IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用工具の収納構造 図1
  • 特許-車両用工具の収納構造 図2
  • 特許-車両用工具の収納構造 図3
  • 特許-車両用工具の収納構造 図4
  • 特許-車両用工具の収納構造 図5
  • 特許-車両用工具の収納構造 図6
  • 特許-車両用工具の収納構造 図7
  • 特許-車両用工具の収納構造 図8
  • 特許-車両用工具の収納構造 図9
  • 特許-車両用工具の収納構造 図10
  • 特許-車両用工具の収納構造 図11
  • 特許-車両用工具の収納構造 図12
  • 特許-車両用工具の収納構造 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用工具の収納構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/06 20060101AFI20240910BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B60R11/06
B60R7/04 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021150132
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023042796
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔一
(72)【発明者】
【氏名】金 青海
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034615(JP,A)
【文献】実開昭63-085454(JP,U)
【文献】特開2000-085485(JP,A)
【文献】特開2011-116263(JP,A)
【文献】実開平02-063271(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/06
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の一端側にフック部を備える長軸の車両用工具を収納する、車両用工具の収納構造であって、
上記車両用工具のための収納空間を形成する収納凹部を備え、
上記収納凹部には、上記車両用工具の上記フック部が引っ掛けられる引っ掛け部と、上記車両用工具の上記軸部の他端側が差し込まれる差し込み部と、上記車両用工具をガイドするガイド部と、が設けられており、
上記ガイド部は、上記フック部を上記引っ掛け部に向けて動かす収納操作時にこのフック部に接触する接触ガイド面を有し、上記フック部が上記接触ガイド面に沿って摺動する動作を上記軸部の他端側が上記差し込み部に差し込まれる動作に変換することにより上記車両用工具を収納位置までガイドするように構成されており、
上記ガイド部の上記接触ガイド面は、上記フック部が摺動するにつれて上記フック部の摺動方向に対する傾斜角度が大きくなるように構成されている、車両用工具の収納構造。
【請求項2】
上記収納凹部の上記引っ掛け部と上記差し込み部との間には、上記車両用工具の上記軸部を上記収納位置において複数の保持爪によって挟持する挟持部が設けられている、請求項1に記載の、車両用工具の収納構造。
【請求項3】
上記差し込み部は、上記車両用工具の上記軸部を軸方向について支持する支持部を有する、請求項1または2に記載の、車両用工具の収納構造。
【請求項4】
上記収納凹部は、車両の内装トリムに一体化されている、請求項1~のいずれか一項に記載の、車両用工具の収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用工具の収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される車両用工具の1つである牽引フックが知られている。牽引フックは、車両を牽引する場合に使用されるものであり、トーイングフックとも称される。牽引フックは、車両に取り付けられる棒状の軸部と、牽引ロープが引っ掛けられる環状のリング部と、を有する長軸の工具である。
【0003】
