(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20240910BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2021511262
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008595
(87)【国際公開番号】W WO2020202965
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019068037
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細野 誉士雄
(72)【発明者】
【氏名】亀淵 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷山 実
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108957711(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0277083(US,A1)
【文献】特開2016-090777(JP,A)
【文献】特開2016-109871(JP,A)
【文献】国際公開第2016/110883(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/178260(WO,A1)
【文献】特許第6378822(JP,B1)
【文献】特許第6362289(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/199633(WO,A1)
【文献】特開2015-055728(JP,A)
【文献】特開2014-044372(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズと、
前記撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子によって撮像された画像の歪曲収差を補正する演算器と
を含み、
前記撮像レンズは、
物体側から
、前記撮像素子が配置された像面側に向かって順に、
正の屈折力を有する前群レンズ系と、
最も像面側に、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となるレンズ面を有する後群レンズ系と
から構成され、
前記前群レンズ系は、
物体側から像面側に向かって順に、
光軸近傍において正の屈折力を有する第1レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第2レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第3レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第5レンズと
から構成され、
前記後群レンズ系は、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第6レンズから構成され、
以下の条件式を満足する
撮像装置。
1.0<Gun2R2
(sag6-sag10)
/(TTL/2Y)<2.8 ……(1)
5.0(%)<OD
MAX
<20.0(%) ……(2)
1.9<f/Gun1R1<2.6 ……(3)’
2.4<f/Gun2R2<3.5 ……(4)’
ただし、
Gun2R2
(sag6-sag10)
:前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点で、かつ光軸に対して平行となる2点間の距離(単位は「mm」)
TTL:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離
2Y:前記撮像素子の対角長
OD
MAX
:前記撮像レンズによって発生する撮像エリア内における歪曲収差の最大値
f:レンズ全系の焦点距離
Gun1R1:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の曲率半径
Gun2R2:前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面の曲率半径
とする。
【請求項2】
以下の条件式を満足する
請求項1に記載の
撮像装置。
17.3<νd(L4)<61.7 ……(5)
ただし、
νd(L4):前記第4レンズのd線に対するアッベ数
とする。
【請求項3】
以下の条件式を満足する
請求項1に記載の
撮像装置。
20.2<νd(L5)<61.3 ……(6)
ただし、
νd(L5):前記第5レンズのd線に対するアッベ数
とする。
【請求項4】
以下の条件式を満足する
請求項1に記載の
撮像装置。
23.2<νd(L6)<61.3 ……(7)
ただし、
νd(L6):前記第6レンズのd線に対するアッベ数
とする。
【請求項5】
前記第1レンズの物体側のレンズ面と前記第1レンズの像面側のレンズ面との間、前記第1レンズの像面側のレンズ面と前記第2レンズの像面側のレンズ面との間、または前記第2レンズの像面側のレンズ面と前記第3レンズの像面側のレンズ面との間に、開口絞りが配置されている
請求項1に記載の
撮像装置。
【請求項6】
撮像レンズと、
前記撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子によって撮像された画像の歪曲収差を補正する演算器と
を含み、
前記撮像レンズは、
物体側から、前記撮像素子が配置された像面側に向かって順に、
正の屈折力を有する前群レンズ系と、
最も像面側に、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となるレンズ面を有する後群レンズ系と
から構成され、
前記前群レンズ系は、
物体側から像面側に向かって順に、
光軸近傍において正の屈折力を有する第1レンズと、
光軸近傍において正の屈折力を有する第2レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第3レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第5レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第6レンズと
から構成され、
前記後群レンズ系は、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第7レンズから構成され、
以下の条件式を満足する
撮像装置。
1.0<Gun2R2
(sag6-sag10)/(TTL/2Y)<2.8 ……(1)
5.0(%)<OD
MAX<20.0(%) ……(2)
1.9<f/Gun1R1<2.6 ……(3)’
2.4<f/Gun2R2<3.5 ……(4)’
ただし、
Gun2R2
(sag6-sag10):前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点で、かつ光軸に対して平行となる2点間の距離(単位は「mm」)
TTL:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離
2Y:前記撮像素子の対角長
OD
MAX:前記撮像レンズによって発生する撮像エリア内における歪曲収差の最大値
f:レンズ全系の焦点距離
Gun1R1:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の曲率半径
Gun2R2:前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面の曲率半径
【請求項7】
前記第2レンズは、正の屈折力を有する
請求項
1に記載の
撮像装置。
【請求項8】
前記第6レンズは、負の屈折力を有する
請求項
6に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像レンズは、実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備える
請求項
1ないし8のいずれか1つに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子上に被写体の光学像を結像させる撮像レンズを搭載した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラはカードタイプなど年々薄型のものが作られ、撮像装置の小型化が求められている。また、スマートフォンやタブレットにおいてもデザイン性への追及から端末自体の薄型化や差別化を図るために多機能を搭載するスペース確保のために撮像装置の小型化が求められている。それにより、撮像装置に搭載される撮像レンズへのさらなる小型化の要求が高まっている。また、CCDやCMOSといった撮像素子の小型化と同時に、撮像素子の画素ピッチの微細化による高画素数化が進み、それに伴い、これら撮像装置に使用される撮像レンズにも高い性能が求められてきている。こうした小型かつ高性能の撮像レンズとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載された撮像レンズが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/187405号
【文献】国際公開第2015/098226号
【発明の概要】
【0004】
一方で、暗所撮影でのノイズによる画質の劣化を防止しつつ、高感度撮影を可能とするためには撮像素子の素子サイズ(撮像面のサイズ)を大型化することが要求されている。
【0005】
大型の素子サイズの撮像素子に対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正された高性能の撮像レンズを搭載した撮像装置を提供することが望ましい。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子と、撮像素子によって撮像された画像の歪曲収差を補正する演算器とを含み、撮像レンズが、物体側から、撮像素子が配置された像面側に向かって順に、正の屈折力を有する前群レンズ系と、最も像面側に、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となるレンズ面を有する後群レンズ系とから構成され、前群レンズ系が、物体側から像面側に向かって順に、光軸近傍において正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍において正または負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍において負の屈折力を有する第3レンズと、光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍において正または負の屈折力を有する第5レンズとから構成され、後群レンズ系が、光軸近傍において正または負の屈折力を有する第6レンズから構成され、以下の条件式を満足するように構成されていてもよい。
1.0<Gun2R2(sag6-sag10)/(TTL/2Y)<2.8 ……(1)
5.0(%)<ODMAX<20.0(%) ……(2)
1.9<f/Gun1R1<2.6 ……(3)’
2.4<f/Gun2R2<3.5 ……(4)’
ただし、
Gun2R2(sag6-sag10):後群レンズ系の最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点で、かつ光軸に対して平行となる2点間の距離(単位は「mm」)
TTL:前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離
2Y:撮像素子の対角長
ODMAX:撮像レンズによって発生する撮像エリア内における歪曲収差の最大値
f:レンズ全系の焦点距離
Gun1R1:前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の曲率半径
Gun2R2:後群レンズ系の最も像面側のレンズ面の曲率半径
とする。
