IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-電池測定装置及び電池測定方法 図1
  • 特許-電池測定装置及び電池測定方法 図2
  • 特許-電池測定装置及び電池測定方法 図3
  • 特許-電池測定装置及び電池測定方法 図4
  • 特許-電池測定装置及び電池測定方法 図5
  • 特許-電池測定装置及び電池測定方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電池測定装置及び電池測定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240910BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021099707
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022191076
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌明
(72)【発明者】
【氏名】石部 功
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-021619(JP,A)
【文献】特開2012-252896(JP,A)
【文献】特開2014-203719(JP,A)
【文献】特開2020-149789(JP,A)
【文献】特開2013-132147(JP,A)
【文献】特開2014-235782(JP,A)
【文献】特開2020-169932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
H01M50/20-50/298
B60L1/00-3/12
H02J7/00-13/00
H02J15/00-58/40
B60R16/00-17/02
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池(42)が組み合わされた電池モジュール(41)に接続される電池測定装置(50)において、
少なくとも各々の前記蓄電池の電池状態を測定する測定部(51)と、
前記電池状態に基づいて、前記蓄電池の取り換えを判定する判定部(52)と、を備え、
前記判定部は、前記電池モジュールを構成するいずれかの前記蓄電池の電池状態を示すパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、他の前記蓄電池又は前記電池モジュールの電池状態を示すパラメータも所定範囲外であると判定した場合、前記蓄電池の取り換えがあったと判定する電池測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記蓄電池の電池状態を示す1又は複数のパラメータと、前記電池モジュールの電池状態を示す1又は複数のパラメータと、を測定するように構成されており、
前記判定部は、いずれかの前記蓄電池のパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、前記電池モジュールのパラメータのうち、当該蓄電池のパラメータの種類とは異なる種類のパラメータも所定範囲外であると判定した場合、前記蓄電池の取り換えがあったと判定する請求項1に記載の電池測定装置。
【請求項3】
前記電池状態を示すパラメータには、少なくとも内部インピーダンスを含む複数のパラメータが存在し、
前記判定部は、前記測定部により取得された各パラメータの値が、それぞれ各パラメータの履歴に基づいて予測される予測範囲外の値である場合、パラメータが前記所定範囲外であると判定する請求項1又は2に記載の電池測定装置。
【請求項4】
前記電池状態を示すパラメータには、少なくとも内部インピーダンスを含む複数のパラメータが存在し、各パラメータの値として取りうる特性範囲は、前記蓄電池の性質によりそれぞれ特定可能となっており、
前記判定部は、前記測定部により取得された各パラメータの値が、それぞれ各パラメータの特性範囲外の値である場合、パラメータが前記所定範囲外であると判定する請求項1~3のうちいずれか1項に記載の電池測定装置。
【請求項5】
前記蓄電池には当該蓄電池を特定可能な識別タグ(45)が付されており、
前記判定部は、前記パラメータが前記所定範囲外であると判定した場合であって、前記識別タグから取得した情報が前記蓄電池の取り換えを示している場合、前記蓄電池の取り換えられていることを確定し、その旨の情報を出力する請求項1~4のうちいずれか1項に記載の電池測定装置。
【請求項6】
