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特許7552522情報処理装置、検出方法および検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、検出方法および検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G05B23/02 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021120839
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016493
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘高
(72)【発明者】
【氏名】坪田 孝志
(72)【発明者】
【氏名】石田 元彦
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-080305(JP,A)
【文献】特開2020-099019(JP,A)
【文献】特開2011-180873(JP,A)
【文献】特開2017-200632(JP,A)
【文献】特開2016-148882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの作業を行う作業員の脳波データを取得する取得部と、
前記脳波データに基づく前記脳波データに関する値の変化を検出する検出部と、
前記脳波データに関する値が閾値以上変化した前記プラントの位置を特定する特定部と、
を有し、
前記検出部は、時系列データである前記脳波データに関する値が第1の値に変化した後、所定期間内に第2の値に変化した変化区間を特定し、
前記特定部は、前記変化区間における前記第1の値が測定された前記位置を示す前記プラントの地図情報に付加する、情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、複数の前記作業員それぞれの脳波データを取得し、
前記検出部は、前記複数の作業員それぞれの脳波データについて前記変化を検出し、
前記特定部は、前記複数の作業員それぞれの脳波データに関する各前記値が前記閾値以上変化した前記プラントの位置を収集する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記プラントを見回る見回り作業を行う前記複数の作業員それぞれの脳波データを取得し、
前記検出部は、前記見回り作業中に、前記複数の作業員それぞれの脳波データについて前記変化を検出し、
前記特定部は、前記見回り作業中に前記閾値以上の変化が検出された前記位置を示す前記プラントの地図情報に付加する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記作業員に装着されたセンサを用いて前記作業員の位置を検出し、前記作業員の位置を、前記閾値以上の変化が検出された前記位置と特定する、
請求項1からのいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記作業員が装着するセンサを用いて、前記作業員の視線、体の向き、または、進行方向を含む付加情報を特定し、前記位置と前記付加情報とを対応付けて前記プラントの地図情報に付加する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記プラントを見回る見回り作業を行う前記作業員の脳波データを取得し、
前記検出部は、前記見回り作業中に、前記作業員の脳波データについて前記閾値以上の変化を検出し、
前記特定部は、前記プラントの見回り作業中に、前記閾値以上の変化が検出された前記プラントの位置を特定し、見回り作業中の作業員、または、前記プラントの位置の周辺にいる別の作業員に、前記プラントの位置における作業内容の見直しを指示する、
請求項1からのいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
プラントの作業を行う作業員の脳波データを取得し、
前記脳波データに基づく前記脳波データに関する値の変化を検出し、
前記脳波データに関する値が閾値以上変化した前記プラントの位置を特定する処理を実行し、
前記検出する処理は、時系列データである前記脳波データに関する値が第1の値に変化した後、所定期間内に第2の値に変化した変化区間を特定し、
前記特定する処理は、前記変化区間における前記第1の値が測定された前記位置を示す前記プラントの地図情報に付加する、検出方法。
【請求項8】
コンピュータに、
プラントの作業を行う作業員の脳波データを取得し、
前記脳波データに基づく前記脳波データに関する値の変化を検出し、
前記脳波データに関する値が閾値以上変化した前記プラントの位置を特定する処理を実行させ、
前記検出する処理は、時系列データである前記脳波データに関する値が第1の値に変化した後、所定期間内に第2の値に変化した変化区間を特定し、
前記特定する処理は、前記変化区間における前記第1の値が測定された前記位置を示す前記プラントの地図情報に付加する、検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、検出方法および検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