また、本開示の一実施の形態に係る撮像装置において、前群レンズ系は、物体側から像面側に向かって順に、光軸近傍において正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍において正の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍において負の屈折力を有する第3レンズと、光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍において負の屈折力を有する第5レンズと、光軸近傍において正または負の屈折力を有する第6レンズとから構成され、後群レンズ系は、光軸近傍において正または負の屈折力を有する第7レンズから構成されていてもよい。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ、または撮像装置では、物体側から像面側に向かって順に配置された前群レンズ系と後群レンズ系とが、大型の素子サイズの撮像素子に対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正されるように構成の最適化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る撮像装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】一実施の形態に係る撮像レンズの第1の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図3】一実施の形態に係る撮像レンズの第2の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図4】一実施の形態に係る撮像レンズの第3の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図5】一実施の形態に係る撮像レンズの第4の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図6】一実施の形態に係る撮像レンズの第5の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図7】一実施の形態に係る撮像レンズの第6の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図8】一実施の形態に係る撮像レンズの第7の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図9】一実施の形態に係る撮像レンズの第8の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図10】一実施の形態に係る撮像レンズの第9の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図11】一実施の形態に係る撮像レンズの第10の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図12】一実施の形態に係る撮像レンズの第11の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図13】一実施の形態に係る撮像レンズの第12の構成例を示すレンズ断面図である。
【
図14】条件式(1)におけるパラメータGun2R2
(sag6-sag10)の概要を示す説明図である。
【
図15】
図2に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例1における諸収差を示す収差図である。
【
図16】
図3に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例2における諸収差を示す収差図である。
【
図17】
図4に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例3における諸収差を示す収差図である。
【
図18】
図5に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例4における諸収差を示す収差図である。
【
図19】
図6に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例5における諸収差を示す収差図である。
【
図20】
図7に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例6における諸収差を示す収差図である。
【
図21】
図8に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例7における諸収差を示す収差図である。
【
図22】
図9に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例8における諸収差を示す収差図である。
【
図23】
図10に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例9における諸収差を示す収差図である。
【
図24】
図11に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例10における諸収差を示す収差図である。
【
図25】
図12に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例11における諸収差を示す収差図である。
【
図26】
図13に示した撮像レンズに具体的な数値を適用した数値実施例12における諸収差を示す収差図である。
【
図29】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図30】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【
図31】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す構成図である。
【
図32】
図31に示すカメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.比較例
1.撮像装置の基本構成
2.レンズの基本構成
3.作用・効果
4.具体的な撮像装置への適用例
5.レンズの数値実施例
6.応用例
6.1 第1の応用例
6.2 第2の応用例
7.その他の実施の形態
【0011】
<0.比較例>
特許文献1には、以下の条件を満足する撮像レンズが記載されている。
0.60<L/2Y<0.95
L:撮像レンズの全長
2Y:撮像面対角線長(個体撮像素子の矩形実効画素領域の対角線長)
【0012】
特許文献1に記載の撮像レンズにおいて、高感度撮影を可能とするために撮像素子の素子サイズ(撮像面のサイズ)の大型化を図りつつ、撮像レンズのさらなる小型化を目指すためには、上記条件式の値を小さくする必要がある。特許文献1に記載の数値実施例では、上記条件式の最小値が0.69となっているが、この値から撮像レンズのさらなる全長短縮化を行うには、特許文献1に記載の技術だけでは軸外収差の補正不足を招き、必要な光学性能を確保することが困難となる。そのため、レンズの枚数およびパワー構成や、最も像面側に近いレンズの形状を見直すことで改善の余地がある。
【0013】
また、特許文献2には、以下の条件を満足する撮像レンズが記載されている。
0.55<Linf/D<0.80
Linf:撮像レンズの最も物体側のレンズ面から撮像面までの光軸上の距離
D:有効撮像エリアの対角長
【0014】
特許文献2に記載の撮像レンズにおいて、高感度撮影を可能とするために撮像素子の素子サイズの大型化を図りつつ、撮像レンズのさらなる小型化を目指すためには、上記条件式の値を小さくする必要がある。特許文献2に記載の数値実施例では、上記条件式の最小値が0.582となっているが、この値から撮像レンズのさらなる全長短縮化を行うには、特許文献2に記載の技術だけでは軸外収差の補正不足を招き、必要な光学性能を確保することが困難となる。また、Dが大きい撮像素子を使用した場合、全長短縮をしつつ、良好な性能を確保するためには、特許文献2に記載されているレンズの枚数およびパワー構成では、必要な光学性能を確保することが困難となる。そのため、レンズの枚数およびパワー構成、および最も像面側に近いレンズの形状を見直すことで改善の余地がある。
【0015】
そこで、大型の素子サイズの撮像素子に対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正された高性能の撮像レンズ、およびそのような撮像レンズを搭載した撮像装置を提供することが望ましい。
【0016】
<1.撮像装置の基本構成>
図1は、本開示の一実施の形態に係る撮像装置の一構成例を示している。本開示の一実施の形態に係る撮像装置は、
図1に示したように、撮像レンズ300と、撮像素子301と、演算器302とを備えている。撮像素子301は、撮像レンズ300によって像面IMGに形成された光学像に応じた、電気的な撮像信号に変換するものであり、例えばCCDやCMOS等の固体撮像素子で構成されている。撮像レンズ300の像面(結像面)は、撮像素子301の撮像面に一致するように配置される。
【0017】
演算器302は、撮像素子301によって撮像された画像を取得して各種の画像処理を施すものである。演算器302は、撮像素子301によって撮像された画像を取得する画像取得部303と、その取得された画像に対して歪曲収差を補正するような画像処理を施した画像を出力する歪画像補正部304とを有している。
【0018】
<2.レンズの基本構成>
図2~
図13に、
図1に示した撮像装置における撮像レンズ300に適用される、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300の第1ないし第12の構成例を示す。
図2は、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300の第1の構成例を示している。
図3は、一実施の形態に係る撮像レンズ300の第2の構成例を示している。
図4は、一実施の形態に係る撮像レンズ300の第3の構成例を示している。
図5は、一実施の形態に係る撮像レンズ300の第4の構成例を示している。
図6は、一実施の形態に係る撮像レンズ300の第5の構成例を示している。
図7は、撮像レンズ300の第6の構成例を示している。
図8は、撮像レンズ300の第7の構成例を示している。
図9は、撮像レンズ300の第8の構成例を示している。
図10は、撮像レンズ300の第9の構成例を示している。
図11は、撮像レンズ300の第10の構成例を示している。
図12は、撮像レンズ300の第11の構成例を示している。
図13は、撮像レンズ300の第12の構成例を示している。これらの構成例に具体的な数値を適用した数値実施例は後述する。
【0019】
図2等において、符号IMGは像面、Z1は光軸を示す。Stは開口絞りを示す。像面IMGの近傍にはCCDやCMOS等の撮像素子301(
図1)が配置されていてもよい。撮像レンズ300と像面IMGとの間には、撮像素子保護用のシールガラスSGや各種の光学フィルタ等の光学部材が配置されていてもよい。
【0020】
以下、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300の構成を、適宜
図2等に示した構成例に対応付けて説明するが、本開示による技術は、図示した構成例に限定されるものではない。
【0021】
一実施の形態に係る撮像レンズ300は、光軸Z1に沿って物体側から像面側に向かって順に、前群レンズ系Gun1と、後群レンズ系Gun2とから構成されている。
【0022】
前群レンズ系Gun1は、正の屈折力を有する。後群レンズ系Gun2は、最も像面側に、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となるレンズ面を有する。前群レンズ系Gun1は複数のレンズからなり、後群レンズ系Gun2は1枚のレンズからなることが望ましい。
【0023】
一実施の形態に係る撮像レンズ300は、例えば、
図2~
図9、および
図13に示した構成例のように、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、第6レンズL6とが配置された、実質的に6枚のレンズで構成される。このように全体として6枚のレンズで構成する場合、前群レンズ系Gun1が第1ないし第5レンズL1~L5からなり、後群レンズ系Gun2が第6レンズL6からなることが望ましい。また、この場合、第1レンズL1は、光軸近傍において正の屈折力を有することが望ましい。第2レンズL2は、光軸近傍において正または負の屈折力を有することが望ましい。第3レンズL3は、光軸近傍において負の屈折力を有することが望ましい。第4レンズL4は、光軸近傍において負の屈折力を有することが望ましい。第5レンズL5は、光軸近傍において正または負の屈折力を有することが望ましい。第6レンズL6は、光軸近傍において正または負の屈折力を有することが望ましい。第6レンズL6は、像面側のレンズ面が、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となる非球面形状であることが望ましい。
