(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用表示システム
(51)【国際特許分類】
B60K 35/233 20240101AFI20240910BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240910BHJP
B60K 35/234 20240101ALI20240910BHJP
【FI】
B60K35/233
G08G1/16 C
B60K35/234
(21)【出願番号】P 2021125505
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】目方 宏明
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-024561(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110580(WO,A1)
【文献】特開2016-062368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20,
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の障害物の情報を検出する障害物検出装置(6)を備える車両(1)に搭載される車両用表示システムにおいて、
前記車両のフロントウィンドシールド(4)に画像光を投射して所定の画像(5)を虚像として運転者に視認させる表示装置(2)と、
前記障害物検出装置から伝送される情報に基づき、前記表示装置が前記画像光を投射するための画像信号を生成する表示制御装置(3)と、を備え、
前記表示制御装置は、
前記運転者から前記フロントウィンドシールドを通して視認される画像を虚像として表示可能な表示エリア(21)に前記障害物が接近する場合、前記障害物が前記表示エリアに侵入することが予測される位置において前記表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に所定の画像を表示し、且つ、前記障害物が前記表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて所定の画像の表示態様を変化させ、
前記表示エリアに侵入した前記障害物と所定の画像とが重なる場合に所定の画像の表示を消
し、前記表示エリアから前記表示エリアの外側に前記障害物が移動すると所定の画像を再表示する制御を実行する、車両用表示システム。
【請求項2】
前記進捗度は、自車両と前記障害物との位置関係、距離、進行方向、相対速度を含む情報によって前記障害物が前記表示エリアに侵入することが判定されてから前記表示エリアに侵入するまでの到達度合である、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
前記進捗度は、前記障害物が前記表示エリアに侵入するまでの予測時間または距離である、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記表示制御装置は、前記表示態様として、画像の大きさ、長さ又は色を前記進捗度に応じて変化させる制御を実行する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」という)装置などを用いた車両用表示システムが知られている。HUDは、フロントウィンドシールドの一部に画像光を投射し、運転者からフロントウィンドシールドを通して視認される車外の実景と重ねて虚像を表示するものである。なお、本明細書では、フロントウィンドシールドにHUDが画像光を投射し、虚像が表示される領域を「表示エリア」という。また、本明細書では、HUDが表示エリア内に表示する虚像を「画像」ということがある。
【0003】
特許文献1に記載の車両用表示システムは、表示エリアの外から表示エリア内に他車両などの障害物が侵入することが予測される場合、表示エリア内の境界付近において障害物の侵入が予測される位置に注意喚起画像(すなわち、注意喚起のための虚像)を表示する。これにより、運転者は、表示エリアに表示された注意喚起画像により、表示エリアの外の障害物の接近状態を的確に認識することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用表示システムでは、表示エリアの外の障害物があとどれくらいで表示エリアに侵入するのか把握できない。そのため、例えば、注意喚起画像が表示されてから障害物が表示エリアに侵入するまでの時間が短いと、障害物の挙動に対して運転者が余裕をもって対処することが困難になる恐れがある。