牽引フックは、車両出荷状態で標準搭載されるのが一般的であり、不使用時には車両から取り外されて収納される。牽引フックの収納先として、ジャッキ等の別工具の収納のためのラゲージボックスや工具袋などを使用することができる。ところが、別工具の搭載のオプション化が進むことに伴い、ラゲージボックスや工具袋などの廃止が想定されるところ、牽引フックのための専用の収納構造が必要になる。
【0004】
下記の特許文献1には、この種の工具の収納構造が開示されている。この収納構造は、車両のトリムに凹状に形成された収納凹部を有する。この収納凹部には、工具のリング部を引っ掛けることができるように上方に突出したフックと、工具の軸部の先端側のボルト部を差し込むための差し込み部と、が設けられている。工具の収納操作は、そのリング部をフックに引っ掛けるとともに、そのボルト部を差し込み部に上方よりスライドさせて差し込むことによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-34615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の収納構造は、牽引フックのような工具を収納するのに有効である。ところが、工具を収納するときには、リング部がフックに近づくように工具を水平に動かす第1の操作と、リング部がフックを乗り越えるように工具を上方に持ち上げる第2の操作と、リング部がフックに完全に引っ掛かり且つボルト部が差し込み部に差し込まれるように工具を上方から下方に向けて押下げる第3の操作と、を複合的に行う必要がある。このように工具の収納操作が複雑化して難しくなると収納に要する時間がかかるためユーザにとって使い勝手が悪いという問題が生じ得る。このため、この種の収納構造の設計に際しては、牽引フックのような長軸の工具の収納操作を簡単に行うことができるようにするために改善の余地がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、長軸の車両用工具を簡単な操作で車両に収納できる、車両用工具の収納構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
軸部の一端側にフック部を備える長軸の車両用工具を収納する、車両用工具の収納構造であって、
上記車両用工具のための収納空間を形成する収納凹部を備え、
上記収納凹部には、上記車両用工具の上記フック部が引っ掛けられる引っ掛け部と、上記車両用工具の上記軸部の他端側が差し込まれる差し込み部と、上記車両用工具をガイドするガイド部と、が設けられており、
上記ガイド部は、上記フック部を上記引っ掛け部に向けて動かす収納操作時にこのフック部に接触する接触ガイド面を有し、上記フック部が上記接触ガイド面に沿って摺動する動作を上記軸部の他端側が上記差し込み部に差し込まれる動作に変換することにより上記車両用工具を収納位置までガイドするように構成されており
上記ガイド部の上記接触ガイド面は、上記フック部が摺動するにつれて上記フック部の摺動方向に対する傾斜角度が大きくなるように構成されている、車両用工具の収納構造、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様において、車両用工具の収納構造は、車両用工具のための収納空間を形成する収納凹部を備えている。この収納凹部には、引っ掛け部と差し込み部とガイド部が設けられている。車両用工具は、そのフック部が引っ掛け部に引っ掛けられ、その軸部の他端側が差し込み部に差し込まれることによって、収納凹部の収納空間に収納される。
【0010】
ここで、ガイド部は、車両用工具をガイドする機能を果たす。すなわち、車両用工具の収納操作時にフック部を引っ掛け部に向けて動かしガイド部の接触ガイド面に接触させた状態でこの接触ガイド面に沿って摺動させると、その摺動動作が軸部の他端側の差し込み部に対する差し込み動作に変換されて、車両用工具がそのまま収納位置までガイドされるようになっている。このため、ユーザは車両用工具のフック部をガイド部の接触ガイド面に沿って摺動させる簡単な操作を利用して、車両用工具を収納位置までガイドして収納することが可能である。このとき、車両用工具の収納操作が複雑化して難しくなるのを防いで収納に要する時間を抑えることができるためユーザにとって使い勝手が良いという利点がある。
【0011】
以上のごとく、上述の態様によれば、長軸の車両用工具を簡単な操作で収納できる、車両用工具の収納構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の車両用工具の収納構造が車両のデッキサイドトリムに設けられている様子を示す斜視図。
