(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/239 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B60R21/239
(21)【出願番号】P 2021205474
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】切手 肇
(72)【発明者】
【氏名】大野 芳生
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013000142(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第103448663(CN,A)
【文献】英国特許出願公開第02412094(GB,A)
【文献】独国特許出願公開第102013002363(DE,A1)
【文献】特開2008-308139(JP,A)
【文献】米国特許第08646808(US,B2)
【文献】特開2001-016828(JP,A)
【文献】実開昭58-112163(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧調整用に膨張用ガスを排気可能な排気孔を周壁に有したエアバッグと、
前記排気孔を閉塞状態と開口状態とに調整可能な閉塞部材と、
該閉塞部材に元部側を連結させた可撓性を有した連結部材の先端部側を保持して、前記排気孔の閉塞状態を維持し、かつ、前記連結部材の先端部側の保持を解除して、前記排気孔を開口状態に移行可能とするアクチュエータと、
前記エアバッグ及び前記アクチュエータを保持する取付ベースと、
を備えて構成されるエアバッグ装置であり、
前記連結部材が、前記先端部に、前記アクチュエータに保持されるための保持孔、を貫通させ、
前記アクチュエータが、
前記取付ベースに取り付けられる本体部と、
前記本体部内の一端側に配設されるスクイブと、
前記スクイブと対向するように、前記本体部の他端側に取り付けられるキャップと、
を備えて構成され、
前記キャップが、
前記本体部の他端側を塞ぐように配設されて、前記スクイブの作動時に発生する燃焼ガスの圧力を受ける天井部と、
該天井部から前記本体部側に延びるように配設されて、前記本体部の他端側に設けられた嵌合凹部に挿入させることにより、前記キャップの挿入方向と逆の外れ方向への移動を規制して前記キャップを前記本体部に取り付ける嵌合凸部と、
を備え、
前記嵌合凸部が、
前記本体部の前記嵌合凹部に嵌合される嵌合本体部と、
前記本体部への嵌合時に、前記天井部と前記本体部の他端との間に配置された前記連結部材の前記保持孔に挿入されて、前記保持孔の内周縁側を係止して、前記連結部材の先端部を保持する保持部と、
前記燃焼ガスの圧力を前記天井部が受けた際に、前記天井部を移動させるとともに、前記天井部から延びる前記保持部を、前記保持孔へ挿入させた前記連結部材の保持位置から前記保持孔から抜ける保持解除位置に移動可能とする移動許容手段と、
を備えて構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記嵌合本体部が、前記天井部から延びる脚部と、該脚部の先端側に配置されて、前記本体部の前記嵌合凹部に設けられた係止凹部に係合される係止凸部と、を備えて構成され、
前記アクチュエータの前記移動許容手段が、
前記嵌合本体部における前記脚部に配設されて、前記燃焼ガスの圧力を前記天井部が受けた際に、前記天井部側と前記係止凸部側とに前記脚部を分断させる脆弱部、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの前記保持部が、前記嵌合本体部の前記脚部に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記アクチュエータの前記保持部と前記脆弱部とが、前記嵌合本体部の前記脚部における前記係止凸部と前記天井部との間における前記天井部側に接近した位置に、配設されていることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記アクチュエータの前記保持部が、前記嵌合本体部と別位置として、前記天井部から延びるように、配設されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記アクチュエータが、前記エアバッグの外側の位置に、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記取付ベースが、
前記エアバッグを取り付けるとともに、前記連結部材の先端部側を挿通させる挿通孔を有するように構成されるベース本体部と、
前記エアバッグを取り付けた前記ベース本体部の裏面側に配設されて、前記アクチュエータを組付可能なベース側組付部と、
を備え、
前記アクチュエータの前記本体部が、前記ベース側組付部に組付可能な本体側組付部を備え、
前記ベース側組付部と前記本体側組付部とが、前記本体側組付部を、前記ベース本体部の裏面側と略平行に移動させて、前記ベース側組付部に対して組付可能に、構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグの周壁に設けた内圧調整用の排気孔から、膨張用ガスを排気可能として、膨張時のエアバッグの内圧を調整可能なエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置としては、内圧調整用に膨張用ガスを排気可能な排気孔を周壁に有したエアバッグと、排気孔を閉塞状態と開口状態とに調整可能な閉塞部材と、閉塞部材に元部側を連結させた可撓性を有した連結部材の先端部側を保持して、排気孔の閉塞状態を維持し、かつ、連結部材の先端部側の保持を解除して、排気孔を開口状態に移行可能とするアクチュエータと、エアバッグ及びアクチュエータを保持する取付ベースと、を備えて構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。アクチュエータは、スクイブを設けて構成されて、作動時、スクイブの作動による燃焼ガスを利用して、連結部材の先端部の保持孔に挿入させていた保持ピンを、保持孔内の保持位置から保持解除位置に抜くように、スライドさせていた。このエアバッグ装置では、アクチュエータが作動しなければ、保持ピンが、連結部材の保持孔から抜けないことから連結部材を保持して、閉塞部材が、エアバッグの排気孔の閉塞状態を維持し、保持ピンが、保持孔から抜ければ、連結部材の保持が解消されることから、閉塞部材は、閉塞状態を維持できず、排気孔を開口させることとなって、排気孔から膨張用ガスが排気されて、エアバッグの内圧を低下させることができた。このアクチュエータは、スクイブを配設させた本体部から保持ピンを突出させており、作動時、保持ピンを本体部側に引き込むように構成されていた。