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特許7552504軸受異常診断装置、軸受ユニット、軸受異常診断方法、およびプログラム
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  • 特許-軸受異常診断装置、軸受ユニット、軸受異常診断方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】軸受異常診断装置、軸受ユニット、軸受異常診断方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20240910BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01M13/045
G01H17/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021090420
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182714
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 清仁
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03677072(US,A)
【文献】国際公開第2009/096551(WO,A1)
【文献】特開2013-160749(JP,A)
【文献】特開2006-125976(JP,A)
【文献】特開平4-089534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/045
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受の振動情報を取得する取得手段と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割手段と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出手段と、
前記算出手段にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断手段と
を有することを特徴とする異常診断装置。
【請求項2】
前記分割手段は、
前記軸受に損傷が発生した際の周波数を算出するための算出式を用いて、前記ピークの周波数を算出し、
前記ピークが発生した位置と、前記算出した周波数から得られる周期に基づいて、前記振動情報が示す区間を前記衝撃区間および前記非衝撃区間に分割する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記軸受を構成する部品ごとに、損傷が発生した際の周波数を算出するための算出式が規定され、
前記分割手段は、
前記算出式を用いて部品ごとの周波数を算出し、
前記部品ごとの周波数を用いて、前記振動情報が示す区間を前記衝撃区間および前記非衝撃区間に分割する
ことを特徴とする請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記分割手段は、前記ピークの位置を基準として、当該ピークの周期にて特定される位置の前後の所定の範囲を前記衝撃区間として決定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記振動強度は、RMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記診断手段は、前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比が、所定の閾値以上である場合に、前記軸受に異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記軸受の回転速度に応じて、取得する前記振動情報が示す区間の長さを決定することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の異常診断装置と、
前記軸受と、
前記軸受の振動情報を検出するセンサと、
前記異常診断装置による診断結果を出力する出力装置と
を備えることを特徴とする軸受ユニット。
【請求項9】
軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割工程と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断工程と
を有することを特徴とする異常診断方法。
【請求項10】
コンピュータに、
軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割工程と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断工程と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、軸受異常診断装置、軸受ユニット、軸受異常診断方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などの機械装置に設けられる軸受などの回転部品に対しては、定期的に異常診断を行うことで、損傷や摩耗を早期に検知して回転部品の故障などの発生を抑制することが行われている。これにより、機械装置は、継続的に正常動作を行うことが可能となる。軸受において発生し得る主な欠陥としては、異物の噛み込み等によって生ずる圧痕、転がり疲れによる剥離、その他の摩耗等が挙げられる。