(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240910BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20240910BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B60R1/00
G02B5/04 A
G02B5/04 F
(21)【出願番号】P 2021169515
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 真俊
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 和幸
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6372305(JP,B2)
【文献】特開2016-2975(JP,A)
【文献】特開2015-24798(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057000(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0146229(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112606768(CN,A)
【文献】特開2023-28532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
G02B 6/00
G02B27/00
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者(10)の視界の範囲内に設けられた障害物(12)によって前記視認者の死角となる領域(13)の外景像を前記視認者に表示することの可能な光学装置であって、
死角領域から到来する外景光(LV)が入射される入射面(2a)と、複数の平坦部(3)および複数のプリズム部(4)を有し、前記入射面から入射した外景光が最初に到達する側の第1面(2b)と、前記第1面の有する複数の前記平坦部に向き合う第2面(2c)とを有する導光体(2)と、
前記導光体の表面の一部または前記導光体から離れた位置に設けられ、前記導光体に入射する外光(LD)を遮断する遮光部(51、52)と、を備え、
前記第1面の有する複数の前記平坦部は、前記導光体の内部を進む外景光を前記第2面に向けて全反射し、
前記第2面は、複数の前記平坦部で反射した外景光を前記第1面に向けて全反射し、
前記プリズム部は、前記入射面から入射した外景光の一部および前記第2面で反射した外景光の一部を外部に射出する射出面(4a)と、前記射出面に対して前記視認者とは反対側に形成される傾斜面(4b)とを有し、
前記遮光部は、前記傾斜面に入射する外光を遮断する第1遮光部(51)と、前記平坦部に入射する所定方向の外光を遮断する第2遮光部(52)とを有し、
前記射出面の法線と前記平坦部の法線を含む断面視において、
所定の前記射出面の中心と前記視認者のアイポイント中心(15)とを結ぶ線と前記平坦部の法線とのなす角度をθ、
所定の前記射出面の中心と前記アイポイント中心との距離をL、
所定の前記射出面の中心と前記アイポイント中心とを結ぶ線に対し垂直な方向において、前記視認者のアイリプス(14)のうち前記導光体とは反対側の外縁と前記アイポイント中心との距離をDL、
θ-tan
-1(DL/L)で表される角度をθmin、
前記射出面と前記傾斜面とが交わる点(4c)を通り、θminを前記平坦部の法線に対称とした角度で前記平坦部に入射する直線を直線A、
直線Aと平行で、且つ、前記傾斜面と前記平坦部とが交わる点に入射する直線を直線B、
直線Aと前記平坦部とが交わる点を点P1、
直線Bと前記平坦部とが交わる点を点P2、
前記射出面と前記平坦部とが交わる点を点P3、
点P1と点P3との距離をFa、
点P2と点P3との距離をFbとしたとき、Fa<Fbであり、
前記第2遮光部は、直線Aと直線Bに掛かるように配置されている、光学装置。
【請求項2】
所定の前記射出面の中心と前記アイポイント中心とを結ぶ線に対し垂直な方向において、前記視認者のアイリプスのうち前記導光体側の外縁と前記アイポイント中心との距離をDR、
θ+tan
-1(DR/L)で表される角度をθmax、
前記射出面と前記平坦部とが交わる点を通り前記平坦部の法線に対して角度θmaxで前記平坦部に入射する直線を直線Cとしたとき、
前記第2遮光部は、直線Cよりも前記平坦部側の領域に配置されている、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第2遮光部と前記平坦部とは接しておらず、前記平坦部は空気と接している、請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第2遮光部と前記平坦部とは接しており、
前記導光体の内部において前記平坦部よりも前記第2面側で前記第2遮光部と対応する位置に全反射維持部(6)があり、
前記全反射維持部の屈折率は前記導光体の内部屈折率より小さく、且つ、前記全反射維持部の屈折率と前記導光体の内部屈折率との差は0.11以上である、請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第2遮光部と前記平坦部との間に全反射維持部(61)があり、
前記平坦部と前記全反射維持部とは面接触しており、
