(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】給電システム、及び給電方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/12 20190101AFI20240910BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240910BHJP
G08G 1/14 20060101ALI20240910BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240910BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240910BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240910BHJP
B60L 53/35 20190101ALI20240910BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240910BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B60L58/12
G08G1/09 H
G08G1/14 A
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/35
H02J7/00 P
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2021107363
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 和樹
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092398(JP,A)
【文献】特開2019-158646(JP,A)
【文献】特開2019-095310(JP,A)
【文献】特開2019-115211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0053456(US,A1)
【文献】特開2016-185066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0019492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
G06Q 10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G08G 1/00-99/00
G16Z 99/00
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給電設備と、第1車両及び第2車両を含む複数の車両とを備える給電システムであって、
前記複数の給電設備に含まれる第1給電設備から給電を受けている最中の前記第2車両が前記第1車両から前記第1給電設備の譲渡を要求されたときに、前記複数の給電設備から選ばれた第2給電設備まで前記第2車両が走行可能である場合には、前記第2車両は、前記第1車両に前記第1給電設備を譲り、前記第2給電設備へ自動運転で移動
し、
前記第1車両及び前記第2車両の各々は、所定の走行スケジュールに従って無人で走行可能に構成される自動運転車両である、給電システム。
【請求項2】
前記第1車両及び前記第2車両の各々は、車両外部から供給される電力によって充電可能な蓄電装置を備え、前記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成され、
前記第1車両は、前記第2車両の前記蓄電装置のSOCを取得し、前記第2車両の前記蓄電装置のSOCが前記第1車両の前記蓄電装置のSOCよりも高い場合に、前記第1給電設備の譲渡を前記第2車両に要求する、請求項
1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記第1車両は、車車間通信により前記第2車両の前記蓄電装置のSOCを前記第2車両から取得し、車車間通信により前記第1給電設備の譲渡を前記第2車両に要求する、請求項
2に記載の給電システム。
【請求項4】
前記第2車両は、走行ルートが設定されている場合には、前記複数の給電設備のうち前記走行ルート上の給電設備を、前記第2給電設備として選ぶ、請求項1~
3のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項5】
前記第2車両は、所定の拒否条件が成立する場合には、前記第1車両からの前記要求を拒否する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記第1給電設備及び前記第2給電設備の各々は、
車両のインレットに接続可能に構成されるプラグを有する可動部と、
前記可動部を動かすアクチュエータと、
前記プラグに電力を供給する電源回路と、
前記アクチュエータ及び前記電源回路を制御する制御装置とを備え、
前記可動部は、前記プラグが地面下に収納される第1位置と、前記プラグが地面上に露出した第2位置とを含む可動範囲内を変位するように構成され、
前記制御装置は、前記可動部を前記第2位置にした状態で給電を実行し、給電が終了すると、前記可動部を前記第1位置に変位させる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項7】
前記第1給電設備及び前記第2給電設備の各々は、道路に設けられて、前記道路上に駐車した車両に給電を行なうように構成される、請求項
6に記載の給電システム。
【請求項8】
複数の駐車場と、複数の車両とを備える給電システムであって、
前記複数の駐車場の各々は、少なくとも1つの給電設備を含み、
前記複数の車両の各々は、所定の走行スケジュールに従って無人で走行可能に構成される自動運転車両であり、
前記複数の車両のうち、前記複数の駐車場に含まれる第1駐車場で給電を受けようとする対象車両は、前記第1駐車場に含まれる全ての給電設備が他の車両によって使用中である場合に、前記第1駐車場で給電を受けている車両の中から1つの車両を選び、選ばれた車両に対して使用中の給電設備の譲渡を要求し、
前記給電設備の譲渡を要求された前記車両は、前記複数の駐車場から選ばれた第2駐車場まで走行可能である場合には、前記使用中の給電設備を前記対象車両に譲り、前記第2駐車場へ自動運転で移動する、給電システム。
【請求項9】
前記複数の車両の各々は、車両外部から供給される電力によって充電可能な蓄電装置を備え、前記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成され、
前記対象車両は、前記第1駐車場で給電を受けている車両の中から、前記使用中の給電設備の譲渡を要求する車両を選ぶときに、前記蓄電装置のSOCが高い車両を優先的に選ぶ、請求項
8に記載の給電システム。
【請求項10】
前記複数の車両の各々は、ランク付けされており、
前記対象車両は、前記第1駐車場で給電を受けている車両の中から、前記使用中の給電設備の譲渡を要求する車両を選ぶときに、ランクが低い車両を優先的に選ぶ、請求項
8に記載の給電システム。
【請求項11】
第1車両が、第1給電設備から給電を受けている最中の第2車両に前記第1給電設備の譲渡を要求することと、
前記第2車両が前記第1車両から前記第1給電設備の譲渡を要求されたときに、前記第2車両が前記第1給電設備から第2給電設備まで走行可能であるか否かを判断することと、
前記判断によって走行可能と判断された場合に、前記第2車両が前記第1給電設備から前記第2給電設備へ自動運転で移動することと、
を含
み、
前記第1車両及び前記第2車両の各々は、所定の走行スケジュールに従って無人で走行可能に構成される自動運転車両である、給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電システム及び給電方法に関し、特に、車両に対する給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5475407号公報(特許文献1)には、地面下に収納可能な給電設備(以下、「地下式給電設備」とも称する)が開示されている。特許文献1に開示される地下式給電設備は、ベースポール(固定部)と充電用ポール(可動部)とを備える。ユーザは、地面下に収納された充電用ポールの頂面(天面部)に設けられた取っ手を持ち、充電用ポールを上に引っ張ることで、充電用ポールを地面上に引き出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地下式給電設備や自動運転車両を採用する給電システムが提案されている。しかし、多数の自動運転車両を利用した給電システムにおいては、車両の数に対して給電設備の数が不足する可能性がある。車両が使用したい給電設備に到着したときに、給電設備が空いておらず、車両の待ち時間が長くなると、車両が予定していたスケジュールどおりに走行できなくなる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることを抑制できる給電システム及び給電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係る給電システムは、複数の給電設備と、第1車両及び第2車両を含む複数の車両とを備える。複数の給電設備に含まれる第1給電設備から給電を受けている最中の第2車両が第1車両から第1給電設備の譲渡を要求されたときに、複数の給電設備から選ばれた第2給電設備まで第2車両が走行可能である場合には、第2車両は、第1車両に第1給電設備を譲り、第2給電設備へ自動運転で移動する。
