ出力する。組電池130の温度が高いため、Win(入力制限値)が大きくなる(図4)。この実施の形態では、組電池130の温度がTh1よりも高い場合には、Winが空調装置320の駆動電力よりも大きくなる。図9に示す例では、車両外部からDC充電器120を経て組電池130に-20Aの電流が入力される。組電池130は、こうした電力の供給を受けながら、空調装置320を駆動するための電力を出力する。図9に示す例では、15Aの電流が組電池130から空調装置320へ出力される。このため、空調装置320が駆動された後も、組電池130は充電状態を維持する。組電池130の充電電流は、実質的には-5Aになる。
【0085】
たとえば、外気温が低いときに組電池130の外部充電が実行され、この外部充電の最中に、車両50のユーザが、マイルームモードの実行をECU500に指示するとともに空調装置320によって車室の暖房を実行した場合には、上記要件a~cの全てが満たされやすい。この場合、要件a及びcが満たされた状態で、最後に要件bが満たされると考えられる。要件bが満たされることによって、組電池130は、たとえば図8に示した状態から図7に示した状態になる。すなわち、組電池130の外部充電中に、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わる。
【0086】
図10は、組電池130の外部充電中に測定開始条件が成立する場合の、組電池130の電流の推移の一例を示す図である。図10中に示される電流値は、組電池130の入力電流と出力電流とを合わせた実質的な組電池130の電流値である。図10中のt1~t3はタイミングを示している。
【0087】
図7及び図8とともに図10を参照して、この例では、t1でマイルームモードが開始され、t2で空調装置320の駆動が開始される。線L2で示すように、空調装置320が駆動されることによって、組電池130の電流値が正(+)側に徐々に大きくなり、組電池130が、図8に示した状態から図7に示した状態になる。図8に示した状態から図7に示した状態に移行される途中のt3で組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わる。
【0088】
上記のように、測定開始条件が成立する場合に、組電池130は充電状態から放電状態(受電中)に切り替わる。このため、図3に示した判断部511は、測定開始条件が成立したか否かに基づいて、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったか否かを的確に判断できる。この実施の形態に係る判断部511は、測定開始条件が成立したタイミングで、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったと判断する。ただしこれに限られず、判断部511は、測定開始条件が成立してから所定時間(たとえば、約15秒)経過したタイミングで、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったと判断してもよい。
【0089】
再び図1及び図2とともに図3を参照して、測定部512は、充放電切替タイミングで、組電池130の電気抵抗の測定を開始する。充放電切替タイミングは、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったタイミングである。充放電切替タイミングが到来したか否かは、判断部511によって判断される。以下、図11を用いて、組電池130の電気抵抗の測定方法について説明する。
【0090】
図11は、この実施の形態に係る組電池130について本願発明者が実測した電流と電圧との関係を示すグラフである。本願発明者は、縦軸に組電池130の電圧、横軸に組電池130の電流をとった平面に、実測値をプロットし、最小二乗法により回帰直線(線L3)を求めた。
【0091】
図11を参照して、組電池130の電流が小さい(0に近い)領域では、プロットされたデータが回帰直線(線L3)上に位置する。すなわち、組電池130の電圧及び電流は、線形の関係を有する。他方、組電池130の電流が正側(放電側)又は負側(充電側)に大きくなると、組電池130の電圧及び電流の関係は非線形になる。
【0092】
