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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】クラフト紙及びクラフト紙袋
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/04 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
D21H11/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021522282
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020052
(87)【国際公開番号】W WO2020241435
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019101112
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019101113
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】赤井 佐和子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 陵
(72)【発明者】
【氏名】江原 実沙
(72)【発明者】
【氏名】田村 由貴
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159866(JP,A)
【文献】特開2000-054283(JP,A)
【文献】特開2010-229564(JP,A)
【文献】特開2013-185260(JP,A)
【文献】特開2006-089889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0127919(US,A1)
【文献】特開2009-138308(JP,A)
【文献】特開2014-055372(JP,A)
【文献】特開2006-097149(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38;D21C1/00-11/14;D21D1/00-99/00;D21F1/00-13/12;D21G1/00-9/00;D21H11/00-27/42;D21J1/00-7/00
B65D30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフトパルプを主成分とするクラフト紙であって、
該クラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解した場合、得られる離解パルプのJIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるカナダ標準ろ水度は700mL以上であり、JIS P 8120:1998に準拠して測定される繊維粗度は0.200mg/m以上であり、ルンケル比が1.98~2.12であり、Kα価が38~46である、クラフト紙。
【請求項2】
JIS P 8124:2011に準拠して測定される坪量が70g/m以上であり、
JIS P 8140:1998に準拠して測定される、温度23℃、接触時間60秒でのコッブ吸水度が15~28g/mであり、
前記坪量に対する前記コッブ吸水度の比が0.18~0.35である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項3】
JIS P 8116:2000に準拠して測定される縦方向の比引裂強さが15.0mN・m/g以上であり、横方向の比引裂強さが18.0mN・m/g以上である、請求項1又は2に記載のクラフト紙。
【請求項4】
JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張破断伸びが8.0%以上であり、横方向の引張破断伸びが6.0%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のクラフト紙。
【請求項5】
JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量が2.5J/g以上であり、横方向の比引張エネルギー吸収量が2.3J/g以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のクラフト紙。
【請求項6】
JIS P 8117:2009に準拠して測定される透気抵抗度が10秒以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のクラフト紙。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のクラフト紙で構成されたクラフト紙袋。
【請求項8】
粉体収容用である請求項7に記載のクラフト紙袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクラフト紙及びクラフト紙袋に関する。特に、粉体製品を充填して運搬するために用いられる重包装用に適したクラフト紙及びクラフト紙袋に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフトパルプを原料として得られるクラフト紙は、製袋や包装紙等の様々な用途に用いられている。クラフト紙、特に、重量物の運搬用である重包装用のクラフト紙袋には、内容物の充填、輸送、保管等の工程において破袋を生じさせないために、高い強度が要求される。
