(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 18/54 20060101AFI20240910BHJP
C08G 10/04 20060101ALI20240910BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240910BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08G18/54
C08G10/04
C09J175/04
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2021542959
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2020032146
(87)【国際公開番号】W WO2021039832
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019154975
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針生 智大
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋介
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-054298(JP,A)
【文献】特開平11-293221(JP,A)
【文献】特開平10-060261(JP,A)
【文献】特開昭55-155014(JP,A)
【文献】特開昭57-182313(JP,A)
【文献】特開昭63-213512(JP,A)
【文献】特開2001-261815(JP,A)
【文献】特開平04-224815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00- 18/87
71/00- 71/04
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール類で変性されたグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、分子中に2個以上の遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを反応させて得られ
、
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)が、エチレングリコール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂である、ウレタン樹脂。
【請求項2】
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の水酸基価が50~250mgKOH/gである、請求項1に記載のウレタン樹脂。
【請求項3】
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部と、前記グリコール類10~100部とを反応させて得られる、請求項1又は2に記載のウレタン樹脂。
【請求項4】
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の重量平均分子量が、ポリスチレン換算で、250~5,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項5】
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、前記ポリイソシアネート(B)と、さらにポリオール(C)とを反応させて得られる、請求項1~
4のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基(NCO)と、前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の水酸基及びポリオール(C)の水酸基の合計水酸基(OH
T)とのモル比(NCO/OH
T)が1.0~4.0となる範囲にて反応させて得られる、請求項1~
5のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート(B)が芳香族基含有ポリイソシアネートである、請求項1~
6のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項8】
前記ポリイソシアネート(B)が芳香族基を含有しない脂肪族ポリイソシアネートである、請求項1~
6のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項9】
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)を、ウレタン樹脂の原料合計100質量%中1~50質量%用いて得られる、請求項1~
8のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項10】
前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、前記ポリイソシアネート(B)との反応が、水溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載のウレタン樹脂。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載のウレタン樹脂を含む、接着剤。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載のウレタン樹脂を含む、塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
各種基材表面の擦傷防止や汚染防止のための保護コーティング材、各種基材の接着剤、シーリング材、フィルム型液晶素子、タッチパネル、およびプラスチック光学部品等の反射防止膜の用途において、硬度、柔軟性、耐擦傷性、耐摩耗性、低カール性、高屈折率、密着性および透明性に優れた硬化膜を形成し得る硬化性組成物として、各種ウレタン樹脂が提案されている。
【0003】
ポリオールにポリイソシアネートを反応させて得られるウレタン系樹脂はその高い接着性から、包装材や各種電装部品の封止剤に広く用いられている。ヒマシ油系ポリオールを原料とするウレタン樹脂は、比較的安価で汎用性に優れ、高い絶縁性を有することから、電装部品用の封止材として有用であることが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記封止剤としての使用時に想定される高温高湿環境下における、ウレタン樹脂の物性低下の抑制は未だ十分でない。本発明はかかる事情に鑑み、接着強度に優れ、かつ高温高湿下暴露後においても高い接着強度を維持するウレタン樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討した結果、グリコール類で変性された芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂が上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1]グリコール類で変性されたグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、分子中に2個以上の遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを反応させて得られる、ウレタン樹脂。
