(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ラッチ回路及び給電制御装置
(51)【国際特許分類】
H03K 3/286 20060101AFI20240910BHJP
H03K 17/687 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
H03K3/286 H
H03K17/687 A
(21)【出願番号】P 2021052040
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】澤田 凌兵
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 征哉
(72)【発明者】
【氏名】小田 康太
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-90131(JP,U)
【文献】特開平5-129899(JP,A)
【文献】特開2017-188773(JP,A)
【文献】特開平1-220512(JP,A)
【文献】特開昭61-33003(JP,A)
【文献】特開昭51-65541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/286
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定条件が満たされた場合に出力電圧を所定値に固定するラッチ回路であって、
電流が入力される入力端、電流が出力される出力端及び制御端を有し、前記入力端及び制御端間の電圧が電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わる第1スイッチと、
前記入力端及び制御端間に接続される第1抵抗と、
前記制御端に一端が接続される第2抵抗と、
前記第1抵抗及び第2抵抗の順に流れた抵抗電流が入力される第2の入力端を有し、前記第1スイッチがオンに切替わった場合にオンに切替わる第2スイッチと、
前記抵抗電流が入力される第3スイッチと
を備え、
前記第2スイッチ又は第3スイッチがオンである場合に前記第1抵抗の両端間の電圧は前記電圧閾値以上であり、
前記第1スイッチの前記入力端に電圧が入力され、
前記第2スイッチの前記第2の入力端から電圧が出力される
ラッチ回路。
【請求項2】
第3抵抗及び第4抵抗を備え、
前記第2スイッチは、電流が出力される第2の出力端及び第2の制御端を更に有し、
前記第2スイッチは、前記第2の出力端及び第2の制御端間の電圧が第2の電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わり、
前記第3抵抗は、前記第1スイッチの前記出力端及び前記第2スイッチの前記第2の制御端間に接続され、
前記第4抵抗は、前記第2スイッチの前記第2の制御端及び第2の出力端間に接続され、
電流は、前記第1スイッチ、第3抵抗及び第4抵抗の順に流れる
請求項1に記載のラッチ回路。
【請求項3】
給電スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、
電圧を出力し、出力電圧を調整する電圧調整部と、
所定条件が満たされるまで前記電圧調整部の出力電圧に応じた電圧を出力し、前記所定条件が満たされた場合に出力電圧を所定値に固定するラッチ回路と、
前記ラッチ回路の出力電圧に応じて前記給電スイッチをオン又はオフに切替える切替え回路と
を備え、
前記ラッチ回路は、
電流が入力される入力端、電流が出力される出力端及び制御端を有し、前記入力端及び制御端間の電圧が電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わる第1スイッチと、
前記入力端及び制御端間に接続される第1抵抗と、
前記制御端に一端が接続される第2抵抗と、
前記第1抵抗及び第2抵抗の順に流れた抵抗電流が入力される第2の入力端を有し、前記第1スイッチがオンに切替わった場合にオンに切替わる第2スイッチと、
前記抵抗電流が入力される第3スイッチと
を有し、
前記第2スイッチ又は第3スイッチがオンである場合に前記第1抵抗の両端間の電圧が上昇し、
前記電圧調整部の出力電圧は、前記第1スイッチの前記入力端に入力され、
前記第2スイッチの前記第2の入力端から電圧が前記切替え回路に出力される
給電制御装置。
【請求項4】
前記ラッチ回路は、前記第3スイッチをオン又はオフに切替える第2の切替え回路を有し、
前記第2の切替え回路は、前記給電スイッチを介して流れる電流の電流経路に配置された電線の電線温度と、前記電線周辺の環境温度との温度差が所定温度差以上の値に上昇した場合に、前記第3スイッチをオンに切替え、
前記所定値は、前記給電スイッチのオフへの切替えを指示する電圧である
請求項3に記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記第3スイッチをオン又はオフに切替える第2の切替え回路と、
前記給電スイッチを介して流れる電流が大きい程、大きい電流を出力する電流出力回路と、
前記給電スイッチを介して流れる電流の電流経路に配置された電線の電線温度と、前記電線周辺の環境温度との温度差が大きい程、高い電圧を出力する温度差回路と
を備え、
前記温度差回路の出力電圧は、前記電流出力回路の出力電流に基づいて生成され、
前記第2の切替え回路は、前記温度差回路の出力電圧が所定電圧以上の電圧に上昇した場合に、前記第3スイッチをオンに切替え、
前記所定値は、前記給電スイッチのオフへの切替えを指示する電圧である
請求項3に記載の給電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はラッチ回路及び給電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力電圧を固定する車両用のラッチ回路が開示されている。ハイレベル電圧又はローレベル電圧がラッチ回路に入力されている。ラッチ回路は、通常、ローレベル電圧を出力している。ラッチ回路に入力されている電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、ラッチ回路は出力電圧をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替える。その後、ラッチ回路は、入力電圧に無関係に出力電圧をハイレベル電圧に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一又は複数のスイッチを用いた具体的なラッチ回路の構成が開示されていない。車両に搭載し易い小型のラッチ回路を実現するためには、ラッチ回路に含まれるスイッチの数は少ないことが好ましい。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力電圧を所定値に固定するために必要なスイッチの数が少ないラッチ回路及び給電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るラッチ回路は、所定条件が満たされた場合に出力電圧を所定値に固定するラッチ回路であって、電流が入力される入力端、電流が出力される出力端及び制御端を有し、前記入力端及び制御端間の電圧が電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わる第1スイッチと、前記入力端及び制御端間に接続される第1抵抗と、前記制御端に一端が接続される第2抵抗と、前記第1抵抗及び第2抵抗の順に流れた抵抗電流が入力される第2の入力端を有し、前記第1スイッチがオンに切替わった場合にオンに切替わる第2スイッチと、前記抵抗電流が入力される第3スイッチとを備え、前記第2スイッチ又は第3スイッチがオンである場合に前記第1抵抗の両端間の電圧は前記電圧閾値以上であり、前記第1スイッチの前記入力端に電圧が入力され、前記第2スイッチの前記第2の入力端から電圧が出力される。
【0007】
