(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】スピーカ装置、スピーカ、及び構造体
(51)【国際特許分類】
H04R 1/34 20060101AFI20240910BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H04R1/34 310
H04R1/02 102Z
(21)【出願番号】P 2021518315
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013249
(87)【国際公開番号】W WO2020225993
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019089142
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 淳二
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-136574(JP,U)
【文献】特許第6506464(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/34
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を出力するスピーカと、
前記スピーカの音の出力側に配置され前記スピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体と
を具備し、
前記構造体は、
前記スピーカに接続される接続部と、
板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカから出力される音を前記外部空間に向けて導く1以上の板状部材とを有する
スピーカ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、
前記1以上の板状部材は、複数の板状部材であり、隣り合う板状部材の間に区分空間が形成される
スピーカ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記間隙空間内にて構成される
スピーカ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材のうち少なくとも1つは、前記開口部分側の端部が、前記開口部分から外側に突出する
スピーカ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、互いに平行となるように構成される
スピーカ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記開口部分に向かう延在方向とは直交する方向において、前記区分空間が開口するように構成される
スピーカ装置。
【請求項7】
請求項2に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記音の出力方向において、前記スピーカから最も離れた位置に配置される第1の部材を有し、
前記第1の部材は、前記スピーカ側の端部が前記接続部と連結している
スピーカ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板を有し、
前記第1の部材は、前記スピーカの音の出力側から見た場合に、前記接続部の位置から前記開口部分側の端部までの領域において、前記振動板を覆い隠すように構成される
スピーカ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記第1の部材と、前記第1の部材以外の1以上の第2の部材とを有し、
前記1以上の第2の部材は、前記スピーカ側の端部と前記接続部との間に隙間が形成されるように配置される
スピーカ装置。
【請求項10】
請求項2に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、補強用のリブで互いに接続される
スピーカ装置。
【請求項11】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板と、前記振動板の周囲に配置されるフレームとを有し、
前記接続部は、前記フレームに接続される
スピーカ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のスピーカ装置であって、
前記接続部は、前記フレームの、前記間隙空間の前記開口部分側とは反対側の部分に当接される
スピーカ装置。
【請求項13】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、
前記1以上の板状部材は、前記接続部と一体的に構成されている
スピーカ装置。
【請求項14】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板を有し、
前記スピーカの音の出力側から前記物体及び前記スピーカを見た場合に、前記物体が前記振動板の一部を覆い隠すように配置され、
前記1以上の板状部材は、前記スピーカから出力される音を、前記振動板の見えている部分側に導く
スピーカ装置。
【請求項15】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板を有し、
前記間隙空間の開口部分は、前記スピーカの音の出力側から前記物体及び前記スピーカを見た場合に、前記物体の前記振動板の見えている部分側の端部の位置に構成される
スピーカ装置。
【請求項16】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカ装置は、電子機器に組み込まれ、
前記スピーカの音の出力側が、前記電子機器の正面側に向けられており、
前記物体は、前記スピーカ装置が前記電子機器に組み込まれた状態で、前記スピーカの音の出力側に配置される
スピーカ装置。
【請求項17】
請求項1に記載のスピーカ装置であって、さらに、
前記物体を具備する
スピーカ装置。
【請求項18】
請求項1
6に記載のスピーカ装置であって、
前記物体は、前記電子機器の一部である
スピーカ装置。
【請求項19】
音を出力するスピーカ部と、
前記スピーカ部の音の出力側に配置され前記スピーカ部との間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体と
を具備し、
前記構造体は、
前記スピーカ部に接続される接続部と、
板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカ部から出力される音を前記外部空間に向けて導く1以上の板状部材とを有する
スピーカ。
【請求項20】
スピーカの音の出力側に配置され前記スピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体であって、
前記スピーカに接続される接続部と、
板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカから出力される音を前記外部空間に向けて導く1以上の板状部材と