【0003】
クラフト紙袋を利用する産業の中でも、製粉業、化学品製造業などでは、クラフト紙袋に微細な粒子状の粉体が風送充填される。風送充填を効率的に行うためには、高い通気性を有するクラフト紙が求められる。しかし、クラフト紙の強度を考慮すると、叩解を進めてパルプ繊維同士の結合点を増やす必要があるが、叩解を進めるとクラフト紙の通気性は悪くなる傾向がある。そこで、特許文献1では、繊維長が長いパルプを使用することにより、強度と通気性を両立させたクラフト紙が提案されている。
【0004】
また、クラフトパルプを原料として得られるクラフト紙は、強度が高く丈夫で破れにくい紙であるため、重量物の運搬に使用する重包装紙袋や段ボールの材料、封筒、粘着テープ等の様々な用途に用いられる場合もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6222946号公報
【文献】特許第6198376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クラフト紙袋は重量物の運搬に用いられる場合もあるため、強度が高く丈夫である必要がある。一方で、粉体を充填する場合においては、クラフト紙袋はある程度の通気性を有することが必要である。近年は、風送充填の高速化が進んでいるため、クラフト紙袋には、さらなる通気性の向上が求められている。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みて、強度を維持しつつ、さらに通気性を高めたクラフト紙とこれを用いたクラフト紙袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]クラフトパルプを主成分とするクラフト紙であって、
該クラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解して得られる離解パルプのJIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるカナダ標準ろ水度は700mL以上であり、JIS P 8120:1998に準拠して測定される繊維粗度は0.200mg/m以上である、クラフト紙。
[2]JIS P 8116:2000に準拠して測定される縦方向の比引裂強さが15.0mN・m/g以上であり、横方向の比引裂強さが18.0mN・m/g以上である、[1]に記載のクラフト紙。
[3]JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張破断伸びが8.0%以上であり、横方向の引張破断伸びが6.0%以上である、[1]又は[2]に記載のクラフト紙。
[4]JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量が2.5J/g以上であり、横方向の比引張エネルギー吸収量が2.3J/g以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のクラフト紙。
[5]JIS P 8117:2009に準拠して測定される透気抵抗度が10秒以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のクラフト紙。
[6]JIS P 8140:1998に準拠して測定される、温度23℃、接触時間60秒でのコッブ吸水度が15~28g/mである、[1]~[5]のいずれかに記載のクラフト紙。
[7][1]~[6]のいずれかに記載のクラフト紙で構成されたクラフト紙袋。
[8]粉体収容用である[7]に記載のクラフト紙袋。
【0008】
また、本発明は以下の構成であってもよい。
[11]クラフトパルプを主成分とするクラフト紙であって、
JIS P 8124:2011に準拠して測定される坪量が70g/m以上であり、
JIS P 8140:1998に準拠して測定される、温度23℃、接触時間60秒でのコッブ吸水度が15~28g/mであり、
坪量に対するコッブ吸水度の比が0.18~0.35である、クラフト紙。
[12]JIS P 8116:2000に準拠して測定される縦方向の比引裂強さが15.0mN・m/g以上であり、横方向の比引裂強さが18.0mN・m/g以上である、[11]に記載のクラフト紙。
[13]JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張破断伸びが8.0%以上であり、横方向の引張破断伸びが6.0%以上である、[11]又は[12]に記載のクラフト紙。
[14]JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量が2.5J/g以上であり、横方向の比引張エネルギー吸収量が2.3J/g以上である、[11]~[13]のいずれかに記載のクラフト紙。
[15]JIS P 8117:2009に準拠して測定される透気抵抗度が10秒以下である、[11]~[14]のいずれかに記載のクラフト紙。
[16]クラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解した場合、得られる離解パルプのJIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるカナダ標準ろ水度は700mL以上であり、JIS P 8120:1998に準拠して測定される繊維粗度は0.200mg/m以上である、[11]~[15]のいずれかに記載のクラフト紙。