本開示の一態様に係る給電制御装置は、給電スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、電圧を出力し、出力電圧を調整する電圧調整部と、所定条件が満たされるまで前記電圧調整部の出力電圧に応じた電圧を出力し、前記所定条件が満たされた場合に出力電圧を所定値に固定するラッチ回路と、前記ラッチ回路の出力電圧に応じて前記給電スイッチをオン又はオフに切替える切替え回路とを備え、前記ラッチ回路は、電流が入力される入力端、電流が出力される出力端及び制御端を有し、前記入力端及び制御端間の電圧が電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わる第1スイッチと、前記入力端及び制御端間に接続される第1抵抗と、前記制御端に一端が接続される第2抵抗と、前記第1抵抗及び第2抵抗の順に流れた抵抗電流が入力される第2の入力端を有し、前記第1スイッチがオンに切替わった場合にオンに切替わる第2スイッチと、前記抵抗電流が入力される第3スイッチとを有し、前記第2スイッチ又は第3スイッチがオンである場合に前記第1抵抗の両端間の電圧が上昇し、前記電圧調整部の出力電圧は、前記第1スイッチの前記入力端に入力され、前記第2スイッチの前記第2の入力端から電圧が前記切替え回路に出力される。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、出力電圧を所定値に固定するために必要なスイッチの数が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】給電制御装置が有する複数の構成部の配置の説明図である。
【
図4】ラッチ回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】マイコンが出力電圧を一定電圧に切替えた場合における電流の通流の説明図である。
【
図6】比較器スイッチがオンである場合における電流の通流の説明図である。
【
図7】比較器スイッチがオンからオフに切替わった場合における電流の通流の説明図である。
【
図8】実施形態2における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図9】温度差回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】ラッチ回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
(1)本開示の一態様に係るラッチ回路は、所定条件が満たされた場合に出力電圧を所定値に固定するラッチ回路であって、電流が入力される入力端、電流が出力される出力端及び制御端を有し、前記入力端及び制御端間の電圧が電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わる第1スイッチと、前記入力端及び制御端間に接続される第1抵抗と、前記制御端に一端が接続される第2抵抗と、前記第1抵抗及び第2抵抗の順に流れた抵抗電流が入力される第2の入力端を有し、前記第1スイッチがオンに切替わった場合にオンに切替わる第2スイッチと、前記抵抗電流が入力される第3スイッチとを備え、前記第2スイッチ又は第3スイッチがオンである場合に前記第1抵抗の両端間の電圧は前記電圧閾値以上であり、前記第1スイッチの前記入力端に電圧が入力され、前記第2スイッチの前記第2の入力端から電圧が出力される。
【0012】
上記の態様にあっては、第1スイッチ、第2スイッチ及び第3スイッチがオフである場合、第1スイッチの入力端に入力された電圧が、第1抵抗及び第2抵抗を介して出力される。電流が出力される第2スイッチの一端を第2の出力端と記載する。第2の出力端の電位が基準電位である第1スイッチの入力端の電圧は一定値以上である状態で第3スイッチがオンに切替わったと仮定する。第3スイッチがオンである場合、第1抵抗の両端間の電圧は電圧閾値以上であり、第1スイッチはオンである。第1スイッチがオンに切替わった場合、第2スイッチがオンに切替わる。
【0013】
第1スイッチがオンである場合、第2スイッチはオンである。第2スイッチがオンである場合、第1スイッチはオンである。このため、第3スイッチがオンからオフに切替わった場合であっても、第2スイッチの第2の出力端の電位が基準電位である第1スイッチの入力端の電圧は一定値以上である限り、第2スイッチのオンは維持される。結果、出力電圧は所定値に固定される。所定値は、第2スイッチが有する第2の出力端の電圧である。出力電圧を所定値に固定するために必要なスイッチの数が3であり、少ない。
【0014】
(2)本開示の一態様に係るラッチ回路は、第3抵抗及び第4抵抗を備え、前記第2スイッチは、電流が出力される第2の出力端及び第2の制御端を更に有し、前記第2スイッチは、前記第2の出力端及び第2の制御端間の電圧が第2の電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わり、前記第3抵抗は、前記第1スイッチの前記出力端及び前記第2スイッチの前記第2の制御端間に接続され、前記第4抵抗は、前記第2スイッチの前記第2の制御端及び第2の出力端間に接続され、電流は、前記第1スイッチ、第3抵抗及び第4抵抗の順に流れる。
【0015】
上記の態様にあっては、第2スイッチの第2の出力端の電位が基準電位である第1スイッチの入力端の電圧は一定値以上である場合において、第1スイッチがオンであるとき、電流が第1スイッチ、第3抵抗及び第4抵抗の順に流れる。これにより、第4抵抗において電圧降下が生じる。第1スイッチがオンに切替わった場合、第2スイッチの第2の制御端及び第2の出力端間の電圧が第2の電圧閾値以上の電圧に上昇する。結果、第2スイッチがオンに切替わる。
【0016】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置は、給電スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、電圧を出力し、出力電圧を調整する電圧調整部と、所定条件が満たされるまで前記電圧調整部の出力電圧に応じた電圧を出力し、前記所定条件が満たされた場合に出力電圧を所定値に固定するラッチ回路と、前記ラッチ回路の出力電圧に応じて前記給電スイッチをオン又はオフに切替える切替え回路とを備え、前記ラッチ回路は、電流が入力される入力端、電流が出力される出力端及び制御端を有し、前記入力端及び制御端間の電圧が電圧閾値以上の電圧に上昇した場合にオフからオンに切替わる第1スイッチと、前記入力端及び制御端間に接続される第1抵抗と、前記制御端に一端が接続される第2抵抗と、前記第1抵抗及び第2抵抗の順に流れた抵抗電流が入力される第2の入力端を有し、前記第1スイッチがオンに切替わった場合にオンに切替わる第2スイッチと、前記抵抗電流が入力される第3スイッチとを有し、前記第2スイッチ又は第3スイッチがオンである場合に前記第1抵抗の両端間の電圧が上昇し、前記電圧調整部の出力電圧は、前記第1スイッチの前記入力端に入力され、前記第2スイッチの前記第2の入力端から電圧が前記切替え回路に出力される。
【0017】
上記の態様にあっては、ラッチ回路は前述したように作用する。従って、第1スイッチ、第2スイッチ及び第3スイッチがオフである場合、電圧調整部の出力電圧が、ラッチ回路の第1抵抗及び第2抵抗を介して出力される。切替え回路は、電圧調整部の出力電圧に応じて給電スイッチをオン又はオフに切替える。第2スイッチの第2の出力端の電位が基準電位である第1スイッチの入力端の電圧は一定値以上である場合において、第3スイッチがオンに切替わったとき、ラッチ回路の出力電圧は所定値に固定される。結果、切替え回路は、給電スイッチの状態を、所定値に対応する状態に固定する。ラッチ回路の出力電圧を所定値に固定するために必要なスイッチの数が3であり、少ない。
【0018】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記ラッチ回路は、前記第3スイッチをオン又はオフに切替える第2の切替え回路を有し、前記第2の切替え回路は、前記給電スイッチを介して流れる電流の電流経路に配置された電線の電線温度と、前記電線周辺の環境温度との温度差が所定温度差以上の値に上昇した場合に、前記第3スイッチをオンに切替え、前記所定値は、前記給電スイッチのオフへの切替えを指示する電圧である。
【0019】
上記の態様にあっては、電線の温度差が所定温度差以上の値に上昇した場合、第3スイッチはオンに切替わり、ラッチ回路の出力電圧は所定値に固定される。結果、給電スイッチはオフに固定される。電線の電線温度が異常な温度に上昇することが防止される。
【0020】
(5)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記第3スイッチをオン又はオフに切替える第2の切替え回路と、前記給電スイッチを介して流れる電流が大きい程、大きい電流を出力する電流出力回路と、前記給電スイッチを介して流れる電流の電流経路に配置された電線の電線温度と、前記電線周辺の環境温度との温度差が大きい程、高い電圧を出力する温度差回路とを備え、前記温度差回路の出力電圧は、前記電流出力回路の出力電流に基づいて生成され、前記第2の切替え回路は、前記温度差回路の出力電圧が所定電圧以上の電圧に上昇した場合に、前記第3スイッチをオンに切替え、前記所定値は、前記給電スイッチのオフへの切替えを指示する電圧である。
【0021】
