IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧

特許7552609デバイス、電子機器および配線の接続方法
<>
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図1
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図2
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図3
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図4
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図5
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図6
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図7
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図8
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図9
  • 特許-デバイス、電子機器および配線の接続方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】デバイス、電子機器および配線の接続方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20240910BHJP
   H05K 3/36 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H05K1/14 J
H05K3/36 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021552396
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038638
(87)【国際公開番号】W WO2021075427
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2019188695
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】川井 洋
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰三
(72)【発明者】
【氏名】清水 正彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直広
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-249734(JP,A)
【文献】特開2012-033597(JP,A)
【文献】特開2017-044744(JP,A)
【文献】特開2016-197087(JP,A)
【文献】特開2019-050347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H05K 3/36
H01R 11/01
H01B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性の基材と、
前記基材上に設けられたデバイス本体と、
前記基材上に設けられた配線と、
前記配線と接続された接続部材と、
前記配線と前記接続部材との間に設けられ、導電性粒子を含む導電性接着層と
を備え、
前記接続部材の端部は、前記導電性接着層上に位置し、
前記配線は、前記導電性接着層と重なる配線部分を有し、
前記導電性接着層の重合度は、前記配線部分の延設方向に向かって低下するデバイス。
【請求項2】
前記導電性接着層は、前記導電性粒子が潰れた第1の領域と、前記導電性粒子が潰れていない第2の領域とを有し、
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記配線部分の延設方向に向かって、前記第1の領域、前記第2の領域の順序で設けられ
前記接続部材の端部は、前記第1の領域と前記第2の領域の境界部上に位置している請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記導電性接着層は、接着剤を含み、
前記接着剤が、伸縮性を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイス本体は、伸縮性を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記導電性接着層は、異方性導電フィルムまたは異方性導電接着剤である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記接続部材は、フレキシブルプリント基板である請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイス本体は、センサ本体である請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスを備える電子機器。
