(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C23C14/56 D
(21)【出願番号】P 2021179734
(22)【出願日】2021-11-02
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴康
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-027644(JP,A)
【文献】特開2009-049028(JP,A)
【文献】特開昭53-100936(JP,A)
【文献】特開2001-288571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧された処理容器内に、基板に真空成膜を行う成膜室と、前記成膜室と連通し、前記基板を冷却する冷却室とが設けられた成膜装置であって、
前記冷却室は、
前記基板が移動する通路と、
前記処理容器の内壁に配置され、前記通路に対向する表面積拡大構造部と冷媒の冷媒流路とを含む冷却装置を備え
、
前記表面積拡大構造部は、前記処理容器の内壁から前記通路に向かって突設された複数の突出部を含み、
前記冷媒流路は、前記突出部に沿って形成され、
前記突出部は、断面が前記通路に向かって凸の三角形状であり、側面の延在する方向が前記成膜室から前記冷却室へと移動する前記基板の移動方向に垂直である、三角柱状の基部を含み、
前記突出部は、前記基部から突出する枝部を備える、
成膜装置。
【請求項2】
前記突出部の表面は、粗面処理されている、
請求項
1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記表面積拡大構造部は、開気孔を含む発泡金属を備える、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記表面積拡大構造部の前記成膜室側の端部には、前記通路の幅を狭める方向に張り出した張出部が設けられている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記冷却室における前記処理容器の内壁及び前記表面積拡大構造部は黒色である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
減圧された処理容器内に、基板に真空成膜を行う成膜室と、前記成膜室と連通し、前記基板を冷却する冷却室とが設けられた成膜装置であって、
前記冷却室は、
成膜材と同じ又は該成膜材を含む材料からなる複数の金属球が充填され、前記基板を複数の前記金属球によって包囲された状態で保持する、冷却容器と、
前記冷却容器を冷却する冷却装置と、
を備える、
成膜装置。
【請求項7】
複数の前記金属球は、複数の異なる直径の金属球を含む、
請求項
6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記冷却容器及び前記基板の少なくともいずれか一方に、超音波を印加する超音波発生装置をさらに備え、
前記冷却容器及び前記基板の少なくともいずれか一方に超音波が印加された状態で、複数の前記金属球への前記基板の出し入れが行われる、
請求項
6に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器中に配置した基板に膜を形成する真空成膜装置が開示されている。この真空容器には、開閉可能なシャッタ24で区切られる、基板配置部と成膜材料滞留部とが設けられている。真空容器の内部の基板配置部には、基板への膜の形成が行われる成膜ゾーンと、成膜ゾーンの両端に配置され、基板を成膜ゾーンから退避させ、基板の冷却処理を行う冷却ゾーンが設けられている。
【0003】
冷却ゾーンでは、成膜により温度が上昇した基板が、冷却水等の冷媒が循環する冷却プレートと挟持プレートとの間に挟持され、冷却される。また、特許文献1には、冷却方法として、冷却プレートを基板に押し付けて冷却する方法と、放冷による冷却方法とを適宜組合せてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の真空成膜装置では、冷却ゾーンは真空容器の内部に設けられており、真空状態となっている。真空中では、大圧力中に比べて冷却効率が低下するため、所望の温度まで基板を冷却するのに時間がかかる。また、冷却ゾーンでの滞留時間を長くするために、冷却室の設備長を長くすると、設備全体が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、冷却効率を高めることが可能な成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る成膜装置は、減圧された処理容器内に、基板に真空成膜を行う成膜室と、前記成膜室と連通し、前記基板を冷却する冷却室とが設けられた成膜装置であって、前記冷却室は、前記基板が移動する通路と、前記処理容器の内壁に配置され、前記通路に対向する表面積拡大構造部と冷媒の冷媒流路とを含む冷却装置を備えるものである。
【0008】
他の態様に係る成膜装置は、減圧された処理容器内において、基板に真空成膜を行う成膜室と、前記成膜室と連通し、前記成膜室の圧力よりも高い、前記基板を冷却する冷却室とを備えるものである。
【0009】
他の耐用に係る成膜装置は、減圧された処理容器内に、基板に真空成膜を行う成膜室と、前記成膜室と連通し、前記基板を冷却する冷却室とが設けられた成膜装置であって、前記冷却室は、成膜材と同じ又は該成膜材を含む材料からなる複数の金属球が充填され、前記基板を複数の前記金属球によって包囲された状態で保持する冷却容器と、前記冷却容器を冷却する冷却装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却効率を高めることが可能な、成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る成膜装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の冷却室に設けられる冷却装置の第1例を示す図である。
【
図3】
図1の冷却室に設けられる冷却装置の第2例を示す図である。
【
図4】
図1の冷却室に設けられる冷却装置の第3例を示す図である。
【
図5】実施形態2に係る成膜装置の構成を示す図である。
【
図6】実施形態3に係る成膜装置の構成を示す図である。
【
図7】
図6の冷却室に設けられる冷却容器の一例を示す図である。
【
図8】実施形態1~3の成膜装置を用いた場合の、ワーク温度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。なお、特許請求の範囲に係る発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0013】
実施形態1.