危険な作業を行う作業員や大規模なシステム等の監視を行う作業員の事故防止と、作業対象であるシステムの安全操業を行うために、業種や分野に関わらず、様々な取り組みが行われている。例えば、作業員の脳波データを取得して監視し、作業員の異常を検出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-62565号公報
【文献】特開2018-78982号公報
【文献】特開2019-161366号公報
【文献】特開2020-149452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、異常発生の事後検出になり、操業対象であるプラントの安全面と作業員の安全面との両側面から、危険性や異常などを早期に検出し、プラントの安全操業を支援することが難しい。
【0005】
そこで、一つの側面では、プラントの安全操業を支援することができる情報処理装置、検出方法および検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面にかかる情報処理装置は、プラントの作業を行う作業員の脳波データを取得する取得部と、前記脳波データに基づく前記脳波データに関する値の変化を検出する検出部と、前記脳波データに関する値が閾値以上変化した前記プラントの位置を特定する特定部と、を有する。
【0007】
一側面にかかる検出方法は、コンピュータが、プラントの作業を行う作業員の脳波データを取得し、前記脳波データに基づく前記脳波データに関する値の変化を検出し、前記脳波データに関する値が閾値以上変化した前記プラントの位置を特定する、処理を実行する。
【0008】
一側面にかかる検出プログラムは、コンピュータに、プラントの作業を行う作業員の脳波データを取得し、前記脳波データに基づく前記脳波データに関する値の変化を検出し、前記脳波データに関する値が閾値以上変化した前記プラントの位置を特定する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、プラントの安全操業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1にかかるシステムの全体構成例を示す図である。
図2】実施形態1にかかる情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】設備情報DBに記憶される情報の例を示す図である。
図4】検出結果DBに記憶される情報の例を示す図である。
図5】作業員の違和感の検出手法1を説明する図である。
図6】作業員の違和感の検出手法2を説明する図である。
図7】作業員の違和感の検出手法3を説明する図である。
図8】作業員の違和感の検出手法4を説明する図である。
図9】実施形態1にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
図10】ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する情報処理装置、検出方法および検出プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略し、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0012】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、実施形態1にかかるシステムの全体構成例を示す図である。図1に示すように、このシステムは、プラント1と情報処理装置10とを有する。
【0013】
プラント1は、石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントの一例であり、生成物を得るためのさまざまな施設を備える工場等を含む。例えば、プラント1が有する施設としては、蒸留に利用される蒸留塔、水や石油などを流す配管、各種機器や水温などを図る温度計などがある。また、生成物の例は、LNG(液化天然ガス)、樹脂(プラスチック、ナイロン等)、化学製品等である。施設の例は、工場施設、機械施設、生産施設、発電施設、貯蔵施設、石油、天然ガス等を採掘する井戸元における施設等である。
【0014】
プラント1内は分散制御システム(Distributed Control Systems:DCS)などを用いて構築される。例えば、図示は省略したが、プラント1内の制御システムが、プラント1で利用されるプロセスデータを用いて、制御を行う対象の設備に設置されたフィールド機器などの制御機器や、制御を行う対象の設備に対応する操作機器などに対して各種制御を実行する。
【0015】
このようなプラント1では、作業員等が、プラント1に設置される温度センサや流量計等の各種センサで得られる温度、圧力等のプラントの実測値に基づいてプラント1の動作の傾向を把握し、プラント1に設置されるバルブやヒータ等の制御機器を操作することにより、プラントの安全操業が行われている。
【0016】
プラント1の操業を行う各作業員は、脳波データを測定する脳波センサ2、作業員の位置、体の向き、進行方向や視線などが測定可能なGPS(Global Positioning System)を有するセンサ3を所持する。各作業員は、作業工程表にしたがって、プラント1内の各設備や機器の操業を実行するとともに、プラント1に異常がないか否かを見回る見回り作業を定期的に行う。なお、本実施形態では、複数の作業員が作業中である例で説明するが、これに限定されるものではなく、例えばある作業員の作業中や作業後、見回り作業中など様々なシチュエーションを対象とすることができる。