換言すれば、このアクチュエータは、ピストンシリンダタイプとして、本体部内のスクイブから発生する燃焼ガスを流入させるシリンダとしてのガス流入室、を本体部内に備え、ガス流入室内に、保持ピンから延びるピストン部を配設させて、燃焼ガスのガス流入室内への流入時に、ピストン部から延びる保持ピンを本体部(ガス流入室)内に引き込むように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグ装置では、アクチュエータが、ピストンシリンダタイプとして、保持ピンに連なるピストン部をシリンダ内で摺動させるように構成されており、燃焼ガスの気密性やシリンダ内でのピストン部の摺動性とを考慮したピストン部を含めた保持ピンのスライド機構、を必要としていることから、簡便に構成できず、アクチュエータの軽量化や小型化に課題が生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの内圧調整用のアクチュエータを簡便に構成できるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、内圧調整用に膨張用ガスを排気可能な排気孔を周壁に有したエアバッグと、
前記排気孔を閉塞状態と開口状態とに調整可能な閉塞部材と、
該閉塞部材に元部側を連結させた可撓性を有した連結部材の先端部側を保持して、前記排気孔の閉塞状態を維持し、かつ、前記連結部材の先端部側の保持を解除して、前記排気孔を開口状態に移行可能とするアクチュエータと、
前記エアバッグ及び前記アクチュエータを保持する取付ベースと、
を備えて構成されるエアバッグ装置であり、
前記連結部材が、前記先端部に、前記アクチュエータに保持されるための保持孔、を貫通させ、
前記アクチュエータが、
前記取付ベースに取り付けられる本体部と、
前記本体部内の一端側に配設されるスクイブと、
前記スクイブと対向するように、前記本体部の他端側に取り付けられるキャップと、
を備えて構成され、
前記キャップが、
前記本体部の他端側を塞ぐように配設されて、前記スクイブの作動時に発生する燃焼ガスの圧力を受ける天井部と、
該天井部から前記本体部側に延びるように配設されて、前記本体部の他端側に設けられた嵌合凹部に挿入させることにより、前記キャップの挿入方向と逆の外れ方向への移動を規制して前記キャップを前記本体部に取り付ける嵌合凸部と、
を備え、
前記嵌合凸部が、
前記本体部の前記嵌合凹部に嵌合される嵌合本体部と、
前記本体部への嵌合時に、前記天井部と前記本体部の他端との間に配置された前記連結部材の前記保持孔に挿入されて、前記保持孔の内周縁側を係止して、前記連結部材の先端部を保持する保持部と、
前記燃焼ガスの圧力を前記天井部が受けた際に、前記天井部を移動させるとともに、前記天井部から延びる前記保持部を、前記保持孔へ挿入させた前記連結部材の保持位置から前記保持孔から抜ける保持解除位置に移動可能とする移動許容手段と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置では、アクチュエータの作動時、スクイブが燃焼ガスを発生させると、その圧力をキャップの天井部が受け、移動許容手段が、天井部を本体部から離れる方向へ移動させるとともに、保持部を、保持孔へ挿入させた連結部材の保持位置から保持孔から抜ける保持解除位置に、移動させる。そのため、連結部材による閉塞部材の保持状態が解除されて、閉塞部材が、排気孔の閉塞状態を解除させた開口状態に移行し、排気孔から膨張用ガスが排気されることから、エアバッグの内圧を低下させることができる。勿論、スクイブが作動されなければ、連結部材が、保持部に保持されたままとなり、閉塞部材の保持状態を維持して、閉塞部材の排気孔の閉塞状態が維持されることから、エアバッグは、排気孔からの膨張用ガスの排気が抑制されて、内圧低下を抑制できることとなる。そして、アクチュエータの作動時、スクイブから発生される燃焼ガスを天井部が受けて押される方向は、保持孔から保持部が抜ける方向であって、移動許容手段は、単に、本体部の嵌合凹部に嵌合させる嵌合本体部の嵌合強度を、燃焼ガスに押圧される押圧力で嵌合を解消できる強度としたり、あるいは、天井部の移動に伴なう引張力により、嵌合本体部を破損させる構造とするだけでよく、すなわち、保持部を、燃焼ガスの気密性を確保して、保持部をスライドさせるような構成とせずに済み、簡便に、アクチュエータを構成できる。
【0008】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、エアバッグの内圧調整用のアクチュエータを、簡便に構成することができる。
【0009】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記嵌合本体部が、前記天井部から延びる脚部と、該脚部の先端側に配置されて、前記本体部の前記嵌合凹部に設けられた係止凹部に係合される係止凸部と、を備えて構成され、
前記アクチュエータの前記移動許容手段が、
前記嵌合本体部における前記脚部に配設されて、前記燃焼ガスの圧力を前記天井部が受けた際に、前記天井部側と前記係止凸部側とに前記脚部を分断させる脆弱部、から構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、アクチュエータの作動時、アクチュエータの嵌合本体部における脚部が、天井部側と係止凸部側と分断されて、保持部と連ならせた天井部を移動させて、保持部を保持解除位置に移動させることができる。そのため、嵌合本体部の脚部先端の係止凸部における本体部の係止凹部への嵌合強度(係合強度)が高くとも、保持部を移動させることができ、すなわち、連結部材の円滑な保持解消を確保しつつ、強固に、アクチュエータのキャップを、本体部に取り付けることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記アクチュエータの前記保持部が、前記嵌合本体部の前記脚部に配設されていてもよい。
【0012】
このような構成では、連結部材の保持孔に、アクチュエータの保持部兼用の嵌合本体部の脚部を挿入させつつ、脚部自体をアクチュエータの本体部に取り付けることとなり、連結部材との連結とキャップの本体部への取付とを同時に行えることから、キャップを本体部に取り付けるアクチュエータの組立時、嵌合本体部の脚部に注目して作業を行えることから、組立作業を能率的に行える。
【0013】
この場合、前記アクチュエータの前記保持部と前記脆弱部とが、前記嵌合本体部の前記脚部における前記係止凸部と前記天井部との間における前記天井部側に接近した位置に、配設されていることが望ましい。
【0014】
移動許容手段としての脆弱部と保持部とが、嵌合本体部の脚部における天井部側に接近した位置に配設されていれば、脆弱部の分断時、連結部材の保持孔の周縁を規制する天井部が、直ちに、連結部材から離れて、保持孔周縁の規制部位が無くなることから、保持部からの外れが迅速となって、円滑に、連結部材の保持を解除することができる。