図1は、実施形態1に係る成膜装置10の構成を示す図である。成膜装置10は、真空中でワーク(基板)W上に膜を形成する真空成膜装置である。このような真空成膜装置としては、イオンプレーティング装置やスパッタリング装置等の物理的蒸着装置、又は化学的蒸着装置がある。例えば、スパッタリング装置を用いてチタン膜を形成する場合、真空チャンバ(処理容器)内に不活性ガス(例えば、Arガス)を導入しながらワークとターゲット(成膜材Ti)間に直流電圧を印加し、イオン化したArをターゲットに衝突させて、はじき飛ばされたチタン粒子をワークの表面に付着・堆積させる。
【0014】
図1に示す例は、インライン方式の成膜装置10である。この成膜装置10では、ホルダ20に保持された複数のワークWに同時に成膜が行われる。
図1に示すように、成膜装置10は、成膜室11A、11B、冷却室12を含む。
図1中矢印で示す、ホルダ20の移動方向に沿って上流側から順に、成膜室11A、冷却室12、成膜室11Bが配置されている。なお、ここでは図示していないが、成膜室11Aの前段にはロードロック室や前処理室等が設けられていてもよく、成膜室11Bの後段には後処理室やロードロック室等が設けられていてもよい。
【0015】
成膜室11A、11B、冷却室12は、減圧された処理容器C内に設けられる。冷却室12は、成膜室11A、11Bとそれぞれ連通している。ホルダ20が
図1中の矢印で示す方向に移動して、成膜室11A及び成膜室11Bを通過することで、複数のワークW上に膜が形成される。
【0016】
例えば、物理的蒸着装置では200~600℃程度の温度で処理されるため、ワークの温度も成膜処理過程において次第に上昇する。インライン方式の真空成膜装置では、処理時間の短縮のために、蒸発源13を複数設置したり、蒸発源の出力を上げることが行われており、ワークの温度上昇が顕著となる。
【0017】
ワークにステンレスやアルミ等の材料を用いた場合、温度の上昇によって、鋭敏化(耐食性の低下)や軟質化、また結晶粒子の粗大化等による剛性の低下が引き起こされるという問題がある。また、高いワーク温度では、樹脂等への成膜が事実上困難となる。そのため、成膜処理の前後にワーク温度を低下させる時間が必要となる。冷却室12は、このようなワークの温度を低下させるために設けられている。
【0018】
一般的には、冷却室は、同じ処理容器内に配置され、成膜室と連通して、真空状態となっている。しかし、真空状態の冷却室は、魔法瓶と同じで冷却効率が悪く、ワークWの温度を所定の温度に低下させるのに時間がかかる。そのため、冷却室を大きく(長く)する必要があり、該冷却室を含む処理容器(真空チャンバ)の設置面積が大きくなる。よって設備投資費が大きくなり、すなわち製品処理コストが増加するという問題があった。
【0019】
そこで、本発明者は、冷却室12の冷却効率を高めることが可能な構成を考案した。熱の伝わり方には(1)放射、(2)対流、(3)伝導がある。この3つの方法の単独、もしくは組合せによってワークWの温度を低減させることができる。実施形態では、インライン方式の真空成膜装置において、成膜室11Aと成膜室11Bとの間に(1)~(3)の工夫を取り入れた冷却室12を設けている。以下、冷却室12の具体的な構成について説明する。
【0020】
実施形態1では、冷却室12は、放射によりワークWの冷却を行う。
図2は、
図1の冷却室12に設けられる成膜装置10の第1例を示す図である。
図2では、成膜装置10を上からみた図が示されている。なお、ここでは、成膜室11Aと冷却室12のみが図示されている。
【0021】
図2に示すように、成膜室11Aには、2つの蒸発源13が設けられている。ホルダ20の移動方向に沿って順に、右の内壁に1つの蒸発源13が配置され、左の内壁に1つの蒸発源13が配置されている。
