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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】スイッチの駆動装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20240910BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20240910BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/00 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021177912
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067001
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 庸佑
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-323977(JP,A)
【文献】特開2020-127145(JP,A)
【文献】特開2020-096444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列接続された上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を駆動するスイッチの駆動装置(50)において、
前記スイッチの温度又は前記スイッチの温度相関値のいずれかである判定温度を取得する温度取得部と、
前記スイッチのゲート電圧を取得する電圧取得部と、
前記スイッチのオンオフを判定する判定部と、
上下アームのうち一方の前記スイッチがオフしたと判定された場合、他方の前記スイッチをオンさせる駆動部と、
を備え、
前記判定部は
前記スイッチのオンオフを判定するための判定電圧を、取得された前記判定温度が低いほど高く設定し
前記スイッチのゲート電圧が前記判定電圧以上の場合、前記スイッチがオンしたと判定し、前記スイッチのゲート電圧が前記判定電圧未満の場合、前記スイッチがオフしたと判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項2】
前記スイッチは、該スイッチの温度を検出する温度センサ(SD)とともにモジュール(PWC)を構成しており、
前記取得部は、前記判定温度として、前記温度センサの検出温度を取得する、請求項に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項3】
前記判定部及び前記駆動部は、高圧領域に設けられており、
前記駆動部は、
下アームの前記スイッチがオフしたと判定された場合、上アームの前記スイッチをオンさせる上アーム駆動部(52a)と、
上アームの前記スイッチがオフしたと判定された場合、下アームの前記スイッチをオンさせる下アーム駆動部(52b)と、を有し、
前記高圧領域に設けられ、上アームの前記スイッチがオン又はオフしたと判定されたこと示す信号を、前記下アーム駆動部に伝達する第1伝達部(53a)と、
前記高圧領域に設けられ、下アームの前記スイッチがオン又はオフしたと判定されたことを示す信号を、前記上アーム駆動部に伝達する第2伝達部(53b)と、
前記高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられ、上下アームの前記スイッチをオンオフさせるスイッチング指令を生成し、前記上アーム駆動部及び前記下アーム駆動部に送信する指令生成部(51)と、を備え、
前記上アーム駆動部は、オン指令の前記スイッチング指令を受信し、かつ、下アームの前記スイッチがオフしたと判定されたことを示す信号を前記第2伝達部から受信した場合、上アームの前記スイッチをオンさせ、
前記下アーム駆動部は、オン指令の前記スイッチング指令を受信し、かつ、上アームの前記スイッチがオフしたと判定されたことを示す信号を前記第1伝達部から受信した場合、下アームの前記スイッチをオンさせる、請求項1又は2に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項4】
互いに直列接続された上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を駆動するスイッチの駆動装置(40)において、
前記スイッチのオンオフを判定する判定部と、
上下アームのうち一方の前記スイッチがオフしたと判定された場合、他方の前記スイッチをオンさせる駆動部と、
を備え、
前記判定部は、前記スイッチのオンオフを判定する判定パラメータを、前記スイッチの特性に応じて可変設定し、
前記判定部及び前記駆動部は、高圧領域に設けられており、
前記駆動部は、
下アームの前記スイッチがオフしたと判定された場合、上アームの前記スイッチをオンさせる上アーム駆動部(52a)と、
上アームの前記スイッチがオフしたと判定された場合、下アームの前記スイッチをオンさせる下アーム駆動部(52b)と、を有し、
前記高圧領域に設けられ、上アームの前記スイッチがオン又はオフしたと判定されたこと示す信号を、前記下アーム駆動部に伝達する第1伝達部(53a)と、
前記高圧領域に設けられ、下アームの前記スイッチがオン又はオフしたと判定されたことを示す信号を、前記上アーム駆動部に伝達する第2伝達部(53b)と、
前記高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられ、上下アームの前記スイッチをオンオフさせるスイッチング指令を生成し、前記上アーム駆動部及び前記下アーム駆動部に送信する指令生成部(51)と、を備え、
前記上アーム駆動部は、オン指令の前記スイッチング指令を受信し、かつ、下アームの前記スイッチがオフしたと判定されたことを示す信号を前記第2伝達部から受信した場合、上アームの前記スイッチをオンさせ、
前記下アーム駆動部は、オン指令の前記スイッチング指令を受信し、かつ、上アームの前記スイッチがオフしたと判定されたことを示す信号を前記第1伝達部から受信した場合、下アームの前記スイッチをオンさせる、スイッチの駆動装置。
【請求項5】
コンピュータ(51)を備え、互いに直列接続された上下アームのスイッチ(SWH,SWL)を駆動するスイッチの駆動装置(40)に適用されるプログラムにおいて、