前記全反射維持部の屈折率は前記導光体の内部屈折率より小さく、且つ、前記全反射維持部の屈折率と前記導光体の内部屈折率との差は0.11以上である、請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項6】
前記第2遮光部は、前記射出面から射出されて前記視認者のアイリプスに向かう外景光が通る領域にかからないように配置されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光学装置。
【請求項7】
前記第2遮光部は、光吸収材、光拡散材および再帰性反射材のうちいずれか1つを含んで構成されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光学装置。
【請求項8】
前記導光体の内部を進む外景光において、前記平坦部に対する外景光の入射角、および、前記第2面に対する前記平坦部で反射した外景光の入射角をΦ、前記導光体の屈折率をn
1、前記導光体に接する媒質の屈折率をn
2としたとき、
前記導光体は、sinΦ>n
2/n
1 の関係を満たすように構成されている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の光学装置。
【請求項9】
前記導光体の外部から前記入射面に入射する外景光と前記平坦部の法線とのなす角度をθ
1、前記導光体の内部を進む外景光において前記平坦部に対する外景光の入射角をΦとしたとき、
前記導光体は、θ
1<Φ の関係を満たすように構成されている、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光体の入射面から入射した光を導光体の内部で伝搬し射出面から射出する光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の光学装置として、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学装置は、導光体と、半透過平面ミラーと、平面ミラーと、複数のプリズムを有するプリズムシートとを有している。導光体は、外景光が入射する入射面と、その入射面から導光体の内部に入射した外景光が最初に到達する側の第1面と、その第1面に向き合う第2面とを有している。その導光体の第1面に半透過平面ミラーが設けられ、第2面に平面ミラーが設けられている。プリズムシートは、半透過平面ミラーのうち導光体とは反対側の面に設けられている。
【0003】
この構成により、導光体の入射面から入射した外景光の一部は半透過平面ミラーによって第2面へ反射され、その反射光は平面ミラーによって第1面へ反射される。一方、半透過平面ミラーによって反射されなかった光は、その一部が半透過平面ミラーに吸収され、残部が半透過平面ミラーを透過して複数のプリズムの有する射出面から外部へ射出される。なお、プリズムの有する射出面は、複数のプリズムのうち視認者側を向く面である。これにより、視認者は、光学装置を介して外景を視認することができる。この光学装置は、例えば、所定の障害物に遮られて視認者が直接視認できない死角領域の外景をその視認者に視認させる死角補助装置として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光学装置では、半透過平面ミラーを、金属蒸着膜または誘電体多層コート膜で構成している。しかし、金属蒸着膜は光の吸収率が大きいので、半透過平面ミラーを単層の金属蒸着膜で構成すると、半透過平面ミラーでの光反射における損失が多くなり、光学装置を透過して視認者に視認される光景象が暗く見えてしまう。
【0006】
一方、誘電体多層コート膜は、単層の金属蒸着膜に比べて光の吸収率が小さい。そのため、半透過平面ミラーを誘電体多層コート膜で構成すれば、半透過平面ミラーによる光の損失を抑えることができる。しかし、誘電体多層コート膜は、金属蒸着膜よりも製造工程が多いので、光学装置の製造コストが増大してしまう。また、誘電体多層コート膜は、光の入射角や波長によって光の反射率が変化するので、視認者が導光体の第1面を見る角度によって外景の明るさや色調が変化してしまう。
【0007】
そこで、特許文献1に記載の光学装置が備える半透過平面ミラーを廃止し、その代わりに、複数のプリズム同士の間に複数の平坦部を設け、その複数の平坦部によって導光体の内部を進む外景光を全反射させるように構成することが考えられる。なお、この構成は、本開示の発明者らが創作した構成であり、従来技術ではない。
【0008】
しかしながら、発明者らの詳細な検討の結果、光学装置をそのように構成すると、次のような問題が生じることが見出された。すなわち、光学装置の射出面から視認者のアイリプスに向けて射出される外景光を平坦部の法線に対称とした角度で外光が平坦部に入射した場合、その外光は、平坦部で反射して視認者のアイリプスに到達することがある。また、その外光は平坦部から導光体の内部を伝搬した後、別の平坦部から射出されて視認者のアイリプスに到達することがある。その場合、光学装置の射出面から射出される外景光と重畳して外光が視認者に視認されることになるので、外景像の視認性が低下するといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、外景像の視認性を向上することの可能な光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明によると、光学装置は、視認者(10)の視界の範囲内に設けられた障害物(12)によって視認者の死角となる領域(13)の外景像を視認者に表示するものであり、導光体(2)と、遮光部(51、52)とを備える。導光体は、死角領域から到来する外景光(LV)が入射される入射面(2a)と、複数の平坦部(3)および複数のプリズム部(4)を有し、入射面から入射した外景光が最初に到達する側の第1面(2b)と、第1面の有する複数の平坦部に向き合う第2面(2c)とを有する。遮光部は、導光体の表面の一部または導光体から離れた位置に設けられ、導光体に入射する外光(LD)を遮断する。