図2】実施形態1にかかる車両用工具の平面図。
図3】実施形態1の車両用工具の収納構造の平面図。
図4図3のIV-IV線矢視断面図。
図5図4中のA領域を拡大して示す断面図。
図6図4中のB領域を拡大して示す断面図。
図7図3のVII-VII線矢視断面図。
図8図4において工具を第1の収納操作で収納するときの様子を示す断面図。
図9図4において工具を第1の収納操作とは別の第2の収納操作で収納するときの様子を示す断面図。
図10】実施形態2の車両用工具の収納構造について、図6に対応した断面図。
図11】実施形態3の車両用工具の収納構造が車両の荷室の床下空間に格納されている様子を示す斜視図。
図12】実施形態3の車両用工具の収納構造の平面図。
図13図2の車両用工具とは別形状の車両用工具の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上記態様の、車両用工具の収納構造において、上記ガイド部の上記接触ガイド面は、上記フック部が摺動するにつれて上記フック部の摺動方向に対する傾斜角度が大きくなるように構成されているのが好ましい。
【0015】
この収納構造によれば、工具のフック部の摺動方向に対する接触ガイド面の傾斜角度を、フック部が摺動するにつれて大きくなるようにすることによって、工具のフック部の摺動動作を軸部の他端側の差し込み部に対する差し込み動作に円滑に変換することができる。
【0016】
上記態様の、車両用工具の収納構造において、上記収納凹部の上記引っ掛け部と上記差し込み部との間には、上記車両用工具の上記軸部を上記収納位置において複数の保持爪によって挟持する挟持部が設けられているのが好ましい。
【0017】
この収納構造によれば、車両用工具が収納位置にあるときその軸部が挟持部の複数の保持爪によって挟持されるため、車両用工具を収納位置で保持する保持力を高めることができる。
【0018】
上記態様の、車両用工具の収納構造において、上記差し込み部は、上記車両用工具の上記軸部を軸方向について支持する支持部を有するのが好ましい。
【0019】
この収納構造によれば、車両用工具の軸部の他端側が差し込み部に差し込まれた状態で、車両用工具が軸方向に動くのを支持部によって規制することができる。
【0020】
上記態様の、車両用工具の収納構造において、上記収納凹部は、車両の内装トリムに一体化されているのが好ましい。
【0021】
この収納構造によれば、車両の内装トリムの一部を利用して収納凹部を構築することができる。
【0022】
以下、車両用工具の収納構造の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
この実施形態の説明のための図面において、特に断わらない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示すものとする。また、車高方向である第1方向を矢印Xで示し、車幅方向である第2方向を矢印Yで示し、車長方向である第3方向を矢印Zで示している。
【0024】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の車両用工具の収納構造(以下、単に「収納構造」という。)101は、車両用工具10(図2を参照)を収納するための構造である。この収納構造101は、車両用工具(以下、単に「工具」という。)10のための収納空間Sを形成する有底状の収納凹部5と、収納凹部5を塞ぐカバー部材6と、を備えている。
【0025】
収納凹部5は、車両1の内装トリム4に一体化されている。内装トリム4は、車両1の後席2よりも後方の荷室3の側面を形成するデッキサイドトリムである。収納凹部5は、内装トリム4と同一の樹脂材料によって構成されている。収納凹部5は、カバー部材6が取り外された状態でその開口面が荷室3に対して横向きに開口している。なお、必要に応じてカバー部材6を省略することもできる。
【0026】
(工具10の構造)
図2に示されるように、工具10は、「牽引フック」と称される長軸の工具である。この工具10は、車両1に取り付けられる棒状の軸部11と、牽引ロープ(図示省略)が引っ掛けられるフック部12と、を有する。軸部11は、軸方向に延びている。フック部12は、貫通状の挿入空間12aを有する。
【0027】
工具10は、軸部11の一端11a側に環状をなすフック部12を備え、軸部11の他端11b側にネジ部13を備えている。フック部12によって区画される挿入空間12aには、後述の引っ掛け部20が挿入される。車両1側に設けられた被取付部(図示省略)にネジ部13を螺合させることによって、工具10を使用時に車両1に取り付けることができる。