【0007】
上記構成によれば、第2車両は、第1車両から第1給電設備の譲渡を要求されたときに第2給電設備まで走行可能であれば、第1給電設備を第1車両に譲って第2給電設備に移動する。これにより、第1車両の待ち時間が短くなり、第1車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることが抑制される。また、第2車両は、第1給電設備の代わりに第2給電設備から給電を受けられる。
【0008】
第1車両及び第2車両の各々は、所定の走行スケジュールに従って無人で走行可能に構成される自動運転車両であってもよい。
【0009】
上記のような車両の例としては、移動店舗車両、AGV(無人搬送車)、ロボタクシーが挙げられる。上記のような車両が予定していたスケジュールどおりに走行しやすくなることで、たとえばスマートシティにおいて利便性の高いインフラストラクチャを構築しやすくなる。
【0010】
第1車両及び第2車両の各々は、車両外部から供給される電力によって充電可能な蓄電装置を備え、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成されてもよい。第1車両は、第2車両の蓄電装置のSOCを取得し、第2車両の蓄電装置のSOCが第1車両の蓄電装置のSOCよりも高い場合に、第1給電設備の譲渡を第2車両に要求するように構成されてもよい。
【0011】
SOC(State Of Charge)は、蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。以下では、第1車両の蓄電装置のSOCを「第1車両のSOC」、第2車両の蓄電装置のSOCを「第2車両のSOC」とも称する。
【0012】
上記構成では、第2車両のSOCが第1車両のSOCよりも低い場合には、第1車両が第2車両に給電設備の譲渡を要求しない。これにより、蓄電装置のSOCが低い車両の走行が抑制され、電欠車両が生じにくくなる。
【0013】
第1車両は、車車間通信により第2車両の蓄電装置のSOCを第2車両から取得し、車車間通信により第1給電設備の譲渡を第2車両に要求するように構成されてもよい。
【0014】
上記構成を有する給電システムでは、第1車両と第2車両とが他の装置(サーバなど)を介さずに直接的に情報をやり取りすることができる。これにより、システムを簡素化しやすくなる。
【0015】
第2車両は、走行ルートが設定されている場合には、複数の給電設備のうち走行ルート上の給電設備を、第2給電設備として選ぶように構成されてもよい。
【0016】
上記構成を有する給電システムでは、第2車両が第1車両に第1給電設備を譲った後に走行ルート上の第2給電設備に移動する。こうした構成によれば、第2車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることが抑制される。
【0017】
第2車両は、所定の拒否条件が成立する場合には、第1車両からの上記要求を拒否するように構成されてもよい。
【0018】
状況によっては、第2車両が第1車両からの要求に応じて第1車両に給電設備を譲ることがシステム全体の利益にならない可能性がある。システム全体としての利益が損なわれないように、上記拒否条件を設定してもよい。
【0019】
第1給電設備及び第2給電設備の各々は、車両のインレットに接続可能に構成されるプラグを有する可動部と、可動部を動かすアクチュエータと、プラグに電力を供給する電源回路と、アクチュエータ及び電源回路を制御する制御装置とを備えてもよい。可動部は、プラグが地面下に収納される第1位置と、プラグが地面上に露出した第2位置とを含む可動範囲内を変位するように構成されてもよい。制御装置は、可動部を第2位置にした状態で給電を実行し、給電が終了すると、可動部を第1位置に変位させるように構成されてもよい。
【0020】
上記給電設備は、無人の車両に対して給電を行ないやすい。また、上記給電設備は、地面下に収容されるため、車両の走行を妨げにくい。
【0021】
第1給電設備及び第2給電設備の各々は、道路に設けられて、道路上に駐車した車両に給電を行なうように構成されてもよい。こうした構成を有する給電設備は、道路に設けられるため、設置場所を確保しやすい。
【0022】
本開示の第2の観点に係る給電システムは、複数の駐車場と、複数の車両とを備える。複数の駐車場の各々は、少なくとも1つの給電設備を含む。複数の車両のうち、複数の駐車場に含まれる第1駐車場で給電を受けようとする対象車両は、第1駐車場に含まれる全ての給電設備が他の車両によって使用中である場合に、第1駐車場で給電を受けている車両の中から1つの車両を選び、選ばれた車両に対して使用中の給電設備の譲渡を要求する。給電設備の譲渡を要求された車両は、複数の駐車場から選ばれた第2駐車場まで走行可能である場合には、使用中の給電設備を対象車両に譲り、第2駐車場へ自動運転で移動する。
【0023】
上記構成によれば、対象車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることが抑制される。
【0024】
複数の車両の各々は、車両外部から供給される電力によって充電可能な蓄電装置を備え、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成されてもよい。対象車両は、第1駐車場で給電を受けている車両の中から、使用中の給電設備の譲渡を要求する車両を選ぶときに、蓄電装置のSOCが高い車両を優先的に選ぶように構成されてもよい。
【0025】
上記構成によれば、蓄電装置のSOCが低い車両の走行が抑制され、電欠車両が生じにくくなる。
【0026】
複数の車両の各々は、ランク付けされてもよい。対象車両は、第1駐車場で給電を受けている車両の中から、使用中の給電設備の譲渡を要求する車両を選ぶときに、ランクが低い車両を優先的に選ぶように構成されてもよい。
【0027】
上記のように、車両に優先順位を付けてもよい。たとえば、緊急車両のランクを高くすることで、緊急車両がスケジュールどおりに走行しやすくなる。
【0028】
本開示の第3の観点に係る給電方法は、以下に説明する要求ステップ、判断ステップ、及び移動ステップを含む。
【0029】
要求ステップでは、第1車両が、第1給電設備から給電を受けている最中の第2車両に第1給電設備の譲渡を要求する。判断ステップでは、第2車両が第1車両から第1給電設備の譲渡を要求されたときに、第2車両が第1給電設備から第2給電設備まで走行可能であるか否かを判断する。移動ステップでは、判断ステップによって走行可能と判断された場合に、第2車両が第1給電設備から第2給電設備へ自動運転で移動する。
【0030】
上記給電方法によっても、上述した給電システムと同様、第1車両の待ち時間が短くなり、第1車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることが抑制される。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることを抑制できる給電システム及び給電方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る給電システムに含まれる車両及び給電設備の各々の構成について説明するための図である。
【
図2】
図1に示した給電設備の可動部が上昇した状態を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る給電システムの第1の状態を示す平面図である。
【
図4】
図1に示した給電設備の制御装置によって実行される給電に係る処理を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る給電システムの第2の状態を示す平面図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、第1車両が使用したい第1給電設備に近づいたときに実行する処理を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、第1給電設備から給電を受けている第2車両が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施の形態1に係る給電システムに含まれる第1車両及び第2車両の各々の動作について説明するための図である。
【
図9】本開示の実施の形態2に係る給電システムの概略構成を示す図である。
【
図10】本開示の実施の形態2に係る給電システムに含まれる駐車場の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10に示した駐車場で給電を受けようとする対象車両の動作について説明するための図である。
【
図12】本開示の実施の形態2に係る給電システムにおいて、対象車両が駐車場に到着したときに実行する処理を示すフローチャートである。
【