【請求項9】
伸縮性の基材上に設けられた配線と接続部材とを導電性接着層を介して重ね合わせると共に、前記接続部材の端部を前記導電性接着層上に位置させることと、
前記配線が引き出される前記導電性接着層の周縁部分の内側を前記接続部材を介して加圧および加熱することと
を含む配線の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デバイス、電子機器および配線の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスを電子機器に実装する場合には、複数の配線を有するフレキシブルプリント基板を介してデバイスを電子機器の本体に接続するのが一般的である。特許文献1には、フレキシブルプリント基板が有する複数の配線と、ガラス基板またはプラスチック基板が有する端子とを、異方性導電フィルムを介して異方性導電接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-55005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デバイスが有する基材が伸縮性を有している場合、圧着プロセスにおいて、伸縮性の基材上に設けられた配線が破断する虞がある。
【0005】
本開示の目的は、伸縮性の基材上に設けられた配線の破断を抑制することができるデバイス、そのデバイスを備える電子機器および配線の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、第1の開示は、
伸縮性の基材と、
基材上に設けられたデバイス本体と、
基材上に設けられた配線と、
配線と接続された接続部材と、
配線と接続部材との間に設けられ、導電性粒子を含む導電性接着層と
を備え、
接続部材の端部は、導電性接着層上に位置し、
配線は、導電性接着層と重なる配線部分を有し、
導電性接着層の重合度は、配線部分の延設方向に向かって低下するデバイスである。
【0007】
第2の開示は、第1の開示のデバイスを備える電子機器である。
【0008】
第3の開示は、
伸縮性の基材上に設けられた配線と接続部材とを導電性接着層を介して重ね合わせると共に、接続部材の端部を導電性接着層上に位置させることと、
配線が引き出される導電性接着層の周縁部分の内側を接続部材を介して加圧および加熱することと
を含む配線の接続方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る電子機器の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係るセンサの構成の一例を示す平面図である。
図3図3Aは、基材上に設けられた複数の配線と接続部材との接続部を拡大して示す平面図である。図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
図4図4A図4B図4Cはそれぞれ、比較例に係るデバイスの接続方法を説明するための工程図である。
図5図5A図5B図5Cはそれぞれ、本開示の一実施形態に係るデバイスの接続方法を説明するための工程図である。
図6図6は、接続部の変形例を示す断面図である。
図7図7は、配線の接続方法の変形例を説明するための工程図である。
図8図8は、実施例1の接続部の形成時における熱圧着ヘッドの加圧面と導電性接着層との位置関係を示す概略図である。
図9図9は、比較例1の接続部の形成時における熱圧着ヘッドの加圧面と導電性接着層との位置関係を示す概略図である。
図10図10は、比較例2の接続部の形成時における熱圧着ヘッドの加圧面と導電性接着層との位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1 電子機器の構成
2 センサの構成
3 配線の接続方法
4 効果
5 変形例
【0011】
[1 電子機器の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る電子機器100の構成を示すブロック図である。電子機器100は、センサ10と、制御部としてのコントローラIC110と、電子機器100の本体であるホスト機器120とを備える。コントローラIC110およびホスト機器120は、図示しないメイン基板上に設けられている。
【0012】
センサ10は、ストレッチャブルデバイスの一例である。センサ10は、押圧に応じた静電容量の変化を検出し、それに応じた出力信号をコントローラIC110に出力する。コントローラIC110は、センサ10を制御し、センサ10から供給される出力信号に基づき、センサ10に対する押圧力を検出し、ホスト機器120に出力する。
【0013】
電子機器100は、例えば、ウェアラブル端末、医療機器またはロボット等である。ウェアラブル端末としては、例えば、スマートウォッチ、ヘッドマウンドディスプレイ、リストバンド、指輪、眼鏡、靴または衣服等が挙げられる。