【0028】
図3に示されるように、工具10は、収納構造101に凹状に設けられた収納凹部5の収納空間Sに収納される。図3には、工具10が予定の収納位置P2に最終的に配置された収納完了状態を示している。収納凹部5には、引っ掛け部20と、差し込み部30と、ガイド部40と、挟持部50と、が設けられている。また、収納凹部5には、製造上の理由により貫通穴5a,5bが形成されている。
【0029】
引っ掛け部20は、工具10のフック部12が引っ掛けられる部位である。差し込み部30は、工具10の軸部11のうち他端11b側に設けられたネジ部13が差し込まれる部位である。ガイド部40は、工具10を収納時にガイドする部位である。挟持部50は、工具10の軸部11を保持する部位である。挟持部50は、第1方向Xについて引っ掛け部20と差し込み部30との間に設けられている。
【0030】
(引っ掛け部20の構造)
図4及び図5に示されるように、引っ掛け部20は、全体的な形状として、収納凹部5の底面から車両内方へ突出し、且つその突出部が更に車両上方へ突出した、略L字の突出形状を有する。すなわち、引っ掛け部20は、第2方向Yに延びる第1突出部21と、第1突出部21から上方へ延びる第2突出部22と、を有する。このため、フック部12を引っ掛け部20に向けて動かして、引っ掛け部20を第1突出部21側から挿入空間12aに挿入すれば、フック部12は引っ掛け部20に引っ掛けられて引っ掛け部20によって保持される。
【0031】
(ガイド部40の構造)
図4及び図5に示されるように、ガイド部40は、工具10をガイドする機能を有する部位であり、引っ掛け部20と対向する位置に接触ガイド面41を有する。接触ガイド面41は、工具10のフック部12を引っ掛け部20に向けて動かす収納操作時にこのフック部12に接触する接触面である。
【0032】
図5に示されるように、引っ掛け部20とガイド部40との間にフック部12をガイドするためのガイド空間42が形成されている。このため、ガイド空間42は、フック部12の通過を許容する大ききを有する。
【0033】
ガイド部40の接触ガイド面41は、ガイド空間42の上側を区画する面であり、第2方向Yに繋がって延びる第1係合面41a及び第2係合面41bによって構成されている。接触ガイド面41は、第2係合面41bと第1係合面41aとの境界部分で屈曲している。このため、この接触ガイド面41において、第2係合面41bは第1係合面41aに比べて水平方向に対して大きく傾斜しており相対的に傾斜角度が大きい。すなわち、接触ガイド面41は、工具10のフック部12が摺動するにつれてフック部12の摺動方向に対する傾斜角度が大きくなるように構成されている。
【0034】
工具10の収納操作時にフック部12の上側円弧部分が車両外方へ動いて第1位置Q1に到達したとき、フック部12の上側円弧部分の上面が先ず接触ガイド面41の第1係合面41aに接触する。そして、フック部12の上側円弧部分が第1位置Q1から更に車両外方へ動くときに、その上面が接触ガイド面41の第1係合面41aに沿って摺動することにより第2位置Q2に向けてガイドされる。
【0035】
フック部12が第1位置Q1から第2位置Q2に至る過程で、その上側円弧部分の上面である摺動面が接触ガイド面41の第1係合面41aから第2係合面41bへと移動する。これにより、フック部12の上側円弧部分の摺動方向は、第1係合面41aよりも水平方向に対する傾斜が大きい第2係合面41bの傾斜角度に応じて斜め下向きに変化する。このとき、第1係合面41aから第2係合面41bへの移動に伴って、工具10の下向きの移動量が増える。
【0036】
その結果、工具10のフック部12は、接触ガイド面41によって第1位置Q1から第2位置Q2までガイドされる。フック部12の第2位置Q2は、工具10自体の収納位置P2に相当する。このため、ガイド部40は、フック部12の上側円弧部分が接触ガイド面41に沿って摺動することにより工具10を収納位置P2までガイドするように構成されている。
【0037】
(差し込み部30の構造)
図4及び図6に示されるように、差し込み部30は、工具10の軸部11の他端11b側に設けられているネジ部13が差し込まれる部位である。差し込み部30は、開口形状が円形である貫通穴31を有する。また、収納凹部5の内壁面には段差部7が設けられている。