[17][11]~[16]のいずれかに記載のクラフト紙で構成されたクラフト紙袋。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態は、クラフトパルプを主成分とするクラフト紙であって、該クラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解して得られる離解パルプのJIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるカナダ標準ろ水度は700mL以上であり、JIS P 8120:1998に準拠して測定される繊維粗度は0.200mg/m以上である、クラフト紙である。本実施形態に係るクラフト紙は、強度を維持しつつ優れた通気性を備える。また、本実施形態に係るクラフト紙袋によれば、風送充填を効率的に行うことも可能となる。
【0010】
また、本発明の別の実施形態は、クラフトパルプを主成分とするクラフト紙であって、JIS P 8124:2011に準拠して測定される坪量が70g/m以上であり、JIS P 8140:1998に準拠して測定される、温度23℃、接触時間60秒でのコッブ吸水度が5~40g/m(好ましくは10~35g/m、より好ましくは15~28g/m)であり、坪量に対するコッブ吸水度の比が0.10~0.45(好ましくは0.15~0.40、より好ましくは0.18~0.35)である、クラフト紙である。本実施形態に係るクラフト紙は、積み重ねた状態で保管しても、製袋時に使用された糊が反対面にまで浸透しにくく、表面のべたつきや、クラフト紙袋同士の接着が生じにくい。
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[クラフト紙]
本発明のクラフト紙は、クラフトパルプを主成分とする。本明細書において、クラフトパルプとは、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを主成分とするアルカリ性薬剤を用いて木材を処理して得られたパルプである。クラフト紙における主成分とは、クラフト紙の全質量に対して50質量%以上を占める成分をいう。すなわち、クラフト紙の全質量に対するクラフトパルプの質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。なお、クラフト紙の全質量に対するクラフトパルプの質量割合100質量%以下であることが好ましい。また、クラフト紙を構成する全パルプの質量(固形分)に占めるクラフトパルプの質量(固形分)の割合は、97質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。なお、クラフト紙を構成する全パルプの質量(固形分)に占めるクラフトパルプの質量(固形分)の割合は、100質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のクラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解した場合、得られる離解パルプ(以下、単に「離解パルプ」という。)のJIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるカナダ標準ろ水度(以下「フリーネス」という場合がある。)は700mL以上であり、JIS P 8120:1998に準拠して測定される繊維粗度(以下、単に「繊維粗度」という。)は0.200mg/m以上である。本発明のクラフト紙は、上記構成を有するため、優れた強度と通気性を兼ね備えている。
【0014】
JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される離解パルプのフリーネスの上限は、特に制限されないが、800mL以下であることが好ましく、750mL以下であることがより好ましく、735mL以下であることがさらに好ましい。離解パルプのフリーネスを700mL以上とすることにより、優れた通気性が得られやすくなる。離解パルプのフリーネスを上記上限値以下とすることにより、クラフト紙は、より優れた強度を発揮し易くなる。離解パルプのフリーネスは、叩解等により調整することができる。
【0015】
クラフト紙のJIS P 8124:2011に準拠して測定される坪量は、70g/m以上であることが好ましく、75g/m以上であることがより好ましく、80g/m以上であることがさらに好ましい。なお、クラフト紙のJIS P 8124:2011に準拠して測定される坪量の上限値は特に限定されるものではないが、150g/m以下であることが好ましい。
【0016】
クラフト紙のJIS P 8140:1998に準拠して測定される、温度23℃、接触時間60秒でのコッブ吸水度は、5~40g/mであることが好ましく、10~35秒であることがより好ましく、15~28g/mであることがさらに好ましく、20~25g/mであることが特に好ましい。
【0017】
坪量に対するコッブ吸水度の比は、0.10~0.45であることが好ましく、0.15~0.40であることがより好ましく、0.18~0.35であることがさらに好ましく、0.21~0.35であることが一層好ましく、0.28~0.35であることが特に好ましい。ここで、坪量に対するコッブ吸水度の比は、コッブ吸水度/坪量の値である。