図3に示した測定部512は、回帰直線(線L3)の傾きに基づいて、組電池130の電気抵抗を求める。この実施の形態では、測定部512が、組電池130に含まれる並列セルブロックごとに電気抵抗を測定する。測定部512は、組電池130の放電中の電流及び電圧を測定し、並列セルブロックごとに電圧及び電流の関係を求める。そして、測定部512は、得られた関係(より特定的には、回帰直線の傾き)に基づいて、並列セルブロックごとに電気抵抗を求める。測定部512による組電池130の電流及び電圧の測定は、充放電切替タイミングで開始される。充放電切替タイミングでは、組電池130の電流が小さいと考えられる。こうしたタイミングで測定が開始されることで、測定部512は、各並列セルブロックの電気抵抗を高い精度で測定することができる。なお、測定部512は、回帰直線(線L3)の切片に基づいて、組電池130のOCV(Open Circuit Voltage)を求めてもよい。
【0093】
また、充放電切替タイミングでは、組電池130の充電中に生じた分極が組電池130の放電によって相殺されて小さくなる。組電池130における分極が小さくなることで、充電履歴に起因した組電池130の電圧ドロップが抑制される。こうした放電の作用も、組電池130の電圧及び電流の関係を線形に近づけると考えられる。
【0094】
再び図1及び図2とともに図3を参照して、診断部513は、測定部512によって測定された各並列セルブロックの電気抵抗を用いて、組電池130に含まれる並列セルブロック100の断線の有無を診断するように構成される。以下、図12を用いて、診断部513によって実行される断線診断方法について説明する。
【0095】
図12は、充電中の並列セルブロック100に断線が生じたときの電流の一例を示す図である。図12に示す並列セルブロック100は、並列接続されたセル10a~10cによって構成される。
【0096】
図12を参照して、この例では、セル10a近傍の部位PLxで断線が生じ、セル10aと電力線PL11との電気的な接続が断たれている。この断線により、並列セルブロック100からセル10aが離脱し、並列セルブロック100を構成するセルの数が実質的に2つになっている。このため、並列セルブロック100の充電時に、セル10aには電流が流れなくなり、残りのセル10b及び10cだけに電流が流れるようになる。これにより、充電時にセル1個あたりに流れる電流の大きさは、正常時(すなわち、セルの離脱が生じていないとき)の約1.5倍になる。並列セルブロック100において断線が生じ、並列セルブロック100を構成するいずれかのセル10(たとえば、セル10a)が離脱すると、残りのセル10(たとえば、セル10b及び10c)に電流が集中し、並列セルブロック100の電気抵抗が大きくなる。
【0097】
再び図1及び図2とともに図3を参照して、診断部513は、組電池130に含まれるいずれかの並列セルブロック100を対象ブロックとして、対象ブロックの電気抵抗と隣ブロックの電気抵抗との乖離度合いを用いて、対象ブロックの断線の有無を診断する。隣ブロックは、1つのセルスタック200において対象ブロックの隣に位置する並列セルブロック100である。この実施の形態では、セルスタック200において対象ブロックの正極側及び負極側の両隣に並列セルブロック100が存在する場合には、正極側の並列セルブロック100を、隣ブロックとして採用する。たとえば、図2に示した並列セルブロック100-2が対象ブロックである場合には、対象ブロックの正極側の隣に位置する並列セルブロック100-1が、隣ブロックになる。一方、セルスタック200において正極側の端に位置する並列セルブロック100-1が対象ブロックである場合には、対象ブロックの正極側の隣には並列セルブロック100が存在しないため、対象ブロックの負極側の隣に位置する並列セルブロック100-2が、隣ブロックになる。
【0098】
この実施の形態では、乖離度合いとして、抵抗比率(すなわち、隣ブロックの電気抵抗に対する対象ブロックの電気抵抗の比率)を採用する。抵抗比率は、対象ブロックの電気抵抗を隣ブロックの電気抵抗で除算した値(=対象ブロックの電気抵抗/隣ブロックの電気抵抗)である。診断部513は、抵抗比率が所定値(以下、「Th2」と表記する)よりも大きい場合に、対象ブロックに断線が生じていると判断する。この実施の形態では、Th2が1よりも大きい。なお、対象ブロック及び隣ブロックの各々の電気抵抗は、測定部512が前述の方法で測定する。各ブロックの電気抵抗の測定誤差(特に、電圧検出回路141及び電流検出回路142による検出誤差)は、比率を算出するときに相殺される。
【0099】
詳細は後述するが、この実施の形態に係る診断部513は、対象ブロックを順次変更して、測定部512によって測定された各並列セルブロック100の電気抵抗を用いて、組電池130に含まれる少なくとも1つの並列セルブロック100に断線が生じていないかを診断するように構成される(図14参照)。