図13】本開示の実施の形態2に係る給電システムにおいて、給電設備から給電を受けている車両が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の実施の形態2に係る給電システムに含まれる各車両の動作について説明するための図である。
【
図15】
図12に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0034】
[実施の形態1]
図1は、この実施の形態に係る給電システムの概略構成を示す図である。
図1を参照して、給電システム1はEVSE300を備える。EVSEは、車両用給電設備(Electric Vehicle Supply Equipment)を意味する。EVSE300は、地面F1下に収納可能に構成される。EVSE300は、地下式給電設備(地面下に収納可能な給電設備)に相当する。
図1に示されるEVSE300の状態は、EVSE300が地面F1下に収納された状態(以下、「収納状態」とも称する)である。
【0035】
EVSE300は、地面F1から下方へ延びる凹部R1に設置されている。収納状態では、凹部R1の内側にEVSE300の全体が収納される。EVSE300は、たとえば柱状の筐体を有する。EVSE300の筐体は、凹部R1の底面に固定されている。筐体の材料は、金属であってもよいし、プラスチックであってもよい。筐体の表面に防水処理が施されてもよい。
【0036】
EVSE300は、筐体内に、電源回路310と、アクチュエータ320と、制御装置330とを有する。また、EVSE300は、鉛直方向(上下方向)に変位可能な可動部301をさらに備える。可動部301は、先端にコネクタ301aを有する棒状部材である。コネクタ301aは、EVSE300のプラグに相当する。アクチュエータ320が可動部301を動かす。収納状態では、可動部301の全体がEVSE300の筐体内に収納され、EVSE300の頂面が地面F1と面一になる。EVSE300の筐体の外周面と凹部R1の内壁との隙間にシール部材が設けられてもよい。
【0037】
可動部301のコネクタ301aは、図示しない電線を介して、電源回路310に接続されている。可動部301は、電源回路310に接続される電力線に加えて、制御装置330に接続される通信線を含んでもよい。電源回路310は、交流電源350から電力の供給を受けて、可動部301(より特定的には、コネクタ301a)に電力を供給するように構成される。電源回路310は、電力変換回路を含み、EVSE側の充電器として機能する。交流電源350は、電源回路310に交流電力を供給する。交流電源350は、商用電源(たとえば、電力会社によって提供される電力系統)であってもよい。電源回路310は、制御装置330によって制御される。
【0038】
アクチュエータ320は、可動部301に直接的又は間接的に動力を与えて、鉛直方向に可動部301を動かすように構成される。アクチュエータ320は、電源回路310から供給される電力を用いて動力を発生させる電動アクチュエータであってもよい。可動部301の変位機構はラックピニオン式であってもよい。たとえば、可動部301にラックギヤが固定され、ラックギヤに噛み合わされたピニオンギヤをアクチュエータ320が回転駆動するように構成されてもよい。あるいは、ピストンに接続されるロッドが可動部301に固定され、アクチュエータ320が油圧でピストンを動かすように構成されてもよい。あるいは、アクチュエータ320は、電力を用いて磁力を発生させて、磁力を利用して直接的に可動部301に動力を与えてもよい。アクチュエータ320は、制御装置330によって制御される。
【0039】
制御装置330はコンピュータであってもよい。制御装置330は、プロセッサ331、RAM(Random Access Memory)332、記憶装置333、及びタイマ334を含んで構成される。プロセッサ331としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。記憶装置333は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置333には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置333に記憶されているプログラムをプロセッサ331が実行することで、EVSE300における各種制御が実行される。ただし、EVSE300における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、制御装置330が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0040】
EVSE300の接続方式は床下接続方式である。床下接続方式は、地面F1下に収納された可動部301の上に車両が駐車した状態で可動部301のコネクタ301aが車両の床下から車両に向かって上昇して車両の下部に設けられたインレットに接続される方式である。可動部301のコネクタ301aは、所定の給電位置に駐車した車両の下部に設けられたインレットに接続可能に構成される。この実施の形態に係るEVSE300の給電位置は、平面視においてコネクタ301aと車両のインレットとが一致する位置(すなわち、コネクタ301a及びインレットの各々のX,Y座標が一致する位置)である。可動部301は、コネクタ301aが地面F1下に収納された第1位置と、コネクタ301aが地面F1上の車両のインレットに接続される第2位置とを含む可動範囲内を変位するように構成される。この実施の形態では、車両200がEVSE300を利用可能に構成される。車両200の下部にはインレット211が設けられている。
【0041】
図2は、可動部301が上昇した状態を示す図である。
図2を参照して、可動部301は、コネクタ301aの位置を変えるように鉛直方向に変位(上昇及び下降)する。
図2に示されるEVSE300の状態は、コネクタ301aが車両200のインレット211に接続される位置(たとえば、
図2に示す位置Zx)まで上昇した状態(以下、「上昇状態」とも称する)である。以下では、説明の便宜上、可動部301のコネクタ301aの位置を、可動部301の位置とみなす。
【0042】
可動部301は可動範囲R2内を変位するように構成される。可動範囲R2の下限位置Z1は、地面F1と同じ高さである。可動部301の位置が下限位置Z1であるときには、可動部301の全体(コネクタ301aを含む)が地面F1下に収納される(
図1参照)。可動部301の位置が下限位置Z1よりも高ければ、コネクタ301aが地面F1上に露出する。可動範囲R2の上限位置Z2は、車両のインレットの高さに対して十分高い位置に設定される。可動範囲R2は、コネクタ301aが地面F1下に収納された第1位置(たとえば、下限位置Z1)と、コネクタ301aが地面F1上の車両のインレットに接続される第2位置(たとえば、
図2に示す位置Zx)とを含む。この実施の形態では、下限位置Z1が地面F1と同じ位置であるが、下限位置Z1は、地面F1よりも下の位置に設定されてもよい。
【0043】
EVSE300は、駐車センサ302と、通信装置303とをさらに備える。
駐車センサ302は、車両のインレットとコネクタ301aとの相対的な位置関係(たとえば、位置ずれの方向及び距離)を示す位置ずれ情報を取得するセンサである。駐車センサ302は、たとえば車両200のインレット211付近に設けられたマークMを認識することにより、車両200に関する上記位置ずれ情報を取得してもよい。駐車センサ302は、レーザ及びカメラの少なくとも一方を含んでもよい。駐車センサ302の検出結果は制御装置330に出力される。制御装置330は、駐車センサ302の検出結果を用いて、車両が所定の給電位置に駐車したか否かを判断することができる。制御装置330は、たとえば車両200が給電位置に停止したことを駐車センサ302が検出してから所定時間経過するまで車両200の静止状態が継続した場合に、車両200が給電位置に駐車したと判断してもよい。
【0044】
通信装置303は、各種通信I/F(インターフェース)を含んで構成される。通信装置303は、車両200と通信するための通信I/Fを含む。通信装置303は、EVSE300の外部から受信した情報を制御装置330に伝達する。制御装置330は、通信装置303を通じて、EVSE300の外部と通信を行なうように構成される。
【0045】
図1及び
図2に示す車両200は、バッテリ210と、バッテリ210に蓄えられた電力を用いて走行するための機器(たとえば、後述するモータジェネレータ221及びインバータ222)と、車両外部から供給される電力によってバッテリ210を充電するための機器(たとえば、後述するインレット211及び充電器212)とを備える電動車両である。この実施の形態に係る車両200は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(EV)である。
【0046】
車両200は、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)230及び通信機器240をさらに備える。ECU230は、コンピュータであってもよい。ECU230は、プロセッサ、RAM、及び記憶装置(いずれも図示せず)を備える。記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、各種車両制御が実行される。ただし、車両制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0047】