【0014】
[2 センサの構成]
図2は、本開示の一実施形態に係るセンサ10の構成の一例を示す平面図である。センサ10は、ストレッチャブルセンサであり、基材11と、センサ本体12と、複数の配線13と、接続部材14と、導電性接着層15とを備える。
【0015】
(基材)
基材11は、センサ本体12を支持する。基材11は、基材11の面内方向および基材11の厚み方向に伸縮性を有する。基材11は、例えば、伸縮性を有する高分子樹脂を含む。高分子樹脂は、例えば、熱可塑性ウレタン(TPU)系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂およびスチレンブタジエンゴム(SBR)系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。基材11は、例えば、板状またはフィルム状を有する。なお、本開示においては、フィルムには、シートも含まれるものと定義する。
【0016】
基材11の切断時伸びは30%以上800%以下であることが好ましい。切断時伸びは、以下の式により定義される。
切断時伸び[%]=((Lb-L0)/L0)×100
ここで、L0は引っ張り試験前の試験片の標準間距離であり、Lbは切断時の標準間距離である。引っ張り試験は、JIS K 6251に準拠して行われるものとする。
【0017】
(配線)
複数の配線13は、センサ本体12と接続部材14との間を接続する。配線13は、基材11の面内方向に伸縮性を有していてもよいし、有していなくてもよいが、基材11の面内方向に伸縮性を有していていることが好ましい。配線13が伸縮性を有することで、配線13が基材11の伸縮に応じて伸縮することができるため、配線13の剥離または断線等を抑制することができる。
【0018】
複数の配線13は、基材11の一方の主面上に設けられている。配線13は、導電性接着層15からセンサ本体12まで延設されている。本明細書では、配線13の延設方向13DAとは、導電性接着層15からセンサ本体12への配線13の延設方向を意味するものとする。配線13の第1の端部は、センサ本体12に電気的に接続され、配線13の第2の端部は、導電性接着層15を介して接続部材14に電気的に接続されている。配線13は、第2の端部に導電性接着層15と重なる配線部分13Aを有する。配線13の第2の端部側の先端は、導電性接着層15の周縁から突出している。
【0019】
複数の配線13は、例えば、複数の導電性粒子を含む導電層(導電粒子含有層)、金属メッキ層または金属箔である。導電層は、必要に応じてバインダを含んでいてもよい。複数の導電性粒子は、複数の金属粒子および複数のカーボン粒子のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
(接続部材)
図3Aは、基材11上に設けられた複数の配線13と接続部材14との接続部を拡大して示す平面図である。図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線に沿った断面図である。接続部材14は、配線13をメイン基板に電気的に接続する。接続部材14は、長尺状を有している。接続部材14の第1の端部は、メイン基板に電気的に接続され、接続部材14の第2の端部は、導電性接着層15を介して複数の配線13に電気的に接続されている。接続部材14は、例えば、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)である。
【0021】
接続部材14は、基材14Aと、基材14Aの一方の主面に接続された複数の配線14Bとを備える。複数の配線14Bの第1の端部はそれぞれ、メイン基板に電気的に接続され、複数の配線14Bの第2の端部はそれぞれ、導電性接着層15を介して複数の配線13の第2の端部に電気的に接続されている。複数の配線14Bは、基材14Aの長手方向に沿って延設されると共に、ストライプ状に配置されている。
【0022】
(導電性接着層)
導電性接着層15は、複数の配線13の第2の端部と接続部材14の第2の端部とを電気的に接続する。より具体的には、導電性接着層15は、複数の配線13の第2の端部と複数の配線14Bの第2の端部とを電気的に接続する。導電性接着層15は、複数の配線13の第2の端部と接続部材14の第2の端部との間に設けられている。より具体的には、導電性接着層15は、複数の配線13の第2の端部と複数の配線14Bの第2の端部との間に設けられている。導電性接着層15は、配線13が取り出される第1の周縁部分15Aと、配線13の第2の端部の先端が突出される第2の周縁部分15Bとを有している。第1の周縁部分15Aと第2の周縁部分15Bとは対向している。ここで、周縁部分とは、導電性接着層15の周縁(外周)の一部分を意味する。
【0023】