【0018】
従来、クラフト紙袋においては、積み重ねた状態で保管されている間に、製袋時に使用された糊が反対面にまで浸透し、表面がべたついたり、クラフト紙袋同士が接着してしまうという課題もあった。しかしながら、クラフト紙の坪量、コッブ吸水度及び坪量に対するコッブ吸水度の比を上記範囲内とすることにより、クラフト紙袋を積み重ねた状態で保管しても、製袋時に使用された糊が反対面にまで浸透しにくくすることができる。これにより、表面のべたつき発生を防止し、さらにはクラフト紙袋同士の接着を防ぐことができる。特に、クラフト紙の坪量を上記範囲内とすることにより、接着に必要な充分な量の糊を用いても、積み重ねた状態での保管による反対面への糊の浸透を抑制しやすくなる。また、コッブ吸水度を上記下限値以上とすることにより、クラフト紙同士を糊によってしっかりと接着させやすくなり、コッブ吸水度を上記上限値以下とすることにより、製袋後にクラフト紙袋を積み重ねた際に、糊のしみ出しをより効果的に抑制することができる。さらに、坪量に対するコッブ吸水度の比を上記下限値以上とすることにより、クラフト紙同士を糊によってしっかりと接着させやすくなり、坪量に対するコッブ吸水度の比を上記上限値以下とすることにより、製袋後にクラフト紙袋を積み重ねた際に、糊のしみ出しをより効果的に抑制することができる。
【0019】
コッブ吸水度は、例えば、サイズ剤を添加することで調整することができる。サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、合成サイズ剤等が挙げられる。サイズ剤の添加量は、クラフト紙を構成する全パルプの質量(固形分)に対して、0.05~1.00質量%であることが好ましく、0.10~0.20質量%であることがより好ましい。
【0020】
なお、同種のクラフトパルプを用いたクラフト紙であれば、坪量が大きい程コッブ吸水度は大きい値となる。
【0021】
本発明のクラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解した場合、得られる離解パルプのJIS P 8120:1998に規定される繊維粗度(以下、単に「繊維粗度」という。)は、0.200mg/m以上である。繊維粗度の上限は、特に限定されないが、0.400mg/m以下であることが好ましく、0.350mg/m以下であることがより好ましく、0.300mg/m以下であることがさらに好ましく、0.250mg/m以下であることが特に好ましい。繊維粗度は、単位長さあたりの繊維の絶乾質量である。繊維粗度が大きいほど、繊維がカールしており、伸びが発現しやすいことを意味する。
【0022】
離解パルプの繊維粗度は、原料パルプのルンケル比、原料パルプのカッパー価(Kα価)、叩解に使用する刃、叩解時の温度等により調整できる。
ルンケル比は、平均繊維壁厚(繊維の細胞壁の厚さの平均)の2倍を、ルーメン径の平均直径で割った値である。ルーメン径の平均直径は、平均繊維幅から平均繊維壁厚の2倍を引くことにより求められる。すなわち、ルンケル比は、平均繊維壁厚と平均繊維幅から求められる値である。ルンケル比を求めるために必要な平均繊維壁厚と平均繊維幅は、繊維分析器(メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボver4.0)により測定することができる。
【0023】
原料パルプのルンケル比が低い程、繊維が柔軟であるために叩解による揉みほぐし作用によりカールが付きやすくなり、伸びが発現しやすい。すなわち、繊維粗度が大きくなりやすい。また、ルンケル比が低い程、叩解による物理的な力でつぶれやすくなるため、繊維間結合が増えて強度が向上しやすい。ただし、ルンケル比が低いと引裂強度は低くなる傾向がある。このため、全体としてのバランスを考慮すると、叩解前の原料パルプのルンケル比は、1.5~2.5であることが好ましく、1.7~2.3であることがより好ましい。
【0024】
ルンケル比は、広葉樹を原料とするパルプに比べて、針葉樹を原料とするパルプの方が高い。そのため、原料パルプのルンケル比は、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの混合割合により調整できる。ただし、原料パルプは、針葉樹クラフトパルプのみであってもよい。
【0025】
針葉樹クラフトパルプとしては、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。これらは併用してもよい。中でも原料パルプとして針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を使用することが、引張破断伸びおよび強度に優れるという点で好ましい。針葉樹クラフトパルプの材種としては、ダグラスファー、アカマツ、スプルース、ラジアータパイン等が挙げられる。中でも、ダグラスファーはルンケル比が高いため好ましく用いられる。原料パルプには、これらから2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
広葉樹クラフトパルプとしては、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。中でも原料パルプとして広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)を使用することが、強度の点で好ましい。広葉樹クラフトパルプの材種としては、ユーカリ、ブナ、アカシア等が挙げられる。原料パルプには、これらから2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