上記の態様にあっては、電線の温度差が所定温度差以上の値に上昇した場合、温度差回路の出力電圧は所定電圧以上の電圧に上昇する。従って、電線の温度差が所定温度差以上の値に上昇した場合、第3スイッチはオンに切替わり、ラッチ回路の出力電圧は所定値に固定される。結果、給電スイッチはオフに固定される。電線の電線温度が異常な温度に上昇することが防止される。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
(実施形態1)
<電源システムの構成>
図1は、実施形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は車両Mに搭載されている。電源システム1は、直流電源10、負荷11及び給電制御装置12を備える。直流電源10は、例えばバッテリである。負荷11は、電気機器である。負荷11に電力が供給された場合、負荷11は作動する。負荷11への給電が停止した場合、負荷11は動作を停止する。
【0024】
給電制御装置12は給電スイッチ20を有する。給電スイッチ20は、Nチャネル型のFETである。FETはField Effect Transistorの略語である。給電スイッチ20がオンである場合、給電スイッチ20において、ドレイン及びソース間の抵抗値が十分に小さい。結果、ドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能である。給電スイッチ20がオフである場合、給電スイッチ20において、ドレイン及びソース間の抵抗値が十分に大きい。結果、ドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。
【0025】
給電スイッチ20のドレインは、直流電源10の正極に接続されている。給電スイッチ20のソースは、電線Wを介して負荷11の一端に接続されている。直流電源10の負極と、負荷11の他端とは接地されている。接地は、例えば、車両Mのボディへの接続によって実現される。
【0026】
給電スイッチ20がオフからオンに切替わった場合、直流電源10の正極から、電流が給電スイッチ20、電線W及び負荷11の順に流れ、負荷11に電力が供給される。これにより、負荷11は作動する。給電スイッチ20がオンからオフに切替わった場合、直流電源10から負荷11への給電が停止し、負荷11は動作を停止する。給電制御装置12は、給電スイッチ20をオン又はオフに切替えることによって、給電スイッチ20を介した直流電源10から負荷11への給電を制御する。
【0027】
<給電制御装置12の構成>
給電制御装置12は、給電スイッチ20に加えて、駆動回路21、ラッチ回路22、装置抵抗23、温度検出回路24及びマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)25を備える。駆動回路21は、電圧の出力端及び入力端を有する。給電スイッチ20のゲートは、駆動回路21の出力端に接続されている。駆動回路21の入力端は、ラッチ回路22と、装置抵抗23の一端とに接続されている。装置抵抗23の他端は接地されている。ラッチ回路22は、更に、温度検出回路24及びマイコン25に各別に接続されている。
【0028】
図2は、給電制御装置12が有する複数の構成部の配置の説明図である。給電制御装置12は、更に、スイッチ基板Bs及び制御基板Bcを有する。スイッチ基板Bsには、給電スイッチ20、駆動回路21、ラッチ回路22、装置抵抗23及び温度検出回路24が配置されている。回路の配置は、回路を構成する一又は複数の回路素子の配置を意味する。制御基板Bcには、マイコン25が配置されている。マイコン25は、例えば集積回路素子である。マイコン25は、ケーブルFを介してラッチ回路22に接続されている。
【0029】
図1に示すように、温度検出回路24は、サーミスタ30及び検出抵抗31を有する。サーミスタ30のタイプはNTC(Negative Temperature Coefficient)である。このため、サーミスタ30の温度が高い程、サーミスタ30の抵抗値は小さい。サーミスタ30の一端は、検出抵抗31の一端に接続されている。サーミスタ30の他端には、一定電圧Vcが印加されている。一定電圧Vcは、接地電位が基準電位である電圧である。検出抵抗31の他端は接地されている。サーミスタ30及び検出抵抗31間の接続ノードはラッチ回路22に接続されている。
【0030】
一定電圧Vcは、例えば、図示しないレギュレータによって生成される。レギュレータは、直流電源10の出力電圧を降圧することによって、一定電圧Vcを生成する。直流電源10の出力電圧は、例えば、8Vから12Vまでの範囲内で変動する電圧である。一定電圧Vcは、例えば5Vである。レギュレータは、降圧幅を調整することによって、一定電圧Vcを常時生成する。
【0031】
サーミスタ30及び検出抵抗31は、一定電圧Vcを分圧し、分圧した電圧を、温度検出回路24の出力電圧として、ラッチ回路22に出力する。温度検出回路24の出力電圧は、サーミスタ30及び検出抵抗31の抵抗値の比率によって決まる。サーミスタ30の抵抗値が小さい程、即ち、サーミスタ30の温度が高い程、温度検出回路24の出力電圧は高い。
【0032】
サーミスタ30はスイッチ基板Bsに配置されている。従って、スイッチ基板Bsの温度が高い程、サーミスタ30の温度は高い。サーミスタ30の温度が高い程、温度検出回路24の出力電圧は高い。従って、スイッチ基板Bsの温度が高い程、温度検出回路24の出力電圧は高い。
以上のように、温度検出回路24は、スイッチ基板Bsの温度を検出し、出力電圧を、検出した温度に応じた電圧に調整する。
【0033】
マイコン25は、電圧をラッチ回路22に出力する。マイコン25は、出力電圧を、一定電圧Vc又はゼロVに切替える。マイコン25は、出力電圧を調整する電圧調整部として機能する。ラッチ回路22は、温度検出回路24の出力電圧が一定の基準電圧未満である場合、マイコン25に出力電圧に応じた電圧を駆動回路21に出力する。このとき、ラッチ回路22の出力電圧は、マイコン25の出力電圧が高い程、高い。ラッチ回路22の出力電圧は装置抵抗23の両端に印加される。基準電圧はゼロVを超えている。
【0034】
駆動回路21は、ラッチ回路22の出力電圧が一定の出力閾値以上の電圧に上昇した場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオフからオンに切替える。これにより、給電スイッチ20及び電線Wを介して電流が流れ、負荷11に電力が供給される。出力閾値はゼロVを超えている。駆動回路21は、ラッチ回路22の出力電圧が出力閾値未満の電圧に低下した場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオンからオフに切替える。これにより、給電スイッチ20及び電線Wを介した負荷11への給電が停止する。駆動回路21は切替え回路として機能する。
【0035】
給電スイッチ20について、ソースの電位が基準電位であるゲートの電圧が一定のスイッチ閾値以上である場合、給電スイッチ20はオンである。給電スイッチ20について、ソースの電位が基準電位であるゲートの電圧がスイッチ閾値未満である場合、給電スイッチ20はオフである。スイッチ閾値はゼロVを超えている。
【0036】
駆動回路21は、給電スイッチ20をオンに切替える場合、給電スイッチ20において、接地電位が基準電位であるゲートの電圧を上昇させる。これにより、給電スイッチ20において、ソースの電位が基準電位であるゲートの電圧がスイッチ閾値以上の電圧に上昇する。駆動回路21は、給電スイッチ20をオフに切替える場合、給電スイッチ20において、接地電位が基準電位であるゲートの電圧を低下させる。これにより、給電スイッチ20において、ソースの電位が基準電位であるゲートの電圧がスイッチ閾値未満の電圧に低下する。
【0037】
温度検出回路24の出力電圧が基準電圧未満である場合において、マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcであるとき、ラッチ回路22の出力電圧は出力閾値以上である。従って、駆動回路21は給電スイッチ20をオンに維持する。同様の場合において、マイコン25の出力電圧がゼロVであるとき、ラッチ回路22の出力電圧は、ゼロVであり、出力閾値未満である。従って、駆動回路21は給電スイッチ20をオフに維持する。
【0038】
前述したように、給電スイッチ20はオンである場合、給電スイッチ20を介して電流が流れる。給電スイッチ20を介して電流が流れた場合、給電スイッチ20は発熱する。給電スイッチ20に関して、単位時間当たりの発熱量が単位時間当たりの放熱量を超えている場合、給電スイッチ20の温度が上昇する。給電スイッチ20の温度が上昇した場合、スイッチ基板Bsの温度が上昇する。スイッチ基板Bsの温度が上昇した場合、温度検出回路24の出力電圧は上昇する。
