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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】駆動装置の制御装置及び駆動システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
F16H49/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021081132
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175025
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河田 真治
(72)【発明者】
【氏名】中島 登志久
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-224041(JP,A)
【文献】特開2006-078095(JP,A)
【文献】特開2013-044361(JP,A)
【文献】特表2013-518226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部(21)と、互いに磁気連結する駆動側回転部材(23)及び従動側回転部材(25,29)を有する駆動伝達部(22)とを備え、前記モータ部の駆動に基づく前記駆動側回転部材の回転に伴い前記従動側回転部材が連回りして負荷(12)に駆動力を伝達する構成の駆動装置(20)における前記モータ部の駆動を制御する駆動装置の制御装置(30)であって、
前記モータ部の負荷電流(Im)を検出する電流検出部(31)と、
前記電流検出部にて検出した前記負荷電流に基づき、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の位相ずれ量(dθ)を検出する位相検出部(32)と、
を備え、
前記駆動側回転部材の目標位置を標準位置(Rθa)から前記位相ずれ量に基づいた進み側に設定して前記モータ部の駆動制御を行う、駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記位相ずれ量を加味する前記モータ部の駆動制御により前記モータ部が停止した際、前記駆動側回転部材を前記標準位置側に戻す戻し制御を行う、請求項1に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記位相ずれ量が許容閾値(Th1,Th2)を超える場合、前記駆動伝達部の前記駆動側回転部材と前記従動側回転部材との脱調リスクを伴う異常が生じ得るとする異常判定を行う、請求項1又は請求項2に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記異常判定にて異常が生じた旨の異常報知として周囲装置(13)に異常信号を出力する、請求項3に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記位相検出部は、更に前記モータ部のコギングトルクを加味して前記位相ずれ量を検出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記位相検出部は、更に周囲温度を加味して前記位相ずれ量を検出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記モータ部及び前記駆動側回転部材の配置される領域(A2)と、前記従動側回転部材の配置される領域(A1)とを仕切る隔壁部材(26)を有する前記駆動装置が制御対象である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記駆動側回転部材から前記従動側回転部材への駆動伝達過程で減速される磁気減速部として構成された前記駆動伝達部を有する前記駆動装置が制御対象である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項9】
モータ部(21)と、互いに磁気連結する駆動側回転部材(23)及び従動側回転部材(25,29)を有する駆動伝達部(22)とを備え、前記モータ部の駆動に基づく前記駆動側回転部材の回転に伴い前記従動側回転部材が連回りして負荷(12)に駆動力を伝達する構成の駆動装置(20)と、
前記駆動装置における前記モータ部の駆動を制御する制御装置(30)と