導電性接着層15は、熱圧着により複数の配線13の第2の端部と接続部材14の第2の端部とを電気的に接続可能に構成されている。導電性接着層15は、導電性粒子と絶縁性接着剤(バインダ)とを含む。導電性接着層15は、例えば、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film:ACF)、または異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste:ACP)である。絶縁性接着剤は、例えば、熱可塑性接着剤または熱硬化性接着剤を含む。絶縁性接着剤は、例えば、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂のうちの少なくとも1種を含む。絶縁性接着剤は、伸縮性を有することが好ましい。
【0024】
導電性接着層15の形状としては、例えば、多角形状(例えば矩形状)、円形状または楕円状等が挙げられるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。図3Aでは、導電性接着層15が矩形状を有する例が示されている。導電性接着層15が矩形状を有する場合、第1の周縁部分15A、第2の周縁部分15Bはそれぞれ、第1の長辺部、第2の長辺部に対応する。
【0025】
第1の周縁部分15Aの内側の部分では、導電性接着層15の重合度が配線部分13Aの延設方向13DAに向かって低下している。このように導電性接着層15の重合度が第1の周縁部分15Aの内側の部分で低下していることで、複数の配線13と接続部材14との接続時に、導電性接着層32の第1の周縁部分15Aの付近の位置で配線13が破断することが抑制される。
【0026】
第2の周縁部分15Bの内側の部分では、導電性接着層15の重合度が配線部分13Aの延設方向13DAとは反対方向13DBに向かって低下している。このように導電性接着層15の重合度が第2の周縁部分15Bの内側の部分で低下していることで、複数の配線13と接続部材14との接続時に、導電性接着層32の第2の周縁部分15Bの付近の位置で配線13が破断することが抑制される。
【0027】
なお、図3B中、導電性接着層15にグラデーションが付されている箇所が、重合度が変化している箇所を示している。濃度は重合度を意味し、白の濃度が高い部分から低い部分に向かって重合度が低下する。
【0028】
上述の導電性接着層15の重合度とは、具体的には、導電性接着層15に含まれる接着剤(バインダ)の重合度を意味する。上述の導電性接着層15の重合度の低下の確認方法としては、例えば、分光分析(例えば、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectrometer)、ラマン分光法等)、熱分析(例えば、DSC(Differential Scanning Calorimetry)、TG-DTA(Thermogravimeter-Differential Thermal Analyzer)等)、クロマトグラフィー(例えば、GPC(Gel Permeation Chromatography)、GCMS(Gas Chromatography-Mass Spectrometry)等)等の分析方法を用いることができる。また、硬度測定(例えば、微小硬度、鉛筆硬度等)、光学測定(例えば、屈折率測定、色差測定等)、測長(長さ測定)等の測定法が挙げられる。
【0029】
分光分析では、例えば、吸収スペクトルまたは放射スペクトル等の違いから導電性接着層15の重合度の低下を確認することができる。熱分析では、例えば、反応熱または熱重量変化等の違いから導電性接着層15の重合度の低下を確認することができる。クロマトグラフィーでは、例えば、溶剤への溶解成分の違いから導電性接着層15の重合度の低下を確認することができる。硬度測定では、硬度の違いから導電性接着層15の重合度の低下を確認することができる。光学測定では、例えば、光学的物性の違いから導電性接着層15の重合度の低下を確認することができる。測長では、例えば、体積変化の違いから導電性接着層15の重合度の低下を確認することができる。
【0030】
導電性接着層15は、導電性粒子が潰れた第1の領域R1と、導電性粒子が潰れていない第2の領域R2と、導電性粒子が潰れていない第3の領域R3とを有する。第2の領域R2は、第1の周縁部分15A側に設けられ、第3の領域R3は、第2の周縁部分15B側に設けられ、第1の領域R1は、第2の領域R2と第3の領域R3との間に設けられている。すなわち、第1の領域R1、第2の領域R2および第3の領域R3は、配線13の延設方向13DAに向かって、第3の領域R3、第1の領域R1、第2の領域R2の順序で設けられている。導電性接着層15に含まれる導電性粒子が潰れているか否かは、マイクロスコープ等で導電性粒子の形状を観察することにより確認することが可能である。
【0031】
[3 配線の接続方法]
従来の配線の接続方法と本開示の一実施形態に係る配線の接続方法との違いについての理解を容易するために、以下では、両接続方法について説明する。
【0032】
以下、図4A図4Cを参照して、従来の配線の接続方法について説明する。まず、図4Aに示すように、基材11上に設けられた複数の配線13の第2の端部と接続部材14の第2の端部とを導電性接着層32を介して重ね合わせる。次に、図4Bに示すように、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが、導電性接着層32の第1の周縁部分32Aおよび第2の周縁部分32Bの両方を超えるようにして、熱圧着ヘッド31により接続部材14の第2の端部を押圧および加熱する。