を具備する構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、スピーカ装置、スピーカ、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電子機器では、液晶表示部の下方の左右両側に、スピーカが配置される。スピーカから出力される音声は、通過孔として機能するスリットを介して、前方側へ出力される(特許文献1の明細書段落[0015]~[0025]
図1~3等)。
【0003】
特許文献2に記載のテレビ(テレビジョン受像機)では、ブラウン管の左右の側面にスピーカがそれぞれ配置される。スピーカの前方には、スピーカからの音をテレビ画面の正面側に反射する反射板が配置される。またテレビ画像と略同一平面上となる位置には、反射板により反射された音の指向性を制御可能な音響レンズが配置される。これにより、テレビのキャビネットを大型化することなく、音像を明確にすることが可能となり、映像との一体感のある高音質の音を出力することが可能となっている(特許文献2の明細書段落[0009]~[0021]
図1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-319723号公報
【文献】特開平4-222180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、薄型のテレビ等が主流となっており、また画面の大型化も進んでいる。このようなテレビ等の意匠性を低下させることなく、迫力のある映像に合わせた高品質かつ十分な音圧の出力を可能とする技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、意匠性を低下させることなく、高品質かつ十分な音圧の出力を可能とするスピーカ装置、スピーカ、及び構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係るスピーカ装置は、スピーカと、構造体とを具備する。
前記スピーカは、音を出力する。
前記構造体は、前記スピーカの音の出力側に配置され前記スピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成され、接続部と、1以上の板状部材とを有する。
前記接続部は、前記スピーカに接続される。
前記1以上の板状部材は、板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカから出力される音を前記外部空間に向けて導く。
【0008】
このスピーカ装置は、スピーカの音の出力側に配置される物体に対して構成される構造体を具備する。構造体は、物体とスピーカとの間の間隙空間に配置され、スピーカから出力される音を外部空間に向けて導く1以上の板状部材を有する。これにより、スピーカの音の出力側を覆い隠すような構成を採用しつつ、音質への影響を防止することが可能となる。この結果、意匠性を低下させることなく、高品質かつ十分な音圧の出力を実現することが可能となる。
【0009】
前記1以上の板状部材は、複数の板状部材であり、隣り合う板状部材の間に区分空間が形成されてもよい。
【0010】
前記複数の板状部材は、前記間隙空間内にて構成されてもよい。
【0011】
前記複数の板状部材のうち少なくとも1つは、前記開口部分側の端部が、前記開口部分から外側に突出してもよい。
【0012】
前記複数の板状部材は、互いに平行となるように構成されてもよい。
【0013】
前記複数の板状部材は、前記開口部分に向かう延在方向とは直交する方向において、前記区分空間が開口するように構成されてもよい。
【0014】
前記複数の板状部材は、前記音の出力方向において、前記スピーカから最も離れた位置に配置される第1の部材を有してもよい。この場合、前記第1の部材は、前記スピーカ側の端部が前記接続部と連結していてもよい。
【0015】
前記スピーカは、振動板を有してもよい。この場合、前記第1の部材は、前記スピーカの音の出力側から見た場合に、前記接続部の位置から前記開口部分側の端部までの領域において、前記振動板を覆い隠すように構成されてもよい。
【0016】
前記複数の板状部材は、前記第1の部材と、前記第1の部材以外の1以上の第2の部材とを有してもよい。この場合、前記1以上の第2の部材は、前記スピーカ側の端部と前記接続部との間に隙間が形成されるように配置されてもよい。
【0017】
前記複数の板状部材は、補強用のリブで互いに接続されてもよい。
【0018】
前記スピーカは、振動板と、前記振動板の周囲に配置されるフレームとを有してもよい。この場合、前記接続部は、前記フレームに接続されてもよい。
【0019】
前記接続部は、前記フレームの、前記間隙空間の前記開口部分側とは反対側の部分に当接されてもよい。
【0020】
前記1以上の板状部材は、前記接続部と一体的に構成されていてもよい。
【0021】
前記スピーカは、振動板を有してもよい。この場合、前記スピーカの音の出力側から前記物体及び前記スピーカを見た場合に、前記物体が前記振動板の一部を覆い隠すように配置されてもよい。また前記1以上の板状部材は、前記スピーカから出力される音を、前記振動板の見えている部分側に導いてもよい。
【0022】
前記スピーカは、振動板を有してもよい。この場合、前記間隙空間の開口部分は、前記スピーカの音の出力側から前記物体及び前記スピーカを見た場合に、前記物体の前記振動板の見えている部分側の端部の位置に構成されてもよい。
【0023】
前記スピーカ装置は、電子機器に組み込まれてもよい。この場合、前記スピーカの音の出力側が、前記電子機器の正面側に向けられていてもよい。また前記物体は、前記スピーカ装置が前記電子機器に組み込まれた状態で、前記スピーカの音の出力側に配置されてもよい。
【0024】
前記スピーカ装置は、さらに、前記物体を具備してもよい。
【0025】
前記物体は、前記電子機器の一部であってもよい。
【0026】
本技術の一形態に係るスピーカは、スピーカ部と、構造体とを具備する。
前記スピーカ部は、音を出力する。
前記構造体は、前記スピーカ部の音の出力側に配置され前記スピーカ部との間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成され、接続部と、1以上の板状部材とを有する。
前記接続部は、前記スピーカ部に接続される。
前記1以上の板状部材は、板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカ部から出力される音を前記外部空間に向けて導く。
本技術の一形態に係る構造体は、スピーカの音の出力側に配置され前記スピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体であって、前記接続部と、前記1以上の板状部材とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本技術の一実施形態に係るテレビの外観例を模式的に示す図である。
【
図2】テレビの背面側のリアカバーを取り外した状態の模式図である。
【
図3】
図1に示す左上のスピーカボックスの部分を切り取って拡大した図である。
【
図4】
