(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】炭素繊維複合材料用樹脂組成物、トウプレグ
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
(21)【出願番号】P 2021529752
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2019001382
(87)【国際公開番号】W WO2020161515
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高岩 玲生
(72)【発明者】
【氏名】武田 一朗
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-345884(JP,A)
【文献】特許第3648743(JP,B2)
【文献】特開2012-056980(JP,A)
【文献】特開2011-157491(JP,A)
【文献】特開2013-032510(JP,A)
【文献】特開2019-131708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
B29B15/08-15/14
C08J 5/04-5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に引き揃えられた強化繊維束にエポキシ樹脂組成物が含浸されてなるトウプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物が、下記成分[A]~[C]:
[A]全エポキシ樹脂成分100質量部のうち30質量部以上の量の23℃で固形であるエポキシ樹脂、
[B]全エポキシ樹脂成分100質量部のうち20質量部以上の量の23℃で液状である多官能性アミン型エポキシ、および
[C]粘土鉱物としての有機親和性フィロシリケート、
を含有する、トウプレグ。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物が、前記固形エポキシ樹脂の中で20部以上の量で、300g/eq以下のエポキシ当量を有することを特徴とする、請求項1に記載のトウプレグ。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物が、全エポキシ樹脂成分100質量部のうち20質量部以上の量の多官能性アミン型エポキシを有することを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項4】
前記トウプレグが、下記条件[T1]~[T3]:
[T1]9.8Nの荷重で30秒かけて外径8.25cmのボビンに1.2mの前記トウプレグを巻き取って得られたサンプルを、23℃/50RH%の環境で5日間保管した後に1.0m/分で解舒した際に必要な張力が、5.0N以下である;
[T2]7.6cmの長さに切り取った前記トウプレグを2枚の2.6cm×7.6cmのガラスプレートに挟み込んだサンプルを、前記ガラスプレートに対して厚さ方向に2.48×10
3Paの圧力を加えた状態で23℃/50RH%の環境で2日間保管した際の前記トウプレグの幅の拡がりが、3.0%以下である;および
[T3]前記トウプレグを180℃で2時間硬化することによって得られた硬化物のガラス転移温度が、180℃以上である、
を満たすことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂組成物が、下記条件[R1]~[R3]:
[R1]60℃におけるチキソトロピー係数(η
*
0.1Hz/η
*
10Hz)が、3.0以上である;
[R2]23℃における1Hzでの貯蔵弾性率が、2.0×10
5Pa以上である;および
[R3]前記エポキシ樹脂を180℃で2時間硬化することによって得られた硬化物のガラス転移温度が、180℃以上である、
を満たすことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項6】
前記トウプレグを180℃で2時間硬化することによって得られた前記硬化物のガラス転移温度が、200℃以上である、請求項4に記載のトウプレグ。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂を180℃で2時間硬化することによって得られた前記硬化物のガラス転移温度が、200℃以上である、請求項5に記載のトウプレグ。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂組成物が、硬化剤として芳香族アミンを含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂組成物が、ナフタレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、フェノールアラルキル骨格、およびクレゾールノボラック骨格から成る群より選択される少なくとも1つの構造を有するエポキシ樹脂を、前記固形エポキシ樹脂の中で20部以上の量で含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂組成物が、200g/eq以下のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を、前記固形エポキシ樹脂の中で20部以上の量で含有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項11】