【0039】
給電スイッチ20の発熱量は、給電スイッチ20において消費される電力が上昇した場合、上昇する。従って、給電スイッチ20において消費される電力は、給電スイッチ20を介して流れる電流の2乗値と、オン状態の給電スイッチ20の抵抗値との積によって表される。従って、給電スイッチ20を介して流れる電流が大きい程、発熱量は大きい。
【0040】
マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcである場合において、温度検出回路24の出力電圧が基準電圧以上の電圧に上昇したとき、ラッチ回路22は、出力電圧を強制的にゼロVに低下させる。これにより、駆動回路21は、給電スイッチ20を強制的にオフに切替える。給電スイッチ20がオフに切替わった場合、給電スイッチ20の温度が低下する。給電スイッチ20の温度が低下した場合、スイッチ基板Bsの温度が低下する。スイッチ基板Bsの温度が低下した場合、温度検出回路24の出力電圧は低下する。
【0041】
ラッチ回路22は、出力電圧を強制的にゼロVに低下させた後においては、マイコン25の出力電圧がゼロVに切替わるまで、出力電圧をゼロV(所定値)に固定する。従って、駆動回路21は、ラッチ回路22が出力電圧を強制的にゼロVに低下させてから、マイコン25の出力電圧がゼロVに切替わるまで、給電スイッチ20をオフに維持する。前述したように、出力閾値はゼロVを超えているので、ラッチ回路22の出力電圧として、ゼロVは、給電スイッチ20のオフへの切替えを指示する電圧である。
【0042】
以上のように、給電制御装置12では、スイッチ基板Bsの温度が異常な温度に上昇することを防止する。スイッチ基板Bsの温度が異常な温度に上昇した場合、スイッチ基板Bsに配置されている回路素子が正常に作用しない可能性がある。
【0043】
なお、温度検出回路24の構成は、スイッチ基板Bsの温度が上昇した場合に出力電圧が上昇する構成であれば、問題はない。従って、温度検出回路24の構成は、サーミスタ30及び検出抵抗31を用いる構成に限定されない。一例として、サーミスタ30の代わりに検出抵抗を用い、検出抵抗31の代わりに、PTC(Positive Temperature Coefficient)のサーミスタを用いてもよい。PTCのサーミスタの抵抗値は、PTCのサーミスタの温度が高い程、大きい。
【0044】
<ラッチ回路22の構成>
図3はラッチ回路22の回路図である。ラッチ回路22は、第1スイッチ40、第2スイッチ41、第1抵抗42、第2抵抗43、第3抵抗44、第4抵抗45、コンパレータ46、第1分圧抵抗47及び第2分圧抵抗48を有する。第1スイッチ40は、PNP型のバイポーラトランジスタである。第2スイッチ41はNPN型のバイポーラトランジスタである。コンパレータ46はプラス端及びマイナス端を有する。第1スイッチ40及び第2スイッチ41それぞれは、コレクタ、エミッタ及びベースを有する。
【0045】
第1スイッチ40のエミッタは、マイコン25に接続されている。第1スイッチ40のベース及びエミッタ間には、第1抵抗42が接続されている。第1スイッチ40のベースには、更に、第2抵抗43の一端が接続されている。第2抵抗43の他端は、第2スイッチ41のコレクタに接続されている。第1スイッチ40のコレクタ及び第2スイッチ41のベース間に第3抵抗44が接続されている。第2スイッチ41のベース及びエミッタ間に第4抵抗が接続されている。第2スイッチ41のエミッタは接地されている。第2スイッチ41のコレクタは、駆動回路21の入力端と、装置抵抗23の一端とに接続されている。
【0046】
ラッチ回路22では、マイコン25の出力電圧は第1スイッチ40のエミッタに入力される。ラッチ回路22の出力電圧は、第2スイッチ41のコレクタから駆動回路21に出力される。
【0047】
コンパレータ46は比較器スイッチ50を有する。比較器スイッチ50の一端は、第2スイッチ41のコレクタに接続されている。比較器スイッチ50の他端は接地されている。第1分圧抵抗47の一端は、第2分圧抵抗48の一端に接続されている。第1分圧抵抗47の他端には、一定電圧Vcが印加されている。第2分圧抵抗48の他端は接地されている。第1分圧抵抗47及び第2分圧抵抗48間の接続ノードは、コンパレータ46のプラス端に接続されている。コンパレータ46のマイナス端は、温度検出回路24に接続されている。
【0048】
電流がマイコン25から第1抵抗42及び第2抵抗43の順に流れる場合において、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧が一定の電圧閾値以上の電圧に上昇したとき、第1スイッチ40はオフからオンに切替わる。電圧閾値はゼロVを超えている。第1スイッチ40がオンである場合、第1スイッチ40のエミッタ及びコレクタ間の抵抗値は十分に小さく、エミッタ及びコレクタを介して電流が流れることが可能である。
【0049】
同様の場合において、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧が電圧閾値未満の電圧に低下したとき、第1スイッチ40はオンからオフに切替わる。第1スイッチ40がオフである場合、第1スイッチ40のエミッタ及びコレクタ間の抵抗値は十分に大きく、エミッタ及びコレクタを介して電流が流れることはない。
【0050】
電流がマイコン25から、第1スイッチ40、第3抵抗44及び第4抵抗45の順に流れる場合において、第2スイッチ41のエミッタ及びベース間の電圧が一定の第2の電圧閾値以上の電圧に上昇したとき、第2スイッチ41はオフからオンに切替わる。第2の電圧閾値はゼロVを超えている。第2スイッチ41がオンである場合、第2スイッチ41のエミッタ及びコレクタ間の抵抗値は十分に小さく、コレクタ及びエミッタを介して電流が流れることが可能である。
【0051】
同様の場合において、第2スイッチ41のエミッタ及びベース間の電圧が第2の電圧閾値未満の電圧に低下したとき、第2スイッチ41はオンからオフに切替わる。第2スイッチ41がオフである場合、第2スイッチ41のエミッタ及びコレクタ間の抵抗値は十分に大きく、コレクタ及びエミッタを介して電流が流れることはない。
【0052】
第1分圧抵抗47及び第2分圧抵抗48は、一定電圧Vcを分圧し、分圧した電圧を、基準電圧Vrとしてコンパレータ46のプラス端に出力する。基準電圧Vrは、第1分圧抵抗47及び第2分圧抵抗48の抵抗値の比率によって決まる。第1分圧抵抗47及び第2分圧抵抗48の抵抗値は一定値であるため、基準電圧Vrは一定値である。基準電圧Vrは一定電圧Vc未満である。温度検出回路24は、出力電圧をコンパレータ46のマイナス端に出力している。
【0053】
コンパレータ46は、温度検出回路24の出力電圧が基準電圧Vr以上の電圧に上昇した場合、比較器スイッチ50をオンに切替える。コンパレータ46は、温度検出回路24の出力電圧が基準電圧Vr未満の電圧に低下した場合、比較器スイッチ50をオフに切替える。
【0054】
比較器スイッチ50として、例えば、NPN型のバイポーラトランジスタ又はNチャネル型のFETが用いられる。比較器スイッチ50として、NPN型のバイポーラトランジスタが用いられた場合、比較器スイッチ50のコレクタが第2スイッチ41のコレクタに接続される。比較器スイッチ50のエミッタは接地される。比較器スイッチ50として、Nチャネル型のFETが用いられた場合、比較器スイッチ50のドレインが第2スイッチ41のコレクタに接続される。比較器スイッチ50のソースは接地される。
【0055】
<ラッチ回路22の動作>
図4は、ラッチ回路22の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4には、マイコン25、ラッチ回路22及び温度検出回路24の出力電圧の推移が示されている。
図4には、更に、第1スイッチ40、第2スイッチ41、給電スイッチ20及び比較器スイッチ50の状態の推移が示されている。状態として、オン又はオフが示されている。
図4に示す7つの推移それぞれについて、横軸には、時間が示されている。Voは出力閾値を示す。Vrは基準電圧を示す。
【0056】
マイコン25の出力電圧がゼロVである場合、第1抵抗42を介して電流が流れることはない。このため、第1抵抗42で電圧降下が生じることはない。結果、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧は、ゼロVであり、電圧閾値未満である。第1スイッチ40はオフである。第1スイッチ40がオフである場合、第4抵抗45を介して電流が流れることはない。このため、第4抵抗45において電圧降下が生じることはない。結果、第2スイッチ41のベース及びエミッタ間の電圧は、ゼロVであり、第2の電圧閾値未満である。第2スイッチ41もオフである。