前記スイッチの温度又は前記スイッチの温度相関値のいずれかである判定温度を取得する温度取得処理と、
前記スイッチのゲート電圧を取得する電圧取得処理と、
前記スイッチのオンオフを判定する判定処理と、
上下アームのうち一方の前記スイッチがオフしたと判定された場合、他方の前記スイッチをオンさせる駆動処理と、を前記コンピュータに実行させ、
前記判定処理において、
前記スイッチのオンオフを判定するための判定電圧を、取得された前記判定温度が低いほど高く設定し、
前記スイッチのゲート電圧が前記判定電圧以上の場合、前記スイッチがオンしたと判定し、前記スイッチのゲート電圧が前記判定電圧未満の場合、前記スイッチがオフしたと判定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの駆動装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに直列接続された上下アームのスイッチを駆動するスイッチの駆動装置が知られている。例えば、特許文献1には、上下アームのスイッチのオンオフを判定し、上下アームのスイッチのうち一方のスイッチがオフしたと判定した場合、他方のスイッチをオンさせる駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-96444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチの特性により、閾値電圧が変化することがある。これにより、スイッチのオンオフの切り替わりタイミングが変化する。このため、スイッチがオフしたと判定されるタイミングが、スイッチが実際にオンからオフへ切り替わるタイミングから大きくずれる可能性がある。
【0005】
例えば、スイッチがオフしたと判定されるタイミングが、スイッチが実際にオンからオフへ切り替わるタイミングよりも遅れる場合、上下アームのスイッチ双方がオフされる期間であるデッドタイムが増加してしまう。その結果、スイッチの切り替えに伴い発生する損失が増大する懸念がある。
【0006】
本発明は、スイッチの切り替えに伴い発生する損失を低減することができるスイッチの駆動装置、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、互いに直列接続された上下アームのスイッチを駆動するスイッチの駆動装置において、前記スイッチのオンオフを判定する判定部と、上下アームのうち一方の前記スイッチがオフしたと判定された場合、他方の前記スイッチをオンさせる駆動部と、を備え、前記判定部は、前記スイッチのオンオフを判定する判定パラメータを、前記スイッチの特性に応じて可変設定する。
【0008】
本発明によれば、スイッチの特性により閾値電圧の変化が生じても、スイッチのオンオフを判定する判定パラメータが、スイッチの特性に応じて可変設定される。これにより、スイッチがオフしたと判定されるタイミングが、スイッチが実際にオフへ切り替わるタイミングから遅れることを抑制することができる。そのため、デッドタイムを低減することができ、スイッチの切り替えに伴い発生する損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】インバータ装置を構成する回路基板を表す概略図。
図3】パワーカードの構成を表す概略図。
図4】制御装置の構成を示す図。
図5】判定電圧の設定方法を示す図。
図6】制御装置が行う制御の一例を示すタイミングチャート。
図7】制御装置が行う制御の一例を示すタイミングチャート。
図8】第2実施形態に係る制御装置の構成を示す図。
図9】第3実施形態に係る制御装置の構成を示す図。
図10】第4実施形態に係る制御装置の構成を示す図。
図11】マイコンが実施する制御の処理手順を示すフローチャート。
図12】第5実施形態に係る判定電圧の設定方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る駆動装置は、電力変換器としての3相インバータに適用される。本実施形態において、インバータを備える制御システムは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載される。
【0011】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ15を備えている。回転電機10は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。
【0012】
インバータ15は、スイッチングデバイス部20を備えている。スイッチングデバイス部20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。各相において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相巻線11は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、IGBTが用いられている。上,下アームスイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
【0013】
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路22Hを介して、直流電源30の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路22Lを介して、直流電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、直流電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
【0014】
インバータ15は、コンデンサ23を備えている。コンデンサ23は、高電位側電気経路22Hと、低電位側電気経路22Lとを電気的に接続している。
【0015】
インバータ15は、制御装置40及びインバータ温度センサ50を備えている。インバータ温度センサ50は、例えばサーミスタであり、インバータ15の温度を検出する。インバータ温度は、例えば、インバータ15を冷却する冷却液の温度、インバータ15を構成する回路基板の温度又はコンデンサ23の温度である。インバータ温度センサ50の検出値は制御装置40に入力される。
【0016】