また、注意喚起画像が長時間表示されていても障害物が表示エリアに侵入してこない場合、運転者に不安を感じさせる恐れもある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、障害物の挙動に対する予測可能性を高めることで、運転の安全性をより高めることの可能な車両用表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車外の障害物の情報を検出する障害物検出装置(6)を備える車両(1)に搭載される車両用表示システムにおいて、表示装置(2)と表示制御装置(3)を備える。表示装置は、車両のフロントウィンドシールド(4)に画像光を投射して所定の画像(5)を虚像として運転者に視認させるものである。表示制御装置は、障害物検出装置から伝送される情報に基づき、表示装置が画像光を投射するための画像信号を生成するものである。そして、表示制御装置は、運転者からフロントウィンドシールドを通して視認される画像を虚像として表示可能な表示エリア(21)に障害物が接近する場合、障害物が表示エリアに侵入することが予測される位置において表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に所定の画像を表示し、且つ、その障害物が表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて所定の画像の表示態様を変化させ、表示エリアに侵入した障害物と所定の画像とが重なる場合に所定の画像の表示を消し、表示エリアから表示エリアの外側に障害物が移動すると所定の画像を再表示する制御を実行する。
【0008】
これによれば、運転者は、他車両や人などの障害物があとどれくらいで表示エリアに侵入するか(すなわち、進捗度)を認識することが可能となる。そのため、障害物が表示エリアに侵入する場合、運転者は、画像の位置及び表示態様から障害物の挙動を予測でき、その障害物の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。したがって、この車両用表示システムは、運転の安全性をより高めることができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る車両用表示システムの概略構成図である。
【
図2】車両走行中に運転者からフロントウィンドシールドを通して視認される車外の実景の一例を示す図である。
【
図3】
図2に続く、車外の実景と表示画像の一例を示す図である。
【
図4】
図3に続く、車外の実景と表示画像の一例を示す図である。
【
図5】
図4に続く、車外の実景の一例を示す図である。
【
図6】車両用表示システムによる制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態において、車両用表示システムが搭載された自車両と、その自車両が走行する車線の右側の車線を走行する他車両との位置関係を示す図である。
【
図8】
図7に続く、自車両と他車両との位置関係を示す図である。
【
図9】
図8に続く、自車両と他車両との位置関係を示す図である。
【
図10】
図9に続く、自車両と他車両との位置関係を示す図である。
【
図11】車両走行中に運転者からフロントウィンドシールドを通して視認される車外の実景の一例を示す図である。
【
図12】
図11に続く、車外の実景と表示画像の一例を示す図である。
【
図13】
図12に続く、車外の実景と表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用表示システムは、車両1に搭載される。以下の説明では、本実施形態の車両用表示システムが搭載された車両1を「自車両1」ということがある。
【0015】
車両用表示システムは、表示機器としてのヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD2」という)と表示制御装置3とを備えている。HUD2は、表示制御装置3による制御の下で、フロントウィンドシールド(以下、単に「ウィンドシールド4」という)に画像光を投射し、所定の画像5を虚像として運転者に視認させるものである。運転者は、HUD2により表示された画像5を、ウィンドシールド4を通して視認される車外の実景と併せて視認することが可能である。なお、HUD2は、例えば、他車両または歩行者などの障害物に対する注意喚起、ナビゲーションシステムにおける進路、または車速など、種々の情報を運転者に提供するものとして用いられる。
【0016】
表示制御装置3は、CPUによる処理部、RAM、ROMなどの記憶部、および入出力インタフェースなどを備えたマイクロコンピュータとして構成されている。なお、記憶部は非遷移的実体的記憶媒体である。記憶部には、HUD2に供給するための画像データや、制御処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。表示制御装置3は、車両1に搭載されている障害物検出装置6から伝送される情報に基づいて各種制御処理を実行し、ROMから画像データを読み出し、画像5の表示形態や表示する位置を決定し、HUD2が画像光を投射するための画像信号を生成する。