【0015】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記アクチュエータの前記保持部が、前記嵌合本体部と別位置として、前記天井部から延びるように、配設されていてもよい。
【0016】
このような構成では、嵌合本体部の部位に保持部を設けていないことから、嵌合本体部自体に、連結部材の保持を維持する強度を考慮せずに済み、キャップを簡便に構成できる。
【0017】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記アクチュエータは、前記エアバッグの外側の位置に、配設されていることが望ましい。
【0018】
このような構成では、作動後に、アクチュエータの本体部側から外れたキャップ側の天井部等が飛散しても、アクチュエータがエアバッグの外側に配置されていることから、エアバッグにダメージを与える虞れがない。
【0019】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記取付ベースが、
前記エアバッグを取り付けるとともに、前記連結部材の先端部側を挿通させる挿通孔を有するように構成されるベース本体部と、
前記エアバッグを取り付けた前記ベース本体部の裏面側に配設されて、前記アクチュエータを組付可能なベース側組付部と、
を備え、
前記アクチュエータの前記本体部が、前記ベース側組付部に組付可能な本体側組付部を備え、
前記ベース側組付部と前記本体側組付部とが、前記本体側組付部を、前記ベース本体部の裏面側と略平行に移動させて、前記ベース側組付部に対して組付可能に、構成されていることが望ましい。
【0020】
このような構成では、アクチュエータの本体側組付部を、取付ベース側のベース側組付部に対し、単に、ベース本体部の裏面側に沿って移動させて組み付ければ、アクチュエータが、取付ベースのベース本体部の裏面側から離れずに、組み付けることできて、アクチュエータを簡単に取付ベースに取り付けることができる。勿論、取付後は、ベース本体部の挿通孔を経てアクチュエータに保持される連結部材が、エアバッグの膨張に伴なって、ベース本体部の表面側に強く引っ張られても、アクチュエータは、ベース本体部の裏面側に取り付けられており、移動せず、的確に連結部材を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態のエアバッグ装置の車両搭載状態を示す側面図であり、エアバッグの膨張完了時を二点鎖線で示す。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置が搭載されるステアリングホイールの概略平面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグ装置が搭載されるステアリングホイールの概略縦断面図である。
【
図4】実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを平らに展開した状態のエアバッグの内周面側から見た閉塞部材の展開図である。
【
図5】実施形態のエアバッグ装置の取付ベースとアクチュエータとを示す底面側から見た概略斜視図である。
【
図6】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータに連結部材を連結させた状態の概略正面図である。
【
図7】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータに連結部材を連結させた状態の概略斜視図であり、併せて、キャップの保持部と連結部材との連結状態を示す概略斜視図である。
【
図8】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータに連結部材を連結させた状態の概略横断面図である。
【
図9】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータの作動前と作動後とを示す概略正面図である。
【
図10】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータの作動前と作動後とを示す概略横断面図である。
【
図11】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータを取付ベースに取り付ける状態を説明する概略斜視図である。
【
図12】実施形態のエアバッグ装置におけるアクチュエータを取付ベースに取り付ける状態を説明する概略縦断面図である。
【
図13】実施形態の変形例のエアバッグ装置におけるアクチュエータに連結部材を連結させた状態の概略斜視図であり、併せて、キャップの保持部と連結部材との連結状態を示す概略斜視図である。
【
図14】
図13に示すエアバッグ装置のアクチュエータの作動前と作動後とを示す概略正面図である。
【
図15】
図13に示すエアバッグ装置のアクチュエータの作動前と作動後とを示す概略横断面図である。
【
図16】他の変形例のアクチュエータの作動前と作動後とを示す概略正面図である。
【
図17】
図16に示すアクチュエータの作動前と作動後とを示す概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ装置10は、
図1~3に示すように、ステアリングホイールWに搭載される運転席用のエアバッグ装置10としている。ステアリングホイールWは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置10と、を備えて構成される。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成される。
【0023】
なお、本明細書では、特に断らない限り、上下方向は、ステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向が対応し、前後方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した前後方向が対応し、左右方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した左右方向が対応するものである。
【0024】