制御システムは、モータ温度センサ12を備えている。モータ温度センサ12は、例えばサーミスタであり、回転電機10の温度を検出する。回転電機10の温度は、例えば、各相巻線11の温度である。モータ温度センサ12の検出値は制御装置40に入力される。
【0017】
図2に、インバータ15を構成する回路基板16を示す。回路基板16は、インバータ15に接続される高圧領域HVと、高圧領域HVとは電気的に絶縁された低圧領域LVとの双方を有する。回路基板16の第1面のうち、高圧領域HVには、各スイッチSWH,SWL及び各スイッチSWH,SWLの駆動部52が設けられている。低圧領域LVには、マイコン51が設けられている。各スイッチSWH,SWLの駆動部52と、マイコン51との間では、高圧領域HV及び低圧領域LVを跨いで設けられた絶縁素子を介して、信号の伝達が行われる。本実施形態において、絶縁素子は磁気カプラ又はフォトカプラである。なお、図2において、絶縁素子の記載を省略している。
【0018】
図3に示すように、インバータ15を構成する各スイッチSWH,SWLは、回路基板16の第1面の裏面である第2面に取り付けられている。各スイッチSWH,SWLは、各ダイオードDH,DL及び感温ダイオードSDとともに、絶縁材料で構成された本体部に収容されてモジュール化されている。なお、図3では、各ダイオードDH,DLの記載を省略している。
【0019】
モジュール化された電子部品であるパワーカードPWCは、上アームスイッチSWHが収納されたものと、下アームスイッチSWLが収納されたものとで基本的には同一構造である。パワーカードPWCは、本体部から外部へ突出した複数の信号端子を有する。具体的には、各スイッチSWH,SWLのゲート端子G、エミッタ検出端子KE、センス端子SE、感温ダイオードSDのアノードAおよびカソードKの各端子が、回路基板16に接続されている。ここで、エミッタ検出端子KEは、各スイッチSWH,SWLのエミッタEに接続され、エミッタEと同電圧の電極である。コレクタ検出端子KCは、スイッチSWのコレクタに接続され、コレクタCと同電圧の電極である。センス端子SEは、各スイッチSWH,SWLを流れる電流と正の相関を有する微小電流を出力するための端子である。
【0020】
上,下アーム駆動部52a,52bは、上,下アームスイッチSWH,SWLのゲート端子G及びエミッタ検出端子KEに接続されている。上,下アーム駆動部52a,52bは、上,下アームスイッチSWH,SWLのゲート端子Gに電圧を印加することで、上,下アームスイッチSWH,SWLを駆動する。
【0021】
上,下アーム駆動部52a,52bは、上,下アームスイッチSWH,SWLのセンス端子SE、並びに、感温ダイオードSDのアノードA及びカソードKに接続されている。駆動部52は、センス端子SEに接続されたセンス抵抗の電圧降下量に基づいて、上,下アームスイッチSWH,SWLに流れる電流を検出する。また、上,下アーム駆動部52a,52bは、感温ダイオードSDのアノードAとカソードKとの間の電圧に基づいて、上,下アームスイッチSWH,SWLの温度を検出する。
【0022】
図4を用いて、制御装置40の構成について説明する。
【0023】
制御装置40は、マイコン51、上,下アーム駆動部52a,52b及び上,下アーム絶縁素子MH,MLを備えている。
【0024】
マイコン51は、CPUを備えている。マイコン51は、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、上,下アーム駆動部52a,52bに対する上,下アームスイッチング指令Sg1a,Sg1bを生成する。制御量は、例えばトルクである。本実施形態において、上,下アームスイッチング指令Sg1a,Sg1bは、論理Hによって上,下アームスイッチSWH,SWLのオン指令を示し、論理Lによって上,下アームスイッチSWH,SWLのオフ指令を示す。なお、本実施形態において、マイコン51が「指令生成部」に相当する。
【0025】
上アーム駆動部52aには、マイコン51から出力された上アームスイッチング指令Sg1aが上アーム絶縁素子MHを介して入力される。下アーム駆動部52bには、マイコン51から出力された下アームスイッチング指令Sg1bが下アーム絶縁素子MLを介して入力される。各絶縁素子MH,MLは、マイコン51と各駆動部52a,52bとの間を絶縁しつつ、上,下アームスイッチング指令Sg1a,Sg1bを上,下アーム駆動部52a,52bへと伝達する。
【0026】
上アーム駆動部52aは、上アームスイッチSWHを駆動対象としており、入力された上アームスイッチング指令Sg1aに基づいて、上アーム駆動信号Sg2aを出力する。下アーム駆動部52bは、下アームスイッチSWLを駆動対象としており、入力された下アームスイッチング指令Sg1bに基づいて、下アーム駆動信号Sg2bを出力する。
【0027】
上アーム駆動信号Sg2aは上アームスイッチSWHのゲートに入力され、下アーム駆動信号Sg2bは下アームスイッチSWLのゲートに入力される。本実施形態において、各駆動信号Sg2a,Sg2bは、論理Hによって駆動対象のスイッチをオンさせることを示し、論理Lによって駆動対象のスイッチをオフさせることを示す。
【0028】
上アーム駆動部52aは、第1AND回路60a及び第1バッファ回路61aを備えている。第1AND回路60aには、上アーム絶縁素子MHを介して入力された上アームスイッチング指令Sg1a、及び後述する下アーム伝達信号Sg3bが入力される。第1AND回路60aは、上アームスイッチング指令Sg1aの論理がHとされ、かつ、下アーム伝達信号Sg3bの論理がHとされた場合、論理Hの上アーム駆動信号Sg2aを出力する。論理Hの上アーム駆動信号Sg2aにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth以上とされる。これにより、上アームスイッチSWHがオンされる。
【0029】
一方、第1AND回路60aは、上アームスイッチング指令Sg1a及び下アーム伝達信号Sg3bのうち少なくとも一方の論理がLとされた場合、論理Lの上アーム駆動信号Sg2aを出力する。論理Lの上アーム駆動信号Sg2aにより、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vth未満とされる。これにより、上アームスイッチSWHがオフされる。
【0030】