Kα価は、JIS P 8211:2011に準拠して測定されるパルプのリグニン含有量又は漂白性の指標である。原料パルプのKα価が低い(リグニン少ない)ほど、繊維が柔軟であるため、叩解による揉みほぐし作用によりカールが付きやすくなり、伸びが発現しやすくなる。すなわち、離解パルプの繊維粗度を大きくすることができる。ただし、Kα価が低すぎると単繊維強度が低下する場合もある。一方、Kα価が高すぎると繊維が硬いため、カールが付きにくく、伸びが発現しにくい場合がある。このため、全体としてのバランスを考慮すると、原料パルプのKα価は、35~55であることが好ましく、38~50であることがより好ましい。
【0028】
叩解に使用する刃としては、デラックスファイナー(玄武岩)が好ましい。デラックスファイナーは、コニカル型リファイナーと比べ、ローター、ステーターともに刃幅が広いため、カッティングよりは揉みほぐしに近い叩解となり、カールが付きやすくなり、伸びが発現しやすい。すなわち、離解パルプの繊維粗度を大きくすることができる。また、デラックスファイナーを使用すると、クラフト紙の引裂強度が低下しにくい。
【0029】
叩解時の温度は、30~90℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。温度を高くする程、カールが付きやすくなり、伸びが発現されやすくなる。すなわち、離解パルプの繊維粗度を大きくすることができる。特に、リグニンの軟化点は70℃以上であるため、70℃以上で叩解すると、繊維が軟らかくなり、特にカール(粗度)が付きやすくなる。
【0030】
クラフト紙のJIS P 8116:2000に準拠して測定される縦方向の比引裂強さは、特に限定されないが、落下衝撃耐性の観点から、15.0mN・m/g以上であることが好ましく、16.0mN・m/g以上であることがより好ましく、17.0mN・m/g以上であることがさらに好ましく、17.5mN・m/g以上であることが一層好ましく、18.0mN・m/g以上であることが特に好ましい。縦方向の比引裂強さの上限は、特に限定されないが、25.0mN・m/g以下であることが好ましい。また、クラフト紙のJIS P 8116:2000に準拠して測定される横方向の比引裂強さは、特に限定されないが、18.0mN・m/g以上であることが好ましく、20.0mN・m/g以上であることがより好ましく、22.0mN・m/g以上であることがさらに好ましく、23.0mN・m/g以上であることが特に好ましい。横方向の比引裂強さは、特に限定されないが、落下衝撃耐性の観点から、28.0mN・m/g以下であることが好ましく、26.0mN・m/g以下であることがより好ましく、25.0mN・m/g以下であることがさらに好ましく、24.0mN・m/g以下であることが特に好ましい。縦方向及び横方向の比引裂強さが上記下限値以上であれば、内容物の充填、輸送、保管等の工程において破袋が生じにくいクラフト紙袋を得ることができる。縦方向及び横方向の比引裂強さは、離解パルプのフリーネスが大きい程、高い値となりやすい傾向がある。なお、本明細書において、横方向とは抄紙機の幅方向をいい、縦方向とは抄紙機の流れ方向をいう。
【0031】
クラフト紙のJIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張破断伸びは、落下衝撃耐性および/または糊の浸透抑制の観点から、6.0%以上であることが好ましく、7.0%以上であることがより好ましく、7.5%以上であることがさらに好ましく、8.0%以上であることが一層好ましく、8.5%以上であることが特に好ましい。縦方向の引張破断伸びは、特に限定されないが、12.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましい。また、クラフト紙のJIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張破断伸びは、特に限定されないが、4.0%以上であることが好ましく、5.0%以上であることがより好ましく、6.0%以上であることがさらに好ましく、6.5%以上であることが特に好ましい。横方向の引張破断伸びは、特に限定されないが、10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることがさらに好ましい。縦方向及び横方向の引張破断伸びが上記下限値以上であれば、内容物の充填、輸送、保管等の工程において破袋が生じにくいクラフト紙袋を得ることができる。縦方向及び横方向の引張破断伸びは、離解パルプの繊維粗度が大きい程、高い値となりやすい傾向がある。
【0032】
クラフト紙のJIS P 8113:2006に規定される縦方向の比引張エネルギー吸収量は、2.5J/g以上であることが好ましく、2.8J/g以上であることがより好ましく、3.0J/g以上であることがさらに好ましい。また、クラフト紙のJIS P 8113:2006に規定される横方向の比引張エネルギー吸収量は、落下衝撃耐性および/または糊の浸透抑制の観点から、1.5J/g以上であることが好ましく、2.0J/g以上であることがより好ましく、2.3J/g以上であることがさらに好ましく、2.5J/g以上であることが一層好ましく、2.8J/g以上であることが特に好ましい。縦方向及び横方向の比引張エネルギー吸収量が上記下限値以上であれば、内容物の充填、輸送、保管等の工程において破袋が生じにくいクラフト紙袋を得ることができる。縦方向及び横方向の比引張エネルギー吸収量は、離解パルプの繊維粗度が大きい程、高い値となりやすい傾向がある。