【0017】
情報処理装置10は、プラント1で作業を行う作業員の違和感を特定し、その位置を収集してプラント1の操業で注意すべき場所や作業を洗い出すコンピュータの一例である。具体的には、プラント1の作業を行う作業員の脳波データを取得し、脳波データの変化を検出し、一定値以上の変化が検出されたプラント1の位置を特定する。
【0018】
図1を例にして説明すると、図1に示すプラント1では、複数の作業員それぞれがプラント1の各位置で作業を行っている。例えば、位置Aでは作業員がプラント1の生成物の状態監視を行っており、位置Cでは作業員が配管の温度や流量の計測をしており、位置Eではフィールド機器の設定変更などを行っている。
【0019】
このような状態で、情報処理装置10は、プラント1の作業を行う作業員の脳波データを取得し、脳波データに基づく脳波データに関する値の変化を検出し、脳波データに関する値が閾値以上変化したプラント1の位置を特定する。上記例で説明すると、情報処理装置10は、各作業員から脳波データを取得し、各脳波データに想定し得る安定的な状況とは異なる状態への変化が発生しているか否かを判定する。そして、情報処理装置10は、変化が検出された脳波データの作業員の位置Bと位置Dを特定し、違和感場所として検出する。
【0020】
このように、情報処理装置10は、各作業員が行動に移すまでには至らなかった無意識な不安や潜在的な不安を、脳波データに基づき検出して収集する。例えば、情報処理装置10は、各作業員が作業を正常に行った場合であっても、「一瞬、変な数値が見えたかも?」、「以前の操作と同じでいいはず?」などの違和感を脳波データから検出することで、正常や異常ではなく、違和感がある作業や設備等を特定して蓄積する。この結果、情報処理装置10は、今後の作業計画において、注意深く作業する必要がある場所や作業の見直しが必要な場所などの情報収集や情報提供を実現することができ、プラント1の安全操業を支援することができる。
【0021】
(情報処理装置10の機能構成)
次に、上述した情報処理装置10の機能構成について説明する。図2は、実施形態1にかかる情報処理装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、情報処理装置10は、通信部11、記憶部12、制御部20を有する。
【0022】
通信部11は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部11は、各作業員の脳波センサ2から脳波データを取得し、各作業員のセンサ3から位置情報などを取得する。また、通信部11は、指定された各宛先に、各種情報を送信する。
【0023】
記憶部12は、各種データや制御部20が実行するプログラムなどを記憶する記憶装置の一例であり、例えばメモリやハードディスクなどにより実現される。この記憶部12は、設備情報DB13、収集DB14、検出結果DB15、地図情報DB16を記憶する。
【0024】
設備情報DB13は、プラント1が有する各設備や各機器に関する情報を記憶するデータベースである。図3は、設備情報DB13に記憶される情報の例を示す図である。図3に示すように、設備情報DB13は、「設備、位置情報、作業内容」などを対応付けて記憶する。
【0025】
ここで記憶される「設備」は、作業員による監視対象や操作対象である、プラント1に設置される設備や機器を示す。「位置情報」は、設備が設置されている位置を示し、例えば緯度経度などである。「作業内容」は、設備に対して作業員が行う作業を特定する情報である。図3の例では、「蒸留塔X」は、「位置X」に設置され、作業員により「監視」および「バルブ操作」が行われることを示す。なお、ここで記憶される情報は、管理者等により記憶され、適宜更新される。
【0026】
収集DB14は、収集された作業員の脳波データを記憶するデータベースである。例えば、収集DB14は、作業員ごとに、収集日時と収集された時系列の脳波データと収集位置などを対応付けて記憶する。
【0027】
検出結果DB15は、後述する制御部20により検出された結果を記憶するデータベースである。図4は、検出結果DB15に記憶される情報の例を示す図である。図4に示すように、検出結果DB15は、「作業員、位置情報、作業位置、付加情報」を対応付けて記憶する。
【0028】
ここで記憶される「作業員」は、違和感が検出された作業員を特定する情報であり、例えば識別子や社員番号などである。「位置情報」は、違和感が検出された位置を示す。「作業位置」は、設備情報DB13を用いて特定された、違和感が検出された位置に対応する設備等を示す。「付加情報」は、違和感が検出されたときにセンサ3から取得したセンサ値に基づき特定される情報である。これら以外にも検出日時などを対応付けることもできる。図4の例では、「作業員A」が「位置X」の「蒸留塔X」に対して作業中に、違和感が検出されており、そのときの「作業員Aの向き、視線、進行方向」が検出されたことを示す。
【0029】
地図情報DB16は、違和感の検出位置を示す地図情報を記憶するデータベースである。例えば、地図情報DB16に記憶される地図情報は、2次元、3次元、または、点群などで表されたプラントの設備配置を示す情報に、違和感が検出された位置などをマッピングした情報である。
【0030】