下アーム駆動部52bは、第2AND回路60b及び第2バッファ回路61bを備えている。第2AND回路60bには、下アーム絶縁素子MLを介して入力された下アームスイッチング指令Sg1b、及び後述する上アーム伝達信号Sg3aが入力される。第2AND回路60bは、下アームスイッチング指令Sg1bの論理がHとされ、かつ、上アーム伝達信号Sg3aの論理がHとされた場合、論理Hの下アーム駆動信号Sg2bを出力する。論理Hの下アーム駆動信号Sg2bにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth以上とされる。これにより、下アームスイッチSWLがオンされる。
【0031】
一方、第2AND回路60bは、下アームスイッチング指令Sg1b及び上アーム伝達信号Sg3aのうち少なくとも一方の論理がLとされた場合、論理Lの下アーム駆動信号Sg2bを出力する。論理Lの下アーム駆動信号Sg2bにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vth未満とされる。これにより、下アームスイッチSWLがオフされる。
【0032】
上アーム駆動部52aは、第1定電圧源62a、第1可変抵抗体63a、第1判定用抵抗体64a及び第1オペアンプ65aを備えている。第1定電圧源62aは、第1可変抵抗体63aの第1端に接続されている。第1可変抵抗体63aの第2端は、第1判定用抵抗体64aの第1端及び第1オペアンプ65aの非反転入力端子に接続されている。第1判定用抵抗体64aの第2端は上アームスイッチSWHのエミッタ検出端子KEに接続されている。第1オペアンプ65aの反転入力端子は、上アームスイッチSWHのゲートに接続されており、第1オペアンプ65aの出力端子は、制御装置40が備える第1伝達部53aに接続されている。本実施形態において、第1伝達部53aは磁気カプラ又はフォトカプラである。なお、例えば、第1伝達部53aは、上アーム駆動部52aの内部に設けられていてもよいし、下アーム駆動部52bの内部に設けられていてもよい。
【0033】
第1定電圧源62aの出力電圧は、第1可変抵抗体63a及び第1判定用抵抗体64aによって分圧される。分圧された電圧である第1判定電圧Vj1は、第1オペアンプ65aの非反転入力端子に入力される。上アームスイッチSWHのゲート電圧は、第1オペアンプ65aの反転入力端子に入力される。
【0034】
第1オペアンプ65aの非反転入力端子に入力される第1判定電圧Vj1は、上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧Vthよりも高いか否かを判定できるように、第1定電圧源62aの出力電圧、第1可変抵抗体63aの抵抗値及び第1判定用抵抗体64aの抵抗値に基づいて設定される。第1オペアンプ65aは、反転入力端子の入力電圧が非反転入力端子の入力電圧より高い場合、論理Lの上アーム伝達信号Sg3aを出力する。一方、第1オペアンプ65aは、反転入力端子の入力電圧が非反転入力端子の入力電圧よりも低い場合、論理Hの上アーム伝達信号Sg3aを出力する。
【0035】
第1オペアンプ65aから出力された上アーム伝達信号Sg3aは、第1伝達部53aを介して第2AND回路60bに入力される。上アーム伝達信号Sg3aは、論理Hによって上アームスイッチSWHがオフしたことを下アーム駆動部52bに伝達し、論理Lによって上アームスイッチSWHがオンしたことを下アーム駆動部52bに伝達する信号である。
【0036】
下アーム駆動部52bは、第2定電圧源62b、第2可変抵抗体63b、第2判定用抵抗体64b及び第2オペアンプ65bを備えている。第2定電圧源62bは、第2可変抵抗体63bの第1端に接続されている。第2可変抵抗体63bの第2端は、第2判定用抵抗体64bの第1端及び第2オペアンプ65bの非反転入力端子に接続されている。第2判定用抵抗体64bの第2端は下アームスイッチSWLのエミッタ検出端子KEに接続されている。第2オペアンプ65bの反転入力端子は、下アームスイッチSWLのゲートに接続されており、第2オペアンプ65bの出力端子は、制御装置40が備える第2伝達部53bに接続されている。本実施形態において、第2伝達部53bは磁気カプラ又はフォトカプラである。なお、例えば、第2伝達部53bは、上アーム駆動部52aの内部に設けられていてもよいし、下アーム駆動部52bの内部に設けられていてもよい。
【0037】
第2定電圧源62bの出力電圧は、第2可変抵抗体63b及び第2判定用抵抗体64bによって分圧される。分圧された電圧である第2判定電圧Vj2は、第2オペアンプ65bの非反転入力端子に入力される。下アームスイッチSWLのゲート電圧は、第2オペアンプ65bの反転入力端子に入力される。
【0038】
第2オペアンプ65bの非反転入力端子に入力される第2判定電圧Vj2は、下アームスイッチSWLのゲート電圧が閾値電圧Vthよりも高いか否かを判定できるように、第2定電圧源62bの出力電圧、第2可変抵抗体63bの抵抗値及び第2判定用抵抗体64bの抵抗値に基づいて設定される。第2オペアンプ65bは、反転入力端子に入力された電圧が非反転入力端子に入力された電圧以上である場合、論理Lの下アーム伝達信号Sg3bを出力する。一方、第2オペアンプ65bは、反転入力端子に入力された電圧が非反転入力端子に入力された電圧よりも低い場合、論理Hの下アーム伝達信号Sg3bを出力する。
【0039】
第2オペアンプ65bから出力された下アーム伝達信号Sg3bは、第2伝達部53bを介して第1AND回路60aに入力される。下アーム伝達信号Sg3bは、論理Hによって下アームスイッチSWLがオフしたことを上アーム駆動部52aに伝達し、論理Lによって下アームスイッチSWLがオンしたことを上アーム駆動部52aに伝達する信号である。
【0040】
ここで、各スイッチSWH,SWLの温度により、各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vthが変化することがある。詳しくは、各スイッチSWH,SWLの温度が低いほど、各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vthが高くなる。これにより、各判定電圧Vj1,Vj2が、閾値電圧Vthからずれる可能性がある。例えば、各判定電圧Vj1,Vj2が閾値電圧Vthよりも高くなることにより、各スイッチSWH,SWLの双方がオンされてしまう上下アーム短絡が発生し、各スイッチSWH,SWLの信頼性が低下する懸念がある。また、例えば、各判定電圧Vj1,Vj2が閾値電圧Vthよりも低くなることにより、各スイッチSWH,SWLの双方がオフされる期間であるデッドタイムが増加し、各スイッチSWH,SWLの切り替えに伴い発生する損失が増大する懸念がある。