【0057】
マイコン25の出力電圧がゼロVである場合、ラッチ回路22の出力電圧は、ゼロVであり、出力閾値Vo未満である。従って、駆動回路21は給電スイッチ20をオフに維持している。温度検出回路24の出力電圧が基準電圧Vr未満である場合、コンパレータ46は、比較器スイッチ50をオフに維持している。
【0058】
第1スイッチ40、第2スイッチ41及び比較器スイッチ50がオフである状態でマイコン25が出力電圧をゼロVから一定電圧Vcに切替えた場合、電流は、マイコン25から電流が流れる。
【0059】
図5は、マイコン25が出力電圧を一定電圧Vcに切替えた場合における電流の通流の説明図である。マイコン25が出力電圧をゼロVから一定電圧Vcに切替えた場合、
図5に示すように、電流は、マイコン25から、第1抵抗42、第2抵抗43及び装置抵抗23の順に流れる。このため、第1抵抗42において、電圧降下が生じる。第1抵抗42の両端間の電圧は、第1抵抗42を介して流れる電流に比例する。
【0060】
第1抵抗42、第2抵抗43及び装置抵抗23の抵抗値の合計値は十分に大きい。このため、第1抵抗42を介して流れる電流は非常に小さい。従って、第1抵抗42の両端間の電圧、即ち、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧は、電圧閾値未満である。第1スイッチ40はオフである。
【0061】
電流が第1抵抗42、第2抵抗43及び装置抵抗23の順に流れる場合、第1抵抗42及び第2抵抗43によって構成される抵抗回路と、装置抵抗23とは一定電圧Vcを分圧する。分圧した電圧が、ラッチ回路22の出力電圧として、駆動回路21に出力される。ここで、ラッチ回路22の出力電圧は、第1抵抗42及び第2抵抗43の抵抗値の合計値と、装置抵抗23の抵抗値との比率によって決まる。装置抵抗23の抵抗値は、第1抵抗42及び第2抵抗43の抵抗値の合計値よりも十分に大きい。このため、ラッチ回路22の出力電圧として、一定電圧Vcに近い回路電圧Vuが駆動回路21に出力される。
【0062】
回路電圧Vuは出力閾値Vo以上である。従って、ラッチ回路22の出力電圧がゼロVから回路電圧Vuに上昇した場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオンに切替える。これにより、給電スイッチ20を介して電流が流れ、給電スイッチ20が発熱する。給電スイッチ20を介して電流が流れ始めてから、給電スイッチ20の発熱量及び放熱量が一致するまで、給電スイッチ20の温度が上昇する。給電スイッチ20の温度が上昇した場合、スイッチ基板Bsの温度が上昇する。スイッチ基板Bsの温度が上昇した場合、
図4に示すように、温度検出回路24の出力電圧は上昇する。
【0063】
マイコン25が出力電圧を一定電圧Vcに維持している場合において、電源システム1の状態が正常であるとき、給電スイッチ20の温度は低い温度で安定する。結果、温度検出回路24の出力電圧は、基準電圧Vr未満である電圧で安定する。比較器スイッチ50はオフに維持される。
【0064】
マイコン25が出力電圧を一定電圧VcからゼロVに低下させた場合、第1抵抗42、第2抵抗43及び装置抵抗23を介して電流の通流が停止する。これにより、第1抵抗42の両端間の電圧はゼロVに低下する。従って、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧は、ゼロVに低下し、第1スイッチ40はオフに維持される。第1スイッチ40がオフである場合、前述したように、第2スイッチ41はオフである。
【0065】
図4に示すように、マイコン25の出力電圧が一定電圧VcからゼロVに低下した場合、ラッチ回路22の出力電圧は、回路電圧VuからゼロVに低下する。ゼロVは出力閾値Vo未満である。ラッチ回路22の出力電圧は、出力閾値Vo未満の電圧に低下した場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオフに切替える。給電スイッチ20がオフである場合、給電スイッチ20は発熱を停止する。これにより、給電スイッチ20の温度は低下する。給電スイッチ20の温度が低下した場合、スイッチ基板Bsの温度が低下する。スイッチ基板Bsの温度が低下した場合、温度検出回路24の出力電圧が低下する。スイッチ基板Bsの温度が安定した場合、温度検出回路24の出力電圧は安定する。比較器スイッチ50はオフに維持される。
【0066】
以上のように、ラッチ回路22では、第1スイッチ40、第2スイッチ41及び比較器スイッチ50がオフである場合、マイコン25の出力電圧が第1抵抗42及び第2抵抗43を介して駆動回路21に出力される。ラッチ回路22は、マイコン25の出力電圧に応じた電圧を出力する。マイコン25が出力電圧をゼロVから一定電圧Vcに上昇させた場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオフからオンに切替える。マイコン25が出力電圧を一定電圧VcからゼロVに低下させた場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオンからオフに切替える。電源システム1の状態が正常である間、第1スイッチ40及び第2スイッチ41はオフに維持される。
【0067】
第1スイッチ40及び第2スイッチ41がオフである状態で、マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcである場合、前述したように、ラッチ回路22の出力電圧は回路電圧Vuであり、給電スイッチ20はオンである。電源システム1の状態が正常である場合において、給電スイッチ20がオンであるとき、温度検出回路24の出力電圧は、基準電圧Vr未満である電圧で安定している。
【0068】
例えば、負荷11の両端が短絡した場合、電源システム1の状態が異常な状態に遷移する。この場合、給電スイッチ20を介して大電流が流れ、給電スイッチ20の発熱量が大きく上昇する。これにより、スイッチ基板Bsの温度が大きく上昇する。スイッチ基板Bsの温度が大きく上昇した場合、温度検出回路24の出力電圧が大きく上昇する。
【0069】
マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcである状態で温度検出回路24の出力電圧が基準電圧Vr以上の電圧に上昇した場合、コンパレータ46は比較器スイッチ50をオフからオンに切替える。この場合、電流が比較器スイッチ50を介して流れる。
【0070】
図6は、比較器スイッチ50がオンである場合における電流の通流の説明図である。比較器スイッチ50がオンである場合、電流は、マイコン25から、第1抵抗42、第2抵抗43及び比較器スイッチ50の順に流れる。これにより、第1抵抗42において、電圧降下が生じる。
【0071】
電流は装置抵抗23を介して流れない。このため、第2抵抗43を介して流れる電流は大きい。従って、比較器スイッチ50がオンである場合、第1抵抗42の両端間の電圧は電圧閾値以上である。第1抵抗42の両端間の電圧が電圧閾値以上である場合、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧は、電圧閾値以上であり、第1スイッチ40はオンである。従って、コンパレータ46が比較器スイッチ50をオフからオンに切替えた場合、第1スイッチ40はオフからオンに切替わる。
【0072】
第1スイッチ40がオンである場合、電流は、マイコン25から第1スイッチ40、第3抵抗44及び第4抵抗45の順に流れる。これにより、第4抵抗45において電圧降下が生じる。第1スイッチ40がオンに切替わった場合、第2スイッチ41のベース及びエミッタ間の電圧が第2の電圧閾値以上の電圧に上昇する。第2スイッチ41のベース及びエミッタ間の電圧が第2の電圧閾値以上の電圧に上昇した場合、第2スイッチ41はオフからオンに切替わる。第2スイッチ41がオフからオンに切替わった場合、電流は、マイコン25から第1抵抗42、第2抵抗43及び第2スイッチ41の順に流れる。
【0073】
比較器スイッチ50がオンである場合、第1抵抗42及び第2抵抗43の順に流れた抵抗電流が比較器スイッチ50に入力される。比較器スイッチ50は第3スイッチとして機能する。コンパレータ46は第2の切替え回路として機能する。第1スイッチ40がオンである場合、マイコン25から第1スイッチ40のエミッタに電流が入力され、第1スイッチ40のコレクタから第3抵抗44に電流が出力される。第1スイッチ40のエミッタ、コレクタ及びベースそれぞれは、入力端、出力端及び制御端として機能する。第2スイッチ41がオンである場合、第1抵抗42及び第2抵抗43の順に流れた抵抗電流が第2スイッチ41のコレクタに電流が入力され、第2スイッチ41のエミッタから電流が出力される。第2スイッチ41のコレクタ、エミッタ及びベースそれぞれは、第2の入力端、第2の出力端及び第2の制御端として機能する。