【0022】
冷却室12は、通路1と冷却装置2とを備えている。冷却室12において、処理容器Cの内壁には、冷却装置2が配置されている。
図2に示す例では、冷却装置2は、ホルダ20の移動方向から見て、左右の内壁にそれぞれ配置されている。なお、冷却装置2は、処理容器Cの上下の内壁に配置されていてもよく、通路1を囲むように上下左右に配置されてもよい。
【0023】
冷却装置2間には、通路1が形成されている。成膜室11Aにおいて成膜処理された後の複数のワークWを保持するホルダ20は、通路1を通って、成膜室11Bに向けて移動する。ワークWは、通路1を通過することによって、冷却装置2により冷却される。
【0024】
冷却装置2は、冷媒流路3、突出部4、張出部5を含む。冷却装置2は、冷却水等の冷媒を冷媒流路3内で循環させる。外部から冷媒流路3の一端に供給された冷媒は、冷媒流路3を通ってその他端から外部に排出される。冷媒流路3内を循環する冷媒とワークWとが熱交換することで、ワークWの熱が冷媒を介して外部に放出され、それによってワークWが冷却される。
【0025】
冷却装置2には、通路1に対向する面に突出部4及び張出部5が形成されている。突出部4及び張出部5は表面積拡大構造部を構成する。突出部4、張出部5は、表面積を拡大してワークWの冷却効率を高めるために設けられている。複数の突出部4は、処理容器Cの内壁から通路1に向かって突設されている。冷媒流路3は、複数の突出部4に沿って蛇行して形成される。
【0026】
このように、表面積拡大構造部により表面積を増加させ、表面積拡大構造部に沿って冷媒流路3を設けることにより、冷却装置2の冷却室12内の温度を吸熱する効果を増大させることができる。これにより、設備長を長くすることなく、冷却室12におけるワークWの冷却効率を高めることが可能となる。
【0027】
張出部5は、表面積拡大構造部の成膜室11A、11B側の端部に形成されている。張出部5は、通路1の幅を狭める方向に張り出している。すなわち、張出部5は、突出部4よりもその高さが高い。これにより、成膜室11A、11Bの蒸発源13からの成膜粒子を、張出部5によりトラップすることができ、冷却室12内に成膜粒子が付着するのを防止することができる。なお、表面積拡大構造部は、迷路が生じるラビリンス構造となっていてもよい。
【0028】
図3は、
図1の冷却室に設けられる冷却装置の第2例を示す図である。
図3において、
図2と異なる点は、突出部4の代わりに開気孔を含む発泡金属6を設けた点である。開気孔を含む発泡金属6により、表面積を拡大することができる。これにより、冷却装置2の冷却能力を改善することが可能となる。なお、発泡金属6は、閉気孔を含んでいてもよい。
【0029】
図4は、
図1の冷却室に設けられる冷却装置の第3例を示す図である。
図4では、突出部4の他の例を詳細に示している。
図4に示すように、突出部4は、基部7、枝部8を含む。
【0030】
基部7は、断面が通路1に向かって凸の三角形状である三角柱である。基部7の側面の延在する方向は、成膜室11A、11Bから冷却室12へと移動するホルダ20の移動方向に垂直である。突出部4の側面は、ワークWの面に対して斜めになっている。また、基部7からは複数の枝部8が突設されている。
【0031】
成膜室11Aから飛来し、冷却室12の内壁に付着した成膜材Mは、厚く堆積すると自然剥離する。
図4に示す例では、突出部4の側面は、ワークWの面に対して斜めになっている。このため、成膜材Mが剥離したときに、ホルダ20の方向へ飛び出すのを防止することができる。これにより、剥離した成膜材MがワークWに付着するのを抑制し、歩留まりを向上することが可能となる。
【0032】
また、