前記固形エポキシが、ナフタレン骨格を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項12】
前記固形エポキシが、ジシクロペンタジエン骨格を有することを特徴とする、請求項1~5および8~9のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエーテルスルホンであることを特徴とする、請求項
13に記載のトウプレグ。
【請求項15】
前記ポリエーテルスルホンが、30000g/mol以下の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項
14に記載のトウプレグ。
【請求項16】
前記多官能性アミン型エポキシ樹脂が、アミノフェノール型であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のトウプレグ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のトウプレグを加熱硬化することによって得ることによって製造される、繊維強化複合材料。
【請求項18】
請求項17に記載の1または複数の繊維強化複合材料を含む、またはそれから成る製品。
【請求項19】
前記製品が、航空機、典型的には航空機胴体などの航空宇宙用途または航空産業のための複合材料であることを特徴とする、請求項18に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンからの解舒性および解舒後の幅精度が良好であり、優れた耐熱性の複合材料を与えるトウプレグ、ならびにそのようなトウプレグを与える樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料の製造には、強化繊維を一方向に引き揃えた物や、織物、不織布などのシート状物に熱硬化性樹脂を含浸した中間基材であるプリプレグを用いることが多い。一方、シート状プリプレグ以外にも、数千~数万本のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に熱硬化性樹脂を含浸した、トウプリプレグ、トウプレグ、ヤーンプリプレグあるいはストランドプリプレグと呼ばれる細幅の中間基材がある。
【0003】
これら中間基材の積層方法の例として、ハンドレイアップ法、ATL(Automated Tape Laying)法、AFP(Automated Fiber Placement)法などが挙げられる。しかし、航空機のように大型複合材料を製造する場合、生産性の飛躍的な向上が可能となることから、ATL法やAFP法といった自動積層法が用いられる(例えば特許文献1参照)。中でもAFP法は、プリプレグを繊維方向にテープ状に切断することによって得られるスリットテーププリプレグを積層する手法をとる。この方法は、航空機胴体など比較的曲面の多い部品を製作することに適しており、成形時の欠陥を最小限に抑えることができるため、近年多く用いられる方法となってきた。
【0004】
自動積層法では、製造工程の中で強化繊維束に熱硬化性樹脂が含浸された後、中間基材は一旦ボビンに巻き取られる。次いで、繊維強化複合材料の製造工程において、ボビンに巻き取られたトウプリプレグが解舒され、用いられる。解舒時に中間基材同士が接着していた場合、接着した中間基材の分離時の抵抗に起因して毛羽やファイバーブリッジが生じ、中間基材の品位が著しく低下するため、ボビンに巻かれた中間基材の接着を防止することが求められる。また、機械による積層時に中間基材位置のオーバーラップが生じた場合、積層体を硬化した後の力学特性が大幅に低下してしまうため、中間基材は高い幅精度を持つことも重要になる。これらの特性に加えて、航空用途に用いるためには、中間基材は高い耐熱性を有することも必要である。
【0005】
特許文献2では、低い粘度の樹脂を使用することによる解舒性に優れたトウプレグが開示されている。一方で、低粘度樹脂を用いると、トウプレグの形状保持が困難となり、自動積層に必須である幅精度を達成することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2008-517810号公報
【文献】特開2011-157491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良するものであり、ボビンからの解舒性、および解舒後の幅精度が良好であり、優れた耐熱性の複合材料を与えるトウプレグ、ならびにそのようなトウプレグを与える樹脂組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のトウプレグは、下記成分[A]~[C]を含有するエポキシ樹脂組成物を含浸してなるトウプレグである。
【0009】
[A]全エポキシ樹脂成分100質量部のうち30質量部以上の量の23℃で固形であるエポキシ樹脂、[B]全エポキシ樹脂成分100質量部のうち20質量部以上の量の23℃で液状である多官能性アミン型エポキシ樹脂、および[C]粘土鉱物としての有機親和性フィロシリケート。
【0010】
本発明はまた、本発明のトウプレグを加熱硬化させることによって得られる繊維強化複合材料にも関するものである。