【0100】
図13は、この実施の形態に係る電池抵抗測定方法を示すフローチャートである。組電池130の外部充電が開始されると、図13に示す一連の処理が開始される。
【0101】
図1図3とともに図13を参照して、判断部511は、S11~S14において、測定開始条件が成立するか否かを判断する。
【0102】
S11では、組電池130が車両50の外部から電力の供給を受けているか否かを、判断部511が判断する。たとえば、組電池130の外部充電が終了すると、車両外部からインレット110への電力供給が停止され、DC充電器120から組電池130へ電力が出力されなくなる。この場合、S11においてNOと判断され、図13に示す一連の処理は終了する。
【0103】
他方、DC充電器120から組電池130へ電力が出力されている場合には、S11においてYESと判断される。この場合、処理はS12に進む。その後、S12~S14の全てにおいてYESと判断されると、処理はS15に進む。他方、S12~S14のいずれかでNOと判断されると、処理は最初のステップ(S11)に戻る。
【0104】
S12では、組電池130の温度がTh1よりも低いか否かを、判断部511が判断する。なお、組電池130の外部充電中において、Win(組電池130の入力制限値)は組電池130の温度に応じて変化する(図4参照)。
【0105】
S13では、モード切替部522がマイルームモードを実行しているか否かを、判断部511が判断する。組電池130の外部充電中において、ユーザは、図5に示した処理を呼び出して選択画面(図6)でマイルームモードを選択することにより、モード切替部522にマイルームモードを実行させることができる。
【0106】
S14では、空調装置320が駆動されたか否かを、判断部511が判断する。マイルームモードにおいては、ユーザが、入力装置160を操作して、空調装置320の駆動を開始することができる。
【0107】
S11~S14の全てにおいてYESと判断されることは、前述した要件a~cが満たされることを意味する。そして、判断部511は、要件a~cが満たされた場合に、測定開始条件が成立したと判断する。また、判断部511は、測定開始条件が成立したときに、充放電切替タイミングが到来したと判断する。S11~S14の全てにおいてYESと判断されると、測定部512は、S15において、組電池130の電気抵抗の測定を開始する。S15では、測定部512が、組電池130に含まれる各並列セルブロック100の電気抵抗を測定し、測定されたデータ(電気抵抗)を記憶装置503(図1)に保存する。その後、処理はS16に進む。
【0108】
S16では、診断部513が、上記S15で測定された各並列セルブロック100の電気抵抗を用いて、組電池130に含まれる全ての並列セルブロック100の断線の有無を診断する。
【0109】
図14は、図13に示した電池診断処理(S16)の詳細を示すフローチャートである。図1図3とともに図14を参照して、S21では、診断部513が、組電池130に含まれるいずれかのセルスタック200を、対象スタックとして設定する。診断部513は、S21の処理が実行されるたびに対象スタックを変更する。この実施の形態では、診断部513が、組電池130に含まれるセルスタック200-1~200-Nを、正極側から順に、対象スタックとして設定する。すなわち、最初は、セルスタック200-1が、対象スタックとして設定される。ただし、S21における対象スタックの設定順序は、上記に限られず任意である。
【0110】
S22では、診断部513が、上記S21で設定された対象スタックに含まれるいずれかの並列セルブロック100を、対象ブロックとして設定する。診断部513は、S22の処理が実行されるたびに対象ブロックを変更する。この実施の形態では、診断部513が、対象スタックに含まれる並列セルブロック100-1~100-Mを、正極側から順に、対象ブロックとして設定する。すなわち、最初は、並列セルブロック100-1が、対象ブロックとして設定される。ただし、S22における対象ブロックの設定順序は、上記に限られず任意である。
【0111】
S23では、診断部513が、上記S22で設定された対象ブロックの電気抵抗を取得する。続けて、診断部513は、S24において、隣ブロックの電気抵抗を取得する。対象ブロック及び隣ブロックの各々の電気抵抗は、図13のS15で測定されて記憶装置503(図1)に記憶されている。
【0112】