第1面の有する平坦部は、導光体の内部を進む外景光を第2面に向けて全反射し、第2面は、平坦部で反射した外景光を第1面に向けて全反射する。
プリズム部は、入射面から入射した外景光の一部および第2面で反射した外景光の一部を外部に射出する射出面(4a)と、その射出面に対して視認者とは反対側に形成される傾斜面(4b)とを有する。
遮光部は、傾斜面に入射する外光を遮断する第1遮光部(51)と、平坦部に入射する所定方向の外光を遮断する第2遮光部(52)とを有する。
ここで、射出面の法線と平坦部の法線を含む断面視において、
所定の射出面の中心と視認者のアイポイント中心(15)とを結ぶ線と平坦部の法線とのなす角度をθ、
所定の射出面の中心と視認者のアイポイント中心との距離をL、
所定の射出面の中心と視認者のアイポイント中心とを結ぶ線に対し垂直な方向において、視認者のアイリプス(14)のうち導光体とは反対側の外縁とアイポイント中心との距離をDL、
θ-tan-1(DL/L)の式で表される角度をθmin、
射出面と傾斜面とが交わる点(4c)を通り、θminを平坦部の法線に対称とした角度で平坦部に入射する直線を直線A、
直線Aと平行で、且つ、傾斜面と平坦部とが交わる点に入射する直線を直線B、
直線Aと平坦部とが交わる点を点P1、
直線Bと平坦部とが交わる点を点P2、
射出面と平坦部とが交わる点を点P3、
点P1と点P3との距離をFa、
点P2と点P3との距離をFbとしたとき、Fa<Fbである。
そして、第2遮光部は、直線Aと直線Bに掛かるように配置されている。
【0011】
これによれば、第2遮光部は直線Aと直線Bに掛かるように配置されているので、直線A以上の入射角で平坦部に到来する外光が第2遮光部によって遮断され、その外光が平坦部で視認者のアイリプスに向けて反射するといったことが防がれる。また、その外光が平坦部から導光体の内部に進み第2面で反射した後、別の平坦部から視認者のアイリプスに向けて射出するといったことが防がれる。また、第1遮光部により、外光が傾斜面から導光体の内部に進み、平坦部または射出面から視認者のアイリプスに向けて射出するといったことも防がれる。そのため、視認者に表示される死角領域の外景像に外光が重畳することが抑制される。したがって、この光学装置は、視認者に対し死角領域の外景像を明瞭に表示し、その視認性を向上することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る光学装置が「視認者の視点が定まっている機器」に搭載された状態を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る光学装置の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る光学装置において外景光および外光の光路などを説明するための断面図である。
【
図6】光学装置と視認者のアイリプスとの位置関係を説明するための図である。
【
図7】比較例の光学装置において外景光および外光の光路などを説明するための断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る光学装置において、
図5に相当する箇所を示す拡大図である。
【
図9】第3実施形態に係る光学装置において、
図5に相当する箇所を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学装置について
図1~
図6を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の光学装置1は、「視認者10の視点が定まっている機器11」に搭載される。本実施形態では、そのような機器11として、車両を例にして説明する。車両には、視認者10(例えば、運転者)の前方の視界の範囲内に障害物としてのフロントピラー12が設けられている。光学装置1は、フロントピラー12の車室内側に設けられ、フロントピラー12によって視認者10の死角となる領域13(以下、単に「死角領域13」という)の外景像を視認者10に表示することの可能な死角補助装置として機能する。
【0016】
図2~
図4に示すように、光学装置1は、導光体2と遮光部51、52とを備えている。なお、
図2および
図3は、光学装置1の断面を示しているが、図を見やすくするためハッチングを省略している。このことは、後の説明で参照する
図5~
図10でも同じである。また、
図4は、
図2のIV方向から視た図であるが、遮光部51、52と導光体2を区別して見やすくするため、遮光部51、52に対して断面ではないがハッチングを付している。
【0017】
図2および