なお、表示制御装置3は、運転者の眼7の位置を検出する眼球位置検出装置8から伝送される情報に基づき、運転者に画像5が視認される位置を調整する。
【0017】
障害物検出装置6は、車外の情報を取得するためのステレオカメラまたはレーダセンサなどと、それらの機器により取得された情報を解析するための図示しない解析部などを有している。
【0018】
障害物検出装置6の一例として、ステレオカメラは、自車両1の前方領域、側方領域または後方領域を撮像するものである。ステレオカメラが撮像した撮像データは、図示しない解析部に伝送される。解析部は、ステレオカメラで取得された撮像データをパターンマッチング法により画像解析することで、道路上の障害物の有無を解析し、さらに三角測量の原理に基づく画像解析により障害物と自車両1との間の距離(相対的な位置関係)を算出できる。また、解析部は、自車両1と障害物との距離を連続的または断続的に検出し、その時間差分などの比較により自車両1の速度を基準とした障害物の相対速度を算出することができる。障害物検出装置6は、自車両1に接近する障害物の距離及び相対速度などの情報を、表示制御装置3に出力する。
【0019】
なお、障害物検出装置6は、上述したステレオカメラまたはレーダセンサなどに限らず、例えば、車車間通信や路上の通信インフラを介した路車間通信等の通信手段を有し、互いの車両位置とその時間的差分によって相対的な位置関係や相対速度を求めてもよい。そのようにして障害物検出装置6が検出した障害物に関する情報も、表示制御装置3に伝送される。
【0020】
表示制御装置3は、障害物検出装置6から伝送される情報に基づき、障害物が表示エリアに接近することが検出された場合、その障害物が表示エリアに侵入することが予測される位置にHUD2が所定の画像5を表示するための画像信号を生成する。さらに、本実施形態の表示制御装置3は、その障害物が表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて所定の画像5の表示態様を変化させることで、その進捗度を運転者に認識させることが可能である。以下、その具体的例について、
図2~
図5を参照して説明する。
【0021】
図2~
図5は、車両走行中に運転者からウィンドシールド4を通して視認される車外の実景の一例を示したものである。
図2~
図5において、HUD2により表示される画像5には、車外の実景と区別してするため、断面ではないがハッチングを付している。なお、
図2~
図5では、運転者から視たウィンドシールド4の外縁を実線41で示している。また、
図2~
図5では、表示エリアの外縁を、説明のために一点鎖線21で示しているが、この表示エリアの外縁は運転者から視認されるものではない。また、表示エリアの形状、位置、大きさ等は、
図2~
図5に示したものに限らず、任意に設定できる。なお、これらのことは、後述する第2実施形態で参照する
図11~
図14でも同じである。
【0022】
図2~
図5では、自車両1が走行中に、自車両1のウィンドシールド4を通して、自車両1の前方を走行する障害物としての他車両10が視認されている。
図2~
図5では、その他車両10と自車両1との距離が次第に近づいて来る様子を一定の時間経過ごとに示している。
【0023】
図2に示すように、表示制御装置3は、障害物検出装置6から伝送される情報に基づき、他車両10と自車両1との相対速度などから、他車両10が自車両1に接近していることが判定された場合、その他車両10が表示エリアに侵入することが予測される位置に、所定の画像5の一例としての矢印記号(以下、単に「矢印50」という)を表示する。このとき、表示制御装置3は、他車両10が表示エリアに侵入するまでの進捗度を算出し、その進捗度に応じた表示態様として、矢印50の長さを決定する。
図2では、矢印50の長さが比較的長く表示されている。なお、矢印50は、表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に表示されている。
【0024】
ここで、進捗度とは、障害物が表示エリアに侵入することが判定されてから表示エリアに侵入するまでの到達度合である。進捗度は、自車両1と障害物との位置関係、距離、進行方向、相対速度などを含む情報によって算出されるものである。進捗度は、障害物の自車両1への接近度合いということもできる。
【0025】
或いは、進捗度は、上記のような算出方向に限定されるものでなく、例えば、障害物が表示エリアに侵入するまでの予測時間または距離としてもよい。
【0026】
続いて、
図3に示すように、自車両1の前方を走行する他車両10は、次第に自車両1に接近している。このとき、表示制御装置3は、他車両10が表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて、矢印50の長さを可変する。
図3では、矢印50の長さが