【0074】
比較器スイッチ50がオフからオンに切替わった場合、装置抵抗23の駆動回路21側の一端は接地される。これにより、ラッチ回路22の出力電圧は、回路電圧VuからゼロVに低下する。結果、駆動回路21は、給電スイッチ20を強制的にオンからオフに切替える。給電スイッチ20がオフに切替わった場合、給電スイッチ20は発熱を停止するので、給電スイッチ20の温度は低下する。給電スイッチ20の温度が低下した場合、スイッチ基板Bsの温度が低下する。スイッチ基板Bsの温度が低下した場合、温度検出回路24の出力電圧が基準電圧Vr未満の電圧に低下する。結果、コンパレータ46は、比較器スイッチ50をオンからオフに切替える。
【0075】
図7は、比較器スイッチ50がオンからオフに切替わった場合における電流の通流の説明図である。比較器スイッチ50がオフに切替わった時点において、第2スイッチ41はオンである。第2スイッチ41がオンである場合、電流は、前述したように、マイコン25から第1抵抗42、第2抵抗43及び第2スイッチ41の順に流れる。電流は装置抵抗23を流れない。このため、第2スイッチ41がオンである場合、第1抵抗42の両端間の電圧は電圧閾値以上である。結果、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧は電圧閾値以上の電圧に維持される。第1スイッチ40はオンに維持される。
【0076】
前述したように、第1スイッチ40がオンである場合、第2スイッチ41はオンである。第2スイッチ41がオンである場合、装置抵抗23の駆動回路21側の一端は接地されている。従って、ラッチ回路22の出力電圧はゼロVに固定される。結果、比較器スイッチ50がオフに切替わった場合であっても、マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcである限り、駆動回路21は給電スイッチ20をオフに維持する。
【0077】
以上のように、ラッチ回路22は、比較器スイッチ50がオンに切替わるまで、マイコン25の出力電圧に応じた電圧を出力する。マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcである場合において、比較器スイッチ50がオンに切替わったとき、ラッチ回路22は、出力電圧を回路電圧VuからゼロV(所定値)に低下させる。その後、ラッチ回路22は、比較器スイッチ50の状態に無関係に、出力電圧をゼロV(所定値)に固定する。比較器スイッチ50のオンへの切替えが所定条件に相当する。
【0078】
給電スイッチ20がオフに切替わった場合、前述したように、スイッチ基板Bsの温度が安定するまで、温度検出回路24の出力電圧は低下する。ラッチ回路22が出力電圧をゼロVに固定している状態でマイコン25が出力電圧を一定電圧VcからゼロVに切替えた場合、第1抵抗42を介した電流の通流と、第4抵抗45を介して電流の通流とが停止する。
【0079】
第1抵抗42を介して電流の通流が停止した場合、第1スイッチ40のエミッタ及びベース間の電圧がゼロVに低下し、第1スイッチ40はオフに切替わる。第4抵抗45を介した電流の通流が停止した場合、第2スイッチ41のベース及びエミッタ間の電圧はゼロVに低下し、第2スイッチ41はオフに切替わる。第1スイッチ40及び第2スイッチ41がオフに切替わった場合、駆動回路21が行っていた強制的なオフが解除される。前述したように、第1スイッチ40及び第2スイッチ41がオフである場合、ラッチ回路22は、マイコン25の出力電圧に応じた電圧を出力する。
【0080】
強制的なオフが解除された後において、マイコン25が出力電圧をゼロVから一定電圧Vcに切替えた場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオフからオンに切替える。
【0081】
<給電制御装置12の効果>
給電制御装置12のラッチ回路22では、出力電圧をゼロVに固定するために必要なスイッチの数は3であり、少ない。
【0082】
<変形例>
温度検出回路24の出力電圧は、スイッチ基板Bsの温度を示していれば、問題はない。従って、温度検出回路24の構成は、スイッチ基板Bsの温度が上昇した場合に出力電圧が上昇する構成に限定されない。温度検出回路24の構成は、スイッチ基板Bsの温度が上昇した場合に出力電圧が低下する構成であってもよい。第1例として、サーミスタ30及び検出抵抗31それぞれの代わりに、検出抵抗31及びサーミスタ30を用いてもよい。第2例として、サーミスタ30として、PTCのサーミスタを用いてもよい。スイッチ基板Bsの温度が上昇した場合に出力電圧が低下する構成では、ラッチ回路22のコンパレータ46のプラス端に、温度検出回路24の出力電圧が出力される。コンパレータ46のマイナス端に、基準電圧Vrが出力される。温度検出回路24の構成は、サーミスタを用いた構成に限定されない。
【0083】
(実施形態2)
実施形態1における給電制御装置12では、スイッチ基板Bsの温度が異常な温度に上昇することを防止する。しかしながら、異常な温度への上昇を防止する対象は、スイッチ基板Bsの温度とは異なる温度であってもよい。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成は実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には、実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0084】
<給電制御装置12の構成>
図8は、実施形態2における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。実施形態2における電源システム1を実施形態1における電源システム1と比較した場合、給電制御装置12の構成が異なる。実施形態2における給電制御装置12は、実施形態1と同様に、給電スイッチ20、駆動回路21、ラッチ回路22、装置抵抗23及びマイコン25を有する。これらの接続は実施形態1と同様である。
【0085】
実施形態2における給電制御装置12は、温度検出回路24の代わりに、電流出力回路26及び温度差回路27を有する。電流出力回路26は、給電スイッチ20のドレインと、温度差回路27とに接続されている。温度差回路27は、更に、ラッチ回路22に接続されている。温度差回路27は接地されている。電流出力回路26及び温度差回路27は、スイッチ基板Bsに配置されている。
【0086】
実施形態1の説明で述べたように、駆動回路21が給電スイッチ20をオンに切替えた場合、電流は、直流電源10の正極から、給電スイッチ20、電線W及び負荷11の順に流れる。従って、電線Wは、給電スイッチ20を介して流れる電流の電流経路に配置されている。電線Wを介して流れる電線電流をIhと記載する。電線電流Ihは給電スイッチ20を介して流れる電流と一致する。電流出力回路26は、給電スイッチ20のドレインから電流を引き込み、引き込んだ電流を温度差回路27に出力する。電流出力回路26が出力する出力電流をIsと記載する。
【0087】
電流出力回路26は、下記の(1)式が満たされるように、出力電流Isを調整する。
Is=Ih/K・・・(1)
ここで、Kは定数である。定数Kは、例えば4000である。(1)式に示すように、電流出力回路26の出力電流Isは、電線電流Ihが大きい程、大きい。
【0088】
温度差回路27は、ラッチ回路22のコンパレータ46のマイナス端に電圧を出力する。コンパレータ46のプラス端には、第1分圧抵抗47及び第2分圧抵抗48が一定電圧Vcを分圧することによって生成された基準電圧Vrが入力されている。
【0089】
前述したように、給電スイッチ20がオンに切替わった場合、電線電流Ihが流れる。電線電流Ihが流れた場合、電線Wは発熱する。電線Wの発熱量は、電線Wにおいて消費される電力が大きい場合に大きい。電線Wにおいて消費される電力は、電線電流Ihの2乗と、電線Wの抵抗値との積によって表される。電線Wに関して、単位時間当たりの発熱量が単位時間当たりの放熱量を超えている場合、電線Wの電線温度が上昇する。
【0090】
給電スイッチ20がオフに切替わった場合、電線電流IhはゼロAに低下し、電線Wの電線温度は低下する。温度差回路27は、電線Wの電線温度と、電線W周辺の環境温度との温度差に応じて出力電圧を調整する。
【0091】
図9は温度差回路27の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図9には、給電スイッチ20の状態の推移、電線Wの温度差の推移、及び、温度差回路27の出力電圧の推移が示されている。これらの推移それぞれについて、横軸には、時間が示されている。