前記蓄電池が配置されている環境に関する環境情報を取得する環境情報取得部を備え、
前記パラメータは、前記環境情報に基づいて補正される、又は前記判定部は、前記環境情報を考慮したうえで、パラメータが前記所定範囲外であるか否かを判定する請求項1~5のうちいずれか1項に記載の電池測定装置。
【請求項7】
前記蓄電池は、乗り物に搭載されるものであり、
前記電池状態に関する情報を送受信する通信部(53)を備え、
前記電池状態の履歴は、外部の記憶装置に記憶される請求項1~6のうちいずれか1項に記載の電池測定装置。
【請求項8】
前記判定部により、前記蓄電池の取り換えを検出された場合、取り換えを報知する報知部を備えた請求項1~7のうちいずれか1項に記載の電池測定装置。
【請求項9】
複数の蓄電池が組み合わされた電池モジュールに接続される電池測定装置が実施する電池測定方法において、
少なくとも各々の前記蓄電池の電池状態を測定する測定ステップと、
前記電池状態に基づいて、前記蓄電池の取り換えを判定する判定ステップと、を備え、
前記判定ステップでは、前記電池モジュールを構成するいずれかの前記蓄電池の電池状態を示すパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、他の前記蓄電池又は前記電池モジュールの電池状態を示すパラメータも所定範囲外であると判定した場合、前記蓄電池の取り換えがあったと判定する電池測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の取り換えを判定可能な電池測定装置及び電池測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池にRFID等の電子タグを取り付けて、蓄電池に関する情報を無線にて取得するものが知られている(例えば、特許文献1)。そして、タグから取得した蓄電池に関する情報に基づいて電池を管理することが考えられている。例えば、タグから取得した蓄電池に関する情報に基づいて、蓄電池の取り換え間違いを検出し、防止することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第3614483号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子タグなどのIDタグは取り換え可能であり、不正な蓄電池の取り換えに対しては、IDタグも共に取り換えられてしまうことから、完全に防ぐことは難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電池の取り換えを判定可能な電池測定装置及び電池測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、複数の蓄電池が組み合わされた電池モジュールに接続される電池測定装置は、少なくとも各々の前記蓄電池の電池状態を測定する測定部と、前記電池状態に基づいて、前記蓄電池の取り換えを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記電池モジュールを構成するいずれかの前記蓄電池の電池状態を示すパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、他の前記蓄電池又は前記電池モジュールの電池状態を示すパラメータも所定範囲外であると判定した場合、前記蓄電池の取り換えがあったと判定する。
【0007】
また、上記課題を解決するために、複数の蓄電池が組み合わされた電池モジュールに接続される電池測定装置が実施する電池測定方法では、少なくとも各々の前記蓄電池の電池状態を測定する測定ステップと、前記電池状態に基づいて、前記蓄電池の取り換えを判定する判定ステップと、を備え、前記判定ステップでは、前記電池モジュールを構成するいずれかの前記蓄電池の電池状態を示すパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、他の前記蓄電池又は前記電池モジュールの電池状態を示すパラメータも所定範囲外であると判定した場合、前記蓄電池の取り換えがあったと判定する。
【0008】
上記構成において、判定部は、電池モジュールを構成するいずれかの蓄電池の電池状態を示すパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、他の蓄電池又は電池モジュールの電池状態を示すパラメータも所定範囲外であると判定した場合、蓄電池の取り換えがあったと判定する。このように、単独の蓄電池のパラメータだけでなく、他の蓄電池又は電池モジュールのパラメータも考慮するため、蓄電池の取り換えを適切に判定することが可能となる。