[2]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の水酸基価が50~250mgKOH/gである、上記[1]に記載のウレタン樹脂。
[3]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部と、前記グリコール類10~100部とを反応させて得られる、上記[1]又は[2]に記載のウレタン樹脂。
[4]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の重量平均分子量が、ポリスチレン換算で、250~5,000である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[5]前記グリコール類が、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール及びポリオキシプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[6]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)が、エチレングリコール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[7]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、前記ポリイソシアネート(B)と、さらにポリオール(C)とを反応させて得られる、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[8]前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基(NCO)と、前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の水酸基及びポリオール(C)の水酸基の合計水酸基(OHT)とのモル比(NCO/OHT)が1.0~4.0となる範囲にて反応させて得られる、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[9]前記ポリイソシアネート(B)が芳香族基含有ポリイソシアネートである、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[10]前記ポリイソシアネート(B)が芳香族基を含有しない脂肪族ポリイソシアネートである、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[11]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)を、ウレタン樹脂の原料合計100質量%中1~50質量%用いて得られる、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[12]前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、前記ポリイソシアネート(B)との反応が、水溶媒中で行われることを特徴とする、[1]~[11]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂。
[13]上記[1]~[12]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂を含む、接着剤。
[14]上記[1]~[12]のいずれか1つに記載のウレタン樹脂を含む、塗料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接着強度に優れ、かつ高温高湿下暴露後においても高い接着強度を維持するウレタン樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の内容に限定されない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0010】
[グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)]
本実施形態において、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)とは、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂をグリコール類により変性したものである。
【0011】
<芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂>
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとを反応させることにより得られる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、デシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、メチルビフェニル、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、アントラセン、メチルアントラセン、ジメチルアントラセン、エチルアントラセン、及びビナフチルからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。より接着性及び耐湿熱性に優れる観点から、キシレン、トルエン、及びメシチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、キシレンであることがより好ましく、メタキシレンであることが特に好ましい。本実施形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、上記と同様の観点から、キシレンとホルムアルデヒドとを反応させることにより得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂、トルエンとホルムアルデヒドとを反応させることにより得られるトルエンホルムアルデヒド樹脂、及びメシチレンとホルムアルデヒドとを反応させることにより得られるメシチレンホルムアルデヒド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、キシレンホルムアルデヒド樹脂を含むことがより好ましい。
【0012】