このような軸受の異常診断方法としては様々な手法が開示されており、一般的な異常診断方法として周波数解析を用いた手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような異常診断手法においては、異常診断の過程で高速フーリエ変換処理が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-125976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような異常診断方法で用いられるフーリエ変換処理は処理負荷が高く、大量の処理リソースを必要とする。例えば、処理を行う際の記憶領域が大量に必要となることが挙げられる。そのため、低機能の装置では、診断処理に長い時間を要したり、診断処理の実行が困難になったりする場合が想定される。
【0005】
上記課題を鑑み、本願発明は、処理負荷を抑えた軸受の異常診断を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、軸受の異常診断装置であって、
軸受の振動情報を取得する取得手段と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割手段と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出手段と、
前記算出手段にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断手段と
を有する。
【0007】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、異常診断方法であって、
軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割工程と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断工程と
を有することを特徴とする異常診断方法。
【0008】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムであって、コンピュータに、
軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割工程と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断工程と
を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明により、処理負荷を抑えた軸受の異常診断を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図2】損傷が発生した軸受の部位に対応した周波数を説明するための図。
図3】軸受の損傷に起因して発生する振動波形の例を示す模式図。
図4】軸受の損傷に起因して発生する振動波形における衝撃区間と非衝撃区間を説明するための模式図。
図5】衝撃区間と非衝撃区間の設定方法を説明するための模式図。
図6】第1の実施形態に係る異常診断処理のフローチャート。
図7】第2の実施形態に係る装置構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0013】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1には、本実施形態に係る軸受異常診断方法による異常診断が適用される軸受ユニット110を備える機械装置100と、軸受異常診断を行う異常診断装置200の構成が示される。なお、本実施形態において、異常診断の対象とする転がり軸受101として、例えば、自動調心ころ軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受などに適用可能であるが、これらに限定するものではない。また、図1では、説明を簡略化するために1の機械装置100に対して、1の軸受ユニット110が設けられた構成を示しているが、この構成に限定するものではなく、1の機械装置100に対して複数の軸受ユニット110が設けられてもよい。また、機械装置100は、軸受ユニット110以外の部位を備えてよく、ここでは説明を簡略化するために、本実施形態に係る構成のみを示す。また、本実施形態において、機械装置100は、走行車両を例に挙げて説明するが、これに限定するものではない。
【0014】
軸受ユニット110は、機械装置100の回転軸(不図示)の軸端を回転自在に支持する。回転軸は、回転部品である転がり軸受101を介して、回転軸の外側を覆うハウジング(不図示)に支持される。転がり軸受101は、回転軸に外嵌される回転輪である内輪104、ハウジングに内嵌される固定輪である外輪102、内輪104及び外輪102との間に配置された複数の転動体103である複数の玉(ころ)、および転動体103を転動自在に保持する保持器(不図示)を備える。また、転がり軸受101において、所定の潤滑方式により、内輪104と転動体103の間、および、外輪102と転動体103の間の摩擦が軽減される。潤滑方式は特に限定するものではないが、例えば、グリース潤滑や油潤滑などが用いられ、また潤滑剤の種類についても特に限定するものではない。
【0015】