【0009】
また、蓄電池等に取り付けられるタグなどに比較してパラメータを操作することは困難であるため、蓄電池や電池モジュールのパラメータに基づいて、取り換えを判定することにより、不正な取り換えが行われたとしても容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電源システムの概略構成図。
図2】電池測定装置の構成を示すブロック図。
図3】取り換え判定処理のフローチャート。
図4】第2実施形態の電池測定装置の構成を示すブロック図。
図5】第2実施形態の検出処理のフローチャート。
図6】第3実施形態の通知処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、「電池測定装置」を車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)の電源システムに適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に示すように、電源システム10は、回転電機としてのモータ20と、モータ20に対して3相電流を流す電力変換器としてのインバータ30と、充放電可能なバッテリーモジュール40と、バッテリーモジュール40の状態を測定する電池測定装置50と、モータ20などを制御するECU60と、を備えている。
【0013】
モータ20は、車載主機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータ20として、3相の永久磁石同期モータを用いている。インバータ30は、相巻線の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されており、各アームに設けられたスイッチ(半導体スイッチング素子)のオンオフにより、各相巻線において通電電流が調整される。
【0014】
インバータ30には、図示しないインバータ制御装置が設けられており、インバータ制御装置は、モータ20における各種の検出情報や、力行駆動及び発電の要求に基づいて、インバータ30における各スイッチのオンオフにより通電制御を実施する。これにより、インバータ制御装置は、バッテリーモジュール40からインバータ30を介してモータ20に電力を供給し、モータ20を力行駆動させる。また、インバータ制御装置は、駆動輪からの動力に基づいてモータ20を発電させ、インバータ30を介して、発電電力を変換してバッテリーモジュール40に供給し、バッテリーモジュール40を充電させる。
【0015】
バッテリーモジュール40は、インバータ30を介して、モータ20に電気的に接続されている。バッテリーモジュール40は、例えば百V以上となる端子間電圧を有し、複数の電池モジュール41が直列接続されて構成されている。電池モジュール41は、複数の電池セル42が直列接続されて構成されている。電池セル42として、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を用いることができる。各電池セル42は、電解質と複数の電極とを有する蓄電池である。各電池セル42には、それぞれ電池セル42を特定するためにID(識別番号)が付与されている。同様に、電池モジュール41やバッテリーモジュール40にもそれぞれIDが付与されている。
【0016】
図1に示すように、バッテリーモジュール40の正極側電源端子に接続される正極側電源経路L1には、インバータ30等の電気負荷の正極側端子が接続されている。同様に、バッテリーモジュール40の負極側電源端子に接続される負極側電源経路L2には、インバータ30等の電気負荷の負極側端子が接続されている。なお、正極側電源経路L1及び負極側電源経路L2には、それぞれリレースイッチSMR(システムメインリレースイッチ)が設けられており、リレースイッチSMRにより、通電及び通電遮断が切り替え可能に構成されている。
【0017】
電池測定装置50は、各電池セル42の蓄電状態(SOC)及び劣化状態(SOH)などを測定する装置である。電池測定装置50は、CPUや各種メモリからなるマイコンや、各種センサ、回路、通信機器などを備えている。第1実施形態において電池測定装置50は、電池モジュール41毎に設けられている。電池測定装置50は、ECU60に接続されており、各電池セル42の状態などを出力する。電池測定装置50の構成については、後述する。
【0018】
ECU60は、各種情報に基づいて、インバータ制御装置に対して力行駆動及び発電の要求を行う。各種情報には、例えば、アクセル及びブレーキの操作情報、車速、バッテリーモジュール40の状態などが含まれる。
【0019】