を備える駆動システム(10)であって、
前記制御装置は、
前記モータ部の負荷電流(Im)を検出する電流検出部(31)と、
前記電流検出部にて検出した前記負荷電流に基づき、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の位相ずれ量(dθ)を検出する位相検出部(32)と、
を備え、
前記駆動側回転部材の目標位置を標準位置(Rθa)から前記位相ずれ量に基づいた進み側に設定して前記駆動装置の前記モータ部の駆動制御を行う、駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の駆動伝達部を用いる駆動装置の制御装置、及びその駆動装置と制御装置とを備える駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とする駆動装置において、電動モータの回転駆動力を非接触式の駆動伝達部を用いて負荷側に伝達する構成のものがある。非接触式の駆動伝達部は、例えば駆動側回転部材と従動側回転部材とが連回り可能に互いに磁気連結されてなる。このような駆動伝達部を用いる場合、駆動側回転部材の回転に従動側回転部材が適切に追従できているかを制御装置にて検出し、電動モータの制御に反映することが行われている。例えば特許文献1にて開示の技術等では、駆動側回転部材及び従動側回転部材に対して各回転部材の回転情報を検出する回転センサがそれぞれに設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-125991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動側回転部材や従動側回転部材を検出対象とする回転センサは、各回転部材の近傍に設置する必要がある。そのため、回転センサの配置スペースが必要であったり組み付けが必要であったりと、まだこれらの点で改善の余地がある。本発明者は、回転部材を検出対象とする回転センサの数を極力減らしたいと考えている。本発明の目的は、非接触式の駆動伝達部に用いる回転センサを少ない構成にて実現できる駆動装置の制御装置及び駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する駆動装置の制御装置は、モータ部(21)と、互いに磁気連結する駆動側回転部材(23)及び従動側回転部材(25,29)を有する駆動伝達部(22)とを備え、前記モータ部の駆動に基づく前記駆動側回転部材の回転に伴い前記従動側回転部材が連回りして負荷(12)に駆動力を伝達する構成の駆動装置(20)における前記モータ部の駆動を制御する駆動装置の制御装置(30)であって、前記モータ部の負荷電流(Im)を検出する電流検出部(31)と、前記電流検出部にて検出した前記負荷電流に基づき、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の位相ずれ量(dθ)を検出する位相検出部(32)と、を備え、前記駆動側回転部材の目標位置を標準位置(Rθa)から前記位相ずれ量に基づいた進み側に設定して前記モータ部の駆動制御を行う。
【0006】
上記課題を解決する駆動システムは、モータ部(21)と、互いに磁気連結する駆動側回転部材(23)及び従動側回転部材(25,29)を有する駆動伝達部(22)とを備え、前記モータ部の駆動に基づく前記駆動側回転部材の回転に伴い前記従動側回転部材が連回りして負荷(12)に駆動力を伝達する構成の駆動装置(20)と、前記駆動装置における前記モータ部の駆動を制御する制御装置(30)とを備える駆動システム(10)であって、前記制御装置は、前記モータ部の負荷電流(Im)を検出する電流検出部(31)と、前記電流検出部にて検出した前記負荷電流に基づき、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の位相ずれ量(dθ)を検出する位相検出部(32)と、を備え、前記駆動側回転部材の目標位置を標準位置(Rθa)から前記位相ずれ量に基づいた進み側に設定して前記駆動装置の前記モータ部の駆動制御を行う。
【0007】