軸受ユニット110において、機械装置100の運転中に転がり軸受101から発生する振動を検出するセンサ105が備えられる。センサ105は、ボルト固定、接着、ボルト固定と接着、或いはモールド材による埋め込み等によってハウジングの外輪近傍に固定されている。なお、ボルト固定の場合には、回り止め機能を備えるようにしてもよい。また、センサ105をモールドする場合には、防水性が図られると共に、外部からの加振に対する防振性が向上するため、センサ105自体の信頼性を飛躍的に向上することができる。なお、センサ105は検査位置に固定して設置される構成に限定するものではなく、異常診断時に転がり軸受101による振動を検出するための位置に設置されればよい。そのため、センサ105は、着脱可能もしくは移動可能な構成であってもよい。
【0016】
また、センサ105は、振動を検出可能なものであればよく、振動センサ、加速度センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、超音波センサ、及びショックパルスセンサ等、検出される加速度、速度、歪み、応力、変位型等、振動を電気信号化できるものであればよい。また、ノイズが多いような機械装置100に取り付ける際には、絶縁型を使用する方がノイズの影響を受けることが少ないためより好ましい。さらに、センサ105が、圧電素子等の振動検出素子を使用する場合には、この素子をプラスチック等にモールドして構成してもよい。加えて、本実施形態の機械装置100は、転がり軸受101の他に、転がり軸受101の周辺に位置する歯車や車輪(共に不図示)等の振動をセンサ105によって検出し得る。さらには、センサ105は、図2にて後述する算出式にて用いられる変数の値を検出可能な構成とする。
【0017】
また、センサ105は、機械設備100から発生する振動を検出する振動センサの他、軸受ユニット110の状態情報を検出する各種センサが単一の筐体内に収容される一体型センサであってもよい。上述したように、本実施形態では、機械装置100は走行車両を例に挙げて説明するが、走行車両の走行速度に応じて転がり軸受101の回転速度は変動するものとする。したがって、機械設備100の走行速度や転がり軸受101の回転速度に対する回転速度センサ(不図示)が併せて備えられる。回転速度センサは、例えば、転がり軸受101の内輪104に設けられたエンコーダ(不図示)を検出することで、その回転速度を検出してよい。なお、センサ105は、異常診断装置200の利用者の指示等に基づき、指定されたタイミング(例えば、異常診断時)のみ検出動作を行うような構成であってもよいし、常時検出動作を行うような構成であってもよい。
【0018】
異常診断装置200は、例えば、不図示の制御装置、記憶装置、および出力装置を含んで構成される情報処理装置にて実現されてよい。制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Single Processor)、または専用回路などから構成されてよい。記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御装置からの指示により各種情報の入出力が可能である。出力装置は、スピーカやライト、或いは液晶ディスプレイ等の表示デバイス等から構成され、制御装置からの指示により、作業者への報知を行う。出力装置による報知方法は特に限定するものではないが、例えば、音声による聴覚的な報知であってもよいし、画面出力による視覚的な報知であってもよい。また、出力装置は、通信機能を備えたネットワークインターフェースであってもよく、ネットワーク(不図示)を介した外部装置(不図示)へのデータ送信により報知動作を行ってもよい。なお、ここでの報知内容は、異常が検出された際の報知に限定するものではなく、転がり軸受101が正常である旨の報知を含んでもよい。
【0019】
異常診断装置200は、信号取得部201、振動分析部202、振動強度算出部203、異常診断部204、情報記憶部205、報知処理部206、および、通信処理部207を含んで構成される。各部位は、上述した制御装置が対応するプログラムを記憶装置から読み出して実行することで実現してもよい。更には、制御装置が出力装置を制御することで報知動作や通信動作などの各種動作が行われてもよい。
【0020】
信号取得部201は、センサ105にて検出された電気信号を振動情報として取得する。信号取得部201は、電気信号の内容に応じて、AD変換器(不図示)によるA/D(Analog/Digital)変換や、増幅器(不図示)による信号の増幅処理を行ってもよい。取得した振動情報は、情報記憶部205へ出力される。
【0021】
振動分析部202は、情報記憶部205に記憶されている振動情報に対して、所定のフィルタ処理を適用する。フィルタ処理により、センサ105にて取得される電気信号が示す振動情報において、転がり軸受101の固有振動数に対応した周波数帯域が抽出される。ここでのフィルタ処理の内容は特に限定するものではなく、振動情報から所定の高周波成分を除去するLPF(Low Pass Filter)や、所定の低周波成分を除去するHPF(High Pass Filter)を用いた処理が行われてよい。振動分析部202は、フィルタ処理が適用された振動情報を用いて、その振動情報が示す振動の周波数分析を行う。より具体的には、振動分析部202は、振動におけるピークを検出する。さらに、振動分析部202は、検出したピークから衝撃区間および非衝撃区間を決定する。本実施形態に係る衝撃区間の決定の詳細については、図4および図5を用いて後述する。
【0022】
振動強度算出部203は、振動分析部202にて決定された衝撃区間および非衝撃区間における振動の強度を算出する。本実施形態では、振動強度として、実効値としてのRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)を用いる。異常診断部204は、振動強度算出部203にて算出されたRMSに基づいて、異常診断を行う。