【0038】
図6に示されるように、ネジ部13が貫通穴31に傾いて挿入された状態で、軸部11のうちネジ部13との境界部分である他端11bが段差部7に係合して引っ掛かると、軸部11は一時的に第1位置R1に保持されるように構成されている。一方で、軸部11は、他端11bと段差部7との係合が解除されて、ネジ部13が貫通穴31に完全に挿入された状態では、第2位置R2に配置されるように構成されている。軸部11の第1位置R1は、フック部12の第1位置Q1に相当し、軸部11の第2位置R2は、フック部12の第2位置Q2に相当する。
【0039】
図6に示されるように、貫通穴31の内径は、ネジ部13の挿入を許容する一方で、軸部11の挿入を阻止するように寸法設定されている。このため、軸部11とネジ部13との間の境界部分が段差部7から外れて軸部11が第2位置R2に配置されると、この境界部分が貫通穴31の穴縁31aに引っ掛かり、工具10のそれ以上の挿入動作が阻止されるように構成されている。ネジ部13が貫通穴31に完全に挿入された状態で、その貫通穴31の穴縁31aは、工具10の軸部11を軸方向について支持する支持部としての機能を果たす。軸部11の第2位置R2は、フック部12の第2位置Q2に相当し、工具10自体の収納位置P2に相当する。
【0040】
(挟持部50の構造)
図4及び図7に示されるように、挟持部50は、収納凹部5の引っ掛け部20と差し込み部30との間に設けられている。この挟持部50は、工具10の軸部11を挟持する機能を有する。この挟持部50は、第3方向Zに撓み変形可能に向かい合う2つの保持爪51によって構成されている。なお、保持爪51の数は2つの限定されるものではなく、必要に応じて3つ以上に増やすこともできる。
【0041】
図7に示されるように、各保持爪51は、収納凹部5側から延出先端部52まで車両内方に延出しており、しかも、その延出先端部52よりも内側の突出先端部53まで突出した突出形状をなしている。2つの保持爪51は、2つの突出先端部53の間の距離d2が2つの延出先端部52の間の距離d1を下回るように構成されている。距離d1は工具10の軸部11の外径よりも大きく、距離d2は工具10の軸部11の外径よりも小さい。また、各保持爪51は、延出先端部52と突出先端部53を概ね直線状に結ぶ傾斜面54を有する。
【0042】
工具10の軸部11が第1位置R1から第2位置R2まで動くとき、2つの保持爪51のそれぞれの傾斜面54が軸部11によって押圧される。これにより、2つの保持爪51は、初期位置(図7中の実線で示される位置)から第3方向Zに互いに離間するように撓み変形して、拡径位置(図7中の二点鎖線で示される位置)に配置される。2つの保持爪51が拡径位置にあるとき、2つの突出先端部53の間の距離d2が2つの延出先端部52の間の距離d1に相当する程度まで拡張される。そして、軸部11が各傾斜面54を通過して保持空間55に導入されることに伴って、2つの保持爪51が拡径位置から初期位置に復帰する。工具10の軸部11は、保持空間55において2つの保持爪51から挟み込む方向の荷重を受ける。
【0043】
次に、図5図9を参照しながら、ユーザが工具10を収納凹部5の収納空間Sに収納する収納操作について説明する。本実施形態の場合、例えば、図8に示される第1の収納操作や、図9に示される第2の収納操作を使用することができる。
【0044】
図8に示されるように、第1の収納操作は、工具10の回動動作を利用した収納操作である。この第1の収納操作は、工具10を初期位置P0から中間位置P1を経て収納位置P2まで動かす操作によって実現される。
【0045】
ここで、工具10が初期位置P0にあるとき、この工具10のフック部12は初期位置Q0にあり、この工具10の軸部11は初期位置R0にある。工具10が中間位置P1にあるとき、この工具10のフック部12は第1位置Q1にあり、この工具10の軸部11は第1位置R1にある。工具10が収納位置P2にあるとき、この工具10のフック部12は第2位置Q2にあり、この工具10の軸部11は第2位置R2にある。
【0046】
第1の収納操作において、ユーザは、先ず、工具10を手指で把持して斜めにした状態で、ネジ部13が貫通穴31に挿入されるように狙いを定めて、収納凹部5に向けて動かす。工具10は、ネジ部13が貫通穴31に斜めに挿入され且つ他端11bが段差部7に係合することにより、初期位置P0に配置される。その後、この工具10は、ユーザがフック部12を軸部11の他端11bを回動中心とし且つ段差部7を回動支点とした回動軌跡Lに沿ってガイド部40に向けて回動させることにより、中間位置P1に配置される。