上記駆動装置の制御装置及び駆動システムによれば、電流検出部にて検出したモータ部の負荷電流に基づき、互いに磁気連結する駆動伝達部の駆動側回転部材に対する従動側回転部材の位相ずれ量が位相検出部にて検出される。制御装置は、駆動側回転部材の目標位置を標準位置から位相ずれ量に基づいた進み側の設定としてモータ部の駆動を制御する。これを受け、従動側回転部材の実位置は、狙いの位置若しくは狙いの位置に極めて近似するものとなる。つまり、従動側回転部材の回転情報を検出する回転センサを用いなくても適切な制御が可能であり、非接触式の駆動伝達部を用いる駆動装置及び駆動システムにおいて回転センサを少なくして構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態における駆動システムを示す構成図。
図2】駆動装置の駆動伝達部の構成を示す斜視図。
図3】制御装置の制御態様を説明するための説明図。
図4】制御装置の制御態様を説明するための説明図。
図5】変更例における駆動装置の駆動伝達部の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
[駆動システムの構成]
図1に示す本実施形態の駆動システム10は、例えば車両用空調装置の冷凍サイクル装置11に用いられる。駆動システム10は、冷凍サイクル装置11の冷媒循環流路において冷媒の流量を調整する弁装置12の開閉を行う。駆動システム10は、弁装置12を開閉駆動する駆動装置20と、駆動装置20の駆動を制御する制御装置30とを備えている。
【0010】
[駆動装置の構成]
駆動装置20は、駆動源としてのモータ部21と、モータ部21の回転駆動力を負荷側の弁装置12に伝達する駆動伝達部22とを備えている。本実施形態のモータ部21は、電動モータの完成体、又は電動モータのステータのいずれかで構成されている。すなわち、モータ部21は、電動モータの完成体である場合、モータの出力軸の駆動に基づいて駆動伝達部22の駆動側回転部材23を回転させる。又は、モータ部21は、電動モータのステータである場合、駆動伝達部22の駆動側回転部材23がロータの一部として構成され、ステータの駆動に基づいて駆動側回転部材23を回転させる。モータ部21は、制御装置30により駆動電流Iaを通じて回転が制御される。
【0011】
図1及び図2に示すように、駆動伝達部22は、駆動側回転部材23と、磁性部材24と、従動側回転部材25とを備えている。駆動側回転部材23及び従動側回転部材25は、ともに円盤状をなしている。駆動側回転部材23及び従動側回転部材25は、同軸上に配置されて、それぞれ回転可能に設けられている。駆動側回転部材23及び従動側回転部材25には、周方向等間隔に複数の磁極部23a,25aをそれぞれ有している。各磁極部23a,25aは、駆動側回転部材23及び従動側回転部材25それぞれの対向面に少なくとも磁極が現れる構成である。本実施形態では、駆動側回転部材23の磁極部23aの極数よりも従動側回転部材25の磁極部25aの極数の方が所定数多く設定されている。
【0012】
ここで、本実施形態の駆動装置20は、冷媒の流量を調整する弁装置12の駆動のために設けられている。弁装置12側に配置される従動側回転部材25は、冷媒が進入する被水領域A1に配置される。これに対し、モータ部21側に配置される駆動側回転部材23は、冷媒の進入が禁止された防水領域A2に配置される。そのため、駆動伝達部22においては、被水領域A1と防水領域A2とを仕切るための隔壁部材26を備えている。隔壁部材26は、互いに軸方向に対向する位置関係の駆動側回転部材23と従動側回転部材25との間に介装されている。駆動側回転部材23、隔壁部材26、及び従動側回転部材25は、互いに非接触である。
【0013】
隔壁部材26は、本実施形態では非磁性金属板材にて作製されている。隔壁部材26は、不動に設けられている。隔壁部材26において、駆動側回転部材23及び従動側回転部材25の各磁極部23a,25aの対向部間には、周方向等間隔に複数の磁性部材24が一体に組み込まれている。つまり、磁性部材24も不動に設けられている。駆動側回転部材23と従動側回転部材25とは、磁性部材24を介して互いの磁極部23a,25aが磁気連結している。駆動側回転部材23が回転すると、磁性部材24を介して従動側回転部材25が連回りする。
【0014】
磁性部材24の数は、本実施形態では、駆動側回転部材23及び従動側回転部材25の各磁極部23a,25aの極対数を合計した数と同数に設定されている。つまり、駆動側回転部材23の磁極部23aよりも従動側回転部材25の磁極部25aの方の極数を多くし、各磁極部23a,25aの極対数の合計数と磁性部材24の数とを同数に設定し、駆動伝達部22が磁気減速部として機能するように構成されている。駆動伝達部22は、駆動側回転部材23から磁性部材24を介して従動側回転部材25に回転を伝達する過程で減速するものとなっている。