図3に示す拡大部分を、テレビの正面側から見た図である。
【
図5】
図4のA-A線における断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】スピーカボックスの外観例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図5に示す断面図の仕切り構造の部分を拡大した拡大図である。
【
図8】仕切り構造が取付けられたツイータを模式的に示す図である。
【
図9】仕切り構造が取付けられたツイータを模式的に示す図である。
【
図12】仕切り構造の取付けの有無に応じた音圧レベルの周波数特性を示すグラフである。
【
図13】他の実施形態に係る仕切り構造の構成例を示す模式図である。
【
図14】他の実施形態に係る仕切り構造の構成例を示す模式図である。
【
図15】他の実施形態に係る仕切り構造の構成例を示す模式図である。
【
図16】他の実施形態に係る仕切り構造の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
[電子機器の構成]
図1は、本技術の一実施形態に係るテレビ(テレビジョン受像機)の外観例を模式的に示す図である。
以下の説明では、テレビ1を正面側から見て、左右方向をX方向とし、奥行方向をY方向として、高さ方向をZ方向として説明を行う。
また各部において、XYZの各方向を基準として、「右側」「左側」「奥側」「手前側」「上側」「下側」といった表現をする場合がある。また奥行方向(Y方向)において、「正面側」「背面側」という表現をする場合がある。
【0030】
テレビ1は、全体的な形状として板状の形状を有し、いわゆる薄型テレビとして構成されている。テレビ1は、ディスプレイ2と、筐体部3と、スピーカボックス4と、スタンド5とを有する。
ディスプレイ2は、テレビ1の正面側の面のほぼ全域に配置され、テレビ番組等のコンテンツを表示する。その他、外部のコンテンツ再生装置等と接続されることで、コンテンツ再生装置等から出力されるコンテンツを表示することも可能である。
本実施形態では、ディスプレイ2として、液晶ディスプレイが用いられる。これに限定されず、EL(Electro-Luminescence)等を用いたディスプレイ等、任意の表示デバイスがディスプレイ2として採用されてよい。
【0031】
筐体部3は、テレビ1の正面側で、ディスプレイ2を保持する。筐体部3は、ディスプレイ2の左右上下に配置される、上側保持部3a、下側保持部3b、左側保持部3c、右側保持部3dを有する。また筐体部3は、ディスプレイ2の背面側に配置される、リアカバー3e(
図3参照)を有する。
上側保持部3a、下側保持部3b、左側保持部3c、右側保持部3d、及びリアカバー3eにより筐体部3が構成され、内部には、内部空間S1(
図3参照)が形成される。この内部空間S1に、ディスプレイ2を含む表示ユニット13(
図3参照)、種々の制御基板 (
図2参照)、スピーカボックス4等が配置される。
ディスプレイ2の周りを保持する上側保持部3a、下側保持部3b、左側保持部3c、右側保持部3dは、ベゼルとも呼ばれる。
筐体部3は、例えばアルミニウム等の金属材料により構成される。
【0032】
スピーカボックス4は、テレビ1の内部空間S1に配置される。
図1に示すように、本実施形態では、4つのスピーカボックス4a~4dが配置される。
テレビ1を正面側から見て、スピーカボックス4aは左上の位置に配置され、スピーカボックス4bは右上の位置に配置される。またスピーカボックス4cは左下の位置に配置され、スピーカボックス4bは右下の位置に配置される。
スピーカボックス4a及びスピーカボックス4bは、ディスプレイ2の中心位置から上下方向に延在する中心線(図示は省略)に対して、左右対称の位置に配置される。スピーカボックス4c及びスピーカボックス4dも、同じ中心線に対して、左右対称の位置に配置される。
また左右方向(X方向)において、スピーカボックス4aとスピーカボックス4cは、互いに同じ位置に配置される。また左右方向において、スピーカボックス4bとスピーカボックス4dも、互いに同じ位置に配置される。従って、4つのスピーカボックス4a~4dは、ディスプレイ2の中心位置に対して、互いに対称となる位置に配置される。
【0033】
スピーカボックス4の個数や配置構成等は限定されず、任意に設定されてよい。例えば、テレビ1を正面側から見て、上方側のみに任意の個数のスピーカボックス4が配置されてもよい。逆に下方側のみに任意の個数のスピーカボックス4が配置されてもよい。あるいは、左側や右側に、任意の個数のスピーカボックス4が配置されてもよい。もちろん
図1に示すスピーカボックス4a~4dが、左右方向や上下方向において、互いにずれて配置されても構わない。
【0034】
本実施形態では、同じ構成を有するスピーカボックス4が4つ用いられる場合を例に挙げる。
スピーカボックス4は、複数のスピーカ7(
図6参照)を有する。スピーカボックス4は、スピーカ7がテレビ1の正面側に向けられるように、テレビ1の内部空間S1に配置される。すなわちスピーカボックス4が有するスピーカ7の音の出力側が、テレビ1の正面側に向けられる。
本開示において、「正面側に向けられる」とは、スピーカ7の音の出力方向が、テレビ1の正面方向(Y方向)に完全に一致する場合に限定されない。スピーカ7の出力側が、実質的にテレビ1の正面側に向けられる状態も含まれる。例えば、テレビ1の正面方向(Y方向)に対して、スピーカの音の出力方向の交差角度が所定の誤差範囲内である場合も、「正面側に向けられる」という概念に含まれる。
所定の誤差範囲は、例えば10°以内の範囲と規定することが可能である。
【0035】
スタンド5は、筐体部3の下側保持部3bに接続され、ディスプレイ2及び筐体部3を支持する。スタンド5の具体的な構成は限定されず、任意に設計されてよい。またスタンド5が用いられない構成もあり得る。
例えば壁等にテレビ1が取付けられる場合もあり得る。
【0036】
図2は、テレビ1の背面側を示す模式図であり、リアカバー3eを取り外した状態の図である。上記したように内部空間S1には、4つのスピーカボックス4が配置される。またスピーカボックス4は、複数のスピーカ7を有する。
スピーカ7は、ダイナミック型のスピーカユニットであり、振動板、フレーム、ボイスコイル等を有する。
本実施形態では、スピーカボックス4に、1つの高音用のスピーカ(以下ツイータと記載する)7aと、2つの中音用スピーカ7bとが搭載される。
ツイータ7aと、中音用スピーカ7bとは、音の出力方向が互いに等しくなるように配置される。ツイータ7a及び中音用スピーカ7bの音の出力側は、テレビ1の正面側に向けられる。
【0037】
またテレビ1の内部空間S1には、種々の制御基板8が、背面側を向くように配置される。
また内部空間S1には、低音用のスピーカ9が配置される。低音用スピーカ9は、ダイナミック型のスピーカユニットであり、振動板、フレーム、ボイスコイル等を有する。
低音用スピーカ9は、出力側がテレビ1の背面側に向けられて配置される。
リアカバー3eには、低音用スピーカ9の位置に対応した位置に、音通過孔が形成されている。