【0033】
クラフト紙のJIS P 8117:2009に準拠して測定される透気抵抗度は、50秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがより好ましく、20秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることが一層好ましく、7秒以下であることが特に好ましい。また、クラフト紙のJIS P 8117:2009に準拠して測定される透気抵抗度は、0秒以上であることが好ましい。透気抵抗度が上記上限値以下であることにより、通気性に優れたクラフト紙を得ることができる。透気抵抗度は、離解パルプのフリーネスが大きい程、低い値となりやすい傾向がある。
【0034】
クラフト紙は、クラフトパルプの他に任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、サイズ剤、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、填料等の内添薬品、耐水化剤、染料、蛍光増白剤等が挙げられる。
【0035】
サイズ剤としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)等の内添サイズ剤;スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下、さらに好ましくは0.30質量部以下、一層好ましくは0.20質量部以下である。また、サイズ剤の配合量は、原料パルプ100質量部に対して0質量部以上であることが好ましい。
【0036】
歩留向上剤としては、ポリアクリルアミド、硫酸バンド等が挙げられる。歩留向上剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは5.0質量部以下であり、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下である。また、歩留向上剤の配合量は、原料パルプ100質量部に対して0質量部以上であることが好ましい。
【0037】
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。また、乾燥紙力増強剤の配合量は、原料パルプ100質量部に対して0質量部以上であることが好ましい。
【0038】
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(PAE)、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、湿潤紙力増強剤はPAEであることが好ましい。紙基材中の湿潤紙力増強剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.07質量部以上である。また、湿潤紙力増強剤の配合量は原料パルプ100質量部に対して好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下である。
【0039】
填料としては、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料;アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
【0040】
クラフト紙は、塗工層を有するものであってもよい。塗工層は、澱粉等の天然接着剤やポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、アクリル樹脂などの合成接着剤を主成分とする塗工層であることが好ましい。クラフト紙が塗工層を有する場合、塗工層の塗工量は0.3~3.0g/mであることが好ましい。
【0041】
[クラフト紙の製造方法]
本発明のクラフト紙の製造方法は、木材チップを主原料にして、クラフト法で蒸解し、未晒クラフトパルプを得る工程と、この未晒クラフトパルプを叩解してパルプスラリーを得る工程と、パルプスラリーを抄紙する工程と、を含むことが好ましい。なお、このパルプスラリーには未晒クラフトパルプ以外のパルプが添加されていてもよい。また、パルプスラリーには、本発明の効果を損なわない範囲で上記の内添薬品が添加されていてもよい。
【0042】
サイズ剤としては、上述したサイズ剤を添加することが好ましい。また、サイズ剤の添加量は、スラリー中に含まれる全パルプの質量(固形分)に対して、0.05~1.00質量%であることが好ましく、0.10~0.20質量%であることがより好ましい。
【0043】
未晒クラフトパルプを叩解してパルプスラリーを得る工程では、叩解後のパルプスラリーには、乾燥紙力増強剤を加えることが好ましい。乾燥紙力増強剤の添加量は、スラリー中に含まれる全パルプの質量(固形分)に対して、0.5~3.0質量%であることが好ましい。カチオン化澱粉を加えることにより、クラフト紙の強度が増強され、かつ破断伸びのよいクラフト紙を得ることができる。
【0044】