図2に示したものよりも短く表示されている。すなわち、矢印50が短く表示されることで、運転者は、
図2で示した状態に比べて、進捗度が進んでいることを認識できる。
【0027】
続いて、
図4に示すように、自車両1の前方を走行する他車両10は、さらに自車両1に接近し、その一部が表示エリア内に入っている。
図4では、矢印50の長さが
図3に示したものより、さらに短く表示されている。このように、矢印50の長さが、さらに短く表示されていることで、運転者は、
図3で示した状態に比べて、進捗度がさらに進んでいることを認識できる。
【0028】
このように、運転者は、矢印50の位置及び長さから他車両10の挙動を予測でき、その他車両10の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。例えば、突然の交通渋滞、赤信号、故障などで、前方の他車両10が急減速または急停止する場合にも、運転者は、その他車両10の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。
【0029】
なお、矢印50は、表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に表示されているので、
図4の状態では、他車両10と矢印50とが重なっていない。そのため、矢印50は継続して表示されている。
【0030】
続いて、
図5に示すように、自車両1の前方を走行する他車両10は、
図4の状態から、さらに自車両1に接近している。
図5の状態では、他車両10と矢印50の表示位置とが重なることから、表示制御装置3は矢印50の表示を消している。
【0031】
なお、図示は省略するが、
図5に示す状態から、自車両1の減速または他車両10の加速などにより、表示エリアの外に他車両10が移動すると、表示制御装置3は矢印50を再表示する。これにより、表示エリアの外縁付近において、表示エリアの外縁を跨いで障害物が行き来を繰り返す場合でも、矢印50の画像表示が短時間で表示と非表示が頻繁に切り替わるといった表示のちらつきを防ぐことができる。
【0032】
次に、本実施形態の車両用表示システムによる制御処理を、
図6のフローチャートを参照して説明する。この制御処理は、車両1の走行スイッチがオンされると、所定の制御時間間隔で繰り返し実行される。
【0033】
図6のステップS10にて、表示制御装置3は、障害物検出装置6から伝送される情報に基づき、自車両1と障害物との位置関係、距離、進行方向、相対速度などから、障害物が自車両1に接近しているか否かを判定する。表示制御装置3は、障害物が自車両1に接近していないと判定した場合、このステップS10の処理を繰り返し実行する。一方、表示制御装置3は、障害物が自車両1に接近していると判定した場合、処理をステップS20に進める。
【0034】
ステップS20にて、表示制御装置3は、障害物検出装置6から伝送される情報に基づき、自車両1と障害物との位置関係、距離、進行方向、相対速度などから、障害物が表示エリアに侵入する箇所を予測し、さらに、障害物が表示エリアに侵入するまでの進捗度を算出する。そして、表示制御装置3は、障害物が表示エリアに侵入することが予測される位置に、進捗度に応じた長さの矢印50が表示されるように画像データを生成する。そして、その画像データに基づき、HUD2が画像光をウィンドシールド4に投射し、表示エリアに障害物が侵入することが予測される位置に、進捗度に応じた長さの矢印50を表示する。
【0035】
次にステップS30にて、表示制御装置3は、障害物が表示エリアに侵入するまでの進捗度を所定の制御時間間隔で繰り返し算出する。そして、表示制御装置3は、その算出された進捗度に応じて矢印50の長さを変更した画像データを生成する。そして、その画像データに基づき、HUD2が画像光をウィンドシールド4に投射し、表示エリアに障害物が侵入することが予測される位置に、進捗度に応じた長さの矢印50を表示する。なお、表示制御装置3が所定の制御時間間隔で進捗度を繰り返し算出するのは、障害物の挙動によっては、進捗度がリニアに変化するとは限らず、例えば、途中で進捗度が早くなることや、止まることや、遅くなることがあるからである。
【0036】
続いてステップS40にて、表示制御装置3は、障害物が表示エリアに侵入し、矢印50と重なったか否かを判定する。表示制御装置3は、障害物と矢印50とが重なっていないと判定した場合、このステップS40の処理を繰り返し実行する。一方、表示制御装置3は、障害物と矢印50とが重なったことを判定した場合、処理をステップS50に進める。
【0037】
ステップS50にて、表示制御装置3は矢印50の表示を消す。すなわち、HUD2は画像光の投射による矢印50の表示を終了する。
【0038】
以上説明した第1実施形態の車両用表示システムは、次の作用効果を奏することができる。
【0039】