S25では、診断部513が、上記S23で取得した対象ブロックの電気抵抗を、上記S24で取得した隣ブロックの電気抵抗で除算することにより、抵抗比率を算出する。続けて、診断部513は、S26において、抵抗比率がTh2よりも大きいか否かを判断する。Th2は、並列セルブロック100に断線が生じているか否かを判断するための閾値である。対象ブロックに断線が生じているときには、抵抗比率がTh2よりも大きくなる。抵抗比率がTh2よりも大きいことは、抵抗乖離度が所定の水準よりも大きく、かつ、対象ブロックの電気抵抗が隣ブロックの電気抵抗よりも大きいことを意味する。
【0113】
抵抗比率がTh2以下である場合(S26にてNO)には、診断部513は、対象ブロックに断線が生じていないと判断し、処理をS27に進める。S27では、対象スタックに含まれる全ての並列セルブロック100の診断が完了したか否かを、診断部513が判断する。この実施の形態では、並列セルブロック100-Mを対象ブロックとして上述の診断(S23~S26)が行なわれた場合に、S27においてYESと判断され、処理がS29に進む。S27においてYESと判断されることは、対象スタックで断線が生じていないことを意味する。診断部513は、こうした診断結果を報知及び/又は記録してもよい。
【0114】
対象スタックにおいていずれかの並列セルブロック100の診断がまだ完了していない場合(S27にてNO)には、処理がS22に戻り、S22において対象ブロックが変更され、変更後の対象ブロックについて上述の診断(S23~S26)が実行される。たとえば、並列セルブロック100-1の次は、並列セルブロック100-2が、対象ブロックとして設定される。
【0115】
抵抗比率がTh2よりも大きい場合(S26にてYES)には、診断部513は、対象スタックで断線が生じていると判断し、処理をS28に進める。S28では、診断部513が所定の異常検出処理を実行する。所定の異常検出処理は、診断結果(すなわち、対象スタックに断線が生じていること)を示す情報の記録を含んでもよい。診断結果は記憶装置503(図1)に記録されてもよい。記録された診断結果はOBD(自己診断)で使用されてもよい。所定の異常検出処理は、診断結果の報知を含んでもよい。診断結果の報知は、報知装置170(図1)によって行なわれてもよい。報知の方法は任意であり、表示装置への表示(たとえば、文字又は画像の表示)でユーザに知らせてもよいし、スピーカにより音(音声を含む)でユーザに知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。所定の異常検出処理は、診断結果の送信を含んでもよい。診断結果は、車両外部のサーバ(図示せず)へ送信されてもよい。S28の処理が実行されると、処理はS29に進む。
【0116】
S29では、組電池130に含まれる全てのセルスタック200の診断が完了したか否かを、診断部513が判断する。いずれかのセルスタック200の診断がまだ完了していない場合(S29にてNO)には、処理がS21に戻り、S21において対象スタックが変更される。たとえば、セルスタック200-1の次は、セルスタック200-2が、対象スタックとして設定される。そして、変更後の対象スタックに含まれる各並列セルブロック100について上述の診断が実行される(S22~S26)。
【0117】
この実施の形態では、セルスタック200-Nを対象スタックとして上述の診断(S22~S26)が行なわれた場合に、S29においてYESと判断される。S29においてYESと判断されると、図14に示す一連の処理は終了する。これにより、図13のS16の処理が終了し、図13の一連の処理も終了する。
【0118】
以上説明したように、この実施の形態に係る電池抵抗測定方法は、組電池130(対象電池)の電気抵抗を測定する電池抵抗測定方法であって、所定の測定開始条件が成立したか否かに基づいて、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったか否かを判断すること(図13のS11~S14)と、組電池130が充電状態から放電状態(受電中)に切り替わったと判断された場合(S11~S14の全てでYES)に、組電池130の電気抵抗の測定を開始すること(図13のS15)とを含む。こうした電池抵抗測定方法によれば、分極の影響が小さい期間に組電池130の電気抵抗を測定することができる。このため、組電池130の分極状態の測定を行なわなくても、組電池130の電気抵抗を十分な精度で測定できる。このように、上記電池抵抗測定方法は、簡単かつ的確に組電池130の電気抵抗を測定することができる。
【0119】