【0011】
本発明はまた、本発明に従う1または複数の繊維強化複合材料を含む、またはそれから成る製品にも関するものである。例えば、前記製品は、航空機、典型的には航空機胴体などの航空宇宙用途または航空産業のための複合材料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トウプレグに含浸されている樹脂組成物の室温23℃における貯蔵弾性率が高く、および樹脂がチキソトロピーを示すため、保管時の樹脂の流動性が極めて低い。トウプレグをボビンに巻き付けた後に長時間保管した場合でも、トウプレグは、互いに接着せず、良好な解舒性を示す。また、製造時の巻き取り張力によってトウプレグの外面に圧力が加わり、トウプレグがボビンに押し付けられた場合にも、トウプレグの形状が変形しづらい。このため、ボビンに巻き取ったトウプレグを高速で解舒した場合でも、毛羽やファイバーブリッジが発生しづらく、トウプレグの解舒が容易であり、かつ解舒後の様態が良好である。そのような高速は、例えば、10m/分超である。さらに、ボビン保管時にトウプレグの幅が変動せず、トウプレグの解舒時に幅精度が乱されないため、トウプレグの解舒後の幅精度も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(トウプレグ)
本発明のトウプレグは、数千~数万本のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束(トウ)に熱硬化性樹脂を含浸することによって得られる細幅の中間基材を指す。トウプレグにおける細幅とは、2.0インチ以下、好ましくは1.0インチ以下、より好ましくは0.5インチ以下の寸法を意味する。上記幅範囲を満たす場合、トウプレグは高い繊維目付を有し、成形のサイクルタイムが有効に短縮され得る。
本発明のトウプレグは、下記条件[T1]~[T3]のすべてを満たすことが好ましい。以下、[T1]~[T3]を順に説明する。
【0014】
本発明のトウプレグは、好ましくは、[T1]9.8Nの荷重で30秒かけて外径8.25cmのボビンに1.2mのトウプレグを巻き取って得られたサンプルを、23℃/50RH%の環境で5日間保管した後に1.0m/分で解舒した際に必要な張力が、5.0N以下であることを満たす。張力は、より好ましくは3.0N以下である。張力が5.0Nより大きいと、高速で解舒した際に大きな抵抗が生じるため、解舒が困難になり、トウプレグ表面に多量の毛羽やファイバーブリッジの発生を招き、解舒後の表面の様態も悪化する。さらに、解舒時の張力によってトウプレグが変形し、解舒後のトウプレグの幅精度も悪化する。
【0015】
ここでいう解舒に必要な張力とは、万能試験機(例えば、インストロン万能試験機:Instron社製)を用い、1.0m/分でボビンを解舒した際の荷重をいう。
【0016】
また、本発明のトウプレグでは、[T2]7.6cmの長さに切り取ったトウプレグを2枚の2.6cm×7.6cmのガラスプレートに挟み込んだサンプルを、ガラスプレートに対して厚さ方向に2.48×103Paの圧力を加えた状態で23℃/50RH%の環境で2日間保管した際、トウプレグの幅の拡がりが、3.0%以下である。幅の拡がりが3.0%より大きいと、トウプレグをボビンに巻き取る際の巻き取り張力や解舒時の抵抗によって、トウプレグの形状が変化し易くなり、トウプレグを高速で解除した後のトウプレグの幅精度が悪化する。さらに、大きな幅変動は、解舒時のトウプレグ端部の擦過をもたらし、これにより毛羽が発生する。このため、解舒後の表面の様態も悪化する。
【0017】
ここでいうトウプレグの幅の拡がりは、保管前後のトウプレグの幅を光学顕微鏡(例えば、VHX-500F:KEYENCE社製)を用いて測定して得た値から、下式(1)を用いて算出した値をいう。
(保管後のトウプレグの幅/保管前のトウプレグの幅-1)×100...式(1)
さらに、本発明のトウプレグでは、[T3]180℃以上の温度でトウプレグを2時間硬化した際のガラス転移温度が、180℃以上である。ガラス転移温度は、さらに好ましくは200℃以上である。トウプレグが180℃以上のガラス転移温度を示す場合、それを高い耐熱性が要求される航空宇宙用途に好ましく用いることができる。
【0018】
ここでいうガラス転移温度は、トウプレグを積層し、トウプレグを180℃で2時間硬化して得られた厚さ2mmの炭素繊維強化ポリマー(CFRP)の貯蔵弾性率を、動的粘弾性測定装置(例えば、DISCOVERY HR-2:TA Instruments社製)を用い、昇温速度5℃/分で、周波数1Hzの片持ち曲げモードで測定した際の、貯蔵弾性率のオンセット温度をいう。
(エポキシ樹脂組成物)
また、本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物では、[R1]60℃におけるチキソトロピー係数(η*
0.1Hz/η*
10Hz)が、3.0以上である。チキソトロピー係数が3.0より小さい場合、トウプレグをボビンに巻いた状態で長期保管した場合に樹脂が流動し、トウプレグ同士が接着することで、トウプレグを高速で解舒した場合の解舒性が悪化する。チキソトロピー係数は、より好ましくは4.0以上である。
【0019】