次に、電池測定装置50について詳しく説明する。図2に示すように、電池測定装置50は、電池特性測定部51と、演算処理部52と、通信部53と、記憶部54とを備える。ちなみに、電池測定装置50は、自身が備える記憶部54に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。
【0020】
電池特性測定部51は、電池モジュール41を構成する各電池セル42ごとに設けられている。電池特性測定部51は、電池セル42の電池状態を測定する測定部に相当する。測定する電池状態を示すパラメータとして、電池セル42の電圧、内部インピーダンス、蓄電状態(SOC)、及び劣化状態(SOH)を測定可能に構成されている。電池特性測定部51は、演算処理部52に接続されており、測定した各種パラメータを出力するように構成されている。
【0021】
演算処理部52は、電池特性測定部51から入力した電池セル42の各種パラメータを記憶部54に記憶する処理や、各種パラメータを通信部53を介してECU60などの外部装置に通知する処理を行う。また、演算処理部52は、電池セル42の各種パラメータに基づいて、電池セル42の異常を判断し、異常が生じた場合には、その旨をECU60などの外部装置に通知する。
【0022】
また、演算処理部52は、電池状態に基づいて、電池セル42の取り換えを判定する判定部としても機能する。図3に基づいて取り換え判定処理について説明する。取り換え判定処理は、所定のタイミングに演算処理部52により実行される。例えば、車両の起動開始時や、停止時などに実行される。
【0023】
演算処理部52は、まず、電池モジュール41の中から、測定対象(監視対象)とする電池セル42のIDを決定する(ステップS101)。測定対象とする電池セル42は、予め決められた順番に従って決定される。
【0024】
次に、演算処理部52は、電池特性測定部51から測定対象の電池セル42の各種パラメータを取得する(ステップS102)。本実施形態では、電池セル42のパラメータとして、電池セル42の電圧、内部インピーダンス、SOC、及びSOHが電池特性測定部51により測定され、電池特性測定部51から取得する。なお、電池特性測定部51がこれらすべてのパラメータを測定及び算出する必要はなく、例えば、演算処理部52が、電池特性測定部51から取得した測定情報(電圧値や電流値)に基づいて一部のパラメータ(SOCやSOH等)を算出してもよい。この場合、演算処理部52が測定部の機能の一部を担うこととなる。
【0025】
また、演算処理部52は、測定対象の電池セル42の各パラメータの履歴を記憶部54からそれぞれ取得し、各パラメータの履歴に基づいて予測される予測範囲をそれぞれ決定する(ステップS103)。具体的には、各パラメータの履歴から前回取得した各パラメータの値を特定し、各パラメータの値及び前回取得時からの経過時間に基づいて、各パラメータとして取りうることが可能な予測範囲を決定する。実験やシミュレーション等によって、経過時間と各パラメータとの関係性を示すマップや数式などを特定し、演算処理部52は、記憶部54に記憶されたマップなどを参照して予測範囲を決定すればよい。
【0026】
また、各パラメータの履歴から各パラメータの近似曲線を求めて、前回取得時からの経過時間と、近似曲線とから、予測範囲を決定してもよい。なお、予測範囲を決定する際、ある程度の誤差等を考慮して予測範囲にマージンを設けることが望ましい。
【0027】
そして、演算処理部52は、ステップS102で取得した今回の電池セル42の各パラメータが、それぞれ予測範囲外であるか否かを判定する(ステップS104)。いずれかのパラメータが、予測範囲外である場合、演算処理部52は、ステップS104の判定結果を肯定する。一方、全てのパラメータが予測範囲内である場合、演算処理部52は、ステップS104の判定結果を否定する。
【0028】
ステップS104の判定結果が否定の場合、演算処理部52は、取得した測定対象の電池セル42の各パラメータが、それぞれ各パラメータの特性範囲外であるか否かを判定する(ステップS105)。特性範囲は、各パラメータの値として取りうる範囲であって、かつ、電池セル42としての仕様を満たす(利用可能な)範囲のことであり、電池セル42の性質によりそれぞれ特定可能となっている。例えば、電池セル42を構成する電解質や電極の種類や大きさ、容量等によって、電圧の特性範囲、内部インピーダンスの特性範囲、SOCの特性範囲、SOHの特性範囲が定められている。これらの特性範囲は、実験やシミュレーション等により特定可能であり、記憶部54などに記憶されている。
【0029】