ECU230は、通信機器240を通じて、車両200の外部と通信を行なうように構成される。通信機器240は、各種通信I/F(インターフェース)を含んで構成される。通信機器240は、後述する車車間通信を行なうための通信I/Fを含む。また、車両200に搭載された通信機器240とEVSE300に搭載された通信装置303とは相互通信可能に構成される。さらに、通信機器240は、所定のユーザ端末(たとえば、スマートフォン、タブレット端末、又はウェアラブルデバイスのような携帯端末)と無線通信を行なうように構成されてもよい。また、通信機器240は、所定のサービスツールと有線通信を行なうように構成されてもよい。
【0048】
バッテリ210は、たとえばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池のような二次電池を含んで構成される。二次電池は、組電池であってもよいし、全固体電池であってもよい。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。
【0049】
車両200は、バッテリ210の状態を監視する監視モジュール210aをさらに備える。監視モジュール210aは、バッテリ210の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU230へ出力する。監視モジュール210aは、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU230は、監視モジュール210aの出力に基づいてバッテリ210の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。
【0050】
車両200は、電動走行のためのモータジェネレータ(以下、「MG」と称する)221及びインバータ(以下、「INV」と称する)222を備える。MG221は、たとえば三相交流モータジェネレータである。MG221は、INV222によって駆動され、車両200の駆動輪Wを回転させるように構成される。INV222は、ECU230によって制御される。INV222は、バッテリ210から供給される電力を用いてMG221を駆動する。また、MG221は、回生発電を行ない、発電した電力をINV222を経由してバッテリ210に供給する。なお、車両200の駆動方式は、前輪駆動に限られず、後輪駆動又は4輪駆動であってもよい。
【0051】
車両200は、自動運転可能に構成される自動運転車両である。車両200は、自動運転センサ250と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)260とをさらに備える。
【0052】
自動運転センサ250は、自動運転に使用されるセンサである。ただし、自動運転センサ250は、自動運転が実行されていないときに所定の制御で使用されてもよい。自動運転センサ250は、車両200の外部環境を認識するための情報を取得するセンサと、車両200の位置及び姿勢に関する情報を取得するセンサとを含む。自動運転センサ250は、たとえば、カメラ、ミリ波レーダ、及びライダーの少なくとも1つを含んでもよい。自動運転センサ250は、たとえば、IMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサの少なくとも一方を含んでもよい。
【0053】
NAVI260は、GPS(Global Positioning System)モジュールと、記憶装置と(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。GPSモジュールは、図示しないGPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI260は、GPS信号を用いて車両200の位置を特定することができる。NAVI260は、地図情報を参照して、車両200の現在位置から目的地までの最適ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行なうように構成される。NAVI260は、データセンタと無線通信を行なって地図情報を逐次更新してもよい。
【0054】
車両200は、所定の走行スケジュールに従って無人で自律走行可能に構成される。車両200はステアリングホイールを備えなくてもよい。走行スケジュールは、たとえば目的地への到達時刻を含む。走行スケジュールの設定方法は任意である。たとえば、車両200と無線通信可能なユーザ端末(たとえば、携帯端末)をユーザが操作して、ECU230に走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。あるいは、車両200と有線通信可能に接続されたサービスツール、又は車内のHMI(Human Machine Interface)をユーザが操作して、ECU230に走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。車両200は、たとえばAGV(無人搬送車)として機能する。ユーザは、配送拠点から別の配送拠点までの輸送をAGVに行なわせてもよいし、個人宅への配送をAGVに行なわせてもよい。
【0055】
なお、車両200は、上記AGVに限られず、移動店舗車両であってもよいし、ロボタクシーであってもよい。車両200が移動店舗車両である形態では、店舗運営会社が利用者(たとえば、自治体のような小規模団体)の要望に基づいて走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。車両200がロボタクシーである形態では、乗客が目的地(必要があれば、中継地点も)を入力すると、ECU230が入力内容に合った走行ルート及び走行スケジュールを乗客に提示し、乗客が承諾することにより走行ルート及び走行スケジュールが決定されてもよい。
【0056】
ECU230に走行スケジュール及び目的地が設定されると、ECU230は、NAVI260に経路探索を指示して、車両200の現在位置から目的地までの走行ルートを決定する。NAVI260は、バッテリ210のSOCを考慮して経路探索を行なう。車両200が現在位置から目的地まで航続できない場合(すなわち、バッテリ210の残量に対して目的地が遠すぎて車両200が目的地まで走行できない場合)には、1つ以上のEVSEを中継地点とする走行ルートが決定される。車両200は、途中のEVSEで給電を受けることで、航続可能距離を延ばすことができる。走行ルートが中継地点を含む場合には、走行スケジュールが中継地点への到達時刻をさらに含んでもよい。
【0057】
ECU230は、所定の自動運転プログラムに従い、自動運転(自動駐車を含む)を実行するように構成される。ECU230は、自動運転センサ250によって取得される各種情報を用いて、車両200のアクセル装置、ブレーキ装置、及び操舵装置(いずれも図示せず)を制御することにより、上記走行ルート及び走行スケジュールに従う車両200の自動運転を実行する。自動運転プログラムは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。
【0058】
車両200は、接触充電のためのインレット211及び充電器212を備える。インレット211は、車両200の下部(たとえば、フロアパネル付近)に設けられている。インレット211付近には、位置検出用のマークMが設けられている。また、図示は省略しているが、車両200は、インレット211の接続状態を検出する回路(たとえば、インレット211にコネクタ301aが接続されているか否かを検出する回路)を備える。
【0059】
インレット211は、EVSE300のコネクタ301aが接続可能に構成される。インレット211及びコネクタ301aの双方には接点が内蔵されており、インレット211にコネクタ301aが接続されると接点同士が接触して、インレット211とコネクタ301aとが電気的に接続される。以下では、コネクタ301aがインレット211に接続された状態(すなわち、EVSE300と車両200とが電気的に接続された状態)を、「プラグイン状態」と称する。また、コネクタ301aがインレット211に接続されていない状態(すなわち、EVSE300と車両200とが電気的に接続されていない状態)を、「プラグアウト状態」と称する。
【0060】
充電器212は電力変換回路(図示せず)を備える。電力変換回路は、車両外部からインレット211に供給された電力を、バッテリ210の充電に適した電力に変換する。充電器212は、たとえばインレット211から交流電力が供給される場合に、供給された交流電力を直流電力に変換してバッテリ210に供給する。充電器212は、ECU230によって制御される。
【0061】
この実施の形態に係る給電システム1は、複数の給電設備(後述するEVSE300A及び300Bを含む)と、複数の車両(後述する車両200A及び200Bを含む)とを備える。給電システム1が備える各給電設備は、互いに異なる構成を有してもよいが、この実施の形態では
図1及び
図2に示したEVSE300と同じ構成を有する。また、給電システム1が備える各車両も、互いに異なる構成を有してもよいが、この実施の形態では
図1及び
図2に示した車両200と同じ構成を有する。以下、