【0015】
[制御装置の構成]
制御装置30は、駆動装置20のモータ部21に供給する駆動電流Iaを通じてモータ部21の駆動を制御する。制御装置30は、電流検出部31と、位相検出部32とを備えている。電流検出部31は、負荷の大きさに相関のあるモータ部21の駆動時の負荷電流Imを所定周期毎に検出する。位相検出部32は、電流検出部31にて検出した負荷電流Imを用い、駆動側回転部材23と従動側回転部材25との間に生じ得る位相ずれ量dθを検出する。負荷が増大すると、駆動側回転部材23と従動側回転部材25との間に生じ得る位相ずれ量dθは増大する関係である。
【0016】
ここで、駆動側回転部材23にて発生するトルクT1は、次式[数1]のように表すことが可能である。また、従動側回転部材25にて発生するトルクT2は、次式[数2]のように表すことが可能である。[数1][数2]は、駆動側回転部材23の磁極部23aの極対数n、従動側回転部材25に生じ得る位相ずれ量dθ、従動側回転部材25にて発生するトルクT2のピークトルクT0(図4参照)、減速比R、伝達効率ηを用いて表すことができる。なお、[数1][数2]は、従動側回転部材25を基点として作成した式である。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
また、モータ部21で発生するトルクTmは、次式[数3]のように表すことが可能である。[数3]は、トルク定数kT、モータ部21の負荷電流Im、無負荷電流I0を用いて表すことができる。
【0019】
【数3】
上記式より、定常状態では、モータ部21で発生するトルクTmと駆動側回転部材23にて発生するトルクT1とが同等、すなわちTm=T1である。そのため、従動側回転部材25に生じ得る位相ずれ量dθは、次式[数4]で表すことができる。
【0020】
【数4】
上記[数4]では、kT、I0、η、R、T0、nがそれぞれ設計値として事前に得ることができる。そのため、モータ部21の駆動時のその時々に生じ得る位相ずれ量dθは、モータ部21の負荷電流Imに基づいて算出することが可能である。これを踏まえ、位相検出部32は、[数4]を用いて予め作成した負荷電流Imと位相ずれ量dθとの相関マップを保持しており、モータ部21の駆動時に取得する負荷電流Imからその時々に生じ得る位相ずれ量dθを相関マップの参照にて得る。なお、位相検出部32は、[数4]を保持しておき、モータ部21の駆動時に取得する負荷電流Imからその時々に生じ得る位相ずれ量dθを都度の算出にて得るようにすることもできる。
【0021】
図3に示すように、従動側回転部材25の狙いの回転角度θaに対する標準的な駆動側回転部材23の回転角度Rθaは標準直線L1上となる。しかしながら、モータ部21が駆動する負荷が増大、この場合事象として一般的に多い正の負荷が増大すると、駆動側回転部材23の回転角度Rθaに対して従動側回転部材25の回転に遅れが生じる。つまり、駆動側回転部材23の回転角度Rθaに対して従動側回転部材25の回転角度は、駆動時直線L2上の回転角度θa-dθとなる。上記では、従動側回転部材25の回転遅れは、モータ部21の負荷電流Imに基づいて得られる位相ずれ量dθである。何も対策しなければ、駆動側回転部材23の回転角度Rθaに対する従動側回転部材25の回転角度は回転角度θa-dθとなり、狙いの回転角度θaからずれてしまう。このような従動側回転部材25の回転遅れは、弁装置12の開閉動作の精度に影響することが懸念される。
【0022】
本実施形態の位相検出部32を含む制御装置30は、上記懸念を考慮した制御態様となっている。すなわち、位相検出部32は、駆動側回転部材23の標準位置である回転角度Rθaに対し、モータ部21の負荷電流Imに基づいて得られる従動側回転部材25の位相ずれ量dθの相当分を補正ずれ量Rdθとして加算する。駆動側回転部材23の目標位置を補正を含む進み側の回転角度Rθa+Rdθと設定すれば、従動側回転部材25の位相ずれ量dθは相殺されて小さくなる。従動側回転部材25の実回転角度を標準直線L1上の狙いの回転角度θa、若しくは標準直線L1に極めて近似させることが可能である。なお本実施形態では、位相ずれ量dθをそのまま進み側の補正項に用いたが、位相ずれ量dθに係数を掛けて調整した数値を補正項に用いてもよい。こうして本実施形態の制御装置30は、モータ部21の駆動制御として、従動側回転部材25の位相ずれ量dθを加味した駆動側回転部材23の目標位置の回転角度Rθa+Rdθにて、モータ部21に供給する駆動電流Iaを設定している。