いずれかのパラメータが、特性範囲外である場合、演算処理部52は、ステップS105の判定結果を肯定する。一方、全てのパラメータが特性範囲内である場合、演算処理部52は、ステップS105の判定結果を否定する。
【0030】
ステップS104又はステップS105の判定結果が肯定の場合、演算処理部52は、電池モジュール41の各種パラメータを取得する(ステップS106)。本実施形態では、電池モジュール41のパラメータとして、電池モジュール41の電圧、内部インピーダンス、SOC、及びSOHが取得される。演算処理部52は、電池モジュール41を構成する電池セル42の各パラメータを取得し、それらのパラメータに基づいて電池モジュール41のパラメータを算出すればよい。なお、電池モジュール41の各パラメータを測定する電池特性測定部51を別途設けて、演算処理部52は、そこから電池モジュール41のパラメータを取得してもよい。
【0031】
また、演算処理部52は、測定対象の電池モジュール41の各パラメータの履歴を記憶部54からそれぞれ取得し、各パラメータの履歴に基づいて予測される予測範囲をそれぞれ決定する(ステップS107)。そして、演算処理部52は、ステップS106で取得した今回の電池モジュール41の各パラメータが、それぞれ予測範囲外であるか否かを判定する(ステップS108)。ステップS107及びステップS108は、ステップS103及びステップS104とそれぞれ同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
ステップS108の判定結果が否定の場合、演算処理部52は、取得した電池モジュール41の各パラメータが、それぞれ各パラメータの特性範囲外であるか否かを判定する(ステップS109)。ステップS109の処理は、ステップS105と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
ステップSS108又はステップS109の判定結果が肯定の場合、演算処理部52は、電池セル42が取り換えられたと判定し、その旨をECU60に通知する(ステップS110)。一方、ステップS109の判定結果が否定の場合、演算処理部52は、測定対象の電池セル42の故障を検出し、その旨をECU60に通知する(ステップS111)。ステップS110,S111の処理後、取り換え判定処理を終了する。
【0034】
また、ステップS105の判定結果が否定の場合、演算処理部52は、電池モジュール41を構成する全ての電池セル42について測定対象としたか否かを判定する(ステップS112)。この判定結果が否定の場合、演算処理部52は、ステップS101に移行する。一方、ステップS112の判定結果が肯定の場合、演算処理部52は、電池セル42の取り換えはなかったと判定し、取り換え判定処理を終了する。
【0035】
なお、第1実施形態では、ステップS103~S105の処理によって、測定対象の電池セル42のパラメータが所定範囲外であるか否かを判定している。同様に、ステップS107~S109の処理によって、電池モジュール41のパラメータが所定範囲外であるか否かを判定している。また、電池測定装置50は、取り換え判定処理を実行することにより、電池測定方法を実施することとなる。また、ステップS102の処理が、電池セル42の電池状態を測定する測定ステップに相当し、ステップS106の処理が、電池モジュール41の電池状態を測定する測定ステップに相当する。また、ステップS103~S105,S107~S110の処理が、電池セル42の取り換えを判定する判定ステップに相当する。
【0036】
上記実施形態によれば、以下のような優れた効果を有する。
【0037】
いずれかの1つの電池セル42のパラメータが異常な値であっても、それが電池セル42の劣化や、故障、水没等に基づく異常なのか、取り換えられたことにより、パラメータに大きな変化が生じたのかを判断しにくい。一方、電池セル42が取り換えられる場合、電池モジュール41ごと複数の電池セル42が取り換えられることが普通である。
【0038】
そこで、演算処理部52は、電池モジュール41を構成するいずれかの電池セル42のパラメータが所定範囲外であると判定した場合であって、電池モジュール41のパラメータも所定範囲外であると判定した場合、電池セル42の取り換えがあったことを判定する。このように、単独の電池セル42のパラメータだけでなく、電池モジュール41のパラメータも考慮するため、電池セル42の取り換えを適切に判定することが可能となる。
【0039】
また、電池セル42等に取り付けられるタグなどに比較してパラメータを操作することは困難であるため、電池セル42や電池モジュール41のパラメータに基づいて、取り換えを判定することによって、不正な取り換えが行われたとしても取り換えを適切に判定することができる。