(1)本実施形態の車両用表示システムは、障害物が表示エリアに接近する場合、障害物が表示エリアに侵入することが予測される位置に所定の画像5を表示し、且つ、その障害物が表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて所定の画像5の表示態様を変化させる。これによれば、運転者は、障害物があとどれくらいで表示エリアに侵入するかを認識することが可能となる。そのため、障害物が表示エリアに侵入する場合、運転者は、画像5の位置及び表示態様から障害物の挙動を予測でき、その障害物の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。したがって、この車両用表示システムは、運転の安全性をより高めることができる。
【0040】
(2)本実施形態において、進捗度とは、自車両1と障害物との位置関係、距離、進行方向、相対速度を含む情報によって障害物が表示エリアに侵入することが判定されてから表示エリアに到達するまでの到達度合とされる。これによれば、例えば障害物が表示エリアに接近する速度が変化するなど、障害物の挙動が安定しない場合にも、運転者は、所定の画像5の表示態様から、障害物が表示エリアに侵入する到達度合を認識することが可能となる。
【0041】
(3)本実施形態において、進捗度とは、障害物が表示エリアに侵入するまでの予測時間または距離としてもよい。これによれば、運転者は、所定の画像5の表示態様から、障害物が表示エリアに侵入するまでの予測時間または距離を認識することが可能となる。
【0042】
(4)本実施形態では、所定の画像5の表示態様として、画像5の大きさ、長さ又は色を進捗度に応じて変化させる。これによれば、運転者は、所定の画像5の表示態様の変化により、障害物が表示エリアに侵入するまでの進捗度を直感的に認識することが可能となる。
【0043】
(5)本実施形態では、表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に所定の画像5を表示し、所定の画像5と障害物とが重なる場合に所定の画像5の表示を消し、その障害物が表示エリアの外側に移動すると所定の画像5を再表示する。
これによれば、仮に表示エリアの外縁に所定の画像5を表示した場合、表示エリアの外縁を跨いで障害物が行き来を繰り返すと、所定の画像5を消すタイミングと、画像5を再表示するタイミングとが近くなり、表示のちらつきが生じることになる。
それに対し、本実施形態では、表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に所定の画像5を表示することで、所定の画像5を消すタイミングと、画像5を再表示するタイミングとに、表示エリアの外縁と画像5との間の距離分のヒステリシスを設けることが可能となる。そのため、表示エリアの外縁を跨いで障害物が行き来を繰り返す場合でも、画像5が短時間で表示と非表示が頻繁に切り替わるといった表示のちらつきを防ぐことができる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態に対して、自車両1の後方から障害物としての他車両10が自車両1を追い越す場合に、その自車両1に搭載された車両用表示システムが実行する画像表示について説明するものである。なお、第2実施形態の車両用表示システムの構成および制御方法は、第1実施形態で説明したものと実質的に同一である。
【0045】
図7~
図10は、左車線11を走行する自車両1と、その車線の右側の車線12を走行する他車両10について、他車両10が自車両1を追い越す様子を一定の時間経過ごとに示している。なお、
図8および
図9に示した状態は、自車両1のバックミラーおよびサイドミラーの死角に他車両10の少なくとも一部が入っている状態にある。
【0046】
この場合にも、車両用表示システムは、第1実施形態で説明した制御方法と同じく、他車両10が表示エリアに侵入することが予測される位置に所定の画像5を表示し、且つ、その他車両10が表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて所定の画像5の表示態様を変化させる。そのため、自車両1の運転者は、他車両10があとどれくらいで表示エリアに侵入するかを認識できるので、他車両10の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。
【0047】
次に、上記
図7~
図10に示した状況において、自車両1に搭載された車両用表示システムが実行する画像表示について、
図11~
図14を参照して説明する。
【0048】
図11~
図14は、自車両1の運転者からウィンドシールド4を通して視認される車外の実景の一例を示したものである。
図11~
図14は、それぞれ、
図7~
図10に対応する状態を示している。なお、
図11~
図14では、自車両1の運転者からウィンドシールド4を通して見えない領域を走行する他車両10を、説明のために破線で示している。
【0049】