図4の例では、基部7の表面は、枝部8が設けられることにより凹凸形状が形成され、粗面処理されている。このように、突出部4の表面が粗面化されていることにより、成膜材Mが突出部4の表面から剥離しにくくなる。これにより、成膜材Mの剥離頻度が低下して、ワークWへの成膜材Mの付着をさらに抑制することが可能となる。このように、冷却室12において、剥離した成膜材MがワークWに付着することがないため、成膜後に、形成された膜の平滑処理を省略することが可能となる。また、剥離した成膜材Mが基板上に付着し、その後剥離したときに発生する欠陥等、剥離した成膜材Mによるマイナス要因を低減することができる。
【0033】
なお、突出部4の粗面処理として、枝部8を形成する代わりに、突出部4の表面にサンドブラスト処理等による梨地面形状を形成してもよい。また、第1例の突出部4の表面に、粗面処理が施されていてもよい。
【0034】
また、冷却室12において、ワークWに対向する、処理容器Cの内壁及び表面積拡大構造部(突出部4、張出部5)は黒色であることが望ましい。このように、黒色で黒体輻射効果のある材料を使用すれば、冷却室12における処理容器Cの内壁、表面積拡大構造部の熱伝導性が高まり、ワークWの冷却効率を向上させることができる。なお、張出部5は成膜粒子を補足することから、その部位だけ成膜材(チタン)が堆積して銀色となる場合があるが、成膜材が堆積した箇所以外の表面は黒色を維持することができる。
【0035】
実施形態2.
実施形態2では、冷却室12は、対流によりワークWの冷却を行う。
図5は、実施形態2に係る成膜装置10Aの構成を示す図である。
図5において、
図1と異なる点は、成膜室11Aと冷却室12との間に圧力調整室14Aが設けられ、冷却室12と成膜室11Bとの間に圧力調整室14Bが設けられている点である。
【0036】
図2に示すように、成膜装置10は、成膜室11A、11B、冷却室12、圧力調整室14A、14Bを含む。
図5中矢印で示す、ホルダ20の移動方向に沿って上流側から順に、成膜室11A、圧力調整室14A、冷却室12、圧力調整室14B、成膜室11Bが配置されている。成膜室11A、11B、冷却室12、圧力調整室14A、14Bは、減圧された処理容器C内に設けられる。冷却室12は、圧力調整室14A、14Bと連通している。圧力調整室14Aは成膜室11Aと連通しており、圧力調整室14Bは成膜室11Bと連通している。ホルダ20が
図1中の矢印で示す方向に移動して、成膜室11A及び成膜室11Bを通過することで、複数のワークW上に膜が形成される。
【0037】
なお、ここでは図示していないが、冷却室12を構成する処理容器Cの内壁には、冷媒が循環する冷媒流路が設けられており、処理容器Cの内壁自体が冷却装置の機能を果たす。
【0038】
冷却室12の圧力は、成膜室11A、11Bの圧力よりも高い。例えば、成膜室11A、11Bの圧力は10-1Paであり、冷却室12の圧力は103Paである。冷却室12の圧力は、例えば、不活性気体(アルゴンやヘリウムなどの希ガス、水素、窒素等)を用いて、成膜室11A、11Bの圧力よりも高くすることができる。
【0039】
このように、冷却室12の圧力を成膜室11A、11Bの圧力よりも高くすることで、冷却室が成膜室と同じ真空状態である場合と比較して冷却効率を向上することができ、設備長を長くすることなくワークWを冷却することが可能になる。
【0040】
また、成膜室11A、11Bと冷却室12との間には、それぞれ圧力調整室14A、14Bを設けられている。圧力調整室14A、14Bの圧力は、成膜室11A、11Bの圧力よりも高く、冷却室12の圧力よりも低い。このように、圧力調整室14A、14Bを設けることで、冷却室12内の圧力をさらに高くすることができ、冷却室12の冷却効率をさらに高めることが可能となる。
【0041】
実施形態3.