【0040】
電池セル42の複素インピーダンス(内部インピーダンス)は、電池セル42の劣化状態によってその値が変化するため、電圧やSOCに比較して、意図的に操作しにくい。電池特性測定部51は、少なくとも内部インピーダンスを含む複数のパラメータを測定し、演算処理部52は、内部インピーダンスを含む複数のパラメータに基づいて電池セル42が取り換えられたか否かを判定する。このため、内部インピーダンス以外のパラメータに基づいて判定する場合に比較して、判定精度を向上させることができる。また、複数のパラメータに基づいて判定するため、1つのパラメータで判定する場合に比較して判定精度を向上させることができる。
【0041】
取得した全てのパラメータが、それまでの履歴に対して外れ値(飛び値)である場合、測定に誤りがある可能性に比較して、電池セル42の取り換えが行われた可能性が高い。そこで、演算処理部52は、取得された各パラメータの値が、それぞれ各パラメータの履歴に基づいて予測される予測範囲外の値である場合、パラメータが所定範囲外である(異常がある)と判定する。これにより、それまでの履歴を考慮しないで、パラメータが異常であるか否かを判定する場合に比較して、正確に取り換えを判定することができる。
【0042】
また、演算処理部52は、取得された各パラメータの値が、それぞれ各パラメータの特性範囲外の値である場合、パラメータが所定範囲外である(異常がある)と判定する。特性範囲は、電池セル42の性質等によりそれぞれ特定可能となっているため、電池セル42の電解質や電極の種類が異なる電池セル42と交換された場合、容易に検出することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、取得された各パラメータの値が、予測範囲外又は特性範囲外である場合、電池セル42が取り換えられたと検出する。このため、どちらか一方のみで判定する場合に比較して、より適切に電池セル42の交換を検出することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、電池モジュール41についても、取得された各パラメータの値が、予測範囲外又は特性範囲外であるか判定する。このため、どちらか一方のみで判定する場合に比較して、より適切に電池セル42の交換を検出することができる。
【0045】
(第2実施形態)
上記第1実施形態の構成を、次の第2実施形態のように変更してもよい。以下、第2実施形態では、主に、上記各実施形態で説明した構成に対する相違部分について説明する。また、第2実施形態では、基本構成として、第1実施形態の電源システム10を例に説明する。
【0046】
第2実施形態において、各電池モジュール41には、それぞれ電池モジュール41のIDを特定可能な識別タグとしてのIDタグ45が取り付けられている。また、電池測定装置50には、図4に示すように、IDタグ45から電池モジュール41のIDを読み取るためのID読み取り装置55を備えている。ID読み取り装置55は、例えば、無線にてIDタグ45から電池モジュール41のIDを読み取る。
【0047】
第2実施形態における検出処理について図5に基づいて説明する。第2実施形態における取り換え判定処理のステップS101~S111の処理内容は第1実施形態と同様である。また、図面の都合上、第2実施形態における取り換え判定処理のステップS101~S107までは図示を省略している。
【0048】
ステップS109の判定結果が否定の場合、演算処理部52は、ID読み取り装置55を介して、電池モジュール41のIDを取得する(ステップS201)。そして、演算処理部52は、取得した電池モジュール41のIDと、記憶部54に予め記憶されている電池モジュール41のIDとを照合し、一致するか否かを判定する(ステップS202)。
【0049】
この判定結果が否定の場合、演算処理部52は、ステップS110に移行し、電池セル42が取り換えられたと判定し、その旨をECU60に通知する。一方、ステップS202の判定結果が肯定の場合、演算処理部52は、ステップS111に移行し、測定対象の電池セル42の故障を検出し、その旨をECU60に通知する。そして、取り換え判定処理を終了する。
【0050】
上記実施形態によれば、以下のような優れた効果を有する。
【0051】
演算処理部52は、取得した電池モジュール41のIDと、記憶部54に予め記憶されている電池モジュール41のIDとを照合するため、より正確に取り換えを検出することが可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