【0023】
情報記憶部205は、信号取得部201から出力される振動情報を適時受信し、記憶する。また、情報記憶部205は、振動分析部202に対して記憶している振動情報を適時提供する。報知処理部206は、異常診断部204による診断結果に基づいて報知処理を行う。通信処理部207は、ネットワーク(不図示)を介して外部との通信を制御する。例えば、通信処理部207は、異常診断部204による診断結果を外部装置(不図示)へ送信する。
【0024】
[損傷の発生部位と発生する周波数の関係]
図2は、転がり軸受101を構成する各部位と、その部位に損傷が発生した際に得られる周波数の関係を説明するための図である。上述したように、転がり軸受101は、外輪102、転動体103、内輪104、および保持器(不図示)を含んで構成される。損傷が生じた部位に応じて発生する周波数特性は異なる。各部位に対応した周波数は、図2に示す算出式にて導出することが可能である。
【0025】
図2に示す算出式で用いられる変数はそれぞれ以下の通りである。
fr:内輪(外輪)の回転速度[Hz]
fc:保持器回転速度[Hz]
fb:転動体自転速度[Hz]
dm:転動体ピッチ円径[mm]
Z:転動体の数
fi:fr-fc
Da:転動体の直径[mm]
α:接触角(回転軸に対する直角方向と荷重方向との角度)[rad]
【0026】
なお、転がり軸受101固有の値(設計諸元データ等)は、予め記憶装置等に保持されており、周波数を算出する際に参照される。また、変動値は、センサ105の検出結果などから適時導出されるものとする。また、図2に示す算出式は一例であり、発生する損傷の内容などに対応して他の算出式が用いられてよい。
【0027】
図3は、損傷が発生している転がり軸受101を動作させた際に得られる振動波形の一例を示す模式図である。図3において横軸は時間[s]を示し、縦軸は振幅を示す。ここでは、転がり軸受101の回転速度を185[min-1]とした場合の例を示しており、毎秒約3回転程度の動作が行われている場合を想定する。図3に示すように、転がり軸受101を動作させると、損傷に起因する波形がピーク301として定期的に現れる。ここでは、1回転ごとに1回のピーク(毎秒3回)を示す波形が生じている。なお、正常な転がり軸受101を動作させた際に得られる振動波形の場合は、図3に示すようなピーク301が抑制され、所定の範囲内の振幅により構成された波形となる。
【0028】
[衝撃区間と非衝撃区間の決定]
本実施形態では、異常診断を行う際に、振動波形を衝撃区間と非衝撃区間とに分割する。本実施形態に係る衝撃区間は、転がり軸受101に損傷が生じている場合に発生すると想定される振幅のピークの位置およびその周辺区間に相当する。非衝撃区間は、衝撃区間以外の区間に相当する。図4は、一例としての振動波形において、衝撃区間と非衝撃区間とを分割した例を示す模式図である。図4では、損傷に起因する3回のピークに対応した3つの衝撃区間と、その前後における非衝撃区間を示している。なお、図4図5に示す波形は、図3に模式的に示した波形と同様の波形である。
【0029】
図5は、本実施形態に係る衝撃区間と非衝撃区間の決定方法を説明するための模式図である。まず、振動波形からピークが現れた位置(時刻)を検出する。次に、そのピークに対応する振動の周波数を算出し、さらに、周波数の逆数からピークの発生周期(秒)を算出する。周波数は、図2に示した算出式から導出することができる。そして、以下の式(1)により衝撃区間を決定する。
(衝撃区間)=(ピークの検出時刻)+(1/f)±ε ・・・(1)
1/f:ピークの発生周期[秒]
ε:誤差範囲[秒]
f:図2に示す部位に対応した周波数(Zfi、Zfc、2fb、fcのいずれか)[秒]
【0030】
式(1)によると、衝撃区間の長さは2×ε[秒]となる。すなわち、あるピークの位置が検出された際に、そのピークが転がり軸受101に発生した損傷に起因する振動であるものとし、その振動の周期性に基づいて、次のピークが生じると想定される位置周辺が衝撃区間として決定される。なお、ピークがノイズなどにより単発的に発生したものであれば、そのピークに基づいて決定された衝撃区間には損傷に起因した次のピークは発生しないこととなる。
【0031】
なお、上記の例では、衝撃区間と非衝撃区間は、式(1)を用いて決定したが、これに限定するものではない。例えば、式(1)では、誤差範囲として、ピークの周期性から特定される次のピークの位置の前後に対して同じ値εを誤差範囲として用いていた(衝撃区間の長さは2×ε[秒])。これに代えて、前と後ろで異なる誤差範囲を設定してもよい。また、転がり軸受101に発生し得る損傷の種類などに応じて、異なる算出式が用いられてよい。
【0032】
[処理フロー]
図6は、本実施形態に係る異常診断処理のフローチャートである。本処理は、異常診断装置200により実行され、例えば、異常診断装置200が備える制御装置(不図示)が図1に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶装置から読み出して実行することにより実現されてよい。
【0033】
S601にて、異常診断装置200は、情報記憶部205にて記憶されている、センサ105から取得した転がり軸受101の振動情報を取得する。なお、異常診断をリアルタイムで行う場合には、センサ105から取得される信号を直接取得するような構成であってもよい。また、ここでの取得する振動情報の期間は、転がり軸受101の回転速度に基づいて決定してよい。例えば、図3に示すように、転がり軸受101が複数回回転する期間を取得することが、検出の精度を向上させるためには望ましい。