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製してもよい。市販品としては、例えば、フドー株式会社製の「ニカノールG」、「ニカノールY-100」等が挙げられる。公知の方法としては、例えば、特公昭37-5747号公報などに記載された方法により、芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとを、触媒の存在下で縮合反応させる方法が挙げられる。
【0013】
<グリコール類>
グリコール類としては特に限定されず、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10のアルカンジオールを用いることができる。用いるアルカンジオールの炭素数が多すぎると、相対して芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂セグメントが少なくなり、良好な耐熱性を保てなくなる。グリコール類のアルキル部分は直鎖であっても、分岐を有していてもよい。中でも、入手容易性及び反応性の観点から、ネオペンチルグリコール、スピログリコール(例えば、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール及びポリオキシプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、エチレングリコールであることがより好ましい。
【0014】
グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、接着性の観点から、グリコール類変性キシレンホルムアルデヒド樹脂、グリコール類変性トルエンホルムアルデヒド樹脂、及びグリコール類変性メシチレンホルムアルデヒド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、グリコール類変性キシレンホルムアルデヒド樹脂を含むことがより好ましい。中でも、エチレングリコール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂を含むことが好ましい。グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を用いることにより、高温高湿下暴露後においても優れた接着性を維持することができる。
【0015】
本実施形態のグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、公知の方法により製造することができる。公知の方法としては、例えば、特開平04-224815号公報に記載のように、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂とグリコール類とを酸性触媒下で縮合反応させることにより製造することができる。反応の際に、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、前記グリコール類10~100質量部反応させることが好ましい。芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部に対するグリコール類量が上記範囲にあれば、密着性や柔軟性等の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が有する性質を損なうことなく、接着性に優れるグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、より好ましくは10~80質量部、さらに好ましくは20~70質量部のグリコール類を反応させることができる。
なお、本実施形態のグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、分析による構造の特定が困難である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を原料として用いるため、上記グリコール類で変性されたグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂も、その構造を分析して特定することが困難である。
【0016】
さらに、本発明のグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を無水マレイン酸で変性させた後、上記グリコール類で変性させることで、製造してもよい。
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を無水マレイン酸で変性させる際、無水マレイン酸の量は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、0.1~10.0質量部が好ましく、0.5~5.0質量部がより好ましい。
【0017】
<グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の物性>
グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の水酸基価(OH価)は、好ましくは50~250mgKOH/g、より好ましくは80~200mgKOH/g、さらに好ましくは100~180mgKOH/gである。水酸基価が上記範囲となることにより、得られるウレタン樹脂の特性(接着性等)を確保しつつ、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂由来の密着性及び柔軟性をウレタン樹脂に付与することができる。水酸基価は、無水酢酸-ピリジン法(JIS K 1557-1:2007)に準拠した方法により測定できる。
【0018】
本実施形態のグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、250~5,000であることが好ましく、300~2,000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることにより、接着性に優れると共に、柔軟性や密着性にも優れるウレタン樹脂を得ることができる。
【0019】
グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)は、その両末端にグリコール類変性基を有していてもよいし、片方の末端にグリコール類変性基を有していてもよい。上記特徴を有する限り特に限定されない。
【0020】
[ポリイソシアネート(B)]
本実施形態におけるポリイソシアネート(B)は、分子中に2個以上の遊離イソシアネート基を有する。該ポリイソシアネート(B)は芳香族ポリイソシアネートでも、脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。
【0021】