【0024】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、例えば、
図9~
図12に示した構成例のように、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、第6レンズL6と、第7レンズL7とが配置された、実質的に7枚のレンズで構成されていてもよい。このように、全体として7枚のレンズで構成する場合、前群レンズ系Gun1が第1ないし第6レンズL1~L6からなり、後群レンズ系Gun2が第7レンズL7からなることが望ましい。また、この場合、第1レンズL1は、光軸近傍において正の屈折力を有することが望ましい。第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有することが望ましい。第3レンズL3は、光軸近傍において負の屈折力を有することが望ましい。第4レンズL4は、光軸近傍において正または負の屈折力を有することが望ましい。第5レンズL5は、光軸近傍において負の屈折力を有することが望ましい。第6レンズL6は、光軸近傍において正または負の屈折力を有することが望ましい。第7レンズL7は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第7レンズL7は、像面側のレンズ面が、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となる非球面形状であることが望ましい。
【0025】
その他、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300は、後述する所定の条件式等をさらに満足することが望ましい。
【0026】
<3.作用・効果>
次に、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300の作用および効果を説明する。併せて、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300における、より望ましい構成を説明する。
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0027】
一実施の形態に係る撮像レンズ300では、物体側から像面側に向かって順に配置された前群レンズ系Gun1と後群レンズ系Gun2とが、大型の素子サイズの撮像素子301に対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正されるように、構成の最適化が図られている。
【0028】
一実施の形態に係る撮像レンズ300では、以下で説明するように、屈折力配置の最適化、非球面を効果的に用いたレンズ形状の最適化、およびレンズ材料の最適化等が行われることが望ましい。これにより、大型の素子サイズの撮像素子301に対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正された高性能の撮像レンズ300を提供することができる。
【0029】
一実施の形態に係る撮像レンズ300では、屈折力配置等の構成の最適化を図り、演算器302(
図1)によって補正可能な所定範囲(条件式(2))の歪曲収差を敢えて発生させつつ、他の収差をバランス良く補正する。
【0030】
一実施の形態に係る撮像装置によれば、撮像レンズ300によって生ずる歪曲収差を演算器302によって補正するようにしたので、大型の素子サイズの高画素の撮像素子301に対応可能で、かつ、撮像装置全体しての小型化を図ることができる。
【0031】
一実施の形態に係る撮像レンズ300では、後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面を、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状とすることで、最も像面側のレンズ面を出射した光の像面IMGへの入射角を抑制することができる。
【0032】
一実施の形態に係る撮像レンズ300は、以下の条件式(1),(2)を満足することが望ましい。
図14に、条件式(1)におけるパラメータGun2R2
(sag6-sag10)の概要を示す。
1.0<Gun2R2
(sag6-sag10)/(TTL/2Y)<2.8 ……(1)
5.0(%)<OD
MAX<20.0(%) ……(2)
ただし、
Gun2R2
(sag6-sag10):後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点で、かつ光軸に対して平行となる2点間の距離(単位は「mm」)
TTL:前群レンズ系Gun1の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離
2Y:撮像素子301の対角長
OD
MAX:撮像レンズ300によって発生する撮像エリア内における歪曲収差の最大値
とする。
【0033】
条件式(1)は、後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点との2点間の距離と、前群レンズ系Gun1の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離と撮像素子301の対角長との比を規定している。また、上記条件式(2)は、撮像レンズ300の撮像エリア内における歪曲収差の最大値を規定している。条件式(1),(2)を満足することで、小型で良好な性能を確保することができる。
【0034】
条件式(1)の上限を超えると、後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点との2点間の距離が大きくなる。この場合、入射光線に対する屈折力が強くなるため、小型化を達成することができ、軸外コマ収差補正は容易になるものの、レンズ成形時の加工難易度が高くなる。条件式(1)の下限を超えると、後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点との2点間の距離が小さくなる。この場合、入射光線に対する屈折力が弱くなるため、レンズ全長が長くなることで小型化を達成することが難しくなる。
【0035】
また、条件式(2)の上限を超えると、歪曲収差量が過大となる。全長短縮には有利になるが、他の軸外収差をバランス良く補正することも困難となる。条件式(2)の下限を超えると、撮像レンズ300での歪曲収差補正が必要となるため、撮像装置に必要な全長短縮を実現することが困難となる。
【0036】
なお、上記した条件式(1)の効果をより良好に実現するためには、条件式(1)の数値範囲を下記条件式(1)’のように設定することがより望ましい。
1.1<Gun2R2(sag6-sag10)/(TTL/2Y)<2.6 ……(1)’
【0037】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
1.7<f/Gun1R1<2.8 ……(3)
ただし、
f:レンズ全系の焦点距離
Gun1R1:前群レンズ系Gun1の最も物体側のレンズ面の曲率半径
とする。
【0038】
条件式(3)は、全系の焦点距離と前群レンズ系Gun1の最も物体側のレンズ面の曲率半径との比を規定している。条件式(3)を満足することで、小型で良好な性能を確保することができる。条件式(3)の上限を超えると、全系の焦点距離が長くなり、入射光線に対する屈折力が弱くなるため、レンズ全長が大きくなることで小型化を達成するのが難しくなる。条件式(3)の下限を超えると、全系の焦点距離が短くなり、入射光線に対する屈折力が強くなるため、小型化を達成することができ、諸収差の補正は容易になるものの、レンズ組立時の敏感度が高くなる。
【0039】
なお、上記した条件式(3)の効果をより良好に実現するためには、条件式(3)の数値範囲を下記条件式(3)’のように設定することがより望ましい。
1.9<f/Gun1R1<2.6 ……(3)’
【0040】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
2.2<f/Gun2R2<3.8 ……(4)
ただし、
f:レンズ全系の焦点距離
Gun2R2:後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面の曲率半径
とする。
【0041】
条件式(4)は、全系の焦点距離と後群レンズ系Gun2の最も像面側のレンズ面の曲率半径との比を規定している。条件式(4)を満足することで、小型で良好な性能を確保することができる。条件式(4)の上限を超えると、全系の焦点距離が長くなり、入射光線に対する屈折力が弱くなるため、レンズ全長が大きくなることで小型化を達成するのが難しくなる。条件式(4)の下限を超えると、全系の焦点距離が短くなり、入射光線に対する屈折力が強くなるため、小型化を達成することができ、諸収差の補正は容易になるものの、レンズ組立時の敏感度が高くなる。
【0042】
なお、上記した条件式(4)の効果をより良好に実現するためには、条件式(4)の数値範囲を下記条件式(4)’のように設定することがより望ましい。
2.4<f/Gun2R2<3.5 ……(4)’
【0043】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
17.3<νd(L4)<61.7 ……(5)
ただし、
νd(L4):第4レンズL4のd線に対するアッベ数
とする。
【0044】
上記条件式(5)は、第4レンズL4のアッベ数を規定している。条件式(5)を満足することで、良好な性能を確保することができる。条件式(5)の上限を超えると、F線やg線の屈折率が十分に得られないため、軸上色収差が抑えきれなくなってしまう。条件式(5)の下限を超えると、F線やg線の屈折率が過剰になりすぎるため、軸上率色収差が抑えきれなくなってしまう。
【0045】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、さらに以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
20.2<νd(L5)<61.3 ……(6)
ただし、
νd(L5):第5レンズL5のd線に対するアッベ数
とする。
【0046】
条件式(6)は、第5レンズL5のアッベ数を規定している。条件式(6)を満足することで、良好な性能を確保することができる。条件式(6)の上限を超えると、F線やg線の屈折率が十分に得られないため、軸上色収差が抑えきれなくなってしまう。条件式(6)の下限を超えると、F線やg線の屈折率が過剰になりすぎるため、軸上率色収差が抑えきれなくなってしまう。
【0047】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、さらに以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
23.2<νd(L6)<61.3 ……(7)
ただし、
νd(L6):第6レンズL6のd線に対するアッベ数
とする。
【0048】
上記条件式(7)は、第6レンズL6のアッベ数を規定している。条件式(7)を満足することで、良好な性能を確保することができる。条件式(7)の上限を超えると、F線やg線の屈折率が十分に得られないため、軸上色収差が抑えきれなくなってしまう。条件式(7)の下限を超えると、F線やg線の屈折率が過剰になりすぎるため、軸上率色収差が抑えきれなくなってしまう。
【0049】
また、一実施の形態に係る撮像レンズ300において、開口絞りStは、第1レンズL1の物体側のレンズ面と第1レンズL1の像面側のレンズ面との間、第1レンズL1の像面側のレンズ面と第2レンズL2の像面側のレンズ面との間、または第2レンズL2の像面側のレンズ面と第3レンズL3の像面側のレンズ面との間に、配置されていることが望ましい。開口絞りStを第1レンズL1の物体側のレンズ面と第1レンズL1の像面側のレンズ面との間に配置する場合、第1レンズL1に入射する光線の広がりを抑えられるので収差補正と第1レンズL1に起因するフレアの改善とが両立できる。開口絞りStを第1レンズL1の像面側のレンズ面と第2レンズL2の像面側のレンズ面との間に配置する場合、第2レンズL2に入射する光線の広がりを抑えられるので収差補正と第2レンズL2に起因するフレアの改善とが両立できる。
【0050】
<3.具体的な撮像装置への適用例>
次に、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300の具体的な撮像装置への適用例を説明する。
【0051】
図27および
図28は、一実施の形態に係る撮像レンズ300を適用した撮像装置の一構成例を示している。この構成例は、撮像装置を備えた携帯端末機器(例えば携帯情報端末や携帯電話端末)の一例である。この携帯端末機器は、略長方形状の筐体201を備えている。筐体201の前面側(