図3~
図8を用いて、給電システム1の動作について説明する。
【0062】
図3は、給電システム1の第1の状態を示す平面図である。
図3を参照して、給電システム1は、道路500、EVSE300A、及び車両200Aを備える。EVSE300Aは、道路500に設けられて、道路500上に駐車した車両に給電を行なうように構成される。EVSE300Aは、未使用の場合には、道路500上の車両の走行を妨げないように収納状態(たとえば、
図1に示す状態)になる。前述したように車両200Aには走行ルート及び走行スケジュールが設定される。車両200Aは、設定された走行ルート及び走行スケジュールに従い、道路500上を目的地に向かって無人で自律走行する。
図3に示す例では、車両200Aの走行ルートの中継地点としてEVSE300Aが設定されている。このため、車両200AはEVSE300Aから給電を受けるためにEVSE300Aの給電位置に駐車する。車両200AがEVSE300Aの給電位置に駐車すると、EVSE300Aが車両200Aに対する給電を実行する。
【0063】
図4は、給電システム1が備えるEVSEの制御装置330(
図1)によって実行される給電に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば車両200AがEVSE300Aの給電位置に駐車したとEVSE300Aの制御装置330が判断したときに開始される。このため、
図4に示す処理が開始されるタイミングでは、地面F1下に収納された可動部301の上に車両200Aが駐車した状態(
図1参照)になっている。以下、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。以下では、EVSE300、車両200を、それぞれ
図3に示したEVSE300A、車両200Aに置き換えて、
図1及び
図2を参照する。
【0064】
図1とともに
図4を参照して、S101では、EVSE300Aの可動部301が上昇する。詳しくは、可動部301が第1位置から第2位置に変位するように、制御装置330がアクチュエータ320を制御する。これにより、可動部301のコネクタ301a(プラグ)が車両200Aの床下から車両200Aのインレット211に向かって上昇して車両200Aの下部に設けられたインレット211に接続される。
【0065】
図2を参照して、上記S101の処理により、EVSE300Aは上昇状態(たとえば、
図2に示した状態)になる。また、車両200A及びEVSE300Aがプラグイン状態になる。プラグイン状態では、車両200AとEVSE300Aとの間での通信が可能になるとともに、車両200AとEVSE300Aとの間での電力の授受が可能になる。車両200AのECU230は可動部301を介してEVSE300Aの制御装置330と通信する。ただしこれに限られず、ECU230と制御装置330とは、プラグイン状態及びプラグアウト状態の各々において無線通信を行なってもよい。
【0066】
図2とともに
図4を参照して、続くS102では、EVSE300Aから車両200Aへの給電が実行されるように制御装置330が電源回路310を制御する。S102の処理により、車両200Aに対する給電が開始される。具体的には、EVSE300Aにおいて、電源回路310が、交流電源350から供給される交流電力を、車両200Aに対する給電に適した交流電力に変換(たとえば、変圧)し、変換後の電力をコネクタ301aに供給する。プラグイン状態では、電源回路310からコネクタ301aに供給される電力が、車両200Aのインレット211に入力される。そして、車両200Aにおいてバッテリ210の充電が行なわれる。具体的には、インレット211に入力された電力は、充電器212を経てバッテリ210に供給される。バッテリ210の充電中は、制御装置330が給電電力を調整するように電源回路310を制御するとともに、ECU230が充電電力を調整するように充電器212を制御する。
【0067】
続くS103では、車両200Aに対する給電が完了したか否かを、制御装置330が判断する。この実施の形態では、制御装置330が、給電停止の指示を受信したか否かに基づいて、車両200Aに対する給電が完了したか否かを判断する。給電停止の指示は、たとえば車両200AからEVSE300Aへ送信される(後述する
図7のS26参照)。制御装置330は、給電停止の指示を受信するまで車両200Aに対する給電を継続する(S102)。
【0068】
EVSE300Aにおいて、制御装置330は、上記給電停止の指示を受信すると(S103にてYES)、その指示に従い、S104において給電を停止するように電源回路310を制御する。その後、S105において、EVSE300Aの可動部301が下降する。詳しくは、可動部301が第2位置から第1位置に変位するように制御装置330がアクチュエータ320を制御する。制御装置330は、可動部301を可動範囲R2の下限位置Z1(
図2)まで下降させる。S105の処理により、EVSE300Aの可動部301が下降し、可動部301のコネクタ301aが車両200Aのインレット211から離れ、車両200A及びEVSE300Aがプラグアウト状態になる。また、可動部301の位置が下限位置Z1になると、地面F1と可動部301のコネクタ301aとが面一になる。こうして、EVSE300Aは再び収納状態(
図1参照)になる。
【0069】
図5は、給電システム1の第2の状態(
図3に示した第1の状態の後の状態)を示す平面図である。
図5を参照して、給電システム1は、EVSE300B及び車両200Bをさらに備える。車両200Bは、設定された走行ルート及び走行スケジュールに従い、道路500上を目的地に向かって無人で自律走行する。EVSE300Bは、道路500に設けられている。
【0070】
図5に示す第2の状態では、EVSE300Bは使用されておらず収納状態(たとえば、
図1に示す状態)になっている。一方、車両200AはEVSE300Aから給電を受けている最中である。すなわち、
図4に示した処理において、S103でNOと判断され、S102の処理が繰り返し実行されている。
図5に示す例では、車両200Bの走行ルートの中継地点としてEVSE300Aが設定されている。EVSE300Aは車両200Aに使用されているため、車両200Bは車両200AにEVSE300Aの譲渡を要求する。詳しくは、車両200Bは、EVSE300A(車両200A)の周辺の所定範囲内まで近づき、車車間通信により上記要求を行なう。ただし、車両200AのSOC(すなわち、車両200Aに搭載されたバッテリ210のSOC)が低い場合には、車両200Bは、EVSE300Aから車両200Aへの給電によって車両200AのSOCが高くなるまで待ってから、上記要求を行なう。
図5に示す例では、車両200Bが「第1車両」に相当し、車両200Aが「第2車両」に相当する。また、EVSE300Aが「第1給電設備」に相当し、EVSE300Bが「第2給電設備」に相当する。
【0071】
図6は、第1車両が使用したい第1給電設備に近づいたときに実行する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、第1車両の制御装置(以下、「第1制御装置」とも称する)によって実行される。
図5に示す例では、車両200BのECU230が第1制御装置に相当する。車両200Bは、EVSE300Aを使用しようとするときに、たとえば
図5に示すようにEVSE300Aの周辺の所定範囲内まで近づいて停車し、以下に説明する
図6に示す処理を実行する。
【0072】
図2及び
図5とともに
図6を参照して、S11では、第1給電設備が空いているか否かを、第1制御装置が判断する。
図5に示す例では、EVSE300Aが第1給電設備に相当する。EVSE300Aが車両200B以外の車両(たとえば、車両200A)に使用されていると、S11においてNOと判断される。第1制御装置は、たとえば車両200Bの自動運転センサ250の出力に基づいて、EVSE300Aが使用されているか否かを判断する。あるいは、第1制御装置は、EVSE300Aを使用している車両200Aから車両200Bへ送信される信号に基づいて、EVSE300Aが使用されていることを認識してもよい。
【0073】
第1給電設備が空いていない場合(S11にてNO)には、第1制御装置が、以下に説明するS12~S14の処理を順に実行する。
【0074】
S12では、第1制御装置が、第1車両のSOC(以下、「第1SOC」とも称する)を取得する。
図5に示す例では、車両200Bに搭載されたバッテリ210のSOCが、第1SOCに相当する。第1制御装置は、たとえば車両200Bの監視モジュール210aの出力に基づいて第1SOCを取得する。
【0075】
S13では、第1制御装置が、第2車両のSOC(以下、「第2SOC」とも称する)を取得する。
図5に示す例では、車両200Aに搭載されたバッテリ210のSOCが、第2SOCに相当する。第1制御装置は、たとえば車両200Aと車両200Bとの車車間通信により、車両200Aから第2SOCを取得する。
【0076】
S14では、第2SOCが第1SOCよりも高いか否かを、第1制御装置が判断する。第2SOCが第1SOC以下である場合(S14にてNO)には、処理がS11に戻る。S14においてNOと判断される期間においては、第1制御装置がS11~S14の処理を繰り返し実行する一方、車両200A(第2車両)がEVSE300A(第1給電設備)から給電を受けて第2SOCが上昇する。