【0041】
そこで、各スイッチSWH,SWLのオンオフを判定する判定条件が、各スイッチSWH,SWLの特性に応じて可変設定される構成とした。本実施形態では、各スイッチSWH,SWLの温度が低いほど、各判定電圧Vj1,Vj2が高く設定される。
【0042】
上アーム駆動部52aは、上アームスイッチSWHのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDの検出値を取得する。上アーム駆動部52aは、取得した検出値に基づいて、第1可変抵抗体63aの抵抗値を変更することにより、第1判定電圧Vj1を可変設定する。また、下アーム駆動部52bは、下アームスイッチSWLのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDの検出値を取得する。下アーム駆動部52bは、取得した検出値に基づいて、第2可変抵抗体63bの抵抗値を変更することにより、第2判定電圧Vj2を可変設定する。なお、本実施形態において、各駆動部52a,52bが「温度取得部」に相当する。
【0043】
詳しくは、図5に示すように、各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vthは、各スイッチSWH,SWLの温度が高いほど低くなる。各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vth及び温度特性は、各スイッチSWH,SWLの個体差に応じて相違しており、所定のばらつき幅を有している。図5では、閾値電圧Vthのばらつき幅の上限値をVthHで示し、下限値をVthLで示している。
【0044】
各スイッチSWH,SWLの温度が高いほど、判定電圧Vjは低くなるように設定される。本実施形態では、判定電圧Vjは、閾値電圧のばらつき幅の下限値VthL以下となるように設定される。これにより、各スイッチSWH,SWLのうちオフされるスイッチが実際にはオフされていないにもかかわらず、オフされたと判定されることを抑制することができる。そのため、上下アーム短絡が発生することを抑制することができる。また、各スイッチSWH,SWLの温度が低いほど、判定電圧Vjが高く設定されることにより、デッドタイムの増加を抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、第1判定電圧Vj1は、第1可変抵抗体63aの抵抗値の変更により設定される。上アームスイッチSWHのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDの検出値が高いほど、第1可変抵抗体63aの抵抗値は大きく設定される。これにより、第1判定電圧Vj1が低く設定される。
【0046】
また、第2判定電圧Vj2は、第2可変抵抗体63bの抵抗値の変更により設定される。下アームスイッチSWLのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDの検出値が高いほど、第2可変抵抗体63bの抵抗値は大きく設定される。これにより、第2判定電圧Vj2が低く設定される。本実施形態において、各駆動部52a,52bが「判定部」に相当する。
【0047】
なお、各可変抵抗体63a,63bは、例えば、抵抗値の異なる抵抗体を複数備えるものであり、各定電圧源62a,62b及び各判定用抵抗体64a,64bに接続される抵抗体を切り替えることにより、各可変抵抗体63a,63bの抵抗値が変更される。そのため、各判定電圧Vj1,Vj2は、各スイッチSWH,SWLの温度が高いほど、段階的に低く設定される。また、各可変抵抗体63a,63bは、抵抗値を連続的に変更させるものであってもよい。この場合、各判定電圧Vj1,Vj2は、各スイッチSWH,SWLの温度が高いほど、連続的に低く設定されてもよい。
【0048】
図6,7に、上アームスイッチSWHをオフするとともに、下アームスイッチSWLをオンする場合の制御の一例を示す。図6,7において、(a)は上アームスイッチング指令Sg1aの推移を示し、(b)は上アームスイッチSWHのゲート電圧の推移を示し、(c)は上アーム伝達信号Sg3aの推移を示し、(d)は下アームスイッチング指令Sg1bの推移を示し、(e)は本実施形態における下アーム駆動信号Sg2bの推移を示し、(f)は比較例における下アーム駆動信号Sg2bの推移を示す。なお、図6,7(c)では、実線にて本実施形態の上アーム伝達信号Sg3aの推移を示し、破線にて比較例の上アーム伝達信号Sg3aの推移を示している。
【0049】
図6は、上アームスイッチSWHの温度が低温であり、上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthが、比較例の判定電圧Vjrよりも高く変化した場合を想定している。比較例の判定電圧Vjrは固定値である。この場合、第1判定電圧Vj1は、閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLよりも低く、かつ、比較例の判定電圧Vjrよりも高い電圧に設定される。
【0050】
時刻t1において、上アームスイッチング指令Sg1aの論理がHからLに切り替えられる。これにより、時刻t1よりも後において、上アームスイッチSWHのゲート電圧が下降し始める。また、時刻t1において、下アームスイッチング指令Sg1bの論理がLからHに切り替えられる。
【0051】
時刻t2において、上アームスイッチSWHのゲート電圧が第1判定電圧Vj1を下回る。これにより、本実施形態の上アーム伝達信号Sg3aの論理がLからHに切り替えられる。そのため、下アームスイッチング指令Sg1bの論理がHとされ、かつ、上アーム伝達信号Sg3aの論理がHとされるため、下アーム駆動信号Sg2bの論理がLからHに切り替えられる。この場合、時刻t1から時刻t2までの期間が、下アーム駆動部52bの待機期間となる。
【0052】
時刻t3において、上アームスイッチSWHのゲート電圧が比較例の判定電圧Vjrを下回る。これにより、比較例の上アーム伝達信号Sg3aの論理がLからHに切り替えられる。そのため、下アームスイッチング指令Sg1bの論理がHとされ、かつ、上アーム伝達信号Sg3aの論理がHとされるため、下アーム駆動信号Sg2bの論理がLからHに切り替えられる。この場合、時刻t1から時刻t3までの期間が、下アーム駆動部52bの待機時間となる。