図27)には表示部202やフロントカメラ部203が設けられている。筐体201の背面側(
図28)には、メインカメラ部204やカメラフラッシュ205が設けられている。また、筐体201の側部には、操作ボタン206,207が設けられている。
【0052】
表示部202は、例えば表面への接触状態を検知することによって各種の操作を可能にするタッチパネルとなっている。これにより、表示部202は、各種の情報を表示する表示機能とユーザによる各種の入力操作を可能にする入力機能とを有している。表示部202は、操作状態や、フロントカメラ部203またはメインカメラ部204で撮影した画像等の各種のデータを表示する。なお、操作ボタン206,207からも各種の操作が可能となっている。
【0053】
一実施の形態に係る撮像レンズ300は、例えば
図27および
図28に示したような携帯端末機器における撮像装置(フロントカメラ部203またはメインカメラ部204)のカメラモジュール用レンズとして適用可能である。このようなカメラモジュール用レンズとして用いる場合、撮像レンズ300の像面IMG付近に、撮像レンズ300によって形成された光学像に応じた撮像信号(画像信号)を出力するCCDやCMOS等の撮像素子301が配置される。この場合、
図2等に示したように、最終レンズと像面IMGとの間には、撮像素子保護用のシールガラスSGや各種の光学フィルタ等の光学部材が配置されていてもよい。また、シールガラスSGや各種の光学フィルタ等の光学部材については最終レンズと像面IMGとの間であれば任意の位置に配置してもよい。
【0054】
なお、一実施の形態に係る撮像レンズ300は、上記した携帯端末機器に限らず、その他の電子機器、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ用の撮像レンズとしても適用可能である。その他、CCDやCMOSなどの固体撮像素子を使用した小型の撮像装置全般、例えば光センサ、携帯用モジュールカメラ、およびWEBカメラなどに適用可能である。また、監視カメラ等にも適用することができる。
【実施例】
【0055】
<5.レンズの数値実施例>
次に、本開示の一実施の形態に係る撮像レンズ300の具体的な数値実施例について説明する。
ここでは、
図2~
図13に示した各構成例の撮像レンズ1~12に、具体的な数値を適用した数値実施例を説明する。
【0056】
なお、以下の各表や説明において示した記号の意味等については、下記に示す通りである。「Si」は、最も物体側から順次増加するようにして符号を付したi番目の面の番号を示している。「Ri」は、i番目の面の近軸の曲率半径の値(mm)を示す。「Di」はi番目の面とi+1番目の面との間の光軸上の間隔の値(mm)を示す。「Ndi」はi番目の面を有する光学要素の材質のd線(波長587.6nm)における屈折率の値を示す。「νdi」はi番目の面を有する光学要素の材質のd線におけるアッベ数の値を示す。「Ri」の値が「∞」となっている部分は平面、または仮想面を示す。「Li」は、面の属性を示す。「Li」において例えば「L1R1」は第1レンズL1の物体側のレンズ面、「L1R2」は第1レンズL1の像面側のレンズ面であることを示す。同様に、「Li」において「L2R1」は第2レンズL2の物体側のレンズ面、「L2R2」は第2レンズL2の像面側のレンズ面であることを示す。他のレンズ面についても同様である。
【0057】
また、各数値実施例において用いられるレンズには、レンズ面が非球面によって構成されるものがある。非球面形状は、以下の式によって定義される。なお、後述する非球面係数を示す各表において、「E-i」は10を底とする指数表現、すなわち、「10-i」を表しており、例えば、「0.12345E-05」は「0.12345×10-5」を表している。
【0058】
(非球面の式)
Z=C・h2/{1+(1-(1+K)・C2・h2)1/2}+ΣAn・hn
(n=3以上の整数)
ただし、
Z:非球面の深さ
C:近軸曲率=1/R
h:光軸からレンズ面までの距離
K:離心率(第2次の非球面係数)
An:第n次の非球面係数
とする。
【0059】
(各数値実施例の概要)
以下の各数値実施例が適用される撮像レンズ1~12はいずれも、上記したレンズの基本構成を満足した構成となっている。すなわち、撮像レンズ1~12はいずれも、光軸Z1に沿って物体側から像面側に向かって順に、前群レンズ系Gun1と、後群レンズ系Gun2とから構成されている。
【0060】
開口絞りStは、第1レンズL1の物体側のレンズ面と第1レンズL1の像面側のレンズ面との間、第1レンズL1の像面側のレンズ面と第2レンズL2の像面側のレンズ面との間、または第2レンズL2の像面側のレンズ面と第3レンズL3の像面側のレンズ面との間に、配置されている。
【0061】
(撮像レンズ1~8,12)
撮像レンズ1~8,12(
図2~
図9、
図13)はいずれも、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、第6レンズL6とが配置された、実質的に6枚のレンズで構成されている。前群レンズ系Gun1は、第1ないし第5レンズL1~L5からなる。後群レンズ系Gun2は、第6レンズL6からなる。
【0062】
撮像レンズ1~8,12において、第1レンズL1は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第2レンズL2は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第3レンズL3は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第4レンズL4は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第6レンズL6は、像面側のレンズ面が、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となる非球面形状である。
【0063】
撮像レンズ1~8,12において、第6レンズL6と像面IMGとの間にはシールガラスSGが配置されている。
【0064】
(撮像レンズ9~11)
撮像レンズ9~11(
図9~
図12)はいずれも、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5と、第6レンズL6と、第7レンズL7とが配置された、実質的に7枚のレンズで構成されている。前群レンズ系Gun1は、第1ないし第6レンズL1~L6からなる。後群レンズ系Gun2は、第7レンズL7からなる。
【0065】
撮像レンズ9~11において、第1レンズL1は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第3レンズL3は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第4レンズL4は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第7レンズL7は、光軸近傍において正または負の屈折力を有している。第7レンズL7は、像面側のレンズ面が、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となる非球面形状である。
【0066】
撮像レンズ9~11において、第7レンズL7と像面IMGとの間にはシールガラスSGが配置されている。
【0067】
[数値実施例1]
[表1]に、
図2に示した撮像レンズ1に具体的な数値を適用した数値実施例1の基本的なレンズデータを示す。数値実施例1に係る撮像レンズ1では、第2レンズL2は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0068】
数値実施例1に係る撮像レンズ1において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表2],[表3]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0069】
また、[表4]には、数値実施例1に係る撮像レンズ1におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表5]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
以上の数値実施例1における諸収差を
図15に示す。
図15には諸収差として、球面収差、非点収差(像面湾曲)、および歪曲収差を示す。これらの各収差図には、d線(587.56nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図および非点収差図には、g線(435.84nm)、およびC線(656.27nm)に対する収差も示す。非点収差図において、Sはサジタル像面、Tはタンジェンシャル像面における値を示す。以降の他の数値実施例における収差図についても同様である。
【0076】
各収差図から分かるように、数値実施例1に係る撮像レンズ1は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0077】
[数値実施例2]
[表6]に、
図3に示した撮像レンズ2に具体的な数値を適用した数値実施例2の基本的なレンズデータを示す。数値実施例2に係る撮像レンズ2では、第2レンズL2は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0078】
数値実施例2に係る撮像レンズ2において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表7],[表8]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0079】
また、[表9]には、数値実施例2に係る撮像レンズ2におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表10]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
各収差図から分かるように、数値実施例2に係る撮像レンズ2は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0087】
[数値実施例3]
[表11]に、
図4に示した撮像レンズ3に具体的な数値を適用した数値実施例3の基本的なレンズデータを示す。数値実施例3に係る撮像レンズ3では、第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0088】
数値実施例3に係る撮像レンズ3において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表12],[表13]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0089】
また、[表14]には、数値実施例3に係る撮像レンズ3におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表15]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
各収差図から分かるように、数値実施例3に係る撮像レンズ3は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0097】
[数値実施例4]
[表16]に、
図5に示した撮像レンズ4に具体的な数値を適用した数値実施例4の基本的なレンズデータを示す。数値実施例4に係る撮像レンズ4では、第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0098】
数値実施例4に係る撮像レンズ4において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表17],[表18]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0099】
また、[表19]には、数値実施例4に係る撮像レンズ4におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表20]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
各収差図から分かるように、数値実施例4に係る撮像レンズ4は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0107】
[数値実施例5]
[表21]に、