【0077】
第2SOCが第1SOCよりも高い場合(S14にてYES)には、第1制御装置が、S15において、第1給電設備の譲渡を第2車両に要求する。
図5に示す例では、第1制御装置が、車両200Aと車両200Bとの車車間通信により、EVSE300Aの譲渡を車両200Aに要求する。以下、ある給電設備を使用している車両に対してその給電設備の譲渡を要求することを、「設備譲渡要求」とも称する。
【0078】
S16では、第1給電設備が空いたか否かを、第1制御装置が判断する。
図5に示す例では、車両200A(第2車両)がEVSE300A(第1給電設備)を使用している期間は、S16においてNOと判断され、処理がS15に戻る。そして、第1制御装置がS15の処理を繰り返して、車両200Aに対して設備譲渡要求を継続的に行なう。この設備譲渡要求に応じて車両200AがEVSE300Aの使用を中止し、車両200AがEVSE300Aから離れると、EVSE300Aは空き状態(すなわち、車両200A以外の車両が使用できる状態)になる。EVSE300Aが空くと(S16にてYES)、処理はS17に進む。また、S11においてYESと判断された場合にも、処理はS17に進む。たとえば、第2SOCが第1SOC以下である期間(S14にてNO)において車両200AがEVSE300Aから離れた場合(S11にてYES)に、処理はS17に進む。
【0079】
S17では、第1車両が第1給電設備へ自動運転で移動する。
図5に示す例では、車両200A(第2車両)がEVSE300A(第1給電設備)から離れた後、車両200B(第1車両)がEVSE300Aへ自動運転で移動する。車両200BがEVSE300Aの給電位置に駐車すると、EVSE300Aが、
図4に示した処理により、車両200Bに対する給電を実行する。この給電により、車両200Bは、設定された走行ルートに従って走行するための電力をバッテリ210に蓄えることができる。
【0080】
図7は、給電設備から給電を受けている車両(第2車両)によって実行される処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、第2車両の制御装置(以下、「第2制御装置」とも称する)によって実行される。
図5に示す例では、車両200AのECU230が第2制御装置に相当する。たとえば車両200AがEVSE300Aの使用を開始すると、
図7に示す処理が開始される。
【0081】
図2及び
図5とともに
図7を参照して、S21では、使用中の給電設備による充電が完了したか否かを、第2制御装置が判断する。
図5に示す例では、車両200AがEVSE300Aを使用しており、EVSE300Aから供給される電力によって車両200Aのバッテリ210が充電される。そして、この充電が完了したか否かが、S21において判断される。第2制御装置は、バッテリ210のSOCが所定値(たとえば、満充電を示す値)以上になったときに、バッテリ210の充電が完了した(S21にてYES)と判断してもよい。
【0082】
充電が完了していない場合(S21にてNO)には、第2制御装置は、S22において、設備譲渡要求(
図6のS15)を受信したか否かを判断する。
図5に示す例において、車両200Bから車両200Aへ設備譲渡要求が送信された場合、すなわち車両200Aが車両200BからEVSE300Aの譲渡を要求された場合(S22にてYES)には、処理はS23に進む。
【0083】
S23では、第2制御装置が、給電システム1が備える複数の給電設備の中から1つの給電設備(第2給電設備)を選択する。第2給電設備は、第2車両が現在使用している給電設備以外の給電設備であって、後述する処理(S27)によって第2車両の次の行き先として設定される。第2制御装置は、たとえば給電システム1が備える複数の給電設備のうち、車両200A(第2車両)に設定された走行ルート上でEVSE300A(第2車両が現在使用している給電設備)よりも目的地側に位置してEVSE300Aに最も近い給電設備を、第2給電設備として選択する。
図5に示す例では、EVSE300Bが第2給電設備に相当する。ただしこれに限られず、S23におけるEVSEの選択方法は任意である。第2制御装置は、交通情報(たとえば、渋滞情報)を用いて第2給電設備を選んでもよい。
【0084】
S24では、上記S23で選ばれた第2給電設備まで第2車両が走行可能であるか否かを、第2制御装置が判断する。たとえば、第2車両の現在位置から第2給電設備までの距離が第2車両の航続可能距離以下であれば、S24においてYESと判断される。
図5に示す例では、車両200Aの航続可能距離が第2SOC(すなわち、車両200Aのバッテリ210の残量)に対応する。第2制御装置は、第2SOCに基づいて、車両200Aが第2給電設備まで走行可能であるか否かを判断する。
【0085】
第2車両が第2給電設備まで走行可能できない(すなわち、バッテリ210の電力が足りない)と判断された場合(S24にてNO)には、第2制御装置はバッテリ210の充電を続行し(S25)、処理はS21に戻る。また、車両200Aが設備譲渡要求を受けていない場合(S22にてNO)にも、処理はS25に進み、バッテリ210の充電が続行される。車両200Aのバッテリ210の充電は、たとえば
図2に示した状態で行なわれる(
図4のS102参照)。
【0086】
S25において充電が続行されることで、第2SOCが上昇する。第2SOCが上昇することで、S21又はS24においてYESと判断されやすくなる。そして、S21又はS24においてYESと判断されると、処理はS26に進む。
【0087】
S26では、第2制御装置が上記充電を終了する。
図5に示す例では、第2制御装置(車両200AのECU230)がEVSE300Aへ給電停止の指示を送信する。これにより、EVSE300Aが車両200Aに対する給電を停止し(
図4のS104)、EVSE300Aの可動部301が下降する(
図4のS105)。
【0088】
S27では、第2制御装置が、第2車両の次の行き先を設定する。S21においてYESと判断された場合には、第2制御装置は、S27において、走行ルートに従い、第2車両の次の行き先を設定する。次の行き先は、たとえばEVSE又は目的地である。一方、S24においてYESと判断された場合には、第2制御装置は、S27において、上記S23で選ばれた第2給電設備を、第2車両の次の行き先(すなわち、走行ルート上の中継地点)として設定する。
【0089】
その後、第2制御装置は、S28において、次の行き先に向けて第2車両を自動運転で出発させる。
図5に示す例では、車両200AがEVSE300Aから出発することで、EVSE300Aが空き状態になる。これにより、
図6のS11又はS16においてYESと判断される。
【0090】
図8は、給電システム1に含まれる第1車両及び第2車両の各々の動作について説明するための図である。給電システム1に含まれる第1車両及び第2車両の各々は、所定の走行スケジュールに従って無人で走行可能に構成される自動運転車両である。以下、
図5、
図7、及び
図8を用いて、第1車両から設備譲渡要求を受けたときの第2車両の動作について説明する。
【0091】
たとえば
図5に示すように、EVSE300A(第1給電設備)から給電を受けている最中の車両200A(第2車両)が、車両200B(第1車両)からEVSE300Aの譲渡を要求されたときには、
図7のS22においてYESと判断される。そして、
図7のS23において、給電システム1が備える複数のEVSEの中からEVSE300B(第2給電設備)が選ばれ、
図7のS24において車両200AがEVSE300Bまで走行可能であるか否かが判断される。車両200AがEVSE300Bまで走行可能である場合(
図7のS24にてYES)には、
図7のS26~S28が実行される。これにより、車両200Aは、車両200BにEVSE300Aを譲り、
図8に示すようにEVSE300Bへ自動運転で移動する。その後、車両200Bは、EVSE300Aの給電位置に駐車し、EVSE300Aから給電を受ける。車両200Bは、EVSE300Aの使用を開始するとともに、
図7に示した処理を実行する。
【0092】
以上説明したように、この実施の形態に係る給電方法は、
図6のS15(要求ステップ)、
図7のS24(判断ステップ)、及び
図7のS28(移動ステップ)を含む。
図6のS15では、第1車両が、第1給電設備から給電を受けている最中の第2車両に第1給電設備の譲渡を要求する。第2車両は、第1車両から第1給電設備の譲渡を要求されたときに(
図7のS22にてYES)、
図7のS24において、第1給電設備から第2給電設備まで走行可能であるか否かを判断する。そして、
図7のS24において走行可能と判断された場合に、第2車両は、
図7のS28において第1給電設備から第2給電設備へ自動運転で移動する。こうした給電方法によれば、第2車両は、第1車両から第1給電設備の譲渡を要求されたときに第2給電設備まで走行可能であれば、第1給電設備を第1車両に譲って第2給電設備に移動する。これにより、第1車両の待ち時間が短くなり、第1車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることが抑制される。また、第2車両は、第1給電設備の代わりに第2給電設備から給電を受けられる。
【0093】