芳香族ポリイソシアネートとは、分子中に存在する2個以上の遊離イソシアネート基が芳香環に直結しているイソシアネート化合物のことを指し、該要件を満たす限り特に限定されない。かかる芳香族ポリイソシアネートとしては、分子中に2個の遊離イソシアネート基と芳香環とを有するジイソシアネート化合物を例示することができる。具体的な芳香族ジイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフテンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。中でも、芳香族ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネートとは、分子中に存在する2個以上の遊離イソシアネート基が脂肪族基に直結しているイソシアネート化合物を指し、該要件を満たす限り特に限定されない。分子中に芳香族基を有する場合であっても、上記芳香族ジイソシアネートとは異なり、芳香族基が脂肪族基を介してイソシアネート基に結合する場合には、脂肪族ポリイソシアネートに含まれる。かかる脂肪族ポリイソシアネートとしては、分子中に2個の遊離イソシアネート基と脂肪族基とを有するジイソシアネート化合物を例示することができる。具体的な脂肪族ジイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の分子中に芳香族基を含有しない脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の分子中に芳香族基を含有しない脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の分子中に芳香族基を含有する脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。中でも、脂肪族ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートを用いることがより好ましく、キシリレンジイソシアネートについては、メタキシリレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0023】
上記した分子中に2個以上の遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートは特に限定されず、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートのいずれも好適に用いることができる。中でも、耐熱性の観点から、ポリイソシアネート分子中に芳香環を有するもの、すなわち芳香族ポリイソシアネート、及び芳香族基が脂肪族基を介してイソシアネート基に結合する脂肪族ポリイソシアネートから選択されるポリイソシアネートを好適に用いることができる。本明細書においては、これら分子中に芳香環を有するイソシアネートを、「芳香族基含有ポリイソシアネート」と総称する。すなわち、芳香族ポリイソシアネートは必ず「芳香族基含有ポリイソシアネート」に該当し、脂肪族ポリイソシアネートも分子中に芳香環を有する場合は、「芳香族基含有ポリイソシアネート」に該当する。
【0024】
なお、本願のポリイソシアネート(B)は、上記のポリイソシアネートを用いてもよく、上記ポリイソシアネートのアダクト変性物を用いてもよい。
【0025】
本実施形態のウレタン樹脂は、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と分子中に2個以上の遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを反応させることにより得られるが、ポリオール(C)をさらに反応させて得ることもできる。なお、ポリオール(C)は上記のグリコール類並びに3価以上の多価アルコールを含む概念である。
【0026】
[ポリオール(C)]
ポリオールは特に限定されないが、脂肪族ポリオール及び/又はポリエステルポリオールが好ましい。脂肪族ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、エステルグリコール、スピログリコール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、1,2-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリカーボネートジオール等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と、上記脂肪族ポリオールとの反応から得られるものを挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びに/又は無水マレイン酸及び/若しくは無水フタル酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールとを反応させて得られるポリエステルポリオールがより好ましい。これらのポリオール(C)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリオール(C)の量は特に限定されないが、以下のモル比(NCO/OHT)を満たすように加えられることが好ましい。
【0027】
本実施形態のウレタン樹脂は、前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基(NCO)と、前記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)の水酸基及びポリオール(C)の水酸基の合計水酸基(OHT)とのモル比(NCO/OHT)が1.0~4.0となる範囲で各成分を反応させて得ることが好ましい。モル比(NCO/OHT)が当該範囲にあると、接着性に優れると共に、耐湿熱性に優れるウレタン樹脂を得ることができる。モル比(NCO/OHT)が1.0以上であれば、残存したポリオール成分による耐湿熱性の低下を抑えることができる。モル比(NCO/OHT)が4.0以下であれば、接着剤層の欠陥(発泡等)を抑制することができるため、耐熱性を維持することができる。上記モル比(NCO/OHT)は、より好ましくは1.0~3.5であり、さらに好ましくは1.0~3.0である。
【0028】
[ウレタン樹脂の製造方法]
本実施形態におけるウレタン樹脂は、上記したグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、任意にポリオール(C)とを反応させることにより製造できる。ウレタン化反応において、これら成分(A)及び(B)、並びに任意成分(C)を反応させる順番等は特に限定されず、任意に決めることができる。例えば、成分(B)と成分(C)とを先に混合・反応させた後に、成分(A)を反応させてもよい。
上記反応はいずれも水酸基とイソシアネート基との反応であり、ジブチルスズジラウレートやジブチルスズジエチルヘキソエートのような一般的なウレタン化触媒を用いて、通常10~100℃、好ましくは40~80℃の温度範囲で、1分~20時間程度継続して行うことができる。
本明細書における「ウレタン樹脂」には、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、任意にポリオール(C)とを反応させることにより反応が進行して得られる重合体が包含され、重合の度合いは問わない。例えば、末端がイソシアネート基であるウレタンプレポリマーも上記「ウレタン樹脂」に含まれる。