図6に示した撮像レンズ5に具体的な数値を適用した数値実施例5の基本的なレンズデータを示す。数値実施例5に係る撮像レンズ5では、第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0108】
数値実施例5に係る撮像レンズ5において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表22],[表23]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0109】
また、[表24]には、数値実施例5に係る撮像レンズ5におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表25]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
各収差図から分かるように、数値実施例5に係る撮像レンズ5は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0117】
[数値実施例6]
[表26]に、
図7に示した撮像レンズ6に具体的な数値を適用した数値実施例6の基本的なレンズデータを示す。数値実施例6に係る撮像レンズ6では、第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0118】
数値実施例6に係る撮像レンズ6において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表27],[表28]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0119】
また、[表29]には、数値実施例6に係る撮像レンズ6におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表30]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
各収差図から分かるように、数値実施例6に係る撮像レンズ6は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0127】
[数値実施例7]
[表31]に、
図8に示した撮像レンズ7に具体的な数値を適用した数値実施例7の基本的なレンズデータを示す。数値実施例7に係る撮像レンズ7では、第2レンズL2は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0128】
数値実施例7に係る撮像レンズ7において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表32],[表33]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0129】
また、[表34]には、数値実施例7に係る撮像レンズ7におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表35]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
各収差図から分かるように、数値実施例7に係る撮像レンズ7は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0137】
[数値実施例8]
[表36]に、
図9に示した撮像レンズ8に具体的な数値を適用した数値実施例8の基本的なレンズデータを示す。数値実施例8に係る撮像レンズ8では、第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において正の屈折力を有している。
【0138】
数値実施例8に係る撮像レンズ8において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表37],[表38]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0139】
また、[表39]には、数値実施例8に係る撮像レンズ8におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表40]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
各収差図から分かるように、数値実施例8に係る撮像レンズ8は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0147】
[数値実施例9]
[表41]に、
図10に示した撮像レンズ9に具体的な数値を適用した数値実施例9の基本的なレンズデータを示す。数値実施例9に係る撮像レンズ9では、第4レンズL4は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第7レンズL7は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0148】
数値実施例9に係る撮像レンズ9において、第1レンズL1~第7レンズL7の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表42],[表43]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0149】
また、[表44]には、数値実施例9に係る撮像レンズ9におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表45]には、第1レンズL1~第7レンズL7のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
各収差図から分かるように、数値実施例9に係る撮像レンズ9は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0157】
[数値実施例10]
[表46]に、
図11に示した撮像レンズ10に具体的な数値を適用した数値実施例10の基本的なレンズデータを示す。数値実施例10に係る撮像レンズ10では、第4レンズL4は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第7レンズL7は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0158】
数値実施例10に係る撮像レンズ10において、第1レンズL1~第7レンズL7の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表47],[表48]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0159】
また、[表49]には、数値実施例10に係る撮像レンズ10におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表50]には、第1レンズL1~第7レンズL7のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
以上の数値実施例10における諸収差を
図24に示す。
【0166】
各収差図から分かるように、数値実施例10に係る撮像レンズ10は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0167】
[数値実施例11]
[表51]に、
図12に示した撮像レンズ11に具体的な数値を適用した数値実施例11の基本的なレンズデータを示す。数値実施例11に係る撮像レンズ11では、第4レンズL4は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。第7レンズL7は、光軸近傍において正の屈折力を有している。
【0168】
数値実施例11に係る撮像レンズ11において、第1レンズL1~第7レンズL7の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表52],[表53]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0169】
また、[表54]には、数値実施例11に係る撮像レンズ11におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表55]には、第1レンズL1~第7レンズL7のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
以上の数値実施例11における諸収差を
図25に示す。
【0176】
各収差図から分かるように、数値実施例11に係る撮像レンズ11は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0177】
[数値実施例12]
[表56]に、
図13に示した撮像レンズ12に具体的な数値を適用した数値実施例12の基本的なレンズデータを示す。数値実施例12に係る撮像レンズ12では、第2レンズL2は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第5レンズL5は、光軸近傍において正の屈折力を有している。第6レンズL6は、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0178】
数値実施例12に係る撮像レンズ12において、第1レンズL1~第6レンズL6の各レンズの両面は非球面形状となっている。[表57],[表58]には、それらの非球面の形状を表す係数の値を示す。
【0179】
また、[表59]には、数値実施例12に係る撮像レンズ12におけるレンズ全系の焦点距離f、F値、全長、および半画角ωの値を示す。[表60]には、第1レンズL1~第6レンズL6のそれぞれの焦点距離の値を示す。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
以上の数値実施例12における諸収差を
図26に示す。
【0186】
各収差図から分かるように、数値実施例12に係る撮像レンズ12は、大型の素子サイズに対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることは明らかである。
【0187】
[各実施例のその他の数値データ]
[表61]~[表62]には、上述の各条件式に関する値を、各数値実施例についてまとめたものを示す。[表61]~[表62]から分かるように、各条件式について、各数値実施例の値がその数値範囲内となっている。
【0188】
【0189】
【0190】
<6.応用例>
[6.1 第1の応用例]
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0191】
図29は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図29に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0192】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。
図29では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0193】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0194】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0195】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0196】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0197】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0198】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0199】
ここで、
図30は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0200】
なお、
図30には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0201】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0202】