ここでいう60℃におけるチキソトロピー係数は、動的粘弾性測定装置(例えば、DISCOVERY HR-2:TA Instruments社製)を用い、60℃の温度で、周波数0.1Hzおよび10Hzのねじりモードで粘度を測定することで得た値から、下式(2)を用いて算出した値と定義する。
0.1Hzでの粘度(η*
0.1Hz)/10Hzでの粘度(η*
10Hz)...式(2)
また、本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物では、[R2]23℃における1Hzでの貯蔵弾性率が、2.0×105Pa以上である。より好ましくは、2.0×105Pa~6.0×106Paである。貯蔵弾性率が2.0×105Paより低い場合、トウプレグの形状保持性が困難となり、高速で解舒した後の幅精度が悪化する。貯蔵弾性率は、さらに好ましくは3.0×105Pa以上である。
【0020】
ここでいう樹脂組成物の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、DISCOVERY HR-2:TA・Instruments社製)を用い、23℃の温度で、周波数1Hzのねじりモードで測定した値をいう。
【0021】
さらに、本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物では、[R3]エポキシ樹脂組成物を180℃以上の温度で2時間硬化した際のガラス転移温度が、180℃以上である。トウプレグが180℃以上のガラス転移温度を示す場合、それを耐熱性が要求される航空宇宙用途に好ましく適用することができる。ガラス転移温度は、さらに好ましくは200℃以上である。
【0022】
ここでいうガラス転移温度は、180℃の温度で2時間硬化させたサンプルの温度を、動的粘弾性測定装置(例えば、ATD-3000:Alpha Technologies社製)を用い、昇温速度5℃/分、周波数1.64Hzのねじりモードで測定した際の、貯蔵弾性率のオンセット温度をいう。
【0023】
本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂の構造は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0024】
本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂100質量部のうち、室温23℃で固形のエポキシ樹脂を30質量部以上の量を必須成分として含有する。量は、より好ましくは40部以上である。上記範囲を満たす場合、室温23℃での1Hzの貯蔵弾性率が良好な樹脂組成物を得ることができ、また含浸が良好なトウプレグも得ることができる。
【0025】
さらに、[A]本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂100質量部のうち、室温23℃で固形のエポキシ樹脂を30質量部以上の量を必須成分として含有する。より好ましくは、40部以上である。上記範囲を満たす場合、23℃での貯蔵弾性率および含浸性能の両方を好ましいレベルとすることができる。
【0026】
また、本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物は、好ましくは、エポキシ当量が300g/eq以下のエポキシ樹脂を、固形状態のエポキシの中で20部以上の量で含有する。上記範囲を満たす場合、含浸性能および表面品位が良好であるトウプレグを得ることができる。
【0027】
また、[B]本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂100質量部のうち、23℃で液状の多官能性アミン型エポキシ樹脂を20質量部以上の量を必須成分として含有する。上記範囲を満たす場合、硬化後に良好な耐熱性を示す樹脂組成物が得られる。また、エポキシ樹脂は、多官能性アミン型エポキシ樹脂を含有することにより、硬化剤や無機粒子などの粒子の分散が良好であり、エポキシ樹脂が含浸におけるトウプレグの波打ちを抑制するため、幅精度の良好なトウプレグを得ることができる。
【0028】
室温23℃で固形であり、エポキシ当量が300g/eq以下であるエポキシ樹脂と、23℃で液状の多官能性アミン型エポキシ樹脂とを併用することで、硬化後の耐熱性が一層良好なエポキシ樹脂組成物が得られる。
【0029】
室温で固形のビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、「jER(登録商標)」1001、1004、1007、4004P、4007P(三菱ケミカル株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」GT7071、GT6084-2(Huntsman社製)などを使用することができる。
【0030】
室温で固形、かつエポキシ当量が300g/eq以下のエポキシ樹脂の市販品としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂では、「エピクロン(登録商標)」N-660、N-665、N-695(DIC株式会社製)などを、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂では、NC-3000、NC-3000L(日本化薬株式会社製)などを、ビスナフタレン型エポキシ樹脂では、「エピクロン(登録商標)」HP-4700、HP-4710、HP-4770(DIC株式会社製)などを、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂では、「エピクロン(登録商標)」HP-7200、HP-7200H(DIC株式会社製)、Tactix556(Huntsman社製)などを使用することができる。