低音用スピーカ9から出力される音は、リアカバー3eの音通過孔から外部空間に放出される。そして筐体部3の上方又は下方を回り込んで、テレビ1の正面側に回りこむ。
【0038】
テレビ1を正面側から見て、左側に配置されるスピーカボックス4a及び4cにより、左チャンネルの音声が出力される。右側に配置されるスピーカボックス4a及び4cにより、右チャンネルの音声が出力される。これによりステレオモードの音声出力が実現される。
スピーカボックス4に搭載されたスピーカ7は、正面側に向けられている。また4つのスピーカボックス4は、ディスプレイ2の中心位置に対して、互いに対称となる位置に配置される。これにより、ディスプレイ2の中央部に音像が定位され、画像や映像と音声との一体感が生じる良好な視聴環境を提供することが可能となる。
スピーカボックス4により、モノラルモードの音声出力が実行されてもよい。
【0039】
低音用スピーカ9により、モノラルモードの音声出力が実行される。もちろん低音用スピーカ9により、ステレオモードの音声出力を実行させることも可能である。
ツイータ7a、中音用スピーカ7b、低音用スピーカ9の具体的な構成は限定されず、任意に設計されてよい。
【0040】
[スピーカボックス]
スピーカボックス4の構成、及びテレビ1へ組み込みの一例を説明する。
図3は、
図1に示す左上のスピーカボックス4aの部分を切り取って拡大した図である。
図4は、
図3に示す拡大部分を、テレビ1の正面側から見た図である。
図5は、
図4のA-A線における断面を模式的に示す断面図である。
図6は、スピーカボックス4の外観例を模式的に示す斜視図である。
【0041】
図3及び
図5に示すように、上側保持部3aは、段差構造を有し、1段目の部分を構成する第1のフレーム11と、2段目の部分を構成する第2のフレーム12とが一体的に構成されている。
第1のフレーム11の断面形状は、U字を上下逆さまにしたような形状を有し、前面部11aと、上面部11bと、後面部11cとを有する。
第2のフレーム12の断面形状は、L字を横向きに倒したような形状を有し、前面部12aと、上面部12bとを有する。
第1のフレーム11の上面部11bの後方側の位置に、第2のフレーム12bの前面部12aが連結される。第1のフレーム11の上面部11b、第2のフレーム12の前面部12a、及び第2のフレームの上面
図12bにより、段差構造が構成される。
第2のフレーム12の上面部11bの後方側の部分は、リアカバー3eと接続される。
【0042】
図3及び
図5に示すように、上側保持部3aの第1のフレーム11には、ディスプレイ2を含む表示ユニット13が接続される。
表示ユニット13は、ディスプレイ2に画像を表示させる機能を有する。
表示ユニット13の具体的な構成は限定されない。例えばディスプレイ2、拡散板等の光学素子、バックライト等が配置される。バックライトには、LEDやLD等が光源として搭載される。そして、これらのデバイスが、シャーシ等により保持される。当該シャーシが、第1のフレーム11に接続される。その他、任意の構成が採用されてよい。
例えば、
図2に示す制御基板8や低音用スピーカ9は、表示ユニット13に含まれるシャーシ等の背面側に配置される。
【0043】
図3~
図5に示すように、第2のフレーム12の前面部12aには、テレビ1の前方側に突出する複数のフィン14を有する。フィン14の間には、スリット15が形成される。
また
図4に示すように、第2のフレーム12の前面部12aには、音通過孔16が形成されている。従って、スリット15及び音通過孔16により、テレビ1の内部空間S1と、外部空間S2とが連通することになる。
【0044】
図5に示すように、上側保持部3aの第2のフレーム12には、スピーカボックス4aが接続される。
図4に示すように、スピーカボックス4aは、ツイータ7a及び中音用スピーカ7bの上方側の一部分が、スリット15及び音通過孔16の位置と同じ高さとなるように、前記第2のフレーム12に接続される。
言い換えると、テレビ1の正面側から見て、スリット15及び音通過孔16を介して、ツイータ7a及び中音用スピーカ7bの上方側の一部分が見える位置に、スピーカボックス4aが配置される。
ツイータ7a及び中音用スピーカ7bから出力される音は、スリット15及び音通過孔16を介して、テレビ1の正面側に放出される。
このように本実施形態では、スリット15の奥側にスピーカボックス4が配置される、いわゆるスリットスピーカの構成が実現される。これにより、スピーカボックス4の存在を目立たなくすることが可能となり、テレビ1の意匠性(デザイン性)を向上させることが可能となる。また映像を視聴するユーザにとって、ディスプレイ2の表示されるコンテンツに集中することが可能となり、高い没入感を実現することが可能となる。また、振動板のサイズが大きいスピーカ7を搭載することが可能となるので、十分な音圧で高品質な音を出力することが可能となる。
なお
図5では図示は省略されているが、スピーカボックス4aは、表示ユニット13に対してネジ留め等により固定される。これにより、スピーカボックス4aを十分に固定することが可能となる。
【0045】
図6に示すように、スピーカボックス4aは、本体部18と、ツイータ7aと、中音用スピーカ7bと、反射板19と、仕切り構造20とを有する。
本体部18は、全体的な形状として、板形状に近い直方体形状を有する。また本体部18は、中空状に構成される。
図5及び
図6に示すように、本体部18の正面側の前面部18aの上方側の部分が、背面側に窪んでおり、凹部21が形成される。凹部21を正面側から見た場合に、正面側に対して対向する面が、取付面22となる。
【0046】
取付面22には、左右方向に並ぶように、ツイータ7aと、2つの中音用スピーカ7bとが配置される。
ツイータ7aは、本体部18の前面部18aに対して、上方側に3°ほど傾けられて配置される。すなわちツイータ7aの音の出力方向は、前面部18aに対して、上方側に3°ほど傾けられている。
従って、例えば本体部18の前面部18aを、テレビ1の正面側に正確に向けたとする。この場合、ツイータ7aの音の出力方向は、正面方向(Y方向)から3°ほど傾けられることになる。
上記したように、本開示では、このような3°程度出力方向がずれて配置されている状態は、ツイータ7aの出力側が「正面側に向けられる」という概念に含まれる。
なお中音用スピーカ7bは、上方側に傾けられることなく配置されている。もちろん、ツイータ7aと同様に、中音用スピーカ7bも上方側に傾けられて配置されてもよい。
【0047】
本体部18の内部空間S3には、3つのスピーカ7を駆動基板や電源基板等が配置される。本体部18の内部の構成については、図示及び説明を省略する。3つのスピーカ7を駆動させるための任意の構成が用いられてよく、また従来の技術を用いることで、そのような構成を実現することが可能である。
本体部18の内部空間S3を囲む部分は、3つのスピーカ7のエンクロージャーとしても機能する。
【0048】
反射板19は、取付面22に対向する位置に配置される。すなわちスピーカ7の音の出力側に配置される。
図6に示すように、反射板19の上方側の端部には、左右に延在する棒状のクッション部材19aが構成されている。このクッション部材19aが、本体部18の前面部18aの左右の端部に固定される。また反射板19の下方側の端部は、前面部18aに形成される凹部21の下方側の端部に接続される。