図29に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0203】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0204】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0205】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0206】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0207】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0208】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0209】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0210】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0211】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0212】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0213】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0214】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0215】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図29の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0216】
なお、
図29に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0217】
以上説明した車両制御システム7000において、本開示の撮像レンズ、および撮像装置は、撮像部7410、および撮像部7910,7912,7914,7916,7918に適用することができる。
【0218】
[6.2 第2の応用例]
本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0219】
図31は、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム5000の概略的な構成の一例を示す図である。
図31では、術者(医師)5067が、内視鏡手術システム5000を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム5000は、内視鏡5001と、その他の術具5017と、内視鏡5001を支持する支持アーム装置5027と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート5037と、から構成される。
【0220】
内視鏡手術では、腹壁を切って開腹する代わりに、トロッカ5025a~5025dと呼ばれる筒状の開孔器具が腹壁に複数穿刺される。そして、トロッカ5025a~5025dから、内視鏡5001の鏡筒5003や、その他の術具5017が患者5071の体腔内に挿入される。図示する例では、その他の術具5017として、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023が、患者5071の体腔内に挿入されている。また、エネルギー処置具5021は、高周波電流や超音波振動により、組織の切開及び剥離、又は血管の封止等を行う処置具である。ただし、図示する術具5017はあくまで一例であり、術具5017としては、例えば攝子、レトラクタ等、一般的に内視鏡下手術において用いられる各種の術具が用いられてよい。
【0221】
内視鏡5001によって撮影された患者5071の体腔内の術部の画像が、表示装置5041に表示される。術者5067は、表示装置5041に表示された術部の画像をリアルタイムで見ながら、エネルギー処置具5021や鉗子5023を用いて、例えば患部を切除する等の処置を行う。なお、図示は省略しているが、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023は、手術中に、術者5067又は助手等によって支持される。
【0222】
(支持アーム装置)
支持アーム装置5027は、ベース部5029から延伸するアーム部5031を備える。図示する例では、アーム部5031は、関節部5033a、5033b、5033c、及びリンク5035a、5035bから構成されており、アーム制御装置5045からの制御により駆動される。アーム部5031によって内視鏡5001が支持され、その位置及び姿勢が制御される。これにより、内視鏡5001の安定的な位置の固定が実現され得る。
【0223】
(内視鏡)
内視鏡5001は、先端から所定の長さの領域が患者5071の体腔内に挿入される鏡筒5003と、鏡筒5003の基端に接続されるカメラヘッド5005と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒5003を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡5001を図示しているが、内視鏡5001は、軟性の鏡筒5003を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0224】
鏡筒5003の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡5001には光源装置5043が接続されており、当該光源装置5043によって生成された光が、鏡筒5003の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者5071の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡5001は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0225】
カメラヘッド5005の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)5039に送信される。なお、カメラヘッド5005には、その光学系を適宜駆動させることにより、倍率及び焦点距離を調整する機能が搭載される。
【0226】
なお、例えば立体視(3D表示)等に対応するために、カメラヘッド5005には撮像素子が複数設けられてもよい。この場合、鏡筒5003の内部には、当該複数の撮像素子のそれぞれに観察光を導光するために、リレー光学系が複数系統設けられる。
【0227】
(カートに搭載される各種の装置)
CCU5039は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡5001及び表示装置5041の動作を統括的に制御する。具体的には、CCU5039は、カメラヘッド5005から受け取った画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。CCU5039は、当該画像処理を施した画像信号を表示装置5041に提供する。また、CCU5039は、カメラヘッド5005に対して制御信号を送信し、その駆動を制御する。当該制御信号には、倍率や焦点距離等、撮像条件に関する情報が含まれ得る。
【0228】
表示装置5041は、CCU5039からの制御により、当該CCU5039によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。内視鏡5001が例えば4K(水平画素数3840×垂直画素数2160)又は8K(水平画素数7680×垂直画素数4320)等の高解像度の撮影に対応したものである場合、及び/又は3D表示に対応したものである場合には、表示装置5041としては、それぞれに対応して、高解像度の表示が可能なもの、及び/又は3D表示可能なものが用いられ得る。4K又は8K等の高解像度の撮影に対応したものである場合、表示装置5041として55インチ以上のサイズのものを用いることで一層の没入感が得られる。また、用途に応じて、解像度、サイズが異なる複数の表示装置5041が設けられてもよい。
【0229】
光源装置5043は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部を撮影する際の照射光を内視鏡5001に供給する。
【0230】
アーム制御装置5045は、例えばCPU等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、所定の制御方式に従って支持アーム装置5027のアーム部5031の駆動を制御する。
【0231】
入力装置5047は、内視鏡手術システム5000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置5047を介して、内視鏡手術システム5000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、入力装置5047を介して、患者の身体情報や、手術の術式についての情報等、手術に関する各種の情報を入力する。また、例えば、ユーザは、入力装置5047を介して、アーム部5031を駆動させる旨の指示や、内視鏡5001による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示、エネルギー処置具5021を駆動させる旨の指示等を入力する。
【0232】
入力装置5047の種類は限定されず、入力装置5047は各種の公知の入力装置であってよい。入力装置5047としては、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、スイッチ、フットスイッチ5057及び/又はレバー等が適用され得る。入力装置5047としてタッチパネルが用いられる場合には、当該タッチパネルは表示装置5041の表示面上に設けられてもよい。
【0233】
あるいは、入力装置5047は、例えばメガネ型のウェアラブルデバイスやHMD(Head Mounted Display)等の、ユーザによって装着されるデバイスであり、これらのデバイスによって検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。また、入力装置5047は、ユーザの動きを検出可能なカメラを含み、当該カメラによって撮像された映像から検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。更に、入力装置5047は、ユーザの声を収音可能なマイクロフォンを含み、当該マイクロフォンを介して音声によって各種の入力が行われる。このように、入力装置5047が非接触で各種の情報を入力可能に構成されることにより、特に清潔域に属するユーザ(例えば術者5067)が、不潔域に属する機器を非接触で操作することが可能となる。また、ユーザは、所持している術具から手を離すことなく機器を操作することが可能となるため、ユーザの利便性が向上する。
【0234】
処置具制御装置5049は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具5021の駆動を制御する。気腹装置5051は、内視鏡5001による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者5071の体腔を膨らめるために、気腹チューブ5019を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ5053は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ5055は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0235】
以下、内視鏡手術システム5000において特に特徴的な構成について、更に詳細に説明する。
【0236】
(支持アーム装置)
支持アーム装置5027は、基台であるベース部5029と、ベース部5029から延伸するアーム部5031と、を備える。図示する例では、アーム部5031は、複数の関節部5033a、5033b、5033cと、関節部5033bによって連結される複数のリンク5035a、5035bと、から構成されているが、
図31では、簡単のため、アーム部5031の構成を簡略化して図示している。実際には、アーム部5031が所望の自由度を有するように、関節部5033a~5033c及びリンク5035a、5035bの形状、数及び配置、並びに関節部5033a~5033cの回転軸の方向等が適宜設定され得る。例えば、アーム部5031は、好適に、6自由度以上の自由度を有するように構成され得る。これにより、アーム部5031の可動範囲内において内視鏡5001を自由に移動させることが可能になるため、所望の方向から内視鏡5001の鏡筒5003を患者5071の体腔内に挿入することが可能になる。