【0053】
比較例の下アーム駆動部52bの待機期間は、本実施形態の下アーム駆動部52bの待機期間よりも長い。言い換えると、本実施形態では、下アーム駆動部52bの待機時間を比較例よりも短縮できる。そのため、デッドタイムを低減でき、各スイッチSWH,SWLの切り替えに伴い発生する損失を低減できる。また、第1判定電圧Vj1は、閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLよりも低く設定されるため、上下アーム短絡の発生を抑制することができる。
【0054】
図7は、上アームスイッチSWHの温度が高温であり、上アームスイッチSWHの閾値電圧Vthが、比較例の判定電圧Vjrよりも低く変化した場合を想定している。比較例の判定電圧Vjrは固定値である。この場合、第1判定電圧Vj1は、閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLよりも低い電圧に設定される。なお、図7において、時刻t1までの制御は先の図6と同様である。
【0055】
時刻t2において、上アームスイッチSWHのゲート電圧が比較例の判定電圧Vjrを下回る。この場合、上アームスイッチSWHは実際にはオフしていないにもかかわらず、上アームスイッチSWHがオフしたと判定され、比較例の上アーム伝達信号Sg3aの論理がLからHに切り替えられる。これにより、下アームスイッチング指令Sg1bの論理がHとされ、かつ、上アーム伝達信号Sg3aの論理がHとされるため、比較例の下アーム駆動信号Sg2bの論理がLからHに切り替えられる。この場合、時刻t2から上アームスイッチSWHのゲート電圧が閾値電圧を下回るまでの期間において、上下アーム短絡が発生する可能性がある。
【0056】
これに対して、本実施形態の制御では、時刻t3において、上アームスイッチSWHのゲート電圧が第1判定電圧Vj1を下回る。この場合、上アームスイッチSWHが実際にオフした状態において、上アームスイッチSWHがオフしたと判定され、本実施形態の上アーム伝達信号Sg3aの論理がLからHに切り替えられる。そのため、本実施形態では、上下アーム短絡の発生を抑制することができる。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0058】
各スイッチSWH,SWLの温度が低いほど、各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vthが高くなる。この場合、各スイッチSWH,SWLのうちオフされる方のスイッチのゲート電圧が下降し始めてから、閾値電圧Vthを下回るまでの時間が短くなる。この点、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLの温度が低いほど、各判定電圧Vj1,Vj2が高く設定される。各判定電圧Vj1,Vj2が高く設定されることにより、各駆動部52a,52bの待機期間を短くすることができる。その結果、デッドタイムを低減することができ、各スイッチSWH,SWLの切り替えに伴い発生する損失を低減することができる。
【0059】
各スイッチSWH,SWLの温度が高いほど、各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vthが低くなる。この場合、各スイッチSWH,SWLのうちいずれか一方のスイッチが実際にはオフしていないにもかかわらずオフしたと判定され得る。そのため、他方のスイッチがオンされることにより、上下アーム短絡が発生する可能性が生じる。この点、本実施形態では、各判定電圧Vj1,Vj2が閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLよりも低くなるように、各スイッチSWH,SWLの温度が高いほど、各判定電圧Vj1,Vj2が低く設定される。このため、上下アーム短絡の発生を抑制することができ、各スイッチSWH,SWLの信頼性を確保することができる。
【0060】
高圧領域HVに設けられた各伝達部53a,53bにより、高圧領域HV内で各伝達信号Sg3a,Sg3bの伝達が行われる。これにより、低圧領域LVに設けられたマイコン51が各スイッチSWH,SWLのオンオフを判定するよりも、各伝達信号Sg3a,Sg3bの伝達遅延を低減することができる。
【0061】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各可変抵抗体63a,63bに入力される温度が変更される。
【0062】
図8に、制御装置40の構成を示す。なお、図8において、先の図4に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0063】
上アーム駆動部52aは、上アーム温度センサ66aを備えている。上アーム温度センサ66aは、例えばサーミスタであり、上アーム駆動部52a及び上アーム駆動部52a周辺の温度を検出する。上アーム駆動部52aは、上アーム温度センサ66aの検出値を取得する。上アーム駆動部52aは、上アーム温度センサ66aの検出値が高いほど、第1可変抵抗体63aの抵抗値を大きく設定する。これにより、第1判定電圧Vj1が低く設定される。
【0064】
なお、上アーム駆動部52aは、上アーム温度センサ66aの検出値に基づいて、上アームスイッチSWHの温度を推定してもよい。上アーム駆動部52aは、推定した温度が高いほど、第1可変抵抗体63aの抵抗値を大きく設定してもよい。これにより、上アームスイッチSWHの実際の温度に近い温度を用いて第1判定電圧Vj1の設定を行うことができるため、第1判定電圧Vj1を適切に設定することができる。
【0065】
下アーム駆動部52bは、下アーム温度センサ66bを備えている。下アーム温度センサ66bは、例えばサーミスタであり、下アーム駆動部52b及び下アーム駆動部52b周辺の温度を検出する。下アーム駆動部52bは、下アーム温度センサ66bの検出値を取得する。下アーム駆動部52bは、下アーム温度センサ66bの検出値が高いほど、第2可変抵抗体63bの抵抗値を大きく設定する。これにより、第2判定電圧Vj2が低く設定される。
【0066】