従って、反射板19は、スピーカボックス4aを正面側から見た場合に、凹部21を塞ぐような位置に配置される。
【0049】
また、反射板19は、スピーカボックス4aを正面側から見た場合に、ツイータ7a及び中音用スピーカ7bの上方側の一部分のみが見えるように、ツイータ7a及び中音用スピーカ7bの中央部分及び下方側の部分を覆い隠すように構成される。
図4に示す、スリット15及び音通過孔16を介して見える、ツイータ7a及び中音用スピーカ7bの上方側の一部分は、反射板19により覆い隠されない部分とほぼ等しい。
【0050】
仕切り構造20は、ツイータ7aに取付けられる。仕切り構造20は、ツイータ7aの音の出力側に配置される反射板19に対して構成される。
【0051】
[仕切り構造]
図7は、
図5に示す断面図の仕切り構造20の部分を拡大した拡大図である。
図8及び
図9は、仕切り構造20が取付けられたツイータ7aを模式的に示す図である。
図8Aは、正面側の斜め方向から見た斜視図である。
図8Bは、正面側から見た正面図である。
図9Aは、右側から見た側面図である。上方側から見た平面図である。
【0052】
図10及び
図11は、仕切り構造20を模式的に示す図である。
図10Aは、正面側の斜め方向から見た斜視図である。
図10Bは、背面側から見た図である。すなわち、仕切り構造20が取付けられるツイータ7a側から見た図である。
図11Aは、右側から見た側面図である。
図11Bは、上方側から見た平面図である。
【0053】
図7に示すように、反射板19は、テレビ1の正面側に向けて傾けられて配置される。これにより、3つのスピーカ7から出力される音を、第2のフレーム12の前面部12aに形成された音通過孔16及びスリット15に向けて、効率的に誘導する機能を有する。
本実施形態では、仕切り構造20が取付けられない中音用スピーカ7bから出力される音に対して、音通過孔16及びスリット15に向けて音を効率的に誘導する機能が発揮される。
なお、スピーカボックス4aが取付けられる際には、反射板19の上方側の端部に構成されるクッション部材19aが、上側保持部3aの第1のフレーム11が有する後面部11cに十分に押し付けられ変形する(変形している状態の図示は省略)。これにより、後面部11cとスピーカボックス4aとの間に隙間が形成されることが防止される。この結果、中音用スピーカ7bから出力される音を音通過孔16及びスリット15に向けて効率的に誘導することが可能となっている。
【0054】
反射板19により、ツイータ7aとの間に、間隙空間S4(グレー色の部分)が形成される。間隙空間S4は、反射板19が、ツイータ7aの音の出力側(すなわち正面側)に配置されることで、ツイータ7aとの間に形成される空間である。
また間隙空間S4は、外部空間S2と繋がる空間である。本実施形態では、第2のフレーム12の内部空間S5、音通過孔16、及びスリット15を介して、間隙空間S4が外部空間S2と繋がっている。
また間隙空間S4は、外部空間S2と繋がる側に向けて開口している開口部分P1を有する。
ツイータ7aから出力される音は、間隙空間S4から開口部分P1を通って、外部空間S2に向けて放出される。
【0055】
本実施形態では、ツイータ7aの音の出力側(すなわち正面側)から反射板19とツイータ7aとを見た場合に、反射板19とツイータ7aとが重なり合う部分により挟まれている空間が、間隙空間S4となる。そして、間隙空間S4の、反射板19の上方側の端部(クッション部材19a)の部分が、開口部分P1となる。
すなわち、ツイータ7aの音の出力側から反射板19とツイータ7aとを見た場合に、反射板19の、ツイータ7aが見えている部分側の端部の位置に、開口部分P1が構成される。
【0056】
なお、間隙空間S4及び開口部分P1が、このように規定される場合に限定される訳ではない。
反射板19とツイータ7aとの間に形成される空間、及びその空間の外部空間S2に繋がる部分側の開口部分に該当する、任意の空間及び開口部分が、本技術に係る間隙空間S4及び開口部分P1となり得る。
例えば反射板19の上方側の端部と、ツイータ7aの上方側の端部とを結ぶ面までの空間を間隙空間S4とし、外部空間S2に繋がる側の開口部分を、開口部分P1とすることも可能である。
あるいは、反射板19の上方側の端部から、ツイータ7aの音の出力方向に沿って延在する面までの空間を間隙空間S4とし、外部空間S2に繋がる側の開口部分を、開口部分P1とすることも可能である。
あるいは、反射板19の上方側の端部から、ツイータ7aに向けて垂線を引き、その交差部分までの空間を間隙空間S4とし、外部空間S2に繋がる側の開口部分を、開口部分P1とすることも可能である。
【0057】
図8及び
図9等に示すように、ツイータ7aは、振動板25と、保持部材26とを有する。保持部材26は、振動板25や、図示しないボイスコイル、磁石やヨーク等により構成される磁気回路等を保持する。
ツイータ7aを正面側から見て、振動板25の周囲に配置される部分が、フレーム27となる。
本実施形態では、振動板25は、正面側から見て円形状を有し、フレーム27もその形に合わせてリング形状となっている。
なお、本技術は、円形やトラック型のスピーカユニットに限定されず、任意の形状のスピーカユニットに対して適用可能である。またスピーカユニットの出力特性等も限定されず、ツイータ以外のスコーカやウーハ等に対しても、本技術は適用可能である。
スピーカユニットの音の出力側に物体が配置され、間隙空間が形成される場合には、物体に対して仕切り構造を構成することが可能である。
【0058】
仕切り構造20は、間隙空間S4を、複数の空間に区分することが可能である。また仕切り構造20は、ツイータ7aから出力される音を、間隙空間S4の開口部分P1に向かって導くことが可能である。すなわち仕切り構造20は、ツイータ7aから出力される音を、外部空間に向けて導くことが可能である。
仕切り構造20は、例えば樹脂による射出成型により、一体的に形成される。樹脂材料としては、限定されず、任意の樹脂材料が用いられてよい。例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等の汎用樹脂、PC樹脂、ABSとPCの混合樹脂等のエンジニアリングプラスチック等が用いられる。
その他、樹脂材料以外の材料が用いられてもよい。
【0059】
図7等に示すように、仕切り構造20は、ツイータ7aに接続される接続部29と、複数の板状部材30~32とを有する。
図8及び
図9等に示すように、接続部29は、ツイータ7aの振動板25の周囲に配置されるフレームに接続される。また接続部29は、フレーム27の、間隙空間S4の開口部分P1側とは反対側の部分に当接される。
本実施形態では、間隙空間S4の上方側の端部に、開口部分P1が構成される。従って、フレーム27の上方側の部分が、開口部分P1側の部分となる。フレーム27の下方側の部分が、開口部分P1側とは反対側の部分となる。
仕切り構造20の接続部29は、フレーム27の下方側の部分に、フレーム27と当接して接続される。これにより、ツイータ7aから出力される音を、下方側に漏らすことなく、上方側の開口部分P1に向けて導くことが可能となる。