【0033】
これにより、押圧部分の基材11は潰され、配線13には基材11の面内方向にせん断応力が作用すると共に、導電性接着層32が基材11の面内方向に熱収縮し、この熱収縮による収縮力が配線13に作用する。上記のせん断応力および収縮力の作用により、導電性接着層32の第1の周縁部分32Aの付近の位置で配線13が破断する(図4B中、二点鎖線で囲んだ領域13B参照)。また、上記の収縮力により、導電性接着層32の第2の周縁部分32Bの付近の位置で配線13が破断する(図4B中、二点鎖線で囲んだ領域13C参照)。なお、上記の熱収縮の度合いによっては、基材11の表面のうち、上記の配線13の破断位置に対応する位置に、クラックが発生する。次に、図4Cに示すように、熱圧着ヘッド31による押圧および加熱を解除する。これにより、押圧部分の基材11の厚みがもとに戻る。
【0034】
以下、図5A図5Cを参照して、本開示の一実施形態に係る配線の接続方法の一例について説明する。なお、図5B図5C中、導電性接着層15にグラデーションが付されている箇所が、重合度が変化している箇所を示している。濃度は重合度を意味し、白の濃度が高い部分から低い部分に向かって重合度が低下する。
【0035】
まず、図5Aに示すように、基材11上に設けられた複数13の配線の第2の端部と接続部材14の第2の端部とを導電性接着層15を介して重ね合わせる。次に、図5Bに示すように、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの内側に位置するようにして、熱圧着ヘッド31により接続部材14の第2の端部を押圧および加熱する。
【0036】
これにより、第1の周縁部分15Aの内側の部分では、導電性接着層15の重合度が配線部分13Aの延設方向13DAに向かって低下する。また、第2の周縁部分15Bの内側の部分では、導電性接着層15の重合度が配線部分13Aの延設方向13DAとは反対方向13DBに向かって低下する。したがって、基材11の面内方向に作用するせん断応力を分散させることができる。また、導電性接着層15の熱収縮を緩和させ、熱収縮力を抑制することができる。よって、導電性接着層32の第1の周縁部分32Aおよび第2の周縁部分32Bの付近の位置で配線13が破断することを抑制することができる。また、基材11の表面のうち、導電性接着層32の第1の周縁部分32Aおよび第2の周縁部分32Bの付近の位置にクラックが発生することも抑制することができる。
【0037】
また、上記の熱圧着ヘッド31による押圧および加熱により、第1の領域R1、第2の領域R2および第3の領域R3が、配線13の延設方向13DAに向かって、第3の領域R3、第1の領域R1、第2の領域R2の順序で形成される。
【0038】
導電性接着層15の第1の周縁部分15Aから熱圧着ヘッド31の加圧面31Sの周縁までの距離は、配線13の破断の抑制効果を向上する観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、さらにより好ましくは1.5mm以上である。導電性接着層15の第2の周縁部分15Bから熱圧着ヘッド31の加圧面31Sの周縁までの距離は、配線13の破断の抑制効果を向上する観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、さらにより好ましくは1.5mm以上である。熱圧着の圧力は、例えば0.1MPa以上10MPa以下である。熱圧着の温度は、例えば130℃以上200℃以下である。
【0039】
次に、図5Cに示すように、熱圧着ヘッド31による押圧および加熱を解除する。これにより、押圧部分の基材11の厚みはもとに戻る。
【0040】
[4 効果]
上述したように、本開示の一実施形態に係るセンサ(デバイス)10では、配線13は、導電性接着層15と重なる配線部分13Aを有し、第1の周縁部分15Aの内側の部分では、導電性接着層15の重合度は、配線部分13Aの延設方向13DAに向かって低下する。また、第2の周縁部分15Bの内側の部分では、導電性接着層15の重合度が配線部分13Aの延設方向13DAとは反対方向13DBに向かって低下する。これにより、複数の配線13と接続部材14との接続時には、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの付近の位置で配線13が破断することが抑制される。また、複数の配線13と接続部材14との接続後、複数の配線13と接続部材14との接続部に衝撃が加えられた場合に、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの付近の位置で配線13が断線することも抑制される。
【0041】