上記第1実施形態の構成を、次の第3実施形態のように変更してもよい。以下、第3実施形態では、主に、上記各実施形態で説明した構成に対する相違部分について説明する。また、第3実施形態では、基本構成として、第1実施形態の電源システム10を例に説明する。
【0053】
演算処理部52は、取り換え判定処理で、電池セル42が取り換えられたことを検出した場合、図6に示す通知処理を実施する。通知処理を実施すると、演算処理部52は、ECU60に、電池劣化の検証を促す電池劣化検証フラグ、及び電池セル42が取り換えられたことを示すエラーフラグに値を設定させるべく、その旨の通知を行う(ステップS301)。
【0054】
次に、演算処理部52は、車両に備えられた報知部としての表示装置(ディスプレイやランプなど)によって、電池モジュール41が交換された可能性があることを報知させる(ステップS302)。
【0055】
演算処理部52は、報知開始から規定時間以内に、報知を確認したことを示す内容確認ボタンが操作されたか否かを判定する(ステップS303)。この判定結果が肯定の場合、演算処理部52は、ECU60にその旨を通知する(ステップS304)。一方、この判定結果が否定の場合、演算処理部52は、記憶部54に記憶される報知回数を更新し(ステップS305)、所定時間経過後、ステップS302を実行する。
【0056】
上記実施形態によれば、以下のような優れた効果を有する。
【0057】
内容確認ボタンが操作されるまで、繰り返し報知されるため、車両の乗員などに確実に知らせることができる。また、報知回数を記憶しているため、報知回数に応じてディーラーの対応を変更することができる。
【0058】
(変形例)
以下、上記各実施形態の構成の一部を変更した変形例について記載する。
【0059】
・上記実施形態において、パラメータは、電圧、内部インピーダンス、SOC及びSOHに限る必要ない。電池セル42のパラメータの種類と数は、任意に変更しても構わない。また、例えば、電池セル42の内圧、超音波応答性、反応熱をパラメータとして含めてもよい。なお、パラメータには、内部インピーダンスが含まれるようにすることが望ましい。
【0060】
・上記実施形態において、電池特性測定部51は、電池測定装置50に含まれていたが、車両外部に設けられた測定器が測定し、それを電池測定装置50の演算処理部52が受信する構成としてもよい。この場合、車両外部に設けられた測定器が測定部に相当する。
【0061】
・上記実施形態において、演算処理部52は、取得したパラメータが、予測範囲外であるか否かの判定(ステップS103,S104,S107,S108)を実施せずに、取得したパラメータが、特性範囲外であるか否かの判定(ステップS105,S109)だけを実施してもよい。逆に演算処理部52は、取得したパラメータが、特性範囲外であるか否かの判定(ステップS105,S109)を実施せずに、取得したパラメータが、予測範囲外であるか否かの判定(ステップS103,S104,S107,S108)だけを実施してもよい。
【0062】
また、演算処理部52は、電池セル42のパラメータについて予測範囲外であるか否かの判定(ステップS103,S104)を実施する一方で、電池モジュール41のパラメータについて予測範囲外であるか否かの判定(ステップS107,S108)を実施しない場合があってもよい。また、その逆があってもよい。
【0063】
同様に、演算処理部52は、電池セル42のパラメータについて特性範囲外であるか否かの判定(ステップS105)を実施する一方で、電池モジュール41のパラメータについて特性範囲外であるか否かの判定(ステップS109)を実施しない場合があってもよい。また、その逆があってもよい。
【0064】
・上記実施形態において、比較判定するパラメータの種類や数を、電池セル42と、電池モジュール41とで異ならせてもよい。例えば、比較判定する電池セル42のパラメータを、内部インピーダンス及びSOCとし、比較判定する電池モジュール41のパラメータを、電圧としてもよい。
【0065】
・上記実施形態において、演算処理部52は、測定対象の電池セル42のパラメータが所定範囲外である場合、電池モジュール41のパラメータが所定範囲外であるか否かを判定した。この変形例として、演算処理部52は、測定対象の電池セル42のパラメータが所定範囲外である場合、電池モジュール41を構成する他の電池セル42のパラメータが所定範囲外であるか否かを判定してもよい。他の電池セル42は、電池モジュール41を構成する電池セル42であれば、いずれでもよく、複数であってもよい。例えば、演算処理部52は、測定対象の電池セル42のパラメータが所定範囲外である場合、電池モジュール41を構成する他の全ての電池セル42のパラメータが所定範囲外であるか否かを判定してもよい。