【0092】
温度差回路27の出力電圧は、電流出力回路26の出力電流に基づいて生成される。給電スイッチ20がオフである場合において、電線Wの温度差がゼロ度であるとき、温度差回路27の出力電圧はゼロVである。温度差がゼロ度であることは、電線温度が電線W周辺の環境温度と一致していることを意味する。駆動回路21が給電スイッチ20をオンに切替えた場合、電線電流Ihが流れ、電線Wの温度差は上昇する。温度差が上昇した場合、温度差回路27の出力電圧も上昇する。
【0093】
電源システム1の状態が正常である場合、電線Wの発熱量及び放熱量が一致し、電線Wの温度差が安定する。温度差が安定した場合、温度差回路27の出力電圧は安定する。駆動回路21が給電スイッチ20をオフに切替えた場合、前述したように、電線Wの温度差は低下する。電線Wの温度差が低下した場合、温度差回路27の出力電圧も低下する。
【0094】
以上のように、温度差回路27の出力電圧は、電線Wの温度差が大きい程、高い。電線Wの温度差が一定の基準温度差ΔTrに到達した場合、温度差回路27の出力電圧は基準電圧Vrに到達する。
【0095】
ラッチ回路22は、温度差回路27の出力電圧が基準電圧Vr未満である場合、マイコン25及び温度差回路27の出力電圧に応じて出力電圧を調整する。駆動回路21は、ラッチ回路22の出力電圧に応じて給電スイッチ20をオン又はオフに切替える。温度差回路27の出力電圧が基準電圧Vr以上の電圧に上昇した場合、後述するように、駆動回路21は給電スイッチ20を強制的にオンからオフに切替える。これにより、電線電流IhがゼロAに低下するので、電線温度が低下する。
【0096】
前述したように、温度差回路27の出力電圧が基準電圧Vr未満であることは、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr未満であることを意味する。温度差回路27の出力電圧が基準電圧Vr以上であることは、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr以上であることを意味する。従って、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr未満である場合、コンパレータ46は比較器スイッチ50をオフに維持する。コンパレータ46は、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr以上の値に上昇した場合、比較器スイッチ50をオフからオンに切替える。コンパレータ46は、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr未満の値に低下した場合、比較器スイッチ50をオンからオフに切替える。基準温度差ΔTrは所定温度差に相当する。
【0097】
<ラッチ回路22の動作>
図10は、ラッチ回路22の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図10には、マイコン25、ラッチ回路22及び温度差回路27の出力電圧の推移が示されている。
図10には、更に、第1スイッチ40、第2スイッチ41、給電スイッチ20及び比較器スイッチ50の状態の推移が示されている。状態として、オン又はオフが示されている。
図10に示す7つの推移それぞれについて、横軸には、時間が示されている。実施形態1の説明で述べたように、Vu及びVoそれぞれは、回路電圧及び出力閾値を示す。
【0098】
実施形態2におけるラッチ回路22の動作は、実施形態1におけるラッチ回路22の動作と同様である。実施形態1におけるラッチ回路22の動作の説明において、温度検出回路24を温度差回路27に置き換えることによって、実施形態2におけるラッチ回路22の動作を説明することができる。
【0099】
温度差回路27の出力電圧が基準電圧Vr未満である場合、比較器スイッチ50はオフである。第1スイッチ40、第2スイッチ41及び比較器スイッチ50がオフである場合、ラッチ回路22は、マイコン25の出力電圧に応じた電圧を駆動回路21に出力する。マイコン25の出力電圧がゼロVである場合、ラッチ回路22の出力電圧をゼロVである。ラッチ回路22の出力電圧がゼロVである場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオフに維持する。
【0100】
マイコン25が出力電圧をゼロVから一定電圧Vcに切替えた場合、ラッチ回路22の出力電圧はゼロVから回路電圧Vuに上昇し、駆動回路21は給電スイッチ20をオフからオンに切替える。マイコン25が出力電圧を一定電圧VcからゼロVに切替えた場合、ラッチ回路22の出力電圧は回路電圧VuからゼロVに低下し、駆動回路21は給電スイッチ20をオンからオフに切替える。
【0101】
マイコン25の出力電圧が一定電圧Vcである場合において、温度差回路27の出力電圧が基準電圧Vr以上の電圧に上昇したとき、コンパレータ46は比較器スイッチ50をオフからオンに切替える。これにより、ラッチ回路22の出力電圧は一定電圧VcからゼロVに低下し、駆動回路21は給電スイッチ20をオンからオフに切替える。基準電圧Vrは所定電圧に相当する。
【0102】
コンパレータ46が比較器スイッチ50をオフからオンに切替えた場合、第1スイッチ40及び第2スイッチ41それぞれがオフからオンに切替わる。給電スイッチ20がオフに切替わった場合、電線電流IhがゼロAに低下するので、電線温度が低下する。電線温度が低下した場合、温度差回路27の出力電圧は基準電圧Vr未満の電圧に低下する。これにより、コンパレータ46は比較器スイッチ50をオンからオフに切替える。
【0103】
コンパレータ46が比較器スイッチ50をオフに切替えた時点では、第1スイッチ40及び第2スイッチ41がオンであるため、マイコン25の出力電圧が一定電圧VcからゼロVに低下しない限り、ラッチ回路22は、出力電圧をゼロV(所定値)に固定する。前述したように、ラッチ回路22の出力電圧がゼロVである場合、駆動回路21は給電スイッチ20をオフに維持する。マイコン25が出力電圧を一定電圧VcからゼロVに切替えた場合、第1スイッチ40及び第2スイッチ41それぞれがオンからオフに切替わり、駆動回路21が行っている強制的なオフは解除される。
【0104】
<給電制御装置12の効果>
実施形態2における給電制御装置12では、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr以上の値に上昇した場合、温度差回路27の出力電圧は基準電圧Vr以上の電圧に上昇する。従って、電線Wの温度差が基準温度差ΔTr以上の値に上昇した場合、比較器スイッチ50はオンに切替わり、ラッチ回路22の出力電圧はゼロV(所定値)に固定される。結果、給電スイッチ20はオフに固定される。電線Wの電線温度が異常な温度に上昇することが防止される。電線Wの電線温度が異常な温度に上昇した場合、電線Wの性能が低下する可能性がある。
実施形態2における給電制御装置12は、実施形態1における給電制御装置12が奏する効果の中で、温度検出回路24を用いることによって得られる効果を除く他の効果を同様に奏する。
【0105】
なお、実施形態2において、駆動回路21は、給電スイッチ20の温度に応じて、給電スイッチ20をオフに切替える機能を有してもよい。この構成では、図示しない温度検出器が給電スイッチ20の温度を検出する。温度検出器が検出した給電スイッチ20の温度が一定温度以上の温度となった場合、駆動回路21は、ラッチ回路22の出力電圧に無関係に給電スイッチ20をオフに切替える。この構成では、スイッチ基板Bsの温度が異常な温度に上昇することも防止される。
【0106】
<温度差回路27の構成>
温度差回路27の構成は既知の構成ではない。このため、以下では、温度差回路27の構成を詳細に説明する。温度差回路27は、電流が、電線Wの熱回路の熱と同様の通流(伝導)を行う回路である。そこで、最初に電線Wの熱回路を説明する。
【0107】
図11は電線Wの熱回路図である。
図11の下側には、電線Wの断面が示されている。
図11の下側に示されているように、電線Wでは、電流が流れる棒状の導電体60の外面が絶縁体61によって覆われている。
図11の上側に示す熱回路は、電線Wが導電体60及び絶縁体61を有する場合の熱回路である。電線電流Ihは導電体60を介して流れる。電線電流Ihが流れた場合、導電体60から熱が発生する。
【0108】
電線Wの熱回路は、熱源70、熱抵抗71及び熱容量72を有する。熱抵抗71及び熱容量72それぞれは熱源70に並列に接続されている。熱源70は、熱抵抗71及び熱容量72の一端に向けて、熱を出力する。熱抵抗71及び熱容量72の一端の温度は、電線Wの電線温度である。熱抵抗71及び熱容量72の他端の温度は、電線W周辺の環境温度である。