本開示の一実施形態に係る配線の接続方法では、伸縮性の基材11上に設けられた複数の配線13と接続部材14とを導電性接着層15を介して重ね合わせ、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの内側を加圧および加熱する。これにより、複数の配線13と接続部材14との接続時に、導電性接着層32の第1の周縁部分32Aおよび第2の周縁部分32Bの付近の位置で配線13が破断することを抑制することができる。
【0042】
[5 変形例]
(変形例1)
上述の一実施形態では、導電性接着層15の第2の周縁部分15Bの付近の位置で配線13が破断していない場合について説明したが、図6に示すように、導電性接着層15の第2の周縁部分15Bの付近の位置で配線13が破断していてもよい(図6中、二点鎖線で囲んだ領域13C参照)。この場合、導電性接着層15は、導電性粒子が潰れた第1の領域R1と、導電性粒子が潰れていない第2の領域R2とを有する。第2の領域R2は、第1の周縁部分15A側に設けられ、第1の領域R1は、第2の周縁部分15B側に設けられる。すなわち、第1の領域R1および第2の領域R2は、配線13の延設方向13DAに向かって、第1の領域R1、第2の領域R2の順序で設けられている。
【0043】
以下、上記破断が配線13に形成される配線の接続方法の一例について説明する。まず、上述の一実施形態に係る配線の接続方法と同様に、基材11上に設けられた複数の配線13の第2の端部と接続部材14の第2の端部とを導電性接着層15を介して重ね合わせる。次に、図7に示すように、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aの内側に位置し、かつ、導電性接着層15の第2の周縁部分15Bを超えるようにして、熱圧着ヘッド31により接続部材14の第2の端部を押圧および加熱する。これにより、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aの付近の位置では配線13が破断すること抑制されるのに対して、導電性接着層15の第2の周縁部分15Bの付近の位置では配線13が破断する。また、第1の領域R1および第2の領域R2が、配線13の延設方向13DAに向かって、第1の領域R1、第2の領域R2の順序で形成される。次に、上述の一実施形態に係る配線の接続方法と同様に、熱圧着ヘッド31による押圧および加熱を解除する。
【0044】
(変形例2)
上述の一実施形態では、デバイスがセンサ本体12である場合について説明したが、デバイスはこれに限定されるものではない。デバイスは、例えば、電子回路基板、ディスプレイ、太陽電池、TFT(Thin Film Transistor)基板、メモリまたはバッテリー等であってもよい。この場合、デバイス本体は、例えば、電子回路、ディスプレイ本体、太陽電池本体、TFT、メモリ本体またはバッテリー本体等である。デバイスの形成方法としては、例えば、エッチング、レーザー描画、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット、直接描画または貼合等が挙げられる。これらの方法を単独で用いてもよいし、2以上組み合わせて用いてもよい。デバイス本体は、伸縮性を有していてもよい。
【0045】
(変形例3)
上述の一実施形態では、配線13の第2の端部の先端が、導電性接着層15の周縁から突出している場合について説明したが、配線13の第2の端部側の先端が、導電性接着層15の周縁から突出していなくてもよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例1、比較例1~5において、上述の実施形態または比較例と対応する部分には同一の符号を付す。
【0047】
[実施例1]
まず、熱可塑性ウレタンからなる伸縮性の基材11を準備し、この基材11上に伸縮性のAgペーストを塗布して、ストライプ状に配置された複数の配線13を形成した。次に、基材11上に設けられた複数の配線13の一方の端部と接続部材(FPC)14の一方の端部とを矩形状の導電性接着層(ACF)15を介して重ね合わせた。この際、基材11の一主面に直交する方向から導電性接着層15および複数の配線13を平面視すると、導電性接着層15の長辺が複数の配線13の延設方向13DAに直交するように、接続部材14および導電性接着層15は基材11上に配置された。また、導電性接着層15の幅Wは6mmに設定された。
【0048】
次に、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの内側に位置するようにして、熱圧着ヘッド31により接続部材14の一方の端部を押圧および加熱した。図8は、実施例1の接続部の形成時における熱圧着ヘッド31の加圧面31Sと導電性接着層15との位置関係を示す概略図である。以下に、熱圧着ヘッド31による圧着条件を示す。
熱圧着ヘッド31の幅W:3mm
設定圧力の加圧面31S:0.1MPa
設定温度:165℃
圧着時間:60s
【0049】
次に、熱圧着ヘッド31による押圧および加熱を解除した。以上により、基材11上に設けられた複数の配線13の一方の端部と接続部材14の一方の端部とが熱圧着され、接続部が形成された。
【0050】
[比較例1]