実施形態3では、冷却室12は、伝導によりワークWの冷却を行う。
図6は、実施形態3に係る成膜装置10Bの構成を示す図である。
図7は、
図6の冷却室12に設けられる冷却容器の一例を示す図である。
図6において、
図1と異なる点は、冷却室12にワークWを冷却するための冷却容器15が設けられる点である。
【0042】
冷却容器15には、冷媒が循環する冷媒流路(不図示)が設けられており、冷却容器15の壁自体が冷却装置の機能を果たす。
図7に示すように、冷却容器15内には、成膜材と同じ又は該成膜材を含む材料(合金)からなる複数の金属球16が充填されている。ここでは、チタン膜を成膜するため、金属球16の材料としてはチタンが用いられる。
【0043】
なお、金属球16の形状は、必ずしも真球である必要はなく、楕円体や多少の歪みがあっても良い。金属球16は冷却容器15内で複数層に重なるが、隣接する金属球16間に間隙が形成される。金属球16の直径(又は差し渡し最大寸法)は、ワークWの形状に合わせて変化させることができる。例えば、ワークWに溝が設けられている場合、金属球16の大きさは、該溝よりも大きくすることができる(例えば、1mm)。
【0044】
複数の金属球16は、同一の直径であってもよいし、複数の異なる直径の金属球を含んでいてもよい。例えば、複数の金属球16は、直径1mm、5mm、10mmの金属球16を含み得る。
【0045】
ワークWを保持するホルダ20は、冷却容器15内の複数の金属球16によって包囲された状態で保持される。複数の金属球16は拘束されずに、冷却容器15内を自由に移動可能である。したがって、各金属球16は自由な配置をとることができる。これにより、ワークWとの接触面積を大きくとることができ、設備長を長くすることなく、伝熱によりワークWの冷却が可能になる。
【0046】
また、冷却容器15及びワークWを保持するホルダ20の少なくともいずれか一方に、超音波を印加する超音波発生装置を備えることが好ましい。冷却容器15及びワークWの少なくともいずれか一方に超音波が印加された状態で、複数の金属球16中への基板ワークWの出し入れが行われる。これにより、ホルダ20の出し入れ時の抵抗を低減することができ、ワークWに傷がつくのを抑制することが可能になる。また、ホルダ20を冷却容器15から取り出す際には、ホルダ20に付着した金属球16を離脱させることができる。
【0047】
図8は、実施形態1~3の成膜装置を用いた場合の、ワーク温度の変化を示す図である。成膜室11A、11Bには、それぞれ2つの蒸発源13が設けられているものとする。ホルダ20の移動方向に沿って、上流側から順に蒸発源A、B、C、Dであるものとする。なお、冷却室が成膜室と同じ真空状態である場合に、自然冷却する例を比較例とする。
【0048】
図8に示すように、実施形態1~3のいずれも、設備長を長くすることなく、比較例よりもワークWの温度を低下させることができた。また、予め設定した目標温度を下回る温度まで、最高ワーク温度を低下させることができた。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1と実施形態2とを組み合わせて、表面拡大構造部を含む冷却装置を備えるとともに、冷却室12の圧力が成膜室11A、11Bの圧力よりも高くなるようにしてもよい。また、実施形態2と実施形態3とを組み合わせて、金属球を充填した冷却容器を備えるとともに、冷却室12の圧力が成膜室11A、11Bの圧力よりも高くなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 通路
2 冷却装置
3 冷媒流路
4 突出部
5 張出部
6 発泡金属
7 基部
8 枝部
10 成膜装置
11A、11B 成膜室
12 冷却室
13 蒸発源
14A、14B 圧力調整室
15 冷却容器
16 金属球
20 ホルダ
C 処理容器
W ワーク
M 成膜材