なお、給電システム1に含まれる各給電設備が、
図4に示した処理を実行するように構成されてもよい。また、給電システム1に含まれる各車両が、
図6及び
図7の各々に示した処理を実行するように構成されてもよい。
【0094】
上記
図6に示す処理では、所定の条件を満たす場合(より特定的には、S14においてYESと判断された場合)に第1車両が第2車両に第1給電設備の譲渡を要求する。しかしこれに限られず、上記
図6に示す処理においてS12~S14は割愛可能である。また、S14においてSOCの代わりに航続可能距離を比較してもよい。
【0095】
[実施の形態2]
本開示の実施の形態2に係る給電システムについて説明する。実施の形態2は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に相違点について説明し、共通する部分についての説明は割愛する。
【0096】
図9は、本開示の実施の形態2に係る給電システムの概略構成を示す図である。
図9を参照して、実施の形態2に係る給電システム1Aは、複数本の道路と、複数の駐車場と、複数の車両(後述する車両200A~200Dを含む)とを備える。給電システム1Aは、道路500A及び500Bと、駐車場St1~St7とを備える。道路500Aと道路500Bとは交差点P10で交差する。駐車場St1~St4は道路500Aに隣接する。駐車場St5~St7は道路500Bに隣接する。駐車場St1~St7の各々は、少なくとも1つの給電設備(より特定的には、EVSE)を含む。
【0097】
給電システム1Aに含まれる各道路を、区別しない場合は「道路500」と称する。また、給電システム1Aに含まれる各駐車場を、区別しない場合は「駐車場St」と称する。駐車場Stは、たとえば
図10に示す構成を有する。
図10は、駐車場Stの構成を示す平面図である。
図10を参照して、駐車場StはEVSE300A~300Cを備える。EVSE300A~300Cの各々は、
図1及び
図2に示したEVSE300と同じ構成を有し、
図4に示した処理を実行する。駐車場Stは、電動車両用の充電ステーションに相当する。駐車場Stは道路500に隣接する。駐車場Stは、道路500に対する出入り口P11及びP12を有する。
【0098】
図11は、駐車場Stで給電を受けようとする対象車両の動作について説明するための図である。
図11を参照して、車両200Dが対象車両に相当する。車両200Dには、走行ルート及び走行スケジュールが設定されている。車両200Dは、設定された走行ルート及び走行スケジュールに従い、道路500A上を目的地に向かって無人で自律走行する。たとえば
図9に示す地図において、位置P1(出発地)から駐車場St1(中継地点)を経て位置P2(目的地)に到達する走行ルートが車両200Dに設定されている。そして、走行スケジュールは、位置P2(目的地)に到達する時刻を含む。車両200Dは、設定された走行スケジュールが示す時刻までに位置P2(目的地)に到達するように自動運転で道路500Aを走行する。車両200Dは、道路500Aを走行して位置P1から位置P2に向かい、途中で駐車場St1に寄って駐車場St1で給電を受ける。
【0099】
図11に示す例では、車両200Dが道路500Aを走行して駐車場St1に到達する。車両200Dが出入り口P11から駐車場St1に入ったとき、駐車場St1に含まれる全ての給電設備が、車両200D(対象車両)以外の車両によって使用されている。EVSE300A、300B、300Cはそれぞれ車両200A、200B、200Cによって使用されている。車両200A~200Dの各々は、
図1及び
図2に示した車両200と同じ構成を有する。
【0100】
車両200Dは、駐車場St1に入ったときに、以下に説明する
図12に示す処理を実行する。
図12は、対象車両が駐車場St1に到着したときに実行する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、対象車両の制御装置によって実行される。
図11に示す例では、車両200DのECU230が対象車両の制御装置に相当する。車両200Dは、駐車場St1に入って停車し、以下に説明する
図12に示す処理を実行する。
【0101】
図1及び
図11とともに
図12を参照して、S31では、駐車場St1内に空いている給電設備があるか否かを、車両200DのECU230が判断する。
図11に示す例では、駐車場St1に含まれる全ての給電設備が使用されているため、S31においてNOと判断される。なお、駐車場St1が備えるEVSE300A~300Cのいずれかが空き状態である場合には、S31においてYESと判断される。この場合、車両200Dは、S36において、自動運転でそのEVSEへ移動し、そのEVSEの給電位置に駐車する。
【0102】
S31においてNOと判断されると、車両200DのECU230は、S32において、駐車場St1内の給電設備を使用している各車両のSOC(より特定的には、各車両に搭載されたバッテリ210のSOC)を車車間通信により取得し、S33において、最もSOCが高い車両を選択する。このように、車両200D(対象車両)は、駐車場St1で給電を受けている車両200A~200Cの中から、後述するS34で給電設備の譲渡を要求する車両を選ぶときに、バッテリ210(蓄電装置)のSOCが高い車両を優先的に選ぶように構成される。こうした構成によれば、バッテリ210のSOCが低い車両の走行が抑制され、電欠車両が生じにくくなる。
【0103】
たとえば、駐車場St1内の給電設備を使用している車両200A~200Cのうち最もSOCが高い車両が車両200Bである場合には、S33において車両200Bが選択される。車両200A~200Cの中から車両200Bが選択されることは、EVSE300A~300Cの中からEVSE300Bが選択されることを意味する。以下では、一例として、S33において車両200Bが選択された場合について説明する。
【0104】
S34では、車両200DのECU230が、車車間通信により、車両200B(S33において選択された車両)に対して設備譲渡要求を行なう。この設備譲渡要求は、EVSE300B(使用中の給電設備)の譲渡を車両200Bに要求する。
【0105】
その後、車両200DのECU230は、S35において、EVSE300B(設備譲渡要求の対象設備)が空いたか否かを判断する。車両200Bが設備譲渡要求に応じてEVSE300Bから離れた場合(S35にてYES)には、処理はS36に進む。他方、車両200Bが設備譲渡要求に応じない場合(S35にてNO)には、処理はS31に戻る。車両200DのECU230は、駐車場St1が備えるEVSE300A~300Cのいずれかが空き状態になるまで設備譲渡要求(S34)を継続的に行なう。
【0106】
S36では、車両200Dが、空いた給電設備(EVSE300A~300Cのいずれか)へ自動運転で移動する。車両200DがEVSE300A~300Cのいずれかの給電位置に駐車すると、そのEVSEが、
図4に示した処理により車両200Dに対する給電を開始する。この給電により、車両200Dは、設定された走行ルートに従って走行するための電力をバッテリ210に蓄えることができる。
【0107】
図13は、給電設備から給電を受けている車両(対象車両以外の車両)によって実行される処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、給電システム1Aが備える駐車場St内のEVSEから給電を受けている各車両の制御装置によって実行される。以下では、車両200BのECU230が
図13に示す処理を実行する場合を例にとって、
図13に示す処理について説明する。たとえば車両200Bが
図11に示す駐車場St1においてEVSE300Bの使用を開始すると、
図13に示す処理が開始される。
【0108】
図13に示す処理は、S23,S24(
図7)に代えてS23A,S24Aを採用していること以外は、
図7に示した処理と同じである。以下、S23A及びS24Aについて説明する。
【0109】
図1、
図9、及び
図11とともに
図13を参照して、S23Aでは、車両200BのECU230が、給電システム1Aが備える複数の駐車場の中から1つの駐車場を選択する。S23Aにおいて選択される駐車場は、駐車場St1(車両200Bが現在いる駐車場)以外の駐車場であって、後述する処理(S27)によって車両200Bの次の行き先として設定される。車両200BのECU230は、S23Aにおいて、たとえば給電システム1Aが備える複数の駐車場のうち、車両200Bに設定された走行ルート上で駐車場St1よりも目的地側に位置して駐車場St1に最も近い駐車場を選択する。たとえば
図9に示す地図において、位置P1(出発地)から駐車場St1(中継地点)を経て位置P3(目的地)に到達する走行ルートが車両200Bに設定されている場合に、S23Aにおいて駐車場St2が選択されてもよい。ただしこれに限られず、S23Aにおける駐車場の選択方法は任意である。
【0110】
S24Aでは、車両200BのECU230が、車両200Bの航続可能距離に基づいて、上記S23Aで選ばれた駐車場まで車両200Bが走行可能であるか否かを判断する。そして、S24AにおいてYESと判断されると、車両200BのECU230は、S26において、EVSE300Bを用いたバッテリ210の充電を終了し、S27において、上記S23Aで選ばれた駐車場を、車両200Bの次の行き先として設定する。そして、車両200Bは、S28において、次の行き先(たとえば、駐車場St2)に向けて自動運転で出発する。