【0047】
図5に示されるように、中間位置P1にある工具10は、フック部12の上側円弧部分がユーザによってガイド空間42に押し込まれる動きに伴って、収納位置P2までガイドされる。すなわち、前述のように、フック部12の上側円弧部分が接触ガイド面41に沿って第1位置Q1から第2位置Q2まで摺動することで、工具10が中間位置P1から収納位置P2まで自動的にガイドされる。
【0048】
このとき、図6に示されるように、フック部12の上側円弧部分が接触ガイド面41によって下向きの押圧荷重を受けることにより、軸部11の他端11bと段差部7との係合が解除されて、軸部11が第1位置R1から第2位置R2まで下降する。軸部11が第2位置R2まで下降することにより、ネジ部13が貫通穴31に完全に挿入された状態になる。また、このとき、図7に示されるように、工具10の軸部11は、第2位置R2において保持空間55に導入されて2つの保持爪51によって挟み込まれる。
【0049】
第1の収納操作を使用する場合、工具10の回動動作を利用することによって、工具10を初期位置P0から中間位置P1まで簡単に動かすことができるという利点がある。また、引っ掛け部20よりも高所に工具10のフック部12を上方に大きく動かすためのスペースを要しない。このため、引っ掛け部20よりも高所にこのようなスペースを確保するための設計上の制約がないという利点がある。
【0050】
図9に示されるように、第2の収納操作は、工具10のスライド動作を利用した収納操作である。この第2の収納操作は、工具10の初期位置P0と、工具10の初期位置P0から中間位置P1までの軌跡について、第1の収納操作とは異なるものである。これに対して、工具10の中間位置P1から収納位置P2までの動きは、第1の収納操作の場合と同じである。このため、工具10の中間位置P1から収納位置P2までの動きについての説明は省略する。
【0051】
第2の収納操作において、ユーザは、先ず、工具10を手指で把持して若干傾けた状態で、フック部12の上面が引っ掛け部20よりも上方に位置する初期位置P0に配置する。その後、この工具10は、ユーザがフック部12の上側円弧部分をガイド空間42に向けて斜め下方に動かすことにより、中間位置P1に配置される。その後の工具10の動きは、第1の収納操作の場合と同様である。
【0052】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0053】
実施形態1の収納構造101は、工具10のための収納空間Sを形成する収納凹部5を備えている。この収納凹部5には、引っ掛け部20と差し込み部30とガイド部40が設けられている。工具10は、そのフック部12が引っ掛け部20に引っ掛けられ、その軸部11の他端側のネジ部13が差し込み部30に差し込まれることによって、収納凹部5の収納空間Sに収納される。
【0054】
ここで、ガイド部40は、工具10をガイドする機能を果たす。すなわち、工具10の収納操作時にフック部12を引っ掛け部20に向けて動かしガイド部40の接触ガイド面41に接触させた状態でこの接触ガイド面41に沿って摺動させると、その摺動動作がネジ部13の差し込み部30に対する差し込み動作に変換されて、工具10がそのまま収納位置P2までガイドされるようになっている。このため、ユーザは工具10のフック部12をガイド部40の接触ガイド面41に沿って摺動させる簡単な操作を利用して、工具10を収納位置P2までガイドして収納することが可能である。このとき、工具10の収納操作が複雑化して難しくなるのを防いで収納に要する時間を抑えることができるため、ユーザにとって使い勝手が良いという利点がある。
【0055】
したがって、実施形態1によれば、工具10を簡単な操作で収納できる収納構造101を提供することができる。
【0056】
実施形態1の収納構造101によれば、工具10のフック部12の摺動方向に対する接触ガイド面41の傾斜角度を、フック部12が摺動するにつれて大きくなるようにすることによって、工具10のフック部12の摺動動作をネジ部13の差し込み部30に対する差し込み動作に円滑に変換することができる。
【0057】
実施形態1の収納構造101によれば、工具10が収納位置P2にあるときその軸部11が挟持部50の2つの保持爪51によって挟持されるため、工具10を収納位置P2で保持する保持力を高めることができる。