上述した測定開始条件は、適宜変更可能である。たとえば、Winが常に低く設定され、組電池130の温度によらずWinが常に空調装置320の駆動電力よりも小さくなる場合には、要件cを割愛してもよい。すなわち、要件a及びbが満たされたときに測定開始条件が成立するようにしてもよい。
【0120】
図15は、図13に示した処理の変形例を示す図である。図15に示す処理は、S12(図13)が割愛されたこと以外は、図13に示した処理と同じである。ECU500が、図13に示した処理に代えて図15に示す処理を実行することによって、要件a及びbが満たされたときに測定開始条件が成立するようになる。
【0121】
上記実施の形態において、要件bは、組電池130の外部充電開始後に空調装置320が駆動された場合に満たされる。しかし、空調装置320に代えて又は加えて他の補機が駆動された場合に満たされるように要件bを変更してもよい。他の補機も、空調装置320と同様、通常モード及びマイルームモードの対象補機に含まれてもよい。他の補機は、各種ヒータ(たとえば、シートヒータ及びミラーヒータの少なくとも一方)であってもよい。
【0122】
上記実施の形態では、セルスタック200において対象ブロックの正極側及び負極側の両隣に並列セルブロック100が存在する場合には、正極側の並列セルブロック100を、隣ブロックとして採用している。しかしこれに限られず、対象ブロックの両隣に位置する2つの並列セルブロック100の各々を、隣ブロックとして採用してもよい。たとえば、図14に示した処理において、S25で、対象ブロックの両隣に位置する2つの並列セルブロック100の各々について抵抗比率を算出し、S26で、各抵抗比率をTh2と比較してもよい。そして、少なくとも一方の抵抗比率がTh2よりも大きい場合に、S26においてYESと判断されるようにしてもよい。
【0123】
電池抵抗を用いた電池の診断方法は、図14に示した方法に限られない。たとえば、測定部512によって測定されたデータ(すなわち、組電池130に含まれる各並列セルブロック100の電気抵抗)を、ECU500がAI(人工知能)を用いて解析して、いずれの並列セルブロック100において異常が生じているかを診断してもよい。
【0124】
上記実施の形態では、電池抵抗測定システム510及び制御システム520が1つのコンピュータ(ECU500)に搭載されているが、電池抵抗測定システム510及び制御システム520は、複数のコンピュータに別々に搭載されてもよい。さらに、充電制御部521と空調制御部523とが、複数のコンピュータに別々に搭載されてもよい。
【0125】
車両50に搭載された入力装置160及び報知装置170の少なくとも一方の代わりに、車両50のユーザによって携帯される携帯端末を採用してもよい。携帯端末は入力装置及び報知装置のいずれとしても機能し得る。携帯端末は、ECU500と無線通信するように構成されてもよい。ユーザは、こうした携帯端末を入力装置160及び報知装置170と同様に扱うことができる。携帯端末の例としては、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、電子キー、又はサービスツールが挙げられる。
【0126】
電池抵抗測定装置によって電気抵抗が測定される対象電池は、組電池130に限られず、1つの二次電池(たとえば、リチウムイオン二次電池)であってもよい。また、対象電池は、車両に搭載された電池にも限られない。対象電池は、車両以外の乗り物(船、飛行機等)、無人の移動体(無人搬送車(AGV)、農業機械、移動型ロボット、ドローン、宇宙探査機等)、装着型ロボット(たとえば、介護ロボット)、定置型ロボット(たとえば、産業用ロボット)、又は建物(住宅、工場等)で使用されてもよい。
【0127】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
10 セル、40 EVSE、50 車両、100-1~100-M 並列セルブロック、110 インレット、120 DC充電器、130 組電池、141-1~141-N 電圧検出回路、142 電流検出回路、143 温度検出回路、150 走行駆動部、160 入力装置、170 報知装置、200-1~200-N セルスタック、300 バッテリ、310 DC/DCコンバータ、320 空調装置、500 ECU、510 電池抵抗測定システム、511 判断部、512 測定部、513 診断部、520 制御システム、521 充電制御部、522 モード切替部、523 空調制御部、PS 電源、W 駆動輪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15