【0237】
関節部5033a~5033cにはアクチュエータが設けられており、関節部5033a~5033cは当該アクチュエータの駆動により所定の回転軸まわりに回転可能に構成されている。当該アクチュエータの駆動がアーム制御装置5045によって制御されることにより、各関節部5033a~5033cの回転角度が制御され、アーム部5031の駆動が制御される。これにより、内視鏡5001の位置及び姿勢の制御が実現され得る。この際、アーム制御装置5045は、力制御又は位置制御等、各種の公知の制御方式によってアーム部5031の駆動を制御することができる。
【0238】
例えば、術者5067が、入力装置5047(フットスイッチ5057を含む)を介して適宜操作入力を行うことにより、当該操作入力に応じてアーム制御装置5045によってアーム部5031の駆動が適宜制御され、内視鏡5001の位置及び姿勢が制御されてよい。当該制御により、アーム部5031の先端の内視鏡5001を任意の位置から任意の位置まで移動させた後、その移動後の位置で固定的に支持することができる。なお、アーム部5031は、いわゆるマスタースレイブ方式で操作されてもよい。この場合、アーム部5031は、手術室から離れた場所に設置される入力装置5047を介してユーザによって遠隔操作され得る。
【0239】
また、力制御が適用される場合には、アーム制御装置5045は、ユーザからの外力を受け、その外力にならってスムーズにアーム部5031が移動するように、各関節部5033a~5033cのアクチュエータを駆動させる、いわゆるパワーアシスト制御を行ってもよい。これにより、ユーザが直接アーム部5031に触れながらアーム部5031を移動させる際に、比較的軽い力で当該アーム部5031を移動させることができる。従って、より直感的に、より簡易な操作で内視鏡5001を移動させることが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0240】
ここで、一般的に、内視鏡下手術では、スコピストと呼ばれる医師によって内視鏡5001が支持されていた。これに対して、支持アーム装置5027を用いることにより、人手によらずに内視鏡5001の位置をより確実に固定することが可能になるため、術部の画像を安定的に得ることができ、手術を円滑に行うことが可能になる。
【0241】
なお、アーム制御装置5045は必ずしもカート5037に設けられなくてもよい。また、アーム制御装置5045は必ずしも1つの装置でなくてもよい。例えば、アーム制御装置5045は、支持アーム装置5027のアーム部5031の各関節部5033a~5033cにそれぞれ設けられてもよく、複数のアーム制御装置5045が互いに協働することにより、アーム部5031の駆動制御が実現されてもよい。
【0242】
(光源装置)
光源装置5043は、内視鏡5001に術部を撮影する際の照射光を供給する。光源装置5043は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成される。このとき、RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置5043において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド5005の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0243】
また、光源装置5043は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド5005の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0244】
また、光源装置5043は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察するもの(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得るもの等が行われ得る。光源装置5043は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0245】
(カメラヘッド及びCCU)
図32を参照して、内視鏡5001のカメラヘッド5005及びCCU5039の機能についてより詳細に説明する。
図32は、
図31に示すカメラヘッド5005及びCCU5039の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0246】
図32を参照すると、カメラヘッド5005は、その機能として、レンズユニット5007と、撮像部5009と、駆動部5011と、通信部5013と、カメラヘッド制御部5015と、を有する。また、CCU5039は、その機能として、通信部5059と、画像処理部5061と、制御部5063と、を有する。カメラヘッド5005とCCU5039とは、伝送ケーブル5065によって双方向に通信可能に接続されている。
【0247】
まず、カメラヘッド5005の機能構成について説明する。レンズユニット5007は、鏡筒5003との接続部に設けられる光学系である。鏡筒5003の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド5005まで導光され、当該レンズユニット5007に入射する。レンズユニット5007は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。レンズユニット5007は、撮像部5009の撮像素子の受光面上に観察光を集光するように、その光学特性が調整されている。また、ズームレンズ及びフォーカスレンズは、撮像画像の倍率及び焦点の調整のため、その光軸上の位置が移動可能に構成される。
【0248】
撮像部5009は撮像素子によって構成され、レンズユニット5007の後段に配置される。レンズユニット5007を通過した観察光は、当該撮像素子の受光面に集光され、光電変換によって、観察像に対応した画像信号が生成される。撮像部5009によって生成された画像信号は、通信部5013に提供される。
【0249】
撮像部5009を構成する撮像素子としては、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)タイプのイメージセンサであり、Bayer配列を有するカラー撮影可能なものが用いられる。なお、当該撮像素子としては、例えば4K以上の高解像度の画像の撮影に対応可能なものが用いられてもよい。術部の画像が高解像度で得られることにより、術者5067は、当該術部の様子をより詳細に把握することができ、手術をより円滑に進行することが可能となる。
【0250】
また、撮像部5009を構成する撮像素子は、3D表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成される。3D表示が行われることにより、術者5067は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部5009が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット5007も複数系統設けられる。
【0251】
また、撮像部5009は、必ずしもカメラヘッド5005に設けられなくてもよい。例えば、撮像部5009は、鏡筒5003の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0252】
駆動部5011は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部5015からの制御により、レンズユニット5007のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部5009による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0253】
通信部5013は、CCU5039との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部5013は、撮像部5009から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル5065を介してCCU5039に送信する。この際、術部の撮像画像を低レイテンシで表示するために、当該画像信号は光通信によって送信されることが好ましい。手術の際には、術者5067が撮像画像によって患部の状態を観察しながら手術を行うため、より安全で確実な手術のためには、術部の動画像が可能な限りリアルタイムに表示されることが求められるからである。光通信が行われる場合には、通信部5013には、電気信号を光信号に変換する光電変換モジュールが設けられる。画像信号は当該光電変換モジュールによって光信号に変換された後、伝送ケーブル5065を介してCCU5039に送信される。
【0254】
また、通信部5013は、CCU5039から、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を受信する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。通信部5013は、受信した制御信号をカメラヘッド制御部5015に提供する。なお、CCU5039からの制御信号も、光通信によって伝送されてもよい。この場合、通信部5013には、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが設けられ、制御信号は当該光電変換モジュールによって電気信号に変換された後、カメラヘッド制御部5015に提供される。
【0255】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、取得された画像信号に基づいてCCU5039の制御部5063によって自動的に設定される。つまり、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡5001に搭載される。
【0256】
カメラヘッド制御部5015は、通信部5013を介して受信したCCU5039からの制御信号に基づいて、カメラヘッド5005の駆動を制御する。例えば、カメラヘッド制御部5015は、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報及び/又は撮像時の露光を指定する旨の情報に基づいて、撮像部5009の撮像素子の駆動を制御する。また、例えば、カメラヘッド制御部5015は、撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報に基づいて、駆動部5011を介してレンズユニット5007のズームレンズ及びフォーカスレンズを適宜移動させる。カメラヘッド制御部5015は、更に、鏡筒5003やカメラヘッド5005を識別するための情報を記憶する機能を備えてもよい。
【0257】
なお、レンズユニット5007や撮像部5009等の構成を、気密性及び防水性が高い密閉構造内に配置することで、カメラヘッド5005について、オートクレーブ滅菌処理に対する耐性を持たせることができる。
【0258】
次に、CCU5039の機能構成について説明する。通信部5059は、カメラヘッド5005との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部5059は、カメラヘッド5005から、伝送ケーブル5065を介して送信される画像信号を受信する。この際、上記のように、当該画像信号は好適に光通信によって送信され得る。この場合、光通信に対応して、通信部5059には、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが設けられる。通信部5059は、電気信号に変換した画像信号を画像処理部5061に提供する。
【0259】
また、通信部5059は、カメラヘッド5005に対して、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を送信する。当該制御信号も光通信によって送信されてよい。
【0260】
画像処理部5061は、カメラヘッド5005から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。当該画像処理としては、例えば現像処理、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の公知の信号処理が含まれる。また、画像処理部5061は、AE、AF及びAWBを行うための、画像信号に対する検波処理を行う。