【0029】
本実施形態のウレタン樹脂の製造方法は特に限定されない。例えば、上述した各成分を順次溶媒に配合し、十分に撹拌する方法が挙げられる。また、例えば、上記各成分を無溶媒下で混合し反応させた後、得られたウレタン樹脂を溶媒に溶解、乳化又は分散をさせてもよい。ウレタン樹脂の製造に際して、上記グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)を、ウレタン樹脂の原料合計100質量%中1~50質量%用いることが好ましい。グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)を上記範囲で用いると、樹脂(A)由来の密着性や柔軟性をウレタン樹脂に十分に付与することができる。
ウレタン樹脂の製造時には、必要に応じて各成分を均一に溶解、乳化又は分散させるための公知の処理(撹拌、混合、混練処理など)を行うことができる。撹拌、混合、混練処理は、例えば、超音波ホモジナイザーなどの分散を目的とした撹拌装置、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミルなどの混合を目的とした装置、又は公転若しくは自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0030】
本実施形態のウレタン樹脂の調製時には、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒の種類は、組成物中の樹脂を溶解、乳化又は分散が可能なものであれば、特に限定されず、有機溶剤及び水等を用いることができる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテートが挙げられる。これら有機溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、精製水、水道水及び工業用水等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【0031】
[ウレタン樹脂組成物]
本実施形態のウレタン樹脂に所望に応じて公知の添加剤等のその他成分を配合させて、本実施形態のウレタン樹脂を含むウレタン樹脂組成物を得ることができる。その他成分としては、(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの樹脂、オリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物などの重合性官能基を有するモノマー、マレイミド化合物、充填材、難燃剤、シランカップリング剤、湿潤分散剤、光重合開始剤、光硬化開始剤、熱硬化促進剤、各種添加剤などを挙げることができる。本実施形態のウレタン樹脂組成物に含まれる成分は、一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。
【0032】
各種添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、表面調整剤、光沢剤、重合禁止剤などが挙げられる。
その他成分は1種を単独で、又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。各成分の配合量も、用途に応じて、種々調製できる。
【0033】
[用途]
本実施形態のウレタン樹脂は、接着性に優れ、かつ密着性及び柔軟性に優れる。そのため、接着剤における使用に適する。接着面を硬くすることがないので、接着箇所が硬化した場合に感じられる異物感を生じることがなく、ウレタン樹脂素材等の柔らかい弾性素材を接着の対象物として積層体を形成することができる。ウレタン樹脂系溶剤形接着剤は、例えば、ウレタン樹脂製のクッション層ごとを接着して寝具等で用いる積層体を形成する用途を始め、車両の防振及び防音の積層体の接着、靴底の積層体の接着、電装部品用の封止材等の用途にも用いることができる。また本実施形態のウレタン樹脂は、接着性に優れるほか、耐湿・耐水性および耐熱性にも優れる。よって、例えば、レトルト・ボイル食品包装用の接着などの用途に好適に利用できる。
本実施形態のウレタン樹脂は接着性に優れると共に、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)由来の密着性及び柔軟性も有するため、例えば塗料における使用にも適する。水道管用のライニング、塗床剤などのコーティング剤にも利用できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
本実施例及び比較例で採用した評価方法は以下の通りである。
【0035】
(1)水酸基価(OH価,mgKOH/g)
実施例及び比較例で用いたグリコール類変性芳香族炭化水素アルデヒド樹脂、芳香族炭化水素アルデヒド樹脂及びポリオールについて、無水酢酸-ピリジン法(JIS K 1557-1:2007)に準じて測定した。
(2)重量平均分子量(Mw)
実施例及び比較例で用いたグリコール類変性芳香族炭化水素アルデヒド樹脂について、GPC分析により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。分析に用いた装置および条件は下記の通りである。
装置:昭和電工(株)製「Shodex GPC-101」
カラム:昭和電工(株)製「Shodex LF-804」×3
溶液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min.
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折検出器)
(3)接着性試験
得られた積層フィルムサンプルを、15mm幅の試験片に加工し、JIS K 6854-3:1999に準じてT型剥離方法で剥離し、接着強度を測定した。接着強度の単位はN/15mmである。分析に用いた装置および条件は下記の通りである。
装置:東洋精機(株)製「ストログラフ VG1E」
剥離速度:100mm/min.
測定雰囲気:23℃、50RH%
【0036】
<製造例1>:グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A1)の調製
攪拌機、スニーダー分留管、コンデンサーを備え付けたフラスコに、NIKANOL G(フドー(株)製、キシレン樹脂、水酸基価:32mgKOH/g、重量平均分子量:1,170)300.0質量部、無水マレイン酸(関東化学(株)製)6.0質量部、p-トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)0.3質量部を仕込み、スニーダー分留管上部温度が100℃を超えない様に徐々に加熱して、フラスコ内の温度を120℃に制御しながら1時間撹拌した。その後、エチレングリコール(関東化学(株)製)110.0質量部を仕込み、フラスコ内の温度を130℃に制御しながら2時間撹拌し反応させた。続いてトリエタノールアミン(関東化学(株)製)0.6質量部を加え反応を停止し、水酸基価117mgKOH/g、重量平均分子量1,160のグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A1)を得た。