また、車両には、エアバッグ装置10の作動を制御する制御装置100、衝突を検知する衝突検知センサ101、座席SEに着座した乗員(運転者)MD(M,F)の位置を検知する位置検知センサ102、乗員(運転者)MD(M,F)の体重を検知する重量検知センサ103が配置されている。そして、制御装置100は、衝突検知センサ101からの信号に基づいて車両の衝突を検知すると、後述するエアバッグ40を膨張させるようにインフレーター26を作動させ、その際、位置検知センサ102と重量検知センサ103とからの信号に基づき、内圧を低下させない状態でエアバッグ40が運転者を受け止めると判断した場合には、内圧調整機構55の後述するアクチュエータ65を作動させないように制御し、また、内圧を低下させて受け止める状態で乗員を受け止めると判断した場合には、内圧調整機構55のアクチュエータ65を作動させるように、制御することとなる。このエアバッグ40の内圧調整は、例えば、体重の軽い運転者MDFやステアリングホイールWに接近している運転者MDFの場合には、制御装置100は、アクチュエータ65を作動させて、エアバッグ40の内圧を低下させるように、膨張用ガスを排気することとなり、体重の重い運転者MDMやステアリングホイールWから離れた運転者MDMの場合には、制御装置100は、アクチュエータ65を作動させずに、エアバッグ40の内圧を維持するように、制御する。
【0025】
ステアリングホイール本体1は、
図1~3に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属製の芯材2を備えて構成されている。芯材2のリング部Rの部位(リング芯材部4)と各スポーク部Sのリング部R側の部位とには、合成樹脂製の被覆層7が被覆されている。芯材2のボス部Bのボス芯材部3には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス3aが配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー8が配設されている。
【0026】
運転席用のエアバッグ装置10は、折り畳まれて収納され、かつ、運転者MD(M,F)を保護可能に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ40、エアバッグ40に膨張用ガスを供給するインフレーター26、折り畳んだエアバッグ40の上方を覆うエアバッグカバー28、エアバッグ40とインフレーター26とを保持するとともにエアバッグカバー28を保持する取付ベース11、及び、インフレーター26とともにエアバッグ40を取付ベース11に取り付けるためのリテーナ33、を備えて構成される。さらに、実施形態の場合、エアバッグ装置10は、膨張したエアバッグ40の内圧を調整可能に、内圧調整機構55を備えて構成されている。内圧調整機構55は、閉塞部材56、閉塞部材56に連結される連結部材としての閉塞用テザー60、及び、閉塞用テザー60の保持と保持解除とを行う保持解除手段としてのアクチュエータ65、を備えて構成されている。
【0027】
リテーナ33は、四角環状の板金製として、エアバッグ40の後述する流入用開口44の周縁を押えて、エアバッグ40を取付ベース11に取り付けるとともに、インフレーター26を取付ベース11に取り付けるように、四隅に、取付ベース11にナット止めされるボルト34(
図2参照)を備えて構成されている。
【0028】
インフレーター26は、上部に複数のガス吐出口26bを備えた円柱状の本体部26aと、本体部26aの外周面から突出するフランジ部26cと、を備えて構成される。フランジ部26cには、リテーナ33の各ボルト34を貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
【0029】
取付ベース11は、
図2,3,5,7,11に示すように、略長方形板状の板金製とし、ステアリングホイールWのボス部Bの上部に配置されて、折り畳まれたエアバッグ40、インフレーター26、及び、エアバッグカバー28、を取り付けるとともに、アクチュエータ65を取り付ける部位としてしている。実施形態の取付ベース11は、アクチュエータ65を除いたエアバッグ40等を取り付けるベース本体部12と、ベース本体部12の裏面(下面)12b側から突出して、アクチュエータ65を組付可能なベース側組付部20と、を備えて構成されている。
【0030】
ベース本体部12には、インフレーター26の本体部26aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔13が形成されるとともに、その周囲に、リテーナ33のボルト34を貫通させる貫通孔15が形成されている。また、ベース本体部12には、ステアリングホイール本体1の組付部5に組み付けるための複数(実施形態では3個)の係止脚18(
図2,3参照)を取り付ける係止脚組付座17が配設されている。係止脚組付座17に取り付けられた各係止脚18は、エアバッグ装置10をステアリングホイール本体1に組み付けるとともに、ホーンスイッチ機構を内蔵しており、ステアリングホイール本体1にエアバッグ装置10を取り付けた後、エアバッグ装置10の押下操作時、車両に配設したホーンを作動可能に構成されている。また、取付ベース11(ベース本体部12)の係止脚組付座17に取り付けられた係止脚18が、ステアリングホイール本体1のボス芯材部3に設けられた組付部5に、組み付けられることにより、エアバッグ装置10が、ステアリングホイール本体1に取り付けられることとなる。さらに、ベース本体部12には、エアバッグカバー28の側壁部30から延びる図示しない係止脚を係止する複数の係止孔14を備えている。エアバッグカバー28は、各係止孔14に係止されて、取付ベース11に保持されている。さらにまた、ベース本体部12には、ベース側組付部20に組み付けたアクチュエータ65に連結保持される連結部材としての閉塞用テザー60を、折り畳まれたエアバッグ40を取り付けた上面(表面)12a側から下面(裏面)12b側に挿通させる挿通孔16、を配設させている。挿通孔16は、挿通孔13の周縁のリテーナ33から離れて、配設されている。
【0031】
ベース側組付部20は、ベース本体部12の前縁12c側に、切欠き19を設けて、下面12b側に切り起こされて形成されている。ベース側組付部20は、ベース本体部12の下面12bから突出する横断面をコ字形状とする周壁部22と、切欠き19を塞ぐように、周壁部22のコ字形の下端に連結される略長方形板状の横壁部23と、を備えて構成されている。そして、ベース側組付部20は、ベース本体部12の前縁12c側における下面12bに、周壁部22と横壁部23とに囲まれた組付凹部21を備えて構成され、組付凹部21は、アクチュエータ65の本体側組付部72の後述する組付凸部74を、ベース本体部12の裏面12b側に沿う挿入方向BDで挿入可能な挿入用開口21a、を開口させている。さらに、横壁部23には、本体側組付部72の組付軸部75を挿入させる挿入溝部24を開口させている。挿入溝部24は、横壁部23の前端23bから開口されており、開口幅寸法を略一定とした一般部24aと、部分的に幅寸法を広げた係止部24bと、を備えて構成されている。
【0032】