図3に示すように、導光体2は、死角領域13から到来する光(以下、「外景光LV」という)が入射される入射面2aと、その入射面2aから入射した外景光LVが最初に到達する側の第1面2bと、その第1面2bに向き合う第2面2cと、入射面2aとは反対側で第1面2bと第2面2cとを繋ぐ第3面2dを有している。また、導光体2の第1面2bは、複数の平坦部3と複数のプリズム部4とを有している。第1面2bにおいて平坦部3とプリズム部4とは交互に設けられている。さらに、プリズム部4は、視認者10側に向く射出面4aと、その射出面4aに対して視認者10とは反対側に形成される傾斜面4bとを有している。なお、各図では、説明の便宜上、複数の平坦部3と複数のプリズム部4などを実際のものよりも大きく記載している。
【0018】
導光体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料やガラスなどの透光性の材料で形成されている。
図3では、死角領域13から導光体2の入射面2aに入射し、導光体2の内部を伝搬されて射出面4aから視認者10に向けて射出される外景光LVの一例を、符号LV1、LV2、LV3を付した太線の矢印で示している。
【0019】
図3に示したように、第1面2bの有する複数の平坦部3は、導光体2の内部を進む外景光LVを第2面2cに向けて全反射する。また、第2面2cは、複数の平坦部3に向き合うように設けられ、複数の平坦部3で反射した外景光LVを第1面2bに向けて全反射する。そして、プリズム部4の射出面4aは、入射面2aから入射した外景光LVの一部と第2面2cで反射した外景光LVの一部とを外部に射出する。
【0020】
具体的に、導光体2は、次のように構成されている。まず、導光体2の外部から入射面2aに入射する外景光LVと、平坦部3の法線とのなす角度をθ1とする。また、導光体2の内部を進む外景光LVにおいて、平坦部3に対する外景光LVの入射角をΦとする。このとき、導光体2は、次の式1の関係を満たすように構成されている。
θ1<Φ ・・・(式1)
【0021】
また、導光体2の内部を進む外景光LVにおいて、平坦部3に対する外景光LVの入射角、および、第2面2cに対する平坦部3で反射した外景光LVの入射角をΦとする。また、導光体2の屈折率をn1、導光体2に接する媒質の屈折率をn2とする。このとき、導光体2は、次の式2の関係を満たすように構成されている。なお、本実施形態では、導光体2に接する媒質は空気であり、その屈折率n2は1である。
sinΦ>n2/n1 ・・・(式2)
【0022】
すなわち、導光体2は、平坦部3に対する外景光LVの入射角Φ、および、第2面2cに対する平坦部3で反射した外景光LVの入射角Φが臨界角より大きくなるように入射面2a、平坦部3、第2面2cなどの角度および導光体2の材質などが設定されている。この構成により、導光体2は、半透過ミラーおよびミラーを必要とせず、入射面2aから入射した外景光LVが複数の平坦部3および第2面2cで全反射して伝搬され、射出面4aから外部に射出される。
【0023】
また、本実施形態では、複数の平坦部3と第2面2cとは平行に形成されているので、平坦部3に対する外景光LVの入射角Φと、第2面2cに対する外景光LVの入射角Φとは同じである。なお、それに限らず、平坦部3と第2面2cは、上記式2の関係を満たす範囲で非平行としてもよい。
【0024】
上記構成により、例えば
図3に示すように、死角領域13から到来する外景光LVは、入射面2aから所定の入射角θ
1で入射して屈折し、第1面2bに進む。入射面2aから入射する外景光LVのうち最初に第1面2bの有するプリズム部4の射出面4aに到達した外景光LV2は、その射出面4aから外部に射出される。
【0025】
一方、入射面2aから入射する外景光LVのうち第1面2bの有する平坦部3に到達した外景光LV1、LV3は、外部との界面で全反射し、外部に射出されることなく、導光体2の内部を第2面2cの側に進む。第2面2cに到達した外景光LV1、LV3は、再度、外部との界面で全反射して導光体2の内部を第1面2bの側に進む。そしてその一部の外景光LV1がいずれかのプリズム部4の射出面4aから所定の射出角θ2で外部に射出され、残部の外景光LV3が平坦部3にて全反射する。
【0026】
平坦部3および第2面2cで繰り返し反射してもプリズム部4に到達しない外景光LV3は、最終的に第3面2dに到達し、残光として外部に射出される。なお、第3面2dに不図示の光吸収膜などを設けることで残光の射出を抑制してもよい。
【0027】
このように、外景光LV1、LV3は、平坦部3と第2面2cで交互に反射されて複数のプリズム部4の並ぶ方向に沿って入射面2aから遠ざかって進むことを繰り返しながら、徐々に外景光LVの一部が複数のプリズム部4から視認者10側へ射出される。これにより、導光体2から射出される外景光LV1、LV2を視認者10が視認できる領域が広がる構成となっている。
【0028】
なお、上記説明において「入射角θ1」とは、入射面2aへの外景光LVの入射方向と平坦部3の法線とのなす角度をいう。「射出角θ2」とは、射出面4aから射出される外景光LVの進行方向と平坦部3の法線とのなす角度をいう。また、本実施形態では、複数の平坦部3と第2面2cとが平行であり、入射面2aと射出面4aも平行となっている。すなわち、入射面2aと平坦部3の法線とのなす角Ψと、射出面4aと平坦部3の法線とのなす角Ψとは同一である。そのため、入射面2aに入射する外景光LVの入射角θ1と、射出面4aから射出される外景光LVの射出角θ2とは同一である。
【0029】