なお、下アーム駆動部52bは、下アーム温度センサ66bの検出値に基づいて、下アームスイッチSWLの温度を推定してもよい。下アーム駆動部52bは、推定した温度が高いほど、第2可変抵抗体63bの抵抗値を大きく設定してもよい。これにより、下アームスイッチSWLの実際の温度に近い温度を用いて第2判定電圧Vj2の設定を行うことができるため、第2判定電圧Vj2を適切に設定することができる。
【0067】
本実施形態によれば、各スイッチSWH,SWLのパワーカードPWC内に感温ダイオードSDが設けられていない場合であっても、各温度センサ66a,66bの検出値を用いて、各判定電圧Vj1,Vj2を可変設定することができる。
【0068】
<第3実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各駆動部52a,52bに入力される温度が変更される。
【0069】
図9に、制御装置40の構成を示す。なお、図9において、先の図4に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0070】
上アーム絶縁素子MHは、上アーム第1,2素子MHA,MHBを備え、下アーム絶縁素子MLは、下アーム第1,2素子MLA,MLBを備える。マイコン51は、上,下アームスイッチング指令Sg1a,Sg1bを上,下アーム第1素子MHA,MLAを介して上,下アーム駆動部52a,52bへと出力する。
【0071】
マイコン51は、モータ温度センサ12の検出値及びインバータ温度センサ50の検出値を取得する。マイコン51は、モータ温度センサ12の検出値及びインバータ温度センサ50の検出値のうち少なくとも一方の温度に基づいて、判定温度Tmを算出する。
【0072】
マイコン51は、判定温度Tmを上,下アーム第2素子MHB,MLBを介して上,下アーム駆動部52a,52bへと出力する。上,下アーム駆動部52a,52bは、入力された判定温度Tmが高いほど、各可変抵抗体63a,63bの抵抗値を大きく設定する。これにより、各判定電圧Vj1,Vj2が低く設定される。
【0073】
例えば、判定温度Tmは、モータ温度センサ12の検出値及びインバータ温度センサ50の検出値の平均値であってもよく、モータ温度センサ12の検出値及びインバータ温度センサ50の検出値のうち高い方の温度であってもよい。
【0074】
また、例えば、判定温度Tmは、各スイッチSWH,SWLの推定温度であってもよい。詳しくは、マイコン51は、モータ温度センサ12の検出値及びインバータ温度センサ50の検出値のうち少なくとも一方の温度に基づいて、各スイッチSWH,SWLの温度を推定し、推定した温度を判定温度Tmとしてもよい。これにより、各スイッチSWH,SWLの実際の温度に近い温度を用いて各判定電圧Vj1,Vj2が設定されるため、各判定電圧Vj1,Vj2を適切に設定することができる。なお、本実施形態において、マイコン51が「温度取得部」に相当する。
【0075】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各駆動部52a,52bによって各スイッチSWH,SWLのオンオフが判定されることに代えて、マイコン51によって各スイッチSWH,SWLのオンオフが判定される。
【0076】
図10に、制御装置40の構成を示す。なお、図10において、先の図4に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0077】
上アーム絶縁素子MHは、上アーム第1~第3素子MH1~MH3を備え、下アーム絶縁素子MLは、下アーム第1~第3素子ML1~ML3を備えている。マイコン51は、上アーム駆動部52a及び上アーム第1素子MH1を介して、上アームスイッチSWHのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDから温度情報を取得する。マイコン51は、下アーム駆動部52b及び下アーム第1素子ML1を介して、下アームスイッチSWLのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDから温度情報を取得する。マイコン51は、各感温ダイオードSDの検出値を、判定温度として取得する。
【0078】
上アーム駆動部52aは、上アームスイッチSWHに異常が発生したと判定した場合、異常が発生した旨の上アームフェール信号を出力する。上アームフェール信号は、上アーム第2素子MH2を介してマイコン51に入力される。下アーム駆動部52bは、下アームスイッチSWLに異常が発生したと判定した場合、異常が発生した旨の下アームフェール信号を出力する。下アームフェール信号は、下アーム第2素子ML2を介してマイコン51に入力される。なお、スイッチの異常は、例えば、過電流異常、過熱異常又は過電圧異常である。
【0079】
マイコン51は、上アーム駆動部52aから上アームフェール信号が出力されていない場合、上アーム駆動部52a及び上アーム第2素子MH2を介して、上アームスイッチSWHのゲート電圧Vge1を取得する。また、マイコン51は、下アーム駆動部52bから下アームフェール信号が出力されていない場合、下アーム駆動部52b及び下アーム第2素子ML2を介して、下アームスイッチSWLのゲート電圧Vge2を取得する。
【0080】
マイコン51は、上,下アームスイッチング指令Sg1a,Sg1bを上,下アーム第3素子MH3,ML3を介して上,下アーム駆動部52a,52bへと出力する。各駆動部52a,52bは、入力された各スイッチング指令Sg1a,Sg1bの論理がHの場合、論理Hの各駆動信号Sg2a,Sg2bを各スイッチSWH,SWLのゲートに出力する。これにより、各スイッチSWH,SWLがオンされる。また、各駆動部52a,52bは、入力された各スイッチング指令Sg1a,Sg1bの論理がLの場合、論理Lの各駆動信号Sg2a,Sg2bを各スイッチSWH,SWLのゲートに出力する。これにより、各スイッチSWH,SWLがオフされる。
【0081】
図11に、マイコン51が実施する制御の処理手順を示す。この制御は所定周期で繰り返し実施される。
【0082】
ステップS10では、上アームスイッチング指令Sg1aの論理をLにする。これにより、上アーム駆動部52aから出力される上アーム駆動信号Sg2aの論理がLにされる。
【0083】
ステップS11では、各スイッチSWH,SWLの判定温度及び各ゲート電圧Vge1,Vge2を取得する。判定温度としては、各スイッチSWH,SWLのパワーカードPWC内に設けられた感温ダイオードSDの検出値を取得すればよい。また、各ゲート電圧Vge1,Vge2は、各駆動部52a,52b及び各第2素子MH2,ML2を介して取得すればよい。本実施形態において、ステップS11が「温度取得部」及び「電圧取得部」に相当する。