制御部20は、情報処理装置10全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。この制御部20は、取得部21、検出部22、特定部23を有する。なお、取得部21、検出部22、特定部23は、プロセッサなどの電子回路の一例として実現することもでき、プロセッサが実行するプロセスの一例として実現することもできる。
【0031】
取得部21は、プラント1の作業を行う各作業員から脳波データを取得する処理部である。例えば、取得部21は、定期的に、または、脳波センサ2がセンシングしたタイミングで、各作業員から脳波データを取得し、収集DB14に格納する。このとき、取得部21は、センサ3により取得された位置情報、および、付加情報もしくは付加情報を特定可能なセンサ値もあわせて取得する。なお、センサ値としては、視線、加速度、体の向きや顔の向きなどを採用することができる。
【0032】
検出部22は、複数の作業員それぞれの脳波データについて変化を検出する処理部である。具体的には、検出部22は、収集される各脳波データを解析し、作業員の違和感を検出する。
【0033】
特定部23は、一定値以上の変化が検出されたプラント1の位置を特定する処理部である。具体的には、特定部23は、複数の作業員それぞれの脳波データが変化したプラント1の位置(違和感の検出位置)を特定するとともに、設備情報DB13を参照して当該位置に対応する設備を特定する。そして、特定部23は、そのときのセンサ値に基づき、視線、体の向き、進行方向などを特定する。その後、特定部23は、特定された位置、設備、付加情報を対応付けて検出結果DB15に格納する。
【0034】
また、特定部23は、検出結果DB15に記憶される情報を用いて、プラント1の地図情報を生成することもできる。例えば、特定部23は、2次元、3次元、または、点群などで表されたプラント1の設備配置を示すプラント1の地図情報に、違和感が検出された位置や付加情報などをマッピングした地図情報を生成する。この結果、地図情報には、違和感の位置だけではなく、作業員の向き、進行方向、視線などもマッピングできるので、どこに違和感の場所を詳細に特定することができる。
【0035】
(具体例)
ここで、違和感に対応する変化の検出手法について具体的に説明する。
【0036】
(検出手法1)
例えば、検出部22は、作業中に、通常と異なる変化が検出されたときに、作業員が無意識に感じた違和感を検出する。図5は、作業員の違和感の検出手法1を説明する図である。一例を説明すると、検出部22は、時系列データである作業中の作業員の脳波データを取得し、取得された期間の脳波データの上限値と下限値の各平均値を算出する。そして、検出部22は、上限値の平均値よりも所定値以上の波形が続く期間、または、下限値の平均値よりも所定値未満である波形が続く期間を検索する。
【0037】
ここで、図5に示すように、検出部22は、該当する期間Tが検出された場合、作業員がその期間Tで行われた作業員の違和感を検出する。この場合、特定部23は、期間Tを含む脳波データが取得された位置を特定するとともに、設備情報DB13を参照して当該位置に対応する設備を特定する。また、特定部23は、そのときのセンサ値に基づき、視線、体の向き、進行方向などを特定する。そして、検出部22は、特定された位置、設備、付加情報を対応付けて検出結果DB15に格納する。
【0038】
(検出手法2)
例えば、検出部22は、作業中に取得された脳波データを解析し、特定の脳波(波形)が検出されたときを、作業員が無意識に感じた違和感として検出する。図6は、作業員の違和感の検出手法2を説明する図である。図6に示すように、検出部22は、時系列データである作業中の作業員の脳波データを取得し、取得された脳波データに対してフーリエ変換やウェーブレット変換などの脳波解析を実行する。
【0039】
そして、検出部22は、デルタ波、シータ波、アルファ波、ベータ波、ガンマ波などの発生状況を特定する。ここで、例えば、検出部22は、眠気に誘われているときに発生する傾向が強いシータ波や視覚的意識が強いときに発生する傾向が強いガンマ波が特定できた場合、作業員が行った作業の違和感を検出する。この場合、特定部23は、シータ波やガンマ波が検出された脳波データの取得位置と当該位置に対応する設備を特定するとともに、そのときの視線、体の向き、進行方向などを特定する。そして、特定部23は、特定された位置、設備、付加情報を対応付けて検出結果DB15に格納する。
【0040】
(検出手法3)
例えば、検出部22は、脳波データで区別可能な知覚(感知)と認知(認識)の波形を利用することで、作業員の無意識の注意を検出することもできる。一般的に、人間は、物事を見たときに、無意識に知覚を行い、そのあとに認知を行うことで、物事を認識する。プラントを例にして説明すると、作業員が、スイッチ、設定変更、監視などの操作を行う場合、まず無意識に操作対象を把握する知覚を行い、その後に認知することで操作を行うこととなる。同様に、障害発生時であっても、作業員は、知覚を行って違和感を覚えた後に、異常等の認知を行うと考えられる。
【0041】
すなわち、検出部22は、上述した知覚を正確に検出することで、作業員の違和感を早期に検出し、プラント1の異常の早期検出を実現することができる。図7は、作業員の違和感の検出手法3を説明する図である。図7に示すように、検出部22は、作業員から収集した脳波データから、閾値以上である振幅が検出された後から時間Tが経過する前に、閾値以上である振幅を検出したとする。この場合、検出部22は、それぞれの振幅の変化の位置を知覚変化と認知変化と検出する。