次に、遮光部51、52は、プリズム部4の傾斜面4bに設けられる第1遮光部51と、平坦部3に対向する位置に設けられる第2遮光部52とを有している。第1遮光部51と第2遮光部52の材料は、例えば、光吸収材、光拡散材、再帰性反射材などが用いられる。第1遮光部51は、複数のプリズム部4の傾斜面4bの全てに設けられている。第1遮光部51は、プリズム部4の傾斜面4bの表面に対し、例えば、印刷や蒸着などの任意の工程により形成される。そのため、第1遮光部51は、プリズム部4の傾斜面4bに入射する全方位からの外光LDを遮断することができる。
【0030】
一方、第2遮光部52は、複数の平坦部3に対向する位置で、複数の平坦部3それぞれに対して設けられている。
図2および
図3に示すように、第2遮光部52は、平坦部3から離れた位置に設けられており、平坦部3と接していない。そのため、平坦部3は空気と接している。したがって、平坦部3における全反射条件が維持されている。なお、
図4に示すように、第2遮光部52は、その一方の端部と他方の端部がそれぞれ支持体7、8に固定されている。
【0031】
図3に示すように、第2遮光部52は、平坦部3に対して所定の方向から到来する外光LD(以下、「所定方向の外光LD」という)を遮断することが可能な位置に設けられている。所定方向の外光LDとは、平坦部3に各方向から到来する光のうち、平坦部3で反射すると視認者10のアイリプスに到達することになる方向から到来する外光である。また、所定方向の外光LDとは、平坦部3に各方向から到来する光のうち、平坦部3から導光体2の内部に進むと、第2面2cで反射した後に別の平坦部3から射出して視認者10のアイリプスに到達することになる方向から到来する外光である。
【0032】
なお、アイリプスとは、光学装置1が車両に搭載される場合、視認者10(すなわち、運転者)の右眼及び左眼のアイレンジを長円として側面図及び平面図に表したものであり、例えば、日本工業規格D0021:1998またはISO 4513:2010により定められるものである。
【0033】
図5に示すように、第2遮光部52は、
図5に示した直線Aと直線Bに掛かるように配置されている。これにより、第2遮光部52は、所定方向の外光LDが平坦部3に入射することを防ぐことが可能である。また、第2遮光部52は、
図5に示した直線Cよりも平坦部3側の領域に配置されている。これにより、第2遮光部52は、複数の射出面4aから射出して視認者10のアイリプスに向かう外景光LVの進路を阻害しないように配置される。以下、直線A、B、Cにより規定される位置に第2遮光部52を配置することの技術的意義について説明する。
【0034】
まず、
図6は、光学装置1と視認者10のアイリプス14との位置関係を示した図である。本実施形態の光学装置1は、「視認者10の視点が定まっている機器11」に搭載されるので、光学装置1と視認者10のアイリプス14との位置関係は一義的に定まっている。
【0035】
図6に示すように、光学装置1の所定の射出面4a(例えば、入射面2aに最も近い射出面4a)の中心と視認者10のアイポイント中心15との距離をLとする。なお、アイポイント中心15とは、左のアイリプス14aの中心と右のアイリプス14bの中心からそれぞれ等距離にある点をいう。一般に、距離Lは、例えば650~700mm程度である。
【0036】
所定の射出面4aの中心と視認者10のアイポイント中心15とを結ぶ線に対し垂直な方向において、視認者10のアイリプス14のうち導光体2とは反対側の外縁とアイポイント中心15との距離をDLとする。一般に、距離DLは、例えば75mm程度である。
【0037】
所定の射出面4aの中心と視認者10のアイポイント中心15とを結ぶ線に対し垂直な方向において、視認者10のアイリプス14のうち導光体2側の外縁とアイポイント中心15との距離をDRとする。一般に、距離DRは、例えば75mm程度である。
なお、L、DL、DRは、例示した値に限らず、光学装置1が搭載される機器11(本実施形態では車種)によって定まる値である。
【0038】
所定の射出面4aの中心と視認者10のアイポイント中心15とを結ぶ線と平坦部3の法線とのなす角度をθとする。
θ-tan-1(DL/L)の式で表される角度をθminとする。
θ+tan-1(DR/L)で表される角度をθmaxとする。
導光体2は、死角領域13から入射面2aに入射し導光体2の内部を伝搬されて射出面4aから射出する外景光LVの射出角θ2が、θmaxとθminの間にあるように設計されている。
【0039】
次に、再び
図5に示すように、射出面4aと傾斜面4bとが交わる点4cを通り、θminを平坦部3の法線に対称とした角度で平坦部3に入射する直線を直線Aとする。直線Aと平行で、且つ、傾斜面4bと平坦部3とが交わる点(すなわち、点P2)に入射する直線を直線Bとする。
直線Aと平坦部3とが交わる点を点P1、直線Bと平坦部3とが交わる点を点P2、射出面4aと平坦部3とが交わる点を点P3とする。なお、P2は、傾斜面4bと平坦部3とが交わる点ということもできる。そして、点P1と点P3との距離をFa、点P2と点P3との距離をFbとする。距離Fbは、例えば、1mm程度である。
【0040】
このとき、本実施形態の光学装置1は、Fa<Fbの関係にある。すなわち、直線Aと平坦部3とが交わる点P1は、平坦部3の途中にある。そのため、上述した所定方向の外光LD(すなわち、平坦部3に各方向から到来する光のうち、平坦部3での反射および進入により視認者10のアイリプス14に到達することになる外光LD)は、直線Aと直線Bの間の領域を進む光である。そのことから、第2遮光部52は、直線Aと直線Bに掛かるように配置されている。言い換えれば、第2遮光部52は、直線Aと直線Bとの間の領域を遮蔽するように配置されている。