【0023】
また、モータ部21の停止時においては、負荷側の弁装置12が無負荷状態に戻ると、補正ずれ量Rdθ分、従動側回転部材25の実回転角度が回転角度θa+dθとなり得る。つまり、駆動側回転部材23と従動側回転部材25との相対位置がずれて停止状態となり得る。本実施形態の制御装置30は、これを考慮し、従動側回転部材25の位相ずれ量dθを加味した駆動制御によりモータ部21が停止した際、駆動側回転部材23の目標位置を標準位置の回転角度Rθaに戻す戻し制御を行うようにもなっている。なお本実施形態では、完全に標準位置の回転角度Rθaに戻したが、標準位置側に近づけるべく調整した数値を用いてもよい。
【0024】
また図4に示すように、位相検出部32から得られる位相ずれ量dθが許容閾値Th1,Th2を超える場合、負荷側が想定最大負荷を超えるような異常状態であることを意味する。駆動側回転部材23と従動側回転部材25との脱調リスクが高まる。そのため、制御装置30は、位相ずれ量dθを用いる異常判定を行い、異常と判定した際には例えばモータ部21の駆動を停止する。またこの場合、制御装置30は、例えば上位システム13等に異常信号を出力し、上位システム13等に異常報知するようにしてもよい。上位システム13にて適切な対処を行わせることも可能である。
【0025】
[本実施形態の動作(作用)]
本実施形態の駆動システム10において、駆動装置20は、制御装置30からの駆動電流Iaの供給に基づいてモータ部21が駆動する。モータ部21の駆動は、駆動伝達部22にて非接触で回転駆動が伝達されるとともに、その駆動伝達過程で減速される。そして、弁装置12は、駆動装置20から出力される駆動力を受けて開閉動作する。弁装置12の開閉態様に応じて、冷凍サイクル装置11の冷媒循環流路を流れる冷媒の流量調整が行われる。
【0026】
制御装置30は、負荷の大きさに相関のあるモータ部21の駆動時の負荷電流Imを電流検出部31にて検出する。位相検出部32は、検出した負荷電流Imから従動側回転部材25の位相ずれ量dθを得る。制御装置30は、従動側回転部材25の回転角度がその時々の位相ずれ量dθを加味した適正角度となるような駆動電流Iaを生成する。つまり、制御装置30は、モータ部21に供給する駆動電流Iaを通じて、従動側回転部材25の回転角度の制御を精度良く行うことが可能である。こうして、負荷の大きさが変動しても弁装置12の開閉動作への影響は小さく抑えられており、弁装置12の開閉動作を十分に高い精度で行うことができるようになっている。
【0027】
しかも、従動側回転部材25の回転情報を検出する回転センサが省略可能である。回転センサを省略できる分、従動側回転部材25の近傍に用意すべき回転センサの配置スペースが不要となり、その回転センサの組み付けも不要となる。本実施形態の駆動システム10では、非接触式の駆動伝達部22に用いる回転センサを少ない構成にて実現することが可能である。
【0028】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の制御装置30は、電流検出部31にて検出したモータ部21の負荷電流Imに基づき、互いに磁気連結する駆動伝達部22の駆動側回転部材23に対する従動側回転部材25の位相ずれ量dθを位相検出部32にて検出する。制御装置30は、駆動側回転部材23の目標位置を位相ずれ量dθに基づく補正を含む進み側の回転角度Rθa+Rdθと設定し、これに基づいたモータ部21の駆動制御を行う。これを受け、従動側回転部材25の実位置は、狙いの位置若しくは狙いの位置に極めて近似するものとなる。つまり、従動側回転部材25の回転情報を検出する回転センサを用いなくても適切な制御が可能であり、本実施形態のように非接触式の駆動伝達部22を用いる駆動装置20及び駆動システム10において回転センサを少なくして構成することができる。
【0029】
(2)位相ずれ量dθを加味するモータ部21の駆動制御によりモータ部21が停止した際、制御装置30は、駆動側回転部材23を標準位置の回転角度Rθaに戻す戻し制御を行う。そのため、駆動側回転部材23と従動側回転部材25とを互いに適切な位置関係としておくことができる。
【0030】
(3)位相ずれ量dθが許容閾値Th1,Th2を超える場合、制御装置30は、駆動伝達部22の駆動側回転部材23と従動側回転部材25との脱調リスクを伴う異常が生じ得るとする異常判定を行う。駆動側回転部材23と従動側回転部材25との脱調による不具合を未然に防止することができる。また、異常判定にて異常が生じた旨の異常報知として、制御装置30から周囲装置としての上位システム13に異常信号を出力すれば、上位システム13にて適切な対処を行わせることもできる。