このベース側組付部20と後述する本体側組付部72とは、本体側組付部72を、ベース本体部12の裏面12b側に沿う挿入方向BDで、ベース側組付部20に挿入させることにより、挿入方向BDに沿った移動(挿入方向BD側の移動や抜け方向の移動)を規制でき、かつ、挿入後の本体側組付部72におけるベース本体部12の裏面12b側方向や表面12a側方向への移動(上下移動)を規制できるように、組付可能に構成され、実施形態の場合、相互に対応して係合する組付凹部21と、組付凸部74と、を備えて構成されている。
【0033】
エアバッグカバー28は、合成樹脂製として、折り畳まれて収納されたエアバッグ40の上方を覆う天井壁部29と、天井壁部29の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部30と、を備えて構成されている。天井壁部29には、膨張するエアバッグ40に押されて前後両側に開く2枚の扉部29aが形成されている(
図2参照)。側壁部30の下端には、既述したように、取付ベース11の各係止孔14に係止される図示しない係止脚が配設されている。
【0034】
エアバッグ40は、ポリアミドやポリエステル等の織糸を織った布材から形成され、
図1,2の二点鎖線に示すように、膨張完了形状を、上方から見て円形として、側方から見て略楕円形とするように構成されて、外周壁41が、ステアリングホイール本体1側(リング部R側)の車体側壁部43と、運転者MD側の運転者側壁部51と、を備えて構成されている。
【0035】
車体側壁部43と運転者側壁部51とは、相互に、同一の外形の円形として構成され、車体側壁部43の中央には、膨張用ガスを流入させるように円形に開口する流入用開口44が配設されている(
図3,4参照)。外周壁41は、車体側壁部43と運転者側壁部51との外周縁相互を縫合して形成されている。また、流入用開口44の周縁には、エアバッグ40を取付ベース11に取り付けるためのリテーナ33の各ボルト34を貫通させる取付孔45が、形成されている(
図4参照)。
【0036】
また、エアバッグ40は、車体側壁部43と運転者側壁部51との膨張時の離隔距離を規制するように、車体側壁部43と運転者側壁部51とを連結する複数(実施形態では2本)の厚さ規制用テザー53を配設させている。厚さ規制用テザー53は、車体側壁部43の流入用開口44の周縁の左右両側から延びて、運転者側壁部51側に連結されるように配設されている。
【0037】
さらに、車体側壁部43には、膨張用ガスの流入時の急激なエアバッグ40の内圧上昇を抑制するように、膨張用ガスを逃す二つのガス逃し孔(ベントホール)47,47と、膨張時のエアバッグの内圧を調整するように膨張用ガスを排気可能な排気孔(可変ベントホール)48が、配設されている。ガス逃し孔47は、車体側壁部43の前部側の左右に配置されて、円形に開口している。排気孔48は、流入用開口44の前部側の左右方向の中央に配置されて、円形に開口されている。さらに、車体側壁部43には、排気孔48と流入用開口44との間に、閉塞用テザー60を挿通させるスリット状の小さい開口の挿通孔49が、配設されている。
【0038】
そして、エアバッグ40の内周面40b側における排気孔48の周縁には、内圧調整機構55を構成する閉塞部材56が配設されている。閉塞部材56は、エアバッグ40と同様なポリアミド等の可撓性を有した布材(シート材)から形成されている。閉塞部材56は、
図4に示すように、排気孔48の閉塞状態で、エアバッグ40の内周面40b側における排気孔48の周縁から挿通孔49側の後方へ延びる台形形状としており、後方に延びた先端部60bに、連結部材としての閉塞用テザー60の元部60aを縫合し、排気孔48を覆って前方に延びた元部56a側を、エアバッグ40の車体側壁部43に縫合して配設されている。
【0039】
閉塞部材56は、閉塞用テザー60の先端部60b側が引っ張られていれば、元部56aと先端部56bとの間の中間部56cが、エアバッグ40の内周面40b側で、排気孔48を覆うことから、エアバッグ40の膨張時の膨張用ガスGの圧力で、中間部60cが排気孔48の周縁に圧接され、排気孔48からの膨張用ガスGの漏れを塞ぐように、排気孔48を閉塞状態とすることができ(
図3の二点鎖線の閉塞部材56A参照)、閉塞用テザー60のアクチュエータ65による保持が解除されれば、中間部56cが、膨張用ガスGの圧力に押されて、排気孔48を潜り抜けて、エアバッグ40の外周面40a側に押し出され(
図3の二点鎖線の閉塞部材56B参照)、排気孔48を開口させることから、膨張用ガスGを排気孔48から排気させることができる。
【0040】
連結部材としての閉塞用テザー60は、ポリアミド等の可撓性を有した布材(シート材)から形成された帯状として、元部60aを、閉塞部材56の先端部56bに結合させ、元部60a側から延びた先端部60bを、アクチュエータ65に保持させるように、構成されている。先端部60bには、アクチュエータ65の保持部88を挿入させる保持孔61が、略四角形状に開口されている(
図7参照)。閉塞用テザー60は、保持孔61にアクチュエータ65の保持部88を挿入係止させて、アクチュエータ65に保持され、保持部88が保持孔61から外れれば、保持が解除されることとなる。また、閉塞用テザー60は、閉塞部材56の先端部56bから延びて、中間部60cを、エアバッグ40の挿通孔49を挿通させて、エアバッグ40の内周面40b側から外周面40a側に突出させ、さらに、先端部60b側を、取付ベース11の挿通孔16に挿通させて、取付ベース11の裏面12b側のアクチュエータ65の保持部88に係止させている。
【0041】
連結部材としての閉塞用テザー60の保持と保持解除とを行う保持解除手段としてのアクチュエータ65は、
図6~8に示すように、取付ベース11に取り付けられる本体部66と、本体部66の一端側の元部66a側の内部に配設されるスクイブ71と、スクイブ71と対向するように、本体部66の他端側となる先端部66b側に取り付けられるキャップ78と、を備えて構成されている。
【0042】
本体部66は、円柱状の外形形状として、元部66a側に、スクイブ71に作動用信号を入力させる図示しない信号線を結合させるコネクタ70を配設させている。スクイブ71は、作動時、内部の火薬を着火させて、燃焼ガスFを吐出する。また、本体部66は、元部66a側のスクイブ収納部67と、先端部66b側のキャップ78を取り付けるための円筒状の嵌合凹部68と、を備えて構成されている。
【0043】
嵌合凹部68は、スクイブ収納部67のスクイブ71の周囲から円筒状の周壁部68aを延すように構成され、点対称的な2箇所の位置に、内外周を貫通するように、キャップ78の係止凸部84を挿入係止する係止凹部69を配設させている。2つの係止凹部69は、周壁部68aにおけるベース本体部12に沿うような前後で対向する部位に、四角形の開口を設けて、構成されている。
【0044】