【0060】
図8及び
図9に示すように、接続部29は、フレーム27の下方側から上方側にかけて、半円以上の領域にわたって、フレーム27当接されている。
従って、接続部29は、間隙空間S4の開口部分P1側とは反対側の位置を基準として、配置されていると表現することも可能である。
あるいは、フレーム27の、開口部分P1から最も離れている位置を基準として、接続部29が接続されると表現することも可能である。本実施形態では、フレーム27の、最下端の位置が、開口部分P1から最も離れている位置に相当する。
いずれにせよ、ツイータ7aから出力される音を、下方側に漏らすことなく、上方側にの開口部分P1に向けて導くことが可能なように、接続部29が構成され、フレーム27に接続されればよい。
なお、保持部材26のフレーム27以外の部分に、仕切り構造20の接続部29が接続されてもよい。
【0061】
複数の板状部材30~32は、板形状を有する。板形状は、平面状の形状に限定されず、板が歪曲されたような、曲面を有する板の形状も含まれる。
また複数の板状部材30~32は、間隙空間S4に配置される。なお、間隙空間S4に配置されるとは、板状部材30~32の少なくとも一部分が、間隙空間S4間に含まれている状態を含む。
また複数の板状部材30~32は、間隙空間S4の開口部分P1に向けて延在し、ツイータ7aから出力される音を外部空間S2に向けて導くように構成されている。
【0062】
図7等に示すように、本実施形態では、3つの板状部材30~32が構成される。板状部材30~32は、平面形状を有し、前方側に傾けられて配置される。すなわち板状部材30~32は、上方側の端部30a~32aが、下方側の端部30b~32bよりも前方側に位置している。また上方側の端部30a~32aは、開口部分P1の位置にて揃えられている。
また板状部材30~32は、間隙空間S4内にて、互いに平行となるように構成される。板状部材30~32は、接続部29と一体的に構成される。
板状部材30~32により、間隙空間S4が、複数の空間に区分される。例えば、隣り合う板状部材の間に、区分空間S6が形成される。
【0063】
ツイータ7aの音の出力方向において、ツイータ7aから最も離れた位置に配置される板状部材30は、ツイータ7a側の端部(下方側の端部)30bが、接続部29と連結されている。
また
図8Bに示すように、板状部材30は、ツイータ7aの音の出力側から見た場合に、接続部29の位置(開口部分P1から最も離れている位置)から、開口部分P1側の端部までの領域において、振動板25を覆い隠すように構成される。
これにより、ツイータ7aから出力される音を、下方側に漏らすことなく、上方側の開口部分P1に向けて、効率よく導くことが可能となる。
【0064】
板状部材30よりもツイータ7a側に配置される板状部材31及び32は、ツイータ7a側の端部(下方側の端部)31b及び32bと接続部29との間に、隙間が形成される。
板状部材31及び32の左右方向のサイズは、板状部材30と同様に、振動板25の全体を覆い隠すことが可能なように、設定されている。
図7の中の矢印で模式的に示すように、ツイータ7aから出力される音は、区分空間S6を通って、間隙空間S4の開口部分P1に向けて導かれる。間隙空間S4に導かれた音は、第2のフレーム12の内部空間S5、音通過孔16、及びスリット15を介して、外部空間S2に放出される。
なお、ツイータ7aに最も近い位置に配置される板状部材32と、ツイータ7aとの間の空間も、区分空間S6に含まれる。
【0065】
本実施形態では、上記したように、ツイータ7aの音の出力側から反射板19及びツイータ7aを見た場合に、反射板19が振動板25の一部を覆い隠すように配置される。複数の板状部材30~32は、ツイータ7aから出力される音を、振動板25の見えている部分側に導くことが可能なように構成されている。
【0066】
図12は、仕切り構造20の取付けの有無に応じた音圧レベルの周波数特性を示すグラフである。テレビ1と同様に、スリットスピーカの構成において、500Hz~20kHzの音を出力可能なスピーカを準備した。そして、スピーカに仕切り構造20を取付ける場合の音圧レベルと、仕切り構造20が取付けられない場合の音圧レベルを、1m離れた位置で測定した。
図12に示すように、約4kHz~8kHzの範囲にかけて、約10dB以上の改善が見られた。
【0067】
図7等に示す仕切り構造20が取付けられない場合、反射板19により、スピーカから出力される音の全エネルギーが一体となって反射される。これにより、特に直進性の強い高域では、音圧が大幅に減衰するという問題がおこり得る。またスピーカと反射板19との間の間隙空間S4における共鳴により、強烈なピーク/ディップが発生し、周波数特性が著しく悪化するという問題もおこり得る。本実施形態では、間隙空間S4を反射しながら進む音の反射経路の長さが、ツイータの再生帯域の周波数の波長とマッチしているため、数kHzでピーク/ディップが発生した。
これに対して仕切り構造20を取付けることで、間隙空間S4を複数の空間に区分することが可能となる。これにより、板状部材30~32により反射される音のエネルギーを分散させることが可能となる。この結果、直進性の強い高域でも、音圧の減衰を十分に抑制することが可能となった。
また、間隙空間S4における共鳴の影響も抑えることが可能となる。すなわち区分空間S6を反射しながら進む音の反射経路を短くなるので、ピーク/ディップが発生する周波数を、より高い周波数帯域まで上げることが可能となる。
図12に示すように、本実施系形態では、ピーク/ディップが発生する周波数を10kHz以上まで上げることが可能である。この結果、ツイータ7aの再生帯域である約4kHz~8kHzの範囲にかけて、周波数特性を改善することが可能となった。
【0068】
図8Bに示すように、本実施形態では、振動板25の下方側から上方側にかけて、振動板25を覆い隠すように、板状部材30~32が配置される。これにより、反射板19に到達する音を十分に抑制することが可能となり、高い効果が得られた。
また
図7等に示すように、本実施形態では、3つの板状部材30~32が前方側に傾けられて配置される。これにより、ツイータ7aから出力される音を、効率よく開口部分P1に導くことが可能となり、音圧レベルの減衰を抑制することが可能となる。
また
図7や
図8等に示すように、本実施形態では、板状部材30~32の延在方向、すなわちツイータ7aから開口部分P1に向かう方向とは直交する左右方向において、区分空間S6が開口するように構成されている。すなわち仕切り構造20の左右の側面側は塞がれることなく、開口している。これにより、板状部材30~32により区分される区分空間S6において共鳴が発生し、ピーク等が発生してしまうことを十分に抑制することが可能となる。
また
図8Aや
図9B等に示すように、仕切り構造20は、中央部分に形成された補強用のリブ35を有する。この補強用のリブ35により、板状部材30~32が互いに接続される。これにより、仕切り構造20の剛性(各板状部材の剛性)を向上させることが可能となる。また板状部材31には、金型の補強のために、切欠き36が形成される。
【0069】