【0034】
S602にて、異常診断装置200は、S601にて取得した振動情報に対してフィルタ処理を行う。例えば、S601にて取得した振動情報から、所定の周波数帯域を抽出するためのフィルタ処理が行われてよい。なお、フィルタ処理の内容および実施の有無は特に限定するものではなく、必要に応じて本処理は省略されてよい。
【0035】
S603にて、異常診断装置200は、S602のフィルタ処理後の振動情報からピーク位置の検出を行う。ピーク位置の検出方法は特に限定するものではないが、転がり軸受101の特性から特定される正常動作時の振幅に基づいて予め規定された閾値との比較により特定してよい。または、所定の時間間隔において、振幅が最大となる位置をピーク位置として特定してよい。この場合、所定の時間間隔は、転がり軸受101の回転速度(回転周期)に基づいて決定してよい。
【0036】
S604にて、異常診断装置200は、転がり軸受101を構成する部位のうち、未処理の部位の1つに着目する(以下、着目部位と称する)。図2に示したように、損傷が発生した際の周波数特性は、転がり軸受101を構成する部位ごとに異なる。なお、図2では4つの部位を想定しているため、4つの部位が順に処理されることとなる。着目する順番は特に限定するものではないが、例えば、部位に対して優先度を設定し、その順番にて処理が行われてもよい。ここでの優先度は、例えば、損傷が発生しやすい部位の順に設定されてもよい。
【0037】
S605にて、異常診断装置200は、図2に示すような着目部位に対応した算出式を用いて、損傷に起因する周波数の算出を行う。
【0038】
S606にて、異常診断装置200は、図5を用いて説明したように、S603にて検出したピーク位置とS604にて算出した周波数を用いて衝撃区間および非衝撃区間を決定する。なお、図2に示すように損傷が生じた部位に応じて周波数特性は異なるため、衝撃区間および非衝撃区間も変動し得る。
【0039】
S607にて、異常診断装置200は、S606にて決定した衝撃区間および非衝撃区間それぞれにおける振動の実効値(RMS)を算出する。
【0040】
S608にて、異常診断装置200は、S607にて算出したRMS比を算出する。具体的には、以下の式(2)により算出される。
RMS比=(衝撃区間のRMS/非衝撃区間のRMS) ・・・(2)
【0041】
S609にて、異常診断装置200は、S608にて算出したRMS比が所定の閾値以上か否かを判定する。ここで用いられる閾値は予め規定され、異常診断装置200が備える記憶装置等にて保持されているものとする。本実施形態では、RMS比が閾値以上である場合には、転がり軸受101にて異常が発生しているものとして扱う。RMS比が閾値以上である場合(S609にてYES)、異常診断装置200の処理はS611へ進む。一方、RMS比が閾値未満である場合(S609にてNO)、異常診断装置200の処理はS610へ進む。
【0042】
S610にて、異常診断装置200は、未処理の部位があるか否かを判定する。未処理の部位がある場合(S610にてYES)、異常診断装置200の処理はS604へ戻り、未処理の部位に対して処理を繰り返す。一方、未処理の部位が無い場合(S610にてNO)、本処理フローを終了する。この場合、転がり軸受101には異常が無いものとして判断される。
【0043】
S611にて、異常診断装置200は、異常が発生している旨を、出力装置を用いて報知動作を行わせる。上述したように、報知動作の内容は特に限定するものではなく、異常診断装置200の利用者が複数の報知動作の中から選択可能な構成であってもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0044】
上記の例では、転がり軸受101を構成する複数の部位に対して順に着目して異常診断を行い、異常が発生していると判定された時点で報知する構成であった。しかし、この構成に限定するものではなく、例えば、複数の部位に対してまとめて周波数を算出し、異常診断の判定もまとめて行うような構成であってもよい。
【0045】
また、異常を報知する際には、異常が生じていると判定した際の部位の情報を併せて報知してもよい。また、上記の例では、S606の処理においてRMS比と閾値の判定により、異常が発生しているか否かを判定したが、これに限定するものではない。例えば、複数の閾値を段階的に設定しておき、それらとRMS比との比較により、異常の程度(緊急度)を判定するような構成であってもよい。また、S609の処理にて用いる閾値は、部位ごとに異なっていてもよい。
【0046】
また、上記の例では、異常が生じていると判定した時点で報知動作を行う構成としたが、これに限定するものではない。例えば、ノイズなどによる誤判定を回避したり、検出精度を向上させたりするために、連続して所定の回数、RMS比が閾値を超えた場合に、異常が発生しているものとして報知動作を行うような構成であってもよい。
【0047】
また、上記の例では、異常を検出しなかった場合にはそのまま処理を完了させる流れを示したが、この構成に限定するものではない。例えば、異常が検出されなかった場合には、異常がなかった旨を報知または記録するような構成であってもよい。
【0048】
なお、上記の例では、衝撃区間RMSと非衝撃区間RMSの比を用いて異常診断を行う例を示した。しかし、これに限定するものではなく、衝撃区間RMSと非衝撃区間RMSの差(|衝撃区間RMS-非衝撃区間RMS|)を用いて異常診断を行ってもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