【0041】
第2遮光部52を直線Aと直線Bに掛かるように配置することで、平坦部3に入射する所定方向の外光LDを第2遮光部52によって遮断することが可能である。言い換えれば、第2遮光部52は、所定方向の外光LDが平坦部3に入射されることを防ぐことが可能である。なお、所定方向の外光LDのうち、直線Bに対して入射面2aとは反対側の領域に入射する外光LDは、第1遮光部51によって導光体2への入射が遮断される。
【0042】
また、射出面4aから射出されて視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVは、直線Cに対して平坦部3とは反対側の領域を進む。そのことから、第2遮光部52は、直線Cよりも平坦部3側の領域に配置されている。これにより、複数の射出面4aから射出されて視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVの進路を阻害しない位置に第2遮光部52を配置することが可能である。
【0043】
なお、第2遮光部52は、直線Aと直線Bとに掛かり、且つ、直線Cよりも平坦部3側の領域に配置されていれば、任意の形状、配置位置、配置角度とすることが可能である。
【0044】
ここで、上述した第1実施形態の光学装置1と比較するため、比較例の光学装置100について説明する。なお、比較例の光学装置100は、本開示の出願人が創作したものであり、従来技術ではない。
【0045】
図7に示すように、比較例の光学装置100は、第1実施形態で説明した光学装置1と比較して、第2遮光部52を備えていないことを除き、同一の構成である。すなわち、比較例の光学装置100は、第1遮光部51を備えているが、第2遮光部52を備えていない。そのため、比較例の光学装置100は、所定方向の外光LDが平坦部3に入射する。具体的には、例えば
図7で符号LD4を付した矢印に示すように、所定方向の外光LDのうち平坦部3に入射する一部の外光LD4は、平坦部3で反射し、視認者10のアイリプス14に到達する。また、符号LD5を付した矢印に示すように、所定方向の外光LDのうち平坦部3に入射する他の一部の外光LD5は、平坦部3から導光体2の内部に進み、第2面2cで反射した後、別の平坦部3から視認者10のアイリプス14に到達する。その場合、視認者10は、比較例の光学装置100から射出される外景光LV2、LV1と重畳して外光LD4、LD5を視認することになるので、外景像の視認性が低下するといった問題がある。
【0046】
上述した比較例の光学装置100と比較して、第1実施形態の光学装置1は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態の光学装置1は、遮光部51、52として、傾斜面4bに入射する外光LDを遮断する第1遮光部51と、平坦部3に入射する所定方向の外光LDを遮断する第2遮光部52とを有している。そして、第2遮光部52は、直線Aと直線Bに掛かるように配置されている。
【0047】
これによれば、第2遮光部52により、所定方向の外光LDが平坦部3で視認者10のアイリプス14に向けて反射するといったことが防がれる。また、所定方向の外光LDが平坦部3から導光体2の内部に進み第2面2cで反射した後、別の平坦部3から視認者10のアイリプス14に向けて射出するといったことが防がれる。なお、第1遮光部51により、外光LDが傾斜面4bから導光体2の内部に進み、平坦部3または射出面4aから視認者10のアイリプス14に向けて射出するといったことも防がれる。そのため、視認者10に表示される死角領域13の外景像に外光LDが重畳することが抑制される。したがって、この光学装置1は、視認者10に対し死角領域13の外景像を明瞭に表示し、その視認性を向上することができる。
【0048】
さらに、第1実施形態では、直線Aを、射出面4aと傾斜面4bとが交わる点4cを通り、θminを平坦部3の法線に対称とした角度で平坦部3に入射する直線として定義している。そして、その直線Aに掛かるように第2遮光部52を配置している。これにより、第2遮光部52は、直線A以上の入射角で平坦部3に到来する外光LDを遮断することが可能である。したがって、第2遮光部52は、視認者10のアイリプス14の全域に対して外光LDが到達することを防ぐことができる。
【0049】
また、第1実施形態では、第2遮光部52を直線Aと直線Bに掛かるように配置しているので、第2遮光部52を不要な部位に配置することなく、所定方向の外光LDが視認者10に到来することを防ぐために必要な部位に配置できる。
【0050】
(2)第1実施形態では、第2遮光部52は、直線Cよりも平坦部3側の領域に配置されている。
これによれば、複数の射出面4aから射出されて視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVの進路を第2遮光部52が阻害しない。したがって、この光学装置1は、視認者10に対し死角領域13の外景像を明瞭に表示し、その視認性を向上することができる。
【0051】
(3)第1実施形態では、第2遮光部52と平坦部3とは接しておらず、平坦部3は空気と接している。
これによれば、導光体2の平坦部3における全反射条件を維持し、導光体2の内部で外景光LVを伝搬させることができる。
【0052】
(4)第1実施形態では、第2遮光部52は、射出面4aから射出されて視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVが通る領域にかからないように配置されている。