例えば、離解パルプのフリーネスを700~750mLとするために、叩解は、仕上がりのフリーネスが670~750mLとなるまで行うことが好ましい。また、例えば、離解パルプの繊維粗度を0.200mg/m以上とするために、叩解は、仕上がりの繊維粗度が0.160~0.250mg/mとなるまで行うことが好ましい。
【0045】
未晒クラフトパルプを叩解してパルプスラリーを得る工程では、叩解時の温度を、30~90℃とすることが好ましく、70~90℃とすることがより好ましい。温度を高くする程、カールが付きやすくなり、伸びが発現されやすくなる。すなわち、離解パルプの繊維粗度を大きくすることができる。特に、リグニンの軟化点は70℃以上であるため、70℃以上で叩解すると、繊維が軟らかくなり、特にカール(粗度)が付きやすくなる。
【0046】
クラフト紙の抄紙方法および抄紙機の型式としては、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー式抄紙機等の公知の抄紙方法および抄紙機が選択可能である。また、クレープ加工等の特殊な処理は、必要により行うことができる。
【0047】
クラフト紙の製造工程では、表面性向上のため、各種の仕上げ装置、例えば、マシンカレンダーやソフトニップカレンダー等に通紙して、製品仕上げを施すことも可能である。
【0048】
[クラフト紙袋]
本発明のクラフト紙袋は、上述したクラフト紙を製袋したものである。袋の形状に特に限定はないが、例えば、JIS Z 0102:2004に記載のひだなし開口式ミシン縫い袋、ひだなしバルブ付きミシン縫い袋等のミシン縫い袋や、ひだなし開口式底ばり袋、ひだなしバルブ付き底ばり袋等ののりばり袋が挙げられる。
【0049】
クラフト紙を製袋する際には糊を使用してもよい。製袋時に使用する糊としては、酢酸ビニル共重合体、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アクリル系共重合体、ホットメルト樹脂、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。製袋時に使用する糊の溶媒としては、水が好ましい。この際、製袋時に使用する糊の乾燥塗工量は、15~23g/mであることが好ましい。乾燥塗工量が上記下限値以上であれば、糊によってしっかりと接着させることができるので、製袋しやすい。また、乾燥塗工量が上記上限値以下であれば、製袋後にクラフト紙袋を積み重ねても、糊がしみ出しにくい。
【0050】
本発明のクラフト紙袋は、強度をより高めるため、2層以上の多層紙袋とすることが好ましい。クラフト紙袋を多層紙袋とする場合、例えば、上述したクラフト紙に合成樹脂層を積層した構成としてもよく、クラフト紙/合成樹脂層/クラフト紙の3層構成としてもよい。また、クラフト紙袋を多層紙袋とする場合、各層間には接着剤層が設けられていてもよい。
【0051】
本発明のクラフト紙袋は強靭な紙袋であるため、内容物を重量単位に包装しその重さと取り扱いに耐える重包装用紙袋として使用できる。また、本発明のクラフト紙袋の内容物に特に限定はないが、通気性に優れ、風送充填に適しているため、内容物としては、粉体又は粒状体のものが好ましい。すなわち、本発明のクラフト紙袋は粉体収容用であることが好ましい。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、%は特に断りのない限り質量%である。
【0053】
[測定方法、評価方法]
(ルンケル比)
離解パルプのルンケル比は、上記平均繊維幅と平均繊維壁厚から計算により求めた。ルンケル比は、平均繊維壁厚(繊維の細胞壁の厚さの平均)の2倍を、ルーメン径の平均直径で除することにより算出した。
【0054】
(離解パルプのフリーネス)
下記実施例および比較例で製造したクラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解し、離解パルプを得た。離解パルプのフリーネスは、JIS P 8121-2:2012に規定される方法により測定した。
【0055】
(Kα価)
離解パルプのKα価は、JIS P 8211:2011に規定されている方法により測定した。
【0056】
(離解パルプの繊維粗度)
下記実施例および比較例で製造したクラフト紙をJIS P 8220:2012に記載のパルプ離解法により離解し、離解パルプを得た。JIS P 8120:1998に準拠し、離解パルプを0.02質量%まで水で希釈したスラリーから25mL(絶乾パルプ5mg相当)を正確に取り分け、メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボver4.0を用いて、離解パルプの繊維粗度を測定した。
【0057】
(坪量、密度)
JIS P 8124:2011に規定される方法に準拠してクラフト紙の坪量を測定した。続いてJIS P 8118:2014に規定される方法で、クラフト紙の厚さを測定した。坪量を紙厚で除した値を、クラフト紙の密度とした。
【0058】
(比引裂強さ)
JIS P 8116:2000に規定される方法により、引裂試験機(東洋精機社製、エレメンドルフ引裂試験機(SA-W型))を用いて、クラフト紙の縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)の引裂強さを測定した。各々の引裂強さを坪量で除すことにより、クラフト紙の縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)の比引裂強さを求めた。
【0059】
(引張破断伸び)