本願発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と重複する構成については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0050】
[装置構成]
図7は、本実施形態にかかる装置の全体構成の一例を示す図である。図7には、本実施形態に係る軸受異常診断方法による異常診断が適用される転がり軸受101を備える軸受ユニット710と、軸受異常診断の報知を行う報知装置720の構成の概略構成が示されている。なお、図7では、1の機械装置700が、複数の軸受ユニット710-1~710-n(n≧1の整数)を備え、複数の軸受ユニット710それぞれは同じ構成を有するものとして説明する。以下の説明において、軸受ユニット710に対して個別に説明を要する場合には添え字を付して説明する。なお、軸受ユニット710は必ずしもすべてが同じ構成を有する必要はなく、一部が異なる構成を有していてもよい。報知装置720と、機械装置700に備えられた複数の軸受ユニット710-1~710-nとは、ネットワークを介して通信可能に接続される。ここでのネットワークの構成は特に限定するものではなく、有線/無線も問わない。
【0051】
第1の実施形態では、異常診断処理は軸受ユニット110とは別個に設けられた異常診断装置200が実行していた。これに対し本実施形態では、異常診断処理は軸受ユニット710側で個別に行い、その診断結果を報知装置720へ出力する。なお、図1の各部位と同じ動作を行う部位については、図7においても同じ参照番号を付す。
【0052】
軸受ユニット710は、転がり軸受101、センサ105、および診断部711を含んで構成される。本実施形態において転がり軸受101およびセンサ105の構成は第1の実施形態と同様であるとする。診断部711は、例えば、マイクロコンピュータにより構成されてよく、処理部であるICチップや記憶領域であるメモリなどを含んでよい。診断部711は、報知装置720と通信可能に接続されており、ここでの通信方式は特に限定するものではなく、有線/無線も問わない。
【0053】
診断部711は、信号取得部201、振動分析部202、振動強度算出部203、異常診断部204、情報記憶部205、及び診断結果出力部712を含んで構成される。診断結果出力部712は、異常診断部204による異常診断の結果を報知装置720へ出力する。
【0054】
報知装置720は、例えば、不図示の制御装置、記憶装置、および出力装置を含んで構成される情報処理装置にて実現されてよい。制御装置は、CPU、MPU、DSP、または専用回路などから構成されてよい。記憶装置は、ハードディスクやメモリ等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御装置からの指示により各種情報の入出力が可能である。出力装置は、スピーカやライト、或いは液晶ディスプレイ等の表示デバイス等から構成され、制御装置からの指示により、警報等の作業者への報知を行う。出力装置による報知方法は特に限定するものではないが、例えば、音声による聴覚的な報知であってもよいし、画面出力による視覚的な報知であってもよい。または、出力装置は、通信機能を備えたネットワークインターフェースであってもよく、ネットワークを介した外部装置へのデータ送信により報知を行ってもよい。
【0055】
報知装置720は、診断結果取得部721、診断結果記憶部722、報知処理部206、および通信処理部207を含んで構成される。診断結果取得部721は、軸受ユニット710(診断部711)から適時送信されてくる転がり軸受101の診断結果を取得する。そして、診断結果取得部721は、取得した診断結果を診断結果記憶部722に出力する。診断結果取得部721は、通信処理部207により、ネットワークを介して軸受ユニット710から診断結果を受信してもよい。診断結果記憶部722は、診断結果取得部721から取得した診断結果を、軸受ユニット710(または、転がり軸受101)と対応付けて記憶装置(不図示)に適時記憶させる。また、診断結果記憶部722は、所定の条件に基づき、報知動作のための集計処理を行うような構成であってもよい。また、報知装置720は、ユーザからの指示を受け付けるためのUI(User Interface)を備え、UIを介してユーザから診断指示を受け付けるような構成であってもよい。この場合、報知装置720は、診断結果取得部721を介して、指定された軸受ユニット710の診断部711に対して診断開始の指示を行い、その結果として診断結果を取得する。ここでの診断開始の指示は、軸受ユニット710に対して個別に行えるような構成であってよい。
【0056】
診断処理については、第1の実施形態にて図6を用いて説明した内容と同等であるため、ここでの詳細な説明は省略する。なお、本実施形態において、報知動作は、軸受ユニット710ごとに行われてもよいし、複数の軸受ユニット710の診断結果を集計しその集計結果から得られる内容に応じて行われてもよい。
【0057】
以上、本実施形態にて示す構成においても高速フーリエ変換処理などの高負荷の処理を要することなく転がり軸受の異常を検出することが可能となる。また、軸受ユニットは、報知装置に対して診断結果のみを送信すればよく、センサによる検出結果を報知装置へ送信する必要が無くなる。そのため、比較的軽量なデータの送信を行えばよく、ネットワークの負荷を低減させ、機械装置と報知装置との間が物理的に離れている場合やネットワークの性能が低い場合でも動作させることが可能となる。
【0058】
<その他の実施形態>