【0084】
ステップS12では、取得した判定温度に基づいて、各判定電圧Vj1,Vj2を設定する。詳しくは、取得した判定温度から上アームスイッチSWHの温度を算出し、算出した上アームスイッチSWHの温度が低いほど、第1判定電圧Vj1を高く設定する。また、取得した判定温度から下アームスイッチSWLの温度を算出し、算出した下アームスイッチSWLの温度が低いほど、第2判定電圧Vj2を高く設定する。
【0085】
ステップS13では、取得した上アームスイッチSWHのゲート電圧Vge1が第1判定電圧Vj1未満か否かを判定する。ステップS13において肯定判定した場合、上アームスイッチSWHがオフされたと判定し、ステップS14に進む。なお、本実施形態において、ステップS12及びS13が「判定部」に相当する。
【0086】
ステップS14では、下アームスイッチング指令Sg1bの論理をHにする。これにより、下アーム駆動部52bから出力される下アーム駆動信号Sg2bの論理がHにされ、下アームスイッチSWLがオンされる。
【0087】
なお、ステップS10において、下アームスイッチング指令Sg1bの論理をLにする場合についても、図11に示す処理手順と同様の処理手順となる。この場合、ステップS13において、下アームスイッチSWLのゲート電圧Vge2が第2判定電圧Vj2未満か否かを判定する。ステップS14では、上アームスイッチング指令Sg1aの論理をHにする。これにより、上アーム駆動部52aから出力される上アーム駆動信号Sg2aの論理がHにされ、上アームスイッチSWHがオンされる。
【0088】
ステップS13において否定判定した場合、所定の期間だけ待機した後、再びステップS13の処理を行う。つまり、本実施形態では、各スイッチSWH,SWLのゲート電圧Vge1,Vge2が、各判定電圧Vj1,Vj2のうち対応する判定電圧未満となるまで待機する。
【0089】
本実施形態によれば、判定温度及び各ゲート電圧Vge1,Vge2が各絶縁素子MH,MLを介してマイコン51に入力され、マイコン51により各スイッチSWH,SWLのオンオフが判定される。各ゲート電圧Vge1,Vge2を伝達する各第2素子MH2,ML2は、フェール信号の伝達にも用いられる。そのため、各ゲート電圧Vge1,Vge2を伝達するために専用の絶縁素子が設けられる構成に比べて、絶縁素子の数を低減することができる。
【0090】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、判定電圧Vjの設定方法が変更される。
【0091】
各スイッチSWH,SWLに流れる電流が小さい場合やコンデンサ23の端子間電圧VHが低い場合、短時間の上下アーム短絡が許容される場合がある。この場合、判定電圧Vjは、部分的に閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLより高くなることが許容される。
【0092】
そこで、本実施形態では、判定電圧Vjは、閾値電圧のばらつき幅の下限値VthL以下となるように設定されることに代えて、図12に示すように、部分的に閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLより高く設定される。
【0093】
本実施形態によれば、短時間の上下アーム短絡が許容される範囲内で、判定電圧Vjが閾値電圧のばらつき幅の下限値VthLよりも高く設定される。これにより、判定電圧Vjが閾値電圧の下限値VthL以下となるように設定される場合に比べて、各スイッチSWH,SWLがオフされたと判定されるタイミングを早めることができ、デッドタイムを的確に低減することができる。
【0094】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0095】
・各スイッチSWH,SWLの履歴情報及び各スイッチSWH,SWLの個体差により、各スイッチSWH,SWLの閾値電圧Vthが変化することがある。そこで、各駆動部52a,52bは、各スイッチSWH,SWLの温度を取得することに加えて、各スイッチSWH,SWLの履歴情報及び各スイッチSWH,SWLの個体差を取得してもよい。各駆動部52a,52bは、各スイッチSWH,SWLの温度に代えて、取得した各スイッチSWH,SWLの履歴情報及び個体差のうち少なくとも1つに基づいて、各判定電圧Vj1,Vj2を設定してもよい。また、各駆動部52a,52bは、各スイッチSWH,SWLの温度と、履歴情報及び個体差のうち少なくとも一方とに基づいて各判定電圧Vj1、Vj2を設定してもよい。
【0096】
各スイッチSWH,SWLの履歴情報は、例えば、直流電源30の電圧が各スイッチSWH,SWLに印加された累計時間、及び各スイッチSWH,SWLの累計スイッチング回数のうち少なくとも1つである。各スイッチSWH,SWLの個体差は、例えば、各スイッチSWH,SWLの製造ばらつきによって個別に異なる値となる情報であり、各スイッチSWH,SWLの電気的特性や熱的特性である。
【0097】
・スイッチングデバイス部20を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。
【0098】
・各駆動部52a,52bは、各スイッチSWH,SWLのゲート電圧に代えて、各スイッチSWH,SWLのコレクタエミッタ間に流れる電流及びコレクタエミッタ間の電圧を取得してもよい。各駆動部52a,52bは、取得した各スイッチSWH,SWLのコレクタエミッタ間に流れる電流及びコレクタエミッタ間の電圧に基づいて、各判定電圧Vj1,Vj2を設定してもよい。
【0099】
また、各駆動部52a,52bは、各スイッチSWH,SWLのオンオフを判定するのに、各スイッチSWH,SWLのゲート電圧に代えて、各スイッチSWH,SWLのコレクタエミッタ間に流れる電流及びコレクタエミッタ間の電圧、ゲート電圧の時間変化量、コレクタエミッタ間に流れる電流の時間変化量及びコレクタエミッタ間の電圧の時間変化量を用いてもよい。
【0100】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
50…制御装置,SWH,SWL…上,下アームスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12