図1及び2に示す他のスピーカボックス4に対しても、仕切り構造20を採用することで、同様の効果が発揮される。なお、スピーカボックス4及び仕切り構造20の構成が、全て同じである場合に限定されず、適宜設計されてよい。
【0070】
本実施形態において、テレビ1は、電子機器の一実施形態に相当する。
スピーカボックス4は、スピーカ装置に相当する。
ツイータ7aは、音を出力するスピーカに相当する。またツイータ7aは、スピーカ部と構造体とを具備する、本技術に係るスピーカの一実施形態ともなる。上記で説明したスピーカユニットを構成する部分が、スピーカ部に相当する。
仕切り構造20は、スピーカの音の出力側に配置されスピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体に相当する。
反射板19は、スピーカの音の出力側に配置されスピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に相当する。
複数の板状部材30~32は、1以上の板状部材に相当する。
板状部材30は、第1の部材に相当する。
板状部材31及び32は、1以上の第2の部材に相当する。
【0071】
以上、本実施形態に係るスピーカボックス4は、ツイータ7aの音の出力側に配置される反射板19に対して構成される仕切り構造20を具備する。仕切り構造20は、反射板い19とツイータ7aとの間の間隙空間S4に配置され、ツイータ7aから出力される音を間隙空間S4から外部空間S2に導く複数の板状部材30~32を有する。これにより、ツイータ7aの音の出力側を覆い隠すような構成を採用しつつ、音質への影響を防止することが可能となる。この結果、意匠性を低下させることなく、高品質かつ十分な音圧の出力を実現することが可能となる。
例えば振動板25の面積よりも、音を放射するための開口部が狭い構造を採用しつつ、高品質な音の出力を実現することが可能となる。例えば、スリットスピーカ等の構成を実現することで、デザイン性を損なわず前面放射が可能となり、特に高音域の質を担保することが可能となる。また反射を利用して音を前面側に放出する必要がないので、音質が設置環境に影響されにくい。またスピーカボックス4をセットの上側に配置することが可能となる。
【0072】
また、仕切り構造20によって分割し斜めに音波を整流することで、振動板25の正面に障害物がある場合に担保することが難しい高域が減衰することを防ぐことができる。また間隙空間S4が分割されることにより、共鳴が起きる周波数を非常に高い周波数まで上げることができるため、共鳴による周波数特性の悪化を防ぐことができる。
【0073】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0074】
上記の実施形態では、
図7等に示すように、板状部材30~32は、間隙空間S4内にて構成された。すなわち間隙空間S4内に、板状部材30~32の全体が含まれるように構成された。このような構成に限定される訳ではない。
【0075】
図13~
図16は、他の実施形態に係る仕切り構造の構成例を示す模式図である。
図13及び
図14に示す仕切り構造220では、5つの板状部材230~234が構成される。これら板状部材230~234は、互いに平行ではなく、傾斜角度が異なるようにして構成される。
また板状部材231~233は、上方側の端部231a~233aが、間隙空間S4の開口部分P1から外側へ突出する。また板状部材234は、全体が間隙空間S4の外側に配置される。これにより、ツイータ7aから出力される音を、開口部分P1及び外部空間S2に、効率よく導くことが可能となる。
【0076】
図15及び
図16に示す仕切り構造320では、5つの板状部材230~234が構成される。これら板状部材330~234のうち、3つの上方側の板状部材332~334は、互いに平行に構成されている。これら板状部材332~334に対して、板状部材330及び331は、傾斜角度が異なるようにして構成される。また板状部材330及び331同士も傾斜角度が異なるようにして構成される。
また板状部材332は、上方側の端部332aが、間隙空間S4の開口部分P1から外側へ突出する。また板状部材333及び334は、全体が間隙空間S4の外側に配置される。さらに、最も上方側の板状部材334は、ツイータ7aのフレーム27に接続される。すなわち仕切り構造320では、振動板25の全体を覆うようにして、板状部材330~334が配置される。
これにより、ツイータ7aから出力される音を、開口部分P1及び外部空間S2に、効率よく導くことが可能となる。
【0077】
上記では、スピーカボックス4に備えられる反射板19が、本技術に係る「物体」に相当する場合を例に挙げた。すなわち本技術に係る「スピーカ装置」が「物体」を具備する場合を例に挙げた。
これに限定されず、「物体」が、「スピーカ装置」が搭載される「電子機器」の一部である場合でも、本技術が適用可能である。すなわち「物体」は、「スピーカ装置」が「電子機器」に組み込まれた状態で、スピーカの音の出力側に配置されてもよい。
例えば、
図6に示すスピーカボックス4において、反射板19が設けられていないとする。そのスピーカボックス4をテレビ1に組み込んだ場合に、テレビ1の部品等は、ツイータ7aの音の出力側に配置されるとする。例えば、
図7に示す第1のフレーム11の後面部11cが、ツイータ7aの正面側に配置され、ツイータ7aの一部分を覆い隠すとする。
このような場合でも、ツイータ7aの正面側に配置された後面部11c等に対して、本技術に係る「構造体」を構成することが可能である。
すなわち本技術は、「スピーカ装置」が「物体」を具備する場合でも、具備しない場合でも、実施することが可能である。
【0078】
上記では、本技術に係る「構造体」として、複数の板状部材が配置された。これに限定されず、1つの板状部材が配置される場合でも、効果は発揮される。例えば本技術に係る「第1の部材」のみにより、「構造体」が構成されもよい。
【0079】
スピーカの音の出力方向に対する板状部材の傾斜角度は限定されない。例えば音の出力方向に直交する方向に沿って板状部材が配置されてもよい。
板状部材を正面側から見て、板状部材の上方側の端部(開口部分)側の端部が、左右いずれか一方に傾斜するように構成されてもよい。例えばスピーカユニットが配置される位置に応じて、板状部材の上方側の端部が斜めに構成される。これにより音の指向特性を制御することが可能となる。
上記でも述べたが、本技術の適用は、ツイータに限定されない。任意の再生帯域のスピーカに対して、構造体を取付けることが可能である。
【0080】
本技術が適用可能な電子機器はテレビに限定されない。また映像を表示可能な電子機器に限定される訳でもない。例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、ゲーム機、デジタルカメラ、オーディオ機器、TV、プロジェクタ、カーナビ、ウエアラブル情報機器(眼鏡型、リストバンド型)、リモコン等の操作機器、インターネット等に接続されたIoT機器等の、任意の電子機器にも適用可能である。
【0081】
各図面を参照して説明した電子機器、スピーカボックス、スピーカ(スピーカユニット)、構造体等の各構成、構造体の製造方法等は一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成や製造方法等が採用されてよい。