【0042】
そして、特定部23は、この知覚変化に対応する脳波データが取得された位置と当該位置に対応する設備を特定するとともに、そのときの付加情報を対応付けて検出結果DB15に格納する。なお、認知変化の振幅は、知覚変化よりも所定値大きいことが多く、その振幅の差により、両者を区別することもできる。
【0043】
例えば、情報処理装置10は、プラント1の見回り作業を行う作業員からリアルタイムに脳波データを収集し、作業員の知覚変化の場所を特定することで、作業員が見回り作業中に違和感を覚えた場所を収集することができる。この結果、情報処理装置10は、次のタイミングの見回り作業を行う作業員に対して注意場所を予め通知することもでき、障害発生時には違和感の場所を障害原因の候補として解析することもできる。
【0044】
(検出手法4)
検知手法3で説明した知覚および認知の検出については、計測した脳波データや周波数解析などによって得られた指標において、定常状態からの特徴的な変化が見出されることを用いることもできる。図8は、作業員の違和感の検出手法4を説明する図である。図8には、刺激に対する初期応答後に分岐する3つの認知変化のパターンP1~P3が模式的に示されている。図8に示す認知変化のパターンP1は、初期応答後の状態に固定される「恒常活性」である。また、認知変化のパターンP2は、刺激前の状態に慣性を伴いつつ回復する「振動」である。さらに、認知変化のパターンP3は、刺激前の状態に戻る「適応」である。
【0045】
このようなパターンを用いることで、例えば、検出部22は、第1の値(状態変化)を違和感として検出し、第2の値を第1の値からもとに戻るまでの過程(適応や緩和)として検出する。具体的には、検出部22は、図8に示す、計測した脳波データや周波数解析などによって得られた指標を用いたときに現れる特徴的なパターンにおいて閾値以上の変化が検出されたタイミング(例えば時間など)を知覚変化と検出し、最も強度が小さい時間T付近を認知変化として検出する。また、検出部22は、知覚変化から認知変化までの時間を算出し、この時間が閾値未満の場合のみ、両変化に関連性があるとして違和感の検出に採用し、この時間が閾値以上の場合のみ、両変化に関連性がないとして違和感の検出に採用しないこともできる。
【0046】
(処理の流れ)
次に、上述した処理の流れについて説明する。図9は、実施形態1にかかる処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すように、処理が開始されると、特定部23は、プラントの白地図を生成する(S101)。続いて、検出部22は、取得部21により、作業員の脳波データが取得されると(S102:Yes)、脳波データを解析する(S103)。
【0047】
そして、特定部23は、検出部22により、脳波データから変化が検出された場合(S104:Yes)、変化が検出された脳波データの測定位置や付加情報を特定し(S105)、検出結果DB15に蓄積する(S106)。なお、脳波データから変化が検出されない場合(S104:No)、S102以降が繰り返される。
【0048】
その後、特定部23は、プラントの地図上に脳波データとその付加情報を追記し(S107)、ディスプレイに出力したり、管理者等に送信したりする(S108)。ここで、変化が検出された脳波データの測定位置などの蓄積処理を継続する場合(S109:No)、S102以降の処理が繰り返される。一方、当該蓄積処理を終了する場合(S109:Yes)、情報処理装置10は、蓄積から地図データ出力までの一連の処理である図9の処理を終了する。
【0049】
なお、情報処理装置10は、あるタイミングで図9の処理の実行を終了した後、別のタイミングで図9の処理を再度実行する場合に、プログラムや処理として重複する処理を実行済みとして省略することもできる。一例を挙げると、情報処理装置10は、例えばS101を省略してS102から開始することもできる。なお、図9では、脳波データを収集した後にプラントの地図情報を生成する例を説明したが、あくまで一例であり、これに限定されるものではなく、脳波データの収集と地図情報の生成とは別々のフローで実現され得る。例えば、特定部23は、別のタイミングですでに蓄積済みである脳波データ、変化位置、付加情報などを用いて、地図情報の生成もしくは地図情報への付加を実行することもできる。また、特定部23は、変化が検出されるたびに、地図情報の生成もしくは地図情報への付加を実行することもできる。
【0050】
(効果)
上述したように、情報処理装置10は、各作業員の脳波データを解析して違和感の位置(作業場所)を特定することができるので、プラント1の安全操業を支援することができる。また、情報処理装置10は、作業員ごとの注意マップを生成することができる。また、情報処理装置10は、複数の作業員それぞれの脳波データを解析して、各作業員の違和感の位置を特定することができるので、プラント1全体で共有すべき注意マップを生成することができる。
【0051】
また、情報処理装置10は、作業員に装着されたセンサ3を用いて作業員の位置を検出し、作業員の位置に基づき、変化が検出された位置を特定する。この結果、情報処理装置10は、特別な装置を用意することなく、広く利用されているGPSなどのセンサを用いることができ、導入コストを抑えることができる。また、情報処理装置10は、センサ3を用いて付加情報を特定することができ、作業員の違和感の位置だけではなく、違和感を感じたときの作業員の向きなども特定できる。この結果、情報処理装置10は、違和感の絞り込みを行うことができ、一般的な注意マップよりも有益な注意マップを生成することができ、プラントの安全操業を支援することができる。