【0111】
図14は、給電システム1Aに含まれる各車両の動作について説明するための図である。以下、
図1、
図2、及び
図11~
図14を用いて、対象車両から設備譲渡要求を受けた他の車両の動作について説明する。
【0112】
たとえば
図11に示すように、車両200D(対象車両)が駐車場St1(第1駐車場)で給電を受けようとするときに、駐車場St1に含まれる全ての給電設備(EVSE300A~300C)が他の車両によって使用中である場合には、車両200Dは、駐車場St1で給電を受けている車両200A~200Cの中から1つの車両を選ぶ(
図12のS33)。車両200Dは、たとえば最もSOCが高い車両を選ぶ。
図14に示す例では、車両200Bが選ばれる。そして、車両200Dは、選ばれた車両200Bに対して使用中のEVSE300Bの譲渡を要求する(
図12のS34)。EVSE300Bの譲渡を要求された車両200Bは、給電システム1Aが備える複数の駐車場の中から第2駐車場を選ぶ(
図13のS23A)。そして、車両200Bは、選ばれた第2駐車場まで走行可能である場合(
図13のS24AにてYES)には、使用中のEVSE300Bを車両200Dに譲り、第2駐車場へ自動運転で移動する(
図13のS28)。その後、車両200Dは、EVSE300Bの給電位置に駐車し、EVSE300Bから給電を受ける。車両200Dは、EVSE300Bの使用を開始するとともに、
図13に示した処理を実行する。
【0113】
上記のように、実施の形態2に係る給電システム1Aでは、対象車両から設備譲渡要求を受けた他の車両が、第1駐車場内の給電設備を対象車両に譲って第2駐車場に移動する。これにより、対象車両の待ち時間が短くなり、対象車両が予定していた走行スケジュールから過度に遅れることが抑制される。
【0114】
[他の実施の形態]
給電システムが備える複数の車両の各々はランク付けされてもよい。たとえば、実施の形態2に係る給電システム1Aに含まれる各車両がランク付けされてもよい。給電システム1Aに含まれる各車両は、給電を受けるために駐車場に入ったときに、
図12に示した処理に代えて、以下に説明する
図15に示す処理を実行してもよい。
図15は、
図12に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
【0115】
この変形例では、給電システム1Aに含まれる各車両が、所定の走行スケジュールに従って無人で走行可能に構成される自動運転車両であり、
図1及び
図2に示した車両200と同じ構成を有する。各車両は、所定の規則に従ってランク付けされており、自身のランクを保有している。ランクは、ECU230(
図1)の記憶装置に記憶されている。ランクの設定方法は任意である。たとえば、車両の種類及び状態によって各車両がランク付けされてもよい。ECU230は車両の状態に応じてランクを更新してもよい。具体的には、緊急車両(たとえば、医療又は災害対策のための車両)のランクが通常車両(緊急車両以外の車両)のランクよりも高く設定されてもよい。また、乗客を乗せたロボタクシーのランクは、乗客を乗せていないロボタクシーのランクよりも高く設定されてもよい。また、目的地までの距離が長い車両ほどランクが高く設定されてもよい。また、設定された走行スケジュールに対して遅れが大きい車両ほどランクが高く設定されてもよい。
【0116】
図15に示す処理は、S32,S33(
図12)に代えてS32A,S33Aを採用していること以外は、
図12に示した処理と同じである。以下、S32A及びS33Aについて説明する。
【0117】
S32Aでは、対象車両のECU230が、駐車場St1内の給電設備を使用している各車両のランクを車車間通信により取得し、S33Aにおいて、最もランクが低い車両を選択する。このように、対象車両は、駐車場St1で給電を受けている複数の車両の中から、S34で給電設備の譲渡を要求する車両を選ぶときに、ランクが低い車両を優先的に選ぶように構成される。こうした構成によれば、ランクが高い車両の走行が妨げられることを抑制できる。
【0118】
図7及び
図13の各々に示した処理は、
図16に示すように変形されてもよい。
図16は、
図7及び
図13の各々に示した処理の変形例を示すフローチャートである。以下に説明する変形例でも、上記
図15に示した変形例と同様、給電システムが備える各車両は、所定の規則に従ってランク付けされており、自身のランクを保有している。
【0119】
図16に示す処理では、
図7又は
図13に示した処理に対してS20が追加されている。
図16に示す変形を
図7に示した処理に適用する場合には、S20はS22とS23との間に位置する。
図16に示す変形を
図13に示した処理に適用する場合には、S20はS22とS23Aとの間に位置する。以下、S20について説明する。
【0120】
S20では、設備譲渡要求を受信した車両が、当該車両のランクと、設備譲渡要求を送信した車両のランクとを比較する。これらの車両は、車車間通信により互いのランクを確認してもよい。設備譲渡要求を送信した車両のランクが設備譲渡要求を受信した車両のランクよりも高い場合には(S20にてYES)、処理がS23又はS23Aに進む。処理がS23又はS23Aに進んだ場合、設備譲渡要求を受信した車両は、第2給電設備又は第2駐車場まで走行可能であれば、設備譲渡要求に応じて給電設備を譲る。他方、設備譲渡要求を送信した車両のランクが設備譲渡要求を受信した車両のランクよりも高くない場合には(S20にてNO)、処理はS25を経てS21に戻る。処理がS25に進むことは、設備譲渡要求を受信した車両が設備譲渡要求を拒否して充電を続行することを意味する。
【0121】
S20の処理は、所定の拒否条件が成立するか否かを判断する処理に相当する。
図16に示す例では、設備譲渡要求を送信した車両のランクが設備譲渡要求を受信した車両のランクよりも高くない場合に所定の拒否条件が成立する。ただしこれに限られず、所定の拒否条件は適宜変更可能である。たとえば、設備譲渡要求を受信した車両のSOCが所定値よりも低い場合に所定の拒否条件が成立してもよい。また、設備譲渡要求を送信した車両のSOCが設備譲渡要求を受信した車両のSOCよりも高い場合に所定の拒否条件が成立してもよい。
【0122】
上述した各実施の形態及び各変形例では、車車間通信により車両間で情報のやり取りを行なっている。しかしこれに限られず、給電システムは、登録された複数の車両を管理するサーバと、登録された複数の給電設備を管理するサーバとの少なくとも一方を含んでもよい。1つのサーバが車両及び給電設備の両方を管理対象としてもよい。サーバは、管理対象から情報(たとえば、状態)を受け取り、管理対象へ情報(たとえば、指令)を送ってもよい。管理対象間(たとえば、車両間、給電設備間、又は車両と給電設備との間)の情報のやり取りは、サーバを介して行なわれてもよい。
【0123】
地下式給電設備の構成は、
図1及び
図2に示した構成に限られない。たとえば、筐体の形状及び寸法などは適宜変更可能である。また、可動部の形状及び寸法なども適宜変更可能である。地下式給電設備の設置場所も、上述の場所(
図5、
図9、及び
図10参照)に限られず、適宜変更可能である。地下式給電設備は、未使用時に収納状態(たとえば、
図1に示す状態)になるため、街中に設置されても景観を損なわない。給電システムは、地下式給電設備に代えて又は加えて、地下式給電設備以外の給電設備を備えてもよい。給電システムは、ユーザ操作によらず自動でプラグイン及びプラグアウトが可能に構成されるアーム式の給電設備を備えてもよい。たとえば、給電設備のアームがモータで駆動されてもよい。給電システムは、非接触方式(ワイヤレス方式)の給電設備を備えてもよい。
【0124】
車両の構成も、
図1及び
図2に示した構成に限られない。たとえば、車両は、DC(直流)充電可能に構成されてもよい。給電設備は、DC方式の給電設備であってもよい。充電器212の電力変換回路は、車両ではなく給電設備に搭載されてもよい。
【0125】
車両は、EVに限られず、PHV(プラグインハイブリッド車両)であってもよい。なお、PHVの航続可能距離(
図7のS24及び
図13のS24A)は、蓄電装置の電力残量だけでなく内燃機関の燃料残量も考慮して算出される。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、飛行機能を備えてもよい。
【0126】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1,1A 給電システム、200,200A~200D 車両、210 バッテリ、210a 監視モジュール、211 インレット、212 充電器、221 モータジェネレータ、222 インバータ、230 ECU、240 通信機器、250 自動運転センサ、260 NAVI、300,300A~300C EVSE、301 可動部、301a コネクタ、302 駐車センサ、303 通信装置、310 電源回路、320 アクチュエータ、330 制御装置、331 プロセッサ、332 RAM、333 記憶装置、334 タイマ、350 交流電源、500,500A,500B 道路、F1 地面、R1 凹部、St,St1~St7 駐車場。