【0037】
<製造例2>:グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A2)の調製
攪拌機、スニーダー分留管、コンデンサーを備え付けたフラスコに、NIKANOL Y-100(フドー(株)製、キシレン樹脂、水酸基価:25mgKOH/g、重量平均分子量:360)450.0質量部、無水マレイン酸(関東化学(株)製)9.0質量部、p-トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)0.2質量部を仕込み、スニーダー分留管の上部温度が100℃を超えない様に徐々に加熱して、フラスコ内の温度を120℃に制御しながら1時間撹拌した。その後、エチレングリコール(関東化学(株)製)300.0質量部を仕込み、フラスコ内の温度を130℃に制御しながら2時間撹拌し反応させた。続いてトリエタノールアミン(関東化学(株)製)0.4質量部を加え反応を停止し、水酸基価170mgKOH/g、重量平均分子量500のグリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A2)を得た。
【0038】
<製造例3>:ポリエステルポリオール(C1)の合成
撹拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサーを備え付けたフラスコに、エチレングリコール(関東化学(株)製)924.3質量部、無水フタル酸(関東化学(株)製)474.2質量部、無水マレイン酸(関東化学(株)製)732.4質量部、及びチタニウムテトライソプロポキシド(東京化成工業(株)製)0.10質量部を仕込み、スニーダー分留管の上部温度が100℃を超えない様に徐々に加熱した。フラスコ内温度を200℃に制御しながら2時間撹拌して反応を終結させ、水酸基価167mgKOH/g、水酸基価から計算される理論数平均分子量670のポリエステルポリオール(C1)を得た。
【0039】
<製造例4>:ポリエステルポリオール(C2)の合成
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサーを備え付けたフラスコに、エチレングリコール(関東化学(株)製)134.9質量部、無水フタル酸(関東化学(株)製)148.1質量部を仕込み、スニーダー分留管の上部温度が100℃をこえないように徐々に加熱した。フラスコ内温度を220℃に制御しながら1時間撹拌して反応を終結させ、水酸基価432mgKOH/g、水酸基価から計算される理論数平均分子量260のポリエステルポリオール(C2)を得た。
【0040】
<製造例5>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサーを備え付けたフラスコに、ポリエステルポリオール(C2)252.0質量部、キシリレンジイソシアネート(B1)(東京化成工業(株)製、NCO%=44.7%)730.5質量部を仕込み、フラスコ内温度を60℃に制御しながら3時間反応させ、(B1)と(C2)とを反応させた末端イソシアネート化合物「PEP-XDI」(NCO%=27.9%)を得た。
【0041】
<製造例6>:ポリエステルポリオール(C9)の合成
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサーを備え付けたフラスコに、1、4-ブタンジオール(関東化学(株)製)70.0質量部、アジピン酸(関東化学(株)製)75.7質量部を仕込み、スニーダー分留管の上部温度が100℃をこえないように徐々に加熱した。フラスコ内温度を200℃に制御しながら4時間撹拌して反応を終結させ、水酸基価147mgKOH/g、水酸基価から計算される理論数平均分子量380のポリエステルポリオール(C9)を得た。
【0042】
(ウレタン無溶剤型接着剤及びウレタン溶剤型接着剤)
<実施例1>
100mL容器に、ポリエステルポリオール(C1)21.0質量部、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A1)30.0質量部、製造例5で得られたPEP-XDI49.0質量部(キシリレンジイソシアネート(B1)36.4質量部、ポリエステルポリオール(C2)12.6質量部相当)を仕込み(NCO/OHT=1.7)、へらを用いて室温で1分間手撹拌し、ウレタン無溶剤型接着剤を得た。
【0043】
<実施例2>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A1)33.3質量部、ポリプロピレングリコール1,000(C3)(関東化学(株)製、水酸基価:96mgKOH/g、数平均分子量:1,170)40.6質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)26.1質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0044】
<実施例3>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A1)18.6質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)39.0質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)42.4質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0045】
<実施例4>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A2)33.0質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)29.5質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)37.5質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0046】
<比較例1>
100mL容器に、ポリエステルポリオール(C1)46.2質量部、製造例5で得られたPEP-XDI53.8質量部(キシリレンジイソシアネート(B1)40.0質量部、ポリエステルポリオール(C2)13.8質量部相当)を仕込み(NCO/OHT=1.7)、へらを用いて室温で1分間手撹拌し、ウレタン無溶剤型接着剤を得た。
【0047】
<比較例2>
100mL容器に、ポリエステルポリオール(C1)19.7質量部、ポリプロピレングリコール1,000(C3)(関東化学(株)製、水酸基価:96mgKOH/g、数平均分子量:1,170)34.3質量部、製造例5で得られたPEP-XDI46.0質量部(キシリレンジイソシアネート(B1)34.2質量部、ポリエステルポリオール(C2)11.8質量部相当)を仕込み(NCO/OHT=1.7)、へらを用いて室温で1分間手撹拌し、ウレタン無溶剤型接着剤を得た。