また、本体部66は、ベース本体部12の下面12bに設けられたベース側組付部20に組み付けられる本体側組付部72を周壁部68aから上方に突設させている。本体側組付部72は、周壁部68aから上方に延びる基部73と、基部から上方に延びる組付凸部74と、を備え、組付凸部74は、基部73から上方に延びる組付軸部75と、組付軸部75の上端で左右両側に延びる板状の係止板部76と、を備えて構成されている。組付軸部75は、横断面を、ベース側組付部20の挿入溝部24の開口形状と同等(若干小さく)として、挿入溝部24の係止部24bに嵌合される突起部75bを、一般部75aの左右両面から突出させて構成されている。本体側組付部72は、係止板部76を、ベース側組付部20の挿入用開口21aに挿入させつつ、組付軸部75を挿入溝部24に挿入させ、突起部75b,75bを挿入溝部24の係止部24bに係止させれば、ベース側組付部20に組み付けることができる。組付完了後のアクチュエータ65は、エアバッグ40の外側の位置として、取付ベース11のベース本体部12の下面12b側に配置されることとなる。
【0045】
そして、ベース側組付部20への組付完了後の本体側組付部72は、挿入方向BDに沿った前後方向のずれ、換言すれば、アクチュエータ65(本体部66)の前後のずれに関しては、挿入方向BDに沿った挿入側方向(後方向)のずれが、組付軸部75を挿入溝部24の挿入端24cで位置規制することにより、防止され、挿入方向BDの外れ側方向(前方向)のずれが、組付軸部75の突起部75b,75bを挿入溝部24の係止部24bで係止することにより、防止される。また、アクチュエータ65(本体部66)の上下のずれに関しては、上方へのずれは、本体部66側の基部73の上面側の規制面73aが、ベース側組付部20の横壁部23の下面側の規制面23aに規制されて、防止され、下方へのずれは、本体側組付部72の係止板部76の下面側の規制面76aが、ベース側組付部20の挿入溝部24の周縁の横壁部23の上面側の規制面23cに規制されて、防止されることとなる。左右のずれは、組付軸部75が挿入溝部24の内周面24dに規制されたり、あるいは、係止板部76が周壁部22の左右の内側面22aに規制されて、防止される。その結果、ベース側組付部20への組付完了後の本体側組付部72は、前後、上下、左右が位置規制されることとなる。
【0046】
キャップ78は、スクイブ71やコネクタ70を除く本体部66と同様に、補強フィラーを混合させたポリアミド等の合成樹脂製として、本体部66の他端側となる先端部66b側を塞ぐように配設されて、スクイブ71の作動時に発生する燃焼ガスFの圧力を受ける円板状の天井部79と、天井部79から本体部66側に延びるように配設される嵌合凸部81と、を備えて構成されている。嵌合凸部81は、本体部66の先端部66b側に設けられた嵌合凹部68に挿入させることにより、キャップ78の挿入方向と逆の外れ方向への移動を規制して、キャップ78を本体部66に取り付ける部位である。
【0047】
この嵌合凸部81は、本体部66の嵌合凹部68に嵌合される嵌合本体部82と、本体部66への嵌合時に、閉塞用テザー60の保持孔61の内周縁62側を係止して、閉塞用テザー60の先端部60bを保持する保持部88と、を備えて構成されている。
【0048】
なお、閉塞用テザー60は、保持部88に保持される際、保持孔61に保持部88を挿入させて、天井部79と本体部66の他端(周壁部68aの端面68b)との間に配置された状態となる。
【0049】
さらに、実施形態のキャップ78では、本体部66に取り付けた後、スクイブ71が作動されて、燃焼ガスFが噴出して、その圧力を天井部79が受けた際に、天井部79を移動させるとともに、天井部79から延びる保持部88を、保持孔61へ挿入させた閉塞用テザー60の保持位置HPから保持孔61から抜ける保持解除位置UPに移動可能とする移動許容手段90、を備えて構成されている。
【0050】
実施形態の場合、嵌合本体部82は、二つ配設されており、それぞれ、天井部79から延びる脚部83と、脚部83の先端側に配置されて、本体部66の嵌合凹部68の周壁部68aに設けられた係止凹部(係止穴部)69に係合される係止凸部84と、を備えて構成されている。
【0051】
そして、実施形態の移動許容手段90は、各嵌合本体部82における脚部83に配設されて、燃焼ガスFの圧力を天井部79が受けた際に、天井部79側と係止凸部84側とに脚部83を分断させる脆弱部86、から構成されている。実施形態の場合、脆弱部86は、脚部83の外表面側から凹むV字溝を設けて、薄肉部位として形成されている。
【0052】
さらに、実施形態の場合、保持部88は、各嵌合本体部82の脚部83に配設されている。詳しくは、保持部88は、各脚部83における係止凸部84と天井部79との間において、係止凸部84に接近した先端部83b側でなく、天井部79に近い元部83a側の位置に配設されている。そして、保持部88は、脆弱部86を設けた部位の側面(下面)側を、閉塞用テザー60の保持孔61における内周縁62を保持する係止縁88aとしている。
【0053】
エアバッグ装置10を組み立てて車両に搭載する場合には、リテーナ33の各ボルト34を取付孔45から突出させるようにエアバッグ40内にリテーナ33を入れ、ついで、エアバッグ40を折り畳んで、折り崩れしないように、エアバッグ40を所定の折り崩れ防止材によって包む。なお、エアバッグ40には、内周面40b側に取り付けておいた閉塞部材56から延びる閉塞用テザー60の先端部60b側を、挿通孔49から出しておき、さらに、折り崩れ防止材から引き出しておく、ついで、リテーナ33の各ボルト34を取付ベース11から突出させ、かつ、閉塞用テザー60の先端部60b側を挿通孔16から取付ベース11の裏面12b側に出しつつ、取付ベース11上にエアバッグ40を載せ、さらに、インフレーター26の本体部26aを下方から挿通孔13に挿入させて、フランジ部26cにリテーナ33の各ボルト34を貫通させて、各ボルト34に図示しないナットを締結すれば、取付ベース11に、エアバッグ40とインフレーター26とを取り付けることができる。なお、取付ベース11には、予め、本体側組付部72をベース側組付部20に組み付けて、アクチュエータ65におけるスクイブ71を設けた本体部66を、取り付けておく。
【0054】
そして、アクチュエータ65のキャップ78における嵌合凸部81の各嵌合本体部82を、閉塞用テザー60の先端部60bの保持孔61に挿入させつつ、本体部66の嵌合凹部68に挿入して、各嵌合本体部82の係止凸部84を、本体部66の係止凹部69に係止させ、アクチュエータ65の本体部66の嵌合凹部68に対して、キャップ78の嵌合凸部81を嵌合させて、本体部66にキャップ78を取り付け、かつ、閉塞用テザー60をアクチュエータ65に保持させる。ついで、取付ベース11にエアバッグカバー28を被せて、エアバッグカバー28の図示しない係止脚を取付ベース11の係止孔14に係止させて、取付ベース11にエアバッグカバー28を取り付ければ、エアバッグ装置10を組み立てることができる。なお、エアバッグ装置10では、アクチュエータ65に閉塞用テザー60を保持させた状態を初期状態としており、この状態では、閉塞部材56が、エアバッグ40の内周面40b側で排気孔48を閉塞している状態となる。