【0031】
これら室温で固形のエポキシ樹脂は、1種類だけでなく、複数種類を組み合わせて添加してもよい。
【0032】
23℃で液状の多官能性アミン型エポキシ樹脂の市販品としては、グリシジルアミン型エポキシ樹脂では、「スミエポキシ(登録商標)」ELM434(住友化学株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY720、MY721(Huntsman社製)などを、アミノフェノール型エポキシ樹脂では、「スミエポキシ(登録商標)」ELM100、ELM120(住友化学株式会社製)、「アラルダイト(登録商標)」MY0500、MY0510、MY0600(Huntsman社製)、「jER(登録商標)」630(三菱ケミカル株式会社製)などを使用することができる。
【0033】
本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物の硬化剤の例としては、芳香族アミン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジドの単体または混合系が挙げられる。芳香族アミンの例としては、メタ-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタ-キシレンジアミンなどが挙げられる。
【0034】
これらの硬化剤は、単独で用いても良いし、適宜配合して用いてもよい。芳香族アミンは、樹脂硬化物に耐熱性を付与することができるために特に好ましい。芳香族アミンは、エポキシ樹脂のエポキシ基の芳香族アミン類の活性水素に対するモル比であるエポキシ当量比が0.7~1.2となるように添加することが、耐熱性付与の面から好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂組成物には、樹脂組成物にチキソトロピーを付与し、トウプレグに形成された場合に解舒性を付与するために、無機粒子、すなわち、粘土鉱物としての有機親和性フィロシリケートを含有させることが必要である。無機粒子の形状としては、ロッド状、管状、および板状の形状が、好ましく使用される。[C]上記粘土鉱物としては、有機親和性フィロシリケ ートとしての「Garamite(登録商標)」-1958、-7305(BYK Additives & Instruments社製)などを使用することができる。エポキシ樹脂組成物は、粘土鉱物としての有機親和性フィロシリケートを含有し、それによって、樹脂組成物は、チキソトロピーを獲得し、良好な含浸性の維持およびトウプレグの良好な幅精度と共に、トウプレグに形成された場合の優れた解舒性を示す。
【0036】
また、本発明のトウプレグに含有されるエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂成分をブレンドすることができる。その具体例としては、ポリアセタール樹脂、ポリビニルホルマール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホンなどが挙げられる。中でも、ポリスルホン、ポリイミドは、樹脂そのものが耐熱性に優れることから好ましく、ポリエーテルスルホンが特に好ましい。ポリエーテルスルホンが30000g/mol以下の重量平均分子量を有すると、トウプレグへの樹脂の含浸性が向上することから好ましい。
【0037】
ポリエーテルスルホンの市販品の例としては、「スミカエクセル(登録商標)」PES(住友化学株式会社製)が挙げられ、ポリイミドの市販品の例としては、「Matrimid5218(Huntsman社製)」などが挙げられる。
(エポキシ樹脂組成物の製造方法)
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造には、例えば、ニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロール、および2軸押出機などの機械を用いて原材料を混練してよく、または均一な混練が可能であれば、ビーカー、スパチュラなどを用いて、手で原材料を混合してもよい。
(繊維強化複合材料)
次に、繊維強化複合材料について説明する。本発明のトウプレグを、加熱硬化させることにより、繊維強化複合材料を得ることができる。本発明に用いられる強化繊維は、特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが用いられる。これらの繊維は1種類のみを使用してよく、またはその2種以上を混合して用いてもよい。中でも、軽量かつ高弾性な繊維強化複合材料が得られるという観点から、炭素繊維を用いることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。各種物性の測定は、特に断りのない限り、温度23℃および相対湿度50%の環境で行った。
【0039】
各トウプレグを製造するために用いた材料は、以下に示す通りである。
<使用した材料>
(室温23℃で液状のエポキシ樹脂)