【0048】
<比較例3>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー(分留)管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)51.9質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)48.1質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0049】
<比較例4>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、ポリプロピレングリコール1,000(C3)(関東化学(株)製、水酸基価:96mgKOH/g、数平均分子量:1,170)75.7質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)24.3質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0050】
<比較例5>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、NIKANOL H(フドー(株)製、キシレン樹脂、水酸基価:35mgKOH/g、重量平均分子量:990)70.5質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)13.0質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)16.5質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0051】
<比較例6>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、NIKANOL K-100(フドー(株)製、トリメチロールプロパン変性キシレン樹脂、水酸基価:81mgKOH/g、重量平均分子量:720)50.0質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)22.5質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)27.5質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0052】
<比較例7>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、NIKANOL Y-50(フドー(株)製、キシレン樹脂、水酸基価:24mgKOH/g、重量平均分子量:330)77.6質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)9.8質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)12.6質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0053】
<比較例8>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、NIKANOL K-140(フドー(株)製、トリメチロールプロパン変性キシレン樹脂、水酸基価:280mgKOH/g、重量平均分子量:960)23.0質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)33.9質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)43.1質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0054】
<比較例9>
攪拌機、窒素ガス導入管、スニーダー分留管、コンデンサー、真空ポンプを備えつけたフラスコに、NIKANOL L5(フドー(株)製、エチレンオキシド変性キシレン樹脂、水酸基価:38mgKOH/g、重量平均分子量:1,200)69.0質量部、ポリエチレングリコール600(C4)(関東化学(株)製、水酸基価:190mgKOH/g、数平均分子量:590)13.6質量部を仕込み、80℃、30hPaに減圧しながら2時間脱水操作を行った。その後フラスコ内温度を60℃まで冷却し、次いで窒素雰囲気下でジフェニルメタンジイソシアネート(B2)(東京化成工業(株)製、NCO%=33.6%)17.4質量部を添加し(NCO/OHT=1.5)、フラスコ内温度を60℃に制御しながら15分反応させた。反応物を酢酸エチル(関東化学(株)製)100質量部に溶解させて、ウレタン溶剤型接着剤を得た。
【0055】
(水系ウレタン樹脂)
<実施例5>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A1)18.3質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)19.3質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を22.4質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0056】
<比較例10>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)38.0質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を22.0質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0057】
<比較例11>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)21.2質量部、ひまし油(C6)(伊藤製油(株)製、製品名:ユーリックH-30、水酸基価:163mgKOH/g、平均分子量:930)14.4質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を24.5質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0058】
<比較例12>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)19.2質量部、ポリカーボネートジオール(C7)(旭化成(株)製、製品名:デュラノール6001、水酸基価:114mgKOH/g、平均分子量:1000)18.6質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を22.2質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0059】