【0109】
熱源70で発生した熱の一部は、熱抵抗71を介して電線Wの外部に放出される。熱源70で発生した熱の残りは、熱容量72に蓄えられる。熱容量72に蓄えられた熱は、熱抵抗71を介して電線Wの外部に放出される。熱源70の両端間の差が、電線温度と環境温度との温度差である。
図11の例では、熱抵抗71は絶縁体61の熱抵抗である。
【0110】
熱源70が出力する熱の熱量をJwと記載する。熱抵抗71の抵抗値をRtと記載する。熱容量72の容量値をCtと記載する。電線温度、環境温度及び温度差それぞれを、Tw、Ta及びΔTと記載する。電線Wの抵抗値をRwと記載する。
【0111】
電線Wにおいて熱が発生している場合、温度差ΔTは、下記の(2)式で表される。
ΔT=Jw・Rt・{1-exp(-t/(Ct・Rt))}・・・(2)
ここで、tは、電線Wが発熱している期間、即ち、電線Wを介して電流が通流している通電期間である。「・」は積を表す。また、熱量Jwは、下記の(3)式で表される。
Jw=Ih2 ・Rw・・・(3)
熱量Jwは電線電流Ihに応じて変動する。
【0112】
前述したように、基準温度差はΔTrによって表される。温度差ΔTが基準温度差ΔTrである場合における電線電流IhをIfと記載する。
(2)式及び(3)式を用いて、電線電流Ifは下記の(4)式で表される。
【0113】
【0114】
図12は温度差回路27の回路図である。温度差回路27は、第1回路抵抗80、第2回路抵抗81及びキャパシタ82を有する。第1回路抵抗80の一端は、電流出力回路26に接続されている。第1回路抵抗80の他端は接地されている。第1回路抵抗80の一端は、第2回路抵抗81の一端に接続されている。第2回路抵抗81の他端はキャパシタ82の一端に接続されている。キャパシタ82の他端は接地されている。キャパシタ82の一端は、ラッチ回路22のコンパレータ46のマイナス端に接続されている。
【0115】
電流出力回路26の出力電流の一部は、第1回路抵抗80を介して流れる。電流出力回路26の出力電流の残りは、第2回路抵抗81を介してキャパシタ82に流れ込む。これにより、キャパシタ82に電力が蓄えられる。キャパシタ82に電力が蓄えられている場合、キャパシタ82の一端から、電流が第2回路抵抗81及び第1回路抵抗80の順に流れ、キャパシタ82は放電する。
以上のように、温度差回路27における電流の通流は、電線Wの熱回路における熱の伝導と類似している。温度差回路27は、
図11の上側に示す熱回路に対応する。
【0116】
キャパシタ82の両端間の電圧が、温度差回路27の出力電圧として、コンパレータ46のマイナス端に出力される。前述したように、コンパレータ46は、温度差回路27の出力電圧及び基準電圧Vrの比較結果に基づいて、比較器スイッチ50をオン又はオフに切替える。
【0117】
キャパシタ82の両端間の電圧(温度差回路27の出力電圧)をVdと記載する。第1回路抵抗80及び第2回路抵抗81それぞれの抵抗値をR1及びR2と記載する。キャパシタ82の容量値をC1と記載する。電線Wを介して電線電流が流れている場合、即ち、電線Wが発熱している場合、キャパシタ82の両端間の電圧Vdは、下記の(5)式で表される。ここで、tは、前述した通電期間である。
【0118】
【0119】
(5)式について、Kは、実施形態1の説明で述べたように、定数である。キャパシタ82の両端間の電圧Vdが基準電圧Vrである場合における電線電流IhをIrと記載する。電線電流Irは下記の(6)式で表される。
【0120】
【0121】
定数の決定方法を説明する。電線Wの抵抗値Rw及び熱容量72の容量値Ctは、電線Wの構造に応じて予め決定されている。基準温度差ΔTrを、電線W周辺の環境温度が最大値であっても電線Wが発煙しない値に設定する。例えば、環境温度の最大値が80度であると仮定する。電線温度が100度である場合に電線Wにおける発熱を停止する構成では、基準温度差ΔTrは20度に設定される。
【0122】
(4)式及び(6)式に基づいて、任意の通電期間tに関して電線電流Irが電線電流Ifと実質的に一致するように、定数K、基準電圧Vr、抵抗値R1,R2及び容量値C1を決定する。具体的には、任意の通電期間tに関して、下記の(7)式及び(8)式が実質的に満たされるように、定数K、基準電圧Vr、抵抗値R1,R2及び容量値C1を決定する。
【0123】
【0124】
なお、(8)式の左辺では平方根が用いられている。(8)式の右辺では平方根が用いられていない。このため、全ての通電期間tに関して、(8)式を満たす抵抗値R1,R2及び容量値C1を決定することは不可能である。このため、(8)式に任意の通電期間tに対応する左辺及び右辺の値の差が、予め設定されている一定の設定値以下となるように、抵抗値R1,R2及び容量値C1を決定する。(7)式に関しては、左辺及び右辺の値が一致するように、定数K、基準電圧Vr及び抵抗値R1を決定する。
【0125】
以上のように、温度差回路27の複数の定数が決定された場合、温度差回路27における電流の通流は、電線Wの熱回路における熱の伝導と類似する。電線Wの熱回路において、電線Wが発熱した場合、熱容量72に熱が蓄えられる。このとき、温度差回路27では、キャパシタ82が充電される。電線Wの熱回路において、熱容量72から電線Wの外部に熱が放出される。これにより、電線Wは放熱する。電線Wから発生した熱の熱量と熱容量72が放出した熱の熱量とが一致している場合、熱容量72に蓄えられている熱の熱量は一定値に維持される。このとき、キャパシタ82の両端間の電圧も一定値に維持される。電線Wが放熱した場合、キャパシタ82は放電する。
【0126】
キャパシタ82の両端間の電圧、即ち、温度差回路27の出力電圧は、電流出力回路26の出力電流に基づいて生成され、電線Wの温度差が大きい程、高い。温度差回路27の出力電圧は電線Wの温度差を示す。
【0127】
温度差回路27は、1段のカウアーモデルの熱回路に対応する電気回路である。温度差回路27はこの電気回路に限定されない。温度差回路27は、フォスターモデル又は多段のカウアーモデル等の熱回路に対応する電気回路であってもよい。
【0128】
<実施形態1,2の変形例>
実施形態1,2において、マイコン25が配置される基板は、制御基板Bcに限定されない。マイコン25は、例えば、スイッチ基板Bsに配置されてもよい。また、所定値は、ゼロVに限定されず、給電スイッチ20のオフへの切替えを指示する電圧であればよい。更に、給電スイッチ20は、駆動回路21がオン又はオフに切替えることができるスイッチであれば、問題はない。このため、給電スイッチ20は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFET、バイポーラトランジスタ又はリレー接点等のスイッチであってもよい。
【0129】
第1スイッチ40は、電流が入力される入力端及び制御端間の電圧に応じてオン又はオフに切替わるスイッチであれば、問題はない。従って、第1スイッチ40は、PNP型のバイポーラトランジスタに限定されず、Pチャネル型のFETであってもよい。第2スイッチ41は、第1スイッチ40がオンに切替わった場合に切替わるスイッチであれば、問題はない。従って、第2スイッチ41は、NPN型のバイポーラトランジスタに限定されず、Nチャネル型のFET又はリレー接点等のスイッチであってもよい。FETのソース、ドレイン及びゲートそれぞれは、バイポーラトランジスタのエミッタ、コレクタ及びベースに対応する。
【0130】
ラッチ回路22を備える装置は、給電制御装置12に限定されない。ラッチ回路22を備える装置の第1例として、ラッチ回路22の出力電圧に応じてオン又はオフに切替わるスイッチを備える装置が挙げられる。ラッチ回路22を備える装置の第2例として、ラッチ回路22の出力電圧に応じた動作を行う電気機器を備える装置が挙げられる。
【0131】
開示された実施形態1,2はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1 電源システム
10 直流電源
11 負荷
12 給電制御装置
20 給電スイッチ
21 駆動回路(切替え回路)
22 ラッチ回路
23 装置抵抗
24 温度検出回路
25 マイコン(電圧調整部)
26 電流出力回路
27 温度差回路
30 サーミスタ
31 検出抵抗
40 第1スイッチ
41 第2スイッチ
42 第1抵抗
43 第2抵抗
44 第3抵抗
45 第4抵抗
46 コンパレータ(第2の切替え回路)
47 第1分圧抵抗
48 第2分圧抵抗
50 比較器スイッチ(第3スイッチ)
60 導電体
61 絶縁体
70 熱源
71 熱抵抗
72 熱容量
80 第1回路抵抗
81 第2回路抵抗
82 キャパシタ
Bc 制御基板
Bs スイッチ基板
F ケーブル
M 車両
W 電線