「アラルダイト(登録商標)」LY1556(ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:187g/eq、Huntsman社製)
「アラルダイト(登録商標)」GY282(ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:167g/eq、Huntsman社製)
(23℃で液状の多官能性アミン型エポキシ樹脂)
「アラルダイト(登録商標)」MY0510(アミノフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:96g/eq、Huntsman社製)
「アラルダイト(登録商標)」MY721(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:115g/eq、Huntsman社製)
(室温23℃で固形のエポキシ樹脂)
「アラルダイト(登録商標)」MY9665T(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:120g/eq、Huntsman社製)
「アラルダイト(登録商標)」GT7071(ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:490g/eq、Huntsman社製)
「アラルダイト(登録商標)」GT6084-2(ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:862g/eq、Huntsman社製)
「エピクロン(登録商標)」HP4710(ビスナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:172g/eq、DIC株式会社製)
「エピクロン(登録商標)」HP7200L(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:247g/eq、DIC株式会社製)
(硬化剤)
「Aradur(登録商標)」9664-1(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、Huntsman社製)
「Aradur(登録商標)」9771-1(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、Huntsman社製)
(無機粒子)
(1)粘土鉱物
「Garamite(登録商標)」-7305(有機親和性フィロシリケート、BYK Additives & Instruments社製)
「Garamite(登録商標)」-1958(有機親和性フィロシリケート、BYK Additives & Instruments社製)
(2)ヒュームドシリカ
「AEROSIL(登録商標)」R 202(ヒュームドシリカ、Evonik社製)
典型的には、トウプレグ組成物は、エポキシ樹脂組成物100部に対して1~10%の無機粒子を含む。
(熱可塑性樹脂)
「スミカエクセル(登録商標)」PES 2603MP(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:16000g/mol、住友化学株式会社製)
典型的には、トウプレグ組成物は、エポキシ樹脂組成物100部に対して1~20%の熱可塑性樹脂を含む。
(強化繊維)
「トレカ(登録商標)」T700G-12K(炭素繊維、Toray carbon fibers europe社製)
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
ニーダー中に、エポキシ樹脂組成物から硬化剤および無機粒子を除いた組成物を所定量入れ、この混合物を加熱混練して、透明な粘調液を得た。粘調液を混練しながら降温させた後、硬化剤および無機粒子を添加し、この混合物を混練して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0040】
表1に、実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物の組成を示す。
<エポキシ樹脂組成物の特性の測定方法>
(1)エポキシ樹脂組成物の室温23℃における貯蔵弾性率の測定方法
動的粘弾性測定装置(DISCOVERY HR-2:TA Instruments社製)および直径8mmのパラレルプレートを用い、上部と下部の治具間距離が500μmとなるように未硬化の樹脂組成物をセットし、23℃の温度、周波数1Hzのねじりモードで貯蔵弾性率を測定した。
(2)エポキシ樹脂組成物の60℃におけるチキソトロピー係数の測定方法
動的粘弾性測定装置(DISCOVERY HR-2:TA Instruments社製)および直径25mmのパラレルプレートを用い、上部と下部の治具間距離が500μmとなるように未硬化の樹脂組成物をセットし、60℃の温度、0.1Hzおよび10Hzの周波数でのねじりモードで粘度を測定した。チキソトロピー係数は、得られた粘度より下式(3)によって算出することができる。
0.1Hzでの粘度(η*
0.1Hz)/10Hzでの粘度(η*
10Hz)...式(3)
<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の測定方法>