<比較例13>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)19.1質量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(C8)(東京化成工業(株)製、水酸基価:112mgKOH/g、平均分子量:1000)18.8質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を22.1質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0060】
<比較例14>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)20.6質量部、製造例6で得られたポリエステルポリオール(C9)15.5質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を23.9質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0061】
<比較例15>
容器に、溶媒として工業用精製水40.0質量部、NIKANOL K-140(フドー(株)製、トリメチロールプロパン変性キシレン樹脂、水酸基価:280mgKOH/g、重量平均分子量:960)9.3質量部、ポリカーボネートジオール(C5)(旭化成(株)製、製品名:デュラノールW8011、水酸基価:111mgKOH/g、平均分子量:1000)23.5質量部を仕込み、ディスパーを用いて25℃にて5分攪拌した。その後、水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(B3)(旭化成(株)製、製品名:デュラネートWT31-100、NCO%=17.6%)を27.2質量部(NCO/OHT=1.23)仕込み、25℃にてディスパーを用いて撹拌しながら10分反応させ、水系ウレタン樹脂を得た。
【0062】
<ウレタン樹脂の接着性評価>
各実施例及び比較例で得られたウレタン無溶剤型接着剤、ウレタン溶剤型接着剤又は水系ウレタン樹脂を、バーコーターを用いて、厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡(株)製)のコロナ処理面に厚さ6μmとなるように塗布した後に、乾燥機を用いて80℃で10秒間加熱した。次いで、塗布面と厚さ50μmのCPPフィルム(東洋紡(株)製)のコロナ処理面とをラミネートし、PETフィルム/接着層/CPPフィルムの層構成を有する積層フィルムを作製した。この積層フィルムを40℃×3日間エージングし、接着剤の硬化を行って、積層フィルムサンプルを得た。
(常態接着強度)
得られた接着フィルムサンプルを、上記(3)接着性試験の方法により、PETフィルムとCPPフィルムの層間の接着強度測定し、常態接着強度とした。測定結果は表1及び表2にまとめた。
(耐湿試験後接着強度及び耐湿性の評価)
得られた積層フィルムサンプルを、恒温恒湿試験機を用いて、70℃、95%RHの雰囲気下で7日間高湿エージングし、取り出した積層フィルムサンプルのPETフィルムとCPPフィルムの層間の接着強度を測定することで、耐湿試験後接着強度とした。[耐湿試験後接着強度÷常態接着強度×100]の計算式により、耐湿試験後接着強度保持率(%)を計算した。測定結果及び計算結果は表1及び表2にまとめた。
【0063】
(耐熱老化試験後接着強度及び耐熱老化性の評価)
得られた積層フィルムサンプルを、熱風乾燥機を用いて、雰囲気温度120℃で7日間高温エージングし、取り出した積層フィルムサンプルのPETフィルムとCPPフィルムの層間の接着強度を測定することで、耐熱老化試験後接着強度とした。[耐熱老化試験後接着強度÷常態接着強度×100]の計算式により、耐熱老化試験後接着強度保持率(%)を計算した。測定結果及び計算結果は表1及び表2にまとめた。
【0064】
(ウレタン無溶剤型接着剤及びウレタン溶剤型接着剤の接着性評価基準)
(耐湿性)
耐湿試験後の接着強度保持率が70%以上である場合の耐湿性をAと、70%未満である場合の耐湿性をBと評価した。
(耐熱老化性)
耐熱老化試験後の接着強度保持率が70%以上である場合の耐熱老化性をAと、70%未満である場合の耐熱老化性をBと評価した。
なお、常態接着強度が1N/15mm以下だった場合は、耐湿性及び耐熱老化性の評価は行わなかった。
【0065】
(水系ウレタン樹脂の接着性評価基準)
常態接着強度が8.0N/15mm以上であり、かつ耐湿試験後の接着強度保持率及び耐熱老化試験後の接着強度保持率が50%以上であるものをAと評価した。また、常態接着強度が8.0N/15mm未満である、若しくは耐湿試験後の接着強度保持率及び耐熱老化試験後の接着強度保持率の少なくとも一つが50%未満であるものをBと評価した。
【0066】
ウレタン無溶剤型接着剤及びウレタン溶剤型接着剤の各ウレタン接着剤の組成並びに各ウレタン接着剤の接着強度、耐湿性及び耐熱老化性の評価結果を表1に示す。
また、水系ウレタン樹脂の各組成並びに接着強度及び接着性評価の結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
ウレタン無溶剤型接着剤及びウレタン溶剤型接着剤の評価の結果、実施例1~4の積層フィルムサンプルは、いずれも常態接着強度が高く、さらに耐湿試験後接着強度保持率および耐熱老化試験後接着強度保持率の両方が70%以上と、良好な接着性・耐湿熱性能を発揮した。
一方、比較例1~4の樹脂組成物を用いた積層フィルムサンプルは、常態接着強度は良好であっても、耐湿試験または耐熱老化試験後の接着強度保持率が70%未満となり、物性の両立を果たしていない。
【0070】
また、比較例5~9では非グリコール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を用いて製造したウレタン樹脂を使用した積層フィルムサンプルであるが、比較例5及び6では、常態接着強度は良好であっても、耐湿試験または耐熱老化試験後の接着強度保持率が70%未満となり、物性の両立を果たしていない。また、比較例7~9では、常態接着強度が1N/15mm未満となり、接着剤用途として不適であることが分かった。
【0071】
水系ウレタン樹脂の評価の結果、実施例5の積層フィルムサンプルは、常態接着強度が8.0N/15mm以上であり、かつ耐湿試験後の接着強度保持率及び耐熱老化試験後の接着強度保持率が50%以上であり、良好な接着性・耐湿熱性能を発揮した。
一方、比較例10~15の積層フィルムサンプルは、常態接着強度が8.0N/15mm未満であるか、若しくは耐湿試験後の接着強度保持率及び耐熱老化試験後の接着強度保持率の少なくとも一つが50%未満であり、実施例5と比較して劣る結果となった。
【0072】
以上の結果から、グリコール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(A)を含むウレタン樹脂は、常態接着強度に優れると共に、高温高湿環境下への暴露における接着強度の低下を抑制する効果が得られることが明らかである。