これによれば、複数の射出面4aから射出されて視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVの進路を第2遮光部52が阻害しない。したがって、この光学装置1は、視認者10に対し死角領域13の外景像を明瞭に表示し、その視認性を向上することができる。
【0053】
(5)第1実施形態では、第2遮光部52は、光吸収材、光拡散材および再帰性反射材のうちいずれか1つを含んで構成されている。
これによれば、第2遮光部52を構成する材料が例示される。
【0054】
(6)第1実施形態では、導光体2の内部を進む外景光LVにおいて、平坦部3に対する外景光LVの入射角、および、第2面2cに対する平坦部3で反射した外景光LVの入射角をΦ、導光体2の屈折率をn1、導光体2に接する媒質の屈折率をn2としたとき、導光体2は、sinΦ>n2/n1 の関係を満たすように構成されている。
これによれば、平坦部3は、外景光LVを第2面2cに向けて全反射させることが可能である。また、第2面2cも、平坦部3で反射した外景光LVを第1面2bに向けて全反射させることが可能である。したがって、導光体2は、半透過ミラーおよびミラーを用いることなく、平坦部3および第2面2cにおける全反射条件を満たすことができる。
【0055】
(7)第1実施形態では、導光体2の外部から入射面2aに入射する外景光LVと平坦部3の法線とのなす角度をθ1、導光体2の内部を進む外景光LVにおいて平坦部3に対する外景光LVの入射角をΦとしたとき、導光体2は、θ1<Φ の関係を満たすように構成されている。
これによれば、導光体の平坦部3にて外景光LVを全反射させるように、入射面2aの角度が設定される。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図8を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、第2遮光部52の配置を変更し、さらに全反射維持部6を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
図8に示すように、第2実施形態では、第2遮光部52は平坦部3に接している。第2遮光部52は、複数の平坦部3それぞれに対して設けられる。第2遮光部52の材料は、第1実施形態と同じく、例えば、光吸収材、光拡散材、再帰性反射材などが用いられる。第2遮光部52は、平坦部3の表面に対し、例えば、印刷や蒸着などの任意の工程により形成することが可能である。
【0058】
図8に示した直線A、B、Cは、第1実施形態で説明したものと同じである。第2遮光部52は、直線Aと直線Bに掛かるように配置されている。言い換えれば、第2遮光部52は、平坦部3のうち少なくとも直線Aと直線Bとの間の領域を遮蔽するように配置されている。これにより、第2遮光部52は、平坦部3に入射する所定方向の外光LD(すなわち、平坦部3に各方向から到来する光のうち、平坦部3での反射および進入により視認者10のアイリプス14に到達することになる外光LD)を遮断することが可能である。
【0059】
また、第2遮光部52は、平坦部3に接しているので、自ずと、直線Cよりも平坦部3側の領域に配置されている。したがって、第2遮光部52は、複数の射出面4aから射出して視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVの進路を阻害することがない。
【0060】
さらに、第2実施形態では、導光体2の内部に全反射維持部6が設けられている。全反射維持部6は、導光体2の内部において、平坦部3よりも第2面2c側で、第2遮光部52と対応する位置に設けられている。全反射維持部6は、第2遮光部52と同一またはそれ以上の大きさに設定されている。全反射維持部6のうち第2面2c側の面は、平坦部3と平行な平面となっている。また、全反射維持部6の屈折率は、導光体2の内部屈折率より小さく、且つ、全反射維持部6の屈折率と導光体2の内部屈折率との差は0.11以上である。そして、第2実施形態においても、導光体2は、上述した式2の関係を満たすように各部位の角度および材質などが設計されている。第2実施形態では、上述した式2において、導光体2の一部に接する媒質が全反射維持部6となる。したがって、第2実施形態においても、導光体2と全反射維持部6との界面で全反射条件を維持し、導光体2の内部で外景光LVを伝搬させることができる。すなわち、
図8に示すように、導光体2の内部を伝播する外景光LVは、全反射維持部6のうち第2面2c側の界面で全反射する。
【0061】
全反射維持部6は、例えば、空気層で形成されている。全反射維持部6の製造方法として、次の方法が考えられる。例えば、製造過程において、導光体2の材料を複数個の部材で構成し、そのうち一部の部材に全反射維持部6を形成するための凹部を設け、その後、その複数個の部材を接合することで、導光体2の内部に全反射維持部6としての空気層を形成することが可能である。
【0062】
以上説明した第2実施形態の光学装置1は、第1実施形態と同一の作用効果を奏することができ、さらに次の作用効果も奏することができる。
【0063】
第2実施形態では、第2遮光部52と平坦部3とが接している。そして、導光体2の内部において、平坦部3よりも第2面2c側で、第2遮光部52と対応する位置に全反射維持部6がある。全反射維持部6の屈折率は導光体2の内部屈折率より小さく、且つ、全反射維持部6の屈折率と導光体2の内部屈折率との差は0.11以上である。