JIS P 8113:2006に規定される方法により、横型引張試験機(L&W社製、CODE SE-064)を用いて、クラフト紙の縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)の引張破断伸びを測定した。
【0060】
(比引張エネルギー吸収量(TEAI))
JIS P 8113:2006に規定される方法により、横型引張試験機(L&W社製、CODE SE-064)を用いて、クラフト紙の縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)の引張エネルギー吸収量を測定した。各々の引張エネルギー吸収量を坪量で除すことにより、クラフト紙の縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)の比引張エネルギー吸収量(TEAI)を求めた。
【0061】
(コッブ吸水度(60秒))
JIS P 8140:1998に規定される方法により、温度23℃、接触時間を60秒としクラフト紙のコッブ吸水度を測定した。
【0062】
(透気抵抗度)
JIS P 8117:2009に規定される方法により、王研式試験機(旭精工社製、デジタル型王研式透気度・平滑度試験機)でクラフト紙の透気抵抗度を測定した。
【0063】
(充填性・破袋適性)
クラフト紙を、高さ370mm,奥行き95mm,幅320mmのJIS Z 1505:2004に規定されるひだなしバルブ付き底ばり袋に加工し、25kgまたは40kgのセメントを風送により5秒で充填した後の袋を、以下の基準でそれぞれ評価した。
◎:エアーが素早く抜け、破袋せずに充填が極めてよく行えた。
○:一部に破袋が見られたが使用上問題ない。
△:破袋が発生し使用上問題があった。
×:破袋が多く発生した。
【0064】
(落下衝撃特性)
クラフト紙を、高さ370mm,奥行き95mm,幅320mmのJIS Z 1505:2004に規定されるひだなしバルブ付き底ばり袋に加工し、25kgのセメントを風送により充填した。セメントを充填した袋を、JIS Z 0217:1998に基づき、高さ1.2mから水平落下させ、破袋に至るまでの回数を数え、以下の基準で評価した。
◎:破袋に至るまでの回数が10回以上。
△:破袋に至るまでの回数が8回以上9回以下。
×:破袋に至るまでの回数が7回以下。
【0065】
(糊付け適性A(接着性))
各例のクラフト紙を幅30mm、長さ150mmにカットし、0.3mLの水溶性糊(日栄化工株式会社製ライフボンドP-8100、濃度48質量%)を薄く伸ばして幅7mm、長さ10cmの部分に塗布し、同じ例の他のクラフト紙を重ねて接着した。これを3セット重ね、上から5kgの重りをのせて、一日放置した後、接着部分の剥離を試み評価した。
◎:糊付けした部分のクラフト紙同士が完全に接着している。
△:概ね接着しているが、一部接着していない部分がある。
×:ほとんど接着しておらず、容易に剥離できる。
【0066】
(糊付け適性B(糊の浸透性))
各例のクラフト紙を50mm角にカットし、1.5mLの水溶性糊(日栄化工株式会社製ライフボンドP-8100、濃度48質量%)をクラフト紙の中央部の面積3cmの部分に塗布し、同じ例の他のクラフト紙を重ねて接着した。これを3セット重ね、上から5kgの重りをのせて、6時間放置した後、糊の浸透を評価した。
◎:糊付けした部分の反対面へ糊が浸透していない。
△:糊付けした部分の反対面へ糊がやや浸透しているが、反対面においてべたつきは見られない。
×:糊付けした部分の反対面へ糊が浸透しており、他の紙と接着している。
【0067】
[原料パルプ]
クラフトパルプ(1):ダグラスファーを原料とする針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)。
クラフトパルプ(2):国内松を原料とする針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)。
クラフトパルプ(3):国内杉を原料とする針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)。
【0068】
[クラフト紙の製造]
表1及び表2に記載した配合のパルプに、内添薬品として合成サイズ剤(荒川化学工業製、サイズパインMXE2)を、パルプの固形分に対して0.15質量%添加した。その後、デラックスファイナーを用いて80℃で叩解した。叩解後のパルプの特性を表1及び表2に示した。
叩解後のパルプに、内添薬品として、硫酸バンドをパルプの固形分に対して1.2質量%、乾燥紙力増強剤としてカチオン化澱粉をパルプの固形分に対して0.9質量%およびポリアクリルアミドをパルプの固形分に対して1.0質量%添加した後、オープントップフォーマー式抄紙機を用いて抄紙(1層抄き)し、各例のクラフト紙を得た。各例のクラフト紙とその離解パルプの特性を表1及び表2に示した。
【0069】
[評価]
各例のクラフト紙の評価結果を表1及び表2に示す。表1及び表2に示すように、実施例のクラフト紙は透気抵抗度が低く、通気性に優れていた。また、実施例のクラフト紙で得られた袋は、充填性・破袋適性、落下衝撃特性が共に良好であり、優れた強度を有していた。さらに、実施例のクラフト紙は、糊付け適性も良好であった(接着性に優れ、加重時の他のクラフト紙への糊の浸透が抑制されていた)。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】