真空中で脱泡した未硬化のエポキシ樹脂組成物を、動的粘弾性測定装置(ATD-3000:Alpha Technologies社製)を用い、2.0℃/分で昇温し、180℃の温度で2時間硬化させた後に、昇温速度5℃/分で昇温し、周波数1.64Hzのねじりモードで貯蔵弾性率を測定した。この時の貯蔵弾性率のオンセット温度をガラス転移温度と定義した。
<トウプレグの製造方法>
表1の組成を用いて製造した各種エポキシ樹脂組成物を、以下の方法によるプルトルージョン成形法によって強化繊維束に含浸し、トウプレグを製造した。
【0041】
具体的には、強化繊維を送り出すためのクリール、エポキシ樹脂を含浸するための樹脂バス、形状を整えるための樹脂バス出口部にあるスリットダイ、チラーを備えたドライブステーション、およびワインダーを備えたトウプリプレグ製造装置に強化繊維束を通して、糸経路を作る。エポキシ樹脂組成物を、別途熱風オーブンで80℃の温度に調整し、同じく80℃の温度に調整した樹脂バスに供給した。強化繊維には、樹脂バス中を通過することでエポキシ樹脂組成物が供給され、その後ダイを通過することで、樹脂含有量が調整される。最後に、20℃以下に冷却されたドライブステーションを通ったのち、ワインダーで巻き取ることによって、トウプレグのボビンを形成した。なお、ワインダーで巻き取る際、トウプレグ同士の接着を防ぐ目的で、必要に応じてバックフィルムをトウプレグと共に供給した。バックフィルム有りと無しとの両方の場合でのトウプレグに対して、巻き取りを行った。
【0042】
トウプレグを製造する際のライン速度は1m/分、巻き取りライン張力は12N以下とし、樹脂含有量は34重量%になるように調整した。
<トウプレグの特性の評価方法>
(1)トウプレグの高速解舒後の様態評価
各実施例および比較例で得られた、バックフィルム無しでボビンに巻き取ったトウプレグのボビンを、温度23℃±5℃および相対湿度60%±20%の環境下で30分以上放置し、クリールにセットし、ワインダーを用いてトウプレグを20m/分で解除した後、トウプレグの様態を評価した。解舒性が良好で、解舒後に毛羽やファイバーブリッジが生じなかった場合をAと判断し、解舒後に毛羽が発生した場合をBと判断し、解舒後に大量の毛羽やファイバーブリッジが発生し、解舒が困難になった場合をCと判断した。
(2)トウプレグの高速解舒後の幅精度評価
各実施例および比較例で得られた、バックフィルム無しでボビンに巻き取ったトウプレグのボビンを、温度23℃±5℃および相対湿度60%±20%の環境下で30分以上放置し、クリールにセットし、ワインダーを用いてトウプレグを2m/分で18m解除した後に、得られた解舒後のトウプレグの幅を3.75cm間隔の481点で顕微鏡(VHX-500F:KEYENCE社製)を用いて測定し、その標準偏差を幅精度と定義した。
(3)トウプレグの巻き上げ試験
各実施例および比較例で得られた、バックフィルム付きでボビンに巻き取ったトウプレグから1.2mを取り分け、取り分けたトウプレグの一方の端部を外径8.25cmのボビンにテープで固定し、他方の端部に1.0kgの錘を取り付けた。その後、ボビンを錘が浮くようにクリールに取り付け、バックフィルム無しのトウプレグを、トウプレグに9.8Nの張力が掛かった状態で、30秒かけてボビンに巻き上げ、サンプルを作製した。
【0043】
サンプルを温度23℃±5℃および相対湿度50%±10%の環境で5日間保管した後、クリールにセットし、インストロン万能試験機(Instron社製)を用い、クロスヘッドスピード1.0m/分で解舒した際の張力を測定した。
(4)トウプレグの圧力変形試験
各実施例および比較例で得られた、バックフィルム付きでボビンに巻き取ったトウプレグから7.6cmを取り分け、取り分けたトウプレグを2.6cm×7.6cmのガラスプレートに挟み込んでサンプルを作製した。サンプル中のトウプレグの幅を1.0cm間隔で7点、顕微鏡(VHX-500F:KEYENCE社製)を用いて測定した(この時の幅の平均値をWbとする)。
【0044】
次に、サンプル上に500gの錘を乗せ、ガラスプレートに対し2.48×103Paの圧力が掛かった状態で、温度23℃±5℃および相対湿度50%±10%の環境中において2日間保管した後、顕微鏡を用いてサンプル中のトウプレグの幅を再度7点測定した(この時の幅の平均値をWaとする)。下式(4)を用いて、圧力をかける前後でのトウプレグの幅の拡がり性を算出した。
(保管後のトウプレグの幅Wa/保管前のトウプレグの幅Wb-1)×100...式(4)
(5)トウプレグのガラス転移温度の測定方法
各実施例および比較例で得られた、バックフィルム付きでボビンに巻き取ったトウプレグのボビンから25cmを取り分け、取り分けたトウプレグをアルミニウム製のプレートに8プライ積層し、180℃の温度で2時間間硬化させて、厚さ2mmの板状の繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料より、幅10mm、長さ35mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(例えば、DISCOVERY HR-2:TA Instruments社製)を用い、昇温速度5℃/分で昇温し、周波数1Hzの片持ち曲げモードで貯蔵弾性率を測定した。この時の貯蔵弾性率のオンセット温度をガラス転移温度と定義した。
(6)トウプレグの表面品位観察