【0066】
測定対象の電池セル42は、電池モジュール41に含まれているため、測定対象の電池セル42のパラメータ(異常であると判定されたパラメータ)の影響を受けて、電池モジュール41のパラメータも、所定範囲外であると判定される可能性がある。そこで、測定対象の電池セル42以外の他の電池セル42のパラメータに基づいて判定すれば、測定対象の電池セル42の影響を受けずに、適切に判定することが可能となる。
【0067】
・上記第2実施形態において、演算処理部52は、測定対象の電池セル42のパラメータが所定範囲外である場合、電池モジュール41のパラメータが所定範囲外であるか否かを判定した。この変形例として、演算処理部52は、測定対象の電池セル42のパラメータが所定範囲外である場合、ステップS106~ステップS109を実施せずに、電池モジュール41のIDを照合して、判定するように構成してもよい。これによれば、簡単な構成で判定することが可能となる。
【0068】
・上記実施形態において、電池セル42を複数の電池セル42からなる組電池としてもよい。この場合、組電池が蓄電池に相当する。
【0069】
・上記実施形態において、演算処理部52は、いずれかのパラメータが予測範囲外ある場合、肯定としたが、全てのパラメータが予測範囲外ある場合、肯定としてもよい。または、内部インピーダンスを含む1又は複数のパラメータが予測範囲外ある場合、肯定としてもよい。同様に、演算処理部52は、いずれかのパラメータが特性範囲外ある場合、肯定としたが、全てのパラメータが特性範囲外ある場合、肯定としてもよい。または、内部インピーダンスを含む1又は複数のパラメータが特性範囲外ある場合、肯定としてもよい。
【0070】
・上記第2実施形態において、演算処理部52は、電池モジュール41のIDを照合したが、測定対象の電池セル42のIDを読み取って、照合してもよい。この場合、電池セル42ごとにIDタグを取り付けることとなる。
【0071】
・上記第3実施形態において、報知回数が所定回数以上である場合、車両をロックして運転できないようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態の電池測定装置50に、電池セル42が配置されている環境(外部温度、電池温度、外部気圧等)に関する環境情報を取得する環境情報取得部を備えてもよい。そして、電池特性測定部51(又は演算処理部52)は、環境情報取得部により取得された環境情報に基づいて各種パラメータを補正してもよい。また、演算処理部52は、環境情報を考慮したうえで、各種パラメータが所定範囲外であるか否かを判定してもよい。
【0073】
・上記実施形態において、記憶部54は、車載されていたが、車外にパラメータの履歴などを記憶する記憶装置を設けて、それを利用してもよい。その際、演算処理部52は、通信部53を介して、パラメータに関する情報を送受信することとなる。
【0074】
・上記実施形態の電池測定装置50を、HEV,EV,PHV,補機電池、電動飛行機、電動バイク、電動船舶などの乗り物に採用してもよい。
・上記第2実施形態において、ID読み取り装置55は、電池測定装置50の外部に設けられていてもよい。この場合、電池測定装置50は、ID読み取り装置55から識別タグから取得した情報を取得すればよい。
【0075】
・上記第2実施形態において、IDは、番号に限らず、任意の形式を採用してもよい。例えば、2次元コードを含むバーコードや、数字や文字からなるシリアルコードなどであってもよい。ID読み取り装置55は、これらを直接読み取る機械であればよい。また、作業者等が、IDを直接読み取って、直接電池測定装置50に入力してもよい。
【0076】
・上記第2実施形態において、IDタグ45は、RFID等の電子タグであってもよい。このようにした場合、視認しにくい箇所(視認できない箇所)にIDタグ45が配置されている場合であっても、電波を介して読み取ることが可能となる。つまり、電池モジュール41等の内部に配置されていても、ケースを開くことなく、読み取ることが可能となる。
【0077】
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0078】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
41…電池モジュール、42…電池セル、50…電池測定装置、51…電池特性測定部、52…演算処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6