【0052】
[実施形態2]
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0053】
[数値等]
上記実施形態で用いた各コンピュータの数、作業員の数、プラント1、作業の名前などは、あくまで一例であり、任意に変更することができる。上記実施形態では、作業中に脳波データをリアルタイムで取得する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば作業中は脳波センサ2等で収集しておき、作業後に脳波データを取得して同様の処理を実行することができる。
【0054】
上記実施形態では、情報処理装置10は、使用するセンサの種別や性能に応じて、付加情報を直接取得することもでき、センサ値から付加情報(視線、加速度、顔の向きなど)を特定することもできる。なお、特定する手法は、加速度解析など公知の手法を用いることができる。また、センサとしては、作業員の顔等などの映像を撮像するセンサを用いることもでき、映像解析により、視線、加速度、体の向きや顔の向きなどを特定することもできる。なお、付加情報は、あくまで一例であり、上記すべてを含む必要はなく、いずれか一つでもよく、操作した手が右手か左手かなどの情報やその位置の滞在時間など他の情報を含むこともできる。
【0055】
[見回り作業]
例えば、情報処理装置10は、定期的に行われるプラント1の見回り作業中の作業員の脳波データを用いて、実施形態1で説明した地図情報を生成することもできる。このようにすることで、情報処理装置10は、作業員の違和感が検出された場所を重点的に見回るなど、作業の効率化とプラント1の安全操業とを両立することができる。
【0056】
また、情報処理装置10は、プラント1の見回り作業中に、脳波データの変化が検出されたプラント1の位置を特定し、見回り作業中の作業員、または、プラント1の位置の周辺にいる別の作業員に、違和感の検出位置における作業内容の見直しを指示することもできる。
【0057】
例えば、情報処理装置10は、作業Aを行った作業員Aの脳波データから違和感を検出した場合、作業員Aに対して作業Aの見直しを指示する。また、情報処理装置10は、見回り作業中もしくは他の作業中の各作業員の脳波データに基づき、各作業員の位置を特定し、作業員Aの近くにいる他の作業員を特定し、作業Aの見直しを指示する。また、情報処理装置10は、プラント1全体を監視するオペレータに対して作業Aの注意喚起を指示する。
【0058】
このようにすることで、情報処理装置10は、2重、3重のチェックをリアルタイムかつ違和感検出後から遅滞なく実行することができるので、プラントの安全操業の支援を強化することができる。
【0059】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0060】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0061】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0062】
[ハードウェア]
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。なお、他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。図10は、ハードウェア構成例を説明する図である。図10に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図10に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0063】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0064】
プロセッサ10dは、図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図2等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ50dは、取得部21、検出部22、特定部23等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、取得部21、検出部22、特定部23等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0065】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することで検出方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0066】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 設備情報DB
14 収集DB
15 検出結果DB
16 地図情報DB
20 制御部
21 取得部
22 検出部
23 特定部
図1
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図10