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0059】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0060】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0061】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 軸受の振動情報を取得する取得手段と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割手段と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出手段と、
前記算出手段にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断手段と
を有することを特徴とする異常診断装置。
この構成によれば、処理負荷を抑えた軸受の異常診断を実行することが可能となる。
【0062】
(2) 前記分割手段は、
前記軸受に損傷が発生した際の周波数を算出するための算出式を用いて、前記ピークの周波数を算出し、
前記ピークが発生した位置と、前記算出した周波数から得られる周期に基づいて、前記振動情報が示す区間を前記衝撃区間および前記非衝撃区間に分割する
ことを特徴とする(1)に記載の異常診断装置。
この構成によれば、処理負荷を抑えて、異常診断を行うために用いる振動情報を衝撃区間と非衝撃区間とに分割することができる。
【0063】
(3) 前記軸受を構成する部品ごとに、損傷が発生した際の周波数を算出するための算出式が規定され、
前記分割手段は、
前記算出式を用いて部品ごとの周波数を算出し、
前記部品ごとの周波数を用いて、前記振動情報が示す区間を前記衝撃区間および前記非衝撃区間に分割する
ことを特徴とする(2)に記載の異常診断装置。
この構成によれば、処理負荷を抑えて、異常診断を行うために用いる振動情報を衝撃区間と非衝撃区間とに分割することができる。
【0064】
(4) 前記分割手段は、前記ピークの位置を基準として、当該ピークの周期にて特定される位置の前後の所定の範囲を前記衝撃区間として決定することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、処理負荷を抑えて、異常診断を行うために用いる振動情報を衝撃区間と非衝撃区間とに分割することができる。
【0065】
(5) 前記振動強度は、RMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、処理負荷を抑えた異常診断を行うことが可能となる。
【0066】
(6) 前記診断手段は、前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比が、所定の閾値以上である場合に、前記軸受に異常が発生していると判定することを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、処理負荷を抑えた異常診断を行うことが可能となる。
【0067】
(7) 前記取得手段は、前記軸受の回転速度に応じて、取得する前記振動情報が示す区間の長さを決定することを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、軸受の動作に適した振動情報を取得することが可能となる。
【0068】
(8) (1)~(7)のいずれかに記載の異常診断装置と、
前記軸受と、
前記軸受の振動情報を検出するセンサと、
前記異常診断装置による診断結果を出力する出力装置と
を備えることを特徴とする軸受ユニット。
この構成によれば、処理負荷を抑えた異常診断を実行することが可能な軸受ユニットを提供することができる。
【0069】
(9) 軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割工程と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断工程と
を有することを特徴とする異常診断方法。
この構成によれば、処理負荷を抑えた軸受の異常診断を実行することが可能となる。
【0070】
コンピュータに、
軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報が示す区間において、振幅のピークを示す位置と当該ピークの周期とに基づいて特定される衝撃区間と、前記衝撃区間とは異なる区間を示す非衝撃区間に分割する分割工程と、
前記衝撃区間および前記非衝撃区間それぞれにおける振動強度を算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記衝撃区間および前記非衝撃区間の振動強度の差または比に基づいて、前記軸受の異常の発生を判定する診断工程と
を実行させるためのプログラム。
この構成によれば、処理負荷を抑えた軸受の異常診断を実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
100…機械装置
101…転がり軸受
102…外輪
103…転動体(ころ)
104…内輪
105…センサ
110…軸受ユニット
200…異常診断装置
201…信号取得部
202…振動分析部
203…振動強度算出部
204…異常診断部
205…情報記憶部
206…報知処理部
207…通信処理部
700…機械装置
710…軸受ユニット
711…診断部
712…診断結果出力部
720…報知装置
721…診断結果取得部
722…診断結果記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7