【0261】
画像処理部5061は、CPUやGPU等のプロセッサによって構成され、当該プロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより、上述した画像処理や検波処理が行われ得る。なお、画像処理部5061が複数のGPUによって構成される場合には、画像処理部5061は、画像信号に係る情報を適宜分割し、これら複数のGPUによって並列的に画像処理を行う。
【0262】
制御部5063は、内視鏡5001による術部の撮像、及びその撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部5063は、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を生成する。この際、撮像条件がユーザによって入力されている場合には、制御部5063は、当該ユーザによる入力に基づいて制御信号を生成する。あるいは、内視鏡5001にAE機能、AF機能及びAWB機能が搭載されている場合には、制御部5063は、画像処理部5061による検波処理の結果に応じて、最適な露出値、焦点距離及びホワイトバランスを適宜算出し、制御信号を生成する。
【0263】
また、制御部5063は、画像処理部5061によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部の画像を表示装置5041に表示させる。この際、制御部5063は、各種の画像認識技術を用いて術部画像内における各種の物体を認識する。例えば、制御部5063は、術部画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具5021使用時のミスト等を認識することができる。制御部5063は、表示装置5041に術部の画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させる。手術支援情報が重畳表示され、術者5067に提示されることにより、より安全かつ確実に手術を進めることが可能になる。
【0264】
カメラヘッド5005及びCCU5039を接続する伝送ケーブル5065は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0265】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル5065を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド5005とCCU5039との間の通信は無線で行われてもよい。両者の間の通信が無線で行われる場合には、伝送ケーブル5065を手術室内に敷設する必要がなくなるため、手術室内における医療スタッフの移動が当該伝送ケーブル5065によって妨げられる事態が解消され得る。
【0266】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム5000の一例について説明した。なお、ここでは、一例として内視鏡手術システム5000について説明したが、本開示に係る技術が適用され得るシステムはかかる例に限定されない。例えば、本開示に係る技術は、検査用軟性内視鏡システムや顕微鏡手術システムに適用されてもよい。
【0267】
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、カメラヘッド5005に好適に適用され得る。特に、本開示の撮像レンズは、カメラヘッド5005のレンズユニット5007に好適に適用され得る。
【0268】
<7.その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記実施の形態および実施例の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0269】
例えば、上記各数値実施例において示した各部の形状および数値は、いずれも本技術を実施するための具体化のほんの一例に過ぎず、これらによって本技術の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【0270】
また、上記実施の形態および実施例では、実質的に6枚または7枚のレンズからなる構成について説明したが、実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備えた構成であってもよい。また、本開示の撮像レンズは5枚以下、または8枚以上のレンズ構成とすることも可能である。
【0271】
また例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
以下の構成の本技術によれば、物体側から像面側に向かって順に前群レンズ系と後群レンズ系とを配置し、各レンズ系の構成の最適化を図るようにしたので、大型の素子サイズの撮像素子に対応可能で、光学系としては小型で諸収差が良好に補正された高性能の撮像レンズ、および撮像装置を提供することができる。
【0272】
[1]
物体側から、撮像素子が配置された像面側に向かって順に、
正の屈折力を有する前群レンズ系と、
最も像面側に、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となるレンズ面を有する後群レンズ系と
から構成され、以下の条件式を満足する
撮像レンズ。
1.0<Gun2R2(sag6-sag10)/(TTL/2Y)<2.8 ……(1)
5.0(%)<ODMAX<20.0(%) ……(2)
ただし、
Gun2R2(sag6-sag10):前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点で、かつ光軸に対して平行となる2点間の距離(単位は「mm」)
TTL:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離
2Y:前記撮像素子の対角長
ODMAX:前記撮像レンズによって発生する撮像エリア内における歪曲収差の最大値
とする。
[2]
前記前群レンズ系は、複数のレンズからなり、
前記後群レンズ系は、1枚のレンズからなる
上記[1]に記載の撮像レンズ。
[3]
前記前群レンズ系は、
物体側から像面側に向かって順に、
光軸近傍において正の屈折力を有する第1レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第2レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第3レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第5レンズと
から構成され、
前記後群レンズ系は、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第6レンズから構成される
上記[1]または[2]に記載の撮像レンズ。
[4]
以下の条件式を満足する
上記[1]ないし[3]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
1.7<f/Gun1R1<2.8 ……(3)
ただし、
f:レンズ全系の焦点距離
Gun1R1:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の曲率半径
とする。
[5]
以下の条件式を満足する
上記[1]ないし[4]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
2.2<f/Gun2R2<3.8 ……(4)
ただし、
f:レンズ全系の焦点距離
Gun2R2:前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面の曲率半径
とする。
[6]
前記前群レンズ系は、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、第4レンズとを含み、
以下の条件式を満足する
上記[1]ないし[5]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
17.3<νd(L4)<61.7 ……(5)
ただし、
νd(L4):前記第4レンズのd線に対するアッベ数
とする。
[7]
前記前群レンズ系は、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズとを含み、
以下の条件式を満足する
上記[1]ないし[6]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
20.2<νd(L5)<61.3 ……(6)
ただし、
νd(L5):前記第5レンズのd線に対するアッベ数
とする。
[8]
前記前群レンズ系は、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズと、第6レンズとを含み、
以下の条件式を満足する
上記[1]ないし[7]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
23.2<νd(L6)<61.3 ……(7)
ただし、
νd(L6):前記第6レンズのd線に対するアッベ数
とする。
[9]
前記前群レンズ系は、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズとを含み、
前記第1レンズの物体側のレンズ面と前記第1レンズの像面側のレンズ面との間、前記第1レンズの像面側のレンズ面と前記第2レンズの像面側のレンズ面との間、または前記第2レンズの像面側のレンズ面と前記第3レンズの像面側のレンズ面との間に、開口絞りが配置されている
上記[1]ないし[8]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
[10]
前記前群レンズ系は、
物体側から像面側に向かって順に、
光軸近傍において正の屈折力を有する第1レンズと、
光軸近傍において正の屈折力を有する第2レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第3レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第4レンズと、
光軸近傍において負の屈折力を有する第5レンズと、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第6レンズと
から構成され、
前記後群レンズ系は、
光軸近傍において正または負の屈折力を有する第7レンズから構成される
上記[1]、[2]、または[4]ないし[9]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
[11]
撮像レンズと、
前記撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子によって撮像された画像の歪曲収差を補正する演算器と
を含み、
前記撮像レンズは、
物体側から、前記撮像素子が配置された像面側に向かって順に、
正の屈折力を有する前群レンズ系と、
最も像面側に、光軸近傍では像面側に凹形状で、かつ周辺部では像面側に凸形状となるレンズ面を有する後群レンズ系と
から構成され、以下の条件式を満足する
撮像装置。
1.0<Gun2R2(sag6-sag10)/(TTL/2Y)<2.8 ……(1)
5.0(%)<ODMAX<20.0(%) ……(2)
ただし、
Gun2R2(sag6-sag10):前記後群レンズ系の前記最も像面側のレンズ面において、6割の像高の主光線が交わった点と10割の像高の主光線が交わった点で、かつ光軸に対して平行となる2点間の距離(単位は「mm」)
TTL:前記前群レンズ系の最も物体側のレンズ面の頂点から像面までの光軸上の距離
2Y:前記撮像素子の対角長
ODMAX:前記撮像レンズによって発生する撮像エリア内における歪曲収差の最大値
とする。
[12]
実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備えた
上記[1]ないし[10]のいずれか1つに記載の撮像レンズ。
[13]
前記撮像レンズは、実質的に屈折力を有さないレンズをさらに備える
上記[11]に記載の撮像装置。
【0273】
本出願は、日本国特許庁において2019年3月29日に出願された日本特許出願番号第2019-68037号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0274】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。