【0082】
本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
【0083】
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
【0084】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【0085】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
音を出力するスピーカと、
前記スピーカの音の出力側に配置され前記スピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体と
を具備し、
前記構造体は、
前記スピーカに接続される接続部と、
板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカから出力される音を前記外部空間に向けて導く1以上の板状部材とを有する
スピーカ装置。
(2)(1)に記載のスピーカ装置であって、
前記1以上の板状部材は、複数の板状部材であり、隣り合う板状部材の間に区分空間が形成される
スピーカ装置。
(3)(2)に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記間隙空間内にて構成される
スピーカ装置。
(4)(2)に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材のうち少なくとも1つは、前記開口部分側の端部が、前記開口部分から外側に突出する
スピーカ装置。
(5)(2)から(4)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、互いに平行となるように構成される
スピーカ装置。
(6)(2)から(5)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記開口部分に向かう延在方向とは直交する方向において、前記区分空間が開口するように構成される
スピーカ装置。
(7)(2)から(6)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記音の出力方向において、前記スピーカから最も離れた位置に配置される第1の部材を有し、
前記第1の部材は、前記スピーカ側の端部が前記接続部と連結している
スピーカ装置。
(8)(7)に記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板を有し、
前記第1の部材は、前記スピーカの音の出力側から見た場合に、前記接続部の位置から前記開口部分側の端部までの領域において、前記振動板を覆い隠すように構成される
スピーカ装置。
(9)(8)に記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、前記第1の部材と、前記第1の部材以外の1以上の第2の部材とを有し、
前記1以上の第2の部材は、前記スピーカ側の端部と前記接続部との間に隙間が形成されるように配置される
スピーカ装置。
(10)(2)から(9)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記複数の板状部材は、補強用のリブで互いに接続される
スピーカ装置。
(11)(1)から(10)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板と、前記振動板の周囲に配置されるフレームとを有し、
前記接続部は、前記フレームに接続される
スピーカ装置。
(12)(11)に記載のスピーカ装置であって、
前記接続部は、前記フレームの、前記間隙空間の前記開口部分側とは反対側の部分に当接される
スピーカ装置。
(13)(1)から(12)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記1以上の板状部材は、前記接続部と一体的に構成されている
スピーカ装置。
(14)(1)から(13)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板を有し、
前記スピーカの音の出力側から前記物体及び前記スピーカを見た場合に、前記物体が前記振動板の一部を覆い隠すように配置され、
前記1以上の板状部材は、前記スピーカから出力される音を、前記振動板の見えている部分側に導く
スピーカ装置。
(15)(1)から(14)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカは、振動板を有し、
前記間隙空間の開口部分は、前記スピーカの音の出力側から前記物体及び前記スピーカを見た場合に、前記物体の前記振動板の見えている部分側の端部の位置に構成される
スピーカ装置。
(16)(1)から(15)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記スピーカ装置は、電子機器に組み込まれ、
前記スピーカの音の出力側が、前記電子機器の正面側に向けられており、
前記物体は、前記スピーカ装置が前記電子機器に組み込まれた状態で、前記スピーカの音の出力側に配置される
スピーカ装置。
(17)(1)から(16)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、さらに、
前記物体を具備する
スピーカ装置。
(18)(1)から(16)のうちいずれか1つに記載のスピーカ装置であって、
前記物体は、前記電子機器の一部である
スピーカ装置。
(19)
音を出力するスピーカ部と、
前記スピーカ部の音の出力側に配置され前記スピーカ部との間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体と
を具備し、
前記構造体は、
前記スピーカ部に接続される接続部と、
板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカ部から出力される音を前記外部空間に向けて導く1以上の板状部材とを有する
スピーカ。
(20)
スピーカの音の出力側に配置され前記スピーカとの間に外部空間と繋がる間隙空間を形成する物体に対して構成される構造体であって、
前記スピーカに接続される接続部と、
板形状を有し、前記間隙空間に配置され、前記間隙空間の前記外部空間と繋がる側の開口部分に向けて延在し、前記スピーカから出力される音を前記外部空間に向けて導く1以上の板状部材と
を具備する構造体。
【符号の説明】
【0086】
S2…外部空間
S4…間隙空間
S6…区分空間
P1…開口部分
1…テレビ
4、4a~4d…スピーカボックス
7…スピーカ
7a…ツイータ
19…反射板
20、220、320…仕切り構造
25…振動板
26…保持部材
27…フレーム
29…接続部
30~32、230~234、330~334…板状部材
30a、31a、32a、231a~233a、332a…板状部材の開口部分側の端部
30b、31b、32b…板状部材のスピーカ側の端部