【0055】
そして、エアバッグ装置10の車両への搭載は、予め、ステアリングシャフトSSに締結したステアリングホイール本体1の各組付部5に対し、各係止脚18を係止させて、ステアリングホイール本体1にエアバッグ装置10を取り付ければ、エアバッグ装置10を車両に搭載することができる。なお、この時、インフレーター26やアクチュエータ65には、制御装置100から延びる作動用の信号線を結線させておく。
【0056】
実施形態の運転席用エアバッグ装置10では、車両搭載後、車両が衝突すれば、衝突検知センサ101からの信号を入力した制御装置100が、インフレーター26を作動させる。すると、インフレーター26はガス吐出口26bから膨張用ガスGを吐出し、エアバッグ40は、膨張用ガスGにより膨張し、エアバッグカバー28の扉部29a,29aを押し開いて、
図1~3の二点鎖線に示すように、エアバッグカバー28から突出して、リング部Rの上面RP側を覆うように、膨張を完了させる。
【0057】
その際、制御装置100が、位置検知センサ102や重量検知センサ103からの信号に基づき、エアバッグ40の内圧を低下させないように判断すると、保持解除手段としてのアクチュエータ65を作動させず、アクチュエータ65は連結部材として閉塞用テザー60の保持を解除しないことから、閉塞部材56は、排気孔48の閉塞状態を維持する。すなわち、排気孔48の閉塞状態の維持時には、保持解除手段としてのアクチュエータ65が連結部材としての閉塞用テザー60の先端部60bを保持しており、閉塞部材56が、閉塞用テザー60に引っ張られて、エアバッグ40の内周面40b側の排気孔48を覆うように配置され、そして、膨張用ガスGの圧力で押圧されることから、排気孔48を閉塞する(
図3の二点鎖線の閉塞部材56A参照)。
【0058】
また、インフレーター26の作動時、制御装置100が、位置検知センサ102や重量検知センサ103からの信号に基づき、エアバッグ40の内圧を低下させるように判断すると、保持解除手段としてのアクチュエータ65を作動させる。このアクチュエータ65の作動時、スクイブ71が燃焼ガスFを発生させると、
図6と
図9のA,B、及び、
図8と
図10のA,Bに示すように、その圧力をキャップ78の天井部79が受け、移動許容手段90としての脆弱部86が破断して、天井部79を本体部66から離れる方向へ移動させるとともに、保持部88を、保持孔61へ挿入させた閉塞用テザー60の保持位置HPから保持孔61から抜ける保持解除位置UPに、移動させる。そのため、閉塞用テザー60による閉塞部材56の保持状態が解除されて、閉塞部材56が、
図3の二点鎖線の閉塞部材56Bに示すように、膨張用ガスGの圧力を受けて、排気孔48を潜り抜けて、排気孔48の閉塞状態を解除させた開口状態に移行し、排気孔48から膨張用ガスGが排気されることから、エアバッグ40の内圧を低下させることができる。勿論、スクイブ71が作動されなければ、既述したように、連結部材としての閉塞用テザー60が、保持部88に保持されたままとなり、閉塞部材56の保持状態を維持する。そして、アクチュエータ65の作動時、スクイブ71から発生される燃焼ガスFを天井部79が受けて押される方向PDは、保持孔61から保持部88が抜ける方向であって、移動許容手段90は、単に、本体部66の嵌合凹部68に嵌合させる嵌合本体部82の嵌合強度を、燃焼ガスFに押圧される押圧力で嵌合を解消できる強度としたり、あるいは、天井部79の移動に伴なう引張力により、嵌合本体部82を破損させる構造とするだけでよく(実施形態では脆弱部86の部位で嵌合本体部82を破損している)、すなわち、保持部88を、燃焼ガスFの気密性を確保して、保持部88をスライドさせるような構成とせずに済み、簡便に、アクチュエータ65を構成できる。
【0059】
したがって、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ40の内圧調整用のアクチュエータ65を、簡便に構成することができる。
【0060】
そして、実施形態のエアバッグ装置10では、嵌合本体部82が、天井部79から延びる脚部83と、脚部83の先端部83b側に配置されて、本体部66の嵌合凹部68に設けられた係止凹部69に係合される係止凸部84と、を備えて構成され、アクチュエータ65の移動許容手段90が、嵌合本体部82における脚部83に配設されて、燃焼ガスFの圧力を天井部79が受けた際に、天井部79側と係止凸部84側とに脚部83を分断させる脆弱部86、から構成されている。
【0061】
そのため、実施形態では、アクチュエータ65の作動時、アクチュエータ65の嵌合本体部82における脚部83が、天井部79側と係止凸部84側と分断されて、保持部88と連ならせた天井部79を移動させて、保持部88を保持解除位置UPに移動させることができる。そのため、嵌合本体部82の脚部83の先端部83bの係止凸部84における本体部66の係止凹部69への嵌合強度(係合強度)が高くとも、保持部88を移動させることができ、すなわち、連結部材としての閉塞用テザー60の円滑な保持解消を確保しつつ、強固に、アクチュエータ65のキャップ78を、本体部66に取り付けることが可能となる。
【0062】
また、実施形態のエアバッグ装置10では、アクチュエータ65の保持部88が、嵌合本体部82の脚部83に配設されている。
【0063】
そのため、実施形態のエアバッグ装置10では、連結部材としての閉塞用テザー60の保持孔61に、アクチュエータ65の保持部兼用の嵌合本体部82の脚部83を挿入させつつ、脚部83自体をアクチュエータ65の本体部66に取り付けることとなり、閉塞用テザー60との連結とキャップ78の本体部66への取付とを同時に行えることから、キャップ78を本体部66に取り付けるアクチュエータ65の組立時、嵌合本体部82の脚部83に注目して作業を行えることから、組立作業を能率的に行える。
【0064】
この場合、実施形態では、アクチュエータ65の保持部88と脆弱部86とが、嵌合本体部82の脚部83における係止凸部84と天井部79との間における天井部79側に接近した位置に、配設されている。
【0065】
そのため、実施形態では、移動許容手段90としての脆弱部86と保持部88とが、嵌合本体部82の脚部83における天井部79側に接近した位置に配設されていれば、脆弱部86の分断時、閉塞用テザー60の保持孔61の周縁を規制する天井部79が、直ちに、閉塞用テザー60から離れて、保持孔61の周縁の規制部位が無くなることから、保持部88からの外れが迅速となって、円滑に、閉塞用テザー60の保持を解除することができる。
【0066】