【0031】
(4)モータ部21及び駆動側回転部材23の配置される防水領域A2と従動側回転部材25の配置される被水領域A1とを隔壁部材26にて仕切る構造が故に、非接触式の駆動伝達部22が用いられる。このような駆動伝達部22を有する駆動装置20の制御を適切に行うことができる。
【0032】
(5)磁気連結を用いる非接触式の駆動伝達部22は、駆動側回転部材23から従動側回転部材25への駆動伝達過程で減速する機能を持たせることが容易である。このような駆動伝達部22を有する駆動装置20の制御を適切に行うことができる。
【0033】
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0034】
・上記数式[数1][数4]に対し、更にモータ部21の構成等により得られるコギングトルク関数F(θ)を加味した次式[数5][数6]を用いてもよい。
【0035】
【数5】
【0036】
【数6】
上記[数5][数6]を用いれば、モータ部21のコギングトルクの影響を十分に排除でき、従動側回転部材25の回転角度の制御をより精度良く行うことができる。ひいては、弁装置12の開閉動作をより精度良く行うことができる。
【0037】
・上記数式[数4]に対し、更に周囲温度を検出する温度センサが備えられるものでは、温度センサにて検出した周囲温度等の影響を温度係数kαとして加味した次式[数7]を用いてもよい。
【0038】
【数7】
上記[数7]を用いれば、周囲温度等の影響を十分に排除でき、従動側回転部材25の回転角度の制御をより精度良く行うことができる。ひいては、弁装置12の開閉動作をより精度良く行うことができる。
【0039】
・上記図2に示す駆動伝達部22は、磁性部材24を不動、磁極部25aを有する従動側回転部材25を回転可能としていた。これを図5に示すように、磁性部材27を従動側回転部材28の一部として回転可能とし、周方向等間隔に複数の磁極部29aを有する円盤磁極部材29を不動として構成してもよい。このように駆動側回転部材23、磁性部材27を有する従動側回転部材28、及び円盤磁極部材29を軸方向に磁気連結する構成としても、駆動側回転部材23の回転に伴って磁性部材27が周回して従動側回転部材28が連回りする。
【0040】
また図5に示す駆動伝達部22では、磁性部材27を転動可能な外形形状とし、転動可能に支持する構成としてもよい。このようにすれば、磁性部材27を従動側回転部材28の軸受として機能させることもできる。
【0041】
・上記図2に示す駆動伝達部22において、駆動側回転部材23の磁極部23a、磁性部材24、従動側回転部材25の磁極部25aの数を適宜変更してもよい。また、図5に示す駆動伝達部22においても、従動側回転部材28の磁性部材27、円盤磁極部材29の磁極部29aの数を適宜変更してもよい。この場合、駆動伝達部22に磁気減速を行わせるそれぞれの数の設定のみならず、増速又は等速伝達を行わせる数の設定を行ってもよい。
【0042】
・上記図2に示す駆動伝達部22は、駆動側回転部材23の磁極部23a、磁性部材24、従動側回転部材25の磁極部25aを軸方向に対向させる構成としていた。また、図5に示す駆動伝達部22においても、駆動側回転部材23の磁極部23a、磁性部材27を有する従動側回転部材28、円盤磁極部材29の磁極部29aを軸方向に対向させる構成としていた。これを、径方向に対向させる構成としてもよい。また、軸方向と径方向とを混在させた対向構成としてもよい。
【0043】
・駆動システム10は、冷凍サイクル装置11の冷媒循環流路の冷媒の流量を調整する弁装置12を駆動制御するものであったが、これ以外の装置に適用してもよい。適用する装置によっては、隔壁部材26を適宜省略してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 駆動システム、12 弁装置(負荷)、13 上位システム(周囲装置)、20 駆動装置、21 モータ部、22 駆動伝達部、23 駆動側回転部材、25,29 従動側回転部材、26 隔壁部材、30 制御装置、31 電流検出部、32 位相検出部、Im 負荷電流、dθ 位相ずれ量、Rθa 回転角度(標準位置)、Th1,Th2 許容閾値、A1 被水領域(領域)、A2 防水領域(領域)
図1
図2
図3
図4
図5