図11に示すように、自車両1の運転者は、自車両1の右後方を走行する障害物としての他車両10を、フロントウィンドシールド4を通しては視認できない。この場合にも、表示制御装置3は、障害物検出装置6から伝送される情報により、他車両10が自車両1に接近していることが判定された場合、その他車両10が表示エリアに侵入することが予測される位置に、所定の画像5の一例としての矢印50を表示する。このとき、表示制御装置3は、他車両10が表示エリアに侵入するまでの進捗度を算出し、矢印50の長さを決定する。
図11では、矢印50の長さが比較的長く表示されている。なお、第2実施形態においても、矢印50は、表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に表示されている。
【0050】
続いて、
図12に示すように、自車両1の後方から接近する他車両10は、次第に自車両1に接近している。このとき、自車両1のバックミラーおよびサイドミラーの死角に他車両10の少なくとも一部が入っている状態にある。表示制御装置3は、障害物検出装置6から伝送される情報に基づき、他車両10が表示エリアに侵入するまでの進捗度に応じて、矢印50の長さを可変する。
図12では、矢印50の長さが
図11に示したものよりも短く表示されている。すなわち、矢印50が短く表示されることで、運転者は、
図11で示した状態に比べて、進捗度が進んでいることを認識できる。
【0051】
続いて、
図13に示すように、自車両1の前方を走行する他車両10は、さらに自車両1に接近し、その一部がウィンドシールド4内に入っている。
図13では、矢印50の長さが
図12に示したものより、さらに短く表示されている。このように、矢印50の長さが、さらに短く表示されていることで、運転者は、
図12で示した状態に比べて、進捗度がさらに進んでいることを認識できる。これにより、運転者は、矢印50の位置及び長さから他車両10の挙動を予測でき、その他車両10の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。例えば、自車両1の走行車線に他車両10が割り込んでくる場合にも、運転者は、その他車両10の挙動に対して余裕をもって対処することが可能となる。
【0052】
なお、矢印50は、表示エリアの外縁から所定距離離れた位置に表示されているので、
図13の状態では、他車両10と矢印50とが重なっていない。そのため、矢印50は継続して表示されている。
【0053】
続いて、
図14に示すように、他車両10は、自車両1を追い越してゆく。
図14の状態では、他車両10と矢印50の表示位置とが重なることから、表示制御装置3は矢印50の表示を消している。
【0054】
なお、図示は省略するが、
図14に示す状態から、自車両1の加速または他車両10の減速などにより、表示エリアの外に他車両10が移動すると、表示制御装置3は矢印50を再表示する。これにより、表示エリアの外縁付近において、表示エリアの外縁を跨いで障害物が行き来を繰り返す場合でも、矢印50の画像表示が短時間で表示と非表示が頻繁に切り替わるといった表示のちらつきを防ぐことができる。
【0055】
以上説明した第2実施形態の車両用表示システムも、第1実施形態のシステムと同一の構成及び制御方法により、第1実施形態の車両用表示システムと同一の作用効果を奏することができる。
【0056】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、車両用表示システムが表示する所定の画像5を矢印記号として説明したが、これに限らず、HUD2が表示する画像5は、例えば円形状、多角形状または逆V字形など、種々の形状のものを採用してもよい。
【0057】
(2)また、上記各実施形態では、車両用表示システムは、進捗度に応じた画像5の表示態様として、画像5の長さを変化させることを説明したが、これに限らず、例えば、画像5の表示態様として、画像5の大きさ、太さ、色または輝度などを変化させてもよい。
【0058】
(3)また、上記各実施形態では、車両用表示システムは、進捗度が進むにつれて矢印の長さを短くしたが、これに限らず、例えば、進捗度が進むにつれて矢印の長さを長くしてもよい。
【0059】
(4)また、上記各実施形態では、車両用表示システムは、表示装置としてHUD2を例にして説明したが、これに限らず、例えば、表示装置はウィンドシールドディスプレイ、または、ウィンドシールド4に設置した薄膜のトランジスタ(TFT:Thin Film Transistorsの略)を用いてもよい。
【0060】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0061】
本発明に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
2 表示装置(HUD)
3 表示制御装置
4 フロントウィンドシールド
5 画像
6 障害物検出装置
21 表示エリア