勿論、上記の点を考慮しなければ、脆弱部86や保持部88を、嵌合本体部82の脚部83の先端部83b側における係止凸部84に接近する位置や、脚部83の元部83aと先端部83bとの間の中間付近に、配設してもよい。
【0067】
また、実施形態のエアバッグ装置10では、アクチュエータ65が、エアバッグ40の外側の位置に、配設されている。
【0068】
そのため、実施形態のエアバッグ装置10では、作動後に、アクチュエータ65の本体部66側から外れたキャップ78側の天井部79等が飛散しても、アクチュエータ65が、エアバッグ40の内周面40b側でなく、外周面40a側となるエアバッグ40の外側に配置されていることから、エアバッグ40にダメージを与える虞れがない。
【0069】
さらに、実施形態のエアバッグ装置10では、取付ベース11が、エアバッグ40を取り付けるとともに、連結部材としての閉塞用テザー60の先端部60b側を挿通させる挿通孔16を有するように構成されるベース本体部12と、エアバッグ40を取り付けたベース本体部12の裏面12b側に配設されて、アクチュエータ65を組付可能なベース側組付部20と、を備え、アクチュエータ65の本体部66が、ベース側組付部20に組付可能な本体側組付部72を備えている。そして、ベース側組付部20と本体側組付部72とが、本体側組付部72を、ベース本体部12の裏面12b側と略平行に移動させて、ベース側組付部20に対して組付可能に、構成されている。
【0070】
そのため、実施形態では、
図11のA,Bや
図12のA,Bに示すように、アクチュエータ65の本体側組付部72を、取付ベース11側のベース側組付部20に対し、単に、ベース本体部12の裏面12b側に沿って移動させて組み付ければ、アクチュエータ65が、取付ベース11のベース本体部12の裏面12b側から離れずに、組み付けることできて、アクチュエータ65を簡単に取付ベース11に取り付けることができる。勿論、取付後は、ベース本体部12の挿通孔16を経てアクチュエータ65に保持される閉塞用テザー60が、エアバッグ40の膨張に伴なって、ベース本体部12の表面12a側に強く引っ張られても、アクチュエータ65は、ベース本体部12の裏面12b側に取り付けられており、移動せず、的確に閉塞用テザー60を保持することができる。
【0071】
具体的には、実施形態のベース側組付部20と本体側組付部72との組付構造としては、ベース側組付部20側の挿入用開口21aを有した組付凹部21に対して、ベース本体部12の裏面12b側に沿う挿入方向BDに沿って、本体側組付部72の組付凸部74を挿入させれば、アクチュエータ65が、前後、上下、左右の方向の移動を規制されて組み付けられている。そして、このような組付凹部21と組付凸部74との相互に係合する凹凸形状としては、組付完了後のアクチュエータ65の前後、上下、及び、左右の方向の移動を規制できれば、実施形態に限定されるもので無く、組付凹部側を、アクチュエータ65の本体部66側に設け、組付凸部側を、ベース本体部12側に設けてもよい。
【0072】
なお、実施形態では、連結部材としての閉塞用テザー60を保持する保持部88を、嵌合本体部82の脚部83の部位に配設させて、嵌合本体部82と兼用としたが、
図13~15に示すエアバッグ装置10のアクチュエータ65Aのキャップ78Aのように、アクチュエータ65の保持部88Aが、嵌合本体部82と別位置として、天井部79から延びるように、配設させてもよい。
【0073】
このような構成では、嵌合本体部82の部位に保持部88Aを設けていないことから、嵌合本体部82自体に、連結部材としての閉塞用テザー60Aの保持を維持する強度を考慮せずに済み、キャップ78を簡便に構成できる。
【0074】
なお、この保持部88Aは、天井部79の裏面79bの中央79d付近から突出する円柱状として、脆弱部86を有した嵌合本体部82より低い突出高さとしている。このアクチュエータ65Aの作動時には、脆弱部86が破断して、天井部79が本体部66から離れて、保持部88Aが、保持位置HPから保持解除位置UPに移動し、閉塞用テザー60Aの保持を解除することとなる(
図14,15参照)。また、閉塞用テザー60Aは、保持孔61Aの開口面積を、実施形態のキャップ78の保持部88兼用の嵌合本体部82,82を挿入させる保持孔61の開口面積より小さくでき、すなわち、キャップ78の嵌合本体部82,82の外形寸法より保持部88Aの外形寸法が小さいことから、保持孔61Aを小さな開口とできる。そのため、連結部材としての閉塞用テザー60Aは、幅寸法を小さくでき、エアバッグ40の閉塞用テザー60Aを挿通させる挿通孔も小さくできて、その挿通孔からの膨張用ガスの漏れを抑制できる。
【0075】
また、実施形態では、アクチュエータ65の移動許容手段90として、脆弱部86を利用したが、嵌合本体部82が、天井部79から延びる脚部83と、脚部83の先端部83b側に配置されて、本体部66の嵌合凹部68に設けられた係止凹部69に係合される係止凸部84と、を備えて構成されていれば、移動許容手段90Bは、
図16,17に示すアクチュエータ65Bのように、燃焼ガスFの圧力を天井部79が受けた際に、係止凸部84Bが係止凹部69Bから外れる係合構造、から構成されていてもよい。すなわち、
図16,17に示すアクチュエータ65Bのように、本体部66の嵌合凹部68に嵌合させる嵌合本体部82の嵌合強度を、燃焼ガスFに押圧される押圧力で嵌合を解消できる強度の係合構造としてもよい。
【0076】
このような構成では、脆弱部86を設けずに嵌合本体部82の脚部83を構成することができる。
【0077】
なお、実施形態では、運転席用のエアバッグ装置10について説明したが、膨張を完了させたエアバッグの内圧を調整するように、排気孔が配設されていれば、本発明は、運転席用のエアバッグ装置に限定されるものではなく、他の助手席用のエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
10…エアバッグ装置、11…取付ベース、12…ベース本体部、12b…(裏面)下面、16…(連結部材用)挿通孔、20…ベース側組付部、21…組付凹部、40…エアバッグ、48…(可変ベントホール)排気孔、56(A,B)…閉塞部材、60,60A…(連結部材)閉塞用テザー、60a…元部、60b…先端部、61,61A…保持孔、65,65A,65B…(保持解除手段)アクチュエータ、66…本体部、66a…(一端)元部、66b…(他端)先端部、68…嵌合凹部、69,69B…係止凹部、71…スクイブ、72…本体側組付部、74…組付凸部、78,78A…キャップ、79…天井部、81…嵌合凸部、82…嵌合本体部、83…脚部、83a…元部、83b…先端部、84,84B…係止凸部、86…脆弱部、88,88A…保持部、90,90B…移動許容手段、
G…膨張用ガス、F…燃焼ガス、HP…保持位置、RP…保持解除位置、BD…(アクチュエータの)挿入方向。