【0058】
実施形態1の収納構造101によれば、工具10の軸部11の他端側であるネジ部13が差し込み部30の貫通穴31に差し込まれた状態で、工具10が軸方向に動くのを支持部である穴縁31aによって規制することができる。
【0059】
実施形態1の収納構造101によれば、車両1の内装トリム4の一部を利用して収納凹部5を構築することができる。
【0060】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0061】
(実施形態2)
図10に示されるように、実施形態2の収納構造102は、差し込み部130の構造についてのみ、実施形態1の収納構造101のものと相違している。差し込み部130は、収納凹部5に凹状に設けられた挿入凹部131を有する。挿入凹部131の開口径は、ネジ部13の挿入を許容する一方で、軸部11の挿入を阻止するように寸法設定されている。また、挿入凹部131の開口深さは、ネジ部13の軸長を上回るように寸法設定されている。ネジ部13が挿入凹部131に完全に挿入された状態で、その挿入凹部131の開口縁131aは、工具10の軸部11を軸方向について支持する支持部としての機能を果たす。
【0062】
実施形態2の収納構造102によれば、実施形態1の収納構造101の差し込み部30とは構造が異なる差し込み部130を実現することができる。
【0063】
(実施形態3)
図11に示されるように、実施形態3の収納構造103において、収納凹部5は、荷室3のカーペット8の下方の床下空間に格納される工具用トレイとして構成されている。この収納凹部5は、実施形態1の収納構造101とは異なり、内装トリム4とは別体の部材として構成されており、スペアタイヤの上方の格納スペースに格納された状態でカーペット8により覆われている。このため、カーペット8を捲ることによって、必要に応じて収納凹部5ごと格納スペースから取り出すことができるようになっている。収納凹部5は横置きであり、カーペット8が捲られた状態で収納凹部5の開口面が荷室3に対して上向きに開口している。
【0064】
図12に示されるように、収納構造103の収納凹部5は、内装トリム4とは別体の部材であって横置きである以外は、収納構造101の収納凹部5と実質的に同様の構造を有する。
【0065】
実施形態3の収納構造103によれば、収納凹部5を予め車両1から取り出し、この収納凹部5に工具10を収納した後で、この収納凹部5を車両1の格納スペースに格納することができる。このため、ユーザは工具10の収納操作を簡単に行うことができる。また、車両1に予めセットされた収納凹部5に工具10を収納するようにしてもよい。
【0066】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0067】
上述の実施形態では、環状のフック部12を有する工具10を収納凹部5に収納する場合について例示したが、フック部12の形状は環状のみに限定されるものではない。例えば、図13に示されるように、鉤状のフック部12Aを有する工具10Aを収納凹部5に収納するようにしてもよい。工具10Aはフック部12Aの形状が環状でない点が工具Aと相違している。
【0068】
上述の実施形態では、収納凹部5に挟持部50を設ける場合について例示したが、必要に応じて挟持部50を省略してもよい。
【0069】
上述の実施形態では、ガイド部40の接触ガイド面41を傾斜角度の異なる第1係合面41a及び第2係合面41bによって構成する場合について例示したが、これに代えて、第1係合面41aと第2係合面41bの傾斜角度を同じにした構造や、接触ガイド面41互いに傾斜角度の異なる3つ以上の係合面によって構成する構造、接触ガイド面41の一部または全部を湾曲面とする構造などを採用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 車両
4 内装トリム
5 収納凹部
10,10A 車両用工具
11 軸部
11a 一端
11b 他端
12,12A フック部
20 引っ掛け部
30 差し込み部
31 貫通穴
31a 穴縁(支持部)
40 ガイド部
41 接触ガイド面
50 挟持部
51 保持爪
101,102,103 車両用工具の収納構造
130 差し込み部
131 挿入凹部
131a 開口縁(支持部)
P2 収納位置
S 収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13