製造直後のトウプレグのボビンを、トウプレグの表面品位観察に用いた。表面品位が良好で、毛羽やトウプレグの波打ちが見られなかった場合をAと判断し、小さい毛羽やトウプレグの小さい波打ちが見られた場合をBと判断し、大量の毛羽やトウプレグの大きい波打ちが見られた場合をCと判断し、大量の毛羽や炭素繊維の破断が見られた場合をDと判断した。したがって、Dの場合、トウプレグを製造することができなかった。
(実施例1)
エポキシ樹脂として「アラルダイト(登録商標)」MY0510を50質量部、「エピクロン(登録商標)」HP4710を50質量部用い、硬化剤として「Aradur(登録商標)」9664-1を45.9部、熱可塑性樹脂として「スミカエクセル(登録商標)」PES 2603MPを10質量部、無機粒子として「Garamite(登録商標)」-7305を3質量部用い、上記<エポキシ樹脂組成物の製造方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を製造した後、上記<トウプレグの製造方法>に従って、樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。
【0045】
トウプレグの高速解舒後の様態および幅精度、巻き上げ試験、圧力変形試験、180℃で2時間硬化した後のガラス転移温度、エポキシ樹脂組成物の60℃におけるチキソトロピー係数、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率、180℃で2時間硬化した後のガラス転移温度は、表1に示す通りであった。
(実施例2~4)
エポキシ樹脂組成物の成分および配合量をそれぞれ表1に示したように変更した以外は実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、および樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。
【0046】
各実施例のトウプレグおよびエポキシ樹脂組成物に関して、トウプレグの高速解舒後の様態および幅精度、巻き上げ試験、圧力変形試験、180℃で2時間硬化した後のガラス転移温度、エポキシ樹脂組成物の60℃におけるチキソトロピー係数、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率、180℃で2時間硬化した後のガラス転移温度は、表1に示す通りであった。
(比較例1)
表1の比較例1に示した成分を用いて、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、および樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。比較例1では、トウプレグに含浸されているエポキシ樹脂組成物に無機粒子が含まれておらず、60℃におけるチキソトロピー係数が1.3と3.0以下であったため、トウプレグの巻き上げ試験の結果が5.8Nと5.0N以上となり、トウプレグを高速で解舒した際に抵抗が生じて、大量の毛羽とファイバーブリッジが発生した。したがって、解舒後の様態が悪く、解舒後の幅精度も0.23と悪かった。
(比較例2)
表1の比較例2に示した成分を用いて、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、および樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。比較例2では、室温で固形のエポキシ樹脂が含まれておらず、トウプレグに含浸されているエポキシ樹脂組成物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×105Paと2.0×105Pa以下であり、トウプレグの圧力変形試験の結果が、5.9%と3.0%以上であった。したがって、トウプレグを高速で解舒した後の幅精度が悪かった。
(比較例3)
表1の実施例3に示した成分を用いて、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、および樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。比較例3では、室温で固形のエポキシが含まれていないため、エポキシ樹脂は、23℃での貯蔵弾性率および含浸性能の両方で好ましいレベルを達成することができなかった。含浸温度で粘度が高いために、トウプレグ製造時に炭素繊維の破断が発生し、トウプレグを得ることができなかった。
(比較例4)
表1の比較例4に示した成分を用いて、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、および樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。比較例4では、エポキシ樹脂が多官能性アミン型エポキシ樹脂を含んでいなかったため。トウプレグ製造時にトウプレグの波打ちが発生し、トウプレグを高速で解舒した後の幅精度は悪かった。
(比較例5)
表1の比較例5に示した成分を用いて、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、および樹脂含有量34重量%のトウプレグを製造した。比較例5では、無機粒子として粘土鉱物ではなく溶融シリカを添加したため、トウプレグの高速解舒時の様態が悪く、大量の毛羽やファイバーブリッジが発生した。さらに、トウプレグを高速で解舒した後の幅精度が0.24と、これも悪いものとなった。
【0047】