これによれば、導光体2と全反射維持部6との界面で全反射条件を維持し、導光体2の内部で外景光LVを伝搬させることができる。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図9を参照して説明する。第3実施形態は、第2実施形態に対して、第2遮光部52と全反射維持部6の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0065】
図9に示すように、第3実施形態では、導光体2の平坦部3と全反射維持部61とが接している。そして、その全反射維持部61のうち導光体2とは反対側に第2遮光部52が設けられている。全反射維持部61と第2遮光部52は、複数の平坦部3それぞれに対して設けられる。第2遮光部52の材料は、第1実施形態等と同じく、例えば、光吸収材、光拡散材、再帰性反射材などが用いられる。第2遮光部52は、全反射維持部61に直接接していてもよく、または、第2遮光部52と全反射維持部61との間に別の媒体(例えば、接着剤)を含んでいてもよい。
【0066】
図9に示した直線A、B、Cは、第1実施形態で説明したものと同じである。第2遮光部52は、直線Aと直線Bに掛かるように配置されている。言い換えれば、第2遮光部52は、平坦部3のうち少なくとも直線Aと直線Bとの間の領域を遮蔽するように配置されている。これにより、第2遮光部52は、平坦部3に入射する所定方向の外光LD(すなわち、平坦部3に各方向から到来する光のうち、平坦部3での反射および進入により視認者10のアイリプス14に到達することになる外光LD)を遮断することが可能である。
【0067】
また、第2遮光部52は、直線Cよりも平坦部3側の領域に配置されている。したがって、第2遮光部52は、複数の射出面4aから射出して視認者10のアイリプス14に向かう外景光LVの進路を阻害することがない。
【0068】
上述したように、全反射維持部61は、導光体2の平坦部3と第2遮光部52との間に設けられている。導光体2の平坦部3と全反射維持部61とは面接触(すなわち、密着)している。また、全反射維持部61の屈折率は、導光体2の内部屈折率より小さく、且つ、全反射維持部61の屈折率と導光体2の内部屈折率との差は0.11以上である。全反射維持部61は、例えば、フッ化マグネシウムで形成されている。そして、第3実施形態においても、導光体2は、上述した式2の関係を満たすように各部位の角度および材質などが設計されている。なお、第3実施形態では、上述した式2において、導光体2の平坦部3の一部に接する媒質が全反射維持部61となる。したがって、第3実施形態においても、導光体2の平坦部3と全反射維持部61との界面で全反射条件を維持し、導光体2の内部で外景光LVを伝搬させることができる。すなわち、
図9に示すように、導光体2の内部を伝播する外景光LVは、平坦部3と全反射維持部61との界面で全反射する。
【0069】
以上説明した第3実施形態の光学装置1は、第1実施形態と同一の作用効果を奏することができ、さらに次の作用効果も奏することができる。
【0070】
第3実施形態では、第2遮光部52と平坦部3との間に全反射維持部61がある。その全反射維持部61と平坦部3とは接している。全反射維持部61の屈折率は導光体2の内部屈折率より小さく、且つ、全反射維持部61の屈折率と導光体2の内部屈折率との差は0.11以上である。
これによれば、平坦部3と全反射維持部61とが接しているので、平坦部3における全反射条件を維持し、導光体2の内部で外景光LVを伝搬させることができる。
【0071】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、光学装置1が搭載される「視認者10の視点が定まっている機器11」として車両を例に説明したが、それに限らず、光学装置1は、視認者10の視点が定まっている種々の機器11に搭載することができる。
【0072】
(2)上記各実施形態では、複数のプリズム部4を三角形にしたが、それに限らず、例えば、台形など任意の形状にしてもよい。
【0073】
(3)上記各実施形態では、入射面2aを第1面2bと第2面2cとを繋ぐ面に形成したが、それに限らず、例えば、
図10に示したように、入射面2aは、第2面2c側の一部をプリズム状にすることで形成してもよい。その場合、第2面2c側のプリズムに形成される複数の入射面2aと平坦部3の法線とのなす角Ψと、射出面4aと平坦部3の法線とのなす角Ψとは同一とされる。
【0074】
(4)上記各実施形態では、第2遮光部52は、直線Aと直線Bとに掛かるようにして平坦部3の一部に設けたが、それに限らず、第2遮光部52は平坦部3の全部を覆うように設けてもよい。
【0075】
(5)上記各実施形態では、視認者10の前方の視界の範囲内に設けられる障害物として右フロントピラー(すなわち、右Aピラー)を例示したが、それに限らず、光学装置が車両に搭載される場合、障害物は左Aピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラーであってもよい。
【0076】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
2 導光体
2a 入射面
2b 第1面
2c 第2面
3 平坦部
4 プリズム部
4a 射出面
4b 傾斜面
51 第1遮光部
52 第2遮光部