図9は、比較例1の接続部の形成時における熱圧着ヘッド31の加圧面31Sと導電性接着層32との位置関係を示す概略図である。導電性接着層32の幅Wを2mmに設定した。また、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが導電性接着層32の第1の周縁部分32Aおよび第2の周縁部分32Bの外側に位置するようにして、熱圧着ヘッド31により接続部材14の一方の端部を押圧および加熱した。上記以外のことは実施例1と同様にして、接続部を形成した。
【0051】
[比較例2]
図10は、比較例2の接続部の形成時における熱圧着ヘッド31の加圧面31Sと導電性接着層32との位置関係を示す概略図である。導電性接着層32の幅Wを1mmに設定した以外のことは比較例1と同様にして、接続部を形成した。
【0052】
[比較例3~5]
熱可塑性ウレタンからなる伸縮性の基材11に代えて、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる非伸縮性の基材11を用いたこと以外は実施例1、比較例1、2と同様にして、接続部を形成した。
【0053】
(評価)
導電性接着層15、32の第1の周縁部分15A、32Aおよび第2の周縁部分15B、32Bの付近で、配線13に破断が発生しているか否かを確認した。その結果を表1および表2に示した。
【0054】
表1は、実施例1、比較例1、2の接続部の構成および評価結果を示す。
【表1】
【0055】
表2は、比較例1~3の接続部の構成および評価結果を示す。
【表2】
【0056】
表1から、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの内側に位置するようにして、熱圧着ヘッド31により接続部材14の一方の端部を押圧および加熱することで、導電性接着層15の第1の周縁部分15Aおよび第2の周縁部分15Bの付近で、配線13に破断が発生することが抑制されることがわかる。
【0057】
表2から、非伸縮性の基材11を用いる場合には、熱圧着ヘッド31の加圧面31Sが導電性接着層15、32の第1の周縁部分15A、32Aおよび第2の周縁部分15B、32Bの内側に位置しているか否かによらず、導電性接着層15、32の第1の周縁部分15A、32Aおよび第2の周縁部分15B、32Bの付近で、配線13に破断は発生しないことがわかる。
【0058】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0061】
上述の実施形態で段階的に記載された数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。上述の実施形態に例示した材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
伸縮性の基材と、
前記基材上に設けられたデバイス本体と、
前記基材上に設けられた配線と、
前記配線と接続された接続部材と、
前記配線と前記接続部材との間に設けられ、導電性粒子を含む導電性接着層と
を備え、
前記配線は、前記導電性接着層から前記デバイス本体まで延設され、
前記配線は、前記導電性接着層と重なる配線部分を有し、
前記導電性接着層の重合度は、前記配線部分の延設方向に向かって低下するデバイス。
(2)
前記導電性接着層は、前記導電性粒子が潰れた第1の領域と、前記導電性粒子が潰れていない第2の領域とを有し、
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記配線部分の延設方向に向かって、前記第1の領域、前記第2の領域の順序で設けられている(1)に記載のデバイス。
(3)
前記導電性接着層は、接着剤を含み、
前記接着剤が、伸縮性を有する(1)または(2)に記載のデバイス。
(4)
前記デバイス本体は、伸縮性を有する(1)から(3)のいずれかに記載のデバイス。
(5)
前記導電性接着層は、異方性導電フィルムまたは異方性導電接着剤である(1)から(4)のいずれかに記載のデバイス。
(6)
前記接続部材は、フレキシブルプリント基板である(1)から(5)のいずれかに記載のデバイス。
(7)
前記デバイス本体は、センサ本体である(1)から(6)のいずれかに記載のデバイス。
(8)
(1)から(7)のいずれかに記載のデバイスを備える電子機器。
(9)
伸縮性の基材上に設けられた配線と接続部材とを導電性接着層を介して重ね合わせることと、
前記配線が引き出される前記導電性接着層の周縁部分の内側を加圧および加熱することと
を含む配線の接続方法。
【符号の説明】
【0063】
10 センサ(デバイス)
11 基材
12 センサ本体(デバイス本体)
13 配線
13DA 延設方向
13DB 延設方向の反対方向
14 接続部材
14A 基材
14B 配線
15 導電性接着層
15A 第1の周縁部分
15B 第2の周縁部分
10SE センシング部
100 電子機器
110 コントローラIC
120 ホスト機器
R1 第1の領域
R2 第2の領域
R3 第3の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10